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凛「私が魔法使いだって言ったら……信じる?」
- 1 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:04:18 ID:/kk7iBG2
- 表向きは花屋を営む私の実家には、誰にも言えない裏の顔があった。
父「これが不老不死の秘薬だ」
父は純潔種の魔法使い。
この世界の万物をも歪める力を持っている。
母は誇り高きエルフ族。
エルフの血には不老不死の力が宿っているという。
私は生まれながらにして、不死の存在となった。
齢二十歳を過ぎれば、私の成長は止まり、以降永遠に老いることなく生き続けるのだろう。
魔法使い……無意識に世界の真理に触れる者。
- 2 : モバマスSS 2015/02/08(日) 22:06:18 ID:/kk7iBG2
- 私達は別に戦ったりなんてしない。
戦う必要もない。
ファンタジーで耳にする魔法使いとは違うのだ。
たった一人の魔法使いが生を冒涜し、死すら凌駕していく。
だからその数は、世界に僅かしか存在しない。
魔法使いには、永久の孤独が付き物。
魔法使いの敵は孤独だ。
幸いにも父には永遠を共にする相手がいる。
だが……、私にはいない。
やがて自立する時がきて、誰かを愛することがあったとしても……
愛した人は、私を残して必ず先に逝くだろう。
私には耐えられない現実。 - 3 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:07:21 ID:/kk7iBG2
- 父「私と母さんはこの世界の人間ではない。やがては元の世界に帰る。だが凛、お前は自分で選択するんだ」
ひとりきり?そんなのやだ
母が私を抱き締める。
父「どちらを選択しても、凛には辛い未来が待っているかもしれない」
父「この秘薬を口にすれば、誰もが簡単に不老不死を得るだろう。だが覚えておけ、凛」
父「不老不死となった者は、これまで人として生きた証……記憶を全て失うことになる」
凛「記憶を……?」
父「いつかお前も、その薬を使う時が来るかもしれない。しかしそれは、お前を苦しめる地獄の選択となるだろう」
父「永遠の苦しみを与えられた者は、いつか必ず、お前への憎しみで心を支配されてしまう」
母「あなたの愛した人は……きっとそこにはいないわ」
凛「でもさ、生きててくれたほうがいいよ。もう会えないよりはさ」
この頃の私は、まだ誰かを好きになったこともなく、恋愛というものを想像で語ることしかできなかった。 - 4 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:09:19 ID:/kk7iBG2
マセた私の10歳の誕生日プレゼントは、人を地獄に導く禁忌の薬。- 5 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:09:48 ID:/kk7iBG2
- それから果てしない時が過ぎ……私は運命に出会った。
「ふーん、アンタが私のプロデューサー?……まあ、悪くないかな…。私は渋谷凛。今日からよろしくね」
魔法使いがアイドルやってるなんて誰も思わないよね。 - 6 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:10:28 ID:/kk7iBG2
- 最初のアイドルとして事務所に所属した私は、彼……プロデューサーに対して特に思うことはなかった。
ただの上司、世話役、便利な奴、仕事仲間。
そんな風に考えていたのだ。
いくらでも「代わり」のきく存在だね。
その認識はすぐに覆されたけれど。
私が事務所で一番驚いたことは、私以外にも魔法使いがいたこと。 - 7 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:11:30 ID:/kk7iBG2
- 千川ちひろは魔法使いだった。(本人談)
彼女の販売するスタミナドリンクとエナジードリンクは、彼女自ら調合したものだろう。
その効果は絶大。
そしてそれこそが、人間離れした仕事量をこなすプロデューサーの秘密。
私はプロデューサーの横顔を見つめる。
普段は凛々しいくせに、不意に出る笑顔が可愛い。ふふっ。 - 8 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:15:01 ID:/kk7iBG2
- モバP「ほんとに大丈夫なのか?」
加蓮「私は大丈夫だって。Pさん心配しすぎ」
プロデューサーがまた加蓮を心配してる。
北条加蓮。私の幼なじみで親友。
本当ならば、彼女の生はとっくに終わっていなければならない。
加蓮は身体が弱いだけではなかったから。
彼女を不老不死にしたのは同情なんかじゃない。
私が辛かったから。親友の死を黙って見ているなんて、耐えられないもの。
彼女を病よりも苦しめるのは私。
彼女を殺したのも私。
だからこれは……罪の記憶だ。 - 9 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:16:24 ID:/kk7iBG2
- 加蓮「ほんとはアタシ死ぬんだ」
そう告げられたとき、私はこう返した。
凛「もし……さ。加蓮が助かるとしたら、どうする?」
加蓮「……どういうこと?」
希望持たせるようなこと言わないで。
やめてよ。
加蓮は口にしなかったけど、私にはわかった。
加蓮は不機嫌そうに、「生きたいよ」とだけ口にした。 - 10 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:17:10 ID:/kk7iBG2
- 凛「一生老いることなく、死ねないとしても?」
加蓮「それでも……生きたいって。当たり前じゃん……アタシまだやりたいことあるし……」
凛「加蓮が今までの記憶を代償に捧げるなら、アナタを不老不死にしてあげるって言ったら?」
加蓮「……凛、いい加減にして」
凛「お願い。……真面目な話なの。答えて」
加蓮はうんざりした顔をして、それでも私に付き合ってくれた。 - 11 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:18:06 ID:/kk7iBG2
- 加蓮「……記憶、か。ずっと病室で寝たきりの人生だったなぁ。でも……凛のことも忘れちゃうんだよね?」
凛「……そうだね」
加蓮「それはイヤかな……」
凛「…………」
私もだよ。そう口にしたかった。
凛「また出会いからやり直せばいいよ。私は何も知らない顔をして、加蓮とまた出会うの」
加蓮「えー、記憶失ったアタシに優しく説明してよ~。親友だったとか言ってさ」 - 12 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:18:46 ID:/kk7iBG2
- 凛「それじゃダメだよ。真の友情は0から始めなきゃ」
加蓮「あはは、なにそれ」
何も知らない加蓮に、アナタの親友だよって言ってもさ。
それは押し付けの友情だよ。
加蓮はきっと喜ぶ。雛鳥が最初に目にしたものを、自分の親と感じるように。
そして私に縋り、私を頼るだろう。
でもそれは多分、私が造った友情。
生を得た加蓮は、もう今の加蓮じゃないんだから。 - 13 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:21:43 ID:/kk7iBG2
- 加蓮から親友だって思われたい。
『アナタの親友だよ』なんて口にしなくても、自然とまた……
