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梓「春眠フリーマーケットを覚えず」

1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/10(土) 00:00:56.16 ID:Nwwg5lTdP
先輩方の卒業式も終わった 3月下旬の春休み

携帯電話の着信画面は【唯先輩♪】の名前を映し出した

『もしもし・・』

『あずにゃん?私だよー!』

『何かあったんですか?』

『えへへ~ あのね~』


いつもと変わらぬ唯先輩


『明日 近所の公園でフリーマーケットをやるんだよ!』

『フリーマーケット ですか』

『うん。私はお店出さないけれど あずにゃんも一緒に見に行こうよ!』


当り前だけど以前よりも会う回数は減って

正直少し 寂しかった

ちょうどいい機会だし行ってみようかな

な、何かコレ デート みたいだし・・・////




3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/10(土) 00:03:11.88 ID:Nwwg5lTdP
『はい、私も行かせてください。天気も良さそうですし』

『そう言ってくれると思ってたよぉ~!掘り出し物見つけようね!』


やっぱり変わらぬ唯先輩


でも、もう卒業してしまったのだ

だから きっと これから変わっていくんだろう

変わってしまうんだろう

卒業式の後 先輩方の演奏のおかげで

軽音部を引き継ぐ覚悟はできたし、見送る勇気も持てた

でも

それでも

私も先輩方も 軽音部を忘れる筈無いって わかってるつもりでも・・・


5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/10(土) 00:07:24.61 ID:Nwwg5lTdP
――ー――ー――ー――ー――ー――ー――――

翌日

AM 10:00


いつもはまだ涼しい三月下旬でも 今日の気候は暖かく

思わずうたた寝してしまいそうな太陽の下

寝坊した唯先輩を 広めの公園で1人寂しく待つのであった

まったく、自分から誘っておいて・・・


「ごめんねあずにゃん!待たせちゃったかな・・」


ドラマの恋人っぽく「ううん、私も今来たトコ」なんて言う気は微塵も湧かず・・


「もう、 春眠暁を覚えず じゃ困りますよ」

「すみませんでしたーっ」


6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/10(土) 00:11:21.96 ID:Nwwg5lTdP
しかし息を切らせながら走ってきた唯先輩を見ると

不思議と怒れないんだよね



規模は思ったより大きなものだったようで

人混み と呼べるものが既にできていた


「結構人来てますね」

「この辺じゃ珍しいからねぇ。お洋服とか出てるかな~」

「楽器もあるかもしれませんね」




桜の開花が迫り 緑も萌え始めている

鳥の囀りが心地良い

風景も出店も 見てるだけで飽きないものだ

二人でぶらついてあれこれ見ていると

古いアコースティックギターを見つけた


8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/10(土) 00:16:49.21 ID:Nwwg5lTdP
「あ、唯先輩 ギターですよ。ほら」

「ホントだー。これは中々年代物だね・・」

「でも状態は良いですね。きっと、大事に使われてたんです」

「おぉ、この子は幸せ者だね~。ギー太も大事にしてあげないとねぇ・・」


フリーマーケットは使わなくなった物を売る場所だ

それは愛想が尽きたからじゃなくて

もっと大切にしてくれる人がいるから


9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/10(土) 00:19:37.70 ID:Nwwg5lTdP
――ー――ー――ー――ー――ー――ー――――

正午


「大学の授業、私大丈夫かな・・」

屋台で買った鯛焼きを頬張りながら唯先輩は言う

「やっぱり高校よりも簡単に留年しちゃうんだよね?どうしよう!?」

「いやいや、今からそんな心配してもしょうがないですよ・・」


半分呆れつつ嗜める私の脳内では別の不安が渦巻く


10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/10(土) 00:21:08.57 ID:Nwwg5lTdP
軽音部の先輩はみんな同じ大学だし、みんな仲良しでいれると思う

