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傭兵「この剣、手入れしとけっ!」女「はいっ!」
- 1 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/23(水) 22:14:26 ID:/3OhcIYA
- ― 傭兵団アジト ―
傭兵「おいっ! この剣、手入れしとけっ!」ガチャッ
女「はいっ!」
傭兵「いいか……。しっかり手入れしとかなかったら、叩き斬るからな!」
女「分かってますっ!」
傭兵「……ちっ!」
- 2 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/23(水) 22:18:13 ID:/3OhcIYA
- 女「皆さん! 装備のお手入れをしておきましたよ!」
戦士「お、サンキュー!」
剣士「いつも助かるよ!」
女「――あ、傭兵さんの剣もピカピカにしておきましたよ! いかがですか?」
傭兵「…………」
バッ!
もぎ取るように、剣を受け取る傭兵。
戦士&剣士「…………」 - 3 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/23(水) 22:21:29 ID:/3OhcIYA
- 戦士「おいおい! ちょっと待てよ!」
剣士「ありがとう、の一言ぐらいいったらどうだい?」
すると――
ヒュオッ!
二人に剣先が突きつけられる。
戦士&剣士「ひっ!」 - 4 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/23(水) 22:24:34 ID:/3OhcIYA
- 傭兵「さっきの強盗団討伐……お前ら、何人倒した? いってみろ」
戦士「さ、三人……」
剣士「二人……かな」
傭兵「俺はたしか、30人ぐらいだったかな。いちいち数えてねえや。
ちなみにお前らが倒したのも、俺が弱らせた奴らだったよな」
戦士&剣士「うっ……」
傭兵「なにかいうことはあるか?」
戦士&剣士「あ、ありません……」 - 5 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/23(水) 22:28:13 ID:/3OhcIYA
- 傭兵「おいっ!」
女「はいっ!」
傭兵「お前に至っては、一人も倒してねえ。なにしろ、戦ってすらいねえんだからな。
俺はお前を認めねえ! 絶対にな!」
女「……認めてもらえるよう、頑張ります」
傭兵「ケッ! とっとと辞めちまえ!」
部屋を出ていく傭兵。
戦士「あんな奴のいうこと、気にすることないぜ!」
剣士「そうだよ。あいつ、どこかおかしいんだ」
女「大丈夫です! 私は全然気にしてません!」 - 6 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/23(水) 22:32:05 ID:/3OhcIYA
- 傭兵団のサポーターとして、健気に働く娘であったが――
傭兵「ふぅ……今日も斬った、斬った」
傭兵「おいっ! この剣、手入れしとけ! よぉく斬れるようにな!」ガチャッ
女「はいっ!」
傭兵「ケッ!」
傭兵のいびりは収まるどころか、ますますひどくなっていった。 - 7 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/23(水) 22:36:33 ID:/3OhcIYA
- ~
傭兵「おいっ、なにやってんだ!?」
女「はいっ! 次の任地の地図を見てまして……」
傭兵「ちっ、んなもんいくら見たって、作戦成功のたしにはならねえよ!
まったくいいご身分だな!」
傭兵「俺らは傭兵だ。金をもらって、敵を斬るのが仕事なんだ。
地理のお勉強するのが仕事じゃねーんだよ!」
女「すみませんっ! すぐ片付けます!」ガサガサ…
~ - 8 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/23(水) 22:40:14 ID:/3OhcIYA
- ~
村人「……っていうことがあってね」
女「へぇ~、そうなんですか!」
傭兵「おいっ、いつまでおしゃべりしてやがる!」
傭兵「俺ら傭兵は、特定の組織や集団に肩入れするってのはご法度なんだ!
今日の友は明日の敵、な稼業なんだからな!
