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絵里「オリオンの矢」
- 1 : 名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/ (ワッチョイ fbb7-c+Vo) 2015/10/25(日) 22:58:14.40 ID:42GY5Yg90.net
- 「今から会えない?」
時刻は10時過ぎ。もうご飯も食べてお風呂も入った。
ちょっとだけ明日の予習をしてもう寝ようかな、でも今日はもう少し起きていたいな、なんて思っていた私に短いメッセージが届いた。
つい何時間か前に誕生日パーティーをやってくれたっていうのに今から?
一体なんの用だろう。
もしかしてプレゼントでも渡し忘れた?
まさかまさか、二人っきりで愛の告白?
……なんてね。
とりあえずは了承の旨とどこにいけばいいかという質問を返すと、迎えに行くとの返事がすぐさま帰って来た。
うーん、王子様を出迎えるのにパジャマはまずいわね。
- 2 : 名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/ (ワッチョイ fbb7-c+Vo) 2015/10/25(日) 22:59:08.04 ID:42GY5Yg90.net
- *
「こんばんは、エリー」
「ええ、こんばんは」
返信が帰ってきてから十分くらいで王子様はやってきた。
家からならもう少しかかると思っていたけれど随分早い到着ね。
そんなことを思いながらドアを開けると、μ'sのお抱え作曲家は遅くにごめんなさい、と軽く頭を下げた。
「どうしたの急に?」
「その……もしかしたら時間がかかるかもしれないけど、それでもいいって言うなら付いてきてくれないかしら」
「それってどれくらい?」
「早ければ1時間くらい。長ければ……朝までね」
もちろん朝まで付き合ってとは言わないし、最悪泊まっていってもいいと真姫は付け加えた。 - 3 : 名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/ (ワッチョイ fbb7-c+Vo) 2015/10/25(日) 23:00:09.42 ID:42GY5Yg90.net
- 時間にして一時間から九時間ってだいぶ幅があるわね。何する気なのかしら。
「んー、どうしようかなー?」
片手を頬に当てスーパーで今日の献立に悩む主婦みたいなフリをしてみると、真姫が不安そうな顔でこちらを伺ってくる。
目的がなんなのか今の私には皆目見当もつかないが、このまま帰してしまうのは胸が痛い。
まあ断るつもりなんて最初からないんだけどね。
「いいわ。ちょうど今、誰かと話したい気分だったのよ」
真姫の表情がぱっと明るくなった。
「今日は友達の所に泊まるって言ってくるわね」
私が一度リビングに戻ろうとすると、後ろから呼び止める声がする。
「本当に大丈夫……?迷惑じゃない?」
今更引き下がるような私じゃないわ。
気にしないでと微笑みかけると照れくさそうなありがとうという返事が帰ってきた。
「あ、それと……」
「まだ何か心配?」
「今夜は冷えるわよ」
「じゃあ、コートも出してくるから。ちょっと待ってて」 - 4 : 名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/ (ワッチョイ fbb7-c+Vo) 2015/10/25(日) 23:01:10.66 ID:42GY5Yg90.net
- *
「随分寒くなってきたわね~」
肌寒い風が私の頬を撫で、髪を揺らす。
まだ当分出番は無いかと思っていたけれど、学校帰りに手袋が必要になるのも近そうだ。
少し行儀が悪いけれどコートのポッケに両手を突っ込みながら、私を先導する真姫の後ろ姿を眺めてそんなことを考える。
「もう10月だもの。制服だって今は冬服じゃない」
「そうは言っても、ついこの間まで夏休みだった気がするのよ」
「私としては色々なことがあり過ぎて夏なんて遠い昔の話に思えるわ」
確かに真姫の言うとおり、夏休みが終わってから色々なことがあった。
第2回ラブライブの開催が決まり、すぐに2回目の合宿。
それにまさかUTXの屋上でライブができるなんてね。
でも私にとって、あの日μ'sに入ってからの毎日は全部あっという間の出来事なの。
