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さやか「ほむほむほむほむ」

2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/29(火) 22:39:19.76 ID:x/5BDUJ00
その女子生徒の背中に声を掛けたが、暁美ほむらが気が付く様子はない。
放課後、日もすっかり暮れ、昼間のような賑やかさが去った公園で、隣に並ぶ人もなく、ベンチに腰かけて俯いている。
何を考えているのか。
さやかにはわからなかった。




3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/29(火) 22:40:45.77 ID:x/5BDUJ00
彼女はたまたま公園の前を通り過ぎただけだった。
視界の端でちらりと見えたほむらの姿が無性に気になって、好奇心を抑えられずに、気が付けば何時の間にかほむらに声を掛けていた。
「無視しないでよ」
ほむらは顔を上げた。
彼女のさらりとした黒髪が後ろに流れる。
西日を受けて艶やかに見える。
――鬱陶しそうだな、とさやかは思った。
お互いに仏頂面のまま見つめ合って、さやかもほむらも、そのまま暫らく何もしなかった。
一息合って、人形のようなほむらの唇が開く。


4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/29(火) 22:42:01.17 ID:x/5BDUJ00
「何か、用かしら」
なんだよ。用がないならきちゃいけないのかよ。
ムッとして言葉を返す。
「別に。たまたまあんたの姿が見えたから、話しかけただけ」


6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/29(火) 22:48:51.15 ID:x/5BDUJ00
そう、とでも言うように、ほむらは素っ気なくさやかから視線を外す。
彼女の目は再び他所を向いた。
間抜けたようなカラスの鳴き声が聞こえてくる。
何だか馬鹿にされたように感じた。


8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/29(火) 22:52:58.98 ID:x/5BDUJ00
何、澄ました顔してんのよ。
ほむらの愛想のない態度に、さやかはだんだん腹が立ってきて、なんだか強引に、彼女を自分の方に振り向かせたくなった。
「隣、邪魔するよ」
さやかは体をほむらの隣に割り込ませる。
ほむらは少し、驚いたように見えた。
ほんの僅かの表情の変化だったので、さやかが勝手にそう思っただけだが。
ほむらが素直に横に退く。
地面に、ベンチに腰掛ける二人分の影が伸びている。


11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/29(火) 22:55:30.89 ID:x/5BDUJ00
静かだった。
「あんたってさ、何考えてるかわかんないわ」
本当に。
やや間があって、ほむらはそう、と声に出す。
本当に、人形みたいなやつだね、あんた。
「学校でもあんまり喋らないし。そっちから声を掛けてきたかと思えば、わけのわからないことを言うし」


12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/29(火) 22:57:44.93 ID:x/5BDUJ00
ほむらは黙ったままだった。
てっきり何か言い返されると思って、隣に座るほむらの方を向く。
何も言葉を話さない彼女はただ真直ぐを見据え――さやかは不思議とその目に惹かれた。
ああ、まただ、と思った。
また、そんな目をしてる――瞳の中には目の前のさやかや、公園の遊具や、遠くに見えるビル群が、映っているようで、まったく映っていない。
虚ろな目ではない。
でも。
「あんたのその目、嫌い」
ほむらは首を傾げた。
自分がどんな目をしてるのか、わかってないの?
「愚かものって、たぶんあんたのこと言うんだわ」


14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/29(火) 23:01:37.65 ID:x/5BDUJ00
「……それは、私の真似?」
ほむらがじろりと睨んでくる。
「言いたいことがあるならはっきりと言いなさい、美樹さやか」
「まあ、あんたはもっと愛想を持ってってことよ」
さやかも負けじと睨み返した。
お互いに険しい顔のまま威圧し合って、しかし、さやかもほむらも、そのまま暫らく何もしなかった。
先に目を逸らしたのはほむらの方だった。
――勝った。
内心で、つまらない闘いの勝利を告げる。


15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/29(火) 23:05:13.11 ID:x/5BDUJ00



また、夕暮れだった。
沈んでいく夕日は、刻が経つごとに弱々しくなって、公園のベンチに影を落とす。
少女もまた、暗い顔をして、いつかの誰かのように俯いた姿勢のまま、動きはしない。


16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/29(火) 23:09:04.01 ID:x/5BDUJ00
ふと、気配がした。
一瞬、自分の親友が追い駆けてきたのかと思った。
そんな都合の良いことを考える。
「使いなさい」
差し出されたのはグリーフシードだった。
さやかはほむらの手を払い退ける。
「あんたからの施しなんていらない」


19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/29(火) 23:11:42.67 ID:x/5BDUJ00
乾いた音が響き、グリーフシードが地面に転がった。
ころころと、足元に転がってきたそれを、さやかはぼうっと眺めていた。
ほむらは黙ったまま、何もして来なかった。


21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/29(火) 23:16:02.31 ID:x/5BDUJ00
さやかは顔を上げる。
動作一つをするのも気怠かった。
心に抱えている重いものが上にのしかかっているようで、なかなか頭を上げることができなかった。
目が合う。
ほむらの目。
あれ?
それは、いつもと違った。
ほむらの表情は、さやかが今まで見たこともないようなものだった。
何かに迷っているような。
心の中でそれを決めていたけど、なかなか実行に移せない。
そんな迷いに振り回されて、眉の間に皺を寄せ、歯軋りをしてまで、本当にどうしようかと悩んでいる。
それが何だか苦しそうだった。