町民や村人と仲良くするのも程々にしとけ!」
女「はいっ! 失礼しましたっ!」
~ - 9 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/23(水) 22:43:38 ID:/3OhcIYA
- ~
女「食料を運んできました!」ガラガラ…
戦士「お、サンキュー!」
剣士「長丁場の戦いになりそうだから、助かるよ!」
傭兵「ふん、俺らが戦ってた時に、お前はのんきにメシを運んでたってわけか。
いいねぇ、女ってのは」
戦士「おい、傭兵! 言いすぎだぞ!」モグモグ…
傭兵「お前は働きに比べて、食いすぎだな」
戦士「うぐっ……」
~ - 10 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/23(水) 22:47:17 ID:/3OhcIYA
- ~
団長「ご苦労だった。今月の給金だ」
女「ありがとうございます! 大切に使います!」
傭兵「ふん、人を一人も斬らずにいっちょまえに金はもらうってか」
女「す、すみません」
団長「おい、この娘も傭兵団の立派な一員だ。侮辱するようなマネは……」
傭兵「そうやって、部下に給金を払えるのは、いったい誰のおかげですかねえ?
一人で20人分は斬ってる、誰かのおかげですよねえ?」
団長「う、む……」
~ - 11 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/23(水) 22:52:05 ID:/3OhcIYA
- ― 傭兵団アジト ―
戦士と剣士が、団長に直訴する。
戦士「団長! いくらなんでも傭兵のあの態度、ひどすぎないっすか!」
剣士「そうですよ! あんまりです!」
戦士「特に、嬢ちゃんに対するいびりときたら、どんどんエスカレートして……
そのうち、ホントに斬っちまうんじゃないかって心配になるほどですよ」
団長「……分かっている」
団長「だが、傭兵も決して意地悪だけで、あんなマネをしてるわけじゃないんだ。
理由は……あるんだよ」
剣士「理由……? いったいどんな?」 - 12 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/23(水) 22:58:51 ID:/3OhcIYA
- 団長「不思議に思ったことはないか?」
団長「なんであいつほどの腕の男が、一人(フリー)でやらず、
私の傭兵団に所属しているかを」
戦士「そりゃあ、もちろんありますよ!
普通、腕に自信がありゃ、一人なり少数でやりますからね。傭兵稼業ってのは」
剣士「なにしろ、取り分がちがいますもん」
団長「うむ、そのとおりだ」 - 13 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/23(水) 23:02:03 ID:/3OhcIYA
- 団長「昔……あいつもフリーの傭兵だったんだ。一人であちこちを駆け回っていた」
団長「そしてある時……ある貧しい村から警護を依頼されたんだ」
団長「剣の腕は一流とはいえ駆け出しで、金よりもむしろ、
腕試しの機会を欲していたあいつは余裕綽々で引き受けた。だが――」
戦士「だが……?」
団長「その山賊たちはかなり賢い集団でな。一枚上手だったんだ」
団長「傭兵をおびき寄せる隊と、村を襲う本隊を、分けてたんだな。
陽動作戦ってやつだ」
団長「そして……まんまと村を襲われてしまった」
剣士「それで、村は……?」
団長「村人は……ほとんど全滅だったらしい」 - 14 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/23(水) 23:06:00 ID:/3OhcIYA
- 団長「その後、あいつはその山賊団を死に物狂いで壊滅させたが……」
団長「一人での傭兵稼業に限界を感じ、私の下に入ったんだ」
団長「あいつは今も、非戦闘員が戦いに巻き込まれることを極度に恐れてる」
団長「だから……サポート役の彼女の存在が許せない。
つらくあたって、辞めさせようとでも思ってるんだろう」
戦士「あいつにそんな過去が……」
剣士「知らなかった……」 - 15 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/23(水) 23:09:54 ID:/3OhcIYA
- 剣士「ですが……それじゃあの子があまりにも気の毒じゃないですか!
