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妹「お兄ちゃん、今エッチな本読んでたでしょ」
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6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 01:03:23.89 ID:Nwm23uNp0
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女「ちょっと聞いてよ。最近アイツに彼女ができたらくしてさ」
妹「アイツ? アイツって誰のことです?」
女「アイツはアイツ。弟の事」
妹「どうしたんですか? いつもは名前で呼んでましたよね?」
女「ちょっとね。ムカついてるの。毎晩毎晩電話なんかしちゃって──あぁ、うるさいッたらありゃしない」
妹「それは最近出来た彼女とですか」
女「そう! 好きだとか好きだとか好きだとか! そんなことばっかり壁の向こうから聞こえてくるのよ? バカだと思わない?」
妹「付き合い始めならそんなものじゃないですかね。確か今年で十三歳でしたよね? 浮かれもしますよ」
女「むっ、知ったような口を聞くんだね? 君もアイツとひとつしか変わらないクセに」
妹「私だったらきっと浮かれるだろうな、というとです」
女「嘘だね。君もその歳で彼氏とかいるんだろう? いや君くらいの歳ならボーイフレンドの
一人や二人くらいいたっておかしくない。なんたって私が認める可愛さだ!」
妹「いませんよ」
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8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 01:05:24.74 ID:Nwm23uNp0
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女「本当かなぁ? お兄さんに聞いたら、案外私と同じこと言うかもよ?」
妹「どうしてそこで兄が出てくるんですか」
女「君のウチも部屋が隣なんだろう? 筒抜けなんじゃないか?」
妹「まぁ、小声じゃなければ聞こえるかも知れませんが」
女「だろう? だったら君が夜中に電話で意中の人と話してみろ、君に彼氏なんていないなんて嘘、あっという間にバレるさ」
妹「そんな簡単にバレる嘘、私はつきませんよ」
女「じゃあ、バレそうにない嘘ならつくっていうの?」
妹「つきません。私は、絶対にバレない嘘しか言いません」
女「なにそれ、そんなのあるの?」
妹「ありますよ」
女「例えば?」
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9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 01:07:25.92 ID:Nwm23uNp0
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妹「例えば──ですか。そうですね、例えば私が、ここで先輩を罵倒したとしますよね?」
女「ほう、私はどう罵倒される?」
妹「先輩は可愛くてとっても綺麗です」
女「それが罵倒か」
妹「先輩を罵倒する言葉を私は持ち得ませんよ。でも、仮に罵倒できたとします。
そして先輩は心に深い傷を負った。塞ぎ込んで部屋に篭り、死ぬまで一生出て来れない程に」
女「酷いな君、本当は私のこと嫌いじゃないのかね? ん?」
妹「そうなると、先輩の口から漏れることはないわけですから、それを知っているのは私だけですよね?」
女「そうだな間違ってないよ。いや、ひとつだけ間違っているとしたら、私の言葉を無視した事だ」
妹「はい。これはつまり、私以外誰も知らない<誰も見ていない>のであれば、そこで起きた事は誰にも分からないということです。
だから、私がこの場で起きたことに対して誰にどう嘘を言おうとも、それが真実になりますよね?」
女「ならないな。私は怒り狂うよ」
妹「これは例えのお話です。前提を崩さないでくださいよ」
女「君が私の話を無視するからだろう」
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10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 01:09:26.57 ID:Nwm23uNp0
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妹「まぁまぁ。先輩に怒った顔は似合いません。笑顔が一番素敵ですよ」
女「むっ、君は本当に嘘をつくのが上手いな」
妹「お褒めに預かり光栄です」
女「いや、褒めたつもりはな──ん? そこで礼を言うのは何かおかしく──」
妹「ところで先輩。弟さんの話はどうなったのです?」
女「おぉ、そうだった。忘れるところだった。だからね、毎夜毎夜壁越しね。
アイツとどこの馬の骨とも分からない他人との愛語りを、聞かされ続けているわけだよ。たまったもんじゃない」
妹「更にところで先輩。先輩は今おいくつですか?」
女「唐突だな。十九だ。何を今更」
妹「つまり私より五つも上です。私にはまだそういう経験はありませんが、先輩ならそういう経験してきたんじゃないですか?
いえ──ありましましたね。私も先輩のノロケを嫌というほど聞きました。直接。この先輩の部屋で」
女「嫌だったの?」
妹「まさか。今のは言葉のあやです。今だって、いつだっていくらでも拝聴させていただきます。ですが」
女「ですが?」
妹「ここは人生の先輩として、先輩がグッと堪えてあげるべきです」
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12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 01:10:36.16 ID:3+oMYDx80
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兄は一体いつ出てくるのか…?
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13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 01:12:07.35 ID:Nwm23uNp0
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女「何を言うかと思えば。私は堪えてるよ。アイツには何も文句なんて言ってないんだから。
私が言いたいのはそういうことじゃないの」
妹「と、言いますと?」
女「だからさ、君にも分かりやすく言うとだね、君のお兄さんに彼女ができるようなものだよ」
妹「酷く分かりにくいです」
女「君はブラコンだろう?」
妹「私がそんな風に見えますか」
女「一体何年の付き合いだと思ってるんだ。私は君を0歳の頃から知っているんだぞ。
昔はお姉ちゃんお姉ちゃんと私の後ろを引っ付いてきていたのになぁ。今や二人称は『先輩』
そして金魚の糞である君がくっつく魚はお兄ちゃんときたもんだ。私は酷く寂しい」
妹「先輩と呼べと勧めたのは先輩でしょう? 先輩には敬語を使えと強要したのも、他ならぬ先輩です」
女「まぁね。そのほうが可愛いじゃないか。でも、たまには普段通りのお姉ちゃん子に戻ってもいいと思うよ」
妹「もうこれが普段です。戻しようがありません。それに私はお姉ちゃん子でも、ましてやお兄ちゃん子でもないです」
女「おぉ、私が敬語を強要したばかりに、君の心はドライに一人立ちしてしまったんだね──あぁ、あぁ!
私は一体、なんて罪を犯してしまったんだ! 昔の君に戻ってくれ!」
妹「脱線が過ぎます。つまり先輩はブラコンで、弟さんが他の女の人にうつつを抜かしているのが気に食わないと」
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15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 01:14:41.63 ID:Nwm23uNp0
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女「全くその通りだ。私の可愛い弟が傷モノにされてしまう」
妹「先輩は弟さんが好きなんですか」
女「うん。可愛いし時々男らしいし。頭もいい。スポーツも出来ちゃう。話も合うし気兼ねもしない。私の理想だね」
妹「そこまで言いますか」
女「事実言ったまでだ。変だと思うかい?」
妹「世間一般には、少し変です」
女「だよね。でも──どうしてなんだろうね?」
どうして──。
どうしてなのだろう。
女「君なら分かってくれると思って言うんだけどさ。私は、割と真面目にアイツのことが好きなの」
妹「好き、ですか?」
女「そう、好き。異性として」
妹「異性って──それは、そんなことは、人には言わない方がいいです」
女「分かってるよ。でもさっき君が言っただろう? だから言うんだ」
妹「私が、何を言いました?」
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16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 01:17:13.00 ID:Nwm23uNp0
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女「<誰も見ていない>なら──って。ここには私と君しかいない。そして君の口が堅い事は私が良く知っている。
君のさっきの理屈なら、誰も口を開くものがいないのなら、<誰も見ていない>のと同じだろう」
妹「だとしてもそんなこと、困ります」
女「私も困っている。だから聞いて欲しい。そしてただ聞いてくれるだけでいい。いつも私の愚痴を聞いてくれるみたいに、
ただ聞いて、そして最後にちょっとだけ君の意見が聞ければいい。君は聡明だ。相談できるのは君しかいない」
妹「私は、弟さんの愚痴を聞いて欲しいって言うから今日は来たんです。そんな」
女「私も初めはそのつもりだったよ。でも興が乗ったのさ」
妹「でも──」
女「でもじゃない。これは決めた事だ。それでも聞きにくいと言うのならばこうしよう。例えば私に好きな人がいて──」
例えば私に好きな人がいて。
その人と自分が決して、決して添い遂げられぬ<関係>だったとしたら。
そしてそれでも、その人と添い遂げたいと思うのならば。
女「──私は一体、どうしたらいいと思う?」
妹「弟さんは視野に入れずに、ですか?」
女「そう話したつもりだよ」
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17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 01:19:15.04 ID:Nwm23uNp0
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妹「でしたら、そうですね──その<関係>を壊せばいいと思います」
女「難しいことを言うね。でもその<関係>が壊せないとしたらどうする?」
妹「でしたら、その<関係>を構築している世界を再構築するしかないと思います」
女「──え? 今、なんて言った?」
妹「えっと、待ってください。言葉を選んでいなかったもので」
女「大丈夫。待つよ」
妹「そう、ですね。この場合、世界ではなく──社会や世間とか、そういう表現の方が適ってますかね」
女「なるほどね。<関係>ではなく、それを取り巻く環境をを再構築するということか。
でも、それはつまり社会や世間と戦うって事かな? 頭が痛くなるね」
妹「でもそういうことだと思います」
女「うんうん。分かるよ。君の言いたい事は分かる。でもそれって──酷く実現不可能な事じゃない?
