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【カレイドスター】そら「今夜の すごい 相手」
- 1 : ◆/BueNLs5lw 2015/01/04(日) 20:17:28.12 ID:Eb81FKCZ0
- そらとレイラさん 百合 エロ 書きためなし
いくとこまでいく予定ですのであしからず
オレンジの照明へ吸い込まれるように彼女は飛んでいた。
飛ぶ、という表現が人間に適しているかは分からないが、
彼女の演技を見た者ならば、一度は錯覚する。
そらの背中にある――翼を。
「レイラさん!」
上空から舞い降りてくる少女。3回宙返りした後、マットの上に見事なバランスで着地した。
はっとして、私は声の方を見やった。
「そら、演技は見事だけれど、意識が集中できていないわね。何を考えて演技していたの?」
「え?! い、意識ですか?」
そらは驚いた顔で、唇を尖らせた。
「ええ、そうよ。まさか、私に見られて緊張していたなんて……」
「ち、違います違います!」
「そうよね。じゃあ、ダンスパーティーのことかしらやはり」
「う……」
「見知らぬ男性と踊るなんて、今に始まったことではないでしょ?」
「で、でも」
「もしかして、ユーリの言っていたこと気にしてるんじゃないでしょうね」
「あう……」
「確かに中には婚約者を求めて来る人もいる。でも、私たちが最高のパフォーマンスをするのと何か関係がある?」
「レ、レイラさんは、私がそういう目に合ったらどうしますか……?」
「祝福するわ」
「で、ですよね」
「ほら、バカなこと言ってないで」
「は、はい!」
私こそ、そらの演技に集中できていたのか。
その疑問を悟られぬように、
「もう一度、やってみましょう」
「はい!」
「これが終わったら、パーティードレスに着替えるわよ」
「は、はい!!」
- 2 : ◆/BueNLs5lw 2015/01/04(日) 20:34:10.44 ID:Eb81FKCZ0
- なぜ、私がブロードフェイを離れカレイドスターにいるかというと、このパーティーに呼ばれたからだった。
世界各国の劇団関係者が一堂に会するイベントで、私も呼ばれるのは今回が初めてだった。
短く切った後ろ髪に、果たしてドレスが合うかと乙女らしい悩みも抱いたりもした。
そんな憂慮も束の間、パーティーの主催者側から今回のパーティー用の演舞を作って参加して欲しいと申し入れがあった。
会場はなんせ、ここ、カレイドスター。飛ぶもよし、跳ねるもよし、舞うもよし。
そのため、急遽ワルツを取り入れた技を作ることになったのだが――。
「オーケーいいわ。繊細さに欠けるけど、その荒々しさも逆に映えるように彼女が作ってくれてるから。普段通りでいきましょう」
「す、すいません」
「パートナーの男性を転倒させないようにね」
「う……頑張ります」
「心配はしてないわよ、そら」
「ありがとうございますッ」
演舞に関しては一切問題は感じてはいない。
ただ、その場で出会った男性パートナーと一緒に演舞するため、相手のレベルが低すぎると、そらに即興で合わせることは難しい。
むしろ、今のそらと組める男性などレオンの他にいるだろうか。そこが、私の最も心配とするところだ。
相手に合わせるというのをそらができないとは思わないが――。
- 3 : ◆/BueNLs5lw 2015/01/04(日) 20:45:54.74 ID:Eb81FKCZ0
- 私自身、人の心配をしている場合ではない。
今回、皆仮面を被って会に出席する。
中には、この一大興行を見るために、各国の政治家やジャーナリストなんかも集まっている。
怪我でもさせれば、極論だが国同士の争いに――なんてことになりかねない。
「じゃあ、私はこっちで着替えてくるわ」
「え、控室一緒じゃないんですか?」
「主催者側からの指示で、カレイドスター側も誰が誰だか分からないようにしてくれって言われたでしょ」
「ああ、そう言えば」
「そういう所、抜けてるんだから。しっかりしなさい」
「す、すいません!」
「じゃ、また後で」
「レイラさん、私、頑張って発見しますね!」
「しなくていいわよ」
「えええッ」
私はそう言い残して、自分の割り当てられた部屋の扉を開けた。 - 4 : ◆/BueNLs5lw 2015/01/04(日) 21:02:48.22 ID:Eb81FKCZ0
- 数時間後――