彼の過去は分かりましたけど、いびっていいことにはなりませんよ!」
戦士「そうっすよ! このままじゃあの子、辞める前に首くくっちゃいますって!」
団長「う~む……」
団長「私としても、傭兵のことはなんとかしたいと思ってるんだが、なかなかなぁ」
団長「私よりも強いし……。機嫌を損ねて、あいつがいなくなると困るし……」
戦士&剣士(結局そこかい) - 16 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/23(水) 23:13:18 ID:/3OhcIYA
- 周囲の不安や不満をよそに――
女「傭兵さん、鎧を洗っておきました!」
傭兵「そこ置いとけ。いちいち話しかけるな」
女「は、はい……失礼しますっ!」
傭兵「……ちっ」
結局、二人の関係はなんら変わることはなかった。 - 17 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/23(水) 23:17:45 ID:/3OhcIYA
- そんな時、傭兵団に大きな依頼が舞い込む。
― 傭兵団アジト ―
団長「王都で人斬り事件を起こし、騎士身分を剥奪された元騎士が、
手勢を率いてこの近くの山中に逃げ込んだらしい」
団長「騎士団としてはなんとしてもこの元騎士を始末せねばならんが、
大っぴらに騎士団を動かすと、身内の恥を晒すことになってしまう」
団長「そこで、なんとか我が傭兵団だけで“山賊”として討伐してもらえないか、
という依頼が入った」
戦士「騎士が人斬り騒ぎを起こして、それを隠すために騎士が傭兵に依頼っすか」
剣士「世も末だなぁ」
団長「まったくだな。しかし、報酬は大きいし、
我々の武名を高めるには絶好のチャンスといえるだろう」 - 18 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/23(水) 23:23:48 ID:/3OhcIYA
- 団長「さて、王都がある南方はすでに騎士団が固めているので、
奴らが逃げるとすれば北方に向かうだろう」
団長「そこで……奴らを逃がさないためにも、
北方で待ち伏せする部隊と、山に入って奴らと対決する部隊に分けたい」
団長「うまくすれば、挟み撃ちにもできるからな」
傭兵「なら、俺が対決する部隊を引き受けましょう」
団長「やってくれるか」
傭兵「はい。騎士崩れ如き、俺が仕留めてみせますよ」
団長「うむ、相変わらず頼もしいことだ。しかし、相手が相手だ。
彼女をサポート役として連れていってくれ」
女「よろしくお願いします!」
傭兵「――必要ありません!」 - 19 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/23(水) 23:26:24 ID:/3OhcIYA
- 傭兵「こんな女に手助けされるほど、俺は堕ちちゃいませんよ」
団長「しかしだな……」
傭兵「どうしても連れていけってんなら、俺は傭兵団を辞めます」
団長「……わ、分かった! 彼女を入れるのはよそう!」
傭兵「ってわけだ。もし、俺をサポートするようなマネしやがったら……
叩き斬るからな!」
女「……分かりました」 - 20 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/23(水) 23:30:49 ID:/3OhcIYA
- さっそく傭兵は“対決部隊”のメンバーを選抜し、作戦を練る。
ザワザワ…… ワイワイ……
傭兵「相手は決して多くないが、元兵士の集まりだし、なにより山に逃げ込んでいる。
こいつは四、五日がかりの長期戦になる」
傭兵「山のどこかに簡単な拠点を作り、じっくりと兵士どもを狩ってくぞ」
戦士「ラジャー!」
剣士「了解!」
戦士「いけ好かない奴だが、任務の時は頼りになるよな」
剣士「ああ、今回も楽勝だね」 - 21 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/23(水) 23:36:08 ID:/3OhcIYA
- ― 山 ―
傭兵率いる対決部隊が、入山する。
傭兵「よいしょっと」ドサッ
傭兵「ここに食料や装備を置いて拠点とする。
もし、はぐれちまったら、ここに集まるようにしよう」
傭兵「んじゃ……敵を探して、狩っていくぞ」
戦士「ラジャー!」
剣士「了解!」 - 22 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/23(水) 23:38:47 ID:/3OhcIYA
- それからまもなく、傭兵たちと元騎士らの衝突が始まった。
元騎士「騎士団は、やはり追手を出せなかったようだな。
キミたち程度の野良犬は、すみやかに片付けてくれよう」
傭兵「ふん、飼い犬にすらなれなかった駄犬にいわれたくねえな!」
元騎士「かかれっ!!!」
傭兵「いくぞっ!!!」
ワァァァァ……! ウォォォォ……! - 23 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/23(水) 23:43:35 ID:/3OhcIYA
- キィンッ! キンッ! ギィン! ズシャッ! ガキィンッ!
