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P「無人のスタジオから物音が?」
- 1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 17:00:22.00 ID:xvueY7rR0
- 元ネタは『アークザラッドⅢ』というゲームの、とあるイベントです
それでは開始します - 2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 17:01:06.14 ID:xvueY7rR0
- 11:00 765プロ事務所
P「無人のスタジオから物音が?」
律子「ええ……らしいです」
P「どういうことだ、律子?」
律子「今さっき千早と伊織から、私の携帯に連絡があったんですよ」
P「確か今日あの二人は、一緒にトレーニングするって言ってたな」
律子「珍しい組み合わせですね」
P「そうでもないだろ? ほら、律子も含めて無敵艦隊時代とかさ」
律子「……今、その名前を知ってる人、どのぐらいいるんですか?」
P「き、きっと大勢いると思うぞ……多分」
律子「だと、いいですけど……」
- 3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 17:03:20.28 ID:xvueY7rR0
- 律子「ところで今日のレッスンの場所、いつものスタジオじゃないんですよね?」
P「そうなんだよ。明日まで、大掃除をするらしくてな」
律子「替わりに、近くにある別のスタジオを貸し切れたって聞きましたけど?」
P「ああ。半年前に廃館になった図書館を、大改造して作ったらしい」
律子「……大丈夫なんですか、そんな場所で」
P「一応見学したけど、設備はしっかりしてたぞ?」
律子「ふぅん……」
P「本棚が少し残ってる程度で、特に問題ないと思ったんだが……」 - 4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 17:06:24.48 ID:xvueY7rR0
- 律子「ともかく。中に誰もいないはずのスタジオから、物音がするらしいんです」
P「物音ねえ。そこの警備員とかに、調べてもらったのかな?」
律子「ええ。やっぱり誰もいなかった、とのことですね」
P「なら、千早と伊織の気のせいじゃないのか?」
律子「おそらく。でも二人とも、すごく気味が悪いって言ってましたけど?」
P「まあ、気持ちはわかるが……」
律子「このままだとあの二人、トレーニングに集中できないんじゃありません?」
P「うーむ。それはまずいな……」 - 5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 17:09:20.74 ID:xvueY7rR0
- P「わかった、そういうことなら俺も行ってみよう」
律子「私もお供しましょうか?」
P「え、律子が?」
律子「万が一の時の頭脳労働担当、いた方がいいんじゃありません?」
P「確かに……そうだな。それじゃ律子、頼りにさせてもらうよ」
律子「万が一の時の肉体労働担当は、プロデューサーですからね?」
P「……あんまり頼りにしないでくれると、ありがたいかも……」
律子「無理な相談ですね。それじゃ、スタジオに行きましょうか!」
P「お、おう! すぐに支度するから、ちょっと待っててくれよ!」 - 6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 17:12:10.70 ID:xvueY7rR0
- 11:20 スタジオ入口
P「待たせたな千早、伊織!」
伊織「ずいぶん遅かったじゃない! もっと早く来なさいよね!」
P「ははは……悪い悪い」
千早「お疲れ様ですプロデューサー。あら、律子も一緒なのね」
律子「ええ。詳しい話、聞かせてもらえるかしら?」
伊織「もちろんよ。あのね……」
P「…………」
伊織「物音がするのよ、スタジオの中から」
P「貸し切りで、誰もいないはずなのに?」
伊織「そうなのよ……おかしいでしょ?」
千早「それで、水瀬さんと一緒に中に入ってみたんですけど……」
伊織「でも……なぜか、誰もいないのよ」 - 7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 17:15:22.97 ID:xvueY7rR0
- 千早「その後警備員さんにお願いして、もう一回調べてもらいました」
伊織「結果は同じだったけどね」
律子「なら、勘違いじゃないの?」
千早「それはないと思うわ」
伊織「私も千早も、二人とも物音を聞いてるのよ!」
P「もしかして、ネコでも入り込んだのかな?」
千早「でも、確かに人の気配がしました」
律子「人の気配……ですって?」
伊織「ねえプロデューサー、早く調べてくれない?」
千早「このままでは集中できずに、今日一日を無駄に過ごしてしまいそうで……」
P「わかった。それじゃ、中に入って調べてみるか」 - 8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 17:18:20.42 ID:xvueY7rR0
- 11:30 スタジオ内部
P「……誰もいないみたいだな」
律子「そうですね……」
P「ガランとして、人の気配がしないぞ……」
律子「……どういうことなんでしょう?」
P「さあ……」
律子「やっぱり、二人の気のせいじゃない?」
伊織「そんなはずはないと思うけど……」
千早「……待って」
P「ん? 千早?」
千早「間違いありません。誰かがいます」
P「えっ!」 - 9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 17:21:23.70 ID:xvueY7rR0
- 律子「千早、本当なの?」
千早「ええ、人の気配がするわ」
伊織「ど、どこ? どこなのよ!」
千早「部屋の奥……そっちの本棚の陰!」
P「本棚の陰……あそこか」
律子「うーん……気配なんてしたかしら?」
伊織「全然、わからなかったけど……」
P「千早は感受性か強いから、そういうのに敏感なのかもしれないが……」
千早「あの、プロデューサー……」
P「……わかった。ちょっと見てみるぞ」
律子「あ、私も一緒に行ってみますよ」
スタスタスタ スタスタスタ
P「……うぅむ」 - 10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 17:24:20.23 ID:xvueY7rR0
- 伊織「ど、どうなの?」
P「いない……」
律子「いないわね」
千早「そんな……。でも、確かに――」
伊織「ちょっとちょっとちょっと! ビックリさせるんじゃないわよ、千早!」
千早「でも、確かに人のいる気配がしたのよ」
伊織「ふーん、どれどれ……?」
スタスタスタ
伊織「ほら、見てみなさいよ。やっぱり、誰もいないじゃない!」
千早「おかしいわね……」 - 11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 17:27:23.33 ID:xvueY7rR0
- 千早「それじゃ、私も……」
スタスタスタ
千早「本当ね……。気のせいのはずはないと思うけど……」
伊織「それにしてもここ、本がたくさん並んでるわね」
律子「元図書館の名残、ってやつかしら?」
P「どれどれ……おおっ、これはっ!」
律子「ん? 何か面白い本でも見つけました?」
P「む、難しくて、さっぱり内容が頭に入ってこない……」
伊織「……アンタねえ」
P「あっ!!」
ガタッ
千早「ひっ!?」 - 12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 17:30:13.77 ID:xvueY7rR0
- 律子「プロデューサー!?」
伊織「どうしたの!? 何が起きたのよ!?」
P「す、すまん……。本を落としちゃって……」
千早「……もう!」
伊織「脅かさないでちょうだい!」
律子「ふぅ……。とにかく、特に誰かが入った様子もなさそうね」