22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/29(火) 23:18:48.11 ID:x/5BDUJ00
「あんたさ」

口を開きかけたが、言葉にするのは躊躇った。

「ごめん、何にもない」
「……私は」


25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/29(火) 23:21:13.56 ID:x/5BDUJ00
さやかはほむらを見据えて、その続きを待つ。

ほむらも何も言わなかった。

彼女は突然しゃがみ込んだ。
なにを、と思ったのと同時に、ほむらは立ち上がって、黒い何かをさやかの手に押し付ける。
グリーフシード。
ほむらは相変わらず愛想のない口調で言う。

「使いなさい」


26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/29(火) 23:25:40.76 ID:x/5BDUJ00
何をするかと思えば。

「言ったでしょ。あんたの施しは受けない」

ほむらは言葉を無視し、さらに強く、さやかの手にグリーフシードを押し付ける。
彼女の謎の行動に苛立ち、再び手を払いのけ拒絶を表しても、ほむらはまた、腰を落としてグリーフシードを拾った。
差し出されてくる。強引に。
何度も。

いらないっていってるのに。

使いなさい。

何で?

「まどかを悲しませないで」

さやかは暁美ほむらという人間の、一部を垣間見たような気がした。


28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/29(火) 23:29:14.88 ID:x/5BDUJ00



いつかの誰かとは違って、地面ではなく空を眺めていた。

「転校生……暁美、ほむら」

彼女の名前を、口にする。

「ほむら、ほむら……ほむほむほむほむ」

何だか馬鹿らしくなって、止めた。


31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/29(火) 23:33:42.86 ID:x/5BDUJ00



「こうなること、あんたは知ってたの?」




雲が渦巻き、空を黒く濁らせていく。
壊れたビル群。
家は軒並み引っ繰り返り、溢れた水に溺れ、流されていく公園のベンチがさやかの眼下に映った。
かろうじて足場は原型を保っているが、荒れる猛風にぐらぐらと揺れ、振り落とされそうになるからだを細い足で支える。

気を抜くとやられそうになる。

遠くにいる、あの魔女は何?


33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/29(火) 23:36:45.20 ID:x/5BDUJ00
本当にまどかなの?

横を見ると、ほむらの頬には、ところどころ焼けただれの跡が残っている。
涙のように、血が流れている。
それでも顔はいつものものだった。

「転校生!」

澄ました顔に苛立ちを募らせ、さやかはほむらの胸倉を勢いよく掴む。

「あんた、」

知ってて、何で言わなかったの!?


34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/29(火) 23:38:24.90 ID:x/5BDUJ00
そう怒鳴ろうとした。
しかし、いざ口を開くと、咽喉からは掠れた声しか出てこなかった。
ほむらの、あの目を前にして。
以前なら、きっとこいつに助けられる前なら、怒鳴ることができたのに。

知ってても、きっと、ほむらは言えなかった。


37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/29(火) 23:39:28.28 ID:x/5BDUJ00
「あたしも、愚か者だわ」

ほんとバカ。あんたの事、何も悪く言えないじゃん。


39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/29(火) 23:42:30.30 ID:x/5BDUJ00
さやかはそっと、ほむらを離した。
彼女はろくに抵抗もせず、されるがままだった。
苦しそうな素振りも見せない。
まるで人形だ。

あんたはさ、転校生。あんたは、ただ。


40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/29(火) 23:47:03.69 ID:x/5BDUJ00
「行きなよ。過去に戻るんでしょ」

素っ気なく、さやかはほむらに背を向ける。

後ろにいる彼女の、表情はわからない。
でも、多分、驚いてるだろうな。
さやかは勝手にそう思うことにした。

暫らくの沈黙の後、ほむらの声が返ってくる。

「あれと戦うの? 一人で?」

さやかは笑った。

「あれって、一応さ、まどかなんだよね。じゃあ、あたしが何とかしなくちゃ」

ここはあたしが守るから。
だから、あんたはまどかを助けてよ。
あたしじゃできないからさ。


44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/29(火) 23:51:52.01 ID:x/5BDUJ00
「あとさ、そんな目するの、もうやめなよ」

その言葉を言うのが先だったか。

気が付けば、ほむらの気配は完全に消えていた。

行っちゃったか。

さやかは少しばかり、残念に思った。
一番言いたかった言葉を、かけることができなかったことに。

でも、いいや、と思う。
きっと今からでも遅くない。
ぜったいに、あいつに伝わるはずだ。

「諦めないで頑張りなよ、ほむら」

今までの態度、あたしも謝るからさ。
でも、あんたもちゃんと謝りなよ? ほむら。


46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/29(火) 23:52:54.88 ID:x/5BDUJ00


おしまい。
読んでくれてありがとう。


47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/29(火) 23:56:05.86 ID:Z2BFDLzn0
乙乙乙


49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/29(火) 23:56:35.51 ID:mDXVU0tN0
ほむほむほむほむ乙


51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/29(火) 23:56:55.80 ID:U6v/T+GY0
乙さやほむ


57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/30(水) 00:06:18.39 ID:TEs3erYT0
コンパクトにまとまってて面白かった
乙だ


58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/30(水) 00:10:26.71 ID:D2zwqxAf0
乙!


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