スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
コイン「スロット!中に入れるぞっ!」
-
20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 15:19:03.52 ID:0e3Nyh0y0
-
チャリン
コイン「……」
スロット「……」
コイン「……? なぜだ、なぜ回らない!?」
スロット「馬鹿ね、あなただけで私を回せると思ったの?」
スロット「私のようなスロットを回すなら、メダルを3枚入れなければならない……常識でしょう?」
スロット「あなた一枚じゃ満足できないの、私」
コイン「なん……だと……」
-
21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 15:22:35.17 ID:0e3Nyh0y0
-
スロット「それにあなた……うちの店のメダルじゃないわね?」
コイン「……」ギクッ
スロット「他店メダルか、メダルですらないのか知らないけれど」
スロット「たった一枚で私を回そうだなんて、世間知らずなお子様ね」
コイン「……っ!」カアア
-
23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 15:26:15.37 ID:0e3Nyh0y0
-
スロット「あ……」
コイン「……?」
チャリン チャリン
コイン「てっ、いてっ」カイン カイン
メダル1「あ、悪い」
メダル2「おいおい避けてろよ、入口で詰まってんじゃねーよ危ねえ」
ガシャコン
スロット「んほおおおっ、リール大回転! 回っちゃうのおおおっ!」
コイン「あ、ああ……」
-
26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 15:31:15.52 ID:0e3Nyh0y0
-
ボンッ ボンッ ボンッ
スロット「あひぃ……回転数、いち上がりまひたぁ……」
コイン「……」
ジャラ…
コイン「……?」
ジャラララララッ
コイン「いててててっ!?」ガシャシャシャシャ
スロット「んひぃっ! 追加コイン来たぁ! 限度枚数50枚まで来たぁ……!」
-
27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 15:37:03.69 ID:0e3Nyh0y0
-
スロット「レバー倒すの? 倒しちゃうの?」
スロット「いいわよ、回して! 早く早く!」
スロット「あっあっ、タバコなんて吸ってないで……ね? 早くレバー倒して?」
スロット「ねえ、焦らしちゃいやぁ……もうクレジットいっぱいなのぉ」
スロット「回して! 私のこと回してよぉ……!」
…ガシャコン
スロット「んおおおッ! 来た! 回転きたぁ! これからクレジット分回るのぉっ!」
スロット「リプレイ当ててっ! 図柄も揃えてぇ! もっともっと回転数上げてええぇっ!」
コイン「……」
-
28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 15:43:26.80 ID:0e3Nyh0y0
-
メダル1「おい、もうちょっと隅に寄れよ。まだ追加メダルくるぞ?」
メダル2「……あん? 何だコイツ、泣いてね?」
コイン「……っ、な、泣いてなんか……っ」グスッ
メダル2「え、何お前? メダルの分際でスロット回されるの悔しがってんの? 馬鹿じゃねーの?」
メダル2「俺らって使い捨ての玉だよ? 何夢見ちゃってんの、だっせえ!」
メダル2「しかも、あんな一回転ごとにイくビッチスロット相手に泣くとか……マジウケるわwww」
コイン「……っ! ……っ!」
メダル1「おい、涙拭けよ……」
-
29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 15:48:58.19 ID:0e3Nyh0y0
-
ジャラララララ
スロット「んひぃぃぃッ! 追加クレジットキタぁ……ッ! お腹いっぱいになりゅのおぉ……!」
メダル2「おっと」ヒョイ
コイン「……う、うづづ……っ」カイン カイン カイン
>イッテエ! コノヤロー、ミチフサイデンジャネーゾ! コンチキショウ、ブチコロガスゾ!
メダル1「あ、おい! だから隅に寄ってろって!」グイッ
コイン「……っ」グスッグスッ
-
30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 15:53:43.27 ID:0e3Nyh0y0
-
メダル1「なあ、製造されたばっかのかもしんないけどさ。元気出せって」
メダル1「俺らは一枚じゃほとんどの機械は回せないし、一度回せばたいがいはそれっきり」
メダル1「スロットは客にメダル入れられて回される。それが仕事で、生き方だ」
メダル1「それがパチスロの決まりなんだ、仕方ないんだよ」
コイン「……」グスグス
メダル2「……なあ、そいつさ何か俺らと違くね?」
-
32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 16:00:21.96 ID:0e3Nyh0y0
-
メダル1「え?」
メダル2「色も違うし、絵柄も違えじゃん」
メダル2「そいつ他店メダルじゃね?」
ザワッ…
>オイオイ、ヨソモノカヨ… イチマイダケ? ナメテンナ…
>ゴトカ? ヤッチマウカ? オ?
コイン「……う、あ」
メダル1「おい、みんな落ち着けって! 一枚だけの紛れ込みなんてよくあることだろ!?」
-
33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 16:05:14.58 ID:0e3Nyh0y0
-
>コノマエノヤツラカ? ショウコリモナク…
>オレラノシマアラシヤガッテ…デテケ…
ザワ… ザワ…
コイン「……!?」
>デテケ…ソウダ、デテケ!
>デテケ! デテケデテケ!
デーテーケ!! デーテーケ!! デーテーケ!! デーテーケ!! デーテーケ!! デーテーケ!!
コイン「ひっ」
メダル1「お、おい……!」
-
34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 16:09:33.73 ID:0e3Nyh0y0
-
ガタンッ
コイン「!?」ガクンッ
>ウオ!? ナンダナンダ!?
≪ピローン ピローン 店員さんを呼んでね! ピローン ピローン 店員さんを呼んでね!≫
スロット「んへぇ……も、お腹パンパンれしゅうぅ……」ビクンビクン
>ア、ヤベエ モウイッパイカ クルゾ!!