……そんなのは嘘。
綺麗事だよ。
不老不死になった加蓮は、いつか絶対に私を恨み、憎むだろう。
殺したいほど憎んで憎んで……でも殺せなくて。
私はただ、そんな罪悪感から逃げたいだけ。
加蓮に永遠を与えて、私の巻き添えにしようとしてる。
孤独という恐怖を紛らわせるための道具として。
子供みたいなわがままでゴメン
ごめんなさい - 14 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:22:37 ID:/kk7iBG2
- 加蓮「ならさ、またアタシと親友になってくれる?」
凛「……なるよ。絶対なる」
加蓮は「ありがとう」と微かに微笑んだ。
痩せ細った姿が痛々しくて、私は加蓮を抱きしめた。
加蓮「消えていく命だから。きっと……きっと記憶は天国へは持っていけないんだ。だからね、未練なんてないよ?」
凛「私さ。加蓮に内緒にしてることがあるの」
凛「私が魔法使いだって言ったら……信じる?」 - 15 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:23:18 ID:/kk7iBG2
加蓮「……信じてあげる」
『だって親友じゃん』
声に出さなくても通じたよ?- 16 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:24:16 ID:/kk7iBG2
- 凛「この薬を飲めば……加蓮は不老不死になる。救われる。でも忘れないで。不老不死を得るかわりに、アナタは記憶を失うことになる」
加蓮「……それでも飲むよ。凛と普通の女の子みたいに遊びたいから」
凛「そっか」
加蓮「そうだよ」
あはは
二人で馬鹿みたいに笑う。
加蓮の目に迷いはない。
凛「不老不死になれば、加蓮の大切な人は誰もいなくなる。未来永劫、あなたと共にいられるのはきっと私だけ……。それは死ぬより辛いよ?」
加蓮「でも一人じゃないんでしょ?」 - 17 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:24:54 ID:/kk7iBG2
- 加蓮「凛、約束」
加蓮「必ず、アタシの親友になって」
凛「当然じゃん。……ばか」
加蓮「あー、ひっど~い。人が真面目に言ってんのに」
凛「安心して。加蓮を一人になんてしてやらないから。つきまとってやるんだ」
加蓮「ストーカー」
凛「聞こえなーい」 - 18 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:28:47 ID:/kk7iBG2
- それから一週間後。
容態が悪化した加蓮は、自ら禁忌を口にした。
その日は加蓮の誕生日だった。
私にとっては最初の別れとなる、親友の命日。
加蓮「私……誰?何も……何も思い出せない……!」
病が突然完治した加蓮を見て、医師は口々に奇蹟と語った。
それほど手の施し様がなかったのだろう。 - 19 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:29:37 ID:/kk7iBG2
- ドン
不安そうに病院内をフラつく加蓮とぶつかる。
加蓮「あっ……!ごめんなさい」
凛「別に。ねぇ、アンタ入院患者?」
加蓮「……はい。そう……ですけど……」
加蓮、ビビりすぎ。
凛「家族と知り合いの見舞いに来たんだけどね。私さ、今退屈してて」
凛「よかったら話し相手になってよ」
加蓮「……いいですよ?」
それが、私と北条加蓮の『最初』の出会い。 - 20 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:30:19 ID:/kk7iBG2
- 余談だけどね。子供の頃からアイドルに憧れていたのは私。
ずっと私の話を聞かされて、加蓮もアイドルに憧れるようになっていったんだ。
どうしてか加蓮は、アイドルに憧れていたことだけは覚えていた。
奇蹟ってあるのかもしれないね。
同時に、加蓮に薬を与えた私は、この世界で生きていくことを決意する。
両親は寂しそうに頷いてくれた。
ごめん - 21 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:32:48 ID:/kk7iBG2
- 加蓮と仲良くなって
時が流れていった。
そして私達は、共通の親友を得ていた。
神谷奈緒。
アニメが好きな女の子だ。 - 22 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:33:21 ID:/kk7iBG2
- 奈緒「Pさんは過保護すぎる」
加蓮「奈緒顔真っ赤」
凛「プロデューサーは私達が心配なだけだよ」
奈緒「限度があるだろ!」
ああ、昨日の送り迎えの時の話か。 - 23 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:34:07 ID:/kk7iBG2
- 私達3人を事務所に送る途中、奈緒が一人で寄り道をしようとしたんだ。
行きたい場所があるからって、車から降りてさ。
するとプロデューサーが、「一人でなにかあったらどうするんだ」と、奈緒の頭をクシャクシャと撫でた。
ボサボサになった奈緒の髪を見て、私と加蓮は笑ってしまった。
奈緒は真っ赤な顔で、プロデューサーに文句を言っていたっけ。
照れ隠しか、髪をボサボサにされたことを怒ったのか、それがわからないほど私達は鈍くはない。
頭を撫でるのはプロデューサーの悪い癖だ。
彼の指で、奈緒の乙女が顔を見せる。
いいな。 - 24 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:34:50 ID:/kk7iBG2
- 私はプロデューサーが好き。
きっと加蓮も。
奈緒「あたし一人で帰れるって!」
加蓮「あれは奈緒の我が侭だよね」
凛「アニメショップに寄りたいから車を降りたんだっけ?」
奈緒「ま……まぁ、そうなんだけど」
昨日の出来事を思い出して奈緒に嫉妬するなんて……私重症かな…… - 25 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:35:35 ID:/kk7iBG2
- 加蓮「Pさん優しいんだから、あんまり心配かけちゃダメだよ」
奈緒「わかってるけどさ……」
凛「確かに最近のプロデューサーは過保護だよね」
奈緒「!?……だろ!?」
加蓮「私にはいっつも過保護」
奈緒「加蓮は身体が弱いからなぁ」
凛「ふふっ」
加蓮「なによぅ、凛」
凛「なんでも?」
加蓮「むぅぅ」
凛「怒らないの」
どうして彼を好きになったのだろう? - 26 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:36:58 ID:/kk7iBG2
- 「ねぇ、プロデューサー」
彼の名を口にする。
愛しくて震えた。
「なんだ?」
最近おかしいんだ
優しくされるたび
触れられるたび
胸が痛い
どうしようもなく疼くんだ
叶わない恋を突きつけられて
心が張り裂けそう - 27 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:39:23 ID:/kk7iBG2
- プロデューサーが好き。
でも、無理なんだ。
私が好きになったのは『今』のあなただから……。
私には……あなたの記憶は奪えない。
こんなに人を好きになるなんて、思わなかった。
ううん、違うね。
きっと気づかない振りをしてただけ。
あなたの優しさに触れて、あなたの笑顔を感じて、私はとっくに恋してたんだ……。