社会や世間ってのはさ、謂わば個人個人の価値観や道徳観念でもあるわけでしょ?
それを壊して作り変えるなんて事は、並大抵の事じゃないよ」
妹「出来ない──でしょうか?」
女「少なくとも、私は出来なかったね。だからもう<諦めてる>」
妹「え?」
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19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 01:21:19.60 ID:Nwm23uNp0
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だったら何故、先輩はこんな話を私にしたのだろう。
女「もうね、好きじゃないのさ。私も他の人が好きだし。だからこうしてアイツに彼女ができても、イライラするくらいで済んでる」
妹「それは、まだ思っているって事じゃないんですか?」
女「違うよ。私は今、姉としてアイツの事が好きなだけさ。異性としては見ていない。でなきゃ彼氏なんて作れないよ」
妹「でも、今からだってアプローチをかければ」
女「そういう問題じゃないのさ。私は分かってはいなかったけれど、君が言うに姉弟で好き合うっていうのはつまり、
価値観とか再構築だなんて小難しい言葉を使わなければ、相手の気持ちを自分と同じ位置にまでに持ってくる
ということなんだろう? そんな事は私には出来ない。いや、出来なかった。でも──」
君になら出来るんじゃないか──?
先輩はそう言った。
妹「私? 私がどうして。関係ありません」
女「ここで話を元に戻そうか。私の目が確かなら君もブラコンだろう?」
妹「先輩の目は節穴です」
女「おぉ、今日初めてだな。君からの私への暴言は。思慮深い君の言葉とは到底思えない。私は大いに傷ついた。
弟好きの私と相対するのならば、君はきっと『兄のことは好きだけれど、そういう目では見ていません』くらいの、
そんな優しい言葉をかけてくれると思ってたのに。どうして今回に限ってムキになっているんだい?」
妹「それは──」
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20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 01:23:24.45 ID:Nwm23uNp0
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女「いいよ。言わないでいい。君と長年連れ添っている弟好きの私だから分かるんだ。君は私と同じ目で──彼を見ている。
だからこそ私は君に切り出してみたのだし、そして君もすんなりと受け入れてくれたのじゃないのかい?
普通、こんなことを相談したところでまともに聞いてくれやしないだろう。違う道を示されるさ。<諦めろ>ってね」
妹「先輩は、私にどうして欲しいんです?」
女「決まっているだろう。ただ諦めないで欲しいのさ。お兄さんにはまだ彼女はいないんだろう?」
妹「いないと──思いますが」
女「夜中に話し声とか聞こえてくることもないのかい?」
妹「え? 声は聞こえませんが、たまに──ですけど、ごそごそと物音がします」
女「あぁ、それは本とかビデオでも見ながら一人エッチしているんだろうな。だったら彼女の問題はないかな? 確実、とは言えないが」
妹「へっ!? お、お兄ちゃんはそんなことしないです!」
女「おうおう。君は兄への幻想を抱きすぎだよ。もう少し現実を見た方がいい。
確か彼、今は高校二年だったよね? だったらしていない筈がない」
妹「や、やめてください」
女「もし攻めるとするならそこからが良いと思うな。色んな意味で近付きやすいし。でも急に迫ると逃げられるからね」
妹「──まるでやったみたいな台詞ですね」
私は仕返しとばかりにそう切り返す。
女「したさ。逃げられたし叩かれた」
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21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 01:26:01.22 ID:Nwm23uNp0
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妹「叩かれたって、先輩、一体何をしたんですか?」
女「一緒に部屋で遊んでたときに、不意に股間をまさぐってやったのだ」
妹「そ、そんなの叩かれて当たり前じゃないですか。何してるんですか!」
女「だから股間をまさぐったのさ。柔らかかったぞ?」
妹「や──! 聞いていませんそんなことは!」
女「可愛いな君は。いやウブなだけか。まぁどちらにせよ、からかいがいがあるな」
妹「からかわないでください!」
女「おぉ、鸚鵡返しとは珍しい。いやね、私だってその時は必至だったんだよ。当時は君みたいに頭が回らなかったから
そんな事をしてしまったわけだ。恋は盲目とは良く言ったものさ。相手の立場を見極めないと痛いしっぺ返しを食らう。
先輩からの教訓だよ。反面教師にしてくれたまえ」
妹「そんなこと実行しませんから問題ないです」
女「時と場合にはしてもいいと思う。何事も雰囲気さ」
妹「絶対にしません」
女「まぁ、それはしないということにしてあげようか。でも、モーションはかけるんだろう?」
妹「し、しません! どうして兄にそんなことをしなくちゃいけないんですか」
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23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 01:28:24.99 ID:Nwm23uNp0
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女「君はマゾかい? そんな事を言って欲しいだなんて。よし言ってやろう。いいかい? 耳の穴かっぽじって聞くんだぞ?
君のお兄さんは今勉強にかまけているからいいかもしれないが、再来年大学へ入ったら必ず彼女ができるだろう。
可愛い君のお兄さんだ。その君と同じ血をしているのだから見た目が悪いわけがない。でもね、それはつまり女の子が
放っておかないってことさ。まぁもし放っておかれるようなら私が掻っ攫ってやる」
妹「それ、先輩の彼に報告しておきますね」
女「勝手にしろ。続けるぞ? そしてその彼女と上手くいけば結婚して、子供が生まれて、幸せな家庭を築くだろう」
妹「いいことじゃないですか」
女「一概にはそうだね。でも──その隣に君が来る事は絶対にありえない」
妹「そんなの、当たり前の事じゃないですか。私たちは兄妹です」
女「それも一概にはそうさ。でも考えてみなよ。今、お兄さんの隣には誰もいない。だから、妹である君が一番近くにいる。
でも、彼女ができたらお兄さんの隣なんてものは一瞬で奪い去られる。いや、奪うだなんて表現が悪いな。
さっきも言ったが、君はそこに納まることなんて無理なんだからね。そもそも君は、一番だなんて数を数えられる
立場でもないんだ。ただ近くにいただけ。妹だから置いて貰っているだけなんだよ」
先輩はそこで一息つく。
私は、何も言い返せない。当然の事だからだ。言うまでもないし、反論する意味も必要もない。
女「だからさ、もしお兄さんに彼女ができたら、君はもうお兄さんと一緒にいる事はできない。
置いてもらう事さえ許してもらえない。何故なら、お兄さんは他に家族を作るからさ。
妹なんていうものは、家族だから一緒にいられるというだけの存在。それ以上でもそれ以下でもない。
君はお兄さんにとってその程度の存在でしかない。それは君にとっても同じでなければならない。
だから普通は問題はない。けれど──君は兄を好きになってしまっている。だから」
妹「だからなんですか」
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24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 01:31:02.75 ID:Nwm23uNp0
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女「だからもう今を逃したら終わりなのさ。お兄さんの笑顔はもう、君に向く事はない」
妹「そんなこと、関係ないです」
女「もし向いたとしても、それは愛想さ。君は家族じゃなくなるのだからね。他人だから。
でもそれでも妹だから女としても見てもらえない。君は一生──兄から女として笑顔を向けられる事はない」
妹「それで問題ないです。それが普通です」
先輩は声を荒げた。
女「普通ってなんだい? 君の兄への純粋な思いが、普通じゃないと言うのかい? それとも君は、
自分の思いが不純だと思うかい? いつも隣でヘラヘラ笑って好きだ好きだとただ言っているだけの
──アイツの思いと、一体何が違うっていうんだ? 私は──私は──! 私はただ好きなだけだった!