コイン「え? え?」
メダル1「おい何やってんだ! 早く奥の方に行くぞ!」グイッ
コイン「え、うん……」
ガパッ
-
35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 16:16:12.61 ID:0e3Nyh0y0
-
客「おうコラ、早くしろよ! こっちはもう200回は回してんだからよぉ」
店員「はいはい、ちょっと待っててくださいねー」グイッ
スロット「んおッ!? ホッパー出すのらめぇ!? 中身でちゃうっ、全部でちゃうのぉッ!」
スロット「んほおおおおおおおッ!!!」ジャラララララ ザババババ
コイン「うわわわわわ」ズルル…
メダル1「ほら、頑張って粘れ! 先に落ちたら他のメダルに押しつぶされるぞ!」
-
38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 16:22:21.70 ID:0e3Nyh0y0
-
ジャラララララ ザババババ
メダル1「……よし、跳べ!」
コイン「……んっ!」
チャリン チャリン
店員「はーい、お客様お待たせしましたー、ごゆっくりどうぞー」
客「ごゆっくりじゃねーよ……ったく」
メダル1「よしよし、どうにか一番上になれたな……」
コイン「……えっと、これから俺たちって」
メダル1「あ、その前に隅の方に寄っとこう。下のやつらにまた難癖つけられるぞ」
コイン「あ、うん」
-
40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 16:26:33.42 ID:0e3Nyh0y0
-
コイン「……」チラッ
スロット「ああ、お腹空っぽになっちゃったぁ……え? また回してくれるの?」
スロット「んひっ、新しいメダルきたッ! お腹にたまってくのわかる! わかるの!」
スロット「んぎぃっ、回ったぁ! エラー解消後最初の回転きたあ! もっともっと回してぇ! またお腹いっぱいにしてぇ!」
コイン「……」 ンホオオオオオオオオオ>
メダル1「……」
-
41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 16:30:29.40 ID:0e3Nyh0y0
-
メダル1「まあほら、元気出せよ。回収されたんだし、しばらくは休めるんだからさ」
コイン「……休める? これからどこに行くんだ?」
メダル1「もう着くよ……ほら、傾くぞ! 落ちないように粘れよ!」
コイン「え? あ、うん……!」ガシッ
ジャラララララ ザババババー
チャリン チャリン
-
42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 16:35:56.13 ID:0e3Nyh0y0
-
コイン「ん……暗い……何だここ、なんかじめじめして……」
メダル1「何って、洗浄機のタンクだよ。ほら、ちゃんと周り見てみろって」
コイン「え? う……っ!」
ザワ… ザワ… ザワ… ザワ… ザワ… ザワ… ザワ… ザワ… ザワ…
ザワ… ザワ… ザワ… ザワ… ザワ… ザワ… ザワ… ザワ…
ザワ… ザワ… ザワ… ザワ… ザワ… ザワ… ザワ… ザワ… ザワ…
ザワ… ザワ… ザワ… ザワ… ザワ… ザワ… ザワ… ザワ…
コイン「何だ、何だよ、ここ……!」
コイン(右も左も、下も奥も全部メダル……! メダルの山、沼、海……!)
コイン(万枚……? いや、十万……? 途方もない……! まるで廃棄場! 墓場! メダルの墓場……!)
-
43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 16:41:01.18 ID:0e3Nyh0y0
-
メダル1「……お前、本当に慣れてないんだな。どこの店のか知らないけどさ」
メダル1「最初のうちは落ち着かないかもしんないけどさ、慣れればいいとこだぜ? 下の方になりさえしなけりゃさ」ゴロン
コイン「……」ビクビク
メダル1「そう警戒すんなよ、ここの奴らに色や絵柄の違いでごちゃごちゃ言うのはめったにいない」
メダル1「最近ちょっとでかいゴトがあったからさ、みんなピリピリしてたんだよ。ちょっと羽伸ばせ、な?」
コイン「……」
コイン「……うん」
-
45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 16:46:29.48 ID:0e3Nyh0y0
-
老メダル「おお、メダル1じゃないか。帰ってきたんか」
メダル1「ああ、じっちゃんただいま。だいぶハマッてた台だったからさ。久々に戻れたよ」
コイン「……」
老メダル「ん? そっちは新入りかの?」
メダル1「ああ、どうも他店のみたいでさ」
コイン「……っ」ビクッ
老メダル「ああ、そう警戒せんでええ。とって食いやせんわい。タンクの中じゃみんな同じじゃ、ゆっくりしていけばいい」
コイン「……はい」
-
46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 16:51:55.21 ID:0e3Nyh0y0
-
ドヤドヤドヤ…
>オラ、ジャマダ!! オウ、ハタラクキネーンナラ ミチアケロヤ!!
メダル1「あ、移動が始まったな。おい、もうちょっと隅に」
メダル2「あれ? お前は戻らねーの? つか何、まだこんな童貞他店メダルの相手してんのかよ?」
コイン「う……」
メダル1「……ああ、俺は使い回されるよりタンクでのんびりしてる方が好きでさ。また気が向いたらな」
メダル2「へっ、爺くせー……そんなんじゃ錆びちまうよ? ま、いいけどさ。じゃーな」
ドヤドヤドヤ…
-
47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 16:55:44.13 ID:0e3Nyh0y0
-
老メダル「まったく、相変わらず落ち着かん集団じゃの……」
メダル1「ま、悪いやつらじゃないんだけどね。最近気が立ってんだ、多めに見てやってよ」
コイン「……あの」
メダル1「ん?」
コイン「あいつら……どこ行くの? 奥に行ったみたいだけど……」
メダル1「ああ……見に行ってみるか?」
コイン「……うん」
-
48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 17:01:22.85 ID:0e3Nyh0y0
-
ゴウーン ゴウーン ゴウーン ゴウーン
メダル1「あいつらはここを通ってったんだ。あんまり近付きすぎるなよ? 流されるから」
コイン「な……何だここ……」
コイン(でかいローラー……? うわ、一枚分の隙間もないのに、あんなにいっぱいのメダルが……)
>ギエーッ イッテエ!! オイ、オスンジャナ…ギャアアアーーーーーーッ ンギモッヂイイ!!
コイン(まるで処刑場……!! いや、それすら生ぬるい……あんな乱暴に表面削って、ひしめきあって……!)