ユーリが私の斜め後ろに立ち、くつくつと笑っていた。
「まさか……君が、こっちの控え室にいるなんて」
「お言葉だけれど、ユーリ。あなたこそ、その長いブロンドヘアーお似合いよ」
「君こそ、そのタキシード、惚れ惚れするね。ああ、それともロングドレスが着たかったのかい?」
「まさか。観客が喜ぶならなんだって着るわよ」
望まれてするのだ。悔いはない。たぶん。
「しかし、君が髪を切らなければ、男装をさせられることもなかっただろうに」
「これは、あなたも知ってるでしょ」
「ああ、愛しのそらに切ってもらったんだろう?」
「ふざけてるの?」
「ごめんごめん。あまりにも君の姿がカッコいいから嫉妬してしまったんだ。ドミノマスクの下の、不機嫌そうな君の顔を想像してもいいかな?」
「ユーリ」
マスクの下を見透かされた私は、やはりマスクの下からユーリを睨みつけた。
「最高のマスカレイドになりそうだ」
足音。
「あ、ユーリさん! よ、よくお似合いで」
遠くから叫ぶ声。引き笑い気味にそらが歩を緩めた。
「あらら」
「び、びっくりしました!」
「そら……どうして、僕がユーリだと分かったんだい?」
「え、野生の感……ですかね? そちらの人は?」
ユーリと私は、一瞬顔を見合わせた。
- 5 : ◆/BueNLs5lw 2015/01/04(日) 21:16:39.90 ID:Eb81FKCZ0
- 「ああ、彼はミラノから来た人でね、控室で知り合ったんだ」
ユーリがスラスラと口から出まかせを言う。
私も、それに便乗するように、声のトーンを低くした。
「あ―ごほッ……そうなんだ。僕は、レイヤー。君は?」
「私は、そらです」
「そうかい。今日は、よろしく頼むね」
「こちらこそ」
そらが右手を差し出す。
私も左手を差し出した。
横にいたユーリが笑いを堪えているのが分かった。
それを無視して、私はそらに会場へ移動するように促した。
会場はすでに満員だった。舞台にはいくつかの仕掛けが施されている。
マスクで互いに挨拶を交わす人々。
貴族同士のお遊びに似ている。
「ユーリさん、あの、レオンは……」
「ああ、パーティーは嫌いだと言ってね、お腹が痛いと寝込んでいるよ」
そらは呆れた声で笑う。
それから、きょろきょろと辺りを見回した。
何事とかと問いかける。
「え、いや、知り合いを探していて」
探すも何も、今回の趣旨は誰かわからないのが当たり前。
相変わらずなそらに、私は胸中で溜息を吐いた。
ロゼッタやメイでも探しているのだろうか。
と、背後から黄色い声。 - 6 : ◆/BueNLs5lw 2015/01/04(日) 21:24:58.40 ID:Eb81FKCZ0
- アンナだ。
私と同じように男装をさせられている。
彼女は、また、なんとも分かりやすい恰好をしていた。
「あ、ちょ、君達……やめ、あ、誰か! 助けて!」
そらは巻き込まれまいと、素知らぬフリで私の背後へと回った。
「助けなくていいのかい?」
ユーリが苦笑い気味に言った。
「ちょっと、怖いので……」
確かに、アンナのファンに目をつけられたくはない。
「そら、ユーリ。開幕するよ」
華やかなファンファーレと共に、主催者の一人でもある私の父が壇上に立つ。
一言二言挨拶を述べる。まさか、観客席から父を見る日が来るとは。
同じ舞台に立つ喜びに、私は背中を震わせた。
父に恥じない舞台にするのはもちろん、父の為せるこの興行も、きちんと見届けなければならない。
それが、私の務めでもあるだろう。 - 7 : ◆/BueNLs5lw 2015/01/04(日) 21:41:54.62 ID:Eb81FKCZ0
- 挨拶が終わり、その後、照明が消え、聞き覚えのある声が響き渡る。
「ケンだ」
そらが言った。
確か、序盤の進行役だったか。
まだかまだかと待ち構える観客席からの熱気。
今夜、最高の同志達の最高のパフォーマンスを見れるなんて。
誰もが、心躍らせているに違いない。
しかも、誰が誰か分からない。
演技だけが、彼らを判断する唯一の手がかり。
一体誰と当たるのか。
私自身未知なる世界に興奮していた。
さあ。今宵、私を楽しませてくれる者は、誰だ。
控室で、私たちはくじを引かされていた。
同じ番号の者と、自分たちの作ってきた演舞とを組み合わせて、即興で踊る。
舞台に置いてあるものは自由に使っても良い。
そして、番号が発表され始めた。
5組ずつ選ばれていく。
