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にこ「花陽!早くしなさい!」

1 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 06:56:04.29 ID:dAcAqXO4.net
花陽「う、うん!ちょっと待って、メイクがぁ~!」

にこ「移動中にしなさいよそんなの!もうすぐ出番よ!」

花陽「寝ちゃったのぉ!ごめんね……すぐ終わるから!」

にこ「あー、もう、それでいいわよ!ほらっ!いくわよ!」

花陽「わっ、わっ、わっ」




3 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 07:02:49.26 ID:dAcAqXO4.net
「今日のゲストは矢澤にこさんと小泉はなよさんです~」

にこ「にっこにっこに~~!日本のみなさんこんにちは~~!笑顔届ける矢澤にこにこに~」

花陽「小泉花陽です……宜しくお願いします」

「お二人は『smile and flower』として活動をされていて、先月、オリコンで初登場1位を獲得した今最も熱いアイドルです」

にこ「ありがとうございます~~」

花陽「うう、恐縮です」

「では、お二人の活動について……今日は深く掘り下げてお話を伺いたいと思います」

にこ「はい、なんでもどうぞ~~」


4 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 07:09:12.74 ID:dAcAqXO4.net
「お二人が知り合ったのはいつですか?」

花陽「えっと、あの、知ってる人……いますか?私とにこちゃんは、高校の頃の……」

にこ「そう、μ'sですμ's、そこが初めてですね~」

「ああ、μ's!もちろん覚えていますよ、解散してしまった今でもファンが根強くいますねぇ」

花陽「私たちの今の人気は……その、μ'sの遺産を頂いたような形で……えっと」

にこ「あの頃があってこそ、今のにこたちが居るんです~」

「成る程、当時はどのような関係でしたか?」

花陽「にこちゃんはずっと憧れの先輩でした、アイドルにかける情熱と美学が凄くて……」

にこ「花陽は2コ歳下だけど、よく遊びましたね、なんだか一緒にいると落ち着くんです」

「ふむふむ、その頃から仲は良かったと」


5 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 07:17:06.54 ID:dAcAqXO4.net
「高校卒業後、二人がユニットを組んだきっかけなどは何かありますか?」

にこ「きっかけと言うと……花陽のアイドルへの情熱はメンバーの中でも一番凄くて、にこはそこに惹かれちゃいました~」

花陽「にこちゃんが一緒にやらない?って声を掛けてくれたのがきっかけです……今でも感謝してもしきれません……はい……」

にこ「にこも、最初は一人でやっていける自信が無かったんですけど、花陽と二人なら!と思うと勇気が出てきましたね~」

「お互い無くてはならない存在になったと、いやぁ、素晴らしいですね」

花陽「本当に、幸運でした……はい……」

「では、次の質問です、お二人が今、熱中しているものは……」


6 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 07:21:11.49 ID:dAcAqXO4.net
楽屋

にこ「はぁ~~……っ!疲れたぁ」

花陽「お疲れさま、にこちゃん」

にこ「お疲れ。今日も緊張してたわね」

花陽「歌ってる時はいいんだけど……トークは慣れてないから……」

にこ「まぁ、そこも花陽の良いところなのよ……って、あっ!」

花陽「?」

にこ「襟に米粒付いてるじゃないの!ああ!全国放送なのに!」

花陽「ぴゃあ!……ほ、本当だ……」

にこ「ああ……ネットで思いっきりネタにされてるわね」

花陽「うう……恥ずかしい」

にこ「もーちょっと気をつけなさいよね!100万人以上見てるんだから!」

花陽「はぁい……」


7 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 07:24:07.51 ID:dAcAqXO4.net
にこ「明日は久々のオフね、花陽はどうするの?」

花陽「私は、凛ちゃんと真姫ちゃんに会うんだ、久しぶりに!」

にこ「へぇ、良いじゃない、私も行きたいわね」

花陽「えっ、にこちゃんも来る!?」

にこ「いや、やっぱりやめとく。しっかり休んでおくわ」

花陽「そっかぁ……」

にこ「よろしく言っといてね。それじゃまた明後日」

花陽「うん、ばいばい」


8 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 07:26:50.36 ID:dAcAqXO4.net
「小泉さん、今日は自宅の方に戻りますか?」

花陽「あっ、はい!」

「では、車を出しますね、準備が出来たらお声をお掛けください」

花陽「いつもすみません……私なんかに……」

「いえいえ、花陽さんは名実ともに今は大スターですから……このくらい、お気になさらずに……」

花陽「は、はい……ありがとうございます」


9 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 07:34:46.49 ID:dAcAqXO4.net
私とにこちゃんは大学に在学中、二人でアイドルを始めました

きっかけは、にこちゃんが突然誘って来てくれたからです

私は、にこちゃんがあくまでスクールアイドルに拘っていて、本職のアイドルを目指すとは思わなかったので、驚きました

それよりも驚いたのが、私を誘ってくれたことでした

希ちゃんや、絵里ちゃんや、穂乃果ちゃんや……その中から私を選んでくれたことが本当に嬉しかったんです

だから、二つ返事で了承しました

ユニット名は『smile and flower』……まぁ、『にこぱな』を英訳しただけの単純なものですが、とても気に入っています

μ's以降、事務所からのスカウトは絶えなかったので、滑り出しは順調でした

そして、その先も……余りに順調すぎました

デビューシングルから驚くほどの売り上げを飛ばし……2ndシングルではオリコン1位を獲得。

今ではメディア露出も忙しくて……ようやく取れた1日の休みなのでした


11 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 07:38:37.69 ID:dAcAqXO4.net
花陽「二人とも、久しぶりだね」

凛「うわああ!かよちん!」ダキッ

花陽「あはは、凛ちゃん~!」

真姫「花陽、元気そうで良かったわ」

花陽「えへへ……本当はちょっぴりフラフラだけどね……」

凛「無理しちゃダメだよ?疲れたらいつでも凛の家に転がり込んで来ていいんだよ!」

真姫「……まぁ、私もいいわよ、いつでも!」

花陽「うう、ありがとう二人とも」


12 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 07:42:28.50 ID:dAcAqXO4.net
凛「にこちゃんも元気?」

花陽「うん、凄いよ、にこちゃん……本当に、ずっと笑顔で……」

真姫「まぁ、昔よりはキャラ作るの上手くなってるわね」

凛「あはは」

花陽「私なんか、まだモジモジしちゃってて……足引っ張ってないかなぁって……いつも心配で……」

真姫「何言ってんのよ、二人で一つでしょ?お互い助け合ってるんだから、そんなこと気にしちゃダメよ」

凛「かよちんといると笑顔になれるなんて当たり前だよ、うんうん」

花陽「……そうかなぁ」


14 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 07:48:13.58 ID:dAcAqXO4.net
真姫「あっ……そうだ……ちょっと恥ずかしんだけど……」

