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マリノ「南十字島に行こうか」

1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/20(水) 20:32:28.95 ID:V1M66Jak0

ミズノ「えっ、行く行く、行きたい!
    いつ行くの!?」

マリノ「もうすぐ春休みだし、休み入ってから行こうか」

ミズノ「わー、楽しみだな~」



3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/20(水) 20:36:06.48 ID:V1M66Jak0

ミズノ「タクトくんたちに会えるかな~」

マリノ「連絡せずにいきなり会いに行って、驚かせちゃおうか」

ミズノ「いいね~、それ。
    あ、でも」

マリノ「?」

ミズノ「南十字島には綺羅星十字団がいるんだよね……
    会いに行ったりしたらタクト君の戦いのじゃまになっちゃうかも」

マリノ「大丈夫、もう戦いは終わってるから」

ミズノ「えっ、そうなの?」

マリノ「うん」

5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/20(水) 20:46:07.64 ID:V1M66Jak0

そう、戦いは終わった。
秋の風が吹き始めたあの日、
巫女の封印は全て破られ、王のサイバディ・ザメクが復活し、
タクト君はタウバーンで激闘の末にそれを破壊したのだ。
サイバディの大元が壊されてしまったのだから
もう戦いは終わりを迎えたはず。

私はこの戦いを直接見たわけじゃないし
誰かから話を聞いたわけでもない。
ただなんとなく分かったんだ。
きっと私がサイバディの力で生み出された存在だからだろう。
封印が解かれた。タウバーンとザメクが戦った。
タウバーンが勝った……そんなサイバディの動向が
まるで以前から記憶していたことであるかのように
あの日、私の心のなかに込み上げてきたのだ。

ミズノは全く気付いていないようだった。
もうシルシを失ったから、
サイバディとの繋がりも消えてしまったのだろうか。

島に行こうと話し合った翌日から
ミズノは旅行の準備に奔走していた。
水着を買い、新しい服を買い、かばんを買い、
クラスの友人たちにおみやげは何がいいかアンケートをとって回り、
お小遣いをはたいてデジカメまで買っていた。
そこまで楽しみにしてるとは……

まあそんなわけで私たちは春休みに入って数日後、
フェリーに乗って南十字島へと向かったのであった。

7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/20(水) 20:53:51.96 ID:V1M66Jak0

島に着いた私たちは
まず予約していた海沿いの旅館に向かう。
私としてはまず旅館に荷物を置いて
温泉にでも入って一息……と思っていたのだが
ミズノは一刻も早く島を見て回りたいらしく
旅館の部屋に荷物を放り投げるようにして置いていくと
すぐに外へと飛び出していってしまった。
私も急いで後を追う。

マリノ「ちょっとミズノ!
    なにもそんなに慌てなくても」

ミズノ「別に慌ててないよ、早くタクト君たちに会いたいんだ」

マリノ「それを慌ててるって言うの」

ミズノ「タクト君の家ってどこだっけ」

マリノ「さあ」

ミズノ「学校に行けば会えるかな?
    今日演劇部の活動してるかな~」

マリノ「そうだね、じゃあまず学校行こうか」

バスに乗って学校へ行くことに。
学校は私も行ってみたかった場所だ。
制服はないけど学生手帳を持ってきたから
以前ここに通っていた生徒だ、といえば入れてくれるだろう。

9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/20(水) 21:02:43.31 ID:V1M66Jak0

バスには私たち以外の客は誰も乗っていなかった。
ミズノは窓際の席に陣取って
外の景色に夢中になっている。
私もその隣りに着席。
窓から見える南十字島の景色は
去年の夏から見ていないだけなのに
なんだかひどく懐かしく感じた。

2つ目の停留所で一人のお客が乗ってきて、
通路を挟んだ私たちの隣りに座った。
私はそのお客にちらっと目をやる。
綺麗な青い髪に、
白いワンピースと白い帽子。
まるで絵の中から抜けだしてきたような
非現実的さを感じさせる少女だった。
歳は私と同じくらいか。
この島にこんな美人がいたんだな……
なんて思っていると
その少女が私に微笑みかけてきた。
そこでやっと私は彼女を凝視していたことに気付いて
慌てて視線を逸らした。

サカナ「あの、南十字学園へはこのバスでいいんですよね」

マリノ「へぇつ!?」

まさか話しかけられるとは思っていなかったので
変な声が出てしまった。

11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/20(水) 21:07:39.78 ID:V1M66Jak0