μ'sの物語はこれから先、どこまで続くのでしょうね。 - 5 : 名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/ (ワッチョイ fbb7-c+Vo) 2015/10/25(日) 23:02:03.12 ID:42GY5Yg90.net
- 「だけど急にびっくりしたわ。こんな時間に、なんて」
私の言葉に真姫は一度こちらを振り返ったが、すぐ前に向きなおしてしまった。
「……ごめんなさい。どうしても見せたいものがあって」
「見せたいもの?」
「ええ、どうしても今日じゃないとダメだったの」
今日じゃないとダメ。真姫の言葉を反芻してその意味を探ってみるけど、今の私にはさっぱりわからない。
「でもそれならもっと早く言ってくれればよかったのに」
「やっぱり夜中に二人っきりなんて迷惑かと思って」
「そうでもないわよ?なんだか眠くなかったし、それに……」
小走りで真姫の隣まで並び、彼女の顔をのぞき込んだ。
「真姫といるのは楽しいし」
「い、今は歩いてるだけじゃない。意味わかんないっ」
ほら、こういうところよ。
ぷいと顔を背けてしまったけど、赤くなってるのかしら。 - 6 : 名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/ (ワッチョイ fbb7-c+Vo) 2015/10/25(日) 23:02:50.76 ID:42GY5Yg90.net
- それにしてもどこへ向かっているのだろう。
私の家を出ると真姫は北へと向かい、今は神田川に沿うように私たちは西へと歩を進めている。
真姫の家に行くにはちょっと通り過ぎてしまったし、学校からは離れていってる。
もっともこの時間に学校へ行っても中には入れないか。
こっちを見てくれない真姫だけど、そろそろ私達の目的地くらいきいてもいいわよね。
「ねえどこに行くの?」
「……それはヒミツ」
あ、もしかして。
「私、わかっちゃったわ」
「本当?」
「ええ。当たったらジュースおごりね」
「まあ、それくらいいいわ」
「ずばり……真姫の病院でしょ」 - 8 : 名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/ (ワッチョイ fbb7-c+Vo) 2015/10/25(日) 23:04:12.45 ID:42GY5Yg90.net
- 「んー……残念、半分正解だけど半分外れよ」
「あら、結構自信あったのに」
「行き先はうちの病院で合ってるけれど、“私の”病院ではないわ」
しまった、エリーチカ痛恨のミスね。
「でも半分正解だから半額おごりね」
「それ、ただの割り勘じゃない……」
どうやら私が睨んだ通り、私達は西木野総合病院に向かっているらしい。
けれどどうしてこんな時間に病院に?
え、ちょっと待って。
深夜に……病院……?
「ま、まさか……肝試しとか!?見せたいものってユーレイなの!?」
「……違うわよ」
慌てふためく私に、呆れたように真姫が言う。 - 9 : 名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/ (ワッチョイ fbb7-c+Vo) 2015/10/25(日) 23:05:59.41 ID:42GY5Yg90.net
- 「安心して、うちの病院は心霊スポットじゃないから。そういう噂が立つのはちょっとよろしくないし」
「そ、それもそうよね……」
よかった。ホッと胸をなでおろす。
「それに、肝試しするなら学校で十分よ」
前言撤回。今のは聞き捨てならないわ。
「うちの学校って……出るの?」
「元々古い学校だし、そういう話はいっぱい聞いたことあるわよ。希なんて七不思議三十個くらい知ってるって言ってたし」
「それってもう七不思議じゃないじゃない!」
七不思議って七つ知ったら死んでしまうのよ?
余計に3人ちょっと死んじゃうじゃない。
希と私と、真姫と……にこ?
嗚呼、亜里沙……先立つお姉ちゃんを許して……。
「皆そういう噂話が好きな年頃なのよ。今年新しく『放課後の音楽室にはピアノを弾く女生徒の霊が現れる』っていう七不思議が追加されたらしいわ」
「お祓いしてもらった方がいいわね……」
「ふふ、そうね」
真姫、笑い事じゃないわよ!