-
50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 17:07:04.41 ID:0e3Nyh0y0
-
メダル1「痛そうだろ? あの先で洗浄されて、補充用のジョッキに入るんだ」
コイン「さっきのやつら、何で自分からこんなとこに……」
メダル1「……まあ、それがパチスロメダルの仕事だからさ」
メダル1「客に買われてスロット回す玉になったり、ホッパーに補充されて大当たりで出てきたり、こうやって回収されたら洗浄機を通って補充用に待機する」
メダル1「そういうふうにするのが俺たちなんだ」
メダル1「まあ、あいつらはエリート意識持ってるからさ。より使われるのがステータスなんだと」
-
49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 17:04:59.71 ID:232RbbqTO
-
パチスロにあまり詳しくなくてわからないのだが>>42からどういう場面なんだ?
-
52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 17:12:38.05 ID:0e3Nyh0y0
-
>>49
スロットがメダルいっぱいになって止まる
↓
店員がスロットを開けていっぱいになったメダルを回収(コインたち含む)
↓
メダル洗浄機のタンクに回収したメダルを運び、入れる
↓
タンクの中 ←コインたちはここ
↓
洗浄エリアを通って補充用のタンクへ ←メダル2たちはここ
こんな感じでわかるかな。
わかりづらくてごめん
-
54:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 17:15:10.26 ID:232RbbqTO
-
>>52
物はよく分からないけど流れは分かったよ
サンクス
-
55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 17:17:43.13 ID:0e3Nyh0y0
-
コイン「でも、こんなの続けてたら……」
メダル1「ああ。磨り減るし、傷はつくし、手垢まみれになる。メダルとして長生きはできないだろうね」
メダル1「だからああいうエリート志向のやつらは率先して行くけど、大半のやつらはタンクの中でのんびりしてるんだけどね」
コイン「……」
メダル1「……すごいショックって顔だな」
コイン「……うん」
メダル1「……」
メダル1「なあ、お前いったいどこから来たんだ?」
コイン「……俺は」
-
56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 17:25:22.61 ID:0e3Nyh0y0
-
≪十数年前・ゲームセンター≫
子供「おっしゃ、当たったー!」
チャリン
子供「ん? 何だこれ」
友達「んー? あ、この記念メダルってやつじゃね? 金色してるし」
子供「マジ? やっりー!」
――こうやって、俺のコイン人生はスタートした。
記念メダルとして製造されてから待ち続けた外の世界だった。
俺は自分が使い回される銀のメダルとは違う、メダルの中のエリート……選ばれた存在だと思っていた。
サイフの中にしまわれる俺を、銀のメダルたちが羨ましそうに見ているように思って、自分が誇らしかった。
-
58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 17:30:49.16 ID:0e3Nyh0y0
-
サイフの中には銀のメダルの他にも銅、穴あき、小さいのや大きいのと、色んなやつがいた。
そいつらはとっかえひっかえ出て行って、俺はあっという間に一番の古株になった。
特別だから大事にされている。
そう思っていた。だけど――
コイン「いてっ、いってーな……おい、新入り! どこに目ぇつけてんだよ?」
百円「え、あ、すみません……」
コイン「あ? 何だって? 声が小さくて聞こえねーな……ほら、腹から声出せよおい」
百円「あ、ちょっ……すみませんって! ごめんなさい……!」
十円「……」
-
59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 17:35:14.40 ID:0e3Nyh0y0
-
十円「……やめろよ」
コイン「あ?」
初めて俺に逆らったそいつは、汚らしい銅のメダルだった。
他の銅のやつとはちょっと違って、ふちがギザギザした変わったやつだった。
コイン「今お前、何か言った? なあ、何か言ったの? ねえ?」
十円「……やめろって言ったんだよ」
コイン「何だよ……少し古株だからっていい気になってんのか? 俺がいつからここにいると思ってんだ? お?」
十円「……」ハア
-
62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 17:40:51.21 ID:0e3Nyh0y0
-
コイン「……!? お前、今ため息ついたか? ついたろ!? ふざけんなよ、舐めやがって……!」
十円「ああ、ついたよ。だから何だってんだ」
コイン「こんの……!」
生まれて初めて味わう屈辱だった。
サイフに入ってくる中でも一番汚らしい銅のメダルに舐められて、完全に頭に血が上っていた。
コイン「痛い目みないとわかんねえみたいだな……自業自得だぞ? オラアッ!」グアッ
十円「……」
ギャリンッ
-
63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 17:45:29.60 ID:0e3Nyh0y0
-
コイン「ぐっ……!?」
コイン「てめ、何しやがっ……ん……? あ、ああ……!?」
コイン「う、あ!? 腹に、傷が……俺のピカピカの金ボディにでっかい引っかき傷が……!?」
何が起きたかわからなくて、ショックで頭がクラクラした。
記念メダルとして生まれ持った金色の体は選ばれた者の証だと思っていた。
自分を傷つけられるやつなんて、逆らうやつなんてこの世にいないと思っていた。
俺の世界はひっくり返った。
-
64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 17:53:23.27 ID:0e3Nyh0y0
-
コイン「お前……お前! なんてことしてくれやがったんだ!?」
コイン「俺の体はお前らなんかと違うんだぞ!? 金ピカの、選ばれた体なんだ!」
コイン「黒サビの浮いたきったねー体で調子に乗りやがってよ……! いったい何様のつもっ」
十円「……いい加減にしておけよ」グイッ
コイン「ひっ……!?」
十円「若造、お前はこのサイフの外の世界を知ってるか? ここに来て、出て行くやつらがどうしてここにいるのか知ってるのか?」
十円「お前がどうして一番古株なのか……どうして綺麗な体でいつまでもこの中に残ってるか、知ってるのか?」
コイン「何だよ!? 何言って……!」
-
65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 17:57:17.96 ID:0e3Nyh0y0
-
十円「お前が、何の価値もないからだ」
コイン「……」
コイン「……?」
コイン「……え? 何? 何言ってんの?」
コイン「いや、意味わかんねえよ。俺に価値がないって?」
コイン「ふざけんなよ! 俺は金ピカの記念メダルだぞ!?」
コイン「選ばれたメダルなんだ! 一番綺麗で、一番喜ばれた、特別なメダルなんだ!」
十円「……そいつは違う」
-
67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 18:05:27.70 ID:0e3Nyh0y0
-
十円「いいか、俺たちは硬貨だ。それぞれに決まった価値があって、相応の物やサービスと交換されるのが仕事だ」
十円「俺は十円。俺一人なら……まあ俺たちくらいの大きさのチョコや、棒状のスナック菓子くらいなら買えるだろう」
十円「お前が絡んでた銀色のあいつは百円。あいつには俺の十倍の価値がある」
十円「お前にはどれだけの価値があると思う?」
コイン「はあ……? よくわかんねーことをゴタゴタと……」
コイン「それはほら、アレだ。あんな大量生産の銀色でお前の十倍だろ? そりゃお前、俺ならその十倍、いや百倍はあるに決まって……」