傭兵「せあっ!」
ザシュッ!
兵士A「ぐはぁっ!」
傭兵「どあぁっ!」
ドシュッ!
兵士B「ぐあ……っ!」
傭兵は一歩も引かず、次々敵を倒していく。
しかし、正式な訓練を受けた経験のある集団であり、さすがに楽勝とはいかない。 - 24 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/23(水) 23:47:29 ID:/3OhcIYA
- やがて、日も落ち――
元騎士「ウワサ通りの腕のようだ。今日はこれまでだ。退くぞ」ザッ
傭兵「こっちも退くぞ!」ザッ
足場のよくない山中で、夜戦は互いに墓穴を掘ることになりかねない。
この日の戦いは終わった。 - 25 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/23(水) 23:50:44 ID:/3OhcIYA
- 拠点にて――
戦士「くそっ、けっこう傷もらっちまった。やっぱり手強いな」
戦士「だが、傭兵は大したもんだ! あいつら相手にも全く負けちゃいない!」
剣士「うん、ウワサ通りだとか強がってたけど、あれは相当驚いてるよ」
傭兵「今日の戦いは拮抗してたし、おそらくもう二、三日こんな展開が続くだろう。
だが、奴らの剣筋を覚えちまえば、こっちのもんだ」
戦士「へへっ、頼りにしてるぜ」
傭兵「任せとけ」ニヤッ - 26 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/23(水) 23:54:38 ID:/3OhcIYA
- 二日目――
ワァァ…… ワァァ……
キィン! ギィン! ガキンッ! キィン! ガッ!
傭兵「せあっ!」シュバッ
兵士C「ぐっ……!」ギンッ
傭兵(今日はずいぶん慎重だな、こいつら……)
傭兵の予想通り、互いに様子を見るような展開となった。
傭兵も奮闘したが、元騎士の手勢も防御に徹するような戦い方をしたため、
昨日ほどの戦果は上げられなかった。 - 27 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/23(水) 23:58:20 ID:/3OhcIYA
- 二日目の戦いが終わり、拠点へと戻る一同。
ザッザッザッ……
剣士「あいつら、今日はずっと守りを固めてたね」
戦士「傭兵が予想以上にやるんで、怖気づいたんだろうよ」
傭兵「ふん、おそらく奴らは長期戦に持ち込むつもりだ。
数や物量ではこっちが不利だからな」
傭兵「だが、そうはさせねえ。明日は、もっと攻めて、攻めて、攻めまくってやる」
ところが―― - 28 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/24(木) 00:03:03 ID:rnIC1AbU
- 傭兵たちの拠点は、焼き払われてしまっていた。
傭兵「なんだと……!?」
剣士「食料は全て燃やされ、武器や防具も破壊されてる……!」
戦士「マジかよ……!」
傭兵(くそっ……! あいつら俺たちと戦ってる間に、
他の部隊に拠点の場所を調べさせて、潰しやがったのか!)
傭兵(また、俺はこんな手に……!)
ワァァァ…… ワァァァ……
「野良犬どもを片付けろっ!!!」 - 29 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/24(木) 00:06:10 ID:rnIC1AbU
- 戦士「奴ら、攻めてきやがった!」
剣士「最悪のタイミングだ……!」
傭兵(やられた……!)
傭兵(あいつら……ハナから長期戦なんかするつもりはなかった!
今日……今夜、決めるつもりだったんだ!)
