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将軍「兵の士気を高めるために演説!? わ、私が!?」

1 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/07/16(木) 00:19:13 ID:0YrouOcE
― 基地 ―

将軍「戦況はどうか?」

副官「先の奇襲作戦が功を奏し、戦況は我が軍に大きく傾いております」

副官「これも、将軍が立てられた作戦のたまものといえましょう」

将軍「ふっ、おだてよるわ」

副官「しかしながら、敵軍の残存戦力は未知数ですし、油断は禁物かと」

将軍「うむ、まだ祝杯というわけにはいかんな」

将軍「しかし、次の一手を成功させれば、ようやく我が軍の完全勝利が見えてくる」

将軍「今、この局面こそが正念場といえよう」




2 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/07/16(木) 00:25:15 ID:0YrouOcE
副官「将軍、このような勝負どころでは、作戦や兵の運用はもちろんですが」

副官「兵士の士気というのも、勝敗を左右する重要なファクターとなりえます」

将軍「そのとおりだ。なにか士気を高める方策があるのか?」

副官「ございます。この方法であれば、必ずや士気を高められるでしょう」

将軍「ほう、申してみよ」

副官「ここはひとつ、我が国きっての名将といわれるあなたが」

副官「兵士たちに向けて、直々に演説をするというのはいかがでしょうか」

将軍「兵の士気を高めるために演説!? わ、私が!?」

副官「はい」


3 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/07/16(木) 00:27:17 ID:0YrouOcE
将軍(おいおいおい、冗談じゃねえぞ……。やりたくねえよ、んなもん)

将軍「いいよ、演説なんて古臭いことせんでも……」

将軍「だいたい、そんなもん兵士は聞きたくないだろうしな……」

副官「いえ、そんなことはありません」

副官「将軍はどちらかというと寡黙なことで有名なお方ですから」

副官「そのような方からここらでビシッと決めて下されば」

副官「兵士の士気はグーンと右肩上がりになることでしょう!」

将軍(うぐっ、いつもイエスマンのくせに、今日は妙に食らいついてくるな……)


4 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/07/16(木) 00:28:47 ID:0YrouOcE
将軍「わ、分かった、分かった。演説の件は善処しよう」

将軍(善処……すなわち後回し……つまり“やらない”ってことだけどな)

副官「あのう、実はですね……」

副官「明日の朝、将軍からの演説があると、すでに基地中にアナウンスしておりまして」

将軍「は……?」

副官「会場もすでにセッティングが完了しております」

将軍「いつの間に!?」


5 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/07/16(木) 00:31:00 ID:0YrouOcE
将軍(ちょ、なに勝手なことしてくれてんだよ、このバカ!)

将軍「なんで、私に相談もなしに……!」

副官「申し訳ありません。しかし、善は急げ、と思いまして」

将軍「ええぇ……どんな理屈……」

副官「明朝8時より、基地の兵士全員の前で演説していただきますので」

副官「よろしくお願い致します」

将軍(マジかよ……! あと12時間もないじゃん……!)


6 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/07/16(木) 00:33:09 ID:0YrouOcE
将軍「えぇ~と、私はなにをしゃべればいいのかな……?」

副官「なにをおっしゃる」

副官「将軍のお言葉を、私如きが指図するわけにはいきますまい」

副官「それに、将軍ほどのお方なら、すでになにを話すべきかは分かっているのでは?」

将軍(分かんねーよ、バカ!)

副官「では、おやすみなさいませ」

将軍「う、うむ……」


7 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/07/16(木) 00:37:11 ID:0YrouOcE
ベッドの中にて――

将軍(うわぁ~、とんでもないことになった……。演説なんかやったことねえぞ……)

将軍(後方支援や作戦立案が得意で、そういう方面から将軍になったタイプだからな、俺)

将軍(兵士の前に立って云々とかはほとんど経験ねぇんだよ)

将軍(あ~……いやだいやだいやだ。やりたくない、逃げ出したい、田舎帰りたい)

将軍(もし、敵軍の夜襲があれば、明日は演説どころじゃなくなるよな……)

将軍(夜襲こないかなぁ~、きてくんないかなぁ~)

将軍(先の戦いであれだけ大打撃を与えたのに、くるわけねえよな……)

将軍(それに、夜襲対策は完璧に整えてあるし……)

将軍(こんなことなら、もうちょっと基地の守りを手薄にしとくべきだった)

将軍(――ってなんてこと考えてるんだ、俺は!)