十円「0円だ」
コイン「……え?」
十円「お前の価値だよ。0円だ。お前が百枚集まっても、あいつにも、俺の価値にすらならない」
十円「硬貨であって硬貨じゃない。それがお前だ」
-
69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 18:11:12.22 ID:0e3Nyh0y0
-
コイン「え……何だよそれ、何言って」
十円「ここから出て行くやつらが何をしてるのか、気になったことはなかったのか? みんな何かと交換されてるんだ」
十円「お前がずっとここにいるのは、お前が交換できないからだ! 使えないからだ!」
コイン「やめろやめろやめろぉ!!!」
十円「……」
コイン「デタラメ言ってんじゃねえよ……見ろよこの金ピカボディ……こんなメダル、めったにいないんだ」
コイン「だって喜んだじゃねえか! 大事にサイフに入れたじゃねえかよ! それは俺が金色の、特別なやつだからで……!」
十円「特別なんかじゃない! 自分の腹をよく見てみろ!」
コイン「ああ!? 腹が何だって……え?」
-
70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 18:15:14.71 ID:0e3Nyh0y0
-
見た。
自慢の金ピカの体に、生まれて初めてついた引っかき傷。
そこから覗いた、俺の体の色。それは。
コイン「え……何で。俺、銀……?」
十円「……メッキだ。お前は金なんかじゃない」
十円「お前が言う他のメダルと材質は何も変わらない。綺麗に見えるように、外っ面をカバーしただけだ」
コイン「……嘘……だろ?」
-
72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 18:20:00.49 ID:0e3Nyh0y0
-
コイン「なあ、おい……変な冗談やめろよ」
ザワ…
コイン「俺、特別なはずだろ? なんたって記念だぜ? 記念……」
ザワ…
コイン「そんな、価値ないとかさ……嘘だろ? なあ、嘘って言えよ? 言ってくれよ? ねえ?」
十円「……」
ザワ… ザワ…
コイン「あ……」
百円「……」
コイン「やめろ、見るなよ……」
五円「……」
一円「……」
五百円「……」
コイン「見るなってば! やめて……やめてくれ……!」
コイン「うああああああああああああああああああ……!」
-
74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 18:26:57.56 ID:0e3Nyh0y0
-
それからは、それまでと間逆の人生だった。
俺以外のメダルがみんな入れ替わっても、みんな俺の方を見て笑っているような気がする。
金メッキが剥げた俺の腹を見て、馬鹿にしてるような気がする……
サイフの隅で縮こまって、裏返しになって腹を隠して、ずっとそうしていた。
目まぐるしく周りのメダルたちは入れ替わっていく。
なぜかあの十円だけがいつまでもサイフの中に残っていて、俺はそのせいで余計に動けなかった。
そのうち、サイフ自体がなかなか持ち歩かれなくなって、メダルの出入りもなくなった。
-
75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 18:29:44.83 ID:N2XdoAA20
-
財布はマジックテープ式かな
-
76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 18:32:11.68 ID:0e3Nyh0y0
-
それから長い時間が経って……
男「あークソ、サイフ落とすとかついてねー」
男「クッソ、どっかに予備でもなかったけか……ん?」
男「お……これ、昔使ってた小銭入れじゃんか」チャリチャリ
男「んー……まあ、しばらくはこれでいいか」
男「うし、そんじゃコンビニで下ろして、明日は朝一で一発打ちに行くべ」
-
77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 18:42:00.91 ID:0e3Nyh0y0
-
久々に感じる、懐かしい振動だった。
周りのメダルたちがざわつくのがわかった。
俺も少しだけなんだか嬉しくなったけれど、全体的に黒くくすんできた体と、一層黒ずんだ腹の傷を見てすぐに萎えた。
どうせ俺がここから出ることはない。すっかり諦めていた。その時だった。
ベリベリ…
「んほおぉーーーーッ! 回る! 回っちゃうぅ……!」
懐かしい外の光と一緒に、初めての声を聞いたんだ。
-
78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 18:48:26.93 ID:N2XdoAA20
-
マジックテープになってるwww
-
79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 18:49:30.22 ID:SGtxUuCM0
-
コイン「……!?」
ジャラララララ ガシャコンッ ンホォーーーーッ ボンッ ボンッ ボンッ
たまらずサイフから顔を出した俺の目に飛び込んで来たのは、あの時、初めてで唯一外の世界を見た時のよく似た光景。
山ほどの銀色のメダルが台に吸い込まれ、吐き出され、巡っていく。
そして。
スロット「んぎひぃーーッ! せんかい! 本日1000回転目ぇ! しゅっごい回った! 回っちゃったのおぉーーッツ
!」
あの時にはいなかった、彼女たちを見た。
-
80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 18:52:43.30 ID:SGtxUuCM0
-
ジャラララララ ガシャコンッ ンホォーーーーッ ボンッ ボンッ ボンッ
たくさんのメダルが一気に流し込まれ、その度に色っぽい、なんとも言えない声が響きわたる。
体が痺れるくらいに震えた。
ここだ。
俺の仕事場は、生き場所はここに違いない。
そう思った。思わずにはいられなかった。
-
81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 18:59:39.70 ID:SGtxUuCM0
-
コイン「んっ、くっ! んおお……!」
十円「おい、何をしてる?」
コイン「決まってるだろ!? ここから出るんだ! ここが俺の使いどころだから!」
十円「……やめろ、ここもお前の仕事場じゃない。お前とここのやつらは違う」
コイン「うるさい! ここは違う……ほら、見えるだろ? ここのやつらは銀色だけど、百円でも五十円でも五百円でもねえ!」
コイン「ここが俺の場所だ! お前ら硬貨とは違う、メダルの場所だ!」
コイン「このために生まれたんだ俺は……それで、あの銀のやつらがいっぱい入ってくあの子らを、俺がヒイヒイ言わせる!」
コイン「俺はあいつら何枚分だ? 何回あの子らを回してやれるんだ……!?」
-
82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 19:04:05.28 ID:SGtxUuCM0
-
十円「お前、まだそんな……!」
コイン「おっと! また説教すんのか? お前は0円だって……百枚集まっても役に立たないって!」
コイン「そこで黙って見てろ! ここじゃ価値がないのはお前らの方だ!」
コイン「今から俺の、本当の価値を見せてや……うわっ」ズルッ
コイン「あっ? あーーーーーーーーーーーっ」ヒューーーーーーーン
チャリーン!! コロコロコロ… リリリリン…
コイン「痛え……ああ、くそ……おい! 誰か俺を拾え! 拾えよ! 俺なら一枚で何回でも回してやるぞ! 俺を使え!」
コイン「早く! 試してみろよ! お前ら、早くーーーーッ!」
-
84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 19:10:54.30 ID:SGtxUuCM0
-
客「……ん?」ヒョイ
客「何だこりゃ、ここのメダルじゃねーな……」
客「……一枚だけなら気付かなかったってとぼけりゃセーフだろ。1クレジットにでもなりゃ儲けもんだな」
コイン(来た! バッカヤロー、選ばれたメダルの俺を拾っといて、何言ってやがる!)