……こういうのってどこに頼めばいいのかしら。 - 10 : 名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/ (ワッチョイ fbb7-c+Vo) 2015/10/25(日) 23:07:34.21 ID:42GY5Yg90.net
- *
私の家を出発してからだいたい十五分、着きましたるは西木野総合病院。
だけどどうやら二人だけの百鬼夜行はここで終わりではなく、真姫はずんずんと中に入っていく。
「ねえ、入っちゃったけど……いいの?」
「ゆくゆくは本当に私の病院になるかもしれないし、多少は顔が利くのよ」
「そういうものなのねぇ……」
「そういうものなの」
途中で真姫に「ちょっと借りてくるものがあるから待ってて」と言われたけれど、一人で待つのが怖くて私もついていったのはここだけの秘密よ♪
「はいこれ、絵里の分」
そして向かったエレベーターの中で渡されたのは懐中電灯。
「……やっぱり肝試しなの?」
「だから違うって。中は不便がないくらいには明るいけれど、屋上の照明はもう消えてるはずだから、一応ね。あんまり騒いじゃ駄目よ?」
ようやく見えた旅の終着点はどうやらこの建物の最上階らしい。 - 11 : 名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/ (ワッチョイ fbb7-c+Vo) 2015/10/25(日) 23:08:57.61 ID:42GY5Yg90.net
- *
私の中で病院の屋上っていうと周囲をフェンスが囲んでいて、シーツが干してあって、みたいな殺風景なイメージだったけど、
「芝生……?」
私の持つ懐中電灯の光が照らしたのは芝生や花壇。ベンチやテーブルまであるのね。
「ヒートアイランド現象がどうのこうのって言われたらしくてね、屋上緑化ってやつよ」
「病院経営も大変ね~」
私が感心しながら周りに視線と光を向けると、真姫が何の花なのか教えてくれた。
「その辺りのはハーブとかセダムとかね。そっちの花壇は……マリーゴールドかしら」
「もしかして見せたかったのってこれのこと?」
「違うわ、絵里」
言うと同時に二つしか無い私達の光源の片方、真姫の持っていた光がぱっと消えた。
やめて、急に明かりを消すのは私の心臓に悪いのよ。
そんな抗議の念を込めて真姫に懐中電灯を向けると、彼女の手が肩のあたりで天を指していた。 - 13 : 名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/ (ワッチョイ fbb7-c+Vo) 2015/10/25(日) 23:11:23.84 ID:42GY5Yg90.net
- 「上よ、上」
上?
「あ……綺麗な星……」
「満点の星空ってわけにはいかないけど、できるだけ高くて周りが開けている場所。なかなかの条件だと思うわ」
なるほど真姫の言うとおり地上から見上げるよりは視界を邪魔するビルも少なく、幾分か星も大きく感じられる。
「学校の屋上ってのもそれなりに良さそうではあるけど、夜の学校に忍び入るのはちょっとね」
「そうね……」
360度、周囲を包み込む星空に圧倒され、おざなりな返事になってしまった。
夜空を意識して見るのなんて、なんだかすごい久しぶりな気がするわ。
「そのまま見上げてると首が疲れるわよ」 - 15 : 名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/ (ワッチョイ fbb7-c+Vo) 2015/10/25(日) 23:13:49.30 ID:42GY5Yg90.net
- *
真姫が持ってきたレジャーシートを芝生の上にひいて座ると、さっき借りてきたという毛布をかけてくれた。
あなたは寒くないかと尋ねたけれど、私は慣れてるからとよくわからない答えが返ってきた。
まあそれならいいんだけど……。
私の右隣に座った真姫は指を指しながら星座の説明をしてくれる。
「あそこの三つ並んだ星はアルニタク、アルニラム、ミンタカ。オリオン座のベルトね」
「アルニタク、アルニラム、ミンタカ……そんな名前だったのね」
東の空、地平線の少し上に浮かんでいるのはおそらく知名度ナンバーワンの星座なのだけれど、その特徴とも言える三つ並んだあの星たちは随分とややこしい名前をしてるのね。
穂乃果、ことり、海未っていう名前に変えるのはどう?だいぶ覚えやすいと思うわ。
「まああの三つの名前はちょっとマイナーね。その左の方の一番明るい星、あれがオリオンの右肩、ベテルギウス」
「ああ、あの赤っぽやつね」
「ええ。それで三ツ星を挟んでベテルギウスの反対側にあるのがリゲル。左足ね。青っぽいやつ」
「詳しいのね、真姫」
それに心なしか楽しそう。 - 16 : 名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/ (ワッチョイ fbb7-c+Vo) 2015/10/25(日) 23:15:22.86 ID:42GY5Yg90.net
- 「ま、まあ一応趣味みたいなものだし……」
声のトーンもいつもより少し高い気がする。
「だいたいオリオン座の星くらい誰でも知ってるでしょ?」
うーん、有名所ならなんとか。
「ベテルギウスの反対側の左肩がベラトリクス、リゲルの反対側の右足がサイフって星よ。こっちはほかと比べるとわかりにくいかも」
「三つ星とリゲル、サイフを繋いだ台形がオリオンの下半身ね」
「そう、その反対側で三ツ星とベテルギウスとベラトリクスと、その真ん中あたりにあの明るいのを繋いだ五角形がオリオンの上半身よ。他に有名なのは……そうね、オリオン座のベルトからちょうど左下の方へ伸ばしていったところに明るい星があって、それがおおいぬ座の……」
「シリウス、よね?」
「ご名答。星の中で一番明るいのよ。今の時間はちょっと低いところにあるからまだ見えないわね。その左の方にこいぬ座のプロキオン。ベテルギウス、シリウス、プロキオンを繋いだのが冬の大三角ね」
真姫は指先を動かして三角形を作った。
「冬の大三角なんて小学生か中学生の理科で聞いた以来だわ」
「そう?じゃあ来週のテストに出すわよ」
ふふんと笑う真姫はやっぱり機嫌がいい。 - 17 : 名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/ (ワッチョイ fbb7-c+Vo) 2015/10/25(日) 23:17:11.28 ID:42GY5Yg90.net
- 他にも真姫はその周りの星座の説明をしてくれた。
今、オリオン座の左の方にあるのが双子座で上に牡牛座、右の方には1本線のエリダヌス座っていう河の星座があるんですって!