8 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/07/16(木) 00:39:10 ID:0YrouOcE
将軍(うぅ~ん、演説ってなにを話せばいいんだ?)

将軍(結婚式のスピーチぐらいしかやったことねえぞ、俺)

将軍(ようするに、あれだろ?)

将軍(諸君らはすばらしい兵士で、勝利は目前だし頑張ろう、みたいな内容を)

将軍(すんげえ引き延ばして、かっこいい言葉でいえばいいんだろ? 楽勝!)

将軍(ええい、なんとかなる! なんとかなるさ!)



将軍(なるかなぁ……)


10 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/07/16(木) 00:42:25 ID:0YrouOcE
明朝――

副官「おはようございます、将軍」

将軍「お、おはよう」

副官「目にクマがございますが、大丈夫ですか?」

将軍「今日の演説でなにを話すかを考えていたら、眠れなくなってしまってな」

副官「ハハハ、またまたご冗談を」

将軍(ご冗談じゃねーよ、バカ!)

副官「すでに大勢の兵士が集まっております。お急ぎ下さい」

将軍「うむ」


11 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/07/16(木) 00:46:36 ID:0YrouOcE
ズラッ……



将軍(うへぇ~、数千……いや一万人以上いるぞ、これ)

将軍(こんな大勢の前で話すのかよ……)ドキドキ…

将軍(手のひらに人という字を書いて……)コソコソ…

副官「聞け! 勇敢なる兵士たちよ!」

副官「これより、将軍の演説を執り行う!」

副官「此度の戦争で数々の戦を勝利へと導いてきた名将からの、ありがたい激励だ!」

副官「各々、心して拝聴せよ!」

将軍(名将とか、心してとか、ハードルあげないでくんないかな……)

将軍(てか、いい声してるし、お前そのまま演説やってくれよ……)


12 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/07/16(木) 00:50:10 ID:0YrouOcE
将軍(第一声は“よくぞ集まってくれた、兵士たちよ”でいこう! ――よし!)

将軍「…………」ザッ…





シ~ン……





将軍(――あ)

将軍(まずい! 頭が真っ白に! 真っ白に!)

将軍(なにかしゃべれ! なんでもいい! しゃべれえええええ!)


13 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/07/16(木) 00:52:42 ID:0YrouOcE
将軍「あ……え……」

将軍「ほ、本日はお日柄もよく……」

将軍(うわぁぁぁぁっ! なにいってんだ俺!)

将軍「私の演説のために、大勢の兵士の方々にお集まりいただき……」

将軍「誠に、ありがとうございます……」ペコッ…

将軍(演説っつうか挨拶だ、これ! とにかく敬語はやめないと!)

将軍(あと戦争! 戦争についてしゃべれ! 途切れさせたらダメだ!)


14 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/07/16(木) 00:56:14 ID:0YrouOcE
将軍「せ、戦争というのは……」

将軍「文字通り……戦い、争うという意味である!」

将軍「そう、戦うことである! 敵と戦うことなのである!」グッ…

将軍(まずい! 中身がなさすぎる!)

将軍(軌道修正しろ! 戦争に勝つ秘訣みたいなもんをしゃべるんだ!)

将軍「私も軍に入ってから、戦争をたくさん経験してきた……」

将軍「今日は私から、戦争に身を置くうえでの秘訣を紹介しよう」


15 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/07/16(木) 00:59:09 ID:0YrouOcE
将軍「戦争には大切な“三つの袋”というものがある!」

将軍「一つ目は給料袋、二つ目は堪忍袋、そして三つ目はお袋である!」

将軍(ちがう! これちがう! 結婚式のスピーチでやったやつだ!)