千早「待って、律子。確かにあれは人の気配……」
ガタッ
千早「きゃっ!」
律子「プ、プロデューサー!」
伊織「いい加減にしなさいよ!」
P「えっ……俺?」 - 13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 17:33:23.17 ID:xvueY7rR0
- 伊織「アンタ以外に、誰がいるってのよ!」
律子「何度も何度も、本を落とさないでくださいね!」
P「い、いや、違う! 俺、何もしてないぞ!」
律子「……えっ?」
伊織「じゃ、今の音は?」
千早「……っ! みんな、後ろよ!」
P「ん?」
伊織「後ろ?」
律子「一体、何が……」
クルッ
女性「…………」
律子「ひあっ!?」
伊織「きゃあ!?」
P「うおっ!?」 - 14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 17:36:26.44 ID:xvueY7rR0
- P「お、女の人!?」
伊織「い、いつの間にこんなに近くにいたの!?」
P「ぜ、全然気がつかなかったぞ……?」
千早「年や背丈は、音無さんと同じぐらいでしょうか?」
P「随分と線が細い人だな……。何だか、儚げな雰囲気を纏ってるぞ……」
律子「手に持っているのは、楽器を入れるケースみたいね……」
女性「すみません……。脅かすつもりはなかったのですが」
P「……あなたは一体、何者ですか?」
女性「私の名は、岩男阿津。しがないバイオリニストです」
千早「いわお、あつさん……」
伊織「バイオリニスト、ですって?」 - 15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 17:39:29.21 ID:xvueY7rR0
- 阿津「信じてください。決して、怪しい者ではありません」
P「そ、そうかな?」
伊織「怪しいわよ! はっきり言ってメチャメチャ怪しいわよ、アンタ!」
千早「こんな所で、何をやってるんですか?」
阿津「調べものです」
律子「許可も得ないで勝手に忍び込んで、ですか?」
阿津「それは……申し訳ないと思っています」
千早「そこまでして、一体何を……?」
阿津「どうしても、ここにある本が読みたかったので……」
P「本?」
阿津「ええ。伝説のバイオリンの弓の在処が、もう少しでわかりそうなのです」 - 16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 17:42:26.51 ID:xvueY7rR0
- P「伝説の……」
千早「バイオリンの弓……ですか?」
律子「すいません。もう少し、詳しく聞かせてもらえます?」
阿津「わかりました。それでは、お話しさせていただきます」
律子「ええ、お願いしますね」
阿津「私は世界を旅して回りながら、様々なバイオリンの情報を集めてきました」
伊織「ふぅん……。見た目と違って、結構アクティブなのね」
阿津「そして、知ったのです。世界のどこかに存在する、至高の弓の伝説を」
千早「その弓とは一体、どういうものなんですか?」
阿津「失われた技術で作られた弓が奏でる音色は、全ての生き物を魅了するそうです」
千早「全ての生き物を、魅了……」
P「へえ……。何だか、すごそうだぞ……」
伊織「それが本当なら、大発見じゃない!」 - 17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 17:46:08.53 ID:xvueY7rR0
- 律子「伝説……ねえ。具体的には?」
阿津「ええ。こう語られています」
阿津「己が愛する提琴に『我』を捧げよ」
阿津「さすれば汝、万人を魅了せし音色が心を揺るがすのを目撃す」
阿津「汝、『我』とともに、世界を駆けめぐるべし」
阿津「その名をあまねく知らしめるために」
阿津「以上です」
P「? 何だこりゃ?」
伊織「なんだか、ちんぷんかんぷんね……」
阿津「秘密がばれないように、わざとわかりづらくしてあるんでしょう」 - 18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 17:48:45.75 ID:xvueY7rR0
- 律子「己が愛する提琴、か――」
P「あ! わかった、簡単じゃないか!」
律子「へ?」
千早「プロデューサー、本当にわかったんですか?」
P「ああ! どこかに、愛する提琴って名前のバイオリンの弓があるんだよ!」
律子「……はい?」
P「バイオリンに詳しい人に片っ端から当たれば、きっと見つかるさ!」
律子「んなわけないでしょうが!」
伊織「馬鹿なのアンタは! そのまんまじゃないの!」
千早「いくらなんでも、そんな単純な……」
阿津「その通りです」
千早「えっ!?」 - 19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 17:51:15.33 ID:xvueY7rR0
- P「ほら見ろ!」
阿津「すみません、今のは冗談です」
P「ガクッ!」
律子「この状況で冗談を言うなんて……」
伊織「意外に、お茶目な所もあるのね……」
P「何だよ……全く……」
千早「……あ。私、わかったかもしれません」
P「な、何っ!? 本当か?」
千早「あなたの愛する提琴は、今手にしているケースの中に入っているのでは?」
阿津「さすがですね……」
パカッ
阿津「お察しの通り。このバイオリンこそが、私の愛する提琴です」 - 20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 17:52:59.67 ID:xvueY7rR0
- P「えーっと……?」
千早「自分が心を込めて使っているバイオリン。それ自体が、愛する提琴なんですね」
阿津「はい。私はそう、解釈しました」
P「……つまり、どういうことだ?」
律子「なるほどね。バイオリンそのものは、別に特別じゃなくてもいいってわけか」
伊織「気取った高級品じゃなくて、一番愛着があるのを使いなさい、ってことね!」
P「あ、ああ……そうなんだ。何だか、わかったような気がするぞ」
律子「……プロデューサー。本当に意味わかってます?」
P「だ、大丈夫だ! 大丈夫とも!」
伊織「ふーん……。そのバイオリン、いいツヤしてるじゃない!」
千早「隅から隅まで、手入れが行き届いているみたい……」
阿津「私は幼少の頃にバイオリンを習い始めてからずっと、この子と一緒でしたから」 - 21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 17:54:17.15 ID:xvueY7rR0
- 阿津「この子と共に、数えきれないぐらいの楽曲を奏でてきたんです」
伊織「昔からずっと一緒なんて、私とうさちゃんみたい……」
阿津「この子は私の相棒……いえ、私の体の一部みたいなものです」
律子「体の一部……そこまで言いますか」
阿津「はい。この子には、私の魂がこもってるんです」
千早「魂……」
阿津「この子は私自身。もしかしたら私そのもの……なのかもしれません」
千早「……わかります、なんとなく」
阿津「本当ですか?」
千早「私も自分の歌を、何よりも大切に思っていますから……」
阿津「そう……なんですね」
千早「はい。歌はいつでも、私と共にあります」
阿津「ですが……」 - 22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 17:57:17.01 ID:xvueY7rR0
- 阿津「一つだけ、一緒でない時があります。わかりますか?」
千早「え……?」
律子「一緒でない、時……?」
伊織「アンタ、わかる?」
P「い、いや、俺には想像もつかないが……」
阿津「それは、死ぬときです……」
千早「っ!」
律子「死ぬ……って」
阿津「人はいつかは、死ぬ……。必ず死んでしまうのです」
伊織「そ、それは……そうかもしれないけど……」 - 23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 18:00:18.75 ID:xvueY7rR0
