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澪「ハーレムワールド」

1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 14:53:42.59 ID:rVHg69UiO

澪「…………んっ」

澪「……あれ?」

澪「もう朝か……ん?」

澪「……ここは……どこ、だ?」

律「……」スースー

澪「……あれ? なんで律がわたしの隣で寝てるんだ?
  ハハハ、しかも裸だ」


澪「……え゛」




2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 14:58:23.95 ID:rVHg69UiO

律「……ん、んー。
  ………なんだよ……」

澪「お、おい…… り、律!」

律「んー……み、お?
  ……なんだよ、もう朝になっちゃったの?」

澪「朝とか夜とかそんなのはどうでもいい。
  なんでお前とわたしが同じベッドで寝てるんだ?
  なんでわたしとお前は裸で寝てたんだ?」

律「……はあ?」

澪「はあ、じゃなくて!」

律「いや、なにを今さらそんな日常茶飯事なこと言ってんだよ」

3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 15:02:47.46 ID:rVHg69UiO

澪「にちじょーさはんじ……?」

律「わたしのこと起こしておいて寝ぼけてんのか?」

澪「いやいや、意味がわからない。
  わたしとお前が同じベッドで、しかも裸で寝ていた経験なんて一度もないはずだぞ」

律「はあ? つい三日前も思いっきり裸で人のベッドで寝てたくせに」

澪「……律こそなにを言ってるんだ?
  だいたいなんでお前とわたしは裸で寝てるんだ?」



律「決まってるじゃん。

  わたしと澪がエッチしたからだろ」

4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 15:07:56.47 ID:rVHg69UiO

澪「……え、えっち?」

律「そう。エッチだよ、エッチ」

澪「ぐ、ぐぐぐぐ……具体的にエッチというのはどんなことを……?」

律「……そんなこと言わせんな。
  ていうか、数えきれないくらい今までヤッてきたのになんで今さらそんなこと聞いてくるんだ?」

澪「…………。
  か、数えきれない……?」

律「うん」

澪(ちょっと待って。これは律の冗談かなにかか?
  いや、でも……律はこの手の冗談は言わないはず……)

律「澪?」

8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 15:12:33.21 ID:rVHg69UiO

澪「……と、とにかく一旦、わたしは自分の家に帰るっ」

律「今日はわたしと遊ぶ約束してただろ?」

澪「なに言ってるんだ?
  今日は学校だろ?」

律「今日は休日なのに学校があるわけないだろ」

澪「はあ? 今日は……」

澪(……いけない。ワケがわからなすぎて頭が痛くなってきた。
  とにかく家に帰ろう)


律「……ああ、そういうことか」

澪「え?」

10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 15:16:31.16 ID:rVHg69UiO

律「そうだな、澪はモテモテだもんなあ!
  今日は誰と遊ぶんだ? 唯か? ムギか? それともファンクラブの誰かか!?」

澪「ちょ、ちょっと待て。
  さっきから律の言ってることの意味が本気でわからない」

律「またそうやってトボけるんだな。
  いいよ、もう帰れよ……」

澪「……」

律「……帰れよ。服はそこらへんに落ちてるだろ」グスン

澪「……その……ごめん……」

澪(もしかして律、泣いてる……?)

12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 15:21:36.38 ID:rVHg69UiO




澪「……いや、まったく本気で意味がわからない」

澪(いったいどうなってるんだ?)

澪(たしか昨日は進路のこと考えてて……あれ?)

澪(そこからの記憶が……曖昧、というか全然ない……)

澪「……それにしても今日は妙に暑いな……」


澪「……ん?」


澪(今、誰かの視線を感じたような……)

13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 15:25:47.39 ID:rVHg69UiO

 「おーい」

澪「……この声は……」

 「みーおちゃーん!」

澪「この声は……唯?」

唯「澪ちゃーん、やっほー!」 ダキッ

澪「うわあ!? ゆ、唯!?」

唯「えへへへ、せーかい。わたしだよー。
  あれれ? 澪ちゃんったら、わたしに後ろから抱きつかれてドキドキしてるの?
  にしても、澪ちゃんってやっぱりおっぱい大きいよね」モミモミ

澪「ちょっ……唯!?」

14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 15:30:35.13 ID:rVHg69UiO

唯「んー、どしたの?」

澪「と、とりあえず離れてくれ。暑い」

唯「ちぇー、せっかく澪ちゃんに会えたから抱きついたのにー」

澪「……普段、わたしに抱きつくことなんてないのに……。
  ていうかこんなところでなにしてるんだ?」

唯「今日、遊ぶ約束してたのになに言ってるの? 澪ちゃん。
  もしかして約束を忘れちゃったの?」

澪「……え? 約束?」

唯「まあいいや。とりあえずわたしの家に行こう」グイッ

澪「ちょ、ちょっと……!」

15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 15:35:09.84 ID:rVHg69UiO

澪(なんだ、なんなんだ?
  唯と二人で遊ぶ約束なんて、した覚えないのに……)

唯「今日は家に誰もいないから……する?」

澪「……なにを?」

唯「それは……もう! 言わせないでよ。ホントはわかってるくせに」

澪「……?
  いや、本気でわからないんだけど……」

唯「あ、家に着いたよ」


澪(律といい、唯といい、いったいぜんたいどうなってるんだ?)

16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 15:39:49.70 ID:rVHg69UiO




唯「さあ、入って入って」

澪「……おじゃまします」

唯「クーラーつけるから、もうすぐで涼しくなると思うよ」

澪(……え?)

澪「……唯」

唯「ふぇ? あ、わかった。暑いからアイスが食べたいんでしょ?
  今、用意するから待ってて」

澪「いや、わたしが言いたいのはそういうことじゃなくて……」

唯「……もしかして……したいの?」

澪「……は?」

17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 15:43:36.30 ID:rVHg69UiO

唯「……いいよ。今日は誰も家にいないし……」

澪「……おい、わたしを置いてくな。勝手にひとりで納得するな」

唯「もう、澪ちゃんったら素直になってくれればいいのに……」

澪「え?」

唯「えいっ」


どんっ!


澪「……うわあ!」

澪(ゆ、唯に押し倒された……!?)

18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 15:48:06.82 ID:rVHg69UiO

唯「わたしとするときは、澪ちゃんいつも攻めなんだけど……。
  たまにはわたしが攻めで、澪ちゃんが受けでもいいよね?」

澪「まてまてまてまてまてまて……!」

唯「えへへへ……澪ちゃん、かわいい」

澪「こ、こらっ! 服を脱がそうとするな!」

唯「じゃあ胸を揉んじゃおう」モミモミ

澪「ひゃっ!?」

唯「澪ちゃん、かわいいよ……」

20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 15:51:15.07 ID:rVHg69UiO

澪(なんなんだ、このシチュエーションは!?)

唯「澪ちゃん……」

澪「落ち着け……! わたしたちは女どうしなんだぞ!」ジタバタ

唯「よくわかんないけど、チュウしよっか?」

澪「ちゅ、チュウ!? ちゅ、チュウはダメだ!」

澪(唯の目……本気だ……!)


 「……なにしてるの?」

21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 15:54:19.71 ID:rVHg69UiO

澪「……へ?」

澪(あ、あれは……)

唯「う、憂……?」


憂「…………」


唯「ち、ちがうんだよ、憂。これはご、ご、ご、誤解なんだよ……!」

憂「……」

澪「えっと……」

澪(とりあえず、憂ちゃんが来たおかげで助かった)

22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 15:59:21.14 ID:rVHg69UiO

澪(まるで昼ドラみたいな状況だな……)

唯「う、憂……その、今から詳しい話をするから……」

澪(浮気のバレた夫みたいだな……まあ、女どうしでスゴイことしようとしてたんだから当然か)

憂「澪さん……」

澪(唯が事情説明している間に、退散して家に帰るか……)

憂「澪さん」

澪「……え? わたし?」

憂「はい。澪さん、わたしの部屋で事情を説明してもらってもいいですか?」

澪「ど、どうしてわたしが……」

23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 16:03:03.69 ID:rVHg69UiO

憂「澪さんのほうが、お姉ちゃんよりきちんとした説明をしてくれそうなんで」

澪「わたしと唯。二人いっしょに説明する、というのはダメなの?」

憂「いいから、来て下さい」グイッ

澪「ちょっ……!」

澪(なんだか普段の憂ちゃんと様子がちがう……)

唯「澪ちゃん……」

24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 16:07:14.33 ID:rVHg69UiO




憂「……お茶です。どうぞ」

澪「……ありがとう」

憂「……」

澪「……」

憂「さっきまで……わたしが来る前までリビングでなにをしていたか、説明おねがいします」

澪「いや、その……」

澪(どう説明すればいいんだ……?
  唯に押し倒されて、あげくのはてにエッチしそうになった……そう説明すればいいのか?)

憂「澪さんのウワサについては、わたしも聞いてます」

澪「ウワサ?」

26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 16:12:53.52 ID:rVHg69UiO

憂「はい。澪さんの悪いウワサです」

澪「わたしの悪いウワサ?」

憂「その……色んな女の子に手を出してるってウワサです」

澪「……」

憂「軽音部の同級生のみなさんはもちろん、純ちゃんや、和さん。
  さらには自分のファンクラブのメンバーの人まで……」

澪「……そ、その話って本当なの?」

憂「トボけるのはやめて下さい」

澪「……」

憂「もちろん、お姉ちゃんにもその魔の手を伸ばしてるって……」

澪「……」

憂「……お姉ちゃんには手を出さないで下さい」

澪「……」

憂「おねがいします」

28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 16:16:49.90 ID:rVHg69UiO

澪(憂ちゃんの言ってること、まったく意味がわからないし、わたしにそんな覚えはない……)

澪「その……わたしには憂ちゃんの言ってることがよくわからない……」

憂「そうですか。わかりました。
  それじゃあ、お姉ちゃんの代わりに……」

澪「……え?」

憂「んっ……」

澪「な、な、ななな!?」

澪(う、う、ううう憂ちゃんの胸にわたしの手が……!)