食事も取れず、装備も整えられないまま、傭兵たちは夜戦を強いられることになった。 - 30 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/24(木) 00:10:19 ID:rnIC1AbU
- 傭兵の前に、元騎士が現れる。
元騎士「まんまとかかったねえ」ニヤ…
元騎士「どうやらキミは、戦いには慣れているようだが――
拠点や補給が命綱となる“戦争”には慣れていないようだ」
傭兵「黙れっ!」
傭兵「メシなんか食わなくても、お前ら如きにッ!」
キィンッ! ギィンッ! キンッ!
――ザシィッ!
元騎士「うぐっ!」
元騎士「フ、フフ……やるじゃないか。そうこなくてはね……」 - 31 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/24(木) 00:14:43 ID:rnIC1AbU
- 傭兵「お前ら、逃げろ! 全員でだ!」
戦士「なにいってんだ……! オレたちを見くびるなよ! そんなことできるか!」
傭兵「ここで全滅したら、団長たちの負担もでかくなる!
山を下りて、このザマを団長たちに知らせてくれ! ――俺もすぐ追いつく!」
戦士「……分かった! 死ぬなよっ!」
ザザザッ……!
せめてもの償いにと、仲間たちを逃がす傭兵。
傭兵「さぁ、きやがれ!」チャキッ
元騎士「フッフッフ、仲間たちを逃がした、か……。
まさかここまでシナリオ通りになるとはね」
傭兵「……どういう意味だ!?」 - 32 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/24(木) 00:20:17 ID:rnIC1AbU
- 元騎士「この戦い、実をいうと狙いは“キミの首”だったのだよ」
元騎士「傭兵として特に名が売れているキミの首があれば、
いわゆる裏社会でも、いきなり破格の待遇で受け入れられるだろうからね」
元騎士「そうすれば、彼らの庇護によって、危険を冒して逃亡する必要もなくなる」
傭兵「そういうことか……! 北に逃げるつもりなんてなかったってことか!」
傭兵「たしかに俺の首を持っていきゃあ、お前らを厚遇する賊どもは多いだろう。
それだけ恨まれてるって自覚はあるからな」
傭兵「だが……そうと知ったらますます負けられねえなぁ!」
元騎士「フッ、たった一人で何ができる?」 - 33 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/24(木) 00:24:33 ID:rnIC1AbU
- キィンッ! ガッ! ガキィン! キィン! ガィンッ!
傭兵と元騎士が、白刃をぶつけ合う。
ビキッ……!
傭兵(ヒビが……!)
元騎士「今日、我々が守りを固めていたのは、キミの剣を消耗させるためだったのだよ。
拠点は潰しておいたから、替えの剣ももちろんない」
元騎士「キミの敗北は、もはや決定事項だ!」シュバッ
バキィン!
ついに傭兵の剣がヘシ折れてしまった。 - 34 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/24(木) 00:28:29 ID:rnIC1AbU
- 傭兵(いつもなら――)
傭兵(いつもなら……こんなことはなかった……)
傭兵『この剣、手入れしとけっ!』
女『はいっ!』
傭兵(あいつがピカピカに手入れしてくれてたから……)
傭兵(へっ、こんな時にあいつのことを思い出すなんてな……)
元騎士「さぁ、遊びは終わりだ。全員がかりで、ヤツの首を取るぞ!
我らが裏社会で栄光を得るための第一歩だ!」
オーッ!!! - 35 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/24(木) 00:32:26 ID:rnIC1AbU
- 傭兵(全員で来るつもりか……! ここまでだな……)
傭兵(まぁいい、あの村を……自惚れと、下らないしくじりで守れなかった俺には……
お似合いの最期だ……)
傭兵(せめて……刺し違えてでも、あの元騎士だけは討ち取ってやる!)ジャキッ
刃が折れた剣を構える傭兵。
その時だった。
「傭兵さぁ~ん!」
傭兵「!」 - 36 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/24(木) 00:38:04 ID:rnIC1AbU
- 女「剣を持ってきました! どうぞ!」チャキッ
傭兵「な……!?」
傭兵「……お前、なんでここにいる!? なんでここに来た!?」
女「今はそんなことをいってる場合じゃないでしょう!」
傭兵「……ちっ!」
バッ!