- P「で、でも! 今からそんなこと考えても仕方ないんじゃ?」
阿津「例えその時は元気でいても、不意に命を落とす場合もありますから……」
千早「不意に……」
阿津「ええ。例えば、湖で――」
P「うわわ! ストップ! その辺でストーップ!」
律子「あ、阿津さんのバイオリンにかける情熱はよくわかりました!」
P「で、ですから! 暗い話題は終わりにしましょう! ね!」
阿津「……そうですね。すみません、こんな話を聞かせてしまって……」
千早「…………」
伊織「ちょ、ちょっと千早! 平気なの!? 顔が青くなってるわよ!?」
千早「ご、ごめんなさい……水瀬さん。大丈夫よ、そんなに心配しなくても……」 - 24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 18:03:29.72 ID:xvueY7rR0
- 阿津「ところで、そちらの青い髪の方」
千早「私……ですか?」
阿津「お名前は?」
千早「は、はい。如月千早といいますが」
阿津「千早……いい名前ですね」
千早「……ありがとうございます」
阿津「実は私のバイオリン、アヤという名前なのです。少し、似ていませんか?」
千早「へえ……。楽器に名前をつけてるんですね」
P「持ち物に名前かぁ。何だか本当に、伊織とぬいぐるみの関係みたいだな……」
伊織「ね! もしそのバイオリンを人間に例えるなら、どんな感じの人になるの?」
阿津「そうですね……」 - 25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 18:06:13.89 ID:xvueY7rR0
- 阿津「綺麗な歌声を持つ、セクシーな女性のイメージ……でしょうか」
伊織「ず、ずいぶん具体的ね……」
阿津「その方が、何かと想像が膨らみますから」
律子「な、なるほど。歌がうまくて……」
P「セクシー……ほほう」
阿津「皆さんには、成人した千早さんの姿を思い描いてもらえれば、わかりやすいかと」
千早「え!? 私ですか?」
律子「……ん?」
伊織「はぁ?」
P「千早がセクシー? こんなに胸が……って、あ」
千早「……どういう意味ですか?」
P「い、いやいやいや! 待ってくれ千早! そんなに怒らないで!」 - 26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 18:09:37.63 ID:xvueY7rR0
- P「べ、別に、悪気があったわけじゃないんだ! 信じてくれ!」
伊織「でも確かに……ねぇ……?」
律子「歌が上手いのはいいとしても、セクシーっていうのは……」
阿津「そうですね。千早さんはもうちょっと、育った方がいいですね」
千早「く、くっ! みんなして……!」
P「阿津さんまで……結構、容赦がないな……」
千早「あ、あの! 私はまだ未成年だし、それに――」
阿津「クスッ。大丈夫ですよ、千早さん」
千早「え?」
阿津「千早さんは大人になったらきっと、すごく素敵な女性になりますから」 - 27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 18:12:15.86 ID:xvueY7rR0
- 千早「……それ、本当でしょうか?」
阿津「ええ、私が保障します。だからもっと、自分に自信を持ってくださいね?」
千早「は、はい……!」
伊織「あら? 千早、顔が赤くなってるわよ?」
千早「そ、そんなことないわ!」
伊織「アンタがこんなに照れるなんて、珍しいわねぇ? にひひっ!」
千早「み、水瀬さん! やめてちょうだい!」
律子「……プロデューサー。何だかさっきから、話が脱線してると思いません?」
P「あ、ああ……そんな気もするな」
阿津「……失礼しました。では、本題に戻りますね」 - 28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 18:15:22.03 ID:xvueY7rR0
- 律子「コホン。伝説の言葉は、己の愛する提琴に『我』を捧げよ、でしたよね?」
阿津「はい、その通りです」
P「『我』……誰?」
伊織「さあ……?」
阿津「私も何が言いたいのか、全くわからないのです……」
P「それで謎を解き明かすために、ここの本を調べてたってわけですか」
千早「元図書館だけあって、いろいろな本が残っているみたいですね」
P「バイオリン関係の本も、探せばたくさんありそうだが……」
阿津「ここに来れば、伝説の謎が解けると考えていました。でも……」
律子「思うようにいかないと?」
阿津「ええ。お恥ずかしい話ですが……」 - 29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 18:18:10.10 ID:xvueY7rR0
- 伊織「確かに、難しい本が多そうよね」
P「俺もさっき読んだら、頭が痛くなって本を落としちゃったしな」
伊織「それ、アンタがドジなだけじゃない?」
P「そ、そんなことないぞ!」
千早「ま、まあまあプロデューサー。水瀬さんも……」
律子「ふむ。さて、どうしたもんかしら」
伊織「今日ずっとここに居座られたら、トレーニングなんてできないわ!」
P「まあ、そうなんだよなぁ……」
千早「プロデューサー」
P「ん? どうした、千早?」
千早「私……」 - 30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 18:21:42.13 ID:xvueY7rR0
- 千早「私、阿津さんに協力したいです」
伊織「何ですってぇ!?」
P「本気なのか、千早?」
千早「はい。この人は、悪い人ではありません」
伊織「それは、私もそう思うけど……」
千早「歌もバイオリンも、高みを目指したいと思う気持ちは同じのはず」
伊織「…………」
千早「私でよければ、力になってあげたい……」
P「わかった。じゃあ、俺も手を貸すよ」
千早「プロデューサー……」
伊織「ちょっと! アンタまで何言い出すのよ?」
P「いいじゃないか。これも、乗り掛かった舟ってやつだよ!」 - 31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 18:24:28.90 ID:xvueY7rR0
- 律子「それなら私も、謎解き大会に参加させてもらおうかしら?」
千早「律子……!」
律子「頭脳労働担当者、必要でしょ?」
P「自信はあるのか?」
律子「プロデューサー。私を誰だと思ってるんです?」
P「……そうだな、愚問だったよ」
千早「頼りにしてるわ、律子!」
律子「任せなさいって! で、伊織はどうするの?」
伊織「ここで断ったら、私だけ悪者みたいじゃない。あーあ、面倒ね……」
P「いや、別に無理しなくてもいい――」
伊織「しょうがないわね! この伊織ちゃんも、手助けしてあげるわよ!」 - 32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 18:27:29.93 ID:xvueY7rR0
- 伊織「ありがたく思いなさいよね、千早!」
千早「ええ! ありがとう、水瀬さん!」
伊織「し、仕方なくよ! 仕方だからね!」
律子「手伝いたいんでしょ」
P「手伝いたいんだよな」
伊織「う、うるさい! うるさいうるさいうるさーい!」
千早「ふふ、水瀬さんったら……」
P「というわけです、阿津さん」
千早「私達にも、お手伝いをさせてください!」
阿津「……皆さんなら、きっとわかってくれると思っていました」 - 33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 18:30:27.65 ID:xvueY7rR0
- 阿津「本当に、本当にありがとう――」
律子「おっと! お礼は、目的を達成してからにしません?」
伊織「そうね。だって私達、まだなーんにもしてないわけだし」
P「確かに、律子と伊織の言う通りだな」
阿津「……わかりました。では、そうさせていただきます」
伊織「で? 一体何を調べたらいいのかしら?」
律子「いくらなんでも、糸口が少なすぎるわね」
千早「せめてもう少し、情報があれば……」