30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 16:20:32.50 ID:rVHg69UiO

憂「わたしの胸、お姉ちゃんより大きいから……」

澪「は、は、はわわわわわわわわわわわわわわわわわわ」

憂「み澪さんにも満足してもらえると思います……んんっ」

澪(反射的に憂ちゃんの胸、モミモミしちゃった!)

憂「んっ……い、イタぃ……」

澪(ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい)

32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 16:25:41.31 ID:rVHg69UiO

澪「……えいっ!」ド゙ンッ

憂「きゃっ……」

澪(と、とっさに突き飛ばしちゃった……)

澪「だ、大丈夫?
  う、憂ちゃん……?」


ガチャ


唯「なんだか大きな音がしたけど、大丈夫?」

澪「ゆ、唯……」

33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 16:28:53.04 ID:rVHg69UiO

唯「ま、まさか……」

澪「ち、ちがうんだ、唯!
  これはわたしの初々しいこころが憂ちゃんにいやらしい行為をするのをやめようとした結果……」

澪(……って、なにを言ってるんだわたしは!?)


唯「まさか……憂をおそうつもりだったの!?」


澪「なんでそうなる!?
  ていうか、襲われたのはわたしだ!」

34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 16:35:12.93 ID:rVHg69UiO

唯「あのウワサはホントだったんだね。
  色んな女の子に手を出してるってウワサ……」

澪「ち、ちがう!
  そもそも女の子どうしなんておかしいだろうが!」

憂「澪さん……罰としてお姉ちゃんとわたしと付き合ってもらえますか?」

澪「とにかく待って! 一度話しあおう!
  話しあえばきっと誤解が解けるはずだ!」

唯「いやだよ。だって澪ちゃんってしょっちゅう、わたしとの約束を破るし」

澪「……」

35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 16:38:43.24 ID:rVHg69UiO

澪「と、とにかく一旦、家に帰らせてくれ」

憂「どうするの、お姉ちゃん?」

唯「澪ちゃん」

澪「……はい」

唯「今回は必ず約束を守ってくれる?」

澪「守る! 必ず守るからとにかく家に帰らせて!」

唯「じゃあ、いいよ」

澪(助かった……)



唯「そのかわり、約束破ったら……許さないからね」

36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 16:42:45.69 ID:rVHg69UiO




澪「……どうしてこうなった?」

澪(おかしい。わたしの記憶には唯や律が言ってたようなものはない……)

澪(だいたい、女の子どうしなのになんで誰もツッコミを入れない?)

澪「……」

澪「いいや。今は帰ろう。帰ってシャワーを浴びて少し寝よう」


 「あら? 澪ちゃん?」


澪(……またこの展開か……)

38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 16:47:54.47 ID:rVHg69UiO

澪「よ、よう、ムギ」

紬「こんなところで会えるなんて……。
  こんにちは、澪ちゃん」

純「……」

澪「あれ? えっと……鈴木さん?」

純「こ、こんにちは。澪先輩」

澪「ムギと鈴木さん……珍しい組み合わせだな」

紬「ふふ、そこの駅前でたまたま会ってね」

純「そ、そうなんです」

39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 16:53:01.87 ID:rVHg69UiO

澪「そ、そうなんだ……じゃあ二人の仲をジャマするわけにはいかないし、わたしはこれで……」

紬「待って。せっかくだからわたしの家に来ない?」

澪「ムギの家……」

澪(そういえばムギの家に行ったことって、あんまりないよなあ……)

純「あ、あの、よかったらわたしも……紬先輩の家に行ってもいいですか?」

紬「そうねえ……」


ジロリ……


澪「……!?」

澪(な、なんだ今のムギの目つきは?)

40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 16:56:35.74 ID:rVHg69UiO

純「……」ジー

澪「な、なんでそんなにわたしのことを見つめるのかな?
  わたしの顔になにかついてる?」

純「い、いえ……」

澪(ていうか、ムギに質問してるのにどうして、わたしの顔を見つめるんだよ……)

紬「そうね、みんなでわたしの家に行こっか」

純「ありがとうございます、紬先輩」

澪(イヤな予感しかしない……)

42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 17:02:59.20 ID:rVHg69UiO




紬「あそこからだと、わたしの家、あまり近くないから車を呼んだけど……」

純「スゴイですね。こんな高級な車、初めて乗りました」

澪「本当に大きいな……」

紬「そうね。この車は特に大きいものだから」ナデナデ

澪「へえ……」

澪(なぜムギはわたしの太ももを撫でてるんだ……?)

紬「そう、たとえば寝転がることもできるし、ほかにも……」


ドンッ!


澪「なっ!? む、ムギ!?」

紬「こうやって澪ちゃんを押し倒すこともできるわ」

44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 17:07:36.30 ID:rVHg69UiO

純「紬先輩!?」

紬「ふふふ、澪ちゃんビックリした?」

澪「あ、当たり前だ!
  とにかくやめろ! こんなこと……」

紬「ふふふ、い・や・だ」

純「つ、紬先輩。こ、こんなことはしてはいけませんよ……」

紬「わたし知ってるんだよ?
  純ちゃんが澪ちゃんのこと大好きだってこと」

純「そ、それは……」

紬「せっかくだから、ためしに澪ちゃんとキスしてみたら?」

澪(いやいやいやいや、なんだこの展開)

純「……」ゴクリ

46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 17:11:57.04 ID:rVHg69UiO

紬「大丈夫。わたしが澪ちゃんの頭を固定しておくから」

純「み、澪先輩とキス……」

紬「そう。憧れの澪ちゃんとのキス。
  したいでしょ? 澪ちゃんとチューしてみたいでしょ?」

澪「待て待て待て待て。
  わたしとのキスって……わたしは女だし、鈴木さんだってムギだって女だろ!?」

紬「……?
  言ってる意味がわからないけど、まあいっか。
  ほら、純ちゃん。キスしちゃって」

純「は、はい」

澪「はい……じゃないっ!」ジタバタ!

48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 17:16:35.92 ID:rVHg69UiO

純「澪先輩。こんな状況でなんですけど、好きです」

紬「ふふふ、わたしも澪ちゃんのこと大好きだよ?」

澪「……い、いいかげんに……」

澪(こうなったら……)

澪「……しろっ!」ドンッ

紬「きゃっ……!」

澪(き、奇跡的に腹筋の要領でムギを突き飛ばすことができた!)

純「あ、紬先輩! 澪先輩が逃げます!」

澪「くっ……」ガチャ


澪(とにかく家に戻らなきゃ……!)

51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 17:20:24.05 ID:rVHg69UiO




澪「はあはあ……こ、ここまで来ればさすがに大丈夫か……」

澪「ていうか……明らかにみんなどうかしてるだろ……」

澪(そしてなにより。
  いくらなんでも、わたし、人気ありすぎだろ!)


サヨナラキズダラケノヒビィヨー♪


澪「……メール? 誰からだ?」

澪「……和からだ」

54:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 17:25:39.45 ID:rVHg69UiO

澪(そうだ! 和ならきっとわたしを助けてくれるはずだ)

澪(頼りになるし、クールだし! 生徒会長だし!)

澪(もしかしたら今もわたしのことを心配してメールをくれたのかも……)

澪(……いや、まあそれはないにしろ、わたしが置かれている今の状況を説明すれば力になってくれるはず!)


…………………………………………………………………………………………………………………………………………………

From:真鍋和
件名:

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57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 17:30:06.04 ID:rVHg69UiO

澪「…………」

澪「まさか一番危険なのは和だったりして……」

澪「ハハハ……」

澪「どうしよ……和すら頼りにならない状況なんて……」

澪「みんながみんな、おかしくなっちゃった……」

澪「……暑い」

澪「うん、家に帰って寝よう」

61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 17:38:51.14 ID:rVHg69UiO




澪「……ああ、ようやく自分の家に帰ってきた……」

澪「疲れた……疲れたから寝よう……」


ピンポーン


澪「イヤな予感しかしない。
  出るのはヤメよう」


ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン


澪「……こ、怖いから出たほうがいいかも……」

62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 17:42:33.92 ID:rVHg69UiO

澪「……」ムクリ

澪「はい、今出まーす」


ガチャ


澪(そういえば今日はパパとママ、二人とも出かけてたんだな)

澪「はーい」

 「あ、澪ネエ」

澪「お前は……」

63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 17:47:07.93 ID:rVHg69UiO

 「珍しく家にいたんだね、よかった。
  ほら、これ姉ちゃんの部屋に忘れてったノート。
  姉ちゃん、会いたがらないから代わりに来たんだけど」

澪「あ、えっと、その……」

 「どうしたの? そんな初対面の人に会ったみたいな状態になっちゃって?」

澪「いや、だって……」

 「……?」

澪「だ、誰ですか? その……あなたは?」



 「なに言ってんの? わたしは田井中律の『妹』だよ」

70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 17:54:20.67 ID:rVHg69UiO

澪「……」

 「わたし、これから部活だからバイバイ」

澪「……そ、そうなの」

 「そうそう。なんだか姉ちゃん元気なかったけどケンカでもしたの?」

澪「えっと……ちょっとな……」

 「早く仲直りしなよ。しょげてる姉ちゃん見るのはわたしもツライし」

澪「わかった……ところで……その……名前は?」

 「わたしの?」

澪「……う、うん」

 「わたしの名前なんて澪ネエ、知ってるに決まってるのになに言ってるんだよ。
  じゃあね、バイバイ」

澪「あ、ああ……じゃあ」

71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 18:01:35.40 ID:rVHg69UiO




澪「頭痛くなってきた……」

澪(律の『妹』?
  律の『弟』……聡じゃなくて……)