正直言ってどこの星をどう繋げばいいのかピンとこないところもあったし、真姫もこんなに話すんだったら星座早見盤でも持ってくればよかっただなんて漏らしていたけれど、楽しそうに星について語る真姫なんてレアな姿を見られて役得ね。
いつもは素直に本心を見せてくれないこの後輩も可憐な16歳の女の子なんだなって改めて思う。
「なによ絵里、人の方ジロジロ見て。なにか付いてる?」
「暗くてよくわからないわよ」
「……それもそうね。えっと、どこまで話したっけ?あー、そうだ。それじゃあせっかくだしオリオンの話でもしましょうか」
「オリオン座の?」
「ええ、そうオリオン座の神話。もしかして知ってる?」
「そういうのは疎いわ」
「まああまり面白いものでもないけどね。子供のころ、こんなに見つけやすい星座にされたんだから、さぞかし立派な偉業を成し遂げたんだろうな、と思って調べたら拍子抜けしたのを覚えてるわ」
「そう言われるとむしろ知りたくなるわね」
「そう?じゃあまずオリオンっていうのはギリシャの狩人でね……」 - 18 : 名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/ (ワッチョイ fbb7-c+Vo) 2015/10/25(日) 23:18:26.23 ID:42GY5Yg90.net
- *
オリオン『ハァイ!人生楽しんでる?絢瀬エリー、17歳よ。私のお祖母様は神様なの』
ポセイドン『こんばんは、海未の神です。海は私です。出番はここだけです』
オリオン『狩りって大変そうに見えるでしょ?実際結構簡単なのよね』
鹿『ぐぇ』
オリオン『今日もこれで25251匹の鹿を狩ってしまったわ』
ガイア『あうぅ……し、鹿さんが狩られすぎちゃってこのままじゃ絶滅しちゃうよぉ……うう』
サソリ『かよちんを泣かす奴は凛が許さないのにゃ!』
オリオン『小さい頃はかしこいかわいいエリーチカ、なんて呼ばれていたわ』
サソリ『誰も聞いてないのにゃ。今のうちに刺してチクリにゃ』
オリオン『いてっ』
*
「で、彼はサソリの毒が回って死んでしまったのよ」
「随分と間抜けな死に方ね……」 - 19 : 名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/ (ワッチョイ fbb7-c+Vo) 2015/10/25(日) 23:19:39.18 ID:42GY5Yg90.net
- 「不死身のはずだったアキレスも足の腱を矢で射られて死んでしまった。英雄の最期なんて得てしてそういうものよ」
「そういうものなの?」
「そういうものなの。だけど彼はよっぽど見てくれがよかったんでしょうね。その死を悲しんだ月の女神アルテミスの計らいで彼は天に昇り、星になったの」
だけど彼にとっては不幸なことに、と真姫は言葉を続ける。
「サソリの方も、調子に乗っていたオリオンを倒したということで手柄が認められて星座になったの。今でも彼はサソリが苦手で、サソリが東から昇ってくると慌てて西の空に沈んでしまうのよ」
「あ、さそり座って確か夏の星座よね」
「そう、だからさそり座とオリオン座は一緒には見られない。でも彼が星座になった訳にはもう一つ有名な話があってね」
「なになに?」
「えーっと……今度はオリオンとさっきちょっとだけ出てきたアルテミスが恋に落ちるのよ」 - 20 : 名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/ (ワッチョイ fbb7-c+Vo) 2015/10/25(日) 23:21:24.12 ID:42GY5Yg90.net
- *
アポロン『だって可能性感じたんだ~♪そうだススーメー♪後悔したくない目の前に僕らの道がある~♪』
レッツゴードゥーン!アーイ!ドゥーン!アイライブイェスドゥーン!アーイ!ドゥーン!アイ!ライブ!レッツゴー!レッツゴー!ハイ!