花陽「?」

真姫「友達が、花陽のサインが欲しいってずっと言ってて……頼んでみるって言ってたから……」

花陽「えっ、そんな、私でいいならいくらでも書くよ!」

真姫「……本当に、いくらでもいいの?」ドサッ

花陽「……まぁ、そのくらいの量なら……」

凛「あっ、実は凛も……」ドサッ

花陽「……二人の頼みなら断れないよぉ、頑張るね」

凛「うう、ごめんね、かよちん!」

真姫「そう、こんなに忙しいのに……」

花陽「本当に大丈夫だよっ、書き慣れてきたから、全然平気!」

凛「こんどラーメンおごるね……」

花陽「あはは……」


15 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 07:52:59.21 ID:dAcAqXO4.net
真姫「……体は大丈夫なの?いつ見てもテレビに映ってるから……」

花陽「今はちょっぴり無理してるかもしれないけど……にこちゃんも、今がピークだから頑張って乗り切ろうって……」

凛「ピークっていっても、ますます人気は上がってるような気がするんだけど……」

花陽「だ、大丈夫だよ、自分の身体のことはよく分かってるから……危なくなったらすぐに……」

真姫「……ちゃんと眠ってる?」

花陽「……あんまり、かなぁ」

真姫「普段はどのくらい寝てるの?」

花陽「……4時間くらい」

凛「ええっ、短いよ!」

花陽「やっぱりそうかなぁ……」

真姫「本当に、気をつけてね……疲労のツケは一気に回ってくるから……」

花陽「……うん」


16 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 07:55:01.11 ID:dAcAqXO4.net
花陽「……今日は二人ともありがとう!」

凛「凛もかよちん充電出来て幸せ~」

真姫「……次、いつ会えるかしら」

花陽「ううん……ちょっとわからないかなぁ」

凛「お布団二つ用意して待ってるよー!」

真姫「それじゃあ……頑張ってね。応援してるわ、ずっと……」

花陽「うん、ばいばい……」


17 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 07:59:41.64 ID:dAcAqXO4.net
今日はたっぷり寝たかったけど、明日は5時にテレビ局に入らなくちゃいけないので、6時間も寝れそうにないです

大変だけど、憧れのお仕事で忙しくなれるなんて、とても幸せです

小さい頃の夢を叶えてくれたμ'sのみんな……そしてにこちゃんには、本当に感謝しきれないほどです

帰り道にもたくさんの人に見つかって、サインをしたり、写真を撮られたりしました

目立つのは苦手だったけど、ちょっぴり克服できてきたような気がします

明日もにこちゃんと頑張ろうと思います

おやすみなさい


18 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 08:03:50.28 ID:dAcAqXO4.net
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私と花陽は憧れのアイドルになった。

日本人なら誰でも知ってる、国民的アイドルに。

たくさんのファンが出来て、町中は私たちの曲で溢れかえるようになった。

終日スケジュールは満杯、歴代記録を次々と上塗りしていく毎日……

とても充実した幸せな日々だった

本当に、幸せな日々だった


20 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 08:06:46.41 ID:dAcAqXO4.net
……けれど、私には大きな悩みがあった

それは多忙極める日程表から来る疲労でも

まして、有名になり過ぎたことの悩みでも無かった

本当の悩みはたった一つ

花陽を誘ったことだった

花陽と二人で、この仕事を始めたことだった


21 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 08:10:09.29 ID:dAcAqXO4.net
私は一人で闘うことから逃げた

どうしても、勇気が出なかった

μ'sのときも、みんながいたからあんなにも遠い世界に行けた

私一人の力がどれだけ弱いかなんて

あの、高校一年生の頃

私の側からみんなが離れていった頃から知っていた

そのことを思い出さないように、思い出さないようにと

ずっと、傷口を塗り固めて、痛みに耐えて、ここまで歩き続けてきた


22 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 08:15:46.48 ID:dAcAqXO4.net
花陽を誘ったのは、私があの子に本当の才能があると思ったからだった

一人で過酷な芸能界に飛び込む勇気が出せなくて

花陽の力を借りるしか、あのときはどうしようも無かった

私は今までずっと、アイドルとしての矢澤にこと、プライベートの矢澤にこを使い分けてきた

そうすることが、プロとして当然だと信じていたし、今だって諦めきれていない

でも、花陽は違った

あの子は、自分を偽らなくても、普段通りの自分で舞台に立ち、みんなを笑顔をすることが出来た

あの子は、一切の打算も無しに、ただ自分らしく振舞うだけでたくさんのお客さんと仲良くなれた

私はそれが本当に羨ましかった


23 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 08:23:00.33 ID:dAcAqXO4.net
私はテレビカメラを通すとき、アイドルとしての『矢澤にこ』を必死に作りあげて来た

みんな、『矢澤にこ』を好きになってくれた

いつも笑顔で、純粋で、汚れも知らない天使のような『矢澤にこ』を愛してくれた

そんな人間がこの世にいるのなら、私だって彼女のファンになりたい

アイドルとは、偶像。

信仰される、神像や仏像のような存在。

私は、その偶像を汗だくになってずっと彫り続けていた。

やっとのことで出来上がった完璧アイドル『矢澤にこ』のことを、みんな大好きになってくれた

けれど、花陽は、ただ、何もせずにステージに立つだけだった

何も考えずに、立っているだけで、彼女自身が偶像になれた

私が偽物の神様を作る彫刻家なら、彼女は本物の神様だったのかもしれなかった


24 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 08:27:23.49 ID:dAcAqXO4.net
『矢澤にこ』は作者である私の手を離れて、無限に膨らんでいった

誰に対しても優しくて、決して悪口は言わず、真面目で、努力家で、正義感が強くて、かわいくて、笑顔が絶えなくて……

そんな女性に追いつこうとして、自分を偽り続けることに無理があるのは知っていた

そしてそろそろ、限界が来ることも知っていた

もう、これ以上は私には続けられそうにない

ここまで来られたのは、全部、花陽のおかげだった

それなのに、ずっと二人の手柄にし続けることが

もう、私には気が狂いそうなくらい怖かったのだった


25 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 08:29:58.63 ID:dAcAqXO4.net
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花陽「にこちゃん、いよいよ新曲発表だね!」

にこ「……ん?あ、ああ、そうね!張り切っていくわよ!」

花陽「あわわ……また、手が震えて……」

にこ「しっかりしなさいよね、いつも通りやるだけでしょ?」

花陽「う、うん」

にこ「よし、それじゃあ行くわよ、全力で!」

花陽「……うん!」


28 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 08:35:10.65 ID:dAcAqXO4.net
にこ「みんなー!今日はにこにーに会いに来てくれて、ありがと~~っ!新曲、一本、持ってきたよぉ~~っ!」

ワァーーーッ!ワーッ!ニコニー!!ニコチャーン!!

花陽「こ、こんなに沢山の人数……ありがとうございます、一生懸命歌います、よろしくお願いしますっ」

ワァーーーッ!オオオオオッ!ハナヨチャーン!!

