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絵里「なんかよくわかんないけど死んだ」
- 1 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 00:09:29.38 ID:dBHppMbr.net
- 眼を開けたら、眼を閉じた私がいた。
私は横になっていて、それを上から見ている。
つまり私は今浮いているってわけ。ほんとハラショー。
もう少しズームアウトしてみると、横に亜里沙がいた。
うつむいてなんだか悲しそうなの。
え? なんでうつむいてるだけで悲しそうなのがわかるかって?
だって妹だもの。顔を見るまでもないわ。
そしてその状況で私は冷静にこう思ったの。
なんだこれ意味わかんねえ。ってね。
- 2 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 00:13:18.08 ID:dBHppMbr.net
- それから、そんな弱々しい妹の背中を見下ろして、あることを想像したの。
もし、私が死んじゃったら、この子はどうなるんだろう。
日本で身寄りは私しかいないのに。
ああ、たぶん死んだ私の側に両親やお祖母様はいない。
だってロシアから日本くるの待ってたら私腐っちゃうわよ。うわ何それすっごいいやだわ。
だから、私の亡骸の側には亜里沙しかしなあんだろうなあ……。
丁度こんな風に。 - 5 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 00:15:39.09 ID:dBHppMbr.net
- そこまで思考してかしこい私は気がついた。
あれ? これ私死んでるんじゃない?
待って待って、やばい、これ死んでるわ。
私死んでる。絶対死んでる。
うっわ、マジか、絢瀬絵里死んでるよ。逆ハラショー。
さすがの私も混乱したわ。 - 6 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 00:20:01.91 ID:dBHppMbr.net
- そこで問題になってくるのが、「どうして私は死んでいるのか」ということね。
それが考えてもさっぱり思い出せない。
なんかよくわかんないけど死んだ。
いつの間にか死んでたのよ。びっくり。
イミワカンナイ。私の命トラナイデ。なんつって。
私なんで死んだんだったかしら? - 9 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 00:24:10.89 ID:dBHppMbr.net
- そんなこんなやってるうちに、亜里沙が突然立ち上がった。
ぶつかりそうになったんでつい身構えちゃったけど、見事にすり抜けたわ。ちょっと面白かった。
で、それをキッカケに少し辺りを見回してみた。
どうも葬式場ではなさそう。どこかの病院っぽかった。あの、ドラマでよく見る死んだ人がドーン! と真ん中にいるやつ。
それで亜里沙、また来るね。なんつって出て行っちゃった。
次会えるときは私の体残ってるのかしら? - 10 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 00:30:08.56 ID:dBHppMbr.net
- それからしばらくして……いや実際死んじゃうと時間感覚なくなってよくわからないんだけど。
つまり三次元から抜け出して四次元的な感覚を得られるの。
この瞬間の私は死んでるけど、過去の私は死んでないでしょ?
その瞬間の死んでる私を見てる私はまさに四次元の存在。
あ、何言ってるかわからない?
そっかーちょっと難しいかもしれないわね。
死んだことのない人には難しいかもしれない。
あなたもいつかわかるわよ。事実私も死んで随分垢抜けた。
はい。話を戻すわね。しばらくして、希が入ってきたの。 - 12 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 00:34:36.38 ID:dBHppMbr.net
- 希……意外とけろっとしてて。
やっほーえりちー! なんていつもの調子なの。拍子抜けしちゃった。
そりゃあ、私がいなくなってもみんなには元気でいて欲しい。
でもなんとなく、私がいないことを悲しんで欲しい気もするの。
変な心理よね。生きてる人にはきっとわからないわ。
それから、希は寝てる私の横に座るの。亜里沙が座ってたところね。
きっとまだ温もりが残ってて内心うわ……とか思ってるはずよ。 - 14 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 00:39:40.92 ID:dBHppMbr.net
- 希はしばらく無言だった。
私も無言で横になってて、で、隣の希は姿勢良く座ってるの。
この上なくシュールだったわ。
できることなら私も座りたいんだけどねって申し訳なくなっちゃった。
私から話題ふろうにも口動かないしね。
でも希ったら心なしか口元が笑ってるのよ。
人が死んでるってのに失礼よね。
もう少しくらい悲しそうな顔してくれたっていいじゃない。
「えりち」
ようやく薄情者が口を開いた。 - 16 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 00:47:38.62 ID:dBHppMbr.net
- 「なんだか、今にも『お祖母様』なんて寝言を言いだしそう……」
待て待て待て、なんであなたがそれを知っているのよ?
え、なに、私いつも寝言でそんなこと言ってるの?
むしろ私が知らなかったわよ。
恥ずかしいったらないわ。その事実は墓場まで持っていくことにしましょう。
そして希は私のレスポンスを待たずに続ける。
当然よね。私の返事待ってたら死んじゃうわ。
希はまるで十倍の重力に耐えているような声で。
「昔……『えりちは長生きできないタイプやね』なんて、冗談で言ったけど……」
「はやすぎるよ……」 - 17 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 00:53:11.59 ID:dBHppMbr.net
- ……なによ。さっきとは打って変わって。
泣いてるのよ。希。
顔がぐっしゃぐしゃで、鼻水垂らして、ぼろぼろ泣くのよ。
しまいには私に覆いかぶさって大声で泣き叫ぶのよ。
私、希ってもっと強い子だと思ってた。
そんなことされたら、私も強がりできなくなっちゃうじゃない。
あっけらかんとした態度とってごましてたけど……私だって死にたくなんかなかったわよ……。
そんな風に、泣かれたくなかったわよ……。
そんなことされたら、私まで泣きなくなっちゃうじゃない……。
私に、涙を流す身体があったのなら、一緒に泣いていたでしょうね。
でも、そんなものは見られたくないから、それは不幸中の幸いだったわ。
私は泣いている希をずっとみていた。 - 19 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 00:57:47.62 ID:dBHppMbr.net
- いやーいいもん見れたわ、私のために大号泣する希。
ただでさえ泣いてる希なんてレアなんだから。
まさか私にみられていたとは思わないでしょ。
私にかかっているお布団は希から出た液体でびしょびしょよ。
あ、なんか高まってきた。落ち着け私。
感動ぶち壊しか。 - 21 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 01:03:29.66 ID:dBHppMbr.net
- 希が帰ると、暇になったので私はまた自分の死因を思い出そうと努めた。
まず、私の屍だけど、見た所目立った外傷はない――布団の下はわからない――けど。
少なくとも体がグチャグチャになるような死に方ではなかったってことがわかったわ。
トラックに轢かれたとか、焼身とか、電車を止めたとかではないってこと。
……となると、病気かしら?