マリノ「え、ああ、このバスで大丈夫ですよ」

サカナ「そうですか、ありがとうございます」

南十字学園の生徒なんだろうか。
こんな子いたっけ?
いたとしたら相当評判になっているはずだ。
ちょっと探りを入れてみる。

マリノ「私たちも南十字学園に行くんですよ」

サカナ「へえ、そうなんですか」

マリノ「わけあって転校してたんですけど、
    休みを利用して来たみたんです」

サカナ「私も本土から戻ってきたところなんです」

マリノ「やっぱりこの島はいいですね」

サカナ「はい、素敵なところです」

ちらりとミズノの様子を伺う。
相変わらず窓の外を熱心に眺めていた。
私たちの話を聞いているのかいないのか。

サカナ「私、ある人に会いに来たんです」

マリノ「ある人? 恋人とかですか」

14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/20(水) 21:17:43.69 ID:V1M66Jak0

サカナ「恋をしている人という意味でなら恋人なのでしょうね」

マリノ「はァ」

掴みどころのない答えだ。
なんと返事をすればいいのか分からない。

サカナ「会いに来ようか迷ったんです。
    でも覚悟を決めて、来てみました」

マリノ「覚悟、ですか」

サカナ「私が行かなきゃいけないような気もしたから」

マリノ「……」

彼女はどういう人なんだろう?
浮世離れしたような、神聖ささえ感じさせる。
そんな彼女と恋仲だった男は
どんな人だったんだろうか。
彼女の彫刻みたいな横顔を眺めながら
色々考えているうちに
バスは南十字学園前の停留所に止まった。

ミズノ「マリノ、着いたよ! 早く降りよっ」

マリノ「ちょ、待って待って」

慌ただしく下車する私たちの後ろについて
彼女は静かにバスから降りた。

16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/20(水) 21:25:42.22 ID:V1M66Jak0

バスから降りるとすぐ学校だ。
改めて見てみるとかなり大きい学校だということが分かる。
初等部から大学部まで一緒くたになってるから
当然といえば当然なのだが。

私がカバンに財布をしまうのに手間取っていると
ミズノは待ちきれなかったらしく
一人で学校の中に飛び込んでいってしまった。
ほんっとに楽しみにしてたんだな。

彼女は私の隣に佇んでいた。
そこから一歩も動こうとしない。
ただ学校を門の外から眺めているだけだ。

マリノ「学校に用があったんじゃないんですか?」

サカナ「いえ、ただ見ておきたかっただけです。
    本当なら私もここの高校で、制服を着て
    友だちに囲まれて勉強とか部活とかやってたんだな、って」

マリノ「へえ……?」

サカナ「もし、最初に彼と出会ったのがあの子じゃなくて私だったら、
    そんな未来もありえたのかなって。
    でもそれって別の未来を放棄してるってことなんですよね」

遠まわしな話し方をする子だ。
何が言いたいのかはっきりとは分からないが、
要するにここの高校に通いたかったということらしい。

18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/20(水) 21:35:34.60 ID:V1M66Jak0

サカナ「知ってますか? 籠の中の鳥のおはなし」

マリノ「童話か何かですか」

サカナ「鳥は悪さをしてカゴに閉じこめられてしまったんです。
    でもその鳥がまた悪いことをしたらどうなるんでしょう」

マリノ「カゴに閉じ込める以上の、バツを与えられるんじゃないですか」

サカナ「そうです。鳥は罰を与えられてしまったんです」

マリノ「……」

サカナ「その鳥は本当に悪い子だったんです。
    心の底まで真っ黒だったの」

マリノ「……」

サカナ「でもそれは罰を与えすぎたからなんです。
    きっと誰かの優しさに触れさえすれば
    鳥だってきっともう悪いことなんてしないはずだもの」

籠の中の鳥の話。
思わず聞き入ってしまったが
何のことやらさっぱり分からない。
彼女は何を伝えようとしたんだろう。

彼女は「それじゃ、お元気で」と言い残すと、
長い髪とスカートを翻して去っていった。
名前を聞き忘れたことに気づいたのはそれから5分経ってからだった。

19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/20(水) 21:41:29.53 ID:V1M66Jak0