これが私!高坂穂乃果!太陽の神!
いま、私の家、高坂家がピンチなの!
それは私の妹、真姫ちゃんがどこの馬の骨ともわからない狩人といい感じになってしまったのがきっかけだった……
オリオン『ハラショー』
アルテミス『イミワカンナイ////』
アポロン(なに顔赤らめてるの!?意味わかんないのはこっちの方だよ!!)
アポロン(絶対許さない……真姫ちゃんはお姉ちゃんだけのものなんだからね……!) - 21 : 名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/ (ワッチョイ fbb7-c+Vo) 2015/10/25(日) 23:22:21.90 ID:42GY5Yg90.net
- ―後日―
アポロン『ねえ、真姫ちゃん!腕立て伏せできる?』
アルテミス『で、できるわよそれくらい!いーち……にーい……さーん……どう、これでいい!?』
アポロン『わー、真姫ちゃんすごーい!でもなー……いくら真姫ちゃんでも海の向こうに見えるあの金色の的に矢は当てられないだろうなぁ~』
アルテミス『ふん!私は月の女神であり狩猟の女神よ!これくらい真姫ちゃんにかかればお茶の子さいさいなんだから!見てなさい!』ヒイフット
『いてっ』
アポロン『お見事!さすが真姫ちゃん!!』
アルテミス『当然ね!』
アポロン(計画通り……!) - 22 : 名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/ (ワッチョイ fbb7-c+Vo) 2015/10/25(日) 23:23:42.40 ID:42GY5Yg90.net
- ―数日後―
アルテミス『う、嘘よ……なんでこんなことに……!』
なんということでしょう、頭を矢で射抜かれたオリオンの亡骸が浜に打ち上げられていたのでした。
アルテミス『ごめんなさい……!ごめんなさい絵里……!』
アポロン『元はといえば真姫ちゃんが悪いんだから……』
ゼウス『悪いのは穂乃果ちゃんだよ』
アポロン『げ、ことりちゃん!?』
ゼウス『穂乃果ちゃんには後でお仕置きですっ!』
アポロン『お、お願いだから許してー!!』
ゼウス『ダメだよ、穂乃果ちゃんはことりのおやつにしちゃいますっ!ごめんねぇ真姫ちゃん……せめてこの娘は星にするからね』
*
「と、こんな感じで彼は空に昇ったの。まあ今のは両方ともだいぶ噛み砕いて脚色した話だけど、大筋は今言った通りよ」
「なんていうか……どっちの話もやるせないわね」 - 23 : 名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/ (ワッチョイ fbb7-c+Vo) 2015/10/25(日) 23:25:24.72 ID:42GY5Yg90.net
- 「そうね……でも私は二番目の話の方が好き」
「どうして?」
「ぽっと出のサソリよりはせめて愛した人の手で殺された方が彼も報われるでしょう?それにアルテミスなんていい女に惚れられてるんだもの。現に冬の空では、彼のすぐそばを月が通っていくのよ」
「あら、ロマンチックね。夜空にそんな物語があったなんて知らなかったわ」
「神話ができたような頃の大昔は本当に何もなかったでしょうから……夜になればこうやって星に思いを馳せて、物語を紡ぐしかなかったのよ」
私も……と小さく呟いた真姫だけどその先は言いかけてやめてしまった。
「今なんて言おうとしたの?」
「……別になんでもないわ」
「嘘つかないの」
強情ねえ。こういう時はスキンシップが大事よ。
というわけで隣にいる真姫の肩を抱き寄せてみました。
「ちょっ……何するのよ……」
困惑する真姫からはふわりとシャンプーの香りが漂ってきた。 - 24 : 名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/ (ワッチョイ fbb7-c+Vo) 2015/10/25(日) 23:27:01.55 ID:42GY5Yg90.net
- 「ほら、言ってみなさいよ」
観念しなさい、真姫。
抱き寄せた右手で優しく肩をポンポンと叩いて話を促してみる。
「もう……別に大したことないわよ。私も大昔の人と同じようにある意味でそうするしかなかったって話」
「ある意味で?」
「……そう。うちの両親、夜遅くまで帰ってこないことが多かったから。絵里みたいに妹とかもいないし、幼い頃の私も夜一人で星を眺めては……思いを馳せるしかなかったのよ。こうやって一緒に語り合える友達もいなかったし」
ありゃ、まずったわね。そんな話を聞くとなんだかとってもあなたが愛おしく思えてくるじゃない。
「ただそれだけの話よ。聞けて満足?」
ぎゅっと力を入れて真姫の体を抱きしめ、頬を寄せた。