なのに、なのにどうして──私は、私は気持ち悪いか? 無為に殴られなきゃいけないか? 私は──」
妹「先輩。もういいです」
泣いている。
だからこそ──先輩は諦めたのだろう。
そして──この話を私にする為に、今日のこの全てがあったのだろう。
女「よくない。最後まで言わせろ。私は許せないんだよ」
許せなくて、泣いているのか。
憤っている。
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26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 01:33:38.08 ID:Nwm23uNp0
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女「社会が、世間が──うぅん、違う。やはり君の言葉を借りよう。価値観や道徳がだ」。
そしてそれを当たり前と思って鵜呑みにしている連中を私は──許せない」
妹「そんなの、誰だって一緒です」
女「一緒なものか! 私や君は──違う」
妹「違わないです」
女「君も強情だな。君は私と違うと、まだ言いたいのか」
妹「そうじゃないです。違いなんてないんです。先輩や私がそう知ることが出来たのはどうしてですか?」
女「それは私たちが自分の兄弟を好きになってしまったからだ」
妹「そうです。そして、そんな事は普通知り得ない。知りようもない。だから先輩はきっと抜けていたんじゃないんですか?」
女「何が?」
妹「自分の気持ちが、どういうものなのかを伝えるという好意を。私たちが他者と違うのは、自分の思い、その一点です」
女「君は──君の思いは、他人のそれと違うというのか?」
妹「違います。いえ──同じだと思いたいのですが、それでも違うんです。何故なら私たちの思いは、
<タブーを犯している>というレッテルを必ず貼られるからです。そしてそれは、そういう見られ方しか
されなくなる。私たちがそれにどう反論しようとも、誰も聞く耳は持ってくれない。
<タブーを犯している>人間の言葉なんて、誰が信用しますか? するわけがないです。それは即ち
違うのと同じ。民主主義ではないですが、皆が皆同じ事を言うのであれば、私の思いはやはりタブーなんです」
女「君は、それでいいのか?」
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29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 01:35:54.09 ID:Nwm23uNp0
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妹「いいです。事実ですから。でも──」
女「でも?」
妹「ひとりだけ、そうではないと知って欲しい人がいます」
女「ひとりだけ? それじゃあ意味が無い。何も変わらない。私や君がもう一人増えるだけだ」
妹「そう──ですね。分かりました」
私は椅子から腰を上げ、ドアへと歩み寄る。
妹「また来ますね」
女「待て。君になら出来ると言ったが、私は何も無理強いしたくて言ったわけじゃない」
妹「分かってますよ。私だって恐いです。でもね、先輩。私だって、できることなら一緒に居たいんです」
ずっと。
ずっと一緒にいたい。
だから──。
妹「いってきます」
私は言って、ドアを抜け階段を下り玄関を潜って外へと降り立った。
空を仰ぐ。陰りが差していた。
もうすぐ夜が訪れる。
酷く──寒い。木枯らしが吹いた。
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31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 01:38:09.75 ID:Nwm23uNp0
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道路を挟んだ向かいの家を望む。
私の住む家だ。
二階の一室に明かりが見えた。兄の部屋。きっと勉強しているのだろう。
突然、くぅ、とお腹が鳴った。
妹「これは、戦の前の腹ごしらえかな」
辺りには誰もない。<誰も見ていない>のなら、何を言ったて構わない。
妹「よし──」
ついでに声をあげて、なんとなく気合を入れる。
女「頑張れよ」
不意に頭上から声。
私は思わず背筋を伸ばした。
振り返り見上げると、そこに先輩が居た。
長く黒い艶やかな髪が、揺れる風に乗って静かになびいている。
薄暗くて良く見えないけれど、その表情はどこか笑顔に見えた。
妹「はい」
私は言って、兄の居る家へと赴いた。
*
-
34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 01:40:18.45 ID:Nwm23uNp0
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例えば好きな人がいて。
その人と自分が決して、決して添い遂げられぬ<関係>だったとしたら。
そしてそれでも、その人と添い遂げたいと思うのならば。
その<関係>を何らかの方法で打ち壊すしかないだろう。
けれど。
<関係>そのものが壊せないモノだったとしたら、一体どうしたらいいのだろう?
答えはある。
<関係>を構築する世界を壊すのだ。
壊し、そしてその<関係>を許容する世界を再構築するしかない。
世界──とは大げさだろうか。
むしろ世界観や社会、世間と表現すべきかもしれない。
いや、もっと的確な言葉がある。
それは<価値観>や<道徳>だ。
<道徳>というものは、生まれて今まで生きてきてた中で培ってきた知識や経験に他ならない。
それを壊すという事は、ある種人生の否定に相違ない。
それはその人にとって、多くは苦痛になり得るだろう。
──他人を傷つけてはいけない。
──他人に優しくしよう。
そういうことを教えるのが<道徳>。言ってしまえばだけれど、私はそう思う。
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36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 01:42:38.13 ID:Nwm23uNp0
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故に普通、そんなことはしない。
いや──してはいけない。と、教えられている。
それは皆が生き易い世界を作るために説かれる、至極当前の事だ。
問題なのは、その至極当前のことを、皆が皆、鵜呑みにしている事だ。
誰も疑問に思わない。
疑問に思うことすら、道徳的ではないとされる。
それは違う。
違うと、思いたい。
でも──それを決めるのは私ではないから、これ以上の自問は無意味だ。
決めるのは、私の好きな人。
次に父や母。
そして世間や社会。
きっと、私は敵わない。
私の心は粉微塵に打ち砕かれるだろう。
でも。
それでも──。
私の大好きな兄にだけは、分かってもらいたい。
深呼吸をする。
一回。二回。
右手で軽く拳を作り、肩の高さまで上げ、そして目の前のドアを軽く二回、ノックした。
妹「お兄ちゃん、まだ起きてる?」
*
-
37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 01:45:29.23 ID:Nwm23uNp0
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それは突然のことだった。
家族皆が寝静まった頃。
ベッドに寝そべり、先週買ってきたエロ本の封を破って少し読み進め、<これから>という時にそれはきた。
二度、ノックの音が聞こえたのだ。
頭の中のピンク色のお花畑は、突然訪れた突風によって一面真っ白なカンバスに塗り戻される。
妹「お兄ちゃん、まだ起きてる?」
それは妹の声だった。
俺は咄嗟に切り返す。
兄「な、何か用か!? ちょっと待て!」
急いで乱れた衣服を直し、読みかけの本を閉じ枕の下に突っ込む。
次に枕元に置いてあったティッシュ箱を定位置に戻し、そしてようやく俺自身がベッドへと腰掛けた。
辺りを見渡す。
気になるところは──ゴミ箱にエロ本を包んでいたビニールの包装が入っているくらい。
その程度問題はない。
──よし。
兄「待たせたな。いいぞ」
そう言うと、少し間を置いてドアが開いた。
その隙間から妹が顔を覗かせる。
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38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 01:46:26.56 ID:3+oMYDx80
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やっと兄が来たか
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39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 01:47:51.02 ID:Nwm23uNp0
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大きな瞳。飾る長い睫毛。
幼く小さな顔立ち。
風呂上りだろうか、肩まで伸びた髪がしっとりと濡れて見える。頬や唇の血色も良い。
なんだかちょっとだけ、いつもより可愛く見えた。
妹「入っても大丈夫?」
訝しむように妹はそう聞いた。
兄「大丈夫だ」
平然と答えた。
何も問題はない。
問題は妹。
一体こんな時間に、何の用事だ。
妹は普段通りの相変わらずの甘ったるい声で、
妹「じゃあ、お邪魔しまぁす」
と言いながら部屋に足を踏み入れると、後ろ手にドアを閉めた。
その所作には何も不審な点は見当たらない。至って普通だ。
いや、いつもより声の調子が高い。どこか機嫌がいいのかもしれない。
妹はパジャマ姿だった。
その合間から覗く白い肌は、とても健康的な張りを保っている。
やはり風呂上りなのだろう。そう思う。
妹はこちらに視線を投げると、小さく首を傾げた。
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40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 01:50:42.30 ID:Nwm23uNp0
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何かがおかしい?
視線を受けて、俺は改めて辺りを渡す。
何も──変なところはない。
兄「どうかしたか?」
だからそう、首を傾げて返してみせた。
妹が不審に思う箇所なぞ一箇所も残してはいない筈だ。
妹「ねぇ、そんなところに座って何してるの?」
兄「えっ?」
そう言われ、そうして俺はようやくに気付いた。
俺は今、何もせずただベッドに腰掛けていたように見えただろう。
もちろんそれでいい。そう見せるように俺は働いたのだから。
だが、<何もしていない>ことそれ事態が不信だったのだ。
ただ座って、そこに居るだけというのは端から見るとまるで意思を感じ得ない。
妹は、そこを怪しんだのだろう。
妙に勘が鋭いのだ。
兄「あ、あははは──」
テキトウに笑う。笑えば何とかなると思ったのだ。思慮が浅い。
すると妹も笑顔になって、
妹「お兄ちゃん、今エッチな本読んでたでしょ」
そう言った。完全にバレていた。
俺は──終わった。
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41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 01:53:58.48 ID:Nwm23uNp0
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終わるわけがない!