阿津「あの……」
P「ん? どうしました?」
阿津「実は……伝説はもう一つあるんです」 - 34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 18:33:20.48 ID:xvueY7rR0
- 千早「え? もう一つ……ですか?」
伊織「ちょっと! そういうことは、先に言いなさいよね!」
律子「もう一つの伝説……どういう内容です?」
P「聞かせてください、阿津さん」
阿津「わかりました。では……」
阿津「『我』は、いと深き『ち』を持つ場所にあり」
阿津「『我』を持つ者、無にして有、その心は器に宿りけり」
阿津「中にありて、ひときわ輝くものに、『我』あり」
阿津「以上です」
P「う、うーむ……?」 - 35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 18:36:27.97 ID:xvueY7rR0
- P「確かに『我』に関する伝説だけど……」
律子「これだけじゃ、さすがに何もわかりませんね」
阿津「解読するための手がかりが、ここの中にあるはずなんです」
千早「この本棚に……ですか?」
阿津「ええ。本を調べて、手がかりを探し出してくれませんか?」
千早「わかりました。片っ端から、読んでいけばいいんですね」
伊織「本っ当に面倒ね……。まあこれだけ人数がいれば、何とかなるんじゃない?」
P「よし、やると決めたからには全力でやるぞ!」
律子「ええ。みんなで手分けして、本棚を調べてみましょう!」 - 39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 20:04:33.21 ID:xvueY7rR0
- 14:30 スタジオ内部
P「うーん……。なかなか見つからないな……」
阿津「そうですね……」
律子「確かにバイオリンに関する本は、いろいろあるけど……」
伊織「本に載ってるの、当たり前の内容ばっかりじゃない!」
千早「伝説のバイオリンのことなんて、どこにも書いてないわ……」
律子「まして、『我』の話なんて――」
P「ああっ!」
律子「ひえっ!?」
P「こ、この本は……この本は!」
律子「プ、プロデューサー! いきなり大声を出さないでくださいよ!」
千早「何か見つかったんですか?」
P「い、いや……ちょっと興味をひかれる本があって……」 - 40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 20:06:46.18 ID:xvueY7rR0
- 律子「どれどれ、タイトルは……」
P「あ、やめろ律子! ちょっと待て! 見るな!」
律子「えーっと……『紳士的ボディタッチの心得』」
P「…………」
律子「って、コラ! ちょっと! 何を読もうとしてるんですか!」
P「うおああぁぁ……」
伊織「へ、変態! 変態変態! この、変態大人!」
千早「……プロデューサー。こんな本、見てる場合なんですか?」
阿津「…………」
P「すいませんでした……」
律子「全く……没収しますからね!」
P「トホホホ……ん?」 - 41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 20:09:30.56 ID:xvueY7rR0
- P「おや?」
伊織「何よ。また変態が、新しい変態雑誌でも見つけたのかしら?」
P「ち、違う! 今の本を抜いた場所の奥に、もう一冊本が見えるんだが……」
千早「あ……確かに、ありますね」
律子「何の本かしら?」
伊織「それじゃあ、私が取ってみるわ。よいしょっと……」
バタン
伊織「きゃっ!」
P「うおっ!?」
律子「ど、どうしたの、伊織?」
伊織「本……落としちゃった」
P「な、何だよ……」 - 42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 20:12:25.54 ID:xvueY7rR0
- 千早「うふふ。水瀬さんったら、プロデューサーみたい……」
伊織「ち、千早! 伊織ちゃんを、こんな変態と一緒にしないでちょうだい!」
P「ったく、脅かしやがって……」
伊織「ア、アンタにだけは言われたくないわよ! このド変態!」
P「ド、ド変態って、そこまで言わなくても……」
伊織「ああ、もう! 何で私が、こんなことしなきゃならないのよ!」
P「まあまあ、落ち着けって伊織。ほらほら、どうどう」
伊織「ふ、ふざけないで……って、あら?」
律子「これは、地図?」
千早「水瀬さんが落とした本、ちょうど地図のページが開いてるわ……」
P「お、本当だな……」
伊織「湖と、お寺の説明が載ってるみたいだけど……」 - 43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 20:15:35.55 ID:xvueY7rR0
- P「何かの参考になるかもしれないし、一応チェックしておくか?」
阿津「それでは、私が読み上げますね。ええと……」
阿津「『010寺(おとでら)』をとりまく自然」
阿津「010寺からしばらく南へ行くと、『76湖(なむこ)』が現れます」
阿津「76湖は非常に深い湖で……」
律子「76湖……か」
阿津「…………」
伊織「こんな湖、聞いたことないわ」
千早「何だか、私達の事務所みたいな名前ね……」
P「阿津さん。この010寺っていうの、どこにあるか知ってますか?」
阿津「ええ。ここから南へ、三、四十分ぐらい行った所にあるはずです」
P「へぇ……。そんなに遠くじゃないんだな……」 - 44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 20:20:06.02 ID:xvueY7rR0
- 阿津「たくさんの仏像に囲まれていて、厳しい修練の場として有名だったそうです」
伊織「ふぅん。仏像ねぇ……」
阿津「昔は多くの若者が、自分を磨くために訪れたそうですよ」
伊織「あ、いいこと思いついたわ! アンタも行ってみなさいよ!」
P「え、俺?」
律子「あら、いいわね。邪の精神が、浄化されるかもしれませんよ?」
P「お、おいおい! 勘弁してくれよ!」
阿津「残念ながら人が集まらなくなり、今ではもう廃寺となってしまいましたが」
律子「あら、そうなんですか?」
伊織「なーんだ、残念」
P「ホッ……助かった」
千早「……ん? 76湖は非常に深い湖……?」 - 45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 20:23:48.13 ID:xvueY7rR0
- 千早「……ねえ、律子。伝説の最初の箇所、覚えてる?」
律子「え? 確か、『我』は、いと深き『ち』を持つ場所にあり、よね?」
伊織「千早、何か思いついたの?」
千早「ふと、思ったんだけど……」
阿津「…………」
千早「この76湖が伝説にある、いと深き『ち』ではないかしら……?」
P「え……あっ!」
阿津「…………」
P「そうか、深い場所ってことか! なるほど、そういう考え方もあるな!」
千早「律子、伊織、どう思う?」
律子「んー……いくらなんでも、根拠がなさすぎないかしら?」
伊織「そうね。たまたま開いたページに答えがあるなんて、ゲームじゃあるまいし」
千早「それは……そうかもしれないわね」
P「うーむ。結論を出すのは、まだ早そうだな」 - 46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 20:26:29.97 ID:xvueY7rR0
- 律子「せっかく見つけたんだし、もう少し読んでみましょうか」
伊織「あら? こっちのページには、010寺の詳しい解説が載ってるみたいよ」
阿津「それではまた、私が読んでみますね」
阿津「『010寺の教え』」
阿津「010寺とは、音の神を尊ぶ古き寺院」
阿津「010寺の教えは、音の神から授かったものである」
阿津「音の神の教えとは、深い思慮を尊び、深い思慮を持ち続けること」
阿津「010寺の教義は、『深き知の教え』なのだ」
P「音の神様を祭ってるから010寺……って、ただのダジャレかよ!」