あるいは誰かに刺されたとか、あとは溺死とか? - 22 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 01:07:11.63 ID:dBHppMbr.net
- でもどうにもここ最近のことが思い出せないのよ。
死ぬ直前は走馬灯を見るっていうけど、死んだあとはいろいろ忘れちゃうのね。新たな発見だわ。
それから、そうそう。にこが来たんだったわ。
最初に言っておくけど、にこは泣かなかった。
ぐぬぬ。悔しい。
にこはいつものように私の枕元の花瓶を取り替えて、それから座ったの。
あれ、いつも通り?
普段こんなことしてもらってたかしら? - 25 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 01:12:48.36 ID:dBHppMbr.net
- にこは部長らしく、最近の近況を私に報告してくれた。
話の中で一番驚いたのが、花陽がダイエットに成功して私顔負けのナイスバデーになったんですって。すごく気になるわ。
それからにこ、急に真剣な顔になって。
「私……絵里ちゃんに憧れてたの。スタイルがよくて、かっこよくて、あなたみたいになりたいなって」
突然の告白。
ていうか絵里「ちゃん」だって! 陰もしくは脳内ではそう呼んでるのかしら! なにそれやばい、萌える。萌えたぎる。
可愛すぎかにこ。 - 27 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 01:22:03.97 ID:dBHppMbr.net
- それからにこは膝を抱えて、何も言わなくなった。
あのにこお得意の絶妙なアングルでスカートの中を足で隠すあれね。
くそう、もう少し……見えない! 神がかり的なアングル! さすがにこね! 見えないからこそいいのよ!
できるものなら今すぐ起き上がって椅子の下に滑り込みたいわ!
いやいや、深呼吸。何を荒ぶっているの私。素数を数えて落ち着きましょう。
……。
あ、私がさっき言った最近の近況って言葉おかしいわ。
朝の朝礼見たい。
あーあ、勿体無いことをした。生きてたらにこが突っ込んでくれたのになあ。 - 28 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 01:27:45.52 ID:dBHppMbr.net
- にこが帰って、次は海未が来たの。
そこで問題です。海未の第一声はなんだったでしょう?
正解は……。
「亜里沙ちゃんの面倒は私が見ます!」
でした。
なんてこったい。あなたたちがそんな関係だったなんて。
そんなの認められないわ。
しかも、亜里沙ちゃんの心配はしないで、安らかに、とかなんとか。
そんな大事な報告、死んでからなんてずるいわ。
はっ……まさか結ばれない二人が私という障壁を消すために……? - 29 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 01:35:45.71 ID:dBHppMbr.net
- 「亜里沙ちゃんは私たちが何とかかんとかしていくことになりました。
大丈夫。大丈夫です。心配しないでくださいね」
冗談はさておき、亜里沙はμ'sのみんな及びその家族が面倒を見てくれるそうなの。安心したわ。
「亜里沙ちゃんも家族のようなものです。いえ、家族です。……となると、絵里も私の家族ですね」
そうね。私にとってもみんなは家族同然よ。
ごめんなさいね……家族を失うって、どんな気持ちなのかしら。
「ということは、絵里は私のお姉さん……でしょうか?」
お、ね、え、さ、ん!
ねえもう一回言って!
海未「しっかり者の姉がいなくなってしまって……私はどうしたらいいでしょう?
私、あなたが唯一の支えだったんです。
あのハチャメチャな集団を……私一人で手懐けられるでしょうか」
うむ。心配するな妹よ。
あなたもそのハチャメチャ集団の一人だ。 - 31 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 01:41:23.24 ID:dBHppMbr.net
- 海未は私が物言わぬことをいいことに散々愚痴って帰っていった。
相変わらず苦労しているみたい。
愚痴を聞いている間、私はある光景を思い出していたわ。
懐かしくて、暖かくて、神々しい景色。
そう。さっきのにこアングルよ。
私は気がついてしまったの。今の私って幽霊みたいなものじゃない?
だからたとえスカートの中に顔を突っ込もうが、バレないのよ。
もっと早く気がつけばよかったあああああ! - 33 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 01:46:45.10 ID:dBHppMbr.net
- 海未が帰ってから私は部屋の入り口に仰向けになって待機していたの。
早く誰か来ないかしら。
すっごいイケナイことしてるみたいでドキドキしたわ。
バレないとはいえ、こんなことしていいのかしら、と迷ったりもした。様々な葛藤があった。
でも、扉が開いた瞬間それは吹き飛んだ。
見えた! 白おおおおおおおお!
部屋に入ってきた人の顔より先にパンツの色を確認したのは生まれて初めてのことだった。 - 40 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 02:06:03.50 ID:dBHppMbr.net
- 次に踏まれると思って身構えたんだけど、やっぱりすり抜けたの。面白いわ。
で、白といえばあの人かなーと思って確認したらやっぱりその人だったの。
ことりね。見えないところまで期待に応える。伝説のメイドは格が違うわ。
私も急いで体勢を戻してベッドのほうに行ったんだけど、考えてみれば全然焦ることないのよね。
私が何してようが私の体はそこにあるんだから。
それとは正反対に、ことりはなかなか座らないで、そわそわと部屋を歩き回るのよ。
私は言ってやったわ。「出産待ちのお父さんかっ!」
まあ聞こえないんだけどね。
今回はここまでにするわ。つづきはまた今度ね。 - 59 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 23:49:51.56 ID:dBHppMbr.net
- 本当にことりはなかなか落ち着かないのよ。
しまいには立ったまま私に話しかけてきたわ。
「みんなね、前みたいにまた一つになってきたんだよ。絵里ちゃんのおかげだね」
よく意味がわからなかった。前みたいに? 私のおかげ? 何を言っているのかしら。
「絵里ちゃんがいなくなっちゃったのをキッカケにね……こんなの言うの変だね。
……もっとはやく、こうはなれなかったのかな。そしたら絵里ちゃんは……」
ことりって誰もいないとこんな感じなのね。
窓の外を眺めながら意味深な台詞を連発。
そしてふぅ、とため息をついて、含みのある表情でこう言うの。
「今日は……空気が冷たいね……」
うひょひょへはは! なんじゃそりゃ。
ドラマチックだわ。そして私はエキゾチックだわ。
「ごめんね……こんなこと言うの嫌なんだけど……」
なんていうかこう、役に入り込んじゃうのね。
よくわからない立場でことりを分析しながら私は軽い気持ちでことり劇場を眺めてたわけよ。 - 62 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 23:58:19.58 ID:dBHppMbr.net
- でもよくよく考えてみるとことりの言葉、何か引っかかるのよね。
何かを思い出せそうな気がしてきた。
そういえば今のμ'sってどうなってるんだったかしら。
どこかのスピリチュアルさんがμ'sは9人しら認められないわぁって言ってたけど。
新メンバーが加入するのかもしれないわ。
それとも普通に8人でやっていくのかしら。
んー……もう少しなんだけどな。ダメね。思い出せない。 - 63 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 23:59:58.63 ID:dBHppMbr.net
- そしてことりは言う。
「ごめんね、こんなこと……でも、みんな言わないんだけど……」
そしてことりは続ける。
「自殺……じゃないよね? 絵里ちゃん」 - 64 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/02(木) 00:04:17.73 ID:oNfNYLXO.net
- は?