将軍(だけど、このままいく! いくっきゃない!)

将軍「まず、給料袋……お金というのはやはり大切である」

将軍「金目当てで戦うのはよくないという風潮もあるにはあるが、私はそうは思わん」

将軍「きっちり仕事をしているのなら、それに対する代価を欲するのは」

将軍「当然の権利であると、私は思う」

将軍「次に堪忍袋……これはいかなる時にも怒らず、冷静であれということだ」

将軍「戦場で冷静さを失うということは、すなわち死を意味するからだ!」

将軍「兵士諸君、君たちも常に冷静であって欲しい!」

将軍(お!? なんか意外といい感じじゃないか!?)


16 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/07/16(木) 01:02:48 ID:0YrouOcE
将軍「そして三つ目……お袋!」

将軍「諸君らにも母親や父親、兄弟……あと親戚とか、家族がいるだろう!」

将軍「もし我が軍が敗れれば、君たちの家族もまた、敵国に蹂躙される運命にある!」

将軍「戦え! 兵士たちよ! 愛する家族のために!」

将軍(お、お!? いいぞ、これ! なかなかいいぞ! かなり演説っぽい!)

将軍(よっしゃ、余裕が出てきた! ここでユーモアを出していくか!)

将軍「そして、私は独自に“四つ目の袋”を提唱したい!」


17 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/07/16(木) 01:05:28 ID:0YrouOcE
将軍「金をもらい、冷静さを失わず、家族のために戦えば、もはや諸君らは無敵!」

将軍「君たちの力で敵軍を“袋叩き”にするのだァ!!!」





シ~ン……





将軍(うっわ、スベった! いわなきゃよかった!)

将軍(ていうか、今のがギャグだって気づいてる奴自体が少なそうだ……)


18 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/07/16(木) 01:09:31 ID:0YrouOcE
将軍(やべぇ、話題を変えよう! そうだ! 戦争に勝った時の話をしよう!)

将軍「え、あ……と、とにかくだ!」

将軍「戦争に勝てばいっぱいいいことあるし、賠償金とかも多分もらえるし」

将軍「みんなで頑張ろうってことだ!」

将軍(まずい! さっきの“袋叩き”がスベった影響で、動揺してしまっている!)

将軍(ボキャブラリーが悲惨なことになってる!)

将軍(ええい、ここは勢いで乗り切るしかあるまい!)


19 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/07/16(木) 01:12:28 ID:0YrouOcE
将軍「せ、戦争は……他の言語で……ウォー、ともいう……」

将軍「ウォーッ!」

将軍「ウォーッ! ウォーッ! ウォーッ! ウォーッ! ウォーッ!」

将軍「ウォーッ! ウォーッ! ウォーッ! ウォーッ! ウォーッ!」

将軍(気持ちが落ち着くまで、しばらく叫びまくろっと……)

将軍「ウォーッ! ウォーッ! ウォーッ! ウォーッ! ウォーッ!」



ウォー…… ウォー…… ウォー……

ウォーッ! ウォーッ! ウォーッ! ウォーッ! ウォーッ!



将軍(おおっ!? 兵士たちがノッてきやがった! これは嬉しい誤算だ!)


20 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/07/16(木) 01:15:49 ID:0YrouOcE
将軍(……だけど)



ウォーッ! ウォーッ! ウォーッ! ウォーッ! ウォーッ!

ウォーッ! ウォーッ! ウォーッ! ウォーッ! ウォーッ!

ウォーッ! ウォーッ! ウォーッ! ウォーッ! ウォーッ!



将軍(止まらなくなっちまったぞ! どうすんだこれ!?)

将軍(完全にアブない集団じゃねえか!)

将軍(しかも、うるさい! 耳にガンガン響いてくる! 大勢で叫ぶんじゃねえ!)

将軍(あぁ~、もう!)


21 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/07/16(木) 01:18:24 ID:0YrouOcE
将軍「黙れッ!!!」





ピタッ…… シ~ン……





将軍(うわっ、止まった……)

将軍(自分からウォーウォー叫んでおいて、部下が言い始めたら怒鳴るとか)

将軍(俺ってなんて自己中なんだろう……)

将軍(いやいや! 自己嫌悪に浸っているヒマはない! 話を続けなければ!)