千早「くっ……ふふっ……!」
P「……相変わらず、千早のツボはさっぱりわからん」
伊織「深き知の教え……ね」
律子「深き、知……?」 - 47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 20:30:35.01 ID:xvueY7rR0
- 律子「深き知……深き、『ち』……」
千早「え……あ……?」
P「もしかして……?」
伊織「ここよ! いと深き『ち』を持つ場所って、きっとこのお寺のことだわ!」
千早「……そうかもしれない。ここ、音の神様が祭られているんですよね?」
P「らしいな。バイオリンは楽器……当然、音に関係するってわけか」
律子「何だかやっぱり、都合がよすぎる気もするけど……」
伊織「それでもさっきの湖より、信用できるんじゃないかしら?」
千早「調べてみる価値、あると思うわ」
P「おっしゃ! 早速、その010寺とやらに行ってみよう!」
伊織「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」 - 48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 20:33:45.17 ID:xvueY7rR0
- 伊織「行くのはいいけど、お寺のどこを探せばいいのよ?」
P「え? あ……そっか」
千早「確かにこれだけだと、具体的な隠し場所まではわからないわね」
P「テキトーに探せば、見つかるんじゃないか?」
伊織「無理に決まってるでしょ! ちょっとは頭を使いなさい!」
律子「急いては事をし損じます。落ち着いて、もう一回考えますよ!」
P「わ、わかった。それじゃ阿津さん、伝説の言葉をもう一度教えてくれますか?」
阿津「わかりました。それでは……」
阿津「『我』は、いと深き『ち』を持つ場所にあり」
阿津「『我』を持つ者、無にして有、その心は器に宿りけり」
阿津「中にありて、ひときわ輝くものに、『我』あり」
阿津「以上です」
律子「ふむ……」 - 49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 20:37:01.45 ID:xvueY7rR0
- 伊織「『我』っていうのはきっと、伝説のバイオリンの弓のことよね」
P「なら、寺の誰かが弓を持ってる、ってことか?」
律子「プロデューサー。一つ、大切なことを忘れていませんか?」
P「え? 何を?」
伊織「アンタねえ……。010寺って、もう廃寺になってるんでしょ?」
P「あ……そういえばさっき、阿津さんが言ってたな」
千早「ということは、もうお寺には人はいない……?」
律子「そう考えるのが、自然じゃない?」
千早「でも人じゃないなら、誰が持ってるのかしら?」
P「もしかしたら野生の動物が、どこかに隠してるんじゃないか?」
伊織「それはちょっと……考えにくいんじゃない?」
P「むむむ……」 - 50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 20:39:27.87 ID:xvueY7rR0
- 律子「それじゃあ、伝説の二文目以降を掘り下げてみましょうか」
伊織「ええっと、『我』を持つ者、無にして有……」
千早「その心は器に宿りけり……?」
P「あ、わかった! 閃いたぞ、俺!」
千早「……本当ですか?」
伊織「……一応聞いてあげるわ。言ってみなさいよ」
P「おう! まだ寺に住んでる、音の神様が持ってるんだよ! きっと!」
千早「……プロデューサー」
伊織「またアンタは、そんなバカなことを……」
P「じょ、冗談に決まってるだろ、ただの冗談――」
律子「それだわ!」
P「……へ?」 - 51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 20:42:21.34 ID:xvueY7rR0
- 伊織「え?」
千早「律子……?」
律子「ピンと来たわ! おそらく、プロデューサーの言う通りよ!」
伊織「ウソ!?」
P「マ、マジでか!? マジなのか!?」
律子「ええ。姿は見えなくてもそこに在り続けるモノ……」
千早「無にして有……! まさか……!」
律子「そう! お寺が崇めていた神様と考えれば、確かに辻褄は合うのよ!」
伊織「……! 確かに、言われてみると……」
P「ほ、ほらな! 俺の言ったとおりだろ!」
伊織「アンタはちょっと黙ってなさい!」
P「は、はい。すみません」 - 52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 20:45:21.30 ID:xvueY7rR0
- 伊織「でも、ちょっと待って。もし、その神様が弓を持ってたとして……」
千早「どうやって受け取ればいいのかしら?」
伊織「律子。まさか降霊術師を呼ぶなんて、言い出すんじゃないでしょうね?」
律子「そんな非科学的なこと、私がするわけないでしょ?」
千早「それなら一体、どうすれば?」
律子「ヒントは、二文目の後半にあるわ」
伊織「後半? 確か……」
千早「心は器に宿りけり、よね」
伊織「器に、心が宿る……?」
千早「お寺にあって、神様の心が宿りそうなモノ……あっ!」
伊織「そうだわ! もしかして……!」
P「すまん。俺、サッパリわからないんだが」
伊織「アンタはもうちょっと黙ってなさい!」
P「は、はい。すいませんすいません」 - 53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 20:48:14.21 ID:xvueY7rR0
- 伊織「律子! 弓の隠し場所は、仏像の中ね!」
律子「ええ。私はそうだと思う」
千早「神様の心が宿る器……すなわち、仏像……」
律子「010寺は、多くの仏像に囲まれたお寺。そう言ってましたよね、阿津さん?」
阿津「はい……確かに」
伊織「うんうん! しっくりくるじゃない!」
律子「これは憶測だけど、どこかの仏像に隠し戸棚が作られてるんじゃないかしら?」
伊織「もしそうなら、何も知らない人が見ても絶対気づかないわ!」
千早「隠し場所としては、ピッタリの場所ね」
律子「ということです。プロデューサー、わかりましたか?」
P「お、おう! とりあえず納得したぞ!」
伊織「ホントかしら……?」
P「ホ、ホントホント! ホントだって!」 - 54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 20:51:10.63 ID:xvueY7rR0
- P「でも仏像って、たくさんあるんだろ? どれを調べりゃいいんだ?」
律子「その疑問を解決するための突破口は、伝説の三文目にありますね」
千早「中にありて、ひときわ輝くものに『我』あり……あ!」
伊織「わかったわ! きっとどこかに他とは違う、光輝く仏像があるのね!」
律子「ええ。これが謎解きの、最後の一手のはずよ」
阿津「それではその仏像の中に、伝説の弓は隠されている……と?」
律子「ええ。私の推理……というか、こじつけが正しければ、ですけどね」
伊織「私は律子に賛成よ。納得できるし、筋が通ってると思うもの」
千早「同感ね。プロデューサーは、どう思いますか?」
P「絶対間違いない!」
律子「え、そこまで!?」
P「おう! この手の類の問題を、律子が間違えるはずがないじゃないか!」
律子「う、うーん……。そこまで言われると、何だか面映ゆいなぁ……」 - 55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 20:54:33.71 ID:xvueY7rR0
- P「よし! これで作戦会議は終了だ!」
伊織「アンタ、何もしてないじゃない……」
P「少なくとも、取っ掛かりは作ったぞ!」
律子「……まあ、否定はしませんけど」
千早「伝説の謎は解けたし、あとは弓を回収するだけね」
阿津「これも全部、皆さんのおかげです……」
伊織「……あら?」
律子「阿津さん、嬉しくないんですか?」
千早「何だか、顔色がすぐれないみたいですが……」
阿津「……そんなことはありません。ちょっと、疲れてしまって」
P「確かに、長時間の捜索活動でしたからね」