辛いよ。
愛してる。 - 28 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:40:18 ID:/kk7iBG2
- ある日の帰りの車内のこと。
久しぶりに二人きり。
モバP「最近元気ないみたいだけど、何かあったのか?」
凛「……大丈夫だから。心配してくれてありがとね」
彼の手が私の髪を撫でる。
私は怒ったような表情で、「子供扱いして」と口にする。
そんなこと思ってもいないのに。
プロデューサーは、困ったような顔で、手を引っ込める。
私は無言で、窓の外を見つめてる。
流れていく風景。
あの店は加蓮オススメの店だ。なんて無理矢理考えながら。
ホントはプロデューサーのことで頭はいっぱい。 - 29 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:41:01 ID:/kk7iBG2
- モバP「どこか寄るか?」
凛「いいよ。遅くなったら悪いし」
モバP「気にしなくていいって」
なら、力ずくで私を奪ってよ。
ホテルでも連れ込めばいいじゃん。
そんなことはありえない。
プロデューサーは責任感の強い人だから。
我が侭を言って嫌われたくない。
他人への甘え方がわからない。
私不器用だね。
邪険にしてごめん。
大好きだよ、プロデューサー。 - 30 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:41:34 ID:/kk7iBG2
永遠なんていらない。
あなたと生きていきたい。- 31 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:42:24 ID:/kk7iBG2
- プロデューサーへの想いを誤魔化すために、私はアイドル活動に必死になった。
逃げと言われても仕方ないだろう。
気づけば私は、シンデレラガールになっていた。
加蓮「おめでとー、凛」
奈緒「凛、よかったな!」
凛「二人とも……ありがと」
卯月と未央が駆けてくる。
他の仲間たちも。
私は幸せ者だ。
光を浴びて、スターへの道を歩き始める。
そして知る。私には未来はないのだと。
未来は夢だ。
限りある時間が連れていく。 - 33 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:47:08 ID:/kk7iBG2
- 私は書類上、15年しか生きていない。
両親は私の老いが止まるのが早すぎるという。
私が二十歳の外見を得るのに、最低数百年は掛かるのだと。
そんな残酷な真実を告げた……。
認識の齟齬を埋めるため、父が周囲の意識を操作し、それからの私は何度も15歳を繰り返している。
16歳でも17歳でもいい。
人の認識は曖昧だ。
ねぇ、永遠の価値ってなんだろう?
このスポットライトの光も、いつしか当たり前として受け入れるようになるのだろう。 - 34 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:47:56 ID:/kk7iBG2
- 世界はいつまで色鮮やかなのだろう。
百年後の私は笑っているかな?
加蓮「凛、大丈夫?」
ごめんなさい。
ずっと思ってる。
終わりのない不安。
私は加蓮を巻き込んでしまったんだ……。
彼女の成長も止まっている。
私はいつまで、親友を騙し続けるのだろう。
出口のない人生という迷路に、加蓮を送り込んだ私の罪を。
私の過ちを。
いつか死ぬことを願う日が来るのだろうか。
先への不安が神経をすり減らせていく。
らしくないね。 - 35 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:49:31 ID:/kk7iBG2
- 私が普通に生まれていたら、きっと前だけ向いて突き進んでいたと思う。
振り返らず前を向いて。
加蓮「好きなの?」
凛「うん?」
加蓮「プロデューサーのこと」
気づかないわけないよね。
凛「べつに」
加蓮「嘘」
凛「まあ、どちらかといえば好きかも」
加蓮「素直じゃないね」 - 36 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:51:23 ID:/kk7iBG2
- 素直か……。
凛「プロデューサーの迷惑になりたくないし」
加蓮「私、Pさんが好きだよ」
凛「そうなんだ」
加蓮「うん」
泣きそうになる。 - 37 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 22:52:06 ID:/kk7iBG2
- 叶わない恋は私だけじゃないんだ。
凛「ごめん、加蓮」
加蓮「なにが?」
凛「私も好き」
加蓮「知ってた」
凛「ごめん」
加蓮「なんで?」
言えないよ。
凛「…………」
加蓮「最近溜め息ばかりだね、凛」
凛「……そうかな?」
加蓮「そうだよ」
加蓮「私、知ってるんだ」
凛「え?」
加蓮「不老不死、なんでしょ?……私たち」 - 38 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 23:39:21 ID:/kk7iBG2
- 頭を殴られたような衝撃で、目の前が暗くなる。
……どうして?
ありえないよ……
加蓮「伝えようか迷った。私だよね?凛を苦しめてるの」
手紙を取り出す加蓮。
加蓮「ずっと渡せなかった」
加蓮「凛の親友は私だって、自分への嫉妬かな」
加蓮「……渡せなかった。凛を傷つけるって知ってたのに……」
加蓮「けどそれも今日で終わり。……許してね、加蓮」 - 39 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 23:39:48 ID:/kk7iBG2
- 未来の親友へ。
それはありえないはずの……
過去からの手紙 - 40 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 23:40:51 ID:/kk7iBG2
- 凛はさ……きっと私に対して罪悪感とか感じてるよね。苦しんでるんじゃない?
自分が独りになりたくないから私を巻き込んだーって。
だからこの手紙を遺します。
今の私から凛への、最後の友情の証として。
親友を理解してる私に感謝してよぉ?
私はね、凛。
不老不死になったからって、絶対に凛を恨んだりしないよ?
だって薬を飲んだのは私の意思なんだもん。
凛は私に明日をくれた。
絶望しかない私の人生に、光と希望をくれたのはあなただよ。
凛が私に与えたのは生きるチャンス。
凛は私に不老不死になれなんて命じてないでしょ?
私は自分で考えて選択した。
生きたいってね。 - 41 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 23:42:13 ID:/kk7iBG2
- だから私に対して罪悪感を抱いてるなら、それはお門違い。
私をあまり舐めないで。
私が私でなくなっても、私が凛を恨むなんて一生ありえないって。
生まれ変わっても(言い方がおかしいかな?)、また胸を張って凛の親友でありたいから。
ずっと対等でいて。あなたは私の親友、渋谷凛だって。いつもみたいにクールで。 - 42 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 23:43:03 ID:/kk7iBG2
- 約束を破ってごめん。
未来の私に、私の一部を託します。
あはは、これくらい許してよ?
未来の私。どうせこれ読んでるんでしょ?