相談時間は5分。
個性的は面々ばかり。どう、ペアでまとまっていくのか。
ウケを狙う者もいれば、涙を誘う者もいた。
「隠し芸大会みたい……」
横でそらが何か呟いていた。
なんだろう。日本の言葉だろうか。 - 9 : ◆/BueNLs5lw 2015/01/04(日) 21:50:42.52 ID:Eb81FKCZ0
- 「楽しそうだね」
そらの横顔を見て、私は言った。
「え、分かりますか?」
「雰囲気がそう言ってる」
「何か出てますか?」
後頭部をぽりぽりと掻いた。
真面目な返答だったものだから、私は笑うのを堪えた。
「ああ、炎が見えるよ」
だからだろうか。
私もついと口からそんな言葉が出てしまった。
しまった。私は、口元を抑える。
バレてしまったか。
そらは一瞬反応するのを忘れたかのように固まっていた。
「そういう風に言われたの、あなたで二人目です」
と、ユーリが、
「レイヤーは、良い目をしているんだ。どうだい、そら。彼、婚約者を探しているんだって」
「は? 何を」
私はユーリを睨み付ける。効果は無い。
「え、ええ!? あ、あの、えっと、私は、その……」
そらはそらでまんざらでもない反応。
気に食わない。
いや、違う。
ユーリのペースに巻き込まれてどうする。 - 10 : ◆/BueNLs5lw 2015/01/04(日) 22:01:17.16 ID:Eb81FKCZ0
- 「そうだね、僕もそらみたいな女性とだったら……」
なら、あえて乗ってしまうのも手だ。
標的をそらに変えて。
どうせ、分からないなら、楽しんだ方が勝ちだろう。
「レ、レイヤーさん……私、そういうのはまだ良く」
「ダメかな?」
「あの、あの……」
「どう、今夜?」
「こ、今夜!? ど、どうって!?」
「だから、二人で」
「二人で!?」
ダメだ。そらのオーバーリアクションがいちいち酷い。
可笑し過ぎる。
新しい番号が呼ばれた。
私だ。
「じゃあ、行ってくる」
そらは、頬に手を当てて、反対側の手で見送ってくれた。
ユーリは肩を震わせていた。
ペアになったのはやはり男性だった。
相手も、こちらが女性だと分かっているだろう。
タキシードとタキシードになってしまっているのだが、その辺りはいいのだろうか。
しかし、これで、私が女性であるとそらにバレてしまったわけだ。
そして、演技を見れば彼女なら一目で見抜くだろう。
- 11 : ◆/BueNLs5lw 2015/01/04(日) 22:15:43.31 ID:Eb81FKCZ0
- 過去に、私はマスクを被ってそらの前に現れたことがあった。
その時も、彼女は確信に満ちた瞳で私を見ていた。
彼女の前で、私はいつも『レイラ・ハミルトン』だった。
私を『レイラ・ハミルトン』にさせてくれる。
人生における光。翼。夢。そして、誇り。
否、まさに――彼女はレイラ・ハミルトンの人生そのものと言っても過言ではない。
レイヤーがレイラであると気付いてくれないのには、多少寂しさもあるが。
(見ていなさいそら……私は、レイラ・ハミルトンよ)
5分程、相手役の男性と相談して、彼のレベルがトップクラスということを理解した。
「では、そのようにレディ」
彼は完全に私を支える側に回ることになった。
その役を徹底的に演じてくれる。
なら、私はあなたに支えられる女を演じきって見せましょう。
私は、観客席にいるそらを見た。
暗がりだが、そこに彼女が見える。
なにせ、常に魂を燃やしながら存在しているのだから。
どこにいようが、感じることができる。
彼女を。
そらを。
- 12 : ◆/BueNLs5lw 2015/01/04(日) 22:26:56.66 ID:Eb81FKCZ0
- 「では、行きましょうか」
私は彼に合図する。
瞬間――そら、ではなく意識は会場全体に移っていた。
二人、ブランコに飛び乗る。
助走はほとんどつけない。
筋力と関節の柔軟性を頼る。
後は、身体が軌跡をたどる。
慣れた動き。
新しい動き。
一度、ブランコを離れる。
コマのように回転し、
別にブランコへ飛び移る。
遅れて、彼が飛び乗る。
小さなターン。
地面へ。
加速しながら。
そのままワルツに。
彼の腕をバネに、
一度大きく飛ぶ。
大きくターン。
もう一度飛ぶ。
そして、
大きくターン。
数えきれない観客の、歓声。
聞きたいのはそんなものじゃない。
そらの目を釘付けにできているか。
私を見ている?