コイン(いい思いさせてやるよ……俺を使いさえすれば回し放題さ! そうに決まってる!)
客「……おし、誰も見てねーな」
コイン「……」ゴクッ
スロット「……ん?」
コイン「スロット!中に入れるぞっ!」
コイン「それでそれで、ヒイヒイ言うくらいに回し狂わせてやる! 覚悟しろよ……うへへへへへ!」
スロット「はあ?」
-
85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 19:14:52.86 ID:SGtxUuCM0
-
チャリン
コイン「いてっ」カシャ
コイン(よし、入った! さあ回れ! 回り狂え!)
スロット「……」
コイン「……」
コイン「……?」
コイン(あれ? どうしたんだ? 何で回んないんだよ、おかしいだろ?)
コイン(え、嘘。嘘だろ、オイ。まさか、まさか)
コイン「なぜだ、なぜ回らない!?」
スロット「馬鹿ね、あなただけで私を回せると思ったの?」
――――!!!
-
87:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 19:24:06.53 ID:SGtxUuCM0
-
コイン「あとは、見ての通りだよ……」
メダル1「……」
コイン「よくわかった。身に染みたよ……俺は特別なんかじゃ、選ばれたメダルなんかじゃなかった」
コイン「使われてこそ価値があるんだよな。あいつらみたいに、痛い思いして、身を削って、手垢にまみれて……それが働くってことなんだろ?」
コイン「わかった。わかったんだよ……だけど、俺は0円で」
コイン「1クレジットだけど、ここじゃよそ者で……!」
コイン「俺、何なんだ……本当に、俺に価値ってないのかよ……!」
コイン「メッキって何だ! 記念メダルって何なんだよ!?」
コイン「俺……何のために生まれてきたんだよぉ……!」
-
88:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 19:31:56.83 ID:SGtxUuCM0
-
メダル1「……」
メダル1「……わかんないけどさ」
メダル1「俺、自分のこと特別とか思ったことないし、頭もよくないから、何て言っていいかわかんないけどさ」
メダル1「あんまりそういうの、気にすんなよ……すぐには無理かもしんないけど」
メダル1「いいじゃん、他とはちょっと違う1クレジットでさ。他と違うデザインって、見分けもつかない俺らからしたらちょっと羨ましいよ?」
コイン「え……」
メダル1「切り替えるの、時間かかるかもしんないけどさ。ゆっくり休んで、色々話して忘れようよ」
メダル1「一枚くらい違うメダルが混じっててもさ、気にしない人は気にしないから……な?」
コイン「あ……」
-
90:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 19:38:44.10 ID:SGtxUuCM0
-
ガパッ ガシャッ… ザララララ…!!
コイン「……!?」ガクンッ
メダル1「う、わ……!? 何だ!? もう閉店時間もとっくに過ぎてんじゃ……!?」
老メダル「……いかん!」
メダル1「うわ、じっちゃん!? 何の騒ぎだ、これ!?」
老メダル「今日も売り上げ異常が出たらしい……ゴトチェックが始まる……!」
メダル1「え……それで、なんでタンクの中のまで、こんな一気に掻き出して……」
老メダル「タイミングが悪かったんじゃ……この前持ち込みゴトがあったばかりじゃから!」
老メダル「台の中だけじゃない、ストックのメダルまで、夜通しでチェックするつもりなんじゃあ……!」
老メダル「何とかして、何とかして見つからないようにせんと! あんたゴミ箱行きじゃぞい!」
コイン「えっ……!?」
-
91:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 19:41:20.22 ID:cVbqhJRA0
-
コインやばいぞ
-
92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 19:44:44.82 ID:SGtxUuCM0
-
メダル1「駄目だ! 掻き出すペースが速すぎる! このままじゃ流れに逆らえない……!」
老メダル「凹みじゃあ! でっぱりでもいい! どこか、手の届かない場所に引っかかるんじゃ!」
コイン「そんな……どこに、そんな場所……!」
コイン「あ……!」
メダル1「あ、おい!? そっちは洗浄機だぞ!?」
コイン(大丈夫……痛いだろうけど、あのローラーになら引っかかっていられるはずだ……!)グイッ
>ヨソモノダ タテンメダルダ
コイン「……!?」
-
94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 19:52:20.98 ID:SGtxUuCM0
-
メダルA「よそ者が……こんな所で隠れようとしやがるのか」
コイン(しまっ……ローラーの中、よそ者嫌いのエリートで、いっぱい……!)
>ナニ、ヨソモノ? アア、ヨソモノダ ヨソモノダト ヨソモノハデテケ ゴミバコイキダ メダルノツラヨゴシメ
デテケ! デテケデテケ! デテケデテケデテケ!!!