でも、私が同じ大学に行く保証なんて何処にもないし

別の大学にでも行ったら もしかして ずっとずっと会えないまま

先輩達は私とは別に新しい友達いっぱい作って

私とは 縁が無くなるとまで言わなくても 微妙な関係になって

就職して 音楽も今まで通り触れなくなって

現実と社会の波に曝されながら

練習も お茶も 

ライブも 合宿も ロンドン旅行も

楽しい思い出も 素敵な経験も

いつか  

擦れて消えちゃって・・・


11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/10(土) 00:25:51.77 ID:Nwwg5lTdP
「・・ずにゃん? あずにゃん!」


ハッ と現実に帰る


「ぁ 唯先輩・・・」

「大丈夫?凄い哀しい顔してたけど・・・」

「い、いえ 何でもないんです・・何でも・・・」


いけない

きっと 泣きそうな顔してた

こんなの前に進みたがらない 甘えん坊の思考だ

わかってるけど でも でも・・


12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/10(土) 00:28:08.53 ID:Nwwg5lTdP
「何か辛い事があったの?悩んでる事があるのかな?」

「あの・・そ、その・・・」

「やっぱり、私達と離れるのが寂しい・・?」

「そ、それもそうなんですけど・・ちょっと違って・・その・・・・」


心配してくれる唯先輩

とてもありがたいけど、この優しさでさえも

ひょっとすると

いつか忘れてしまう 忘れられちゃうものなのかもって 思ってしまうと・・・


「ごめんなさい、唯先輩。もう大丈夫です」

でも、何時までも心配させてはいけない

「・・・・うん。もうちょっと見ていこうか、あずにゃん」


13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/10(土) 00:30:28.64 ID:Nwwg5lTdP
――ー――ー――ー――ー――ー――ー――――

PM 1:00


午後は積極的に買い物に乗り出した

中古とはいえ 興味を惹かれる商品は多い

いや むしろ 使われてきたものだからこそ

不思議な魅力を放つのかもしれない


「あずにゃん見て見て!このワンピース、あずにゃんにすっごい似合うと思うよ!」

「そ、そうですかね・・」

「絶対そうだよ!ホラ、ちょっとこっち来て・・」


「こ、コレですか・・?ちょっと幼すぎませんか」

「だから似合うんじゃん!」

「もう・・」


15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/10(土) 00:34:45.58 ID:Nwwg5lTdP
服を見ている時の唯先輩のはしゃぎ様といったら

ホントに小さな子供と歩いてるみたいで

見てるこっちまでワクワクしてくる


「いっその事、ペアルックとかどう?」

「へ?」

「ほらこのシャツ、二人お揃いで着れるよ」

「いやですよ/// そ、それにペアルックって なんか古いですし・・・」

「え~ 面白そうなのに~」

「しかも『ひょっとこ』の文字Tをペアで着てもカッコ悪いです・・・」


そんな会話をしていると

ふとした疑問が頭をよぎる


16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/10(土) 00:37:52.29 ID:Nwwg5lTdP
「あ、そういえば 今日は他の先輩方は・・・」

「うーんとね 澪ちゃん達はね・・・その・・・」


やっぱり ホントに二人きりのデート・・・!?


「・・みんな揃って予定が付かなかったみたいで。ちょっと残念だったね」

「そ、そうなんですか・・はい、残念です・・・」

思い違いでしたか そうですか


「でもホントに あずにゃんの春休みも終われば・・・」

「こうして遊べる機会も減るかもだから、惜しかったねぇ」


唯先輩は残念そうに でも笑いながら話していたけど

私の心にグサリと刺さる


17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/10(土) 00:41:16.07 ID:Nwwg5lTdP
――ー――ー――ー――ー――ー――ー――――