俺は捲くし立てるように言葉を吐く。
兄「そんなわけないだろ! 今の今まで寝てたんだよ! お前が急に来るから何かと思って起きたところだ」
その言葉は明らかに動揺していたが、構いはしない。勢いこそ全てだ。
妹「電気も点けっ放しで?」
電気とはこの部屋の照明のことだろう。
確かに部屋の中は明るい。これから本を読もうと思っていたのだから当然だ。
暗闇で片手に懐中電灯を持って勤しむ訳にはいかない。
兄「暗い部屋では寝れないんだよ」
妹「嘘だぁ。だってお兄ちゃん、私が小さい明かりを点けないと眠れないって言ったら、
俺は真っ暗にして寝てるぞって、前に私のこと馬鹿にしたじゃん」
知らない。一体どれだけ前の話なんだ。
だが言ったと言われれば言ったような気もする。
俺は何かにつけて妹にイジワルを言うのが好きだから、それくらいの事ならば優に言っただろう。
兄「最近鞍替えしたんだよ。いやいや明るい部屋も良かったよ。馬鹿にした事は謝ってやる。ごめん」
妹「あそ。分かったよ。寝坊助の筈のお兄ちゃんが、寝起きでお目めパッチリ滑舌良く話すんだから、きっと本当なんだね」
なるほど。
つまり俺は、自分で自分の首を絞めるようなことばかりをしてしまっていたようだ。
皮肉が利いているじゃないか。
一体誰に似たのか。間違いなく俺だろう。
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42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 01:56:04.22 ID:Nwm23uNp0
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兄「ぐぅ──」
その場に応じた言葉がひとつも見つからなくとも、ぐうの音というものは本当は出るのだということを俺は初めて知った。
こうなれば──
兄「あぁ、そうだよ! 悪いのかよ! そういうのに興味持っちゃ悪いのか!?」
──開き直るしかない。
妹は驚いたように少し目を開いた。
妹「あ。本当だったんだ。ヤマ張ったのに」
兄「なっ──?」
唖然。
だった。俺は今まさに。
目の見開きと口がぽっかりと開いているのが自分でも分かる。それくらい冷静に呆気に取られてしまっていた。
ぐうの音も出ぬ。
妹は満足げに笑みを作ると、こちらに歩み寄り、
妹「ま、立ちながらもなんだし、座らせてもらうね」
俺の右隣へちょんと腰掛けた。
肩が触れる。
ほんのり湿った髪からシャンプーの香りがした。
兄「近い」
妹「いいじゃん別に、兄妹なんだしさ」
-
44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 01:58:11.23 ID:Nwm23uNp0
-
そう言って妹は、俺に顔を向けた。
色素の薄い透けるような虹彩。
瞳孔の周りに刻まれた模様が、まるで花のように咲いている。
こいういうのを鳶色の瞳──というらしい。
いつまで見ていたって飽きない──のに。
不意にその瞳が視界から消え失せた。
妹が顔を背けたのだ。
妹「いつまで見てるの、バカ」
照れたように言う。ふん、と鼻を鳴らす声が聞こえた。
見てきたのはそっちの癖に。
俺はイジワルく言う。
兄「いいだろうが、綺麗なんだから」
妹「やめてよ。そういうこと言うから──」
妹は語尾を濁した。
言うから──?
俺がそう言うからなんなんだ。
違うだろう。
鈍い俺にだって分かる。
お前のその瞳が、一体俺をどう映しているのか。
お前こそ知らないんだ。
気付くと妹は睨むように拗ねるように、俺を横目で見ていた。
-
47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 02:02:51.82 ID:Nwm23uNp0
-
兄「それで? お前は何しに来たんだよ」
その瞳を見ながらも俺は話題を戻した。
いや──流したのだ。
妹が振ってきたその言葉を、流したのだ。
妹はきっと、聞いて欲しかったに違いない。
──そういうこと言うから、なんなんだよ。
と。
時々──妹が俺に何かを言いたそうにしていることがある。
聞いて欲しくて、思わせぶりな言い方をしてくる時がある。
何が言いたいのかは、もうなんとなく察している。
その目を見れば分かる。
絶対に、聞いてはいけない言葉だということも。
だけど俺は、それでも少し聞いてみたいと思う。
その半面、本当に聞くのは嫌だとも思っている。
矛盾はしていない。
俺はイジワルをしている。
妹があんな思わせぶりな言い方をするのも、俺のせいだ。
誘っているのはむしろ俺だ。妹に綺麗だなんて言ってみるのもそれだ。
誘って、そして無視する。これは背徳的な遊び。
妹「そう──だったね」
妹は困ったような、そして安堵したような表情を見せた。
とても綺麗だと思った。
-
48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 02:05:53.29 ID:Nwm23uNp0
-
沈黙が訪れる。
決して言わない。
言わないけれど分かっている。
どうして分かるのか、そんな事は分からない。
でも知ってはいる。
それは兄妹だからなのだろう。
血の繋がった兄妹だからこそ、言葉なぞなくとも分かるのだ。
家族だからだ。
俺達は既に、互いの事を多く知っている。
知らぬのは──異性としての顔だけ。
そんなものは知る必要もない。
吐き気がするだけだ。
でも──。
妹が見せるその物憂げな表情だけは、その妹らしからぬ家族らしからぬ女性的なその表情だけは、俺の心を惹いた。
妹は顔をあげて、そして俺を見て、にっと笑顔を作った。
そして小さく口を開く。
妹「ね? お兄ちゃんが読んでる、その──エッチな本、見せてよ?」
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49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 02:10:41.07 ID:Nwm23uNp0
-
ねだるような猫撫で声で。
拍子、パンと渇いた音が部屋に響く。
俺が妹の後頭部を張り倒したのだ。妹は後頭部を両手で押さえ、喚いた。
妹「いったぁい! 何するの!」
少し涙目になっている。
やりすぎたかもしれない──と一瞬心を過ぎったが、反省するなんて殊勝な心構えなぞ、今の俺には微塵もない。
兄「何じゃねえよ、アホかお前は! そんなことの為に俺の部屋に来たのか!」
妹「そうだよ。お兄ちゃんが悪いんだから!」
俺が悪い?
いや、そもそもどうして急にこんな展開になっている?
妹は今まで物憂げな──アンニュイな雰囲気を帯びていたじゃないか。
それがどうしてエロ本になんてなるんだ。辻褄が合わない。もし合わせるとするならば──俺の錯覚か。
もしくは俺自身がアンニュイな気分だっただけで、それを妹へ自己投影していたに過ぎないかもしれない。
どちらだっていい。まずは妹の主張を聞いてやるべきか。
兄「なんでだよ」
妹「あれだよ」
妹はゴミ箱を指差した。
そこにはさっき捨てたエロ本のビニールの包装が入っている。まさか。
妹「夜中にガサガサしないでよ。うるさいの。部屋隣なんだから少しは考えてよ」
兄「だからって──」
妹「だからって来る必要はないって? 私が言わなきゃずっと続けるんでしょ?」
妹は俺の言葉を遮るように言葉を発する。
-
50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 02:14:06.59 ID:Nwm23uNp0
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兄「それは──」
妹「それはそうでしょ。それに放って置くと何かギシギシさせて余計にうるさいんだよね。一体、何してるの?」
またも言葉を遮られる。
こいつは──故意に聞いている。
確実に俺が何をしているのか分かって聞いている。多分。
兄「別に、何もしてねぇよ」
妹にそんなこと追求されたくない。
だからそう、吐き捨てるように言った。
しかし妹は一切動じない。
妹「だからね、ここに来たのはお兄ちゃんが静かにしてくれるように釘を差すっていうのと、あとは口止め料を払って欲しくて」
兄「は? お前、脅迫するつもりなのか?」
妹「別にそこまでのものじゃないよ。お兄ちゃんが私の言うこと聞いてくれなかったら、明日お兄ちゃんが学校から
帰ってくる頃には、この部屋がお母さんに綺麗に掃除されてる──ってだけの話だから」
それは立派な脅迫だ。
失うものは俺のエロ本と、母が俺に対する評価の二点。
いや──もしかすると明日の晩御飯も抜きにかもしれない。
兄「その、口止め料ってのは一体いくらだ?」
情けないことだが、背に腹は代えられぬ。
即座に折れた。
妹「え? だからお兄ちゃんの本を読ませてって、それだけだけど? あ、もしかしてお金もくれるの? だったら──」
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53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 02:16:30.76 ID:Nwm23uNp0
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妹が考えるように視線を上にあげようとしたから、俺は咄嗟に口を挟む。
兄「み、見せてやる。だからこれは内密にしてくれ」
妹「ふふ、お兄ちゃんは物分りがいいね」
俺に向かって笑顔を向けると、次いで掌を差し出した。
兄「なんだ、これ?」
妹「早く見せてよ。じゅう、きゅう、はち──」
兄「待て、待て!」
なな、ろく、ご──。
カウントダウンは続く。