にこ「ではどうぞ、新曲~~っ!『ラブ・アロー・シュート』ッ!!」


30 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 08:39:37.78 ID:dAcAqXO4.net
穂乃果「おおーっ!?テレビ見て!?にこぱなの新曲だよ海未ちゃん!」

海未「…………」

穂乃果「ラブアローシュートだって!ね!ね!あの曲名、海未ちゃんが考えたんでしょ!?」

海未「……まぁ、にこに幾つか案を出したのは私ですけど……まさかコレになるとは……」

穂乃果「いいなぁー、すっごくいい曲だなぁ、ほぇ~~、はぁ~……」

海未「……そうですね、なんだか手の届かない存在になってしまった気がします」

穂乃果「こんなに凄い二人と一緒に高校時代を過ごせたなんて……ああ~~……人生最高の自慢だよ……」

海未「ふふふ、確かに、誇らしいです」


31 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 08:44:41.28 ID:dAcAqXO4.net
ことり「おやつ持って来たよ~~、さ、さ、鑑賞会しよっ!」

穂乃果「ちゃんとDVD持ってきた?」

ことり「もちろん!ほら、全ライブ揃ってるよ!」

海未「わざわざ買ったんですか?……にこと花陽はいつもCDやDVDが出来たら送ってくれるじゃないですか……」

穂乃果「チッチッチ……海未ちゃん、それはそれだよ。良いものにはお金を払いたくなっちゃうんだよね……どうしても」

ことり「なんだか、私たちだけ特別扱いってのもなんだし……」

海未「1人のファンとして応援ですか……なるほど……」

穂乃果「よーし、今日は6時間ぶっ続せでにこぱな漬けだよ!」

ことり「私は何時間でも見られるよ~~」

海未「あはは……目を悪くしないように気をつけましょうね」


32 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 08:47:44.67 ID:dAcAqXO4.net
にこ「みんなありがと~~!にこにー、こんな沢山の人に観てもらって、ほ~~んとに幸せっ!」

花陽「皆さん、最後までお聴きいただいてありがとうございました……今日は暑かったので、水分補給を忘れないようにして下さいね……」

にこ「それじゃあまた会いましょう~~、さよならっ!」

花陽「さようなら~~」

にこ「…………」

花陽「…………」


33 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 08:52:44.68 ID:dAcAqXO4.net
にこ「今日もお疲れ様、花陽」

花陽「うん、ありがとう、にこちゃんもお疲れさま」

にこ「良かったわよ、いつもより元気に歌えてたわ」

花陽「えへへ、そうかな?昨日久しぶりに凛ちゃんと真姫ちゃんに会えたからかも……」

にこ「へぇ、どんな話したの?」

花陽「色々喋ったけど、とにかく体調のこと、心配されちゃって……」

にこ「ハードスケジュールよね、確かに……ちょっとだけ、仕事減らそうかしら」

花陽「だ、大丈夫だよ!私は今のスケジュールでも……」

にこ「いや私が、もう……」

花陽「……にこちゃん?」

にこ「……何でもないわ、今まで通りね!うん!これからも張り切っていくわよ!」

花陽「うん、頑張ろうね!」


51 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 19:24:20.50 ID:dAcAqXO4.net
にこちゃんは本当に凄いんです

私は今だってずっとにこちゃんに憧れ続けているんです

ステージに立つと、私がいつも見ているにこちゃんは何かが乗り移ったように雰囲気が変わって……

そして、正真正銘、本物のスーパーアイドルになって、みんなの前で踊るんです

にこちゃんは昔から言っていました

『アイドルっていうのは笑顔を見せる仕事じゃない、笑顔にさせる仕事なの』と。

にこちゃんは、お客さんみんなの幸せをのため、何から何まで全力で演じきることができるんです

私だってプロなのに、にこちゃんを見ると、かなわないや、と思ってちょっとしょんぼりしてしまいます


52 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 19:25:58.59 ID:dAcAqXO4.net
笑顔にさせる仕事

私は、自分が幸せになることばかり考えていたのかもしれません

あの日、にこちゃんに誘われた時も、自分を認めてくれて嬉しかった……ただそれだけの気持ちだったのかもしれません

お仕事として、こんなにもたくさんのことを引き受ける覚悟が私にはちょっぴり足りなかったかもしれません

舞台の上、カメラの前ではみんな役者さんです

私たちは自分の役を演じきらなきゃいけないのに、いつまでたってもオドオドしてしまいます

にこちゃんは、私は自然体で良い、それが私の良いところだとずっと励ましてくれています

でも、どうしても自分を変えたいんです

自分で、自分が大好きなアイドルになってみたいんです

ずっと、背中を追いかけ続けているんです


53 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 19:27:06.27 ID:dAcAqXO4.net
花陽「凛ちゃん……今日は、ちょっと、泊めて貰っても……良いかなぁ」

凛「え!やったぁ!おいでおいで!」

花陽「うん、突然でごめんね……ちょっぴり、疲れちゃって……」

凛「いつ来ても大丈夫って言ったから、大丈夫だよ、ささ、あがってあがって」

花陽「………おじゃまします」

凛「ほら、お布団も敷いてあるから、ゆっくり休んでね!」

ドサッ

花陽「……ありがとう……おやすみなさい」

凛「……かよちん?」

花陽「……」

凛「あれ?」

花陽「すぅ、すぅ……」

凛「寝ちゃった……」

凛「……」

凛「ううん、心配だよ……」


54 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 19:27:49.08 ID:dAcAqXO4.net
凛「もしもし、にこちゃん?ごめんね、忙しいのに」

にこ「あ、凛?久しぶりね!調子はどう?元気かしら」

凛「凛はバカほど元気だよ!……でも、かよちんが」

にこ「何?花陽がどうしたの?」

凛「かよちん、突然凛の家に来て、泊めてって言って来て……」

にこ「へぇ、それじゃ今、横に花陽がいるの?」

凛「……玄関扉開けて、靴を脱いだら、かよちん、凛の方にもたれかかってきて、そのまま寝ちゃった」

にこ「……そのまま、ね」

凛「布団まで運んで、今はぐっすり眠ってるんだけど……」

にこ「そうなの、ありがとうね凛。迷惑かけちゃって」

凛「凛にやれることならなんでもしたいんだけど、でも……」

にこ「……」

凛「かよちん、このままじゃ……」

にこ「はぁ、そうね……」

凛「……ごめんね、お仕事に口出しするなんて、すごく失礼なことなんだけど……」


55 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 19:28:37.01 ID:dAcAqXO4.net
にこ「ふふふ……」

凛「あー、何笑ってるの!」

にこ「いや、やっぱり二人とも仲良いんだな、と思ったの」

凛「……かよちんはずっと大切な友達だよ」

にこ「そうね、あんたの方が付き合い長いものね。わかったわ」

凛「……」

にこ「ちょっぴり、今よりスケジュールを緩くして貰うように事務所に言ってみるわ」

凛「うん……お願い、にこちゃん」

にこ「大丈夫、私を誰だと思ってるの?」

凛「スーパーアイドル、矢澤にこちゃんだね」

にこ「その通り、ま、任せておきなさい」

凛「ありがとう、にこちゃん」

にこ「それじゃ、また日が空いたら会いましょ」

凛「うん、バイバイ」


56 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 19:30:05.14 ID:dAcAqXO4.net
――――――――――――――――――――――――――――――――――