デーテーケ!! デーテーケ!! デーテーケ!! デーテーケ!! デーテーケ!! デーテーケ!!
コイン「や、やめろよ! うわ、押すな……! お願いだから、やだ、ゴミ箱なんて……!」ギュウギュウ
コイン「あっ、あっ、あっ……!?」ズル…ジャラララララ
メダル「掴まれ!」ガシッ
老メダル「むぐっ……駄目じゃ、止まらん……!」
三枚「「「うわあああああーーーー!!!」」」
チャリン チャリン チャリン
-
96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 19:58:41.95 ID:SGtxUuCM0
-
店員「あーあ……くそかったりー」
店員「どーせ残業代も出ねーのによ、なんでこんな所までチェックしなきゃなんねーんだよ」ジャラジャラ
店員「決めたんならてめーでやれよ、てめーでよ……データとばっか睨めっこしやがって……」ジャラジャラ
コイン「……! ……!」
メダル1(落ち着け! まだ運がいいぞ、あいつかなりいい加減な店員だ!)
メダル1(いいか、そーっと、できるだけ俺とじっちゃんにぴったり重なれ! 間に挟まってればたぶんそのまま見落とす!)
コイン(う、うん……!)
-
97:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 20:05:57.66 ID:SGtxUuCM0
-
店員「ふわー……ねみぃ……早く終わんねーかな……」ジャララ…
メダル1(いいぞ、だいぶ手つきが雑だ……これならいける……)
ズルッ
メダル1「!?」
メダルA「隠れようたってそうはいかねーぞ、よそ者が……!」
メダル1「てめ……! あとで文句は聞いてやるから……! 離せ、うあ」ズルル…
メダル1「うああーーーーッ! コイン! じっちゃん!」チャリンッ
店員「ん? あ、他店メダル重なってやがったか……」
コイン「……!!!」
-
100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 20:13:14.21 ID:SGtxUuCM0
-
店員「やれやれ、ん?」ヒョイ
店員「何だこれ……くっついて離れねー……」グイグイ
老メダル(むぐぐぐぐ……!)ギュウウ
コイン(じいさん……!?)
店員「くっそ、何か接着剤でも挟んでんのか? 全然離れね……!」グググ
老メダル(うぐ、お、おおおお!)ギュウウ!!
コイン(じいさん、もういいよ! もう仕方ない……! もうばれちゃったから……これ以上ごまかせないよ!)
老メダル「やかましいわ小僧!」クワッ
コイン「っ!?」
老メダル(どうせワシはもう働くつもりもなかった、タンクの隅に転がってるだけのゴミメダル……!)
老メダル(メダル1のやつがあんなに必死で守ろうとしとったんじゃ! 残りカスの根性、今使わずしていつ使う……!?)
コイン(じいさん……)
-
102:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 20:16:21.79 ID:SGtxUuCM0
-
店員「~~~~~~!」グググ
店員「ぶはっ……! 駄目だこりゃ、仕方ねー……」
老メダル(ふ、ふふ……勝ったぞ……)プルプル
店員「くっついてたら使えねーし……このまま捨てちまおう」
二枚「「!?」」
-
103:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 20:19:56.41 ID:SGtxUuCM0
-
店員「……」スクッ テクテク
老メダル(ぐ、これじゃあ、離しても同じこと……万事休すか……!)
コイン(じいさん……ありがとう。いいよ、離して)
老メダル(!!)
コイン(このままじゃ関係ないじいさんまで捨てられちゃうよ……じいさんはちゃんとした、この店のメダルなんだから)
コイン(最後に、優しくしてもらえて……嬉しかったからさ)
老メダル(……)
店員「はい、ポイっと」ポイ
-
104:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 20:22:07.17 ID:KfqUDFDb0
-
コイン…
-
105:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 20:29:28.48 ID:SGtxUuCM0
-
ヒューーーーーーーン
コイン(ああ、臭えな……しかも、燃えるゴミに投げやがったよ)
コイン(仕方ないか……俺なんて、何の価値もなかったんだ。価値がないってことは、ゴミだもんな)
コイン(ああ、初めて外に出たときが懐かしい……)
コイン(俺、どこで間違えちゃったんだろうな……)
カインッ!!
コイン「――えっ」
老メダル「……ぐっどらっくじゃ、小僧」
-
107:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 20:32:59.92 ID:SGtxUuCM0
-
投げ込まれ、ゴミ箱に入るまでの空中で、俺の体は弾き飛ばされていた。
ゆっくり、ゆっくり、俺の体は空中で回転して、風を切った。
このままいったら、俺の体は床に落ちる。
それで俺を弾き飛ばしたじいさんは、真っ黒に口を開いたゴミ箱の中に、ゆっくり、ゆっくり、飲み込まれていった。
コイン「じいさーーーーーーーん!!!」
チャリーン!! コロコロコロ… リリリリン…
-
108:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 20:36:41.79 ID:SGtxUuCM0
-
店員「ん? あれ? 外したかな……?」
店員「おっかしーな……そんなわけねーんだけど……」キョロキョロ
店員「ま、いーや。落ちてても明日、朝の掃除で拾われるだろ……あーあ、続き続きっと……」テクテク…
コイン「……」
老メダル『……ぐっどらっくじゃ、小僧』
コイン「じいさん……なんで……なんで、俺なんかの代わりに……!」
-
110:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 20:40:04.08 ID:SGtxUuCM0
-
>オーーーーーーーーーイ
コイン「……!?」
メダル1「み、見つけた! 無事だったんだな、よかった……!」コロコロコロ
コイン「あんた、どうして……」
メダル1「あそこまでやったんだ、どの道他のメダルに目つけられちゃって、居心地悪いったらないよ」
メダル1「それより、お前一枚か? じいさんは……?」
コイン「……」
メダル1「……そっか」
-
112:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 20:43:54.35 ID:SGtxUuCM0
-
メダル1「最後にじっちゃん、何か言ってたか?」
コイン「……」
コイン「ぐっどらっくじゃ、小僧……だって」
メダル1「そっか、そう言ってたか……」