「ええ、私は今まで知らなかったあなたのことを知れて満足よ」
「もう、調子いいんだから……」
呆れたように真姫は言うけど、体の力を抜いて彼女もこちらに身を寄せてきた。
頭でも撫でてあげようかな、なんて私が思っているとその時夜空をキラリと光の筋が横切った。
「真姫、今の見た!?流れ星よ!」
ハラショー!流れ星なんて私初めて見たわ。 - 25 : 名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/ (ワッチョイ fbb7-c+Vo) 2015/10/25(日) 23:28:31.61 ID:42GY5Yg90.net
- 「……よかった」
興奮し、夜空に消えてしまった光の軌跡を指でなぞっている私とは対照に、真姫は小さくひとり呟いた。
「え、何が?」
「あー、いや……もう月が沈んだのね」
「月?」
言われて夜空を見渡すと、確かに真姫の言うとおり先ほどまで白く輝いていた半月が今はどこにも見つからない。
「月明かりとか、余計な光はない方が流星は見えやすいのよ」
そういうものなのね。
「知ってたの?今日ここで見られるって」
「知ってたっていうか……今日はオリオン座流星群の見頃なの」
ハラショー……。
流星群ってことはたくさん見られるのかしら。
「むしろ……やっぱり絵里は知らなかったの?」
うん、知らなかった。 - 26 : 名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/ (ワッチョイ fbb7-c+Vo) 2015/10/25(日) 23:31:02.31 ID:42GY5Yg90.net
- 「まあ、そっちの方がサプライズプレゼントとしては成功だからいいんだけど」
「じゃあ見せたかったのって、これのこと?」
ええ、まあねと照れくさそうに横で真姫が笑った。
サプライズは大成功、最高のプレゼントだと思うわ。
「でも今日はもう真姫からはとっても素敵なバースデーソングを貰ったわよ?」
何時間か前に開かれた私の誕生日パーティーで、凛と花陽と真姫たちが贈ってくれたプレゼント。
そのことについて尋ねると「あ、あれは……」と目を伏せ考え始めちゃったけれど、ここってそんなに悩むところ?
「あれは……あれなの!」
ようやく出たらしい結論は要領を得ない。
つまりどれよ。
「べ、別に絵里の為に作ったんじゃないんだからっ!」
どこかで聞いた事があるようなセリフに思わず笑っちゃいそうになっちゃったけど、もう……それはないんじゃないの?
この娘はホントにしょうがないんだから。
えいっ。 - 27 : 名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/ (ワッチョイ fbb7-c+Vo) 2015/10/25(日) 23:32:36.32 ID:42GY5Yg90.net
- 「……何してるの、絵里」
「嘘をつく後輩へのお仕置き」
指でほっぺをつんつんの刑よ。
「……うちは先輩禁止でしょ」
「後輩扱いは禁止してないわ」
ぷにぷに。
うーん、すべすべとした手触り、柔らかく、それでいて弾力のあるこの感じ、まさにマシュマロほっぺってやつね。
若いっていいわ。
「……屁理屈よ」
楽しくなってきちゃった。両手でやっちゃえ。
右に向き直り両手で真姫の両のほっぺを指でつついたりつまんでみたり。
「もういつまで続けるの……」
ジトっと横目で私を睨んでくるけど払い除けたりしないあたり、オッケーってことよね。 - 28 : 名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/ (ワッチョイ fbb7-c+Vo) 2015/10/25(日) 23:34:45.16 ID:42GY5Yg90.net
- 「いつまでって、それは真姫が素直になるまでよ」
「わ、わかった。わかったわよ……」
「ほんとにー?」
「……あ、今流れ星見えたわ」
「え、どこどこ!?」
慌てて真姫の視線の先を追いかけたけど何も見つからなかった。
「もう消えちゃったわよ」
なんてことでしょう。
真姫の方を見てると星が見られないわ。
逆もまた然り。
これは由々しき事態ね。
私がこの二律背反をいかにして解決するかを考えあぐねていると、真姫がなにやらぽつぽつと語り始めた。 - 29 : 名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/ (ワッチョイ fbb7-c+Vo) 2015/10/25(日) 23:36:42.46 ID:42GY5Yg90.net
- 「オリオン座流星群っていうのはね、毎年この時期……ちょうどあなたの誕生日くらいなの」
あら、もしかして本当に素直になっちゃったの?