花陽は元々、それほど体力のある子じゃなかった

だから、そろそろかな、と薄々気はついていた

それでも、まだなんとかなる気がしていた

仕事をしていないと、一人の時間が増えると、それだけ悩む時間も増えてしまう気がしたから

私は不安を紛らわそうと忙しく振舞っていたのかもしれなかった


57 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 19:31:20.28 ID:dAcAqXO4.net
宇宙No. 1アイドル、矢澤にこは、いつでも完璧であり続けたかった

ちょっぴりドジなところもあるけど、それだって理想の一部だった

はじめは、スクールアイドルの気分を引きずって、この世界に突入した

自分で言うのもなんだけど、そこそこ上手くやれていたと思う

猫を被る訳じゃないけど、アイドルの自分を演じきるのは必要最低限の礼儀で、服装を整えるのと同じ次元の話だと思っていた

けれど、次第にスーパーアイドルが私の生活を蝕んできた


58 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 19:31:52.14 ID:dAcAqXO4.net
一日は24時間。睡眠時間を4時間として、起きている時間は20時間ほど

少なくともこのうち、12時間以上は私はスーパーアイドルだった

移動や準備の時間を含めると、もっとその時間は伸びた

つまり、今の生活の半分以上は、私が私でない時間だったのだ

本当の矢澤にこは、花陽と楽屋や移動中に喋っているとき、あるいは就寝の前後にしかもはや存在しなかった


59 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 19:32:15.26 ID:dAcAqXO4.net
だんだん、自分が何者で、何をしているのかわからなくなってきた

浮世離れした生活と、空前絶後の大ヒットによって、周りの全てが変わってしまった

ふと、油断すると、全部を投げ出して遠いところに逃げ出してしまいたくなりそうだった

それでも、今までずっと歩き続けれれたのは、やっぱり花陽のおかげだったのだ

あの子を放り出して私だけ尻尾を巻いて逃げ出す訳にはいかなかった


60 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 19:32:55.11 ID:dAcAqXO4.net
本当のアイドルとは何か、今は一度時間を置いて考えてみたくなった

いや、アイドルである以前に、一人の人間として……

仮面の重みが、長い年を経てようやく感じられてきた

私は今、楽しいのだろうか

もちろん、楽しい部分がとても大きいけど、このままで良いのか

その答えを見つける前に、また次のステージが始まり、すぐに振り出しに戻されるのだった

今はとりあえず、無心で……今にしかできないことを、楽しまなくちゃいけないと思った

けれど、もう、すぐそこに終わりが見えているのかもしれなかった

スケジュールは埋まっていても、本当に次の日に何が起こるかなんて分かっている人は誰もいないのだから


61 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 19:33:46.58 ID:dAcAqXO4.net
――――――――――――――――――――――――――――




にこ「……今のままじゃ、花陽も私も体がもちません、少しだけ余裕を作って貰えませんか」

「そうは言われても……少なくとも向こう一ヶ月はキャンセル出来ない用事で埋まってるから、休みを取れるとしても随分先の話になるよ?」

にこ「向こう一ヶ月?それじゃダメなんですよ、花陽は昨日、家にも帰る元気が無かったんです」

「しかし、引き受けたのは君達のほうじゃないか……契約があるんだ、動かせない予定ってものが……」

にこ「……出来る限りでお願いします、一度潰れてしまうと、その先がもう無くなります」

「……分かった、最善は尽くそう」

にこ「お願いします」


62 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 19:34:24.13 ID:dAcAqXO4.net
花陽「……どうだった?」

にこ「……あんまり良い返事じゃ無かったわね」

花陽「……そっかぁ」

にこ「終日の休みは取れなくても、明日とか明々後日の午前中は少し余裕があるわ、たっぷり休みなさい」

花陽「ごめんね、にこちゃん、私が……」

にこ「別に、私の問題でもあるの、気にしないで」

花陽「……うん」

にこ「それにしても、ちょっと張り切り過ぎたかも知れないわね、とりあえずこの一ヶ月を乗り切れば契約も更新されるし、頑張りましょ」

花陽「うん」


63 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 19:36:02.30 ID:dAcAqXO4.net
にこ「それじゃ、晩御飯、行くわよ」

花陽「え、一緒に?」

にこ「睡眠も大切だけど、良いもの食べないと元気出ないわよ」

花陽「どこに行くの?」

にこ「花陽が選んでいいわ」

花陽「えーっと、えーっと……あっ、じゃあ……」


64 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 19:36:39.21 ID:dAcAqXO4.net
花陽「ああ~~ッ!美味しいです!久しぶりです~~~!」

にこ「ほんと、好きよね」

花陽「GOHAN-YAの品質は素晴らしいんですっ、まず研ぎ方から違います、アリウロン層残留物が丁寧に取り除かれていて……」

にこ「はいはい、好きなだけ食べなさい」

花陽「にこちゃんは食べないの?」

にこ「ガツガツ食べてるあんたを見るだけでお腹いっぱいよ」

花陽「……食欲、無いの?」

にこ「元々少食なの、大丈夫、無理して食べるほうが体に悪いから」

花陽「……はあ、とりあえず、幸せ……スタジオのお弁当のお米はそれはそれは質素なもので……」

にこ「はいはい……」


65 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 19:36:59.29 ID:dAcAqXO4.net
花陽「ふぅ……ごちそうさまでした」

にこ「はい、ごちそうさま」

花陽「ああ……幸せ……」

にこ「それじゃ、明日は10時からだからね」

花陽「分かった、また明日、おやすみなさい」

にこ「おやすみ、しっかり寝ときなさいよ」

花陽「うん」


66 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 19:37:34.60 ID:dAcAqXO4.net
にこ「………」

にこ「……明日は10時から、ね」

にこ「それじゃ、まだ余裕はあるわね、ちょっぴり寄って行こうかしら」


カランカラン



希「はーい、いらっしゃ……にこっち!?」

にこ「しーっ!お忍びよ、お忍び!」

希「来るんやったら連絡してよ、もー!絵里ちも呼べたのに!」

にこ「私だって来る予定無かったのよ、ちょうど帰り道だったから……」

希「まぁ、とりあえず座って、ゆっくり話そ?」

にこ「はいはい……」


67 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 19:38:19.25 ID:dAcAqXO4.net
希は国道沿いの複合ビルの一階で、小さなカフェのオーナーをしている

といっても、ホンジュラスだの、ザンビアだのの国の、怪しげな民族楽器や小物がゴロゴロしてる雑貨屋のような店でもある

その中に私と花陽のファングッズも幾つか混ざっていて、いよいよ何の店か分からなくなっている

けれど、なんとも言えず心地の良い空間だったので、ちょっと前まではよく通っていたものだった


68 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 19:39:09.06 ID:dAcAqXO4.net
希「調子はどう?」