自殺……私が?
いやいやいやいや! ちょっと待って急に重すぎるわ。
何唐突にシリアス展開になってるの? 衝撃よ。むしろ笑えてきた。
私自殺したの!?
「……ごめん。そんなわけないよね」
そんなわけないなら言わないでよ!?
すっごい気になるですけど! ちょ、待っ……
ことりは中途半端に気になる発言をして部屋を後にした。
うわああああああ! どういうことか説明してよ! 半殺しにされた気分よ!
あ、既に全殺しなんですけどね。
お後がよろしいようで。 - 65 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/02(木) 00:11:36.57 ID:oNfNYLXO.net
- ことりのせいで悩みが増えた。私が自殺なんて……。
だとしたら、どうして私は自殺なんてしたの?
これはしばらく成仏できそうにないわね。
思い出せない……。まさかのサスペンス展開だわ。
自分の死因を探っていたら実は自殺だった。これで1冊書けそう。売れない作家に乗り移ってあげようかな。
ねえ私、あなたはどうして自殺なんて……。
結局疑問は解決しないまま、次の来客があった。
でもそのときの私は余裕を失い、ある重大なことを忘れていた。
そう。その来客のパンツを見るのを忘れていた。 - 67 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/02(木) 00:14:17.59 ID:oNfNYLXO.net
- 「ねえ絵里ちゃん覚えてる?」
いきなりそんな聞き方して「うん覚えてる」って言われたら逆にびっくりしない?
覚えてる覚えてない以前になんの話かわからないのだもの。
「あの日、ケンカして別れて以来だね」
どうやら最期に会ったとき、私たちはケンカをしたらしかった。
「あのあとすぐ……なんだってね。まさかあれが最後だなんて、おもって……なかった、よ……」
ケンカしてそのあと、私は死んだらしい。
まずい。ますます自殺くさい。
「ケンカするのは……また会えると思ってるからなんだよ……?
すれ違いも、もう会えないってわかってたら……しないんだよ……?」
泣いているところ申し訳ないけど、「すれ違い」と「会えない」をかけたのはなかなか上手いなと思った。
たぶん本人気づいてないけど。
まあ私としてはまた会えちゃってるわけで。そこに温度差が生じちゃうのは仕方ないことかなって。
幽体離脱とか、ここまで非現実的だとむしろドライというか、どこか冷静なのよね。
なんか慣れてきちゃって。死んだ私をみて泣いてる人を見るのがゾクゾク快感。
エリチカ終わったな。 - 68 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/02(木) 00:17:49.13 ID:oNfNYLXO.net
- 「どうして死んじゃったの……?」
そんなこと言われてもねえ……。
一人になったあとも、ずっとその言葉が頭にこびり付いて離れなかった。
頭にこ。
今までの情報を整理すると……。
まず希が私のために鼻水を垂らしてくれて、それからにこが私を尊敬していることが判明。
次に海未が私をお姉さんと呼んでくれて、ついでに亜里沙についても安心できた。
問題はそのあとね。
生前何かあったらしくμ'sがまとまっていなかった?
そして私は自殺を疑われるほどの深刻な状態。
死亡当日はなんかいろいろケンカとかゴタゴタがあったらしい。
私の死をキッカケにまたμ'sが力を合わせようとしている?
ああ。なんか……。
つれーわー。マジつれーわーこれ。 - 70 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/02(木) 00:28:24.63 ID:oNfNYLXO.net
- みんなの話を統合して推測する。
私の失った部分の記憶の推測。
今までの情報を整理する。
私が思い出せない記憶を引き出す。
さあ、今はふざけている場合ではないわ。
この私の全身全霊をもって、向き合う。
深呼吸して、私は私の頭の中に飛び込む。
見えてきた。失くした記憶の断片。
私が死んだ日。
私がこうなる少し前。
あの日私は、外に出た。 - 71 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/02(木) 00:35:05.22 ID:oNfNYLXO.net
- 私は右手に何かを握りしめて走っていた。
よくわからないけど、走るのは久しぶりだったんだと思う。随分息が上がっていた。
私は何かを決心して、その子に会いにいった。
震えていた。恐れていた。でも、会いにいった。
「あ……絵里ちゃん……ひさしぶり」
「あ、ひ、ひさしっ……ぶり」
私は声を振り絞って、歯を食いしばって、その子に会いにいった。 - 72 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/02(木) 00:41:02.95 ID:oNfNYLXO.net
- 「あああ、あのね、だ、大事な話があるの」
「大事なお話……?」
「そ、そうよ。だからお家にあげてくれないかしら」
「え、今!?」
「都合がわるい?」
「いやあー、えっとお、あはは……」
「お願い」
「ごめんなさい」
でも、その子は私を家に入れてくれなかった。
「どうして!?」
「だ、だって絵里ちゃん」
「私が嫌いだから? 私が……μ'sの邪魔者だから……」
「ちがうよ」
「じゃあ私が……引きこもりだから?」 - 73 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/02(木) 00:47:49.14 ID:oNfNYLXO.net
- 「ちがうって! 違うのにどうして勝手にどんどんそんなこと言うの!?」
「じゃあなんで入れてくれないのよっ!」
「そ、それは……」
「私が……どんな思いでここに来たと思ってるのよ!」
「知らないよ! 絵里ちゃんこそなんでこんな時に限って……」
そして私は理解する。
「あははははは……」
二階にあるその子の部屋から、複数の笑い声が聞こえてきた。
「あっ……これは……」
「……そう」
「違う! 違うよ絵里ちゃん!」
「私はあなたたちの……仲間ではないものね……ごめんなさい」
私はまた、走ってそこから離れた。
目を閉じてしまいたかった。耳を塞いでしまいたかった。 - 77 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/02(木) 00:54:27.78 ID:oNfNYLXO.net
- 「なんで話聞いてくれないの! 絵里ちゃんのバカー!」
「私の話を聞いてくれないのは――穂乃果のほうでしょ!」
帰り道。橋の上を歩いてた。
少し冷たい風が吹いた。
ずっと右手に握っていた、それが風に吹かれて掌から離れる。
つい、身を乗り出してそれを掴もうとしてしまったの。
「――川の河口で見つかった遺体は音ノ木坂学院に通う高校生絢瀬絵里(18)さんであったことが……」 - 78 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/02(木) 00:55:41.72 ID:oNfNYLXO.net
- それが自分の意思だったのか、あるいは本当に事故だったのか。
それはまだわからない。 - 80 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/02(木) 00:56:20.72 ID:oNfNYLXO.net
- つづく。
- 82 : 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/07/02(木) 00:58:04.40 ID:+P61peh7.net
- 気になる
おつ - 94 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 00:07:48.70 ID:Ot15Y1xC.net
- 私の記憶の中の私は、もっとしっかり者で、かしこいかわいい生徒会長だったのに。
なんでよ、なんで私、こんなんなっちゃったのよ。
こんなの……思い出さないほうがよかった。
頭の中に自分の声が響く。
「私も死んだら、やり直せるのかな」
なによなんなのよこの記憶。
私そんなこと言った覚えないわよ……。
病院の白い天井を見上げながら、感触のない床に寝転ぶ。
触れているのかわからない。冷たいのか暖かいのかもわからない。
体の向こうが、透けて見えそうだ。
私は確かに死んでいる。 - 95 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 00:11:39.07 ID:Ot15Y1xC.net
- 冴えない顔に影がかかる。誰か来た。
「ズドラーストビチェ」
よくわからない言葉と一緒に真姫が来た。どこの国の言語かしら。
やってまいりましたパンツタイム。スタンばってたわよ。
私の頭上を真姫が超えていく。ここだ。私は目を見開きそして脳に焼き付けんと全神経を集中させる。
履いてな――
コホン。だというのに、パンツを見ることはできなかった。理由は言えない。
「聞いたわよ。絵里」
え、なに? ノーパン健康法とか?