剣をひったくり、傭兵があらためて構える。
元騎士「なにっ!? まだ野良犬どもが潜んでいたのか!?」 - 37 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/24(木) 00:42:27 ID:rnIC1AbU
- そこへ、退却したはずの戦士たちも戻ってきた。
さらには“待ち伏せ部隊”からの援軍も加わっている。
戦士「嬢ちゃんのおかげで武器を新調できたぜ!」チャキッ
剣士「借りはきっちり返すよ!」チャキッ
もちろん、装備はばっちり整えられている。
女「皆さん、チャンスです! 敵は浮き足立ってますよ!」 - 38 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/24(木) 00:45:35 ID:rnIC1AbU
- 元騎士「くそっ! どういうことだ、これは!? なんだ、あの女は!?」
ギィンッ!
元騎士「うおっ!?」
傭兵の鋭い斬り込みに、元騎士がおののく。
傭兵「どうやら、お前は……戦争、っつっても勝ち戦には慣れてるが、
こういう“ピンチ”には慣れてねえようだなぁ!」
キィンッ! ギィンッ! ガキンッ!
元騎士「わ、わわっ! ――お、おい、誰かっ!」 - 39 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/24(木) 00:49:26 ID:rnIC1AbU
- 傭兵が大きく剣を振りかぶる。
傭兵「だあああああっ!!!」
ザバシュッ……!
元騎士「こ、こんなはず、じゃ……っ!」ガハッ…
ドチャッ……
傭兵の一閃が、元騎士を鎧ごと叩き斬った。 - 40 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/24(木) 00:55:45 ID:rnIC1AbU
- 元騎士が倒れた後の敵集団は、もろくも崩れ去った――
傭兵「ハァ、ハァ、ハァ……」ドサッ
女「大丈夫ですか!?」
傭兵「水……くれ」
女「はいっ、パンと水をお持ちしました!」
傭兵「…………」ゴキュゴキュ…
傭兵「…………」ガツガツ…
むさぼるようにして、あっという間にパンと水を平らげる傭兵。 - 41 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/24(木) 01:00:22 ID:rnIC1AbU
- 傭兵「……ありがとよ」
女「間に合ってよかったです。あの元騎士のことを調べたら、
長期戦に見せかけ、短期戦を仕掛けるのが得意、とのことだったので……」
傭兵「……嫌な予感がしたってわけか」
傭兵「しっかし、なんで俺たちがいる場所が分かったんだ?
それに、よくここまで食料や装備を持ってこれたな」
女「山のふもとで暮らす人たちから、山のどこが騒がしいかを聞いてきたんです。
それと、地図で目立たないルートは調べておきましたから」
傭兵「ふふっ、なるほどな……」
傭兵(ふもとの住民から情報を得て、地理を熟知してたおかげってわけか……。
こいつ……いつも遊んでたわけじゃ、なかったんだな……) - 42 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/24(木) 01:03:34 ID:rnIC1AbU
- 傭兵「だけど、もし……俺が劣勢じゃなかったら、どうするつもりだったんだ?」
傭兵「俺はあんだけお前を脅しつけてたんだぞ?
怒鳴られたり、下手すりゃ殴られたかもしれないんだぞ?」
女「その時はその時です!」
女「傭兵さんが死んじゃうのに比べれば、どうってことないですから」
この答えに、傭兵は困惑する。
傭兵「……なんなんだ、お前? なんでそこまで俺に肩入れする?
