木「そろそろ夏ですね」蝉「ミーンミーン」

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1 ：名も無き被検体774号+＠＼(^o^)／ 2015/06/05(金) 19:32:47.15 ID:TmJgG+Im0.net: 木「おや、遂に地上に出てきたのですね」

蝉「おう、長かったよ」

木「あなたの貴重な体験にお役に立てて光栄です」

蝉「助かったよ、なかなかいい幹してるな」

3 ：名も無き被検体774号+＠＼(^o^)／ 2015/06/05(金) 19:35:53.40 ID:TmJgG+Im0.net: 木「さぞかし地下の生活は長かったでしょう」

蝉「ざっと7年ほどだな」

木「私はここに根を張って20年になります」

蝉「7年程度でドヤ顔して申し訳なかった」
4 ：名も無き被検体774号+＠＼(^o^)／ 2015/06/05(金) 19:40:02.82 ID:TmJgG+Im0.net: 木「そろそろ飛べそうですか」

蝉「そうだな」

木「いい人生のスタートを」

蝉「おう、ありがとうな」

木「おお、元気良く飛んでいきました」

木「あ、ぶつかってる」
5 ：名も無き被検体774号+＠＼(^o^)／ 2015/06/05(金) 19:42:05.37 ID:TmJgG+Im0.net: 木「おや」

蝉「ミーンミーン」

木「昨日ぶりですね」

蝉「あぁ、帰ってきたよ」

木「私、リピーターの方多いんですよ」

蝉「さすが20年の老舗だ」
6 ：名も無き被検体774号+＠＼(^o^)／ 2015/06/05(金) 19:44:10.32 ID:TmJgG+Im0.net: 木「どうでしたか昨日は」

蝉「素晴らしいな外の世界は」

木「どこへ行かれたのですか」

蝉「思うように飛び回ったよ。俺は飛ぶ才能があるのかもしれない」

木「飛ぶ才能がない蝉はいないと思いますが」

蝉「それもそうだな」
9 ：名も無き被検体774号+＠＼(^o^)／ 2015/06/05(金) 19:49:18.42 ID:TmJgG+Im0.net: 木「さて、今日はどこへ」

蝉「今日は仲間と交流をとってみようと思う」

木「なるほど、いい友達ができるといいですね」

蝉「7日間でできるだけ多くの仲間を見つけたい」

木「私も仲間というものが欲しいです」

蝉「いないのか」

木「はい」

蝉「シャイな奴だなお前は」
10 ：名も無き被検体774号+＠＼(^o^)／ 2015/06/05(金) 19:53:19.73 ID:TmJgG+Im0.net: 木「おや」

蝉「ミーンミーン」

木「昨日はどうでしたか」

蝉「外の世界は恐ろしいな」

木「何かありましたか」

蝉「地下生活の時仲良かった奴に何匹か再会してな」

木「それはよかったじゃないですか」

蝉「よくなかったよそれが」
11 ：名も無き被検体774号+＠＼(^o^)／ 2015/06/05(金) 19:57:13.25 ID:TmJgG+Im0.net: 木「と、いいますと」

蝉「鳴きかけても飛び回る事に夢中で俺の事見向きもしねぇ」

木「なるほど」

蝉「地下生活の時には一緒にモグラから逃げたりしてなのになぁ」

木「なかなかハードな幼少期ですね」
12 ：名も無き被検体774号+＠＼(^o^)／ 2015/06/05(金) 20:01:38.07 ID:TmJgG+Im0.net: 木「飛び回るのは楽しいですか」

蝉「楽しいぞ。次はついに森を出てみるぞ」

木「そうですか」

蝉「羨ましいか」

木「いえ、私は今の暮らしに満足していますので」

蝉「そうか、お前は大人だな」

木「褒めてますかそれ」

蝉「微妙だ」
13 ：名も無き被検体774号+＠＼(^o^)／ 2015/06/05(金) 20:06:13.43 ID:TmJgG+Im0.net: 木「おや」

蝉「ミーンミーンミーン」

木「何やら慌ただしいですね」

蝉「森の外は危険すぎる」

木「どうしたのですか」

蝉「あの二本足で動き回る大きい動物はなんなんだ」

木「それは人間というものですね」

蝉「モグラより強いのか」

木「そりゃもう何倍も」

蝉「衝撃的だ」
14 ：名も無き被検体774号+＠＼(^o^)／ 2015/06/05(金) 20:11:03.33 ID:TmJgG+Im0.net: 木「人間については私もよくわかりません」