あんたに一つ自慢したい。
私の親友は魔法使いなんだ~ってね。
凄いでしょ~。
凛は死の淵にいた私を救ってくれたの。
迫り来る死の恐怖を追っ払ってくれたんだ。
だから……あんたが不老不死になったのは私のせい。
あんたがもし将来苦しむようなことがあったら、そのときはこの私を恨みなさい。
その頃には私はもう死んでるけどぉ~。私無責任!? - 43 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 23:46:05 ID:/kk7iBG2
- あんたに辛い役目を押し付けた代わりに、私が夢見た明日をあげる。
凛の隣を譲ってやるんだから!感謝しなさいよ?
お願い。凛を恨まないで。凛を支えてあげて。
凛を理解して、支えられるのは……きっとさ、あなただけだから……
私は凛が大好き。未来の私も凛を好きになってくれたら、これほど嬉しいことはありません。 - 44 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 23:46:45 ID:/kk7iBG2
- 凛、あなたを悲しませてごめんなさい。
あなたと過ごした記憶を、あなたとの時間を……私は今から殺します。
忘れないで。私はきっと加蓮の中にいるから。
長くなっちゃったね。
最後に
一緒にアイドルできなくてごめんね
永遠の友 北条加蓮 - 45 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 23:48:08 ID:/kk7iBG2
- 凛「……ぅっ……加蓮……かれん……あああああっ……」
私は泣いた。みっともなく大声で。
加蓮「私が目覚めたときさ。これを読んで勝手だなって思った」
加蓮「誰かも知らない相手を頼むって手紙でしょ?無責任にさ。自分のこともわからない私に……色々重荷背負わせて……ほんと勝手だよ」
凛「…………うん……ぐすっ……」
加蓮「でも今は……感謝してる」
加蓮が私を抱きしめる。いつかの時とは逆の状況。
加蓮「言われなくたって支えるわよ。凛は私の……親友なんだから」
加蓮「私は私。たとえ記憶を失っても、凛が大切な親友だって気持ちだけは変わらない」
加蓮「それは私にも殺せない。きっと魂とかに刻まれた感情なんだよ」 - 46 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 23:48:52 ID:/kk7iBG2
- 加蓮「って!うわぁぁ……なんて青臭いことしてんだろ私たち」
凛「……言わないで」
加蓮「はやく泣きやめ。クールな凛はどこ行ったの~?」
凛「……ばか」
加蓮「あー、ひっど~い。人が真面目に言ってんのに」
『あー、ひっど~い。人が真面目に言ってんのに』
凛「ふふっ」
そっか
加蓮は確かに遺していたんだね。友情の証を。
加蓮「なにニヤニヤしてんの!」
凛「何でもなーい」 - 47 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 23:49:45 ID:/kk7iBG2
- 私は、プロデューサーが好き。
彼を不老不死にしたいと思ってる。
最悪のワガママだよね。
でもそれはしない。
彼は優しいから。
選択を迫れば……彼は苦しむ。
きっと将来、事務所が落ち着いたら、私と加蓮のために彼は薬を飲むだろう。
私の隣にいるという約束を守るために。
私たちを孤独から守るために。
自惚れじゃないよ。
そんな自己犠牲がさ、彼の不器用な優しさだって知ってるから。
だから選択を与えない。
私には……
あなたの人生を否定することはできないから。 - 48 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 23:55:01 ID:/kk7iBG2
- あなたの中の功績を、記憶を、人生を、思い出を……
愛しているから奪えない。
冗談じゃない。あなたの中から私たちが消えるなんて。
……耐えられるわけないじゃん。
これから先の数十年、私と加蓮は今の姿のまま、弱っていくプロデューサーの隣に居続けるだろう。
彼が生涯を終えるときまで。
その時は思いっきり泣こう。
泣いて泣いて泣き疲れて。それでも繰り返される明日に苦笑しながら。
私たちは生きていく。 - 49 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/08(日) 23:58:32 ID:/kk7iBG2
- 加蓮に私の気持ちを打ち明けた。
彼女は笑って許してくれた。
加蓮「私だってPさんの記憶は奪えないよ。それは死ぬより辛いもん……」
凛「私たちってワガママだね」
加蓮「女の子はワガママなくらいがいいんだよ」
奈緒「ああ?あたしも仲間に入れろって!」
どこかに隠れていた奈緒が、いつの間にか背後に立っていた。
凛「奈緒……」
奈緒「あ、あたしだって親友だから!凛の様子がおかしいことくらいわかるっていうか……仲間外れは嫌っていうか……くそっ!わかれよ!」
加蓮「今の話は冗談だって。不老不死なんてあるわけないじゃない」
奈緒「嘘かほんとかなんてわかる。だって友達だろ?」
加蓮「……記憶失っちゃうんだよ?」
奈緒「そん時は支えてくれんだろ?あたしの親友たちがさ」 - 50 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 00:00:00 ID:cfPyWE5g
- 凛「ダメだよ……今の奈緒は消えちゃうんだ」
奈緒「また親友になればいい。生きてるなら何度でもやり直せる」
加蓮「…………」
奈緒「あたしは二人との絆を信じてるから。神谷奈緒は生まれ変わっても照れ屋で、アニメ好きで、凛と加蓮の親友だ」
凛「今はダメ」
加蓮「うん」
凛「奈緒が大人になって、お姉さんになったとき。その時に改めて聞かせてよ」
奈緒「いやいや、今でも最年長だろ。あたしは二人よりお姉さんだっ!」 - 51 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 00:00:42 ID:cfPyWE5g
- 加蓮「私たち奈緒よりずっと年上だよ?」
凛「うん」
奈緒「嘘……だろ……」
加蓮「ほんと」
凛「不老不死は二十歳で成長が止まる……って思ってたんだけど違ったみたい」
加蓮「途中から成長が緩やかになる感じ」
凛「たぶん最終的に二十歳の外見になるんじゃないかな。……数百年後に」
奈緒「はぁ!?反則だろそれ!」 - 52 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 00:02:09 ID:cfPyWE5g
- 凛「うちの両親年々若返ってる気がする……」
加蓮「つーまーりー、逆に多少老いたとしても、二十歳の外見に戻るってこと。…………たぶん」
奈緒「無茶苦茶じゃねぇか!」
凛「だから焦ることはないんだ」
加蓮「ゆっくり考えて。後悔しないように」
奈緒「……しねぇよ。後悔なんて」
凛「約束する。20年後、奈緒が今みたいに不老不死を望むなら、私はあなたの記憶を貰う」
奈緒「なんだよそれ……。全部忘れちまうなら、早いほうがいいに決まってる……」