私も学校の中に入っていった。
学校はひっそりとしていて人の気配はない。
運動場にも部活をしている人はいないし
教師や警備員の姿さえ見当たらない。
誰もいない学校というのは、不思議な気分がする。
入ってはいけないような場所に踏み込んでいるような。

ミズノがどこに行ったかは見当が付いていた。
私たちの通っていた教室にはいなかったので、
おそらくは演劇部の部室だろう。
島に来る前も演劇部の話ばかりしていたし。

演劇部に行くと予想通りミズノがいた。
部屋に所狭しと並ぶ大道具を珍しそうに鑑賞している。

マリノ「ミーズノ」

ミズノ「あ、マリノ。よくボクがここにいるって分かったね」

マリノ「そりゃ分かるわよ。
    あなた演劇部に来たがってたじゃない」

ミズノ「でもせっかく来たのに誰もいないんだよ。
    今日は活動してないのかなあ」

マリノ「うーん……そういえば演劇部だけじゃなくて
    学校中誰もいないような感じだったけど」

その時、部室の扉が開いた。

20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/20(水) 21:48:25.10 ID:V1M66Jak0

サリナ「誰か居るのか? 何やってる」

ミズノ「部長――――!!!!」

サリナ「み、ミズノ? 一体何で……」

マリノ「あ、おじゃましてます……」

サリナ「あんたは姉のほうか。はじめまして、
    演劇部部長のエンドウ・サリナです」

マリノ「ヨウ・マリノです」

ミズノ「副部長も――――!! 久しぶり――!!」

副部長「きゅー!」

ミズノは狐――副部長をおもいっきり抱きしめた。
副部長、めちゃくちゃ苦しそうな顔をしているが……
やめさせなくていいのだろうか。

サリナ「いったいどうしたんだ?
    日死の封印を解かれた後、島を出たんじゃなかったのか」

マリノ「……封印のこと、ご存じなんですか」

サリナ「ああ」

21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/20(水) 21:51:15.39 ID:V1M66Jak0

サリナ「封印のことだけじゃなくて
    サイバディや綺羅星十字団のことについても、
    あの銀河美少年より詳しいつもりだよ」

マリノ「……」

サリナ「ふふ、あんた何者だ、って顔してるな」

マリノ「……何者なんですか?」

サリナ「サイバディを作った古代銀河文明の末裔……」

マリノ「えっ」

サリナ「……って言ったら、どうする?」

マリノ「もう、変な冗談やめてくださいよ」

ミズノ「部長――――!」

サリナ「なんだミズノ部員、騒がしいぞ」

ミズノ「今日はタクト君たちは来ないんですか?」

サリナ「ああ、あいつらは当分来ないぞ」

ミズノ「えっ、どーして?」

22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/20(水) 21:57:13.01 ID:V1M66Jak0

サリナ「帰省してるんだよ。
    スガタやワコも一緒にタクトの実家に遊びに行ってる。
    新学期まで帰って来ないぞ」

ミズノ「ええええっ、そんな……」

マリノ「はは、残念だったねミズノ」

サリナ「なんだ、タクトたちに会いに来たのか」

マリノ「まあそれもあります」

サリナ「というかタクトたちだけじゃなくて
    この時期はみんな帰省しちゃうからな。
    学校も基本的に出入り禁止になるし」

マリノ「それで誰もいなかったんだ」

ミズノ「う~……やっぱり事前に連絡してから来れば良かった……」

マリノ「また今度来るときはそうしようか、ね」

ミズノ「うん……」

サリナ「ま~タクトたちには会えなかったが
    私に会えたじゃないかミズノ部員。喜べ」

ミズノ「あんまり嬉しくないです」

サリナ「ちょっと見ない間に言うようになったなミズノ部員」

23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/20(水) 22:04:47.09 ID:V1M66Jak0

ミズノ「部長はここで何やってるんですか」

サリナ「静かな場所で一人芝居の練習をしようと思って忍びこんできたんだ。
    君ら早く帰ったほうがいいぞ。
    教師とかに見つかったら怒られるしな」

ミズノ「部長は?」

サリナ「私はまあ、なんだ、慣れっこだから」

ミズノ「ふうん」

マリノ「じゃあ行こうか、ミズノ。おじゃましました」

サリナ「あ、ちょっと姉のほう」

マリノ「はい?」

サリナ「……あー……いや、なんでもない」

マリノ「? ……そうですか」

サリナ「島にいる間、困ったことがあったらいつでもここに来い。
    だいたいここにいるから」

ミズノ「はーい」

私たちは演劇部室を後にした。
サリナ部長が私に何を言いかけたのか、
少し気になっていたが、すぐに忘れた。

25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/20(水) 22:16:41.45 ID:V1M66Jak0