澪(……気晴らしにテレビでも見ようかな……)


ぴっ


澪「……え?」

澪「日付が七月……? わたしの記憶が正しければ、十月のはずなのに……」

澪(そもそも、わたしは昨日、唯たちと同じ進路にするか考えてたはずなのに……)

72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 18:06:24.45 ID:rVHg69UiO

澪「もしかして夢……?
  いや、そんなわけない、か……」

澪「どうりで十月にしては暑いと思ったけと……」

澪「わたしの頭がおかしくなったのか……世界がおかしくなったのか……」

澪「どうすればいいんだろう……頼れる人もいないし……」


ピンポーン


澪「……今度は誰?」

74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 18:10:31.02 ID:rVHg69UiO

澪「どうしよ……ドアを開けたら、また、唯やムギのときみたいに襲われたりするかもしれないし……」

ピンポーン

澪「でもこのままボーっとしてるのもよくないような気がする……」

澪(とりあえず、チェーンをかけてドアの隙間から覗いてみるか……)

ピンポーン

澪「はーい、今出まーす」

ガチャ


 「あ、澪先輩……」

澪「……梓」

75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 18:15:28.80 ID:rVHg69UiO

梓「こんにちは、澪先輩……って、なんでチェーンかけてるんですか?」

澪「い、いや、ちょっと事情があって……。
  そ、それでどうしたんだ? わ、わたしになにか用でもあるのか?」

梓「あれ? メール見てないんですか?」

澪「ごめん、ちょっとイロイロとありすぎてケータイを確認する余裕もなかったんだ……」

梓「……?
  いえ、ただ借りていた保健のノートを返しに来ただけなんですけど……」

澪「そ、そうなんだ……」

澪「保健のノート……」

澪(そういえば二年生のときだけ保健の授業があったな……)

76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 18:20:53.21 ID:rVHg69UiO

梓「わたし、ノートをなくしちゃったものですから……澪先輩が貸してくれて助かりました」

澪「そうか……それはよかった」

梓「……」ジー

澪「……」

梓「……」ジー

澪「な、なんでそんなにわたしの顔を見つめるんだ?」

澪(まさか鈴木さんのときみたいに……。
  いや、でも大丈夫のはず。今はチェーンかけてるし……)

梓「いえ、なんだかいつもの澪先輩と雰囲気がちがうなあと思って……」

澪「そ、そうか……。ところで梓は保健の授業で今はなにを習ってるんだ?」

澪(ダメだ。動揺しすぎてどうでもいいこと聞いちゃった)

78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 18:25:25.89 ID:rVHg69UiO

梓「今、やってるところですか?」

澪「う、うん……」

梓「性行為についてです。えへへ」

澪「せ、性行為……」ポッ
梓「どうしました、澪先輩?
  顔が赤くなっちゃいましたけど……」

澪(エッチだとそれほど恥ずかしくない響きなのに、性行為だと恥ずかしく感じる……)

澪「い、いやなんでもない! なんでもない!」ペラペラペラペラ

梓「そうですか……」

澪「こんなの読んだって全然恥ずかしくないからな!」ペラペラ

梓「はあ……」

澪「……あれ?」

81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 18:29:16.45 ID:rVHg69UiO

梓「どうかしましたか?」

澪「いや……」ペラペラ

澪(おかしい。このノート……)ペラペラ

梓「……?」

澪(どこのページを見ても男の人の…………………ことについて載ってない)ペラペラ

澪「……梓」

梓「なんですか?」

澪「授業でその……身体のこととかで男の人のことについてもやったよな?」

梓「……?」



梓「『おとこ』ってなんですか?」

83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 18:34:19.23 ID:rVHg69UiO

澪「いや……男は男だろ?」

梓「……? その『おとこ』というのは保健の授業で習うんですか?」

澪「……」

澪(まさか……いや、嘘だ……そんなわけ……)


梓「もう一度聞きます。『おとこ』ってなんですか?」

97:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 20:08:27.25 ID:rVHg69UiO

澪(この世界に『男』はいない。
  いるのは『女』だけ。
  歴史の教科書を流し読みしてみたが、男性などどこにも載ってない。
  歴史上の人物はみんな女になっている。
  その関係で発達しなかった技術や、逆に発達しすぎたものもあるみたいだ。
  
  さらに性別がないのに、どうして人は繁殖できるのかというと……ああ、恥ずかしい!
  なんだかよくわからないが、『受け』や『攻め』など先天的に遺伝子に刻まれた染色体?
  なんだかよくわからないが、とにかくなんだかイロイロとあるらしい。
  ひとつ確かなのは、女性どうしであるためなのか、わたしが知ってる世界よりも人口はかなり少ない。
  妊娠する確率が極めて少ないらしい。
  ほかにもイロイロあるけど、とにかくわたしの世界とはかなり異なっている)

澪(そう……世界がちがう……)

梓「……なんだか澪先輩、様子がヘンですけど……」

澪「いや、大丈夫だ……なんにも。
  それよりジュース、おかわりするか?」

梓「それじゃあもう一杯、いただいてもいいですか?」

澪「わかった」

澪(もしかしたら、わたしは『パラレルワールド』に来てしまったのかもしれない……)

98:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 20:12:38.80 ID:rVHg69UiO

澪(聡の代わりの律の『妹』の件も、それなら納得できるし……)

梓「それで澪先輩、わたしに話ってなんですか?」

澪「……」

澪(どうやって話したら信じてもらえるのかな……)

梓「澪先輩?」

澪(というか、はたして梓はわたしのことが好きなのか……もし好きだったら危険だし……)

澪「あ、あのさ、梓……」

梓「なんですか?」

澪「あ、あ、梓は……わたしのこと…………スキ?」

梓「……声が小さくて聞こえないです」

99:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 20:14:25.98 ID:rVHg69UiO

澪「だ、だから……梓はそのー……わたしのこと、みんなみたいに……好きなのかなあ、って」

梓「…………」

澪「梓?」

澪(ま、まさか……!)

梓「わたしは澪先輩のこと、好きですよ?」

澪(終わったー!!)

100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 20:20:12.59 ID:rVHg69UiO

梓「あ、でも勘違いしないでくださいよ?
  べつに女として好きってわけじゃないですからね?」

澪「え? そうなの?」

梓「はい」

澪「本当に本当に本当にか?」

梓「だったら澪先輩のことおそってるかもしれませんよ」

澪「…………」

澪(信用していいのか?
  しかし、どっちにしようどうすることもできないしな……)

澪「あの、さ。
  梓、今からわたしはヘンなことを言う。でもそれは冗談でもなんでもない。
  わたしは真剣に話す」

梓「はあ……なんですか?」

102:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 20:26:20.87 ID:rVHg69UiO

澪「簡単に言うと、わたしはべつの世界の人間かもしれないんだ」

梓「……」

澪「いや、まだ完璧に確信があるわけじゃないんだけど、わりとこの考えはあってるんじゃないなって思うんだ」

梓「……」

澪「さっき、わたし『男』って言うのについて話しただろ?」

梓「しましたね」

澪「わたしの世界には『男』っていう異性……ああ、なんていうか、わたしたちとよく似た、けれどちょっとちがう生き物がいるんだ」

梓「はあ……」

澪「ほかにもイロイロある。たとえば……」


澪(わたしは時間をかけて、丁寧に梓にパラレルワールド説を話してみた。
  その結果は……)

梓「うーん、なるほど」

103:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 20:30:05.48 ID:rVHg69UiO

澪「信じて、とは言わない。
  ただ、頭の片隅にでも留めておいてくれるだけでもいいんだ」

梓「いえ、信じますよ」

澪「そうだな。なにを馬鹿なことをしゃべってんだと思うかもしれない……って、信じてくれるの?」

梓「はい。澪先輩はそんな冗談を言う人ではありませんし」

澪「でも、かなり突拍子もない話しだと思うんだけど……」

梓「逆に突拍子なさすぎて信頼できます」

澪「梓……」

梓「まあ、単純に面白そうだなあとも思いますしね」

澪「そ、そうか……」

105:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 20:35:45.30 ID:rVHg69UiO

梓「でも、仮にここが澪先輩にとってパラレルワールドだったとして、どうするんですか?」

澪「どうするって?」

梓「いや、帰ろうとはしないのかなあと思って……」

澪「帰りたい! 絶対に帰りたい!」

梓「そんなに必死にならなくても……」

澪「だって……」

梓「やっぱり澪先輩の知ってる皆さんとは、なにかちがうんですか?」

澪「全然ちがうよ。まず、わたしは同性に襲われた経験なんてないし……」

107:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 20:39:43.17 ID:rVHg69UiO

梓「へー。澪先輩ならどこへ行っても、もてもてかと思ってましたけど……」

澪「みんな、わたしに対してあんな恐ろしい好意を剥き出しになんかしてない」

梓「へえ」

澪「本当に別人みたいだ」

梓「でも……」

澪「え?」

梓「人を好きになるってことには、なんらかの変化がツキモノだと思いますけどね」

108:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 20:44:30.17 ID:rVHg69UiO

澪「……たしかに、それはそうかもしれない」

梓「いえ、そんなに深く考えないでください。
  わりと軽いノリで言ったんで……」

澪「そうか……」

梓「そういえば、わたしはどうなんですか?」

澪「どういう意味?」

梓「だから、みなさんの性格が澪先輩の知っているものとちがうんでしょ?
  わたしはどうなのかなあ、と思って出てきた質問なんですけど……」

澪「梓は……特に。
  いや、若干ちがう気がしないでもないけど……まあそれほどは」

梓「そうですか」

109:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 20:50:19.37 ID:rVHg69UiO