にこ「バリバリ元気よ」

希「嘘はあかんよ?にこっちはバリバリ元気ならバリバリ仕事してて、こんな店来ないやろ?」

にこ「こんな店っていっても、随分繁盛してるみたいだけど」

希「それは、にこっちと花陽ちゃんのおかげでもあるんよ」

にこ「あーはいはい、貢献できて何よりだわ」

希「ふふ、変わらんなぁ、にこっちは」

にこ「……変わったわよ、昔とは」

希「そうかな?テレビでいつ見ても、いつも通りのにこっちやけど?」

にこ「まぁ、そう見えるなら大成功ってことかしら……」


69 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 19:40:08.73 ID:dAcAqXO4.net
希「はい、コーヒー」

にこ「砂糖ちょうだい」

希「苦いのまだ苦手?」

にこ「甘い方が好きなだけ」

希「にこっち、顔色良くない……やっぱり疲れてる?カフェイン摂ったら眠られへんようになるよ」

にこ「心配してくれてありがと、でもそのあたりはちゃんと管理してるから大丈夫よ」

希「強がったらあかんよ?うちくらいには本音を喋ってくれても……」


70 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 19:40:40.87 ID:dAcAqXO4.net
にこ「……じゃあ、本音を言うわ、正直キツいわね」

希「やっぱり」

にこ「私はまだまだ動けるけど、花陽が倒れそうなの」

希「……ちゃんと面倒みてあげてな?」

にこ「もちろん、そのつもりよ」

希「にこっちはなんとも無いん?」

にこ「頑丈さが取り柄だからね」

希「……本当に?」

にこ「……」

希「にこっち、時々、寂しい顔してる……直接会ったら余計わかる。何か悩んでてて……」


71 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 19:41:03.71 ID:dAcAqXO4.net
にこ「なにそれ、占い?カードでも引いてみる?」

希「引かなくてもわかるんよ、体が大丈夫でも、心が疲れてる」

にこ「そんな訳ないでしょ、夢が叶ったんだから」

希「それは、おめでとう……でも、本当に何もないん?」

にこ「……」

希「……ごめん、嫌なら……」

にこ「私」

希「……?」

にこ「この仕事、向いてないかも」

希「……」


72 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 19:42:14.77 ID:dAcAqXO4.net
希「初めて聞いた、にこっちがそんなこと言うの」

にこ「別に、本気で思ってる訳じゃないわよ、たまーに頭の中をかすめる位の小さな悩みだから」

希「……そんな言葉、聞きたくないよ」

にこ「……」

希「お願いやから、自信持って。にこっちは本当に凄いアイドルなんやから……」

にこ「凄いアイドル……あはは……確かに、凄いわね、空前絶後の爆発的大ヒット……」

希「そんなんじゃない!……にこっちの凄さはそんなのと関係ない!」

にこ「……じゃあ、なんなのよ」

希「売れるとか売れないとか……そんなのと無関係に、アイドルやってる自分に誇りを持てる、それが凄いんよ……」

にこ「……えらく褒めてくれるわね」

希「本人じゃわからないこともあるから、ウチが今この場で全部言ってあげたい」

にこ「ふうん……」

希「それで、何か力になれるなら」

にこ「……」

希「どうかな?」


73 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 19:42:41.96 ID:dAcAqXO4.net
にこ「今、この場にスーパーアイドルはいないわ」

希「……」

にこ「あれは、確かに私だけど、ステージの上、カメラの前、ファンの前だけにいる私」

にこ「もちろん、誰よりも輝こうとしてるし、誰にも負けない自信だってある……」

にこ「……何よ、何喋らせるつもり?これ以上は無しよ」

希「ううん、今ので何となーくわかったから」

にこ「へぇ、どういう風に?」


74 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 19:43:18.68 ID:dAcAqXO4.net
希「まぁ……うちが言っても仕方ないやろ」

にこ「なによ、さっき全部話すっていったじゃないの」

希「ひとつだけ助言させて、にこっち、ええかな?」

にこ「……言ってみなさいよ」

希「今日はこの言葉だけ持って帰ってくれたら嬉しいんよ」

にこ「だからなんなのよ」

希「花陽ちゃんとしっかり話し合ってみ?」

にこ「……毎日会って話してるわよ、過去の反省、今の体調、これからの活動……」

希「……もっと、今よりずっとな?」

にこ「……良くわかんないわね、あんたは本当に」

希「まぁ要するに……パートナーが一番にこっちのこと見てるから、な?」


75 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 19:45:01.67 ID:dAcAqXO4.net
にこ「ふわぁああ……もう9時近いわね」

希「うちの話、退屈やったかな?」

にこ「いや、まぁ……言われた通り、花陽ともう一回話してみるわ、ありがと」

希「……うちはにこっちのこと、本当に尊敬してるんよ」

にこ「なによ、急に気持ち悪いわね」

希「アイドルとしてだけじゃなくて……人間として、ね」

にこ「はいはい、ありがと」

希「またいつでも来てな」

にこ「今度は連絡するわ、絵里にも会いたいし」

希「グルメレポートでこの店紹介してくれるのも待ってるで?」

にこ「……アイドルよ?お笑い芸人じゃないのよ……それじゃ、またね」

希「おやすみ、にこっち」






希「……格好いいなぁ」

希「でも、あの二人やから続けられるんやろな」

希「……うちはずっと応援してるで……頑張ってな、にこっち」


77 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 19:50:28.86 ID:dAcAqXO4.net
家に着いたのは10時頃、今日はたっぷり眠れそうだった

それでも、疲労を清算できるとは到底思えなかった

私は溶けるように眠りに落ちて、小さい頃の夢を見ていた

私の名前をつけてくれたパパとママのことを思い出していた

夢の中の私は笑っていた

心の底から、笑っていたのだった


91 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/29(月) 23:33:09.42 ID:49NYKdnc.net
今日は久しぶりに両親のいる実家の方で眠ろうかと思いました

久しぶりに帰りたかったというのもありますが、単純に今の場所から近かったからです

それともう一つ。最近、目覚まし時計で起きるのがだんだん辛くなってきたんです

移動中にすやすやと眠ってしまいますが、それでもまだ疲れがとれません

なので、お母さんに目覚まし時計の代わりになってもらおうと思ったのでした

そして夜8時ごろ、歩き慣れた街を帰っていくときのことでした


92 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/29(月) 23:33:41.94 ID:49NYKdnc.net
花陽「絵里ちゃん?」

絵里「……?」

花陽「……ひ、ひと違いでした……か……?」

絵里「……あっ、花陽!」

花陽「やっぱり絵里ちゃんだ!わあ!」

絵里「……もう、そんな風にマスクとサングラスつけられたら、誰だかわからないじゃないの」

花陽「えへへ、今はプライベートだから……」

絵里「すっかり有名人ね……」


93 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/29(月) 23:34:09.36 ID:49NYKdnc.net
花陽「絵里ちゃん、今、時間あるかな……」

絵里「私はいいんだけど……花陽、忙しいんじゃないの?大丈夫なの?」

花陽「うん、それより、今を逃したら会えるのはずっと先になりそうだから……」

絵里「それじゃ、ここはプライベートにしては人が多すぎるわね、場所を変えましょ」

花陽「でも、どこに行こうかなぁ」

絵里「すぐ近くが私の家よ、あがりに来たら?」

花陽「あっ……その袋」

絵里「そ、今、お買い物の帰りよ」

花陽「それじゃあ、おじゃましちゃいます……」


94 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/29(月) 23:34:43.16 ID:49NYKdnc.net
絵里「どうぞ」