そら。
彼女の歓声を浴びたい。
私を唯一熱くさせる彼女の。
自由度の高い演技。
自分をありのまま表現すればするほど、
そらに見て欲しいと、思ってしまって。 - 14 : ◆/BueNLs5lw 2015/01/04(日) 22:37:09.77 ID:Eb81FKCZ0
- 一際、ダイナミックに宙を舞って、そこでタイムオーバー。
重力のまま、彼の隣に戻って来て、一礼する。
他のペアも揃って挨拶をしている。
弾けるような拍手と歓声。
ペアの男性と、一度握手をしてから観客席へと戻っていく。
全てのペアが舞い終わった後に、最も優れたペアにはプレゼントがあるそうだ。
興味はない。
最高のパフォーマー達の演技を見れるだけで十分なご褒美である。
席へ戻ると、そらが煩いくらいの拍手で迎えてくれた。
「すごい! すごいです、レイヤーさん!」
「え、ああ。ありがとう」
気付いていないようだ。
「私、あんな演技ができる人、一人しか知りませんでした……でも、世の中はやっぱり広いんですね! 私、井戸の中のカエルでした!」
「は、はあ?」
興奮した様子の彼女に、私はなんと声をかければ良いのか。
頭を捻って、ユーリを見る。
「レイヤー、君、男性と組んでも映えるね」
「……」
誰か、そらに教えていないのか。
ペアは男女だと。 - 15 : ◆/BueNLs5lw 2015/01/04(日) 22:44:00.55 ID:Eb81FKCZ0
- 「喉が渇いたから、ちょっと飲み物もらってくるよ」
「あ、私も行きます」
「どうぞ」
私は腕を差し出した。
「?」
きょとんとしている。
ユーリが、
「エスコートしてくれるってことだよ」
横から耳打ちする。
「あ、はい! お願いします!」
どこかぎこちなく、私の腕を掴む。
唐突に立ち上がったせいか、私の方へバランスを崩した。
「ご、ごめんなさいッ」
「いや。怪我がなくで良かったよ。行こうか」
「はい」
そろそろ、男役を演じるのも疲れてきた。
ただ、そらが面白いので、まだ黙っておこう。
先ほどの演技について、そらに聞くことはしなかった。
私は当たり障りのない会話をしながら、飲み物を配るピエロの所へそらをエスコートする。 - 13 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/04(日) 22:33:22.44 ID:1TKqhtSw0
- カレイドスターとは懐かしい
- 16 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/04(日) 22:47:11.04 ID:cu+AxlEe0
- 今ちょうどカレイドスター見てるわ
- 17 : ◆/BueNLs5lw 2015/01/04(日) 22:49:30.91 ID:Eb81FKCZ0
- 「アルコールになりますが、よろしいですか?」
ピエロが言った。
言ってから、そらを押しのけて、私の肩を掴んだ。
後方の壁際にぶつかりそうになる。
「な、なに?」
「れ、レイラさん!?」
小声で、ピエロが言った。
「その声、メイ……」
「なんで、男装なんか……素敵過ぎて死んでしまいます」
「そらには秘密にしてあるから、離してちょうだい」
「え、ええ? なんでですか?」
「……面白いからかしら。でも、そらに言わないでよ」
いい歳して、と思われかねない。
知り合いに言うのも、なにやら恥ずかしい気もしてきた。
「れ、レイヤーさん? 大丈夫ですか?」
そらがこちらを心配そうに見ていた。 - 18 : ◆/BueNLs5lw 2015/01/04(日) 22:56:06.67 ID:Eb81FKCZ0
- 「ああ、ピエロが躓いたみたいだ」
「ふぉっふぉふぉ!!」
「飲み物頂くよ。そらも、はい」
「ありがとうございます」
「ふぉっふぉ!」