澪(なんだか安心してるように見えるけど、気のせいかな……)

梓「それより、これからどうします?」

澪「……どうしような」

澪(なにか手がかりみたいなものがあればいいけど。
  起きたらもうワケのわからない状況になってたし……)

梓「なにか手がかりはないんですか?」

澪「正直、浮かばない」

梓「澪先輩はいつ頃から、自分の身の回りがおかしいって気づいたんですか?」

澪「いや、目を覚まして初めて気づいたから……」

113:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 20:55:35.37 ID:rVHg69UiO

梓「寝て、起きたらちがう世界にいたって……本当に漫画みたいですね」

澪「はたから見たらそうかもしれないけど、わたしは真剣だ」

梓「うーん、じゃあ……どこで目を覚ましたんですか?」

澪「え? えーと、律の家……かなあ?」

梓「律先輩の家のどこなんですか?」

澪「……えっと、律の部屋だったかなあ……」

澪(なんだか律とのこと思い出して恥ずかしくなってきた……)

梓「わかりました。律先輩の部屋に行きましょう」

澪「どうして!?」

114:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 20:59:36.62 ID:rVHg69UiO

梓「それはだって、一番最初に目が覚めた場所なんですから、手がかりがありそうじゃないですか」

澪「……そう、か?
  いや、たしかにそうかもしれないけど……」

梓「……?
  どうしたんですか? 顔が赤いですよ?」

澪「べ、べつになんでもないから!」

梓「とにかく、一旦、律先輩の家に行きますよ!」

澪(ううぅ……さっき、あんまりよくない感じでわかれたからなあ……)

115:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 21:03:21.28 ID:rVHg69UiO




ピンポーン


梓「すみませーん。ごめんくださーい」

澪(頼む。今だけ留守にしててくれ!)

梓「誰かいませんかー」

澪「梓、誰も家にいないみたいだし帰らな……」


ガチャ


 「はーい、なんですかー?」

澪「……あ」

澪(律の……『妹』)

117:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 21:07:33.87 ID:rVHg69UiO

 「あ、澪ネエ……と、たしか姉ちゃんの後輩の人だっけ?」

梓「はい。突然ですみませんけど、律先輩はいますか?
  少し律先輩の部屋をのぞかせてほしいんですけど」

 「ああ、ごめんなさい。姉ちゃん、さっき出かけちゃったんだよね。
  なんだかすごいウキウキしながらさ」

澪「そうなのか、じゃあ、帰らなくちゃ。
  なあ梓?」

 「あ、でも澪ネエなら姉ちゃんの部屋に入っても大丈夫だと思うよ」

梓「じゃあせっかくなんで上がらせてもらいましょう」

 「どうぞ、どうぞ」

121:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 21:15:35.36 ID:rVHg69UiO




梓「なにか手がかりみたいなのはありそうですか?」

澪「いや……特にこれと言って……」

澪(ていうか、勝手に許可かなく人の部屋に入るのはどうも……。
  律の部屋とは言え、少し良心が痛むな……)

梓「なにか律先輩とあったんですか?」

澪「え?」

梓「妙にこの部屋に来てからソワソワしてるから言ってみただけです」

澪「ああ、ちょっとな。
  目が覚めて……その、いきなり裸で目が覚めて、それで気が動転して……。
  なんだかイロイロ話してたら律を泣かせちゃったみたいで……」

梓「そうだったんですか」

澪「そうなんだ」

梓「でも、いいじゃないですか。
  今は律先輩も気分がいいらしいみたいですし」

澪「うん……」

澪(なにかあったのかな、律のヤツ……)

122:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 21:19:28.04 ID:rVHg69UiO

梓「それで。本当に手がかりはないんですか?」

澪「ない、みたいだ。
  うん、特にこの部屋にはないみたいだ、手がかりは」

梓「長居するのも気が引けますし早めに出ましょっか?」

澪「うん、そうだな」

123:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 21:24:11.61 ID:rVHg69UiO




梓「どこかに手がかりはないんですかね?」

澪「梓、無理してわたしに付き合わなくてもいいんだぞ?」

梓「いいですよ。今日は比較的時間がありますし」

澪「そうか……そうだ」

梓「なんですか?
  なにか手がかりに思い当たりでもあるんですか?」

澪「いや、梓に聞きたいな、と思って。
  こっちのわたしはどういう人間なんだ?」

梓「澪先輩のことについてですか。そうですね……」

124:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 21:28:52.26 ID:rVHg69UiO

梓「まあイロイロとウワサの多い人ですね。
  軽音部の人、全員と関係をもっているとか。
  あとファンクラブの人たち全員と乱交パーティーをした、とか」

澪「…………」

梓「一部のウワサではセックス依存症なのでは、とも囁かれています」

澪「…………」フラーリ

梓「……ととっ、大丈夫ですか?」

澪「ごめん、梓。少し目まいが……」

梓「そうですか。まあ悪評が多い人ですからね
  運動もできるし勉強もできるし、ファンも多いんですけどね」

澪「そうか……」

125:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 21:34:53.03 ID:rVHg69UiO

梓「澪先輩はそういうことをしてるんですか?」

澪「すくなくともわたしはしてないからな!」

梓「そんなに強く否定しなくても……」

澪「いや、べつの世界とは言え、自分がそんなふうになってると思うと……ん?」

澪(あれ? じゃあ……どうなるんだ?)

梓「とりあえず、澪先輩」グイッ

澪「な、なんで腕を組むんだよ?」

梓「いいじゃないですか。わたしの知ってる澪先輩はかなり冷たい人ですから
  たまにはこういうのも、ね?」

澪「……わたしの知ってる梓はこんなふうに腕を組んだりしてくるヤツじゃないな……」

梓「……じゃあやっぱり別人なんでしょうね」

138:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 22:24:07.70 ID:rVHg69UiO

梓「せっかくですし、喫茶店にでも入りませーか、澪先輩?」

澪「喫茶店? まあ、目的地もないしべつにいいけど……お金がない」

梓「あ、サイフはもってなかったんでしたっけ?」

澪「うん……こっちのわたしの部屋にもなかったし」

梓「いいですよ。せっかくだからおごらせてください」

澪「いいのか?」

梓「いいんですよ。澪先輩と出かけるなんてそんな機会はそう、ないでしょうし」

140:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 22:27:59.92 ID:rVHg69UiO




梓「さ、なんでも頼んでください」

澪「気持ちは嬉しいけど、なんだか申し訳ないから一番安いホットでいいよ」

梓「そんなに遠慮しなくていいのに……」

澪「いいんだよ。後輩におごってもらうってだけでも格好つかないしな」

梓「まあ、それもそうかもしれないですね」

144:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 22:34:28.10 ID:rVHg69UiO

梓「そういえば、澪先輩の軽音部はどんな感じなんですか?
  真面目に練習したりしてるんですか?」

澪「いや、全然。ティータイムと雑談で活動時間がつぶれないほうが珍しいくらいだ」

梓「そうなんですか? わたしたちとあまり変わらなさそうですね」

澪「なんだ、そっちの軽音部もなんだ」

梓「あ、でも、ライブの前とかはきちんと練習しますよ」

澪「それは、わたしたちも同じだ」

梓「ちがう世界でも、すごく似てることってあるんですね」

澪「なんだか不思議だな」

146:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 22:37:51.40 ID:rVHg69UiO

澪「まあ、でも本当に時々だけど、険悪なムードになったりもするけどな」

梓「時々、なんですか?」

澪「うん、それだって片手で数えられるぐらいだ」

梓「少し羨ましいかも……」

澪「まるで、頻繁に険悪な雰囲気になるみたいな言いかただな」

梓「実際なるんですよ」

澪「どうして?」

梓「澪先輩、あなたのせいでしょう?」

澪「え? わたし?」

梓「あ、すみません。
  こっちの澪先輩です……って、ややこしいなあ」

152:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 22:44:09.21 ID:rVHg69UiO

澪「確かに、二人とも同じ名前で同一人物だもんな」

梓「えーと、じゃあ、あなたのことは澪先輩のままで、こちらの澪先輩のことはミオ先輩と呼びましょう」

澪「ちがいがわからないんだけど」

梓「わかってください。
  それで、そのミオ先輩をめぐって、唯先輩とムギ先輩と律先輩が争いをすることがわりとあるんですよ」

澪「三人が争ってる姿なんて、全然想像できないな」

梓「まあ、決して仲が悪いわけではないんですけど……本番直前までやられるとちょっと疲れます」

澪「苦労してるんだな」

153:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 22:49:12.88 ID:rVHg69UiO

梓「でも、ミオ先輩には本当に忠実なんで、まだマシですけどね」

澪「忠実って……どんなふうに?」

梓「最近だと、イライラしてたミオ先輩が唯先輩に
  『ケーキをわたしによこせ』と言ったら泣きながら渡してましたよ。
  それに二人の先輩が対抗してまたケンカになったんですけど……」

澪「……わたしたちとは本当にちがうな」

梓「澪先輩のほうの軽音部は、澪先輩に従順ってわけじゃないんですか?」

澪「うん、わたしが練習しようって言っても結局練習しないなんてザラだ」

梓「ミオ先輩が羨ましいですか?」

澪「いや……やっぱり、わたしはわたしの軽音部が一番好きだ」

155:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 22:53:20.11 ID:rVHg69UiO

梓「澪先輩は、軽音部が好きなんですか?」

澪「まあ……決して真面目な部活じゃないけど……。
  みんなとは……離れたくないって思ってるし。
  ずっと放課後ティータイムとして演奏できたらなあ、って時々思うんだ」