加蓮「今の奈緒を大切にして」
奈緒「……わかったよ。くそっ!」
加蓮「ふふっ、奈緒可愛い」
奈緒「うるせぇー」
ごめんね - 53 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 00:06:05 ID:cfPyWE5g
- 不老不死なんて、簡単に決めちゃいけないことだから。
取り残される悲しみに押し潰されないように。
私のエゴだよ。
時は過ぎていく。
プロデューサーは若作りが上手い。
アイドルに老いを感じさせないのは凄いと思う。
最近では、「俺はまだまだ若いって」が口癖。
加蓮「禿げたPさんなんて見たくないよね」
なんて笑い話にしてたっけ。
認識を操作するのも限界で。
私たちは世間では有名な化物アイドルになっていた。 - 54 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 00:10:55 ID:cfPyWE5g
- いつまでも劣化しない。整形疑惑など。
週刊誌だけではなく、テレビでも騒がれる。
ファンからは永遠のアイドルとか呼ばれているらしい。
奈緒はアイドルを引退した。
紛らわしい言い方だったね。
今は女優。
映画とかで活躍しているよ。
そうそう、アニメ映画では声優も務めたんだっけ。
素人の芸能人が吹き替えなんかするな!っていつも怒ってたのに。
奈緒は一生懸命頑張っていたよ。
映画は大ヒットを記録した。 - 55 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 00:12:37 ID:cfPyWE5g
- 時間は止まらない。
奈緒は毎日輝いていた。
後悔はあるよ。あの時奈緒を不老不死にしなかったことに。
加蓮「でもそれが人生なんだよ。一度きりの花火のような、儚いもの」
凛「……後悔してる?」
加蓮「どうだろ。私は『加蓮』の恐怖が理解できるから。責められないし、責めたくない」
加蓮「運命だって割り切ってるよ。せっかくの人生、『加蓮』の分まで楽しまなきゃね」
凛「……そうだね」
加蓮「凛、ありがとう。私に時間をくれて」
凛「果てしなく永いけどね」
加蓮「あはは」 - 56 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 00:13:10 ID:cfPyWE5g
- 凛「もうすぐ20年か」
加蓮「奈緒がどちらを選ぶか賭ける?」
凛「不謹慎」
凛「奈緒の人生だから。奈緒の選択に任せよう」
加蓮「……ばーか」 - 57 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 00:14:11 ID:cfPyWE5g
- そして約束の日。
奈緒「凛、加蓮。ありがとう」
凛「私は何もしてない」
加蓮「ほんとにね」
奈緒「あの時止めてくれたからよ」
私にはその言葉だけでわかってしまった。
彼女との別れを。
奈緒「不老不死って凄いと思うわ。断るなんて愚かよね」
加蓮「だね」
奈緒「ごめんなさい。私は不老不死にはなれません」
奈緒の口調はあの頃とはすっかり変わった。
女らしくなったよ。
いい女って奈緒みたいな人を言うのかも……なんて。 - 58 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 00:15:15 ID:cfPyWE5g
- 凛「理由……聞かせて?」
奈緒「私は普通の人間として、精一杯自分を磨いてきたわ。……成長したでしょう?」
少しだけ羨ましい。
奈緒「若いっていいわよね。私も日々若返りたいって思うもの」
凛「……奈緒は綺麗だよ」
奈緒「ありがとう」
加蓮「私たちには得られないもの……か」
奈緒「永遠を得たあなた達は変わらないわね。姿も……心も……成長が止まってしまっている」
そう。私たちの時間は止まっている。十代の頃のまま。
凛「……うん」
奈緒「不老不死の代償は記憶なんかじゃない。向上心よ」
永遠に時間は続く。
シンデレラガールに選ばれた頃の私は必死だった。
自分に厳しく、特訓を欠かさず。
でも……約束された永久のなかで、努力し続けることは難しい。 - 59 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 00:22:46 ID:cfPyWE5g
- 明日がある。来年がある。永遠がある。
頑張ろう。
いつしかその当たり前の気持ちすら忘れていたんだね。
時間という枷に囚われていたのは私なのだ。
奈緒「私は進みたい。一度しかない人生のなかで、私が出来る精一杯を、この一身で」
加蓮「かっこいいね。かっこいいよ、奈緒」
凛「いいの?」
奈緒「ええ。今ならわかる。運命に逆らうのは反則なのよ。人は一度しかない人生を精一杯生きるべきだわ」
奈緒「人が成長を止めてしまっては、世界は堕落する一方でしょう?」
凛「……私たちは本来存在してはいけないんだ。わかっていたのに……」
成長しない生命に、何の価値があるのだろう? - 60 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 00:26:24 ID:cfPyWE5g
- 凛「加蓮。約束するよ。いつになるかわからないけど、私たちが死ねるように」
奈緒「その約束が叶うよう、私は祈ってる。私はあなた達より先に逝くけれど、私の友情は変わらないから」
奈緒「あなた達の永い時間のなかの、本当に一瞬に過ぎないけれど。確かに二人を理解し、愛していた親友がいたと……」
奈緒「たまにでいいから思い出してあげて。そして笑ってよ。神谷奈緒って親友をネタにしてさ」
凛「……うん」
加蓮「……忘れられるわけないって」
奈緒「あたしたちは一生友達だ。それと、あたしがトライアドプリムスのお姉さんだからな!」
昔の奈緒と重なる。
ははっ……奈緒だって変わってないじゃん。
いいお姉さんになったね、奈緒。 - 61 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 00:30:02 ID:cfPyWE5g
- 奈緒と話してから、私たちは一つの答えを出した。
劣化も成長も止まった私たちよりも、夢を語る後輩たちに道を譲るのは正しい判断だと思う。
引退発表は大きく話題となった。
まだ私たちのファンはたくさんいたみたい。
アイドル冥利につきるってやつだね。
でも、ステージは独占していい場所じゃないんだ。
進みたいと願う者の立つ場所だから。 - 62 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 00:30:57 ID:cfPyWE5g
- 凛「加蓮、巻き込んでごめん」
加蓮「私はいいよ。『加蓮』と凛の約束を果たしただけ」
『一緒にアイドルできなくてごめんね』
あの手紙、律儀に守ってくれていたんだね。
加蓮「アイドル好きなのは本当だけど。もう未練はないかな」
凛「20年も続けられたし?」
加蓮「そうそっ♪」
これ以上は誤魔化せない。
老いないアイドルなんて、ただ気持ち悪いだけだから。 - 63 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 00:31:41 ID:cfPyWE5g