俺は枕に手を伸ばし、枕ごと下にある本を手繰る。
その表紙ですら見せるのを憚るのだ。できるならば隠しておきたい。
兄「この下にある。渡すから、カウントするのやめろ」
妹「うわ、そんなところに置いてたんだ? もしかして夢の中でも見たいとか思ってたの?」
兄「は? 違う! これは咄嗟にここに隠しただけで──」
妹「変態」
兄「──うぐっ」
妹の痛烈な一言に俺は言葉を失った。
例えそうではないにせよ、そういう類の本を読んでいる時点で、俺は事実そうなのだから。
だが俺は、変態として、いやひとりの兄として、妹に聞かなければいけないことがある。
兄「お前は今年でいくつになる?」
-
54:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 02:19:33.75 ID:Nwm23uNp0
-
妹「じゅうよん」
兄「そうだな。お前はまだ子供なんだ。こういうのを読むのはまだ早い」
妹「なにそれ、今更諭そうってわけ? それを言うならお兄ちゃんだって十七でしょ。
本当はまだそういうの読むのはまだ早いんじゃないの?」
兄「自分で買ったんだからいいんだ」
妹はどこか呆れたような顔を作ってから、口を開いた。
妹「それ、いくらしたの?」
兄「千五十円」
妹「たかっ! お兄ちゃんって、もしかしてバカなの?」
兄「うるさいな! エロ本は男の浪漫だろうが!」
妹「それ買うのって、お店に行ったんだよね? 歳がバレないようにちょっと大人っぽい格好してみたりして」
よく──分かってるじゃないか。
少し感心する。
妹は多少男の気持ちというものを理解できているとみえる。
そう。そうやって心躍らせながら、<手に入れられないものを手に入れるという行為>こそが、男というものなのだ。
そう言った。喜々として妹に語ってやった。
妹も心なしか嬉しそうに聞いてくれていた。
しかし──。
妹「バッカみたい。私には到底理解できない」
言い終わった途端だった。
妹はただただ、侮蔑の視線を俺に向かって注ぐのであった。
妹「そんな話はどうでもいいから、早く見せてよ」
兄「ちょっと待て!」
-
55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 02:22:34.64 ID:Nwm23uNp0
-
納得がいかない。
兄「どうして俺を否定するくせに、この本が読みたいんだよ!」
妹「だから、だよ」
兄「だから?」
妹「そう、だから。私には分からない──だから、知ってみたいの。
お兄ちゃんがそこまでして手に入れたいそれが、どれほどのものなのかを」
妹はやけに真剣に言った。
その言葉には、男気が溢れていた──ように俺には思えた。
なるほど。
いいだろう。
ならば見せてやろう。
俺は枕をどかした。
妹の視線が俺の膝の上のエロ本に注がれる。
妹「うわ──」
最初に聞こえたのは、引き気味声だった。
妹「いもうと、ぱらだいす? お兄ちゃん大丈夫?」
そう。『妹☆パラダイス』
様々な妹キャラ達がお兄ちゃんといちゃいちゃする、18禁コミックである。
表紙からして、色とりどり妹キャラ達が、淫らなポーズをしてくれちゃている。
兄「問題はない。言っておくが、妹属性とお前とはまた別物だから安心しろ」
妹「いもうと、そくせい? よく分からないけど、私はここにいても大丈夫なんだよね?」
兄「大丈夫だ」
-
57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 02:28:03.53 ID:Nwm23uNp0
-
俺が言うと、妹は何が大丈夫なのか分からないけどね──などと言いながらも恐る恐る本を手にした。
妹「ねぇ、どうして、よりによって妹なの?」
兄「俺が聞きたい。どうして俺がたまたまそれを買って読もうとした日に、お前が来たのかがな。
普段はもっと違うのを読んでるんだぞ?」
妹「──それってつまり、他のもあるってこと?」
墓穴を掘った。今二人が座るベッドの下には、俺の愛蔵書が数十冊は眠っている。
兄「いや、買ったらすぐに売るからさ。ないよ」
妹「嘘つき。さっきお母さんに掃除されたら困るって顔してたくせに。
まぁ、いいよこれで。他に変なのがあったらヤだし」
じゃあ聞くなよと思ったが、妹が言いたかったのは妹モノ以外にもあるのか──ということなのだろう。
確かにあるし、確かに妹が更に引くものもある。
だから余計なことは言わないでおいた。
妹「じゃ、読むから」
妹は手にした本の表紙を、ゆっくりと捲った。
まだ目次だ。その次からだ。
妹「うっ──なにこれ」
そこに描かれていたカラー絵は、最初からクライマックスだった。
妹と兄がまぐわり、ナカヘ向けて、<思いのたけ>を全てぶちまけるシーンである。
妹は大して見もせず、次のページを捲った。
-
58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 02:30:13.97 ID:Nwm23uNp0
-
ぱらぱら。ぱらぱら。
妹は流れるように読む。
いや、読んでいるようには見えない。
ぱらぱら。ぱらぱら。
それ以後、妹は何も言葉を漏らすこともなく、五分足らずで全てのページを見終えた。
本を閉じると、俺の膝の上に戻し、自らは顎の下に人差し指の腹を添え、そっと目を伏せた。
兄「あの──何してるの?」
妹「うるさい黙って。考えてるんだから」
考える? 一体何を?
エロ本はエロ本だ。それ以上でもそれ以下でもない。
参考書でもなければ教科書でもない。
そこから何を得られるのかといえば──それはエロしかないだろう。
そんな風に、俺には俺なりの考察をしていると、妹がふと声をあげた。
妹「もし、だよ?」
言葉を選ぶように、慎重に。
妹「もし私が、そこに登場する女の子達みたいに、可愛くて、スケベで、お兄ちゃん大好きーな子だったらどうする?」
兄「え?」
何を──言っている? お前はそんな、そんな簡単に好きだなんて言葉を紡げない筈じゃなかったのか。
妹「分からないかな? 例えばこう──」
言って妹は、俺の背後に回った。
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59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 02:33:54.30 ID:Nwm23uNp0
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俺の両肩に妹の手の平が乗った。小さな手。
兄「おい、何して──」
妹「うるさい。いいから」
有無を言わせぬ。
妹「ねぇ、お兄ちゃん?」
声色が変わる。酷く甘い声。
妹「私ね、お兄ちゃんのことが──大好き」
兄「なっ!?」
耳元で。
囁かれる。
とてもくすぐったい。
思わず身じろいだのだが、妹は決して離そうとはしない。
妹「だからね、私。お兄ちゃんにその漫画みたいなことされたいなぁって。
押し倒されて、無理矢理唇を奪われて、好きだ好きだって言われながら、いっぱい──愛して欲しい」
なんだ? 何だこの状況は?
何を、俺は何をしたら、どうしたらいい?
分からない。何も分からない。
肩に置かれていた手が、すぅ、と首に回る。
ぞくぞく、と寒気がした。
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61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 02:38:19.40 ID:Nwm23uNp0
-
妹「──って、こんな感じでされたら、どうする?」
妹は語気を元に戻し、おどけたようにそう言った。
兄「冗談──か?」
今の俺には、それだけ言うのも必至だった。
妹としては今の台詞が落としどころだったのだろうが、俺は──。
妹「冗談じゃなかったら、どうするの?」
声色が甘く戻る。
まだ──続けるのか。
やめろ。
どうせ冗談なのだろう。
挑発するな。
妹「もう、皆眠ってるよ? お兄ちゃんが優しくしてくれるなら──」
バレないよ──。
妹はそう言った。
耳元で。甘い声で。
俺は妹の手を取り、振り返る。
妹の悪戯っぽい笑みが、俺を見ていた。
淡い色の瞳が──俺を誘っていた。
-
62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 02:40:44.67 ID:Nwm23uNp0
-
妹の肩を掴む。
抵抗がない。自制が効かなくなっていく──。
そのまま軽く押すと、妹は枯れ枝のようにすんなりとベッドに向かって折れた。
髪がシーツに散る。
白い首筋。
血色の良い唇。
大きな瞳。それを飾る長い睫。
幼く小さな顔立ち。
兄「どうして──こんな」
妹「好き、だからだよ? ねぇ、お兄ちゃんは?」
私のこと、好き──?
俺? 俺は──。
妹は笑顔になって、俺に訊ねた。
兄「好きだ」
俺はそう答えた。
腰を落とす。
肩先に手を置き、覆いかぶさるように俺は妹に──。
妹「どうして?」
その俺の動きを、妹の声が遮った。
-
64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 02:43:12.88 ID:Nwm23uNp0
-
妹「どうして? どうして私のことが好きなの」
兄「どうしてって──」
妹「私がお兄ちゃんを誘ったから?」
今度は言葉も遮られる。
兄「違う。俺は──」
妹「違わない。今この場この時だったら、私を犯しても大丈夫だ──そういう打算があったんでしょ?」
妹の表情が変わる。
凄惨な表情へと。
兄「そんな、そんなことは──」
妹「そんなことなんだよ。<誰も見ていなければ何をしたって構わない>んだよ」
兄「違う!」
妹「何が違うの? お兄ちゃんが持ってたエッチな本だってそうでしょ?