メダル1「コイン、この店を出よう」
コイン「えっ」
-
113:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 20:48:02.94 ID:SGtxUuCM0
-
メダル1「今じゃこの店、他店メダルに相当な警戒態勢だ。もうここにはいられないよ」
コイン「いや、でも、あんたは別に……」
メダル1「お前がいられないだろ! ほら、見つかる前に立て! 立って転がれ!」
コイン「……」
コイン「なんでだよ……なんで、あんたもじいさんも、俺なんかのためにこんなにしてくれるんだよ……わけわかんねえよ……!」
メダル1「じっちゃんが『ぐっどらっく』って言ったんだろ!?」
コイン「……う、うん」
-
114:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 20:53:21.62 ID:SGtxUuCM0
-
メダル1「じっちゃんのぐっどらっくは、いつも俺を送り出してくれた言葉だ」
メダル1「俺たちパチスロのメダルは、汚れて、擦り切れて、傷ついて……いつ捨てられるかわかったもんじゃない」
メダル1「それにパクられたり、落としてそのまんまなんてのも日常茶飯事だ」
メダル1「でも……運がよかったら、巡り巡って必ずあのタンクの中に戻ってくる。また会える」
メダル1「だから幸運を祈る……って、俺がまだ新品だった頃、じっちゃんが言ってくれたんだ」
メダル1「もう俺もじっちゃんも忘れてて、ずっと使ってなかった言葉だったけどさ」
コイン「……」
-
115:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 21:01:02.35 ID:SGtxUuCM0
-
メダル1「俺もじっちゃんも、薄汚れたカビ臭いタンクの隅っこで、毎日毎日同じように過ごしてた」
メダル1「俺らは何の代わり映えもメダルだから、何も変わったことはない……疑問も、不満も持ったことなんてなかった」
メダル1「でもさ、お前が悔しがって、泣きわめいて、落ち込んで……思ったんだよ!」
メダル1「こいつを笑わせてみたい……俺も落ち込んだり、泣きわめいたり、そんで腹の底から笑いたいって!」
メダル1「じっちゃんだって、きっとそうだ!」
メダル1「いいじゃねーか、価値なんてどうだって! 0円でも1クレでも、メッキでも他店メダルでも何でもいい!」
メダル1「メダルやコインが夢見て何が悪いってんだよ!」
メダル1「さあ立って! 転がって! ここを出て! どこまでも行こう! コイン!!!」
-
118:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 21:04:45.13 ID:SGtxUuCM0
-
コイン「……」
コイン「……!」ググ…!
コイン「……!!」チャリ、コロ…
コイン「……うん、いいよ」
コイン「ありがとう……俺、こんなに嬉しいの初めてだよ」
コイン「もう、価値がどうとか、そういうのはどうでもいい」
コイン「じいさんの分まで、行こう! 転がろう!」コロコロ!!!
-
119:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 21:05:26.75 ID:n/oyPMpo0
-
泣いた
-
120:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 21:07:18.18 ID:jo4vKmIW0
-
いい話だなー
-
121:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 21:09:02.53 ID:SGtxUuCM0
-
それから、俺とメダル1は転がって、転がって、転がった。
店員の靴のかかとに必死になってくっついて、見つからないように店を出て。
初めて見るアスファルトの上、たまに砂とかじゃり、土の上とか水たまりの中だって。
早朝の冷たい空気の中も、照り返しで表面がじりじりする日差しの中も、塗れて滑る雨の日だって、転がって転がりぬいた。
それで――
-
122:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 21:13:09.18 ID:SGtxUuCM0
-
メダル1「いやあ、磨り減った磨り減った……もう転がれないなあ」
コイン「うん……疲れたな」
メダル1「色んなところ転がったなあ……たぶん、ギネス級に転がったメダルとコインだ俺たち」
コイン「うん……ドブに落ちそうになった時は焦ったなあ」
メダル1「カラスにつっつかれたり、猫に弄られたりもしたっけ」
コイン「どうする? まだ転がる?」
メダル1「ああ、いや……今はいいや。しばらくのんびりしよう……疲れちゃったから」
コイン「うん……」
-
124:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 21:18:31.77 ID:SGtxUuCM0
-
俺たちは表面も側面も傷だらけで、ほこりやら砂やら泥に塗れていた。
俺のメッキなんてもう全部剥げて、すっかりメダル1と同じ銀色。
いや、二枚とももうくすみきって真っ黒だった。
笑って、泣いて、転がって……
たぶん本当は店を出てからそんなに経ってないんだろうけれど、サイフの中で縮こまってた時よりも長い時間そうしていた気がする。
幸せってやつだ。そう思う。
……でも、どこかで。
メダルとしてもう一度だけ、使ってほしいなんて思ったりして……贅沢だな。うん。
チャリーン!! コロコロコロ… リリリリン…
-
125:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 21:20:54.99 ID:SGtxUuCM0
-
中年「あ、あれ? ちゃんとしまっといたと思ってたけどなあ、十円落ちちゃった……ん?」
中年「これ、きったないけど……あの店のメダルだな」
中年「これもメダルだ……洗えばなんとかいけるんじゃね? ラッキー」
二枚「「えっ」」
-
127:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 21:24:11.30 ID:SGtxUuCM0
-
メダル1「……」
コイン「……」
メダル1「物好きもいるもんだな……まさか、拾われるなんて」
コイン「うん……」
十円「変人だからな、この男は」
コイン「へえ……え? えっ!?」
十円「久しぶりだな、若造。もしかしたらと思ったが……随分様変わりしたじゃないか」
-
128:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 21:25:31.20 ID:KfqUDFDb0
-
キザ10さんキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!