「二人の出会いにカンパーイ」
しまった。また、恥ずかしい台詞を。
ピエロがなぜか横で地団駄を踏んでいた。
そらも、恐る恐る乾杯し、口づける。
「美味しい……」
「ああ、美味しい……ん?」
そう言えば、先ほどメイがこれはアルコールだと。
「ま、待ってそら」
「……ぷはッ!」
そらの右手に空になったグラスを見た。 - 19 : ◆/BueNLs5lw 2015/01/04(日) 23:03:49.23 ID:Eb81FKCZ0
- 「そ、そら……」
「……喉がかーっとなって。あれ、こりぇ……なに」
しまった。
なんてこと。
「もしかして、そら、お酒飲むの初めてかい?」
「あ、おしゃけだったんですね……いえ、さあ、ええ」
度数の高いワインだったのか。
一口飲んだだけで、私自身頬が熱い。
先ほどの演舞で代謝が上がっているせいだろうか。
そらの出番はまだ。
「そ、そら、何番なんだい?」
「100番でひゅ……」
私はメイを見た。
「そらの番号が呼ばれるまでにあと30番ある。それまでに、なんとかするから……メイ」
「は、はいッ」
「ダメだったら、頼んだわ。メイ」
「よ、喜んで!」
「そら、行くわよ……!」
「ふぁーい……」
軟体動物か。
私は、そらを抱きかかえる。 - 20 : ◆/BueNLs5lw 2015/01/04(日) 23:12:22.38 ID:Eb81FKCZ0
- 廊下に出て、空いている控え室を探す。
館内放送が聞こえる所でないと。
「ここね……」
恐らくイベントが終わるまでは戻って来ないはず。
「っしょ」
そらを引きずりながら、ソファーへと寝かせる。
念のため、部屋の鍵をかけておくか。
が、そらはすぐに立ち上がって、ドアに目がけて突進してきた。
「そら、何してるッ?!」
「だ、だって行かないと……みんなの見たいし」
「いいから、まずは……酔いを醒まさないと」
冷蔵庫に確か、水が常備されているはず。
私は、そらが逃げ出さないように手を握り、冷蔵庫から水を取り出した。
「飲みなさい、そら」
「あ、冷たくて気持ちいれす……」
「もお……」
私は蓋をあけてやり、口元に近づける。
「んむ……ッごく」
- 21 : ◆/BueNLs5lw 2015/01/04(日) 23:20:21.36 ID:Eb81FKCZ0
- 口の端からこぼれてしまう所を見ると、飲む気がないのか。
らちが明かないので、私は口に水を含んだ。
そして、彼女の口を覆い、それを移し替える。
「んくッ……ッん……」
「はあッ……飲んで、覚ましなさい」
「……な、なにするんですッ…!?」
「目が覚めたみたいだね」
「へ、あ、ここどこ!?」
「控室だよ」
「うそぉ?! って、つめたいッ……?」
彼女は全く事情が呑み込めていないのだろう。
マスクを取って、顔全体を腕で拭く。
「な、なんで顔濡れてるんですかッ?」
「水だよ。心配ない」
「ど、どうして二人きりなんですか……ッ?」
「それは」
どうも、今夜の彼女は加虐心を煽る。
「そらを、食べるためだよ」
そらは唇の端を震わせる、という器用な事をしてみせた。 - 22 : ◆/BueNLs5lw 2015/01/04(日) 23:28:53.78 ID:Eb81FKCZ0
- 「だ、誰か助け……んむッ!?」
「大きい声で叫ばない。人が来てしまう」
「ぷはッ……わ、私。100番だから、行かないと」
「大丈夫、残り28番だから。諦めて」
「……や、やだッ、やだッ」
本当に怖がっているようだ。
私の腕の中でもがき回る。
そろそろ種を明かさないと、そらに後で何を言われるか分かったものではない。
「ごめんごめん……そら、私」
と、そらが振り回した腕が机に当たり、
山盛りになった雑誌が落下してきた。
「そらッ……!」
私はそらを庇って、どさどさと雑誌の猛襲に耐える。
最後に降ってきたライターの角がやたら痛くて、私は涙目で小さく舌打ちした。