本当はダメだけど、<誰も見ていない>から問題なかったんでしょ?」
兄「それは」
そう、なのかもしれない。
妹「それはね、それでいいの。だって──誰も傷つけることはないから。
自己責任で済む世界。でもね、私はダメだよ」
黙っていればいいと、バレないよ──と誘惑したのは妹自身だ。
妹「だって私は──その先も望んでいるから」
-
66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 02:46:31.31 ID:Nwm23uNp0
-
兄「その、先?」
妹「そう。私はね、お兄ちゃんとずっと一緒にいたい」
それは。
それは無理だ。
だって、俺達は兄妹という<関係>なのだから。
この世界で、この社会で、それが許される筈がない。
妹は、とても寂しそうな表情になった。
今にも泣きそうな。
でも妹は、その表情のまま微笑んで言った。
妹「興が削げたでしょ。起きて?」
俺は言われるまま身を起こし──
兄「──っ!」
世界が反転する。
勢い良く後ろに倒れた。
背中がベッドとぶつかり、衝撃が走る。
少し遅れて、胸と腹に重圧を感じた。
そして最後に、両肩に鈍い痛みを覚え、俺は妹に押し倒されたことに気付いた。
左の肩に、妹の顔。
すすり泣く声が聞こえた。
-
68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 02:49:15.23 ID:Nwm23uNp0
-
兄「どうして泣くんだ」
返事はなかった。
だから代わりに、妹を片手で抱いて、もう片手で頭を撫でてやる。
柔らかい、艶やかな髪。
しばらくそうしていると、妹が言った。
妹「少しお話をするね?」
涙声。
俺は頷いて返事をする。
妹「私たち人間はね、きっと二つの願いを持っているの。
ひとつは<社会的な願い>。もうひとつは<個人的な願い>」
兄「例えば?」
俺は極力優しい口調で、妹の言葉を促す。
妹「例えば、そうだなぁ、私は来年高校受験でしょ? 行きたい学校も決まっている。
具体的には、私立の女子高。ほら、キリスト系のお嬢様学校あるでしょ、あそこ」
兄「そうなんだ。初めて知ったな」
妹「お母さんがね、そこに行けって。箔がつくからとか言ってたなぁ」
兄「なんだそりゃ。お前の意思じゃないのかよ」
妹「そうだよ。これが<社会的な願い>」
兄「じゃあ、<個人的な願い>は?」
妹「うん。私本当は、お兄ちゃんと一緒の学校に行きたかったんだよ」
一体何を言い出すかと思えば。
-
69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 02:51:52.85 ID:Nwm23uNp0
-
兄「俺とお前は三つ離れてるんだぞ。お前が入学しても俺は卒業してるから、一緒に通えないぞ」
妹「バカ。違うよ。お兄ちゃんのところは進学校じゃん。勉強に力入れてるから大学に進みやすいでしょ。行きたいところがあるの」
そういう意味か。
何か勘違いしてしまったらしい。
どうにも恥ずかしくて顔が熱くなる。
兄「その行きたいところってどこだよ」
妹「教えてあげない」
兄「なんだよ──でもそんなの、親にちゃんと言えば聞いてくれないか?」
妹「ヤだよ。絶対喧嘩になるもん。実際何度も喧嘩したし。だから、女子高行ってそこで勉強頑張ることにした」
兄「俺なら喧嘩してでも行くけどな」
妹「私はお兄ちゃんとは違うの。人にはそれぞれ価値観があるんだから。強要しちゃダメ」
兄「押し通すのが俺の価値観だな」
分かったよ、もう──と呆れるように妹は言った。
いつの間にか涙声ではなくなっている。
兄「で、それが<個人的な願い>ってやつか」
妹「そう。家族っていうのもひとつの社会だからね。私は家族という社会の中では女子高に生きたいと願わなくてはいけないし、
その実個人的にはお兄ちゃんと一緒の学校に行きたいとも思っている。もちろん──お兄ちゃんと一緒に通えるなら夢みたいだけどね」
そう言って、妹はクスクスと笑った。
バカにされている。
兄「でも、皆が皆そうじゃないだろ。<社会的な願い>と<個人的な願い>が同じヤツだっているんじゃないか?
俺がそうだ。俺は心から今の高校に進学してよかったと思ってるし、自分の考えで進む大学も決めてる」
妹「そうじゃないよ。私に言ったこともう忘れちゃったの?」
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70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 02:55:44.75 ID:Nwm23uNp0
-
何を?
俺は妹に何を言った?
兄「分からないな」
ヒドい──。
妹は拗ねるように言い、そして続けた。
妹「お兄ちゃんは、疑問に思わないの?」
兄「何に?」
妹「それだけが、その進んでる道だけが、唯一の幸せのカタチなのかって」
兄「お前、難しいこと考えてるな」
妹「難しくなんてないよ。考えてみて? いい大学に進んで、勉強して、優良企業に入って、沢山お金を稼いで、綺麗なお嫁さんを貰って、裕福な生活をする」
兄「素晴らしいじゃないか」
妹「どうして? 勉強している間は自由に遊べないし、就職して世間の波に揉まれて心を擦り減らしながら生きていくのが唯一の幸せなの?」
兄「いや、勉強だって楽しいし、社会に出るのだって俺は楽しみだぞ?」
違うよ、と妹は言った。
妹「それが、それだけが幸せじゃないでしょって、そう言いたいの。例えば、勉強なんてそこそこで、
友達と毎日遊んで、仕事も余り人と関わりのないものを選ぶとか」
兄「まぁうん。確かに多少は魅力的に感じるけど、でも俺は今の道がいいな──で、お前は結局、何が言いたいんだ?」
妹は言葉に詰まるように、少しだけ間を置いた。
-
71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 02:59:30.53 ID:Nwm23uNp0
-
妹「例えば──私と、ずっと一緒に暮らしてくれるとか」
それは、できない。社会がそれを許すはずもない。そう答えた。
妹「でしょ? だからね、お兄ちゃんは私を好きはなれないの。なってはいけない。
それとも、本当に忘れちゃったの? 私に好きって、そう言ってくれた事」
兄「忘れてなんていない」
妹「忘れちゃいなよ」
兄「お前が言うな。お前があんな誘惑するからだろ」
妹「あ、アレ本当に効いてたんだ?」
どうやら自覚なしでやっていたらしい。
俺には十分に──魅力的だった。
だからこうして、今も妹を抱き締めて続けているのだから。
妹「自分で言うのもなんだけどサ、私を好きっていうそれが、お兄ちゃんの<個人的な願い>──だよね?」
兄「あぁ──」
──そういうことか。
俺の<社会的な願い>は、社会で成功すること。
そして俺の<個人的な願い>は、妹と一緒にいること。
<個人的な願い>というものは、社会という枠を廃した純粋なまさに個人的な願い、ということなのだろう。
妹は不意に身を起こした。視線が重なる。
なんだか久しぶりに見た気がする。その瞳と睫は、しっとりと濡れていた。
さっきみたいに座ろう──妹はそう言ってベッドに腰掛けた。俺もその隣に座る。
少しだけ間を空けたのだが、妹は腰を動かしその間を詰めた。肩が触れ、そして妹が口を開いた。
妹「どうしてお兄ちゃんは、そんな簡単なことも思いつかなかったの?」
兄「簡単じゃない。そんなこと普通、考えもしない」
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72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 03:01:51.19 ID:Nwm23uNp0
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妹「うん、きっとそうなんだろうね。それは、どうしてだか分かる?」
兄「何が?」
妹「どうして私がすぐにそれを思いついて、お兄ちゃんは私に言われるまで気付かなかったのか」
兄「お前が、そういう考えを既に持っていたから、か?」
当たり──。
妹はおどけるように言った。
妹「普通、そんなことは考えない。うぅん──してはいけない。しないようにと、そう教えられている」
兄「そんな事、教わった覚えはないぞ」
妹「うん。私も、お兄ちゃんを好きになっちゃいけないなんて教わった覚えはないよ。でも知ってる。どうしてか分かる?」
分からない。
どうして知っているのか? テキトウに答えてみる。
兄「遺伝子がそうさせるとか?」
妹「バカ。そんなわけないでしょ。じゃあ、どうして私のこと好きになったの?」
兄「そりゃ、俺のお前への思いが遺伝子を上回ったんだよ」
妹「──は、恥ずかしいこと言わないでよ」
触れていた肩から、妹の体温が、かぁと熱くなるのが分かった。
こうも分かり易いものなのか。確実に照れている。
しかし俺には、今のがどこが恥ずかしい台詞なのか全く持って分からない。
もしかすると、妹はどこか普通の人間とはズレているのかもしれない。
まぁ──そんなところも可愛いと思ってしまっているのだから、俺もきっと妹と同類なのだろうが。
-
74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 03:04:04.76 ID:Nwm23uNp0
-
兄「じゃあ、答えは?」
妹「自分で勝手に覚えているから、だよ」
兄「どこで?」
妹「例えばテレビとか、映画とか。直接的でなくても暗にそう言ってたりね。例えば一緒にお風呂に入れなくなったり。
一緒に寝ちゃダメになったり──今は一緒だけどね。ふふ、とにかくそういうので、あぁダメなんだ──ってどこかで思うの」
兄「それはおかしいだろ」
どこか破綻しているようにしか思えなかった。
妹「何がおかしいの?」
兄「俺は、お前が誘惑してきたから──だけど、お前はどうして俺のことを」
好きになったんだよ──。そう言いたかったが、俺の中の<何か>が邪魔をして言う事が適わなかった。
それに俺は嘘を言った。俺には確実に、妹を好きになる火種はあったのだから。
全く好きでないのならば、例え誘惑されようとも手を出そうとするはずがない。
妹「私はね、疑問に思っちゃったから。お兄ちゃんを好きになっちゃダメっていう、<それ>自体を」
兄「<それ>ってなんだよ?」
<それ>とは、恐らく俺の言葉の邪魔をした<何か>に違いない。
そう思う。そしてそう思うのもやはり、俺の中の<何か>がそう確信しているからだ。
妹「価値観や道徳。そしてそれを守る人間──世間や社会。ひいては私やお兄ちゃんもそう。
個人個人の価値観や道徳がそれを抑制している。私はその抑制するそれ自体に疑問を抱いてしまった。
だから、私はお兄ちゃんを冷静に好きでいられる。もしそうでなければ、私は社会に対してただ憤っていたと思う。