「あなた、臓器提供を希望してるそうじゃない」
そうでした。 - 96 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 00:14:16.20 ID:Ot15Y1xC.net
- 「すごいわね……とても……すごいことよ」
月並みな感想ありがとうございます。
でもまさか自分の体切り刻まれるのを見るハメになるとは思ってなかったわ。
今だったら絶対NOよそんなの。こわすぎ。
「でもね、なんだか人じゃなくなってしまったみたいで。ねえエリー、私寂しい」
うひょー! えりまきキター!
真姫って意外とストレートにこんなこと言ってくるのね。 - 97 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 00:17:33.24 ID:Ot15Y1xC.net
- それで誰かが救われるならいいと思った。
たとえ体が切り刻まれても、提供した人の中で私は生き続ける。
素晴らしいことよ。私の臓器で助かる人がいる。そう思って臓器提供を希望した。
でもいざとなるとやっばり嫌だわあ……。
私ここにいるし。うわ、嫌だなほんと。意識あるのに体切られたら痛そう。
まさかこんなことになるとは。
「尊いことよ。誇りに思う」
他人事か! 麻酔なしで切られるの怖いよ真姫ぃ……
「死んで、誰かの命を救うのは尊いことよ。
でも……生きていても同じことはできるじゃない……救う対象が違うだけで」
なによ……なかなか深そうなこと言うじゃない。さすが医者の子。
「あなた一人の命で何人も救われるかも知らないけど……
あなた一人の命で何人が悲しんでいるかわかる? 絵里……生きていてくれるだけでよかったのよ……」
真姫も泣かせた。私は本当に罪つくりだまったく。
「死んだら……終わりじゃない……」
終わってないんだな。これが。 - 98 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 00:22:27.58 ID:Ot15Y1xC.net
- 「じゃあ私……そろそろ戻るから。お手洗いにも寄りたいし」
その後女子トイレで女の子の「ないぃぃぃぃぃぃぃ!?」という悲鳴が響いた。
その女の子は何があったのか問われても頑なに口を閉ざしたという。 - 100 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 00:27:09.82 ID:Ot15Y1xC.net
- 私はパンツを見るのをやめた。
人には見られたくないものの一つや二つあるんだから。
行儀よく浮遊していると、縮こまりながら凛が入ってきた。
「あ、あの……失礼します」
凛らしくないわね。もっと元気に登場して欲しいのに。
さすが「実はμ's1の常識人」と名高い星空凛ね。
って何言ってるの! 一番の常識人はこの私絢瀬絵里でしょ! - 101 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 00:36:07.44 ID:Ot15Y1xC.net
- 「あっ、あの……っ」
凛はオロオロビクビクしながら椅子に座る。それも背もたれから体を浮かし、腰が引けている。
何かあったら逃げたせるように。
そんな印象。
たぶん凛は私が怖いんだと思う。いや、私だった"それ"が。
凛は泣きそうな顔で私を見ているだけだった。
それも仕方ないわよね。そりゃあ怖いわよ。
その異質な何かを凛は知らなくて、過敏になっているんだと思う。 - 104 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 00:41:58.42 ID:Ot15Y1xC.net
- ふん。そうよね。
だって生前の私には、みんながそうだった。
誰も私を必要としてくれなくなって、同じように私も必要としなかった。
そうよ。みんなみんな、私のことなんかどうでもよかったのよ。
凛の反応が正しいんだわ。
みんな死んでから寂しいだの悲しいだの。
そんなの今更なんだっていうのよ。後になって言うのは簡単よ。
そんなの全部、嘘よ。
だから、目の前にいる怯えた凛が正解なんだわ。
ぐれてやる。変身ヤサグレーチカ。 - 105 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 00:48:46.54 ID:Ot15Y1xC.net
- 「凛ちゃん。大丈夫だよ」
凛の肩に、優しく手をおく人がいた。
「かよちん……」
「大丈夫。絵里ちゃんだよ」
「でも……」
「絵里ちゃんも言ってるよ。『そんなに怖がらないで』って」
言ってません。
「でも……」
「大丈夫。ほら、顔を見てご覧。絵里ちゃんは絵里ちゃんだよ。だからしっかり、最後の最後お別れしてあげよう?」
凛はしばらく私の顔を見つめて、それからこう言った。
「――うん。ありがとうかよちん。もう大丈夫だから」
「よし! じゃあ私は外で待っているね。
二人きりで、ゆっくりお話していいからね」 - 106 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 00:52:45.71 ID:Ot15Y1xC.net
- 花陽……はなよ!?
ちょっと待って何そのナイスバデーは!?
だれ!? 花陽!? もうちょっとよく見せて……!
ああ、言ってしまった。にこの言っていたことは本当だったのね……。
あとでまた来たときにゆっくり拝むとして。
「あのね、絵里ちゃん!」
今は仕方ないからこの情けない後輩の話を聞いてやるとしよう――。 - 109 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 01:00:37.56 ID:Ot15Y1xC.net
- 凛と入れ違いで、花陽が入ってきた。
私は花陽のそれで頭がいっぱいだった。
パンツじゃないわよ。
生まれ変わった体……でもないの。
私が見ていたのは、手。
痩せても、柔らかそうで優しいその手は確かに花陽のものだった。
凛の肩に乗せた手。あの光景が頭から離れなかった。
今までは一対一の対話(一方的に話しかけられていた)だけだったから実感がなかった。
私の体には、あの優しい手が触れることはない。
私が誰かに触って温もりを感じることもない。
花陽が凛に触れた瞬間が、何より私の胸を締め付けた。 - 110 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 01:06:57.70 ID:Ot15Y1xC.net
- 「久しぶりだね。絵里ちゃん」
そうね。久しぶり花陽。元気にしていた?