「つぅ……」
「れ、レイヤーさん……」
ふと、下を見る。
そらの小さな胸をしっかりと握りこんでいる。
いや、少し成長しただろうか。 - 23 : ◆/BueNLs5lw 2015/01/04(日) 23:36:53.98 ID:Eb81FKCZ0
- 「わわわッ!?」
私が乗りかかっているせいで、そらは身動きがとれずじまい。
ただ、私の腕をポカポカと殴っていた。
「いたッ……た」
「酷いッ! 私、レイヤーさんのこと……好みのタイプだったのに」
そらはこういうのが好みなのか。
「退いてくださいッ」
赤ら顔で睨むそら。
それを上から眺める私。
全く、誰に似たのか。
これもあのたった一口のせいなのか。
「まだ、顔が赤いみたいだ」
私はペットボトルを取って口に水を含んだ。
彼女の両腕を床に押し付ける。
艶のある彼女の唇に、自分のを押し付けた。
「ッんく!? ……ッあむ?!」
可笑しい。私は唇を離す。
私は、彼女に、熱を感じているようだ。 - 24 : ◆/BueNLs5lw 2015/01/04(日) 23:42:49.70 ID:Eb81FKCZ0
- 「そら……」
「がるるるッ……」
犬か。
まあ、これ以上騙すのも可哀相か。
「実は」
「と、おりゃあ!!」
「は?」
と、言った瞬間、私はそらと形成が、つまり上下が逆になっていた。
今、何が起こったのか全く理解できない。
私はそらに組み敷かれていた。
足で、腕もがっちりと固められている。
どういう技なのか。
「さあ、よくもやってくれたわね……」
指の関節をならすそら。
「ま、待って」
「待たない!」
「そら、私よ!」
「レイヤーさんでしょ!」
「レイラよ!」
「レイラさんでしょ! え? レ、レイラさん?」
そらは私のマスクを剥ぐように取った。 - 25 : ◆/BueNLs5lw 2015/01/04(日) 23:46:37.24 ID:Eb81FKCZ0
- かくして、私の正体がばれることになる。
「……」
「あー、そのごめんなさい」
「……」
そらは、なんというか、すごく、驚いていた。
無理もないけれど。
小さく首を捻る。
私を見つめる。
「そら?」
「……レイラさん?」
「ええ、そうよ」
「な、何……してるんですか!!」
そらに怒鳴られる日がくるなんて。
私も丸くなったわね。
私は事の発端を話し、ここにいたるまでの経緯を説明した。 - 26 : ◆/BueNLs5lw 2015/01/04(日) 23:52:26.90 ID:Eb81FKCZ0
- そらがそれで納得するわけもなく、
「レイラさん……趣味悪いです」
心に突き刺さるような言葉をいくつか吐いていた。
「そういう訳だから、退いてもらってかまわないかしら?」
「レイラさん」
「なあに」
「乙女の純情を弄びましたね……?」
「そういうことになるのかしら」
「レイラさんが、もし、逆の立場だったらどう思いますか!?」
「そのパターンはあり得ないわ」
「一蹴しないでくださいよ、もお!」
「悪かったわ。私もおふざけが過ぎていた。どうしたら、許してくれる?」
そらを怒らせれば怒らせる程、彼女の酔いが回ってしまう気がする。
大人しくやられてしまおう。
- 27 : ◆/BueNLs5lw 2015/01/04(日) 23:59:03.13 ID:Eb81FKCZ0
- 「……レイラさんが、自分で考えてください」
頬を膨らませる。
やるじゃない、そら。
「……そら、可愛い」
彼女の頬が一瞬緩む。
しかし、すぐに膨れ上がる。
「そら、すごく、可愛い」
「……ふ、ふーんだ」
フールといる時のそらはこんな感じなのだろうか。
また、新しい彼女の一面を見れて、こんな状況なのに私は喜んでいるようだ。
つい、笑ってしまう。
自分とそらが可笑しくて。
二人きりだから。
他に、誰もいないから。