旅行の予定は2泊3日。
その日は商店街をぶらぶらしたり
島に住んでいたときよく行っていた服屋を見に行ったりした。
なんと店員さんは私たちの顔を覚えてくれていた。
ただ「島で評判だった美人姉妹」で覚えていたらしく
どっちがミズノでどっちが私かの区別はついていなかった。

夜は旅館で食べた。
やはり本場の海鮮料理は美味しい。
島に住んでいたときは意識していなかったが
本土でしばらく暮らして初めて
南十字島の料理は素晴らしい、と理解できた。
料理人の腕もあるだろうが
やはり素材だ、根本的に素材が違う。
なんてことをミズノが偉そうに語っていて
ちょっとおかしかった。

2日目は気多島の火山や皆水神社などなど
島の名所を時間をかけてゆっくり回ってみた。
そこまで大きな島ではないぶん
ひとつひとつの場所にじっくり時間をかけられて
島にいた時以上に新たな発見が多く、新鮮である。
ミズノはぱしゃぱしゃと写真を撮りまくり。
その日は一日中歩きまわっていたせいでくたくたになった。

そして3日目、
昼前に荷物をまとめて旅館をチェックアウト、
フェリーに乗って……

島から出られなかった。

27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/20(水) 22:25:47.45 ID:V1M66Jak0

一瞬何が起こったのか分からなかった。
確かにフェリーに乗った。
ミズノも一緒だった。
フェリーが島から徐々に離れていって、
これでもう南十字島とお別れか、なんて思った瞬間……
寝間着姿で旅館の布団の中にいたのだ。

マリノ「な、なに……どういうこと?」

夢じゃない。絶対に夢じゃない。
あんなリアルな夢があるわけない。
朝御飯を食べて歯を磨いて朝風呂に行って、
荷物を抱えてフェリーに乗って……
私は確かに現実にそんな時間を過ごしたんだ。
夢であるはずがない。

ミズノ「ん、どうしたのマリノ~……」

隣で寝ていたミズノが寝ぼけ眼をこすりながら体を起こす。
そのミズノの気の抜けた顔を見て思い出した。
ミズノが島から出ようとしたときの話。
私はあとから聞いただけなので詳しくは知らないが
その時も今の私と同じような感じだったらしい。

マリノ「ねえ、私たち……フェリーに乗ってたよね、今」

ミズノ「ふぇ? 何言ってるの? 寝ぼけてる?」

ミズノは何も気づいていないようだ。
ならば私が原因なのか。

29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/20(水) 22:37:22.29 ID:V1M66Jak0

もっともミズノが原因であるはずがないんだ。
もうシルシはないんだし、島から出られたんだし。
あれ? でも私にもシルシはないのに?
そもそも何が原因なんだろうか?
一体どうして島から出られないのか?

ミズノ「マリノ……?」

マリノ「あ、いや、……あ、そろそろ朝御飯だね、行こうか」

ミズノ「うん」

ミズノは私の様子がおかしいことを怪しんでいる。
いっそ打ち明けてみようか?
ミズノなら分かってくれるだろうし……
でも無駄な心配をかけさせてしまうのもはばかられる。

一体どうして。どうすれば。どうしよう。
そんなことばかりが頭の中でグルグルと渦巻く。
考えられるとすればサイバディの力。
サイバディそのものの能力か
誰かの第1フェーズ能力によって
私の体が島に縛り付けられている。
なんのために?

誰かサイバディに詳しい人がいたら聞いてみたい。
これはどういうことなんですか、って。
でもいるわけないか、サイバディに詳しい人……
……会ったなあ、一昨日。

30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/20(水) 22:45:27.85 ID:V1M66Jak0

朝食を食べ終えた後、
私は「昼前には戻るから」と言い残して
旅館から飛び出した。

何かあったらいつでも来いと言っていた。
まだ朝早いが、いてくれるだろうか。
不安と期待に駆られてやってきたバスに急いで飛び乗る。
バスの中は今日も無人。
一昨日いた青髪の美少女が乗ってこないかと思ったが
学校につくまで新しいお客はなかった。