PM 3:30


まだ時間はあるけど 粗方見て回る事が出来た

唯先輩と歩いているとそれだけで楽しい

手を繋ごうと思ったけれど やっぱり恥ずかしくてやめた


「可愛い服が沢山買えたねー」

「はい。安くて助かりますね」

「今度これ着て遊びに行こうよ!何処が良いかな~」


今後の付き合いを示唆する こんな些細な台詞でも 

さっきと打って変わり、私の心は少し安らぐ

なんて揺らぎやすい 脆い精神


18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/10(土) 00:44:22.28 ID:Nwwg5lTdP
「・・・・・うーん」

「どうしかしました?まだ見ていきます?」

「最後にもう一回、あのギター見に行こうよ」

「は、はい」


よっぽど気に行ったのかな

なんて簡単に思いつつ 

唯先輩に手を引かれて さっきのギターの前まで来た


「何度見ても 良いギターですからね」

「・・あずにゃんさぁ」

「・・・?」

「やっぱり、変わるの怖い?」

「・・・!」


ドキン と心臓が鳴る


19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/10(土) 00:46:22.33 ID:Nwwg5lTdP
「あずにゃんや私達が 将来 色んな事経験して・・」

「お茶飲んでた高校生から変わっちゃうのって やっぱり不安に思うよね?」


「・・・・はい。怖いです」


もう、正直に言ってしまおう


「私、軽音部で凄く幸せでした・・今が一番幸せなんだろうって 自覚するくらい幸せでした・・・」

「・・だから怖いんです・・・私も先輩も これからずっと 全然違う人生歩んでいって・・・・」

「久々に同窓会でもすると 全然違う人になってたりしたら・・・思い出だけが取り残されないかって・・・」


気付けば涙が流れてる

駄々を捏ねてるだけなのに 恥ずかしいのに

一度流れると止まらない


21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/10(土) 00:49:01.12 ID:Nwwg5lTdP
「泣かないで、あずにゃん」

「唯先輩・・・」

「思い出が消えたり、思い出しか残らないなんて そんなことないよ」

「でも・・・」


「このギターの持ち主さんだって、売った後 ギターの事絶対忘れないし」

「人生の何処かしらで ずっと意味を持ち続けると思うんだよね」

「こんな大事にされてきたんだから 絶対そうだよ」


「はい・・・」


「確かに私達は幾らか変わるかもしれないよ。でも・・」

「放課後ティータイムだったことは変わらないし、その事は私達を ずっと導いてくれるよ」


こんな些細な台詞でも 心がすぅっと 楽になった気がして

涙も止まった

やっぱり 私の心は動かされやすいのかも


22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/10(土) 00:53:08.50 ID:Nwwg5lTdP
「ありがとうございます、唯先輩」


「あずにゃんの哀しい顔 見たくないもん」


こういうところは ずっと変わらないんだろうなぁ



「でも一番は やっぱりみんなで武道館だけどね!」

「アハハ、そうでしたね!」

益々 好きになってしまうではないか


23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/10(土) 00:53:51.25 ID:Nwwg5lTdP
――ー――ー――ー――ー――ー――ー――――

数ヵ月後


先輩は大学へ行き

私は新入部員と一緒に軽音部を楽しんでいる

みんな良い子だ

きっと この子達も 素敵な思い出を沢山作って卒業していくだろう

先輩達も 大学を出て 社会へ羽ばたいていくだろう

でも 

何も怖がる事は無い


24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/10(土) 00:54:53.08 ID:Nwwg5lTdP
夏が近付いている

窓から吹いてくる風が気持ちいい

今度 新旧軽音部合わせて一緒に合宿をする予定だ

新しく・・はないけど、あのとき買った服を着よう

ペアルックはまだ悩んでるけど・・


淹れてもらったお茶が美味しくて

練習は明日でいいかな 

なんて

変わらない日常は 変わるかもしれないけれど

変わらない日常があったことは 

変わらないんだ



終わり


25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/10(土) 00:55:38.42 ID:uRhYq1cM0



26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/10(土) 01:01:08.58 ID:rkXRMLSr0
乙 久しぶりの良い唯梓だった


27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/10(土) 01:06:23.67 ID:kbCEpjL20
おつ


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