- 無人のステージに立つ。
観客はいない。
モバP「長い間ご苦労様」
プロデューサーはあの頃のままの姿で、いや……きっと私の贔屓目だね。まだ若いって思いたいだけかもしれないけど。
彼から労いの言葉を受けて、私は無意識の涙を止めることができなかった。
凛「あれ……?」
おかしいよ。
凛「なんで……だろ……」 - 64 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 00:32:44 ID:cfPyWE5g
- 頭を撫でる彼の手の温かさは、私をあの頃へと引き戻す。
ずっと隣で見ててね
凛「ここまで連れてきてくれて……ありがとう。プロデューサー」
この言葉にどれだけの感謝を込めたか……きっとあなたにはわからないでしょう。
加蓮「……凛」
モバP「凛と加蓮は俺の夢を叶えてくれた。お前たちは、確かにシンデレラだったよ」
凛「そう?」
モバP「ああ」
凛「嬉しいよ」
加蓮「私はもう忘れない。凛や奈緒、Pさんに仲間たち。みんなで目指した景色を」 - 65 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 00:33:27 ID:cfPyWE5g
- 凛「プロデューサー。最後のお願い、聞いて」
耳元で囁くと、プロデューサーは無言で頷いた。
そして観客席に移動する。
『私と加蓮の最後のステージは、プロデューサーのためだけにやりたいんだ』
過ぎていく時間取り戻すように。
今の精一杯を届けるから。 - 66 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 00:36:38 ID:cfPyWE5g
- 私と加蓮の歌が終わる。
加蓮「今までありがとうございました。私がアイドルを続けられたのは、Pさんのおかげだよ!」
凛「今日まで隣で見ていてくれてありがとう。プロデューサー。これからは……他の子を見てあげて」
凛「あなたを待ってるシンデレラがたくさんいるから」
私はきっと忘れないだろう。
プロデューサーが流した一筋の涙を。
「「お世話になりました!」」
モバP「……元気で」
凛「プロデューサーもね」
加蓮「困ったらいつでも頼って。私はずっとPさんの味方だから!」
モバP「俺の台詞だろそれ……ははっ」 - 67 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 00:37:07 ID:cfPyWE5g
- それがプロデューサーとの最後の会話。
別れは辛いから。
渋谷凛と北条加蓮は、その日消息を絶った。 - 68 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 00:38:41 ID:cfPyWE5g
- 数十年、様々な世界を見て回った。
厄介な境遇のせいで、私も加蓮も、男の人とは一度も付き合ったことがない。
加蓮「私、菜々さんも魔法使いだと思ってたよ」
凛「それはある。私もそんな気がしてたし」
加蓮「老いた菜々さんは見たくなかったなぁ」
私たちが身勝手に消息を絶った理由。
数多くの仲間たちがいたけれど、彼女たちが老いていく様を……。
目にしたくなかった。
私たちの姿を見られたくなかった。
卯月や未央はいつまでもあの頃のままでいてほしい。せめて私の中だけでも。
老いた二人を前にして、変わってしまった彼女たちとのズレに、耐える強さはない。
今の私には。
不老不死でも弱くなるものだね。 - 69 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 00:41:04 ID:cfPyWE5g
- 命が無限でも、心は有限。
きっとどんな生き物でも、心の寿命からは逃げられない。
懐古とは過去を見続ける夢だ。
輝いていたあの日々に取り残された私と加蓮の。
前だけを見続ける。後ろは振り返らない。
それが昔の私。
思えば、後ろを振り返った瞬間、私に死が訪れたのだ。
人は弱い。 - 70 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 00:42:30 ID:cfPyWE5g
- 奈緒との親交は続いた。
あるとき、奈緒が倒れたと聞いて、私たちは病院に駆けつけた。
奈緒「……凛、加蓮。私はすっかり老いてしまいました」
彼女に身寄りはいない。
栄光の人生だった。
ファンも大勢いた。
加蓮「……奈緒、どうして結婚しなかったの?」
奈緒「どうして……でしょうね」
奈緒「私の中にはいつもいましたよ。大切な人が」
奈緒「その方は結局振り向いてはくれなかったのだけれど……」
凛「……っ!」
奈緒「私は生涯、恋をしていたんです」
加蓮「もう、少女漫画の読みすぎ……」
奈緒「その人に見てほしいと……私は頑張ることができた…………Pさん……」 - 71 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 00:46:30 ID:cfPyWE5g
- 奈緒「子も孫もいないけれど……私には胸を張って誇れるものがあった……」
凛「うん……うん……」
奈緒の手を強く握る。
奈緒「永遠を誓った親友たち……」
奈緒「……凛、加蓮。今までありがとう」 - 72 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 00:47:24 ID:cfPyWE5g
- 凛「薬ならここにある!私を憎んだっていい!飲んでよ!飲んでよぉ……!」
私、最低だ。
奈緒「ごめんなさい。そして、ありがとう」
奈緒「死は平等だから。私の人生は悔いのないものでした。この大切な思い出は、全て私が得た宝です」
私は知っていたはずなのに!
気付かされる。軽はずみの一言が、どれだけ残酷だったか。
凛「……ごめんなさい!うっ……奈緒っ……奈緒っ……」
言わずにはいられなかった。
大好きな親友。 - 73 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 00:48:07 ID:cfPyWE5g
- 奈緒「おい!なに……泣いてんだよ……!あたしが死んだって……親友やめてやらないからな……っ!」
あたしたちは一生友達だ!
17歳の奈緒 - 74 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 00:48:54 ID:cfPyWE5g
- 加蓮「奈緒は可愛いなぁー」
16歳の加蓮
時が還っていく。 - 75 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 00:51:40 ID:cfPyWE5g
- 凛「……二人とも騒がしいよ。ここは病室なんだから」
15歳の私 - 76 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 00:52:39 ID:cfPyWE5g
- 奈緒「凛はクールすぎるぜ……」
涙は隠せてる?