それはそれでつまらないわ。
「だからもしいつか……あなたが私達のことを忘れちゃっても……こうやって十月の夜空を見上げた時に私達のこと……ううん」
彼女は首を振って自身の言葉を否定し、一呼吸おいてからその先を続けた。
「……私のこと、思い出してくれるんじゃないかって……そう思ったの」
もう、この娘はホントに……。
「ごめんなさい、こんな話……その、嫌よね。今のは忘れて。……お願いだから」
まったく、手のかかる後輩なんだから。
「私は忘れたりなんかしないわよ」
「……忘れなさいよ」
「こんなに素敵なプレゼントをくれた人のこと、忘れたりするわけないでしょう?」
せっかくマッキーが素直になったんだから、私も全てを秋の夜長のせいにしてちょっとだけ素直になってみようか。 - 30 : 名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/ (ワッチョイ fbb7-c+Vo) 2015/10/25(日) 23:38:23.90 ID:42GY5Yg90.net
- 「今日ね、とっても嬉しかったのよ?ベットに入って今日という日が終わってしまうのが怖かった。もしかしたら明日になったら今日のことは夢になっちゃうんじゃないかって思ってね。こんなにたくさんの人におめでとうって言われたこと、なかったから」
「嘘よ。才色兼備のロシアンクォーターなんて黙ってても人が寄ってくるでしょう?」
「んー、どうかしら?元々あんまり友達多い方じゃないし、別に私は一人でもいいと思ってたし。最近はね、前より取っ付きやすくなったってよく人に言われるの。だからきっとそういうことなんじゃない?」
「まあ……確かに、前の絵里は、ちょっとこう……」
遠慮がちに真姫が言うのは多分何ヶ月か前の私。その頃の私は……。
「嫌な奴だった?」
「……端的に言えば、そうね」
真姫の返事は歯切れが悪い。
「いいわよ気にしなくて。自分でもあなた達に対してはそうであったと思うし、事実私もそうであろうとしてた」
「……どうして?」
なんでだっけかしら。
「嫉妬、してたのかも」
「嫉妬?」
「そう表現するのか正しいのかはわからないけど……そうね、そう。」 - 31 : 名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/ (ワッチョイ fbb7-c+Vo) 2015/10/25(日) 23:41:44.15 ID:42GY5Yg90.net
- あれはいつだっけ……今年のはじめね。
最初に廃校の知らせを聞いた時、私がどうにかしないといけないと思った。
お祖母様の愛したこの学校を私達の代で終わらせてしまっては、私にはもうお祖母様に合わせる顔がないもの。
だから生徒の代表として絶対……絶対に私がやらなきゃいけないんだって、強く思った。
でも何をするにしても理事長は許可を出してはくれないし、私達は……いや、私だけだったのかな。
全部空回りして。
そんな時に随分あなた達は楽しそうにやってたじゃない。
バレエを挫折してやめちゃったあの日から……なんて言うか……私、頑張るのが怖くなっちゃって……。
中学、高校って今まで部活とかやってこなかったから、放課後に一生懸命練習してるあなた達が眩しくて……とっても羨ましかった。
そんなことを途中何度か言葉に詰まりながら私が話している間にも流星が一つ、光の糸をひきながら夜空を斜めに堕ちていった。 - 32 : 名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/ (ワッチョイ fbb7-c+Vo) 2015/10/25(日) 23:43:01.01 ID:42GY5Yg90.net
- 「初めて部室に入った日、あの時すっごい怖かったのよ?まあ、私いろんなこと言っちゃったから……。でも皆受け入れてくれた。今日は素敵なプレゼントまで貰って、感謝してもしきれないし、忘れたくても忘れられるわけないじゃない」
「本当に……?」
「ええ、もちろん。あの星に誓うわ」
「……そんなこと誰にでも言ってるんでしょ?」
「言わないわよ」
この娘は私をなんだと思ってるの?