やがて学校に到着し
私は無人の校舎に駆けこんでいく。
行き先はもちろん演劇部の部室。
目当てはエンドウ・サリナ部長。

サイバディを作った古代銀河文明の末裔。
あのときはうまくはぐらかされてしまったが
もしかしたら本当なのかもしれない。
彼女からはなにか普通の人とは違う感じがする。
あの青髪の美少女とはまたベクトルの違った得体の知れなさ。
それこそ宇宙人のような。

部室の扉を開ける。
彼女はそこにいた。
私を待っていたかのような口ぶりで、
あいさつをしてくれた。

サリナ「おはよう。朝早くからご苦労だね」

31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/20(水) 22:52:29.20 ID:V1M66Jak0

マリノ「……知ってたんですか」

サリナ「まあこうなることは分かってた」

マリノ「あなたは……」

サリナ「私のことより今は君のことだろ」

マリノ「……」

サリナ「島から出ようとしたら出られなかった。
    そうだな」

マリノ「はい」

サリナ「これは間違いなくサイバディの仕業だ。
    サイバディが君をこの島に留めようとしているんだ」

マリノ「一体、何のために?」

サリナ「サイバディ、アインゴット」

アインゴット……私がアプリボワゼしたサイバディだ。
巫女を見通す目を持つ、邪悪のサイバディ。
搭乗した私は乗っ取られてしまい、アインゴットは暴走した。

マリノ「アインゴットが、何故」

サリナ「行ってみれば分かるんじゃないかな。
    アインゴットは君を求めてるんだ」

32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/20(水) 22:59:16.70 ID:V1M66Jak0

マリノ「行ってみればって、地下の遺跡に?」

サリナ「そこしかないだろ」

マリノ「まだサイバディはあそこにあるんですか?」

サリナ「ある。どのサイバディもほとんど壊れているが
    まだあそこの地下遺跡に安置されている。
    そして綺羅星十字団の残党に管理・研究されてる」

マリノ「……」

サリナ「心配するな。
    綺羅星でホントにワルだったのなんてヘッドくらいのもんだ。
    君が行ったところで何をされるということもない」

マリノ「そのヘッドは今どうしてるんですか」

サリナ「さあね。
    まあとにかく遺跡に行ってみろ。
    問題を解決しなきゃ島から出られんぞ」

マリノ「……はい」

地下遺跡。
まさかもう行くことはないと思っていたのに、
こんな形で再訪することになろうとは。
私はサリナ部長に礼と別れを告げて
地下遺跡へと向かった。

35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/20(水) 23:08:18.79 ID:V1M66Jak0

地下遺跡は見るも無残な有様だった。
どこもボロボロ、瓦礫の山。
科学技術の粋を尽くして作られた
綺羅星十字団アジトの面影はどこにもない。
一体何があったというのか。
サイバディの戦いでこうなったのか?

ただこんな状態でもサリナ部長の言ってたとおり
利用している人はいるらしい。
ところどころ瓦礫がどけられて
道のようなものが出来ている。
とりあえずそれに沿って進んでいくと
警備員らしき人に止められた。

「はい、止まって。ここから先は入っちゃだめだよ」

マリノ「ここに用があるんだけど」

「だめだめ、帰りなさい」

マリノ「……」

こんな時のために持ってきていた綺羅星十字団団員バッジ。
綺羅星十字団からおさらばするときに
記念にこっそりくすねてきたものだ。
それを男に見せると
私が関係者だと察したらしく道を開けてくれた。

さらに奥へと進んでいく。

36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/20(水) 23:15:35.33 ID:V1M66Jak0

しばらく進むとひらけた空間に出た。
ここにも瓦礫が山積みになって……
いや違う。
これはサイバディの素体だ。
どれもこれも壊れてしまっている。
最後の戦いはそんなに激しかったのか。

サイバディたちの中央には
白衣姿の人間が何人か集まって
ずらっと並べられたディスプレイと
にらめっこしていた。
その中に見知った顔が一人。

マリノ「……オカモト先生?」

ミドリ「あ、あなた……ヨウ・マリノさん?
   一体どうしてここに……」

ヒデキ「君! ここは部外者立ち入り禁止だよ」

オカモト先生の傍らにいた白髪の男性が怒鳴る。
ここにいるということは彼らは綺羅星十字団の関係者なんだろう。
ならばここは口でうだうだ説明するよりも、
一発こうやったほうが手っ取り早い。