「ごめんね……もっとはやく、会いに来るべきだった」
私は元気よ、なんて、死人が言うのもおかしな話か!
「私、本当は気がついていたの」
でも本当なのよ。体が軽い軽い。って幽霊だから軽いのは当たり前か! なんつって。
「みんな、ひどいことしたよね。私も……。絵里ちゃんが学校に来なくなっても、メールしたり、家にいったりもしなくなった」
やめてよそんな話。私の話もちょっとは聞いてよ。
「どうすればいいのかわからなかったの」 - 111 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 01:15:47.33 ID:Ot15Y1xC.net
- 花陽らしいといえばそうなのかな。
花陽はひたすら懺悔を続けた。私のせいで死んだ、なんて思っているかしら。
それは傲慢よ。
「オープンキャンパスでみんなで踊ったね。
絵里ちゃんはの練習はすっごい辛かったけど、やっぱりすごいよ。みんなみるみる上達していった」
まあね。素人のそれとは違うのよ。
「でも、その真中はそう思わないよね。辛い、苦しいって。その気持ちが絵里ちゃんに言っちゃうときもあった」
全くよ。私は頼まれてやったっていうのに。
「希ちゃんから聞いたよ。生徒会もうまくいってなかったって。スピーチも一生懸命考えたのに」
そんなこともあったわね。我ながらつまらないスピーチだった。
いつもそう。私の一生懸命は……。
こんなに頑張っているのに、認めてくれないの? - 112 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 01:19:32.30 ID:Ot15Y1xC.net
- 誰かの為だったと思う。
「何してるの絵里ちゃん!?」
「あ……これは……待って穂乃果」
「そ、それ……私の……」
それから私は学校に行かなくなった。
誰も私を必要としてないんじゃないかな。
きっとそうよ。私を見るあの目。私に対するあの態度。
私は口ばっかりで、役立たず。
みんなと一緒に踊ってみたけど、きっと私なんかいなくたって結果は変わらない。
なんかいろいろ押し殺して頑張ってたのがバカみたい。全部空回り。空振り三振ホームラン。
折角みんなとも仲良くなれたのに、最近はすれ違いばかり。
やっぱり私、必要とされてない?
ああなんだか、急にプッツリ切れちゃった。
それから私は家から出なくなった。 - 114 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 01:25:18.13 ID:Ot15Y1xC.net
- だから、もうやめて。
その話はもうやめてよ花陽。
「それから、絵里ちゃんが学校に来なくなって……いろいろあったけど……。一つ。
絵里ちゃんわかる? オープンキャンパスや、文化祭や、合宿と同じくらい大きなイベントが、その後にあるはずだったんだよ」
何よそれは。ああそういえばもうすぐハロウィンだったわね。
「みんなその準備をしていたんだ」
もうやめてって言ってるでしょ!
「……そうだね。済んだ話はやめようか」
えっ? まさかの会話が成り立った。
「そろそろ行くね。そうだ。絵里ちゃんにだけ、私の秘密教えてあげます」 - 115 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 01:29:40.25 ID:Ot15Y1xC.net
- 「……ちょっと違うかな。後ろめたいから、誰かに聞いて欲しいんだと思う」
な、なによ。私の口は堅いから安心していいなさい。
堅いどころが二度と開かないんだから。
「実は……エステとか、いろいろ行ったの」
なんの話よ。
「アイドルなんだから! ってお母さんが張り切って……お金も出してくれて。
その……それでいろいろやって、痩せたの」
……マジか。
私に言わないでよ聞きたくなかったわ。
その秘密背負いきれないわ重すぎるわ。
「みんなには内緒だよ……?」
マジか。 - 116 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 01:33:01.94 ID:Ot15Y1xC.net
- 「さよなら。えりち」
「さよなら。絵里」
「さようなら。絵里」
「さよなら……絵里ちゃん」
「さよなら。絵里ちゃん」
「さよなら。エリー」
「さようなら。絵里ちゃん」
「さよなら。絵里ちゃん」
みんな部屋を出るときはそう言っていった。
さようなら。みんな。 - 117 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 01:36:23.51 ID:Ot15Y1xC.net
- 「あ、亜里沙ちゃん」
「どうも。花陽さん。あの……そろそろなので」
「うん。もう行くところ」
「あの……ありがとうございました」
亜里沙が来て、花陽が出て行った。
そういえばまた来るって言ってっけ。
よかった。私の体、まだある。
「お姉ちゃん……」 - 119 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 01:43:20.40 ID:Ot15Y1xC.net
- 私を必要としてくれたのはこの子だけだった。
亜里沙だけが、支えだった。
死んだ私にみんなは綺麗事を言うけれど、また私もそれを咎めないし、恨みもしないけれど。
所詮μ'sに私は必要ない。
死んでようやくこうして優しい言葉をかけてもらえるというのが何よりの証拠よね。
死ななければ存在を示せない程度だったということ。
ことりも言っていた。「絵里ちゃんがいなくなってから、みんなまた力を合わせるようになった」
そういうものよ。
「ねえお姉ちゃん。ゲームしようか」
亜里沙はバッグからゲーム機を取り出してそう言った。
そう。あの日のように。 - 121 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 01:44:54.67 ID:Ot15Y1xC.net
- 「おねえちゃーん」
「んぅ」
「今日も学校行かないの?」
「んー」
「そっか。じゃあ今日は亜里沙もやすんじゃうかな」
「ダメよ!」
「お姉ちゃんが行くなら行くよ?」
「うー……」
「久しぶりに、一緒にゲームやろうよ!」 - 122 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 01:49:52.00 ID:Ot15Y1xC.net
- 亜里沙は何を思ったのだろう。
突然私をゲームに誘った。
学校をズル休みして、私とゲームをしようと言った。
ズル休みについて私は何も言わなかった。
私の立場で「学校に行け」なんて言えないから。
亜里沙は私の部屋にたくさんのゲームを持ってきて、まだ動くかな、なんていいながらいろいろセットを始めた。
それはTVでみるような最新のすごいやつじゃなくて、昔からある古いやつだった。
「あ、動いた動いた! ほらみてお姉ちゃん。
こんなにボロボロでも、ちゃんと動くんだよ。ポンコツに見えても、ちゃんと動くんだよ」 - 123 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 01:53:40.82 ID:Ot15Y1xC.net