普通、こんだけ邪険にされたらイヤになるだろ?」
女「そりゃあ、傭兵さんはウチのエースですから! 大切にしないと!」
傭兵「なるほど……。案外ドライな感性してるんだな」 - 43 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/24(木) 01:08:38 ID:rnIC1AbU
- 女「――ってのは、建前です」
傭兵「へ?」
女「ホントのホントは……」
女「傭兵さんは、私の村を助けようとしてくれたからです。
兵士も騎士も、みんなが見捨てた、あのちっぽけな村を……」
傭兵「…………」ハッ
傭兵の目が見開かれる。
傭兵「お前……! お前……まさか……!」
女「はい……。私はあの村の……生き残り、です……」
傭兵「ああっ……!」
女「生き残った私は、どうしても傭兵さんの力になりたくて……。
後方支援のノウハウを色々と勉強して……傭兵団に入ったんです……」
女「きちんとサポートできる人がいれば、傭兵さんはもっと活躍できるって……」 - 44 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/24(木) 01:14:26 ID:rnIC1AbU
- 傭兵「俺の力になりたい!? なんでだよ! 俺はあの村を救えなかった!」
傭兵「恨まれこそすれ、恩を感じられる筋合いなんかない!」
女「いいえ、そんなことありません」
女「だって、あの小さな貧しい村の依頼を受けてくれたのは、
あなただけだったんですから」
女「だから……山賊たちが村に攻め込んできた時も、
傭兵さんに対して恨みごとをいってる人なんて、一人もいませんでしたよ」
女「もし自分たちがやられても、きっと傭兵さんならカタキを取ってくれるって……」
傭兵「…………」 - 45 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/24(木) 01:19:46 ID:rnIC1AbU
- 傭兵「うっ……!」ホロ…
女「傭兵さん!?」
傭兵「うあっ……! うおおおおおおおおおおおっ……!」
傭兵「うあああああああああっ……!」
傭兵は涙を流した。
まるで、長年その胸につかえていたものを全て洗い流すかのように。
………………
…………
…… - 46 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/24(木) 01:22:59 ID:rnIC1AbU
- それから三ヶ月後――
― 町 ―
眼帯「おい、そこの女!」
女「は、はいっ!?」ビクッ
眼帯「てめえんとこの傭兵団のせいでよぉ、
同業者のオレらは商売あがったりなんだ! どうしてくれんだ、ええ!?」
手下「そうだそうだ!」
女「そんなこといわれても……!」
眼帯「なにぃ~!? なんなら、オレらがこうむった損害を体で払わせてやろうか!?」 - 47 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/24(木) 01:25:39 ID:rnIC1AbU
- 傭兵「おっと」サッ
女「あっ」
二人組の前に立ちはだかる傭兵。
眼帯「ゲ!?」
手下「ひいっ!」
傭兵「“俺の女”に手を出すんなら、まず俺を倒してからにしな」
眼帯「い、いやっ! いえっ! す、すみませんでしたっ!」タタタッ
手下「失礼しましたぁ!」タタタッ - 48 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/24(木) 01:31:17 ID:rnIC1AbU
- 傭兵「ったく、俺たちを妬む同業者も多いんだから、ああいう連中には気をつけろ!
お前は傭兵団の要なんだからな!」
女「うん……ごめんなさい」
女「だけど私のことは、あなたが守ってくれるんだよね?」
傭兵「まぁ……な」コホン
傭兵「だが、俺が最高の戦いをできるよう、お前もしっかりサポートを頼むぞ!」
女「もっちろん!」
~おわり~ - 49 : ◆78/Cl05dLo 2015/09/24(木) 01:32:19 ID:rnIC1AbU
- 以上で完結となります
- 50 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/24(木) 01:38:57 ID:JTwfHsgQ
- 乙
こんな嫁がほしい - 51 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/24(木) 02:04:21 ID:OvtrEjcE
- 不器用な旦那と出来る嫁だよな
爽やかな読了感だ、乙 - 52 : 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/09/24(木) 03:13:48 ID:ClhVmrTc
- 乙
剣が強いだけじゃ戦いには勝てないもんな

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