マリノ「綺羅星!!」

ミドリ「綺羅ぼ……あなた、まさか!?」

ヒデキ「マンティコール……?」

37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/20(水) 23:24:13.52 ID:V1M66Jak0

マリノ「そうです。お久しぶりです。
   オカモト先生も綺羅星だったんですね」

ミドリ「ええまあ……科学ギルドにいたわ」

マリノ「へえ」

ミドリ「ところで、どうしてここに?
   島から出て行ったって聞いたけど……」

マリノ「ちょっと休みを利用して遊びに来たんです。
    そうしたら……」

私は今日起こった出来事を説明した。
島から出ようとしたら時間が戻ったこと。
サイバディに呼ばれているらしいこと。
ここに来て問題を解決しないといけないこと。

ミドリ「へえ、そんなことが……
   不思議なこともあるもんだ」

ヒデキ「誰から聞いたんです?
    その、サイバディに呼ばれてる、なんてのは」

マリノ「あー……それはちょっと。
    ところでどうしたらいいんでしょう私は」

ミドリ「うーん……サイバディに関しては
   まだまだ分かってないことが多すぎるのよね……」

38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/20(水) 23:31:14.27 ID:V1M66Jak0

ヒデキ「……そういえば、マンティコールは
    アインゴットのスタードライバーでしたね」

マリノ「はい、そうです。
   アインゴットが私を島に留めようとしているって」

ミドリ「アインゴットか……なるほど。分かった気がする」

マリノ「本当ですか?」

ヒデキ「そういえば、後はアインゴットだけでしたね」

ミドリ「うん」

マリノ「え、何がですか」

ヒデキ「戻れなかったサイバディ」

マリノ「え?」

ヒデキ「戻れなかったサイバディ……
    最後の戦いにおいて全てのサイバディがザメクに操られました。
    バニシングエージ以外のサイバディは戦いの中でアプリボワゼをすることによって
    ザメクの支配から戻ることができたのです」

マリノ「そんなことが……」

ミドリ「レシュバル、ザイナス、ラメドス、ギメロック、コフライト、ヘーゲント、アインゴット。
    この7体はアプリボワゼの相手がいなかったためザメクの支配から戻れなかった。
    ザメクが破壊されてもね」

40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/20(水) 23:40:21.53 ID:V1M66Jak0

そこで科学ギルドの皆々様は
ザメクの身体を形成するオリハルコンの
組成プログラムをなんやかんやして
さらにそれをサイバディにあれこれして
ザメクの支配から解き放ってやった、らしい。
色々な専門用語を交えて長々と説明されたため
半分ほどしか理解できなかったが
要約するとだいたいこんな感じになる。

ただしアインゴットだけは
ザメクの支配を人工的に解くことができなかったという。

マリノ「それはアインゴットが
    ザメクに握りつぶされていたのと関係が?」

ヒデキ「あるでしょうね。
    他のサイバディとの相違点といえばそこだけですから」

ミドリ「できればアインゴットも早く戻してあげたいんだけど」

ヒデキ「私は反対ですよ」

ミドリ「なんで」

ヒデキ「アインゴットは邪悪のサイバディです……
    このままザメクに支配された状態が続けば
    仮に復元されたとしても動くことはもうないでしょう」

マリノ「……」

42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/20(水) 23:49:31.79 ID:V1M66Jak0

マリノ「でも、アインゴットは支配から戻りたがっています。
    そのために私をこの島に留めたんです。
    アインゴットを救ってあげられるのは私だけなんです」

ミドリ「でしょうね。
   それにアインゴットをどうにかしないと島から出られない」

マリノ「はい」

ヒデキ「しかしね……」

マリノ「……大丈夫です」

ヒデキ「え」

マリノ「もう悪いことしないように言い聞かせますから」

ヒデキ「言い聞かせるって……」

マリノ「どんなに悪い子であっても、
   誰かの優しさに触れさえすれば、それで救われるんです」

ヒデキ「……」

ミドリ「……」

マリノ「お願いします、やらせてください。
   私が島から出たいだけじゃない。
   アインゴットが苦しんでいるなら、それを救えるのが私だけなら、
   力になってあげたい」

43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/21(木) 00:00:03.44 ID:RQSw6YuP0