- ビコピコビコピコ
絵里「……」
亜里沙「どう?」
絵里「なんかよくわかんないけど死んだ」
亜里沙「そっかあ。でもすぐに復活するよ」
いろいろなゲームをした。
ビコピコビコピコ
亜里沙「こっちのゲームは?」
絵里「なんかよくわかんないけど死んだ」
亜里沙「大丈夫。何回でもやり直せるよ」
飽きては次のゲームに手を出した。
ビコピコビコピコ
亜里沙「別のゲームもやってみる?」
絵里「なんかよくわかんないけど死んだ」
亜里沙「最初は誰でもそうだよ」
ビコピコビコピコ
亜里沙と一緒に、いつまでも一緒に。
絵里「なんかよくわかんないけど死んだ」
亜里沙「お姉ちゃんは知らないだけだよ。コツを覚えれば簡単なんだよ?」 - 125 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 02:00:05.29 ID:Ot15Y1xC.net
- 死んでは復活し、何度も何度もやり直した。
最初は誰でもそうらしくて、慣れてくるとうまくやれるようになるらしい。
「私も、死んだらやり直せるかな」
ボソッと、そんなことを言ってみた。
私は死にたかった。ずっと死にたかった。
「それは違うよお姉ちゃん。人は死んでもやり直せないよ。人は死んだらおしまいじゃないのかな?」
「そうよね。そんなこと無理よね。でもじゃあ私、どうすればいいのかしら」
「生きればいいんだよ。生きていたら、やり直せるんだよ。何度でも」
――だから死なないでね。お姉ちゃん。
私は本当に久しぶりに泣いた。
もっと言うと、妹の前で泣くのは生まれて初めてのことだった。 - 126 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 02:06:44.16 ID:Ot15Y1xC.net
- 私はポロポロ泣いて、泣きながらゲームをした。
「お姉ちゃんまた死んだ!」
「だって画面が見えないんだもの……」
ゲームでもなんでも、私は理由を求めすぎた。
なんで失敗したんだろう。なんでうまくいかないんだろう。
なんで私、こんなことしてるんだろう。
なんでゲームが下手くそで、なんでキャラが死ぬんだろう。
でもそれは違った。
なんでかよくわからないけど、死ぬときもある。
むしろ死ぬときなんてそんなものだ。
失敗するときは失敗する。よくわかんないけど失敗する。
よくわかんないけどやってみる。やってみたいからやってみる。
本当にやりたいことって、そんな感じで始まるんじゃない? - 128 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 02:11:23.34 ID:Ot15Y1xC.net
- 「お姉ちゃん、覚えてる?」
「何を?」
「今日、何日?」
「あ……」
「誕生だよ。お姉ちゃん、今日で18歳だよ」
「そうだったのね……」
「生まれ変わるならきっと今だよ」
「亜里沙……」
「私、かっこよくて強くて、μ'sのみんなと楽しそうに笑うお姉ちゃんが好きだな」
私は、外に出た。
右手にそれを握りしめて、走り出した。
走るのはずいぶん久しぶりだった。
「帰ってきたら、亜里沙がお祝いしてあげる!」 - 130 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 02:14:50.54 ID:Ot15Y1xC.net
- そうだった。それで私は外に出たんだったわ。
思い出した。私は死にたかったんじゃない。やり直したかったんだ。
今なら自信を持って言える。
私は自殺なんかしていない!
「それでお姉ちゃんそのまま……」
そうだった。ごめんね亜里沙。
私、その帰りに死んじゃったみたい。
謝っても謝りきれない。
私って大事なところで失敗しちゃうの。ごめんなさい。 - 131 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 02:15:36.63 ID:Ot15Y1xC.net
- 私は生きようとしていたんだ。
- 132 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 02:16:24.54 ID:Ot15Y1xC.net
- つづく。
- 147 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 22:32:23.14 ID:Ot15Y1xC.net
- 私は生きようとしていたんだ。
なのに、あんまりだわ。
あまりにも……あんまりすぎる。
私はみんなに追い返されて、そして死んだ。
結末は私を裏切った。
なら、どうして? どうして私はまだここにいるの?
なにが私をそうさせているの?
なぜ、何のために、私はここにいるの?
すべてを失った私にこれ以上……意味はあるの? - 148 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 22:33:18.53 ID:Ot15Y1xC.net
- 「もうすぐ時間だね。お姉ちゃんの体はこれから病気の人たちのところに行くんだね」
亜里沙の言葉で我に返る。今は自分の言葉なんてどうでもいい。
これは亜里沙との最後の時間なんだから。
「だからお姉ちゃんが消えてしまうわけじゃないんだよね。私さびしくなんかないよ」
嘘よ。亜里沙、私がいないとダメじゃない。
私がいないと……ダメじゃない……。
「ごめんね。私が余計なこと言わなかったら……」
お姉ちゃんは死ななくて済んだ?
それは違うのよ亜里沙。あなたのおかげで私は最後に生きることができた。
だからそんなこと言わないで。ほら、やっぱり私がいないと……。
私がそんなことないって言ってあげないと……。
「そんなことないよ」 - 149 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 22:33:47.55 ID:Ot15Y1xC.net
- 「あ……希さん、にこさん」
「そうよ。亜里沙ちゃんはなーんにも悪くなんかないんだから」
「でもっ……」
「感じる……」
「え?」
「ほら、亜里沙ちゃんのすぐ隣。えりちがいるよ」
「え!? どこですか!?」
「『亜里沙のせいだなんてこれっぽちも思ってないわ』って」
「本当に?」
「うん。『ありがとう』って」
「お姉ちゃん……」
「『天国で、見守ってるからね』って。笑ってる。だから亜里沙ちゃんも、笑って。ほら」
「うん……うん……」
言ってませんけどね。
私は今三人の頭上にいるのよー! - 151 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 22:34:38.23 ID:Ot15Y1xC.net
- 「死後の世界もそれなりにハラショーよ」
言ってません。
「おなか減ったチカ」
言ってません。
「亜里沙! 私の分までたくさん食べるのよー!」
言ってません。
「にこのパンツみたい」
言ってません。今は。
まったくこのエセスピリチュアルめ。適当なことを言ってくれる。
……やさしい嘘を、ついてくれる。
「さっき見えそうだったのよねー」
若干あたってる!? 本当は本当に見えてるの!?