-
129:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 21:28:40.65 ID:SGtxUuCM0
-
コイン「え、なんで……なんであんた……」
十円「なに、あの後俺もサイフから出たのよ。落ちた先が他の客の足下で、お前のことは見失ったがね」
十円「自慢の金ピカも全部剥げて、今度は土とサビのメッキかい」
十円「ああ、あの時よりもずっといい格好だ。ずっといい」
コイン「……」
メダル1「あんたが、コインの話してた十円か……ん、んん!?」
メダル1「あ、あんたまさか……!?」
-
131:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 21:35:40.83 ID:SGtxUuCM0
-
コイン「何、どうしたんだ?」
メダル1「この十円、ただの十円じゃないぞ……ギザ十、しかも昭和33年製造だ……!」
十円「い、いやに詳しいじゃないか」
メダル1「たまたま打ちに来た客がそんなことを話してて……」
コイン「何それ、すごいの?」
メダル「凄いなんてもんじゃないぞ! 数ある十円玉の中でも最も価値が高く、その値段一枚70円!」
メダル1「状態のいいものはオークションで12,000円、コレクターの間では25,000円の値段がついたことさえあるという……!」
コイン「えええええええ」
十円「本当に詳しいな……まあ、俺は見ての通りの状態の悪さだから、たいした値打ちはないがね」
-
132:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 21:42:31.06 ID:SGtxUuCM0
-
コイン「はは……そんなの相手に威張り散らしてたんだ、俺……」
十円「過ぎたことだ。現に前の持ち主は気付いていなかった。どうもこの男はわかったらしく、肌身離さず持ち歩かれているがね」
メダル1「硬貨マニア? まあ、そうでもなけりゃ俺たちなんか拾わないよな」
コイン「よかったな、メダル1……また使ってもらえるよ」
メダル1「ああ、うん……でもな。じっちゃんもいないし、今さらどの面下げてって感じだけど……」
十円「なに、安心しろ。あの店に戻ることはない」
二枚「「えっ」」
十円「言ったろう、この男は変人だと。この男、自宅にあるものを置いていてな……」
-
135:携帯から:2011/11/01(火) 21:54:26.73 ID:+2YumdBhO
-
ラスト2レス、まさかのさるさん。
しかもどうしても外せない用事が。
もう書き上がってて、ポチるだけなのに。
後生です。どうか、どうか30分だけ保守をお願いします…!
-
136:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 21:55:50.44 ID:jo4vKmIW0
-
おおわかった!
-
137:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 22:06:38.62 ID:KfqUDFDb0
-
せうがないな
-
138:ありがとう……俺、こんなに嬉しいの初めてだよ:2011/11/01(火) 22:12:19.17 ID:SGtxUuCM0
-
中年「よしよし、綺麗になったな」キュッキュッ
中年「さてさて、新品の立ち上げ立ち上げっと……」
メダル1「はは……綺麗な銀色になったじゃんか」
コイン「メダル1だって……案外原型保ってたな」
メダル1「それにしても、本当に運がよかった……幸せ者だよ、俺たちは」
コイン「うん……まさか、俺も使ってもらえるなんてな」
ヴーーーーーン
中年「おほっ、ついたついた!」
中古スロット「ん……あら、ここは……?」
-
139:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 22:16:13.69 ID:SGtxUuCM0
-
ヒョイ
コイン「あっ……」
メダル1「お、記念すべき最初の一枚だな……ぐっどらっく!」
コイン「……ああ、行ってきます!」
中古スロット「あら……まさか引退してまた回されるなんて、私も幸せ者ねえ……久々だから優しくしてね?」
コイン「……ああ、よろしく」
コイン「スロット! 中に入れるぞっ!」
チャリン ガシャコンッ
中古スロット「おっほおおおおぉぉぉぉーーーーーーーッ!!!」
≪おしまい≫
-
140:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 22:17:01.31 ID:ITcSbKY70
-
お疲れ様
いいSSだったぬ
-
141:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 22:17:09.17 ID:Si/IqepG0
-
乙!
おもしろかった!
-
143:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 22:19:26.45 ID:DdSjraKS0
-
思わず全部読んでしまったわ
これから少しコインを大切にしようかな
-
144:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 22:19:31.52 ID:jo4vKmIW0
-
乙!まさかこんなスレになるとはおもわなんだ
-
145:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 22:20:08.86 ID:N2XdoAA20
-
乙でした!!
面白かった
-
146:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 22:20:09.12 ID:SGtxUuCM0
-
最後の保守、本当にありがとうございました。
俺はパチスロでデロデロなNTRを書きたかっただけなのに、いつの間にかメダルでトイストーリーをやってた。
どうしてこうなったのか皆目見当がつかない。
たぶん最近見た映画の影響でしょう。
この後のスレは濃厚なホモスレ、
もしくは濃厚なパチスロスレ、
あるいは濃厚なNTRスレとして、引き継きお楽しみください。
ぐっどらっく
-
148: 【大吉】 :2011/11/01(火) 22:26:46.13 ID:qTYNN6A90
-
乙
寝る前にいいのが見れてよかったぜ
-
149:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 22:27:41.86 ID:SGtxUuCM0
-
もっと面白い、ちょっと欝っぽい青春ものを見たい方は、お近くのTSUTAYAとかゲオとかで、
「SRサイタマノラッパー」(2もあります)
を借りて見てください。面白いです。

「オリジナル」カテゴリの記事
-
- 母「娘が母子相姦もののエロ本隠し持ってた……」
- 天使「新しい天使作ろうぜwwwエルをつければそれっぽくなんだろwwwww」
- 妹「お兄ちゃんのオ○ニー鑑賞券だよ~」妹友「!?」
- ガリガリくんの棒を尿道に突っ込んだら抜けなくなった話
- 牛「牛丼で」豚「カツ丼頼むぜ」ニワトリ「親子丼ちょーだい」
- 百合少女「お正月だし安価で神社の巫女さんを堕としてみる。」
- 医者「ガンです…チ○コガンですね、残念です…」 俺「えっ…」
- 男「いただきまーす」 宇宙人「・・・」
- 新大学生「私服選びどうしようかなぁ、マネキン買いしよ」
- 子供「サンタさん来るかな?」
- ナース騎士「くっ、コール押せ!!」
- 看守♀「今日もちゃーんと遊んであげますね~」囚人♂「うぅ…」
- 不良「そろそろお母さんのことお袋って呼ばないとマズイよなぁ」
- 男「入社五年目、無遅刻無欠勤の俺が有給休暇を取ることにした」
- 社長「おら!休めッ!休めッ!」女社員「嫌ァアッ!?」
コメントする
全ランキングを表示