ヒデキ「……そこまで言うなら……やってみても構いませんが」

ミドリ「本当に戻せるかしら……」

マリノ「アインゴットの素体はどこですか?」

ヒデキ「あなたの目の前にあるやつです」

マリノ「これが……」

それはここにある20数体のサイバディの中で
特に傷と破損が激しかった。
体はこんなにボロボロになって、
そのうえ心はザメクに乗っ取られたままで……
ずっと私に助けを求めていたんだ。
一度アプリボワゼしただけの私に。
ごめんね、ずっと気付けなくて。
今助けてあげるから。
でももう悪いことはしちゃだめだよ。
私との約束……

ヒデキ「光が……」

ミドリ「あれは……アインのシルシ……?」

戻ろう、アインゴット。
そうすればあなたはもう自由なんだから。
籠の中の鳥なんかじゃないから。
だから、私の手をとって。

44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/21(木) 00:08:50.30 ID:RQSw6YuP0

ミドリ「アインゴットのオリハルコンの反応は……?」

ヒデキ「通常の状態に戻っていきます!
    すごい勢いでザメクの汚染が浄化されていく……
    驚いた、成功だ……」

マリノ「アインゴット……!」

私はどっと力が抜けて
その場に崩れ落ちた。
胸にはまだアインのシルシが光っている。
まさか私が本物のシルシを持つことになるなんて。
でもきっとこれはアインゴットからの約束の証なんだ。
そういうことにしておこう。

ミドリ「大丈夫、マリノさん?」

マリノ「だ、大丈夫です……ふぅっ」

ヒデキ「よかった、これで全てのサイバディが
    ザメクの支配から解かれたわけですな……
    これでまた研究が進みそうです」

マリノ「あはは……」

ミドリ「ありがとうマリノさん。
   体を張ってアインゴットを救ってくれて」

マリノ「いえ、スタードライバーとして当然のことをしただけです」

45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/21(木) 00:18:21.43 ID:RQSw6YuP0

時計を見るともう11時過ぎだった。
いかん、昼前に戻るとミズノに言っていたのに。
今からじゃ間に合うか分からない。

マリノ「あの、じゃあ私、これで」

ミドリ「あ、もう帰っちゃうの?」

マリノ「はい、妹を待たせてますから」

ミドリ「そっか」

マリノ「また来てもいいですか?」

ミドリ「ええ、いつでもどうぞ。妹さんも一緒にね」

マリノ「はい。
    今度はGWか夏休みに来ます。それじゃ」

私がオカモト先生と話している間、
白髪の方はパソコンの操作に夢中になっていた。
なんかマッドサイエンティストっぽい感じだ。

私は元きた道を駆け戻った。
そういえばオカモト先生が科学ギルドの誰だったのかを聞いてなかった。
プロフェッサー・グリーン?
まさかね。

46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/21(木) 00:29:51.62 ID:RQSw6YuP0

旅館に戻った私とミズノは
軽く昼食を済ませてフェリーに乗った。
ミズノに何度も「何してたの」と聞かれたけど
最後まで秘密にしておいた。

まさかまた島から出られないんじゃないか……
という不安が一瞬頭をよぎり
島が見えなくなるまでソワソワしっぱなしだった。
そこもまたミズノに怪しまれた。

ミズノはミズノで
私が地下遺跡にいっている間
カラスのカースケを追い回して遊んでいたらしい。
そのせいで服がどろんこだ。
フェリーに乗る前に着替えさせれば良かった。

やがて本土が見えてきた。
甲板に出れば吹いてくる風も島のそれとは違っていた。
ふと傍らを見やれば島で出会ったあの青髪の美少女。
彼女もこちらに気付いたらしい。
私と目が合うとにこりと微笑んでくれた。
きっと恋人さんとやらに会えたのだな。
私も笑顔をお返しする。
いいお話を聞かせてくれてありがとう。
そんなお礼の気持ちが伝わったかどうかは分からないけど。

港についてフェリーから降りる。
そういえば彼女の名前を聞くのをまた忘れていた。
まあいいや、彼女とはきっとまた会える。
なんだかそんな気がする。

47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/21(木) 00:30:18.80 ID:RQSw6YuP0

おしまい☆
色々勝手な解釈入れたけど許せ

49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/21(木) 01:00:26.91 ID:SBr/J8eCO

乙星!!

50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/21(木) 01:21:47.60 ID:Cf9SfQoU0

乙星☆!




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