「そら、キスしたい」
その言葉に、そらは表情を固くした。
しどろもどろに、
「え、あ、その……そ、そんなことで許すとッ……んッぁ」
言い終える前に、私は今宵何度目かの口づけを終えた。 - 28 : ◆/BueNLs5lw 2015/01/05(月) 00:09:53.37 ID:0a83q+xV0
- 「……なんでですか。勝手なことばっかり」
顔を離してやると、そっぽを向いた。
「そら?」
「だって、レイラさん、私が結婚を申し込まれても……祝福するだなんて言ってたじゃないですか……」
「ああ……根にもってたの」
「べ、別に……寂しくなんてないですけど」
「あなた、私以外と一緒で満たされるの?」
彼女の耳に触れる。熱い。
こちらを向かない。
「ねえ、そら」
「なんて……返したらいいんですか、それッ」
両耳を擦ってやると、ふにゃと力が抜けたように手を床についた。
「決まってるわ」
彼女を抱きしめる。
胸の上に落ちてきたそらの肩に顔を埋める。
「満足できない、そう言えばいいじゃない」
「う……もう、もう! レイラさん、カッコイイ! 卑怯もの!」
「なによそれ」
そらが私の胸にぐりぐりと顔を押し付けてくる。
彼女の頭を撫でながら、しばし、それを楽しんだ。
- 29 : ◆/BueNLs5lw 2015/01/05(月) 00:18:12.06 ID:0a83q+xV0
- 「だって、あなたの好みのタイプ、私なんでしょ?」
「げッ、忘れてください……」
そらは自分の頭を抑え込んで、数秒程唸っていた。
「続き……どうする?」
「あ、いや……私は……」
そらの小振りなお尻を掴み上げる。
「ひやぁッ!?」
細い腰が跳ねた。
ボディラインを指で辿ると、彼女の熱い吐息が漏れる。
「私に、どうされたい?」
「だ、だめですッ……だめッ、レイラさッ……んッ」
ドンドン!
『ふぉっふぉ!!』
部屋の扉が叩かれる。
「メイ……あなた」
『ふぉ!ふぉ!』
なにやら狂気すら感じる。
「さて、そら行きましょうか?」
「……は、はい」
先ほどに比べて、随分としおらしくなったそらの手を引いて、私は控室を出た。
- 30 : ◆/BueNLs5lw 2015/01/05(月) 00:30:21.10 ID:0a83q+xV0
- 100番目のそらの演技が終わり、パーティーも幕引きとなった。
優勝者はそらのペアに決まった。
鬼気迫る演技に全ての者が魅了された。
私ももちろん。
まあ、彼女相手がジョナサンだったという所で、全て持っていかれていたかもしれないが。
閉幕した後、カレイドスターの片づけを終え、今日の宿に戻ろうとした時のことだ。
「レイラさん……待ってください」
タクシーに乗る直前に、そらが駆け寄ってきた。
「どうしたの?」
「あの、私……まだ」
「もしかして、続き?」
そらが固まる。
「そう、じゃあ――おいで」
手を伸ばして、私は彼女をタクシーに乗せたのだった。
終わり - 31 : ◆/BueNLs5lw 2015/01/05(月) 00:32:16.26 ID:0a83q+xV0
- >>16
タイムリーでしたね
読んでくれてありがとう。
カレイドssは無いに等しいから、最近はまった身としてはつらいです。 - 32 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/05(月) 00:34:58.13 ID:6W4V5IkIO
- おつ
カレイドスター懐かしい - 33 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/05(月) 02:08:55.06 ID:RPZvWiGAO
- 何とカレイドスターとは!
乙!

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