千早「それなら、いいんですけど……」 - 56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 20:57:33.04 ID:xvueY7rR0
- P「さて、どうする? 今から010寺に行ってみるか?」
千早「ええ、もちろんです」
律子「これから向かえば、今日中にケリをつけられそうね」
伊織「決っまり!」
律子「プロデューサー、さっきの地図が載ってる本、持ってもらえますか?」
P「おう、まかせとけ!」
千早「さあ、阿津さん。私達と一緒に行きましょう!」
阿津「…………」
伊織「何よ? どうかしたの?」
阿津「私は……」
千早「……?」
阿津「私は、行けません……」
千早「え?」 - 57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 21:00:25.66 ID:xvueY7rR0
- 伊織「な、何でよ!?」
律子「あんなに伝説に、こだわっていたのに……?」
P「伝説の弓を、手に入れたいんじゃなかったんですか?」
阿津「私には……他に、行かなければならない場所があるんです」
P「えっ? 他に?」
伊織「一体、どこに行くのよ?」
阿津「…………」
千早「阿津さん……?」
阿津「……行きつけの、461音楽協会です」
律子「シロイ音楽協会?」
阿津「……ええ」 - 58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 21:03:29.54 ID:xvueY7rR0
- 阿津「私はそこで、演奏の準備をしながら皆さんをお待ちしています」
P「ああ、なるほど! 少しでも早く、伝説の弓で演奏したいってわけですか?」
伊織「なあんだ! それならそうと、早く言いなさいよね!」
千早「ふふ。阿津さんの気持ち、何だかわかる気がします」
律子「それじゃあ後で行きますから、場所を教えてもらえますか?」
阿津「……では、この地図をお持ちになってください」
律子「あら。音楽協会って、結構近くじゃないですか!」
P「これを見る限り、010寺から461音楽協会までは、三十分ぐらいか?」
伊織「それじゃ、協会で待ってなさい! とっとと、弓を取ってきてあげるわ!」
千早「阿津さんの演奏、楽しみにしていますね。では、また後で――」
阿津「あの、千早さん!」
千早「は、はい!?」 - 59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 21:06:27.09 ID:xvueY7rR0
- 阿津「…………」
千早「ど、どうしたんですか……?」
阿津「……いえ、なんでもありません」
千早「……?」
阿津「よろしくお願いします、千早さん……」
千早「……はい!」
P「よし! それじゃあみんな、010寺に出発だ!」
タッタッタッタッタ
阿津「……お願いします」
ギィィィィ バタン
- 60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 21:09:15.32 ID:xvueY7rR0
- 15:15 010寺跡
P「さあ、010寺に着いたぞ!」
律子「さて、目的のものは……と」
千早「見て! あそこよ!」
伊織「あ! 境内の周りに、大きな仏像がたくさん並んでるわ!」
P「おおっ! 右端の像、金ピカに輝いてるぞ!」
伊織「『我』を持つ者、無にして有……」
千早「その心は器に宿りけり……」
律子「中にありて、ひときわ輝くものに、『我』あり……!」
伊織「間違いないわ! あの仏像ね!」
P「よし、徹底的に調べるぞ!」
律子「ええ! きっと、何か仕掛けがあるはずです!」
千早「待っていてください、阿津さん! 伝説の弓、必ず探し出してみせますから!」 - 61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 21:12:22.01 ID:xvueY7rR0
- 15:25 010寺跡
律子「……あった!」
P「お!」
千早「本当なの? 律子!」
伊織「どこどこ? どこなのよ?」
律子「ここよ! 仏像の背中に、巧妙に隠されたボタンがあるわ!」
P「おお、さすがは律子だ! よく見つけたな!」
伊織「それじゃ、押してみるわね。えいっ!」
ポチッ パカッ
P「おわっ!? 仏像の腹の部分が開いたぞ!」
伊織「これって、隠し戸棚? 律子の予想通りじゃない!」
律子「うーん、ここまで筋書き通りとはね……。運がいいのか、何なのか……」
千早「みんな、見てちょうだい! これを!」 - 62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 21:15:16.99 ID:xvueY7rR0
- 伊織「あ! 中に、バイオリンの弓があるわ!」
P「全体が、うっすらと輝きを帯びてるぞ……」
律子「どうやら、ビンゴみたいね」
千早「ええ! 伝説の弓は、きっとコレよ!」
P「おっしゃああああああ! おめでとう、千早!」
伊織「やったじゃない、千早!」
律子「よかったわね、千早!」
千早「ありがとうプロデューサー! 水瀬さん! 律子!」
P「へえ……。これが、伝説の弓なのか……」
千早「本当に綺麗……。キズ一つ、ついてないわ」
律子「長い間、ずっとほったらかしにされてたはずなのに……」
伊織「さすが、伝説になるだけのことはあるわね!」 - 63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 21:18:17.45 ID:xvueY7rR0
- P「よし! 伝説のバイオリン弓、ゲットだぜ!」
伊織「結局全部、律子の推理は正解だったわけね。さっすがぁ!」
律子「ま、偶然に偶然が重なっただけ、なんだけど」
P「おいおい、そんなに謙遜するなって!」
律子「別に、謙遜なんかしてません。事実ですから」
P「いいや、偶然だけじゃない。律子が、知恵を振り絞って考えた結果だよ!」
律子「も、持ち上げたって、何も出ませんよ?」
P「ううむ。本心なんだけどなあ……」
千早「プロデューサー! 早く、阿津さんに弓を届けましょう!」
P「だな。何だかんだで、いい時間になってるし……」
伊織「きっと、待ちくたびれてるんじゃないかしら?」
律子「よし! 461音楽協会に急ぐわよ!」
千早「ええ!」 - 68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 22:25:44.64 ID:xvueY7rR0
- 16:00 461音楽協会
律子「ここが461音楽協会……」
P「名前の通り、壁が一面真っ白だな……」
千早「阿津さん、お待たせしました!」
伊織「伝説の弓、見つけてきてあげたわよ!」
シーン
P「あれ?」
律子「まだ、来てないのかしら?」
千早「きっと、演奏の準備に時間がかかってるのよ」
伊織「それならいいけど……」
P「いや……おかしいぞ」
律子「そうですね。私達がスタジオを出てから、結構な時間が経ったはず……」
千早「それは……確かに、そうだけど……」
律子「プロデューサー。受付で聞いてみませんか?」
P「ああ……そうするか」 - 69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 22:27:17.52 ID:xvueY7rR0
- P「すみませーん!」
受付嬢「はい?」
P「ここで待ち合わせをしてるんですが、女の人が来ませんでしたか?」
受付嬢「女の人ですか? いえ、来てませんけど……」
P「そうですか……失礼しました」
受付嬢「いえ……」
律子「うーん……」
伊織「どういうことなのかしら?」
千早「もしかしたら、他にも伝説の道具があって、それを取りに行ったのかも……」
律子「千早。さすがに、それはないと思うわ」
P「もし他にそんなものがあったとしたら、どうしてさっき言わなかったんだ?」
伊織「話さない理由なんて、何もないと思うわよ?」
千早「そう、よね……」 - 70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 22:30:21.92 ID:xvueY7rR0