花陽「あれ……絵里ちゃん、一人暮らし?」

絵里「そうよ、あんまり帰って来ないけどね」

花陽「お仕事、忙しいんだ……」

絵里「花陽ほどじゃないわよ……いつも、お疲れ様」

花陽「あ、ありがとう……」

絵里「何か飲む?」

花陽「それじゃ、コーヒー……」

絵里「眠れなくなるわよ」

花陽「ううん、いくら飲んでも、いつでも寝られるから……」


95 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/29(月) 23:35:06.87 ID:49NYKdnc.net
絵里「やっぱり疲れてるんじゃない?帰って寝たほうが……」

花陽「だ、大丈夫大丈夫!」

絵里「……無理しないでね、はい、どうぞ」

花陽「ありがとうございます……」

絵里「砂糖いる?」

花陽「うん」

絵里「はい、どうぞ」

花陽「苦いのはまだ飲めません……」

絵里「いいのよ、飲めなくても」


96 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/29(月) 23:37:43.25 ID:49NYKdnc.net
絵里「……サングラス、外したら?」

花陽「あっ」

絵里「ふふふ……」

花陽「うう……なんだか、ダメです……最近……」

絵里「どうかしたの?」

花陽「この前だって、服にご飯粒ついたままスタジオ入っちゃって……」

絵里「あはは……見た見た」

花陽「にこちゃんに怒られちゃったし……はずかしいよ……」

絵里「……」


97 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/29(月) 23:38:47.32 ID:49NYKdnc.net
花陽「私、やっぱりあんなに沢山の人の前に出るの、向いてないのかも……」

絵里「そう?……そんな風に見えないけど……」

花陽「いまだって、マイク持つときいつも震えてるし……」

花陽「いつまで経ってもビクビクしてる……昔から、ちっとも変われてない……」

絵里「……」

花陽「……ごめんね、つまんない話しか出来なくて……」

絵里「続けて」

花陽「でも……」

絵里「大丈夫、続けて」


98 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/29(月) 23:39:25.23 ID:49NYKdnc.net
花陽「この前も倒れちゃったし、ずっと足引っ張ってばかりで……役に立ってあげられなくて……」

花陽「にこちゃんが何で私を誘ってくれたのか、今でもわからないの」

花陽「本当に私なんかでいいのかなって、凄く不安になって……」

花陽「私じゃなくて、これなら絵里ちゃんの方が良か----」

絵里「花陽!」

花陽「……」

絵里「あっ……」

花陽「……」

絵里「ごめんなさい……」


99 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/29(月) 23:39:56.70 ID:49NYKdnc.net
花陽「絵里ちゃんに、こんな愚痴ばっかりいっても仕方ないよね……ごめんね……」

絵里「……私じゃなくて、にこはあなたを選んだの」

花陽「……なんでなのかな」

絵里「あなたが必要だから……そうでしょ?」

花陽「……」

絵里「にこのことを信じてるのよね」

花陽「……うん」

絵里「じゃあ、選ばれたあなた自身も、信じてあげなくちゃ……」

花陽「……」


100 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/29(月) 23:40:36.43 ID:49NYKdnc.net
絵里「答えはみんな知ってると思うわ」

花陽「……みんな知ってる?」

絵里「そうよ、なんであなたたち二人が、二人でいるのか」

花陽「……知ってるなら、教えてくださいっ」

絵里「でも、あなた自身が知りたいなら……他の誰に尋ねてもしょうがないわ」

花陽「じゃあ……」

絵里「にこに会って……聞いてみなさい」

花陽「……わかった」


101 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/29(月) 23:41:07.47 ID:49NYKdnc.net
絵里「……ふふ」

花陽「どうしたの?」

絵里「考えれば考えるほど、やっぱり、良い二人よね……ちょっぴり、妬いちゃうわ」

花陽「やい……ちゃう?」

絵里「なんでもないわよ、なんでも……」

花陽「ふぅん……あっ、このコーヒー……おいしいね……」

絵里「そう? それ、希の店から貰ってきたの」

花陽「希ちゃんのお店かぁ、また一回行きたいなぁ」

絵里「今度はにこも連れて、一緒にね」

花陽「……うん!」


102 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/29(月) 23:41:44.08 ID:49NYKdnc.net
花陽「ありがとう、絵里ちゃん」

絵里「もう遅いから、気をつけてね」

花陽「大丈夫……慣れてますからっ!」

絵里「サングラス、忘れてたわよ」

花陽「あっ」

絵里「ふふふ……またね、おやすみなさい」

花陽「うん、ばいばい……」


103 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/29(月) 23:42:09.58 ID:49NYKdnc.net
家に帰ったらお母さんとお父さんが迎えてくれました

私は、いっぱい喋りたいことがあった気がしましたが、全部忘れてしまったように、何も言い出せませんでした

そのままの姿で置いてきた自分の部屋のベッドに、久しぶりに身を投げ出して、ぐっすり眠り込んでしまいました

夢の中で、寂しそうに咲いている一輪の花を見つけました

寂しそうに咲いてるぶんだけ、その花は負けないように綺麗に咲いているのでした


104 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/29(月) 23:42:35.80 ID:49NYKdnc.net
にこ「おはよ、花陽」

花陽「おはよう、にこちゃん」

にこ「昨日はよく眠れた?」

花陽「うん、でも今日のダンスの復習、もう一回やろうと思って早起きして……」

にこ「なによ、私と一緒じゃない……どうせ同じことやるなら、二人でやればよかったわね」

花陽「あはは、そうだね」

にこ「さっ、車も来てるし、行くわよ」

花陽「うん」


105 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/29(月) 23:43:00.07 ID:49NYKdnc.net
にこ「にっこにっこにー!はぁーい!みなさん、こんにちはーっ!矢澤にこでーす!」

花陽「こんにちは、小泉花陽です……」

にこ「もー花陽、どうしたの?もっと大きな声でー!」

花陽「こ、小泉……花陽ですっ!!」

にこ「わお!出るじゃないの!」

花陽「もう大丈夫ですっ、今ので目覚めましたっ」

にこ「それじゃあ、花陽も元気みたいだし、今日も思いっきり歌おうと思います!」

花陽「最後までよろしくお願いしますー」


106 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/29(月) 23:43:32.68 ID:49NYKdnc.net
海未「もしもし、穂乃果、ことり!!また出てます!にこと花陽が!チャンネルは6です!いや、10?ああっ!とにかくテレビをつけてください!見逃していいんですか!?」

穂乃果「ふわああ……海未ちゃん……朝から元気だねぇ……私は録画してるから……もうちょっと眠らせて……」

海未「もう11時ですよ!なにだらしないことしてるんですか!」

穂乃果「だってぇ、今日は久しぶりにお休みなんだもん……」

海未「ああ、いつもいつもそうやって……」

穂乃果「えへへ、それにしても、海未ちゃんもドハマりしてるんだね……いいねいいねぇ……」

海未「なっ……私はですね、穂乃果とことりに知らせてあげようとですね……!」

穂乃果「むふふ、嘘ついてもダメだもんね……」


107 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/29(月) 23:44:09.90 ID:49NYKdnc.net
海未「ところで、ことりはどうして電話に出ないんでしょうか」

穂乃果「アイドルが歌ってる最中に電話になんて出られないでしょ?」

海未「え、じゃあ、もしかして……」

穂乃果「よーく見てみたら、スタジオの観客席に映ってるんじゃないのかな?」

海未「……いた」

穂乃果「海未ちゃん?」

海未(くっ……負けました……ことり!)