梓「放課後ティータイム? なんですかそれ?」

澪「え? 軽音部のバンド名だろ?」

梓「わたしたちとは全然ちがいます」

澪「……どんなバンド名なんだ?」

梓「『ミオ☆ミオ』です」

159:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 22:57:24.55 ID:rVHg69UiO

澪「……すごく、イヤだな。
  ていうか、決めたのは誰?」

梓「さわ子先生です」

澪「あれ? わたしたちと同じだ」

梓「唯先輩と律先輩とムギ先輩が、ミオ先輩の名前に絡めたバンド名で言い争いしてて。
  二時間の争いの末、さわ子先輩が決めたんです」

澪「二時間って……。
  ていうか、ほとんど名前が決まる過程は同じなのに名前にずいぶん差があるな」

梓「まあ、みなさんミオ先輩信者みたいなものですから」

澪「怖いな」

梓「ええ。いつかミオ先輩に殺されるんじゃないですかね?」

澪「やめて」

162:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 23:03:47.23 ID:rVHg69UiO

梓「まあ、それに澪先輩とちがって、ミオ先輩には全然軽音部に対して思い入れがないみたいですし……」

澪「そうなのか?」

梓「最近は全然、部活に来ないですし。
  来ても楽器は持って来なかったり……」

澪「……そうなのか」

梓「だから最近は作詞は澪先輩以外の四人でやってるんですけど……」

澪「わたしじゃないのか……」

梓「ええ。しかし、これがまたひどくて。
  『Mio&Mio』とか『澪はおかず』とか、もうね……」

澪「…………」

170:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 23:09:37.19 ID:rVHg69UiO

梓「そちらは作詞、作曲、誰がやってるんですか?」

澪「作曲はムギが全部やってくれてる。
  作詞は一応わたしだ。あと、時々だけど唯が作曲をやることもある」

梓「いいなあ……」

澪(……やっぱりイロイロとズレがあるな。
  この時期に『ごはんはおかず』とか『U&I』はできてなかったのに……)

梓「とりあえず、あの三人の先輩をどうにかしないと、やっぱりダメなんでしょうかね?」

澪「そうかもな……」

梓「今年は先輩たちとの最後の学園祭ライブなのに……」

澪「梓……」

174:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 23:17:10.87 ID:rVHg69UiO

梓「……と、今はそんなこと言ってる場合じゃありませんね。
  がんばりましょう、澪先輩」

澪「あ、うん……ありがとう、梓」

梓「なんだかヘンな気分です、澪先輩にお礼を言われるのは」

澪「話を聞くかぎりそうなんだろうな」


ウダダダーウダダダーウラウララー♪


澪「……電話? わたしのだな」

澪(あれ? なんだ、なんかおかしくないか、このケータイ。
  なんだろ、違和感が……)

梓「澪先輩、でないんですか?」

澪「あ、うん……」

175:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 23:21:47.74 ID:rVHg69UiO

澪「……もしもし」

 『…………』

澪「……? も、もしもし?」

 『秋山……澪……』

澪「は、はい。そうですけど……」

 『……今すぐ学校に一番近いアイス屋に来い……』

澪「え? ちょっと……」


……ツーツー

176:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 23:24:56.92 ID:rVHg69UiO

梓「誰からだったんですか?」

澪「いや、それが誰だかわからなかったんだ」

梓「イタズラ電話かなにかですか?」

澪「わからない。ただ、学校付近のアイス屋に来いって、電話の相手は言ってきた」

梓「……行きますか?」

澪「え? 行くの?」

梓「行かないんですか?」

澪「いや、だって……怖いし……」

梓「もしかして、澪先輩って怖がりなんですか?」

澪「え゛!?」

178:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 23:31:25.95 ID:rVHg69UiO

梓「ミオ先輩は全然そんなことないみたいですけど、澪先輩はもしかして……」

澪「ち、ちがう! わ、わたしはただ、もしかしたら危ないかもしれないと思って……!
  そ、それに梓を巻き込むわけにはいかないしな!」

梓「……ふふふ。澪先輩の怖がり」

澪「……もういい」プイッ

梓「……もしかして拗ねちゃいましたか?」

澪「拗ねてない」

梓「じゃあ、アイス屋に行きましょっか」

澪「……ん?」

澪(……あの声ってひょっとして……)

澪「わ、わかった。梓がそこまで言うなら行ってやろうじゃないの」

梓「……無理しなくていいんですよ?」

澪「無理してないっ!」

梓「……澪先輩、泣いてませんか?」

澪「泣いてないっ!」

181:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 23:35:19.68 ID:rVHg69UiO




澪(もし、わたしの予想が当たってたら……あの電話の主は……)

梓「ふぅ……しかし、今日も暑いですね。
  ただ歩いてるだけで汗かいちゃいますね」

澪「そうだな……」

梓「せっかくですし、アイスも食べていきません?」

澪「…………」

澪(こっちの梓はよく食べるな……と、そろそろアイス屋だ)

183:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 23:39:51.42 ID:rVHg69UiO

梓「さすがに時期が時期なだけに繁盛はしてますけど……」

澪「うん。でも、わたしの予想してる人間がいない」

梓「予想? さっき澪先輩に電話をかけた人の予想ですか?」

澪「そんなところ」

 「あ、澪ちゃんだあ!」

澪「え?」

185:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 23:44:14.90 ID:rVHg69UiO

唯「やっほー、澪ちゃーん……と、あれ? あずにゃん?」

梓「こんにちは、唯先輩。どうしたんですか、唯先輩。
  こんなところで」

唯「わたしはこれから澪ちゃんとアイスデートしようと思って来たんだよ。
  あずにゃんはなにしてるの?」

梓「……まあ、簡単に言いますと、澪先輩とデートしてました」

澪「……はい?」

唯「…………」

梓「ね? 澪先輩?」

澪「な、なにを言ってるんだ梓!? わたしと梓は……」

唯「……」

澪(ひいっ! こんな顔した唯を初めて見た……)

186:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 23:49:16.61 ID:rVHg69UiO

澪(……って、あれ? おかしい。今、唯はなんて言った?)

澪「唯」

唯「なあに、澪ちゃん?」

澪「唯はわたしとここに来る約束でもしてたのか?」

唯「うん、ついさっきだけどね。
  アイス食べに行こ、って電話したもん」

梓「そうなんですか?」

澪「いや、そんなニュアンスじゃなかった気がするんだけど……」

唯「もう! 細かいことはいいからアイス食べよ!」

187:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/16(土) 23:55:29.03 ID:rVHg69UiO




澪「結局アイス食べて、色んな店回ってたらこんな時間になっちゃったな……」

梓「さすがに疲れましたね……」

澪「唯は異様に元気だったな……」

梓「澪先輩とデートできて嬉しかったんじゃないんですか?」

澪「……デート、か。
  そういえば、唯は梓のことをあずにゃんって呼ぶけど、そのあだ名は誰がつけたんだ?」

梓「あずにゃんってあだ名ですか?」

澪「うん」

190:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 00:01:22.32 ID:L/rfmCtPO

梓「誰だと思いますか?」

澪「ちなみにわたしの世界では、唯が梓にあずにゃんとつけたんだ」

梓「そうなんですか? 唯先輩がわたしに?」

澪「……そのリアクションを見るかぎり、唯ではないから……律とか?」

梓「ハズレ、ちがいます」

澪「……じゃあ、ムギ?」

梓「やっぱりちがいます」

澪「もしかして、こっちの世界のわたし?」

梓「正解です」

澪「……なんだか信じられないな。わたしがあずにゃんなんてあだ名を考えるなんて……」

193:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 00:08:13.58 ID:L/rfmCtPO

梓「そうですか? 澪先輩の作詞のセンス的に普通にありえると思いますけど?」

澪「どういう意味だ?」

梓「……ええと、まあ、察してください」

澪「そういえば、調子が悪いときの歌詞を見せると、みんなの反応もイマイチだな……」

澪(そのときのわたしは調子が悪かったんだな。
  きっと普段のわたしなら、『あずー』とかもっとステキなあだ名をつけてたにちがいない』)

梓「あ、そういえば澪先輩の歌詞で思い出したんですけど。
  昨日、実はミオ先輩、部活に来てたんです」

澪「それがどうかしたのか?」

梓「いえ。それで、少し奇妙なことをしてたから……」

澪「奇妙なこと?」

195:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 00:16:37.05 ID:L/rfmCtPO

澪「ヘンなことって具体的になにをしてたんだ?」

梓「唯先輩とムギ先輩と律先輩のケータイを借りて、なにかいじってました」

澪「ケータイをいじる……」

梓「そんなに時間はかかってませんでしたけど……。
  わたしは、さわ子先生の愚痴に付き合わされていたからなにをしていたのか、ハッキリとは知らないんですけど……」

澪「……それだけ聞いてもなあ……」

梓「やっぱりわかりませんよね……」

澪「ケータイをいじる……うん? 待てよ」

澪(あのさっきの電話の主は唯だった。そう唯本人は言った。
  だけど、もしかしたら……)

梓「どうしたんですか? 急にケータイをいじりだして」

199:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 00:22:54.00 ID:L/rfmCtPO

澪(……そうだ、サイフをもってなかったことに気づいた時点で、考えるべきだったんだ!)カチカチ

澪「……梓」

梓「はい?」

澪「……梓、少し黙ってて。今から電話するから」

梓「誰にですか?」



澪「ムギに」

201:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 00:29:57.44 ID:L/rfmCtPO