蝉「中でも小さいやつは危険すぎる」

木「なぜですか、小さいなら安全のはず」

蝉「あいつら、謎の棒状のものを振り回して俺を狙ってきやがる」

木「なんと恐ろしい」

蝉「しかもあいつらの手元には仲間がたくさん捕まっていた」

木「そんなに強いのですか人間は」

蝉「あいつらは俺らを食べるのか」

木「モグラより強いらしいので食べるだけでは済まないかもしれないですね」
15 ：名も無き被検体774号+＠＼(^o^)／ 2015/06/05(金) 20:15:48.55 ID:TmJgG+Im0.net: 木「気をつけてくださいね」

蝉「おう、襲われそうになったらなりふり構わず小便しろって教わったしやって見る」

木「それほんとに効果あるんですか」

蝉「あるらしいぞ」

木「人間は不思議ですね」
16 ：名も無き被検体774号+＠＼(^o^)／ 2015/06/05(金) 20:25:24.22 ID:+PzOCvDS0.net: 木「おや」

蝉「ミーンミーン」

木「よくご無事で」

蝉「俺の小便は毒でもあるのか」

木「無いと思いますが」

蝉「あの人間が逃げ回りやがる」

木「なんとも信じ難い」
17 ：名も無き被検体774号+＠＼(^o^)／ 2015/06/05(金) 20:30:58.85 ID:+PzOCvDS0.net: 木「他になにか発見はありましたか」

蝉「そうだな」

木「はい」

蝉「最近仲間がよく死んでいるな」

木「それは、悲しい」

蝉「そうでもないぞ」
18 ：名も無き被検体774号+＠＼(^o^)／ 2015/06/05(金) 20:35:45.52 ID:+PzOCvDS0.net: 木「そうなんですか」

蝉「俺らは死ぬことは恐怖ではない」

木「7年も地下にいるのにですか」

蝉「飛び回れる嬉しいを考えると7年なんて短い」

木「なにやら考えさせられますね」
19 ：名も無き被検体774号+＠＼(^o^)／ 2015/06/05(金) 20:39:55.23 ID:+PzOCvDS0.net: 木「おや」

蝉「ミーン」

木「元気が無いようで」

蝉「あっという間に6日目だ」

木「あぁそうでしたね」
20 ：名も無き被検体774号+＠＼(^o^)／ 2015/06/05(金) 20:50:02.87 ID:+PzOCvDS0.net: 木「やっぱりあなたが羨ましいです」

蝉「また急にどうした」

木「私は何年もここに留まったままです。」

蝉「そうだな」

木「あなたみたいに飛びまわれない」

蝉「俺は7年間、地上の世界に夢を見続けた」
21 ：名も無き被検体774号+＠＼(^o^)／ 2015/06/05(金) 20:54:15.83 ID:+PzOCvDS0.net: 木「そうでしょうね」

蝉「だけど夢見た世界は広がっていなかった」

木「あなたを見てるとそう思いますね」

蝉「俺たちは、7年かけて作り上げた夢の世界をたった一週間かけて壊していくんだ」

木「なるほど」

蝉「こんななら、俺は何年も何十年も夢を見続けたかった」
22 ：名も無き被検体774号+＠＼(^o^)／ 2015/06/05(金) 21:01:26.19 ID:+PzOCvDS0.net: 木「それでも、外の世界が見たかったのです」

蝉「俺も、俺とお前どっちが幸せかはわからない」

木「私もわかりません」

蝉「ただ」

木「ただ？」

蝉「他の蝉よりは幸せだったよ」

木「なぜですか」

蝉「お前と人生を共にできたからな」

木「嬉しくて樹液でそうです」

蝉「感情表現が謎だな」
23 ：名も無き被検体774号+＠＼(^o^)／ 2015/06/05(金) 21:03:35.20 ID:+PzOCvDS0.net: 木「おや」

木「そうですね、7日目でしたね」

木「また、」

木「寂しくなりました」
24 ：名も無き被検体774号+＠＼(^o^)／ 2015/06/05(金) 21:08:30.97 ID:+PzOCvDS0.net: 木「おや、あれは人間ですかね」

木「しかも、手に棒のようなものを持ってる」

木「人間は小さくないし、棒もなにか大きな音を立てているしキラキラしています」

木「近づいてきました」

木「どうやら、嫌な予感が」
26 ：名も無き被検体774号+＠＼(^o^)／ 2015/06/05(金) 21:13:08.81 ID:+PzOCvDS0.net: 木「あれ、雨ですかね」

木「おや、人間が逃げていきます」

「ミーンミーン」

木「おや」

蝉「俺の小便はやっぱり毒みたいだ」

木「…そうみたいです」
27 ：名も無き被検体774号+＠＼(^o^)／ 2015/06/05(金) 21:13:32.29 ID:+PzOCvDS0.net: おわり