さっきみたいに、ずっと泣いていたと思う。そしてきっと──お兄ちゃんを好きになることを諦めてた」
──どうして泣くんだ。
妹が今言った言葉は、先に聞いた俺の問いの答えでもあった。今ならばその意味が存分に分かる。
けれど先に聞いてしまっていては、きっとその意味の半分も分かりはしなかっただろう。
-
75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 03:07:42.93 ID:Nwm23uNp0
-
妹「お兄ちゃんを好きになることって、そんなに<おかしな>ことかな?」
兄「そりゃ、子供だとかそういう問題で」
上手く言い表せられない。
そういうことを考えたこともない。
妹「そんなのは微々たるものだよ。兄妹で生む子供に不幸があるなんてことは、兄妹でない関係で生むのとほんのちょっとしか変わらないから」
兄「じゃあ、何が問題なんだよ?」
妹「その子供自体は血が濃くなってるから、更に──ってことを防ぐって意味合いもあるんだろうけど、
私は<その事実がある>という事が問題だと思う」
よく分からない。
兄「それは何が違うんだ? 一緒じゃないか」
妹「違うの。<その事実がある>からこそ、世間や社会もそれを禁忌[タブー]視した。そして禁忌だからこそ、
家族内でそれが起こった場合、家族はそれをひた隠す。そしてもし隠し切れない場合──家族は崩壊する。
世間や社会によって抹殺される」
兄「抹殺って、ひどい表現だな」
妹「そうかな? もし向かいの先輩と弟さんが──もし、付き合ってたらどう思う? 世間はどうすると思う?」
妹はどこか辛そうな表情で俯くように言った。
俺は、白い目で見るだろう──。
そう返した。
妹「それだけじゃないよ。それこそ、<誰も見ていなければ何をしたって構わない>んだから。
面白がって──気味悪がって、酷い事をする人だっているよ。そうなれば、家族はきっと崩壊する。世間に殺されるんだ」
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77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 03:12:31.01 ID:Nwm23uNp0
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反論はできなかった。
現に俺だって、妹を好きにならなければ、きっと同じことをしたかもしれない。
誹謗中傷をしなくとも──きっと直視できなくなっていたはずだ。
白い目とはそういうものなのだろう。そう言った。
妹「違うよ。白い目っていうのは故事の白眼視が由来じゃないの? ほら、白眼青眼」
兄「知るか。変な揚げ足を取るなよ。何でそんなこと知ってるんだ」
妹「ちょっとね。勉強したから」
兄「勉強? 故事のか?」
妹「違うよ」
違う? だったら何だ?
疑問に思えば不思議だ。どうして妹はこうも色々知っている?
いや──妹がこれまで多く語った事は知識じゃない。
社会や世間に触れて、そして自分が抱いた疑念に対する答えなのだろう。
妹「そんなことはいいよ。それより聞きたいんだけど、今、お兄ちゃんは私のことを好きになって何か変わった?」
兄「何かって、何が?」
妹「私を好きになったっていう、そのこと以外の、何か」
何か──か。何かあるだろうか。
少しだけ考えてみる。
浮かぶとすれば、ひとつだけある。
兄「お前には悪いけれど、少しだけ両親や世間に申し訳ない」
妹「そう。やっぱりそうだよね。私もそうだから」
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78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 03:16:46.80 ID:Nwm23uNp0
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達観しているように思えたのだが、妹も同じなのか。
少しだけ、どこか安心した。
妹「今までこの世間や家族の社会の中で生きてきたんだからしょうがないよ。でもね、やっぱりそこが原因なんだよ。
お兄ちゃんを好きな私だって、申し訳ないって思ってしまう──。だとしたら、他の人なんて余計にだよね?
そしてその申し訳ないと思ってしまう気持ちこそが、お兄ちゃんを好きになることの<おかしさ>の原因。
子供の不幸だとか、血が濃くなるだとかそんなことじゃない。原因は、そう思ってしまう──価値観や道徳にある」
兄「待て、待て!」
先行きが怪しい。妹がどこへ向かおうとしているんだ。
兄「言いたい事は分かる。そういう理屈ならお前の意見も間違ってもいないと思う。でも──」
──でも。
俺は口篭った。口にするのが怖い。
しかし俺は聞かなければならない。
どうせ聞かなくとも、妹は自ら言だろう。ならば先手を打つに越したことはない。
兄「──お前は、何と戦おうとしているんだ?」
ふふ、と妹は可笑しそうに笑った。
本当に可笑しそうに。
妹「価値観や道徳にだよ」
兄「そんなものに勝てるのか? それに挑むって事は、社会や世間と戦うって事だろ?」
妹「その前に、お父さんやお母さんにもね」
兄「そんなの無理だ! お前は言っただろ? 禁忌だって。隠すような事柄なんだって。しかもお前は社会や世間に
言うつもりなんだろう? それは家庭が崩壊するって事じゃないのか? それも、自分で言ってたじゃないか」
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80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 03:20:43.90 ID:Nwm23uNp0
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妹「だって、そうしなきゃいけないんだもん」
妹は俯いた。
兄「どうしてだよ。そこまでしなきゃいけないのか?」
妹「だってそうしないと、お兄ちゃんとずっと一緒にいられないでしょ? そんなの嫌だから」
兄「それは──」
妹「嫌だ。お兄ちゃんが何処かの誰かと付き合って、結婚して、子供を作って、幸せな家庭を作るなんて──そんな、そんなこと」
耐えられないよ──。
妹はそう言って涙を零した。
それは──表現は違えど、俺の<社会的な願い>だ。
それじゃあ俺の、俺の<社会的な願い>を叶えるという事は、
妹のその<個人的な夢>を壊すということに他ならないじゃないか。
兄「どうして、そんなこと言うんだ。卑怯だ」
妹「ごめんなさい」
でも、事実そういうことなのだ。俺だって──妹と同じ気持ちだ。
今になってみれば、妹が誰かと一緒になるなんて考えられない。
でもそうするしかない。そうする他、進む道はない。この社会の中では。
だから──俺は言うしかない。
兄「諦めろ」
妹は跳ねるように顔をあげた。俺はそれを正面に捉える。
透けるような鳶色の瞳は、今や濡れて濁っていた。
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81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 03:22:46.24 ID:Nwm23uNp0
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妹「嫌だ──嫌だ嫌だ嫌だ!」
妹の手が、唇が、震えている。俺はその小さな白い手を握った。
兄「お前を好きになった俺の価値観すら変えられないんだ。親父や母さん──ましてや社会や世間なんて相手に出来るわけがないだろ」
妹「それは──」
兄「反論してみろ。いくらだって聞いてやる。いくらだって言ってやる。お前が納得してくれるまでな」
言葉を遮り、そう言い放つ。
妹は一旦口を噤み、それからゆっくりと言葉を紡いだ。いまだ震えている。
妹「──私のこと、嫌いになったの?」
兄「違う。好きだから聞いてやるんだ。嫌いだったら相手にするか」
妹は辛そうにも、うん、と頷いた。
妹「お兄ちゃんは、<社会的な願い>を享受することが、一番の幸せだと思う?」
兄「そうは思わない。けれど、俺とお前の場合は別だ」
妹「別?」
兄「そうだ。<俺とお前の個人的な願い>を叶えようとすると、お前がそうやって泣くだろ」
妹「違うよ。叶えられないから泣いてるんだよ──」
俺はかぶりを振る。
兄「違う。それはお前が諦められないからだ。諦められないから<個人的な願い>を叶えようとするんだろ」
妹「諦められるなら、最初からこんなことしてない」
兄「でも、お前は負けただろ」
妹「私は──負けてない」
兄「往生際が悪いぞ」
妹「負けてない! だって私は、お兄ちゃんの価値観を変えたんだから」
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83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 03:25:26.26 ID:Nwm23uNp0
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兄「何を言うんだ。俺は変わってない」
妹「変わったよ」
兄「どこが」
妹「私のことを好きになってくれたでしょ?」
それは──確かにそうだ。
妹を好きになったこと自体が俺の価値観が変わった事実だ。
兄「でも、だからって親父や母さんまでは」
妹「そうじゃないよ。私が変えたかったのは、私を、妹を、家族を異性として見てはいけない、見ること自体がおかしいっていう、
価値観や、その道徳。決して社会や世間に立ち向かって欲しいだなんて思っていないよ」
兄「でも、お前と一緒になるってことは、結果そうなるって事だろう? そんなのは無理だ」
妹「無理じゃない。現にお兄ちゃんは変わってくれた。だったらお父さんやお母さん、社会や世間だって変わってくれるかもしれない」
まさに意趣返し。
俺の言葉が形を変え返されてしまった。
これでは、俺という存在が妹の価値観の肯定になってしまう。
兄「それは──」
妹「言ってよ。私を否定してみせて」
やはり妹は俺に似ている。意地が悪い。
妹「それともやっぱり、お兄ちゃんは私のことなんて本気で好きじゃないから、諦めろなんてそんなことが
言えたんでしょ? 本当は私の言葉なんて、何一つ聞いてくれてなかったんじゃないの?」
そういう──ことかもしれない。
俺は黙り、少し考えた。
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85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 03:28:39.72 ID:Nwm23uNp0