ことり(ふふっ)

ことり(二人とも、まだまだだね)


108 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/29(月) 23:47:36.59 ID:49NYKdnc.net
凛「ほら、真姫ちゃん~!かよちんとにこちゃん!」

真姫「もう、いつ見ても映ってるじゃない、そんなに騒がなくても……」

凛「凛はこの前かよちんと一つ屋根の下で過ごしたんだもんねぇ……ギョーカイの裏を知る女……ふふふ……」

真姫「なーに気持ち悪い目してるのよ、花陽が泣くわよ」

凛「真姫ちゃんだって、ニヤけてるよ」

真姫「なによ……悪い?」

凛「ううん、ぜーんぜん!あははは……」

真姫「なに笑ってるのよ、本当に!」


109 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/29(月) 23:48:00.95 ID:49NYKdnc.net
凛「……でも、大丈夫なのかなぁ、体……」

真姫「……私たちがどうこうできる話じゃないでしょ」

凛「……うん」

真姫「二人が選ぶの、これからのことはね、そうでしょ?」

凛「うーん……そうだね」

真姫「それより、何?一つ屋根の下って……」

凛「あれ?言ってなかったかなぁ」

真姫「教えなさいよ!なんなのよ!」

凛「うわぁ~~っ!ちょ、ちょっと!揺すらないで、真姫ちゃん!」

真姫「変なことしたんじゃ無いでしょうね!」

凛「してない、してない、してない!!」


110 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/29(月) 23:48:58.75 ID:49NYKdnc.net
希「はいどうぞ、コーヒー」

絵里「ありがとう」

希「砂糖いる?」

絵里「いや、いらないわ」

希「あ、そうそう、海未ちゃんからメール……テレビを見てくださいだって」

絵里「ふふ……海未ったら……もう見てるって言っておいたら?」

希「何も言わんでも、みんな見てると思うよ?」

絵里「ね、私もそう思うわ」

希「あ、そうそう……昨日の夜、にこちゃんがこの店に来たんよ」

絵里「昨日?私の家には花陽が来たんだけど……」

希「えっ!……あーあ、連絡すればよかったなぁ……」


111 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/29(月) 23:49:28.42 ID:49NYKdnc.net
絵里「ううん、二人でしかできない話ができたから、良かったの」

希「……実は、うちも」

絵里「どうだった?」

希「色々ありそうやけど……まぁ、あの二人なら大丈夫かな、って」

絵里「……そうね、私も同じ意見よ」

希「はぁー、それじゃ、心配ないかぁ……」

絵里「……希」

希「……?」

絵里「……やっぱり砂糖ちょうだい」

希「……」


112 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/06/29(月) 23:50:03.03 ID:49NYKdnc.net
花陽「おつかれさま、にこちゃん」

にこ「ん、おつかれ」

花陽「午後からは雑誌のインタビューだね」

にこ「ウカツなこと喋らないようにね、まぁ、事務所がチェック通してくれるとは思うけど」

花陽「う、気をつけます」

にこ「大丈夫よ、普段通り普段通り」

花陽「うん」

にこ「……さ、行くわよ」


123 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 04:54:40.98 ID:lL6Ly/Tl.net
「……では、お二人が、特に影響を受けたアーティストなどはいますか?」

にこ「うーん……好きなアーティストはたくさんいますけど、あんまり影響というと……」

花陽「私は、今の現役のスクールアイドルのみなさんから刺激を受けてます、やっぱり、あそこが私たちの原点なので……」

「なるほど、初期の段階で方向性は決まっていたと」

にこ「そうですね、メンバーに作詞ができる子と、作曲ができる子がいたから、その曲調を引き継いでいる感じですね」

花陽「あの頃の続きのような感覚です、確かに……はい」

「ふむふむ、スクールアイドルの続きですか……では、にこさんが花陽さんを誘ったと聞きましたが、それはどうしてでしょうか」

花陽「……!」

にこ「……」

「なぜ、花陽さんと2人でやろうと決めたのか、その理由を教えていただけませんか」

にこ「それは……」


124 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 04:55:12.10 ID:lL6Ly/Tl.net
にこ「なんででしょうね?……直感だと思います」

花陽「……」

にこ「二人でやるなら、花陽かな……って、何となく」

「しかし、誰でも良かった訳ではないと」

にこ「数え切れないくらい長所がありますから……花陽には。その全部ひっくるめて、一緒にやりたいと思ったんです」

花陽「にこちゃん」

にこ「……取材中」

花陽「……」

「例えばどんな長所があるのか、具体的に教えてもらえませんか」

にこ「……嘘をつかないところです」

花陽「……」

にこ「それに、アイドルとしての向上心が、誰にも負けない程あるところです」

にこ「まだまだたくさんあります……言い出しちゃうと、時間足りませんよっ!」


125 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 04:55:45.20 ID:lL6Ly/Tl.net
「なるほど、では反対に、花陽さんはにこさんにはどのような長所があると考えますか」

花陽「えっ」

にこ「……」

花陽「な、なんだか……そんな風に聞かれると……なんて言ったらいいのか……」

にこ「どんどん言っていいのよ」

花陽「……にこちゃんの料理は、美味しいです」

にこ「……」

「……」

花陽「それに、お掃除や収納のテクニックもすごいんです」

にこ「……ちょっと、なんかズレてない?」

花陽「……にこちゃんは、とにかく、すごいんです、なんでも一人で出来ちゃって……」

「しっかり者なんですね」

花陽「今、いちばん憧れてる人です……はい」

にこ「……」

「それでは、次の質問です……」


126 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 04:56:18.29 ID:lL6Ly/Tl.net
にこ「花陽……」

花陽「どうしたの?」

にこ「さっきのインタビュー、どう思った?」

花陽「……にこちゃんが褒めてくれて、嬉しかったかな?」

にこ「…そんなら良かった」

花陽「ごめんね、なんだか私褒めるのヘタで……」

にこ「……私だって、嬉しかったわよ」

花陽「……」

にこ「ほら、その……憧れてるって、言われて……」

花陽「うん、にこちゃんにはずっと憧れてるよ、私」


127 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 04:56:40.44 ID:lL6Ly/Tl.net
にこ「……」