22 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/07/16(木) 01:23:30 ID:0YrouOcE
将軍「う、嬉しいぞ……」

将軍「私は嬉しい!」

将軍「今のように、激しく叫び、命令があれば急に黙ることもできる君たちは」

将軍「まさしく世界最高の軍隊だ!」

将軍「諸君らなら、どんな敵にも負けはしない!」

将軍「え、えぇと……歴史とは――勝者が作るもの!」

将軍「我々の手で、また一つ、栄光ある歴史を築き上げようではないか!!!」





ウオォォォォォ……!





将軍(もうワケ分からん……)


23 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/07/16(木) 01:27:10 ID:0YrouOcE
……

……

……

将軍(やっと終わった……)ホッ…

副官「お疲れ様でした、将軍」

将軍「……どうだった?」

副官「さすが将軍、バッチリですよ!」

副官「特に“袋叩き”のところなど、殺気に満ちていて迫力がすごかったです!」

将軍(あれ、ギャグだったんだけどな……。やっぱり伝わってなかったか)


24 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/07/16(木) 01:31:23 ID:0YrouOcE
副官「他にも、連続して叫ぶことで兵士たちに一致団結させたり」

副官「栄光ある歴史を築き上げよう、というフレーズも感動いたしました!」

将軍「そ、そうか」

副官「他にも……」

将軍「いや、もういい! もういい! やめてくれ!」

将軍「演説は終わったのだ。ここからは戦いに意識を切り替えんとな」

副官「はっ!」

将軍(演説なんか二度とやるものか! 絶対に!)


25 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/07/16(木) 01:36:54 ID:0YrouOcE
その後――

副官「――敵国が全面降伏いたしました!」

副官「我が軍の勝利です! おめでとうございます、将軍!」

将軍「うむ……将兵ともに一丸となって、よくやってくれた」

副官「これも、あの演説があったからこそですよ!」

将軍「いや、関係ないと思うが……」

副官「ですが、あの演説が行われた日からの我が軍は一手のミスもなく」

副官「快進撃を展開したではありませんか!」

将軍「ううむ、そうかもしれんが……」

将軍(たしかに、あの日から兵士の動きは飛躍的によくなったな)

将軍(あの演説のことは、とっとと忘れたいんだがな……)

将軍(まぁいいや。戦争は終わったんだし、すぐに風化するさ……)

………………

…………

……


26 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/07/16(木) 01:43:31 ID:0YrouOcE
ところが――

― 兵士養成所 ―

教官「戦争において大切なことは、給料袋! 堪忍袋! そしてお袋だ!」

教官「これらを胸に秘め、敵を“袋叩き”にするつもりで訓練に臨め!」

教官「ウォーッ! ウォーッ! ウォーッ! ウォーッ! ウォーッ!」

ウォーッ! ウォーッ! ウォーッ! ウォーッ! ウォーッ!



将軍(やめてくれえええ……っ! 恥ずかしいからぁぁぁっ!)

将軍(なんであの演説がウチの軍の基本理念みたいになってるんだよぉ……!)

将軍(戦争に勝利して栄光ある歴史を築き上げられたのはよかったが――)

将軍(同時に恥ずかしい歴史も築き上げちまったぁぁぁっ!)

将軍(今夜も布団の中でジタバタするはめになりそうだ……)





                                   ― 完 ―


27 : ◆R/83UYcur. 2015/07/16(木) 01:44:11 ID:0YrouOcE
以上で終わりです


28 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/07/16(木) 01:59:08 ID:6pViOByo
ワロタ綺麗にまとまってて面白かった


31 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/07/16(木) 05:08:55 ID:DNJwLqbQ
これは可愛いw

当人には黒歴史なのに、ずっと語り継がれちゃうんだろうなあ
しかも、ことあるごとに、あの時のような名演を、とか求められちゃうんだろうなあ

将軍どんまい乙!


元スレ:http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1436973553/


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