梓「そ、それって、ムギ先輩がなにか今回のことについて関係あるってことですか?」

澪「……」

梓「澪先輩?」

澪「ちょっと待って、梓。頭の中の考えが整理つかないから」

梓「…………」

澪「……いや、考えるより先にムギに電話をかけたほうがいいな」カチカチ


プルルルル


紬「はい、もしもし」

澪「……わたし。誰だかわかる?」

紬「澪ちゃん!? 澪ちゃんなの!?」

203:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 00:37:33.09 ID:L/rfmCtPO

澪「ムギに頼みたいこととがあって、電話したんだ」

紬『いいよ! なんでも言って! わたし、澪ちゃんの望みならなんでも聞くから!』

澪「……ムギに頼みたいのは、わたしの電話の場所を特定してほしいってことなんだ」

紬『うんうん』

澪「実はわたしは……」


澪(それから10分程度の会話をして、わたしはムギとの電話を切った)

梓「ムギ先輩となんの電話をしてたんですか?」

澪「うん、それについてはこれから話しする」

205:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 00:43:08.92 ID:L/rfmCtPO



梓「……それって本当なんですか?」

澪「うん、予想だけど。たぶん当たってると思う」

梓「それでムギ先輩にお願いしたんですね。
  たしかにムギ先輩の家なら、そういうこともできそうですもんね」

澪「正直、ムギが頼りにならなかったら手詰まりだったけど運がよかった」

梓「しかし、ムギ先輩からの返事遅いですね」

澪「そうだな……まあ、簡単にはできることじゃないのかもしれない」

梓「あ、じゃあせっかくだから待ってる間に小話でもしましょうか?」

澪「どんな話?」

206:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 00:47:14.17 ID:L/rfmCtPO

梓「はい、うちの学校で最近流行りだしたある怪談話です」

澪「い、いい! そういうのは遠慮する!」

梓「そうですか」クスクス

澪「……こっちの世界では桜校に怪談まであるのか……」

梓「澪先輩の学校ではないってことですか?」

澪「うん。そういう話はあまりないな。特に最近なんて……あ、電話だ」

梓「ムギ先輩からですね?」

澪「うん……。
  ……もしもし?」

紬『もしもし、澪ちゃん?』

208:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 00:53:56.06 ID:L/rfmCtPO

澪「……うん、そうか。わかった、ありがとう。それで、その場所はどこなんだ?」

紬『学校の音楽室』

澪「え?」

紬『澪ちゃん、わたし精一杯応援してるから、頑張って!』

澪「あ、うん。じゃあ……バイバイ」

梓「さて、これで目的地もわかりましたね。もちろん、わたしもついて行っていいですよね?」

澪「最初はひとりで行くつもりだったんだ。い、いや、でも……」


澪「おねがい! ついて来て、梓」

梓「頭下げられなくてもついていきますよ、澪先輩」

211:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 01:02:43.61 ID:L/rfmCtPO




澪「よ、よ、夜の学校ってちょっと怖いけどわたしがいるから、だ、だだだ大丈夫だぞ、梓」

梓「あのー、澪先輩。
  腕を絡めて、ついでに体重をかけられると歩きづらいです」

澪「あ、あ、梓が怖いかなあと思って……わ、わたしはべつにそんなにこ、こ、怖くないけどな!」

梓「……はいはい」

澪「……なんだその顔は?」

梓「生まれつきです……。
  着きましたよ、音楽室……もとい、音楽準備室。軽音部部室」

澪「よ、よし。じゃああとは待機だ」

214:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 01:08:18.40 ID:L/rfmCtPO

梓「いや、待機してどうするんですか?
  部室に入らないと」

澪「そ、そうだな……」スーハー

梓「大丈夫ですよ、澪先輩。わたしがついています」ギュッ

澪「……ありがとう、梓」

梓「じゃあ……せーので扉を開けますよ」

澪「……わかった」

梓「せー!」

澪「のっ!」


ガチャリ……


 「だ、誰だ!?」

216:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 01:15:15.96 ID:L/rfmCtPO

梓「…………」

澪「……梓」

梓「……なんですか、澪先輩?」

澪「わたしの予想、当たってただろ?」

梓「……はい、名推理ですね」

 「お前たちは……」

澪「……ひとりは、お前の後輩の中野梓。わたしは……」



澪「お前だよ、秋山澪」

218:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 01:20:17.65 ID:L/rfmCtPO




澪『さて、どうしてムギに電話してたのかって言うのを説明しなきゃいけないんだけど……。
  どこから説明しような』

梓『澪先輩はいったいなにがわかったんですか?』

澪『今回、わたしがパラレルワールドに来ることになった原因……ううん、これは本当かわからないけど。
  ただ、わたしに電話をかけてきた謎の人物についてはわかった』

梓『それは唯先輩じゃなかったんですか?』

澪『ちがう。たしかに唯はわたしに電話をかけたみたいだけど、あれは明らかに唯じゃない』

梓『じゃあ……誰なんですか?』

澪『その前に、梓。今回、わたしがパラレルワールドに来たとすると、だ。
  この世界のわたしはどこにいるって話にならない?』

梓『たしかに……』

225:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 01:26:17.27 ID:L/rfmCtPO

澪『ズバリ、答えを言うと。おそらく、この世界のわたし、『ミオ』はこの世界にいる』

澪『そもそもな、梓。最初から奇妙なことがあったんだよ』

澪『わたしが唯一持っていたのはケータイだけ。
  でも、奇妙だ。ケータイがあるのになぜかサイフをわたしはもっていない』

澪『普通に考えて、普段のわたしだったらケータイをもってるならサイフももってる』

澪『そして、ケータイを見てみた。メールを見てみたらすぐにわかった。
  わたしのケータイじゃないってことが』

澪『さらに梓から聞いた、昨日のわたしが三人のケータイをいじっていたっていう証言』

澪『これはたぶん、三人のケータイに登録されてるわたしのケータイ番号をいじってたんだ』

226:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 01:34:28.67 ID:L/rfmCtPO

澪『わたし……この場合はミオの番号を』

梓『どうしてそんなことを?』

澪『どういう必要性があるのかは全くわからない』

澪『でも、そうすることによる意味はわかる。
  おそらく、ミオは自分のもってるもうひとつのケータイの番号に書き換えたんだろう』

梓『ケータイを二つもっていた?』

澪『たぶんな。いや、わたしがムギに電話したとき、ムギはすぐにはわたしだとわからなかっただろ?』

澪『あれは本来登録されていたわたしのケータイ番号が書き換えられていたからだ。
  だから、名前が表示されなかった』

澪『そして、唯がわたしにかけたと言っていた番号。
  あれも、ミオのもうひとつのケータイ』
  
澪『本来のケータイは、わたしがもってるものだけど、唯のも書き換えられていたから……』

梓『澪先輩のもっているケータイにはかからず、ミオ先輩のケータイにかかった……ってこと?』

澪『たぶん』

227:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 01:40:17.94 ID:L/rfmCtPO

澪『今、ムギには、
  『ムギのケータイに登録されているわたしのケータイをどこかに落としたから、落とした場所を特定して』
  と言った』

梓『じゃあ、そこにミオ先輩は……』

澪『うん、たぶんいる』

梓『なんだかすごい話ですね。
  同じ人間が二人もいるなんて……』

澪『まあな……』

梓『でも澪先輩、自分の声と同じ声してる人の声の主が、誰がわからなかったんですか?』

澪『いや、なんとなくわかってたよ。
  けど、案外自分の声ってわからないもんなんだよ』

梓『……なるほど』

231:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 01:47:08.10 ID:L/rfmCtPO




ミオ「まさかな……場所を特定されるなんて……どうしてわかった?」

澪「……梓、とりあえず明かりをつけて」

梓「はい」

ミオ「質問に答えろよ!
   なんでお前ら、わたしの場所が特定できたんだよ!?」

澪「うるさい。そんなことよりわたしの質問に答えて」

澪(よし、明かりが完璧につく……って)

澪「えええええ!? これがわたし!?」

ミオ「……」

235:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 01:53:32.74 ID:L/rfmCtPO

梓「み、ミオ先輩……その髪の毛どうしちゃったんですか……」

ミオ「……文句あるのか? わたしがどんな髪型にしようが、わたしの勝手だろうが」

澪「いや、でも……」

ミオ「……どうやらもうひとりのわたしは髪を染めたことないんだな」

澪「あ、あるわけないだろ?
  ていうか、その口ぶりだと髪をなんかいも染めてるみたいだな」

梓「言い忘れてましたけど、ミオ先輩はけっこうな回数、髪を染めてます」

澪「……いや、でもさすがにショッキングピンク色の髪は……」

ミオ「……完璧に別人にしか見えないだろ?」

236:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 02:01:01.56 ID:L/rfmCtPO

澪「ピンク色に髪を染めてどうするつもりなんだ?」

ミオ「べつに。深くは考えてないな」

梓「でしょうね。これから推薦で受験する、人間のする行動じゃないでしょ。
  ていうか、よくそんな色に染まりましたね」

ミオ「ふふ……なんかいも染めてるからな」

澪「もしかして……そのままどこかへ逃げるつもりだったのか?」

ミオ「そっ。こんなくだらない連中からオサラバしたかったからさ」

澪「だから、わたしをパラレルワールドに呼んだのか?」

238:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 02:08:00.44 ID:L/rfmCtPO

ミオ「いやいや、なんか勘違いしてないか?
   わたしは確かにお前が来ることをわかっていたし、実際お前をわたしの代わりにして逃げようとした」

澪「…………」

ミオ「けど、この世界にお前を呼んだのはわたしじゃない」

澪「じゃあ、誰だ?」

ミオ「さあ? そもそも、わたしも昨日までは半信半疑……
  いや、パラレルワールドなんてもの全然信じてなんていなかったんだよ」

澪「じゃあ、誰がお前にわたしのことを教えたんだ?」

ミオ「一週間前。メールがわたしのケータイに届いてたんだよ。
   妙に長い文章でさ。
   パラレルワールドからもうひとりのわたしが、律の家に現れるってメールがな」