今を忘れない。
焼きつける。
きっと今生の別れだから。
凛「何言ってるの。二人が騒ぐからだって」
三人で声に出して笑う。 - 77 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 00:53:19 ID:cfPyWE5g
- 奈緒「……久しぶりにあの頃に戻れたよ」
加蓮「だね」
奈緒「未来を見ろ、凛。あたしの知る渋谷凛は強かったぞ」
凛「あ……」
振り返らず前を向いて。
奈緒「お前いつから弱くなった?」
シンデレラガールになって。
プロデューサーへの想いを絶ったとき。
奈緒「げほっ……げほっ……」
加蓮「大丈夫!?」 - 78 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 00:55:26 ID:cfPyWE5g
- 奈緒「……友達が迷ったときは、道を戻してやるのが親友の務めだ」
凛「……ありがとう」
奈緒「これが最後の願いだ。凛」
奈緒「過去に囚われるな」
奈緒「加蓮。凛を頼む」
加蓮「痛いとこ突かないでよ……」
奈緒「加蓮はしぶといから大丈夫だろ?」
加蓮「奈緒ひどーい」
奈緒「うるせぇ……」
奈緒は、最期まで私たちの知る神谷奈緒を貫いた。
私たちのために。 - 79 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 00:56:22 ID:cfPyWE5g
- 奈緒の訃報が発表されたのは、それから数日後のこと。
加蓮「大丈夫?」
凛「うん。もう大丈夫」
神谷奈緒という女の子がいた。
照れ屋でツッコミ気性で、赤い顔をしながら新しい衣装に身を包み、そしてからかわれる。
そんなアイドル。
墓前に花束を捧げる。
加蓮「奈緒、あんた早く化けて出なさいよ」
凛「同感」 - 80 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 00:58:58 ID:cfPyWE5g
- 加蓮「あと20年もしたらさ、私たちの知り合いは誰もいなくなるね」
凛「そうだね。父さんと母さんとちひろさんくらいか」
加蓮「いつか会いに行く?」
凛「うん?」
加蓮「ちひろさん」
凛「今はいいかな」
加蓮「あらら」
凛「もう過去に縋るのはやめたの。奈緒との約束だし」
加蓮「数十年無駄にして後悔?」
凛「前を見続けたとしても引退はしてたよ。私たちは老いないから」
加蓮「奈緒から言わせれば私たちが化けて出てるようなものだからね」
凛「化けて……か。次は卯月と未央の墓参りだね」 - 81 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 00:59:35 ID:cfPyWE5g
- 加蓮「そういえばさ。二人とも凛の大親友なのに、どうして正体明かさなかったの?」
凛「卯月は素直だから信じてくれるだろうね。それでも薬は飲まかったと思うけど」
加蓮「どういうこと?」
凛「奈緒と一緒でまっすぐだから。間違った道は選ばない」
加蓮「うわ……私への皮肉?」
凛「加蓮は別だし。早く死にたかったの?」
加蓮「はは……」 - 82 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 01:00:15 ID:cfPyWE5g
- 凛「未央は適当に聞き流して面白半分で飲んだだろうね」
加蓮「酷い評価!でも否定できない!」
凛「よくも悪くも人の中心……というかエンターティナー?ノリでやっちゃうみたいな」
加蓮「たしかに!」
ここにはいない奈緒も、きっと隣で笑っている。
さよならは言わない。
またね、奈緒。 - 83 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 01:04:13 ID:cfPyWE5g
- あれから100年が過ぎた。
私は加蓮と二人で生活している。
加蓮とは同じベッドで眠るのが日課になっているけど、それは魔法使い固有の特性。つまりは寂しいのだ。
孤独への恐怖は、絡み合う指が解きほぐしていく。
加蓮の体温を感じて、私は安堵する。
それはきっと加蓮も同じ。
恋愛感情なんてない、純粋な友愛だ。 - 84 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 01:05:17 ID:cfPyWE5g
- もういいかな
いい人見つけて適当に付き合っちゃおうか?なんて笑い話にしたり。
けれど実際に行動することもなく。
シンデレラは魔法使いの魔法で変身する。
魔法使い(私)は臆病だ。
それでも後ろは振り返らない。
親友との約束だから。 - 85 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 01:07:06 ID:cfPyWE5g
- 加蓮「そろそろだね」
凛「ここが今の事務所かぁ」
まるでお城だ。
一月前。
加蓮「プロデューサーになる?」
凛「うん」
凛「私たちは渋谷凛と北条加蓮の子孫ってことにしてね」
加蓮「あー、だから待ってたんだ」
凛「今度は裏方。シンデレラに魔法をかける魔法使い(プロデューサー)になりたいなって」
加蓮「いいんじゃない?」
凛「付き合ってくれる?」
加蓮「当然」 - 86 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 01:07:25 ID:cfPyWE5g
- 拳と拳が触れ合う。
凛「プロデュースの勉強はしてきたからね」
加蓮「もう嫌ってほどね」
行こうか - 87 : エピローグ 2015/02/09(月) 01:08:15 ID:cfPyWE5g
- ちひろ「お久しぶりですね」
凛「千川さんもお変わりなく」
ちひろ「あら、ちひろでいいわよ?」
凛「私は渋谷凛の曾孫です」
加蓮「アタシは……北条加蓮の曾孫だよっ」
ちひろ「……やはり、魔法使いとは悲しい生き物ですね」
凛「まあね」 - 88 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 01:11:54 ID:cfPyWE5g
- ちひろ「私は千川ちひろ。この事務所でアシスタントをしています」
加蓮「それで面接は?」
ちひろ「あなた方には必要ありません」
凛「依怙贔屓はダメだよ?」
ちひろ「社長の判断ですから」
凛「今の社長か」
加蓮「茂場(もば)さんだっけ?」
ちひろ「いいえ。茂場は実在しません」
加蓮「えっ?」 - 89 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 01:12:33 ID:cfPyWE5g
- ちひろ「社長が来ました」
……そんな
…………嘘
社長「凛、加蓮。久しぶり」
それは私たちのよく知る人物で
加蓮「Pさん!?」
プロデューサー……モバPさんだった。 - 90 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 01:13:10 ID:cfPyWE5g
- モバP(社長)「俺、社長になったんだよ」
凛「どう……して……」
モバP「俺が人間離れした体力してたの知ってるだろ?」
加蓮「いやいや、それはちひろさんの魔法ドリンクのおかげだって、ちひろさん本人に聞いたんだけど!昔!」
ちひろ「あれ嘘です」
凛「はい?」 - 91 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 01:13:50 ID:cfPyWE5g
- ちひろ「あなたたちのプロデュースをする前から、いえ、最初からプロデューサーさんは既に不老不死だったんですよ」
加蓮「はあ!?」
ちひろ「はじめまして。私は魔法使いによって造られた人造人間、ホムンクルスの千川ちひろです」
凛「最初からって……まさか……」