「ちょっと希、適当なこと言わないでよ。絵里がそんなこと言うわけないでしょ」
グッサー! 胸がえぐれる! ごめんなさいにこごめんなさい。
「ほら、だから亜里沙ちゃん。いこか」
「はい……」 - 154 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 22:35:43.09 ID:Ot15Y1xC.net
- 私の横たわっているそれは、カラカラと音をたてて床をすべり、部屋から運び出される。
これから手術室のようなところにつれていかれるのだろう。臓器提供のために。
私はふわふわとそのあとについていくことしかできなかった。
「ついた」
「え、まだここでは……」
「いいのよここで。さあ亜里沙ちゃん。扉を開けてくれるかしら?」
「は、はい」 - 156 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 22:36:48.04 ID:Ot15Y1xC.net
- 亜里沙が扉を開けて、希とにこに運ばれ、私は中に入っていく。
未練はある。亜里沙を残して逝くこと。μ’sのみんなと友達になれなかったこと。
でも、仕方がない。そういうものだ。
私はどこか清々しい思いで、静かに目を閉じる……。
「絵里ちゃん、お誕生日おめでとうーっ!」
扉の先には、みんながいた。 - 157 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 22:37:23.10 ID:Ot15Y1xC.net
- 穂乃果。海未。ことり。真姫。凛。花陽。みんなが笑顔で叫ぶ。「お誕生日おめでとう」
私は希とにこによって部屋の中心に運ばれる。
とてもにぎやかで、明るい病室だった。紙の飾りからなにからで、まるでパーティ会場のよう。
大弾幕には「祝 綾瀬絵里 18歳」。
クラッカーがパンパーンとなり、これまたにぎやかな格好をしたみんなが私を取り囲む。
目をまん丸にしているのは、私と亜里沙の二人だけ。
「あ、え? なんですかこれは」
「病院に無理言って用意したのよ。感謝してよねエリー」
「少し遅れてしまいましたが……お誕生日、おめでとうございます」
「ごめんね。本当はちゃんと当日にお祝いしたかったんだけど……」
どういうこと? どういうこと……?
どうしてみんなが……私の誕生日を祝ってくれるのよ……?
だってみんな……。 - 159 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 22:38:04.61 ID:Ot15Y1xC.net
- 「みんな待ってたんよ。えりち」
「みんなでここで準備しながら、あんたんとこに顔出してたってワケ」
みんな私のこと……邪魔者扱いしてたじゃない……家に入れてくれなかったじゃない……。
「ごめんね絵里ちゃん……その、あの日絵里ちゃんが来たとき……みんなで絵里ちゃんの誕生日会の準備をしてたの。
ずっとみんなで話してたんだ、絵里ちゃんに元気になって欲しいねって。それで……無理やり連れ出してお祝いするつもりだったの。
それが、準備終わる前に絵里ちゃんが来ちゃって……全然そんなこと想定してなかったから、その……」
「おみまいだって、にこと希がたまにお花とかもって顔だす程度だったけど、それもみんなで何度も行ったらよくないって。
できるだけ絵里が気持ちを整理できるような環境をつくってあげようってことだったのよ」
「もう! 明るく楽しくって話はどこ行ったの! 絵里ちゃんだってもうわかってるよ!
そんなことより、さあさあ、パーティ始めるにゃー!」
「みんなー! ご飯炊けたよー!」 - 161 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 22:39:35.88 ID:Ot15Y1xC.net
- なによそれ……なによそれ……。
なんだぁ……そっかぁ……そうだったんだ。
私……、嫌われてたんじゃなかったんだぁ……。
「こほん、では練習どおり行くよ! せーのっ」
――大好きだよ! 絵里ちゃん!
・・・・・ - 163 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 22:40:29.19 ID:Ot15Y1xC.net
- この時間は決して無駄なんかじゃなかった。
たぶん私は、この瞬間のために留まっていたんだ。
じゃなかったら、私は友達を信じないまま、裏切ったまま逝ってしまうところだったんだから。
――それからみんなは踊ったり、歌ったり、とにかく笑いに笑って……うん。わかった。
わかった。綺麗事でも、嘘っぱちでもなかった。
もっと早く気がつけていたら……なんて贅沢は言わない。
最後の最後に、私は幸せだった。
私は間違いなく、幸せものだった。 - 165 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 22:42:00.11 ID:Ot15Y1xC.net
- 時間が来た。
みんな私のために涙を流してくれた。
それはそれはひどい有様だった。
声が漏れて、咽び泣いて、拭いても拭いても涙がこぼれる。
上を向いても眼を覆っても涙がこぼれる。息も途切れ途切れ、崩れた顔で泣き叫ぶ。
今の私にはそれが本物にみえた。そして本物であると確証が持てた。
亜里沙に押されて私は部屋をあとにする。
さようなら希。
さようならにこ。
さようなら穂乃果。
さようなら海未。
さようならことり。
さようなら真姫。
さようなら凛。
さようなら花陽。
――ありがとう。 - 167 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 22:43:00.13 ID:Ot15Y1xC.net
- きっと知らずにいたほうがよかった?
そんな痛みを抱えながら、何にも言わず笑うんだ毎日。
忘れようと言い聞かせて、思い出を閉じ込めた。
でも。
ありふれた悲しみ、ありふれた痛みとこぼれそうな涙をこらえてみる星は、いつもより眩しく輝いて私を静かに照らす。
よき友に恵まれ、よき家族に恵まれ。
うん。私の人生、捨てたもんじゃなかった。
・・・・・ - 169 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 22:44:29.34 ID:Ot15Y1xC.net
- 亜里沙によって、私は最後の場所に運ばれる。
体がなくなったらこの私もきっと消えてしまうのだろう。そんな予感がある。
本当に、お別れなんだ。焼き付けなければ。かわいい妹の顔を。
「私は大丈夫だから。じゃあね。ゆっくり……おやすみお姉ちゃん」
笑った。かわいい笑顔だった。小さいころのままの無垢な笑顔。
亜里沙はいつも私について回った。それこそ金魚のふんのように私の後を追った。
走る私に追いつこうとまだおぼつかない足で必死についてきて、そして転ぶ。
そのたびに私は駆け寄って「大丈夫? 大丈夫?」。
亜里沙は泣き喚いて、私は途方に暮れた。
少し大きくなると、亜里沙は自分の意思で自由に走り回った。
あまりにも自由奔放なもので、危ないところに行かないように私は手をつないだ。
今度は並んで歩くようになった。 - 170 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 22:45:26.03 ID:Ot15Y1xC.net
- もう少し大きくなると、亜里沙も自分で危険の分別ができるようになった。私は安心して手を離した。
もう、あなたはあなたの好きにしていいのよ。
でも、亜里沙はやっぱり私の後をついてきた。走る私を追いかけてきた。
そして転ぶ。
私はまたおろおろと駆け寄って「大丈夫? 大丈夫?」。
でも今度は亜里沙は自分の足で立ち上がり、笑ってこう言う。「大丈夫」。
あんなに小さかった亜里沙が、いつの間にかこんなにも強くなっていた。
転んだ私を奮い立たせるほどに、強くなった。
亜里沙は笑ったのだ。もう大丈夫。と。
だから私は安心して歩みを止める。
「さあ、いきなさい。私の分まで」
眠ろうか。月がやがて白んで、穏やかな夢を胸に落とす――。
歩みを続ける妹の背中を眺めながら、私は満足して、今度こそゆっくりと眼を閉じる。 - 172 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 22:46:25.35 ID:Ot15Y1xC.net
- さようなら。
- 175 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 22:48:42.43 ID:Ot15Y1xC.net
- つづく。
- 191 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 23:28:06.00 ID:Ot15Y1xC.net
- これにて私の経験した不思議なお話はおしまい!