澪「……」

240:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 02:14:55.77 ID:L/rfmCtPO

ミオ「差出人は不明だ。だから、わたしもほとんど遊びのつもりで、
   仮にもうひとりのわたしがいたら、っていう仮定で前日までイロイロ準備してたんだよ」

澪「……なんで?」

ミオ「……あ?」

澪「どうして、お前はここにいるんだ?
  なんで、お前の代わりのわたしが現れたのに、遠くに逃げずにまだこんなとこにいるんだ?」

梓「そうですよ。先輩の言うとおりですよ。なんで、こんなとこにいるんですか?」

ミオ「…………」

242:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 02:19:54.42 ID:L/rfmCtPO

ミオ「べつに深い理由はないし、こんなに簡単に見つけられるなんて思わなかったし……」

澪「……それだけ?」

ミオ「そもそも、わたしがお前をわたしの代わりにしようと思ったのも、ただひとつ。
   鬱陶しかったからだ」

澪「……」

ミオ「なんでか知らないけど、周りの連中はみんなわたしに惹かれてく。
   わたしってば、それで色んなヤツの相手をしてやった」

梓「……」

ミオ「ていうかさ、ぶっちゃけると賭けてたんだよ」

澪「賭け……?」

245:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 02:23:58.17 ID:L/rfmCtPO

ミオ「今日中に、お前にわたしが見つけられなければ、わたしはここから去る」

澪「……」

ミオ「今日中にお前に見つけられたら……」

澪「見つけられたら、なんだ?」

ミオ「お前を一生、ここの住人にして、わたしがお前の世界に行ってそこの住人になる」

澪「どういうこと……?」

ミオ「理屈はよく知らないけど、この世界のモノでなんらかの傷を負うとパラレルワールドの住人は帰れなくなるらしい。
   なんかメールにそう書いてあった」

澪「……!」

246:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 02:28:42.81 ID:L/rfmCtPO

ミオ「そしてね。傷を負わせた人間が、その傷を負った人間と同一人物だった場合……」


ミオ「その世界に行けるんだよ」


梓「澪先輩、なんだか非常にまずい気がするんですけど気のせいですかね?」

澪「いや、同じ人間として思うけど、あの目つきは危ないと思う……」

ミオ「わたしはいいかげんウンザリなんだよ。こんな女しかいない世界なんかさあ!」

澪「な、な、な、ナイフ!?」

ミオ「嘘じゃないっ!」

247:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 02:32:01.82 ID:L/rfmCtPO

梓「あわわわ!?」

澪「ど、どどどどどうしようあずさああああ!?」

梓「いやいやいやわたしにフラないでくださいよ!」

澪「そ、そ、そんなこと言ったって迫ってくるしいいいい!」

梓「とにかく逃げましょう! 傷つけられるどころか、殺されます!」

ミオ「逃げるなああああああああ!」

248:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 02:37:47.26 ID:L/rfmCtPO




梓「えらいことになりましたね……」

澪「死にたくない死にたくないいやだあああ死にたくないぃ」シクシク

梓「声出さないでくださいよ。かろうじて逃げ出して、隠れたのに。
  見つかったらどうするんですか?」

澪「だってぇ……」

梓「さっきの推理してるときの澪先輩はカッコイイと思ったのに……」


ミオ「どこにいるんだ!? 出てこいよ!!」

梓「ううぅ……確実に足音は近づいてるし……」

澪「終わった わたしの人生が ヒラヒラと」

梓「……ダメだこりゃ」

250:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 02:44:09.58 ID:L/rfmCtPO

ミオ「なあ、頼むから出てきてくれよ? 今出てくるならそんなにひどい目にあわせないから……」


澪「あ、梓、ああ言ってるよ?」

梓「信用できますか、あのナイフ。妙にゴツいですし」

澪「て、ていうか、あれは本当にわ、わわわわたしなのか……」

梓「まるで別人ですね。でも、わたしの気のせいですかね?
  なんだかミオ先輩、心細そうに見えるんですけど」

澪「え……?」

ミオ「は、はやく出てこいよ。今なら……そうだ、安全ピンの針をチョコンと刺すだけで許してやるっ」

澪「……もしかして」

251:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 02:47:43.49 ID:L/rfmCtPO

澪「梓、ひとつ頼みがある」

梓「なにか必勝方でも浮かびましたか!?」

澪「……うん、たぶん。アイツはわたしだから、たぶん上手くいくはずなんだ」

梓「わかりました、とにかく教えてください」

澪「……」ゴニョゴニョ

梓「……そんなことでいいんですか?」

澪「いいんだ。相手はわたしだ。だからきっと上手くいく」

ミオ「は、早く出てこいって言ってんのがわからないのか!?」

255:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 03:00:28.91 ID:L/rfmCtPO

梓「わかりました。この際です、やってみます」

澪「た、頼んだぞ。わたしは耳ふさいでるから、話し終わったら背中を叩いてくれ」

ミオ「どこにいるんだよぉ……早く出てこいよっ!」

梓「ミオ先輩っ!」

ミオ「ひっ……!」ビクッ

ミオ「……って、どこにいるんだ!? 出てこいいぃ!」

梓「出ていってもいいですけど、その前に怖い話をしていいですか?」

ミオ「……へ?」

澪「ミエナイキコエナイミエナイキコエナイミエナイキコエナイミエナイキコエナイミエナイキコエナイ」

257:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 03:05:45.30 ID:L/rfmCtPO

ミオ「ふ、ふざけるなっ! 馬鹿にしやがって……!」

梓「昔、あるところにギターが大好きな茶髪の少女がいました」

ミオ「……!」ビクッ

梓「しかし、その少女はやがてトラックに轢かれて死んでしまいました。
  少女の妹は悲しみました……って」

ミオ「 」

梓「立ったまま気絶してるし……。
  澪先輩、どうやら澪先輩の作成はうまくいったようです」

澪「 」

梓「……こっちは座ったまま気絶してる」

259:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 03:09:30.50 ID:L/rfmCtPO

梓「なんだか、シマらない終わり方だけど、まあいっか……」

ミオ「 」

梓「暗い部屋でひとりでいても平気だったのに……ああ、もしかしたら気絶してただけなのかも」

澪「 」

梓「こっちはこっちでこれだし……」

梓「とりあえず、ロープかなにかでミオ先輩を縛ろうっと……」

260:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 03:14:32.91 ID:L/rfmCtPO




ミオ「……んっ」

澪「目が覚めたみたいだな」

ミオ「え? え? なんでわたしがロープで縛られてるんだ!?」

澪「わたしがお前をロープで縛ったからだ」

梓「さりげなく嘘つかないでください。縛ったのはわたしです」

ミオ「……くっ!」

澪「無理だ。ロープをちぎれるわけないだろ」

261:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 03:19:33.63 ID:L/rfmCtPO

澪「もう、諦めろ。いや、諦めて」

ミオ「……ひとつ聞いていいか?」

澪「なに?」

ミオ「お前は自分の世界が好きか? わたしは嫌いだ」

澪「わたしは……世界とかはよくわからないけど、わたしの周りのものはみんな好きだ」

ミオ「……」

澪「軽音部だって、ベースだって、学校だって、友達だって……みんな好きなんだ」

ミオ「……うらやましい、な……」

澪「え?」

ミオ「べつになんにも。
   はあ……もし、こっちの世界でもいいと言うなら交渉するつもりだったのに」

澪「交渉してもムダ。わたしは、この世界の住人じゃないし」

264:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 03:25:42.83 ID:L/rfmCtPO

ミオ「……そっか」

澪「それで? わたしはどうやったらもとの世界に帰られるんだ?」

ミオ「ほうっとけば勝手に帰られるらしいよ。
   世界のそうであろうとする自律的で巨大な力によって、異なる世界の人間はハジかりらしい」

澪「メールに書いてあったの?」

ミオ「そんな感じの文章がね」

梓「よかったですね、澪先輩!」

澪「その……それは本当なのか? お前がただ嘘をついている可能性も……」

ミオ「……さあ?」

澪「……」

267:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 03:30:54.32 ID:L/rfmCtPO

澪「まあいい。わたしがこの世界から帰られないかぎり、梓はお前のロープを外さないからな」

ミオ「あっそ」

梓「まあまあ、澪先輩。せっかくですし、ちょっと学校の中を探索しません?」

澪「コイツを見張ってなくても大丈夫か?」

梓「大丈夫ですよ。ロープで身体を縛られてるんですから」

澪「……まあ、大丈夫か……」

梓「ほらほら、行きましょっ」グイッ

澪「だから、手を引っ張るな!」

269:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 03:36:16.17 ID:L/rfmCtPO




澪「なんだかさ、ハチャメチャなすぎて異様に長く感じた時間だったけど、たった一日の出来事でしかないんだよな……」

梓「そうですね……って、澪先輩くっつきすぎです。
  もう、だいぶ明るくなり始めてるのに……」

澪「仕方ないだろ……そういえば、もうひとりのわたしのことだけど……」

梓「なんですか?」

澪「いや、意外とあっさりと引いたなあと思ってさ。
  もっと必死にあがいてくるかと思ったのに……」

梓「意外でしたけど、案外アレで正解なような気がします」

澪「?」

270:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 03:40:37.99 ID:L/rfmCtPO