モバP「……俺も魔法使いだったんだよ」 - 92 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 01:14:52 ID:cfPyWE5g
- 加蓮「はぁぁ!?なんで黙ってたの!?凛がどれだけ傷ついたと!」
凛「加蓮……ありがと」
加蓮の肩に手を置く。
プロデューサー……社長に掴み掛かろうとする加蓮を止める。
加蓮は言いたいことを堪えて、唇を噛む。
加蓮だってPさんが好きなのに。
私のために怒ってくれて、ありがとう。
モバP「……すまん。依存してほしくなかったんだ」
凛「わかるよ」
魔法使いは臆病だ。 - 93 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 01:17:52 ID:cfPyWE5g
- 凛「孤独は人を弱くするから」
加蓮がいなければ、私は廃人になっていただろう。
モバP「長い時間を生きる俺たちの敵は、孤独だ」
加蓮「私にはわからない。孤独なら支えてよ。優しく……してよ」
モバP「いつまでも」
プロデューサーが口を閉ざす。
目を閉じて、再び口を開く。 - 94 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 01:19:45 ID:cfPyWE5g
- モバP「君たちを見たとき、俺は感動した。俺と同じ境遇でありながら、未来を目指すその姿に」
モバP「俺は一度挫折したから。孤独を恐れ、生命を造り出すという禁忌をも犯した」
モバP「申し訳ないと思っているよ。彼女の身体は人間と同じではないのだから」
ちひろ「謝らないでください、マスター。たとえそれが過ちでも、私は感謝しています。生まれてきて……よかったと」
モバP「ちひろ、ありがとな」
ちひろ「はい」 - 95 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 01:20:51 ID:cfPyWE5g
- モバP「課金ガチャの存在を不思議に思わなかったか?」
凛「あー、あったねそういえば」
加蓮「Pさん金ない金ない言いながら必死に回していたっけ」
モバP「あれはちひろ、ホムンクルスに魔力を注ぐ行為なんだ。定期的にガチャを回さなければ、ちひろは止まってしまう」
凛「そういうシステムだったんだ……」
モバP「アイドルカードはその副産物だ。人工生命を無理矢理世界に定着させてるからな。その歪みが新しいアイドルを呼び寄せてしまうのさ」
加蓮「なにそれ怖いよ」 - 96 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 01:21:44 ID:cfPyWE5g
- モバP「話を戻そう。俺はそんなことをしてまで、永遠を共にする会話相手を造った」
凛「私たちがプロデューサーが不老不死だって知ったら……」
モバP「キラキラと輝く君たちの表情は、俺だけに向けられるようになっていただろう」
凛「否定はしない」
加蓮「かもね」
モバP「俺がプロデューサーになった理由を明かすよ」
モバP「何を見ても感動できない。どこか過去で見た出来事と思ってしまう。新鮮さがないんだ」
凛「…………」 - 97 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 01:23:43 ID:cfPyWE5g
- モバP「もう500年は生きたかな。死ぬ方法を模索していた。そんな頃だった」
モバP「全てが色褪せて見えていた俺を、一人のアイドルが変えたんだ」
モバP「それは胸に宿る光だった。日高舞。伝説のアイドル」
凛「凄い人だったのは覚えてる」
モバP「彼女は普通の人間だ。魔法も使えず、実力だけで人々を魅了した。俺も凛と同じで凄いと思ったよ。同時に感動した」
モバP「人間の生きる力、輝こうとするエネルギーに」
凛「だからなんだね。プロデューサーになったの」
加蓮「もう一度、感動……したかったから?」
モバP「……ああ」 - 98 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 01:26:42 ID:cfPyWE5g
- モバP「そのためには、誰かに依存なんてしてほしくなかった。二人きりでも、前を向いて輝き続けてほしかった……」
凛「……私たちは感動させられた?」
モバP「最高だったさ。シンデレラに選ばれた凛、魔法使いでありながら輝こうとする姿。加蓮との友情、そして引退。君たちの人生はずっと見守ってきたんだ」
加蓮「ストーカー発言だね」
モバP「まあな。ある意味そうなのかもしれない。……偉そうに言ってるが、君たちに執着し、依存していたのは俺なんだ……」
凛「嬉しい」
加蓮「変態」 - 99 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 01:31:34 ID:cfPyWE5g
- モバP「君たちを誰よりも愛しているのは自分だと……今思えば傲慢で恥ずかしい考えだ」
凛「あなたを狂わせた正体を、私も知ってるから」
加蓮「百年以上生きればね……」
モバP「君たちから成長を奪ったのは俺だ。未来を奪ったのも」
凛「それは違うから」
加蓮「それこそ傲慢だよ」
凛「私の人生は私のもの。だから、私の失敗は私のもの」
加蓮「誰かに押しつけていいものじゃない。責任っていうものは自分たちで背負うものだから」
モバP「……強くなったな」
凛「仲間のおかげかな」
加蓮「だね♪」 - 100 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 01:36:17 ID:cfPyWE5g
- だって、今告白されても、私はきっと断るからさ。
長い時間のなか、互いの嫌な面を知って、嫌いになってしまうかもしれないから。
永遠に恋していたいんだ。
だから一緒にはいられないと願った。
いたくないと思ってしまった。
愛してるから。
嫌いになりたくない。
いつか消える気持ちでも、あなたに対してはいつまでも新鮮でいたいから
あなたへの恋じゃなくて、あなたに恋している私が好きだから。
身勝手でごめん。
それが百年経って出した結論……のはずだった。
後ろ向きに前向きに。
それこそが、私たちの心を守る手段。 - 102 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 01:39:12 ID:cfPyWE5g
- モバP「これからは仲間として、よろしく頼む」
差し出された手に、私の結論は簡単に歪む。
一緒にいてもいいの?渋谷凛?
嫌な面くらい普通に生きてる人でも見てる。
駄目な部分だって受け入れようと努力してる。
綺麗なところしか見ないなんて、それこそ偽りの恋だ。
いつまで逃げるんだ?
奈緒の声が私の背中を押す。
現金だね、私。
凛「ふーん、アンタがこの事務所の社長?まあ、悪くないかな……なーんて」
加蓮「北条加蓮、改めてよろしくー」
私たちの恋愛は
今、始まったんだ。
おしまい - 103 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 01:50:59 ID:cfPyWE5g
- 終わらない時の中で、私たちは生きていく。
これからもたくさん笑い、たくさん絶望するだろう。
それでも私たちは、一日一日を大切に。
まだ見ぬ明日を夢見て、駆けていく。
さあ、プロデュースをはじめよう。
シンデレラの魔法はまだ、終わらない。
完 - 105 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/09(月) 04:37:56 ID:gKfvlRWQ
- 乙乙!面白かった!

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