自分で話し始めといてなんなんだけど、このつづきはあんまりお話したくないのよね。
なんていうか……ね?
それでも……それでも私の行く末を聞きたいというならば……いいわ。話してあげましょう。
……。
後悔しないでよ。 - 192 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 23:29:11.62 ID:Ot15Y1xC.net
- どうして私が引きこもったか。
「そんなんでラブライブに出場できるの!? はいあと10セット!」
「ええええー!」
「いやならいいのよ? 私は頼まれてやってるだけだし」
「絵里先輩! μ'sに入ってください」
「私は反対」
「そうよ。潰されかねないわ」
「オープンキャンパスまでになんとかしないと……」
「えりち、そんなつまらんスピーチじゃ入学希望者は増えないんと違う?」
なんとかしなきゃいけないんだからしょうがないじゃない……。
「廃校は再検討だってさー」
「μ'sのおかげだね!」
「生徒会? はは。μ'sでしょ?」
「先輩禁止、なんてどうかしら」
「えー急に入ってきていきなりはどうなのかにゃー」
「ちょっと凛ちゃん!」
「しょうがないにゃー。絵里ちゃ……」
「その通りよね。私は入れてもらった身だもの。出過ぎた真似しちゃった。ごめんなさい」
「いや……」
なんでよ……なんでよ、なんでよなんでよなんでよなんでよなんでよ!
「エリー……その、頼みがあるの。こんなのあなたにしか言えなくて……」
「どうしたの?」
「パンツ……忘れちゃった」
「は?」 - 193 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 23:30:50.44 ID:Ot15Y1xC.net
- 「だからなんとかパンツを……」
誰かの為だった。
「何してるの絵里ちゃん!?」
「あ……これは……待って穂乃果」
「そ、それ……私の……パンツ……」
それから私は学校に行かなくなった。
・・・・・ - 194 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 23:35:32.56 ID:Ot15Y1xC.net
- ・・・・・
「では臓器摘出をはじめます」
私の体にメスが入れられる。
ダメ……もう見てられない。絶対やばい……絶対……あ、ああ……あああ!
「いったあああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!」
”私”は叫ぶ。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアえええええええええええ!?」
・・・・・ - 195 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 23:37:15.19 ID:Ot15Y1xC.net
- ・・・・・
ずいぶん長い一人語りになっちゃったけど、そういうわけで私は今ここいるってわけよ。
泣き過ぎてしおっしおになってるみんなの前にね。
感動ぶち壊しか。
「は?」
呆然とするμ’sと亜里沙。
……でしょうね。そうなるでしょうね。
私だってまだ切られたところ痛いんだから。
「え、えりち……?」
「絵里ちゃんなの……!?」
「ええ。私よ。絢瀬絵里。かしこいかわいいエリーチカ」
「おねぇ……」
「わああああああああ!」
「どうして!? 全然意味ワカンナイけど……けど……」
「えりちゃ……ん……う、ああ……ああ!」
ただいま。 - 196 : 名無しで叶える物語(北陸地方)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 23:38:20.40 ID:rD19/xCY.net
-
絵里はよかった
最期の時まで死んでたのでなくて
最期の時まで生きていたことに気付けて
よかった
前半のどこかふざけ調子な態度だったのも
生きることへの諦観に見えた
もう少し、あともう少しだったんだ
あとほんの少し早ければ
生きながら、生きていくことができたんだ
でも、いまはもういい
最期の瞬間まで
生きていられたのだから
このSSからなにかを教えてもらいながら
自分もこれから生きてゆきたい - 197 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 23:38:23.83 ID:Ot15Y1xC.net
- ・・・・・
「でも……ひぐっ……どうして?」
「どうしても、やらなくてはいけないことを思い出したの」
「やらなきゃいけないこと……?」
「はい穂乃果……これ」
私はずっと、右手にそれを握っていたのだ。
布団に隠れて見えなかった。でも、私はそれを風に飛ばされても、川に流されても、離さなかったのだ。
「これ……私のパンツ……」
「あの日から……学校に行かなくなって、ずっと返さなくて……」
「絵里ちゃん……」
「ごめんなさい!」
「待って穂乃果! それはエリーのせいじゃないの私が……」
「いいんだよ。そんなこと」
「穂乃果……許してくれるの……?」
「当たり前だよ……生きててよかった……絵里ちゃん」 - 198 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 23:39:16.64 ID:Ot15Y1xC.net
- 私はパンツと穂乃果と熱い抱擁を交わした。
ああ、そうだ。人のぬくもりはこんなにも温かくて……。
パンツのぬくもりは……今はおいておこう……。 - 199 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 23:40:26.67 ID:Ot15Y1xC.net
- ・・・・・
「エリー、どうして? 私がパンツを忘れたから調達して欲しいってお願いしたからでしょ?」
「いいの。いいのよ。だって今が最高に幸せなんだから。もういいの」
「エリー……!」
「今日だって履くの忘れたんでしょ?」
「うぇ……? ななな、なんで知ってるのよ!?」
「希だって、私の前で鼻水垂らして泣くし、そうそうにこ! 私のこと絵里ちゃんって呼んでたわね!
それから海未、散々愚痴を言っていたわね。ハチャメチャ集団がどうとか! それからことりはちょっと中二病っぽかったり……。
凛も私におびえちゃって! それから花陽はその体系、実は……」
「ウををををを!?」
「……!?」
「ま、まさか……全部聞こえてたの……」
「いや、まあその……」
「ぎにゃあああああああああああ!」
それからみんなに死ぬほどボコボコにされた私でした。
終劇 - 200 : 名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 23:41:14.32 ID:Ot15Y1xC.net
- 何度死んだって、復活すればいいのよ。
どんなときもがんばらねーばねばねばぎぶあぷ。
ハッピーエンドね? - 201 : 名無しで叶える物語(あゆ)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 23:41:42.44 ID:NS4gBaAC.net
- 乙
感動した - 209 : 名無しで叶える物語(雨が降り注ぐ世界)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 23:44:42.51 ID:C0gyicYP.net
- 乙!
よかったよ……生きてて……

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