- 律子「やっぱり、何かあったのかしら……?」
千早「…………」
伊織「あー、もう! 私達だけがここにいたって、話にならないわ!」
P「阿津さん、一体どうしちまったんだ……?」
律子「せっかく、伝説の弓が手に入ったのに……」
伊織「もう! どうすんのよ、この弓!」
千早「絶対に来るわ! あの人は、約束を破る人じゃないもの!」
伊織「でも、来ないじゃないのよ!」
千早「来るったら、来るの!」
律子「ちょっと二人とも! やめなさいよ、こんな所で!」
P「冷静になれ、千早! 伊織もだ!」
千早「くっ……」
伊織「フン!」 - 71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 22:33:13.75 ID:xvueY7rR0
- 受付嬢「あの……大丈夫ですか?」
P「す、すみません。ご迷惑をお掛けしまして……」
受付嬢「いえ、お気になさらないでください」
伊織「ねえ! 本当に誰も来てないの!?」
千早「岩男阿津さんっていう、女性なんですが!」
受付嬢「え!?」
律子「コラ! あんたたち、いい加減に――」
受付嬢「い、岩男阿津……さん……!?」
律子「……ん?」
P「もしかして、何か知ってるんですか?」
受付嬢「は、はい……。岩男阿津さんなら……」 - 72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 22:36:22.86 ID:xvueY7rR0
- 受付嬢「確か、一年ほど前……」
千早「一年……?」
受付嬢「ここに来て、預け物をしていったんです」
P「……それ、間違いありませんか?」
受付嬢「ええ。最後に来たのは、ちょうど一年前です」
伊織「一年も前ですって? そんなわけないわ」
律子「私達が別れたのは、ついさっきなんです」
千早「ここで会おうって、約束しましたから」
受付嬢「え!?」
千早「……?」
受付嬢「ええええええっ!」
千早「え、え?」
受付嬢「そんな、そんな馬鹿な!」 - 73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 22:39:14.66 ID:xvueY7rR0
- P「ど、どうしたんだ? この人、何をそんなに驚いてるんだ?」
伊織「何よ! 私達が嘘をついてるって言うの!」
千早「阿津さんは、ここで待ってるはずなんです!」
受付嬢「それは……でも……そんなはずは……何かの間違いじゃ……」
P「いえ、間違いなんかじゃありません! 絶対に!」
受付嬢「信じられない……」
律子「ちょっと! 一体、どういうことなんですか?」
受付嬢「だってですね……。阿津さんは……阿津さんは……」
律子「阿津さんは?」
受付嬢「もう、死んでるんですよ……」
- 74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 22:42:20.15 ID:xvueY7rR0
- P「…………」
律子「…………」
千早「…………」
伊織「…………」
千早「……え?」
伊織「な、な……?」
律子「死んでる……って?」
P「ちょ、ちょっと! 変なこと言うのはやめてくださいよ!」
受付嬢「本当に亡くなっているんです! 一年前に!」
P「え、え、ええええええーーっ!?」
伊織「何ですって……!?」
律子「そんな……」
千早「……嘘」 - 75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 22:45:18.13 ID:xvueY7rR0
- 千早「そんなの、嘘」
受付嬢「すみません。嘘ではないんです……」
千早「嘘です! 嘘って言ってください!」
受付嬢「……ごめんなさい」
千早「だって! だって私達、ついさっきまで一緒にいたんですよ!?」
受付嬢「…………」
千早「あの人、元気だった! 笑ってた! 冗談だって、言ってたんだから!」
伊織「千早……」
律子「あの……本当に、何かの間違いじゃないですか?」
P「そうだな。さっきまで一緒にいたのは、紛れもなく事実だし……」
千早「演奏の準備をするっていうから、一度別れただけなんです!」
伊織「そう……そうよ!」 - 76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 22:48:17.28 ID:xvueY7rR0
- 伊織「人違いとか、勘違いかもしれないじゃない!」
受付嬢「いえ、そんなはずはありません。だって……」
伊織「だって……何よ?」
受付嬢「岩男阿津さんって言えば、『旅のバイオリニスト・岩男阿津』しかいませんよ」
伊織「バ、バイオリニスト……ですって……?」
受付嬢「一年前、伝説のバイオリンの弓というものを探して、ここにやって来たんです」
P「で、伝説の……!?」
受付嬢「そういう資料はここより、図書館の方が揃っているとご案内したんですが……」
律子「……ちなみにその図書館、今はどうなってますか?」
受付嬢「確か今は……閉館して、何かのスタジオに生まれ変わったと聞いていますが」
律子「う……!」
P「それじゃ、やっぱり……」
千早「…………」 - 77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 22:51:42.49 ID:xvueY7rR0
- 伊織「ち、千早……!」
千早「…………」
伊織「ま、まあそんな人、世の中にはいくらでもいるわよね!」
P「…………」
伊織「たまたまよ、たまたま! 偶然よ、偶然!」
律子「伊織……」
伊織「全部偶然に決まってるわ! だから大丈夫よ、千早! ね?」
P「でも別人なら、これだけの事実が一致するはずが……」
律子「ええ、ですよね……」
千早「…………」
律子「あの阿津さんに、間違いないような――」
伊織「うるさいわね! アンタ達、それ以上言うんじゃないわよ!」
律子「あ……そ、そうね……」
P「すまん……」 - 78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 22:54:40.42 ID:xvueY7rR0
- 千早「……それで?」
受付嬢「はい?」
千早「あの人から預かった物というのは、何ですか?」
受付嬢「あ、はい。相棒って呼んでいた――」
千早「アヤという名の……バイオリン……」
受付嬢「はい……。どうして、それを?」
千早「わかりますよ……」
受付嬢「…………」
千早「わかるに、決まってるじゃないですか……」
伊織「千早……」
受付嬢「大切な用事があるから、少しの間だけ預かってほしい」
千早「大切な……用事……?」
受付嬢「ええ。そう、阿津さんは言っていました」 - 79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 22:57:31.94 ID:xvueY7rR0
- 受付嬢「阿津さん、このバイオリンは私自身とか、私そのものだとか……」
千早「…………」
受付嬢「私の魂が込められてるとか、おかしなことを言ってました」
律子「私達に話してくれた内容と……」
P「完全に一致してる……な」
千早「それじゃあ……」
受付嬢「……はい?」
千早「あの人は……あの人は、なんで死んだんですか?」
受付嬢「それは――」
伊織「やめなさいよっ!」
P「伊織……」 - 80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 23:00:29.24 ID:xvueY7rR0
- 伊織「もういいでしょ!? もういいわよね!」
千早「…………」
伊織「いい加減にしなさいよ! これ以上聞いて、どうする気なのよ!」
千早「…………」
伊織「私達の役目は、もう終わりよ! そうよね、律子!」
律子「え、ええ……そうね。そうだと思う……」
伊織「さあ、プロデューサー! とっとと帰るわよ!」
P「あ、ああ――」
千早「待って!」
P「千早……」