「でも絵里だって……卒業しちゃうじゃない」
「私に留年しろって?」
「そうは言わないけど……。絵里は、アイドル……続けないの?」
卒業してからのこと、ね。
決して一度も考えなかったわけではないけれど。 - 33 : 名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/ (ワッチョイ fbb7-c+Vo) 2015/10/25(日) 23:44:56.07 ID:42GY5Yg90.net
- 「どうでしょうね。先のことはまだわからないわ」
だけどあんまりアイドルを続けてる私というのは想像できない。
もっとも一年前の私はスクールアイドルをやるだなんて夢にも思っていなかったわけだから、やっぱり未来のことは誰にもわからない。
「もしかしたら私、急にロシアあたりに留学が決まっちゃうかも」
なんて冗談っぽく言ってみるとそんなのドタキャンさせてやるわと頼もしい?答えが返ってきた。
流石に留学するつもりはないけれどそれでも、一つだけ言えることがある。
「私はね、私を受け入れてくれたスクールアイドルが好き。あの流れ星みたいに短い一瞬だけしか人に見てもらえなくても」
「絵里……」
「桜の花が散ってしまうのは寂しいけれど、散らない桜は……もうそれは桜じゃないでしょう?精一杯いまを輝いて、それでちょっとだけでも、誰かの心に何かを残せたら……」
誰かっていうのは、私達を見てくれている人、応援してくれている人であり、μ’sの皆であり、自分自身であり、そして隣にいるこの娘。
「私はそれだけでいいかな」
「何よそれ……」
そんなに悲しそうな顔しないで、真姫。 - 34 : 名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/ (ワッチョイ fbb7-c+Vo) 2015/10/25(日) 23:49:13.92 ID:42GY5Yg90.net
- 「大丈夫よ。花びらが全部散ってしまっても木が枯れるわけじゃない。また蕾をつけて次の春を待つの。きっとどこか……私達も新しい次のステージに向かえるはず」
ね、とウインクを飛ばすと返ってきた答えは沈黙。
あのね真姫、そんなに見つめられると私だって照れるわよ?
わあ、ちょ、ちょちょちょ、そんなに後ろに体重かけたら……。
ぱたん。二人共倒れちゃった。
「なに?眠くなったの?」
「違うわよ……オリオン座流星群って言うけど、別にオリオン座の方から流れてくるわけじゃなくて、こうやって横になって空全体を見てた方が流れ星自体は見つけやすいの」
そういうのは先に言ってほしかったわ。
私が肩を抱いたそのまま後ろに倒れたから腕枕してるみたいな形になっちゃったわね。
「……ねえ、絵里」
「どうしたの?」 - 35 : 名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/ (ワッチョイ fbb7-c+Vo) 2015/10/25(日) 23:50:08.05 ID:42GY5Yg90.net
- 「……手、繋いでもいい?」
「私ので良ければいくらでも」
今は左手しか空いてないけどね。
恐る恐るといった風に真姫の右手が伸びてきたので私は左手でそれを掴んだ。
「真姫の手、温かいわね」
「絵里の手が冷たいのよ」
「ねえ真姫、これっていつまで見られるの?」
「流星群自体は二、三日続くけど明るくなったら見えなくなるから……今日のところは夜が明けるまでね」
「そう……なら夜明けまでは」
繋いだ手からは真姫の体温が伝わってきて、左手に一瞬だけぎゅっと力を入れるとややあって彼女も同じように握り返してきてくれた。
「こうしていられるわね」 - 36 : 名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/ (ワッチョイ fbb7-c+Vo) 2015/10/25(日) 23:51:06.80 ID:42GY5Yg90.net
- いつか離れ離れになってしまうその時まで、そして皆が自分の道を歩み始めたその後も。
心はどうかこの娘と一緒にいられますように。
夜空を駆ける流れ星に地上から、エリーより愛を込めて。
fin - 43 : 名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/ (ワッチョイW 05e1-6evR) 2015/10/26(月) 15:45:48.67 ID:ucQ5ACyO0.net
- 乙です
素晴らしいスレありがとうございます - 45 : 名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/ (スプー Sda8-IZJK) 2015/10/26(月) 20:22:59.61 ID:Iv92xZiFd.net
- おつです
えりまきええな

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