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妹「何か言ってよ」
兄「お前の言う通りだ。俺は多分、お前のことをそこまで好きじゃないんだろう」
妹「な──」
妹は絶望したように、焦点の合わぬ目で俺を見た。
兄「自分で言っておいて、そのリアクションはないだろう」
言ってみたが、妹は何も返してくれない。
相当にショックを受けたようだ。
妹の手を握っていた手を離し、代わりに頬に添えた。
ひんやりと冷たく心地がいい。
肌理細やかな肌。軽く撫でると、すべすべとした。
妹の焦点が戻る。
みるみるうちに、瞳に涙が溢れていく。
兄「おい、待て」
妹「う、ううぅぅ──」
泣いてしまった。
俯きもせず、ただ俺の顔を見ながら大粒の雫がぽろぽろと零れていく。
兄「少し時間をくれよ」
頬を伝う涙を指で掬いながら、俺は言った。
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86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 03:31:42.35 ID:Nwm23uNp0
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兄「俺はお前のことを好きになったばかりなんだ。それに俺が社会に出て結婚するのだって、
もっともっと先だ。今、答えを急がなくたっていいだろう?」
俺の言葉を受けて、妹は必至に涙を拭った。
しかし、溢れ続ける涙は止まらない。
妹「でも、でも──うっ、う──」
兄「俺はまだ、妹としてのお前のことしか知らないんだ。異性として見たお前をしっかりと見たい」
妹「そうなの? ぐすっ──さっきのじゃダメだった?」
兄「さっきのってのは、えっと」
妹「後ろから、抱き付いて──それで」
妹はえづきながら答える。
兄「あんなので分かるかよ」
あんなの──と言ってみたもののは、どうしたら分かるのかなんて、俺にも分からない。 だから、
兄「まずは付き合おう。恋人同士になろう。それからじゃないか?」
そう言った。
<誰も見ていなければ何をしたって構わない>のならば、ひた隠して付き合えばいい。それだけだ。
言った途端、妹は顔をくしゃくしゃにして泣いた。
兄「バカが。お前は考えすぎなんだよ。そんなに泣くくらいなら、もっと早く──もっと早く言ってくれれば、俺は」
それは嘘だ。
ただ単に告白されただけでは、きっと俺は妹を跳ね除けていた。
欲情に流されていても同じだ。俺は結局妹を傷つけるだけで、それで終わっていただろう。
これがきっと──最善だったのだ。
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88:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 03:35:08.92 ID:Nwm23uNp0
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妹「だって、だって──うぐっ、ひっく」
妹はずっと一人で苦しんでいた。
実の家族へ向けてその思いを行動へ移すだなんてそんなこと、普通出来る筈がない。
一体、どれだけの勇気を振り絞ってここに来たのだろう。
俺には、想像もできない。
だから俺には、妹を癒す言葉なんて検討もつかなくて。
ただ優しく。その小さな体を胸に抱いてやることしかできなかった。
妹「お兄ちゃん──」
*
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90:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 03:38:04.91 ID:Nwm23uNp0
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一体、どれ程そうしていただろうか。
兄の暖かな大きな胸の中で、私はずっと泣いていた。
私が泣き止んだのを見計らってか、兄が口を開いた。
優しげな暖かい声。私の大好きな声が聞こえる。
兄「お前は、俺に頼ろうとしないきらいがある。そういうのは女の子としてはあんまり可愛げがないからやめてくれ」
妹「だって、お兄ちゃんを巻き込むのは嫌だもん。それに一度は頼ったよ。耐えられないって──でも、お兄ちゃん嫌そうだったから」
兄「そうだったか? いやうん、そうだな。今でも少し嫌だからな」
妹「正直すぎるよ」
それともいつものイジワルなのか、今の言葉は私には判じかねる。
兄「オブラートに包んで、それでお前が勘違いしたら困るだろ」
それはそうだけれど。
でも我儘を言うのならば、もう少し甘い言葉が欲しい。
妹「お兄ちゃんには、女の子へのいたわりが足りないよ」
兄「それはきっと、お前のことが大して好きじゃないからだろうな」
妹「うぅ」
酷い。イジワルにしてもあんまりだ。
でも嫌じゃない。
妹「──それは、『もっと俺のことを好きにさせてみせろ』ってことだよね?」
兄「さぁな」
妹「そうしたらいつか、お父さんとお母さんに一緒に話をしてくれる?」
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91:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 03:40:44.53 ID:Nwm23uNp0
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兄「お前次第だ」
妹「じゃあ、大丈夫だね」
兄「凄い自信だな」
だってそうに決まっている。
何故なら私は──兄の価値観を覆したのだから。
兄をもっと好きにさせることくらい、なんて事ない。
多分、最初に押し倒された時は、性欲とかそういうものに突き動かされていたのかもしれないけれど。
でも今はきっと違う。私の言葉は、兄へ響いている。そう思えた。
だからきっと先輩の思いも──。
妹「ねぇ、お兄ちゃん?」
兄「なんだ?」
私は顔をあげた。兄の顔を見る。
優しげな瞳。口角がちょんとあがった唇。私のとっての兄のチャームポイント。
私はそれを、うっとりと眺めた。
兄は不機嫌そうに目を逸らしたが、私はずっと見続ける。怒った目も可愛い。
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92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 03:44:00.94 ID:Nwm23uNp0
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妹「お兄ちゃんは、私のどこが好き?」
兄「なんだよ唐突に──まぁ、目かな」
妹「目? ふぅん、そうなんだ」
兄「そういうお前はどこだよ」
妹「ヒミツ、ふふ」
一緒だったなんて教えてあげない。きっと喜ぶに違いないから。
私だって兄にイジワルをしたい。
妹「ねぇ、お兄ちゃん?」
兄「またか、なんだ?」
視線が重なる。
私は、兄が好いてくれている瞳を閉じた。少しだけ不安になる。
私を好きでいてくれる部分が隠れてしまうから。
けれど。
私の左の頬にそっと優しく、兄の大きな手の平が添えられた。
そして、私たちはキスをした。
おわり。
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93:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 03:46:34.31 ID:pglroi8/0
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お疲れ
くっついてよかった
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94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 03:48:47.86 ID:3+oMYDx80
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乙、あとお休み
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95:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 03:53:43.86 ID:Nwm23uNp0
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読んでいただきまして、誠にありがとうございました
読み切ってくれたくれた人はどれくらいいるだろうか
もっと人がいる時間にやればよかったかもしれない
内容がアレだし変わらないか
もし、次回があるならばきっとエロを絡めたのを書きます
ではまたどこかで
ガズボズボ
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96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 03:55:04.07 ID:3+oMYDx80
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>>95
期待してる
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100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 05:22:06.24 ID:I/gmDCF60
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書いてみたかっただけなのか何かしら伝えたかったのか
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101:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/08(木) 05:23:50.40 ID:H80Us1lC0
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うむ。なんか重い話だがなかなか良かった 乙

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