千早「お願いです! 最後まで聞かせてください!」 - 81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 23:03:17.69 ID:xvueY7rR0
- 伊織「で、でも! それじゃアンタが――」
千早「知りたいだけだから……」
律子「……ねえ、伊織。好きにさせてあげた方が、いいんじゃないかしら?」
P「ああ、千早を傷つけたくないっていうお前の気持ちも、よくわかるが……」
伊織「だけど……だけど!」
千早「お願いよ、水瀬さん……」
伊織「……ああ、もう! わかったわよ!」
千早「水瀬さん……」
伊織「確かに、私がどうこう言ってもしょうがないわよね。勝手にすればいいわ」
千早「……ありがとう」
受付嬢「……よろしいのですね?」
千早「はい……」 - 82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 23:06:13.74 ID:xvueY7rR0
- 千早「あの人の最期は……?」
受付嬢「楽器をここに預けた阿津さんは……」
千早「…………」
受付嬢「大切な用事がある、弓が見つかるかも、と言い残して――」
P「010寺に行ったんですか?」
受付嬢「……いいえ」
P「え?」
伊織「じゃあ、どこへ行ったのよ?」
受付嬢「阿津さんは、76湖へ向かわれました」
P「76湖へ……?」
受付嬢「はい。そこで、たまたま溺れている子供を助けようとして、ご自身も……」
P「そう……だったのか」
律子「弓の在処を、突き止められなかったのね……」
P「……かわいそうに」
千早「…………」 - 83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 23:09:12.37 ID:xvueY7rR0
- P「なあ、千早」
千早「……はい」
P「この伝説の弓、どうする?」
千早「……え?」
P「今回の一件を振り返ると、決定権は千早にある。俺はそう、思うんだが」
千早「私が……決めるんですか?」
P「ああ」
千早「でも……」
伊織「そうね。アンタが決めるべきだわ」
律子「私も同じ気持ちよ、千早」
P「千早が決めたことなら、誰も反対したりしないさ。だから、な?」
千早「……わかりました」 - 84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 23:13:07.90 ID:xvueY7rR0
- 千早「……すみません。あの人が預けたバイオリンは、まだここに?」
受付嬢「はい。確かに、保管してあります」
千早「あの人のお墓の場所は、ご存知ですか?」
受付嬢「調べれば、すぐにわかると思いますが」
千早「ありがとうございます。あの、プロデューサー……」
P「心は決まったか?」
千早「はい。埋葬してもらいます……」
P「……なるほどな」
伊織「本当にそれでいいのね? ちゃんと考えた?」
律子「後悔はしないわね?」
千早「うん、大丈夫……」 - 85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 23:15:17.40 ID:xvueY7rR0
- 千早「この弓も……バイオリンも……あの人の形見……」
伊織「…………」
千早「ううん、あの人自身だと思うから……」
伊織「……そうね。その通りだわ」
P「ああ。きっと阿津さん、喜んでるよ」
律子「それではこの弓とバイオリンを、阿津さんのお墓に埋葬してあげてください」
受付嬢「……そうですか。これが、阿津さんが探していた弓なんですね……」
P「くれぐれも、大切に取り扱ってください」
伊織「壊したりしたら、承知しないわよ!」
受付嬢「わかりました。細心の注意を払いますので、ご安心を」
千早「よろしくお願いします……」
律子「それじゃ、そろそろ行きましょうか……」
P「だな。帰ろう、みんな……」 - 86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 23:18:15.57 ID:xvueY7rR0
- 16:30 461音楽協会からの帰り道
千早「阿津さん……」
P「なあ千早、元気出せって!」
律子「千早がいつまでも落ち込んでたら、阿津さんもきっと悲しむわ!」
千早「…………」
伊織「……千早」
千早「…………」
伊織「私、知らなかったわ……」
千早「……何を?」
伊織「アンタって、女の人に恋するタイプだったのね!」
千早「いっ!?」
P「ぶっ!?」
律子「は?」 - 87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 23:21:30.72 ID:xvueY7rR0
- 千早「そ、そ、そんなわけないでしょ! いきなり何を言うの!?」
伊織「あら、違った? 今回の熱の入れようといい、怪しいもんだわ!」
千早「そ、そんな変な気持ちじゃないわ! 私はただ、あの人の力になりたくて――」
伊織「千早、顔が真っ赤になってるわよ? 別に、隠さなくてもいいじゃない!」
千早「だから本当に違うのよ! だ、だって私には――」
伊織「もう心に決めた男がいる! とか?」
千早「っ!?」
伊織「にひひっ!」
千早「み、水瀬さん! からかわないでちょうだい!」
伊織「きゃあ! 千早が怒ったー! 助けてー! きゃー!」
P「おわっ! ちょっと待て伊織! どこ行くんだよ!」
伊織「悔しかったら、捕まえてみなさーい! きゃーきゃー!」
千早「こら! 待ちなさい、水瀬さん!」
P「ち、千早まで! お、おい! おーい!」 - 88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 23:24:25.74 ID:xvueY7rR0
- P「二人とも、こんな所で追いかけっこしてる場合じゃないだろー!」
律子「いえ……プロデューサー。しばらく、好きにさせておきましょう」
P「いいのか?」
律子「ええ。きっと伊織は、あの子なりに気を遣ってるんですよ」
P「ああ、なるほど……。何だかんだで、根は優しいからなぁ……あいつ」
律子「……プロデューサー」
P「何だ?」
律子「正直、後味が悪いですね……」
P「ああ……。でも、俺達に与えられた役割は、果たせたんじゃないかな?」
律子「そう……ですよね」
P「少なくとも、阿津さんの願いは叶えられたと思う」
律子「これでもう、安らかに眠れますよね……?」
P「そうあってほしいと、心から願うよ……」 - 89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 23:27:19.76 ID:xvueY7rR0
- 律子「人間、いつ死ぬかはわからない……か」
P「よし! 俺も今この瞬間から、後悔のない人生を送るぞ! まずは手始めに!」
律子「ん? 手始めに……何です?」
P「さっき読み損ねた、『紳士的ボディタッチの心得』を読みにだな――」
律子「プ・ロ・デュ・ー・サー?」
P「……すいませんでした」
律子「本当にもう……やれやれ」
千早「水瀬さん! いい加減におとなしくしなさい!」
伊織「きゃーっ! 助けて律子、プロデューサー! 千早に襲われるぅ!」
千早「ひ、人聞きの悪いことを言わないで!」
P「おーい二人とも! 日が暮れるぞ! いい加減に戻ってこーい!」
律子「……ふふっ」
律子「私達の平和な毎日が、いつまでも続きますように……」
完 - 90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 23:28:20.64 ID:xvueY7rR0
- 以上になります
賛否両論のアークⅢですが、印象に残るイベントは数多くあったように思います
あと、無敵艦隊大好きです!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました! - 91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/18(火) 23:31:02.14 ID:RKPF6SkAo
- 乙乙

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