梓「ほら、澪先輩も言ってたじゃないですか?
  ミオ先輩が唯、律、ムギ先輩、三人のケータイの電話番号をいじった必要性について」

澪「ああ、イマイチ意味のわからない行動だな」

梓「三人のケータイなんていじりさえしなければ、今回、ミオ先輩はわたしたちに見つけられることはなかったはずでした」

澪「まあ、確かに……」

梓「ではなんでそんなことをしたのか……」

澪「未練があったから……そう言いたいのか?」

梓「……ただの予想ですよ」

271:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 03:45:29.46 ID:L/rfmCtPO

梓「もしかしたら澪先輩を誘い込むためだけの罠だったのかもしれませんし……」

澪「どうだろうな……」

梓「それとこれは確信がある予想なんですが、ミオ先輩はこの世界の住人ではないのかもしれません」

澪「え……?」

梓「ミオ先輩の言動を思い返すと、ね……。
  『女だけしかいない世界』なんてことも言ってましたしね」

澪「ちょ、ちょっと待ってくれ」

梓「なんですか、澪先輩?」

275:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 04:00:08.84 ID:L/rfmCtPO

澪「いやいや、アイツは世界ね自律がどうとか言ってたし、普通ならすぐにもとの世界に戻るんだろ?」

梓「そうらしいですね。でも、過去にべつの澪先輩にこの世界の傷をつけられたとしたら……?」

澪「……」

梓「ミオ先輩がセックス依存症だとウワサされるほど、性行為をしていたのも……。
  セックス依存症の原因でもある精神的寂しさを紛らわすためだったのかも……」

澪「でも、わたしの世界とこの世界……二つ世界はあるけど……」

梓「二つ世界があるんだったら、三つあってもおかしくありませんよ」

澪「……!」

278:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 04:05:12.80 ID:L/rfmCtPO

澪「もしかしたら、あのわたしも男の人がいる普通の世界から来たのかな……」

梓「まあ、そうかもしれませんね」

澪「……なんだかな。もしそうだったらスゴクかわいそうだな……」

梓「……澪先輩!」グイッ

澪「うわっ、なんだよ?」

梓「いえ、ほら……日の出ですよ!」

澪「……あ、もうこんな時間か……」

279:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 04:10:22.64 ID:L/rfmCtPO

梓「そういえば、澪先輩の世界はもっと時間が早く進んでるんですよね?」

澪「うん、わたしの世界はもう十月だからな……学園祭ライブも、もう終わってるよ」

梓「学園祭ライブは成功しましたか?」

澪「学園祭ライブは…」

梓「……あ、やっぱり聞かないことにします

澪「なんでだ?」

梓「たとえ世界がちがっても、わたしたちのバンドが成功しないわけありませんから」

澪「……そうだな」

280:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 04:15:11.32 ID:L/rfmCtPO

澪「……なんだろ? 指先が光ってるような……って、うわあ!
  身体が薄くなってる!?」

梓「落ち着いてください、澪先輩。いよいよ帰るときが来たんですよ」

澪「……そうか、そうだな……って、予想外に早いな……」

梓「そんなものでしょう。世界からすれば人間ひとりなんて本当に小さなものです」

澪「……そうだな」

梓「澪先輩……」

281:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 04:18:45.34 ID:L/rfmCtPO

梓「その、澪先輩とは一日しか過ごしてないけど、スゴク楽しかったです」

澪「わたしも。わたしってかなり人見知りする人間なのに、なぜか梓は平気だったよ」

梓「それはよかったです」

澪「まあ、外見は本当に同じだからな」

梓「ええ……澪先輩」

澪「?」

梓「今度はミオ先輩も入れてきちんと練習して、頑張っていきます。
  そして、必ずバンドを成功させます!」

澪「わたしも……イロイロと頑張るよ」

284:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 04:22:51.36 ID:L/rfmCtPO

澪「じゃあ……そろそろサヨナラだ」

梓「澪先輩と会えて本当によかったです。ありがとうございました」

澪「わたしこそたくさんお世話になった。
  ありがとう、梓」

梓「最後ですから、澪先輩に抱き着いておきます」ダキッ

澪「あ、梓!?」

梓「ご利益があるかもしれませんしね。
  澪先輩もわたしに抱きつかれるなんて、イロイロついてますよ」

澪「……じゃあ、な、梓」

梓「さようなら、澪先輩」


………………
…………
……

288:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 04:29:05.57 ID:L/rfmCtPO




律「でさ、澪ったらわたしと同じ大学に行きたいからって推薦取り消したんだよなあ!」

澪「……」

梓「そうなんですか、澪先輩?」

澪「まあ……昨日、今日で進路と同じくらい、いや、進路以上に大事なものに気づいたからな」

紬「進路以上に大事なもの?」

唯「友達だね!」

澪「まあ、な……」


澪(散々、進路は迷いに迷って、けれどもあの奇妙体験のおかげで、わたしはみんなと同じ大学を志望することにした)

291:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 04:35:00.53 ID:L/rfmCtPO

澪(まあ、友達と同じ大学に行きたいって、どうなんだろうとも思うけど……)

澪(あの世界で、確かに思ったんだ。
  わたしはみんなが好きだって。放課後ティータイムが好きだってこと)

澪「わたしは、まあ、少しでも多くの時間をみんなと共通したい……そう思ったんだ」

律「ほほう、それはどうしてかなあ?」

澪「…………」

唯「澪ちゃん?」

澪「み、み、みんなのことがす、すすすすす好きだからだよ!」


唯紬律梓「……」ポカーン

律「澪が好きって言ったぞ!?」

唯「わたしも聞いたよ、りっちゃん隊員!」

紬「わたしも!」

梓「わ、わたしもです!」

292:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 04:38:55.08 ID:L/rfmCtPO

澪「ああ! もううるさいっ!」

律「ぷぷっ……照れてやんの~
  澪しゃんったらかわいいんだからもー」

澪「う、る、さ、い」ドンッ

律「ぐぬぬぬ……」

梓「律先輩、調子に乗るから……」

唯「いたそー」

紬「りっちゃん、大丈夫?」


澪(まあ……こんな日がいつまでも続いたらいいな……)

293:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 04:42:15.57 ID:L/rfmCtPO

おしまい♪









……と、いきたいところですけど、一番重要なところが抜けてますよね。

そう、今回の裏の主役とも言えるミオ澪先輩にメールを送り、澪先輩を困惑させた首謀者。


まあ、ぶっちゃけちゃうとわたしなんですけどね。

300:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 04:52:15.29 ID:L/rfmCtPO

そう、澪先輩の助手としてミオ先輩の敵に回ったこのわたし、中野梓です。
いやー、しかし、澪先輩にしろミオ先輩にしろイロイロ楽しい人たちでしたね。

まあ、楽しい一日を過ごせたのはいいんですけどね。
ていうか、誰かツッコメよと思ったんですけど。

どう見ても、わたしが澪先輩に惚れてるってわかりますよね?
途中なんかうっかり、

 『人を好きになるってことには、なんらかの変化がツキモノだと思いますけどね』

とか、ほとんど告白まがいの台詞を言ってるんですけど。
自分のことで精一杯だったからなのか、ただ単に鈍いだけなのか、澪先輩、わたしの気持ちにきづいてくれてもよかったのに……!

まあ、わたしの趣味は澪先輩眺めでして。
色んな世界の澪先輩を眺め、仲良くなることを目的にしてたんですけど。

今回は少し、趣向を変えて襲われる澪先輩を眺めようと思ったんですけど……
まあ、結果的にミオ先輩だけやられちゃいました

302:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 05:00:06.89 ID:L/rfmCtPO

最後らへん、澪先輩に対して世界がたくさんあるという仮説を言いましたけど。
あれは仮説じゃなくて単なる事実を述べただけです。

まあ、どういうカラクリでわたしが並行世界の人間を連れて来るのかはあえて、説明しません。
けれど、ひとつ確かなのはパラレルワールドから人間を連れて来ると、確実にその人間は、その人間が
過ごしていた時間よりも前の時間にしか来れないみたいです。
まあ、高いところから低いとこに飛ぶのは簡単だけど、低いところから高いとこへ飛ぶのは難しいという理屈と同じ。
そう思っていただいていいと思います。


しかし、まあいいかげん、不思議な力を使って自分の世界に澪先輩を連れて来るのもしんどいので。
今回からは、自分からパラレルワールドに行くことにしました。


梓「澪先輩」ダキッ

澪「梓……?」

303:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 05:03:01.35 ID:L/rfmCtPO

紬「梓ちゃんが澪ちゃんに抱きついてる……」

律「どうしちゃったんだ、梓」

唯「あ、あずにゃんが浮気してる!!」

梓「たまにはこういうのもいいですよね、澪先輩?」

澪「え? あ、うん……」(なんだかあっちの梓みたいだな……)

305:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 05:07:12.78 ID:L/rfmCtPO




ミオ「……なんだよ、梓?」

梓「み、みみみ澪先輩の髪の毛がピンク色になってる!」

ミオ「……なに今さら言ってんだ?」

梓「ひいっ!」

ミオ「ほら、部活に行くぞ」グイッ

梓(いったいどうなってるのー!?)



     お   わ   り

306:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 05:08:09.67 ID:L/rfmCtPO

スレタイ詐欺でゴメンね


それでも最後まで読んでくれた人ありがとう


おやすみ、寝る

312:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 06:44:50.06 ID:ka1sy/cM0

どうしてミオは澪の携帯電話の番号を知っていたの?
ラストの種明かしの後で、澪のいる世界の梓と、ミオのいる世界の梓は入れ替わったと解釈しているが、それであってるの?

322:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/17(日) 10:22:21.75 ID:L/rfmCtPO

>>312残ってたから解説

ミオはミオ自身のケータイを澪に持たせて、自分は二つもってるケータイの片方を使ったという設定
一応澪の推理でも解説させたつもりだけど夜中に書いたから狂ってたかも

梓は入れ替わってしまった、であってる




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