花陽「どうしたの?」

にこ「なんていうか……ハッキリとそういうこと言えるの、羨ましいなって、思っただけ」

花陽「そ、そんな」

にこ「そうねー……私も、適当に濁さず、もうすこし素直に言うべきだったかもね」

花陽「……?」

にこ「花陽を誘った理由。……私なんかよりも、ずっと、才能があると思ったから……って」

花陽「……えっ?」

にこ「何?言葉通りの意味よ……」

花陽「えっ、えっ……だって、それじゃ……」

にこ「ほら、次のスタジオ行くわよ、続きは後で」

花陽「……」


128 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 04:57:11.32 ID:lL6Ly/Tl.net
結局のところ、お互い無い物ねだりをしていただけなのかもしれなかった

私が欲しい全部は花陽が持っていた気がしたし、逆に言えば多分、彼女だってそう思っていたのだろう

お互いに憧れ合っているなんて、まるで、合わせ鏡みたいな関係だ

でも多分、その矛盾こそ二人でここまでやって来れた答えそのものなのだろう

片足を怪我した者同士で、寄りかかって、ここまで歩いてきたようなものなのだろう

はっきりと、花陽から言葉で聞いた途端、なんだか急に自分を許せる気がしてきてしまった

正直なところ、喜びや嬉しさなんかじゃなくて、ほっと胸を撫で下ろす気持ちだった

まだ私は彼女の側にいていいし、彼女だって私の側で立つことを望んでくれていたのだから

彼女がなりたい私になるためなら、どんな仮面だって今は軽く感じられそうだった


129 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 04:57:32.79 ID:lL6Ly/Tl.net
にこちゃんが、あんなこと言うのは初めてでした

私はいつも、にこちゃんに、ドジなことして怒られたり、慰められたりしてばっかりでした

いつだって、私の一歩前を歩いていたにこちゃんの隣に、ようやく立てたような気がしました

……いや、初めからにこちゃんは私の方を向いてくれていたんです

私が、そんな期待に応えられるのか、一人で不安になっていただけでした

私はずっと、アイドルとしてのにこちゃんのファンの一人だったのかもしれません

でも、これからはちゃんと、二人で進んでいけそうな気がしました

あの日、にこちゃんは電話もせず突然夜中に私の家に来て、二人で一緒にアイドルをしないかと、誘いに来てくれました

私は、嬉しくて、その場ですんなりと返事をしましたが、あの日はまだ終わって無かったのかもしれません

けれど今日、ようやく私は心の中で本当の返事が言えたような気がしました

「一緒」にやろう、と返事を……本当に。


130 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 04:57:58.30 ID:lL6Ly/Tl.net
にこ「もう一回言うわ」

花陽「うん」

にこ「あんたじゃないと、ダメなの、他の誰でもなく」

花陽「……私だって、にこちゃんと一緒がいい」

にこ「……何で気がつかなかったのかしらね、もう2年も経ったはずなのに」

花陽「当たり前、過ぎたからかな?」

にこ「……良いこと言うじゃない、そうね、当たり前過ぎたのかもしれない」


131 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 04:58:21.78 ID:lL6Ly/Tl.net
花陽「私、ステージの上でのにこちゃんが大好き」

にこ「そう?……ありがとう」

花陽「お客さんを楽しませようと、あんなに頑張れるなんて、本当にすごいと思う」

にこ「あんただって、自分が思ってる以上に上手くやってるのよ」

花陽「そうかな……」

にこ「良いのよ、分からなくても。私にはちゃんとわかってるから」

花陽「……」

にこ「……泣かないの」

花陽「うっ……う……」

にこ「だから、今のままでいいの。今の花陽に、いてほしいの」


132 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 04:59:16.92 ID:lL6Ly/Tl.net
にこ「花陽、アイドルは好き?」

花陽「うん」

にこ「いつごろから?」

花陽「思い出せないくらいちっちゃな頃から」

にこ「……私も同じ。小さい頃から、ずっと好きだった」

花陽「……でも、にこちゃんが初めてだったの」

にこ「……」

花陽「こんな風に、好きなことで喋れる子に会ったの……」

にこ「……それも同じ、私だってそうよ」

花陽「だから、なのかもね」

にこ「そ……結局のところ、それが答えなのよね……たぶん」


133 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 04:59:47.66 ID:lL6Ly/Tl.net
花陽「……えへへ、私はね、ステージから降りたにこちゃんのことも、大好きだよ」

にこ「……どうして?」

花陽「だって、すっごく嬉しそうな顔してるんだもん……」

にこ「そう?……気がつかなかった」

花陽「心の底から、楽しいって思えてる……あの時のにこちゃんの笑顔が、私は一番好きだなぁ……」

にこ「……なるほどね……お互い、知らないことばっかりね」

花陽「うん、自分のことよりも、にこちゃんの事の方が知ってるのかも」

にこ「だから、お互い様ってわけよ……」

花陽「……にこちゃん」

にこ「なに?」

花陽「これからも、一緒に……よろしくね」

にこ「……うん、よろしく」


135 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 05:04:11.71 ID:lL6Ly/Tl.net
悩んでいたことも、今となっては馬鹿馬鹿しくなってきた

花陽が言ってくれるなら、私は何だって信じてあげなくちゃいけないし、信じてあげることが出来たからだ

彫り上げた偶像が愛されたなら、彫刻師だって冥利に尽きるはずだ

それに、花陽は汗まみれの私からも笑顔を取り出してくれた

私はもう少し素直になるべきだったのだろう

素直になれば、今が幸せだということを疑う必要なんかなかったのだから


136 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 05:04:34.11 ID:lL6Ly/Tl.net
にこちゃんに会えて本当に良かった

近頃、なんだかそんな思いがますます膨らんできています

少しずつだけど、私は変われてきたのかもしれません

自分のことを、今はだんだん好きになれそうな気がしたんですから

それを見つけ出してくれるのは、いつだって私の横にいる人でした


137 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 05:05:31.92 ID:lL6Ly/Tl.net
にこ「お疲れ、花陽」

花陽「おつかれさま、にこちゃん」

にこ「ようやく乗り切ったわね、この一ヶ月」

花陽「もう、フラフラだよ……」

にこ「のわりには、いい顔してるじゃない」

花陽「……なんと言っても……明日はお休みですっ、久しぶりの!」

にこ「……それじゃ」

花陽「うん」

にこ「みんなに会いに行く?」

花陽「……うん、行こう行こう!」


138 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 05:06:12.10 ID:lL6Ly/Tl.net
……花陽に手を振って、お別れをした

家に帰ると、いつものように倒れるように寝てしまった

また、夢を見た

私が小さな花を見つけて

笑っている夢だった


139 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 05:06:36.70 ID:lL6Ly/Tl.net
おわり


143 : 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 06:58:00.58 ID:9OsdT9AK.net
面白かった乙!


145 : 名無しで叶える物語(関東・東海)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 07:10:54.62 ID:wbFrJWVc.net
すごく良かった
乙!


元スレ:http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1435442164/


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 「ラブライブ!」カテゴリの記事


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  1. 2015/07/17(金) 21:11:39

    こんなに面白くて読み応えのあるSSはなかなかないぜ


  2. 2016/08/22(月) 14:33:51

    これは良い後日談ssだと思うわ


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