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鷺沢文香「貴方と私の言葉探し」
- 1 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/06(月) 16:21:59.47 ID:2VnFibVe0
- 文香のSSです
地の分多め
鷺沢文香「言葉探し」
の続編です。
蛇足感を感じるかもしれないので、あれで完結だと思っている方は読まない方がいいかもしれません。
ではよろしくお願いします。
- 2 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/06(月) 16:22:54.89 ID:2VnFibVe0
- 私と貴方の言葉探しが始まりました。
「文香はコーヒー飲まないのか?」
「はい……苦いのは苦手で」
「そっか……こうしたらどうだ?」
貴方は自分のコーヒーにミルクを入れ、私に差し出しました。
「……まろやかで美味しいです」
「だろ?これで文香もコーヒーを好きになってくれると嬉しいよ」
コーヒーの甘さを思い出しながら、
私は自分のページにコーヒーと書きました。
- 3 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/06(月) 16:23:35.75 ID:2VnFibVe0
- 「文香この本、面白かったよ。貸してくれてありがとう」
「それはよかったです。……その作者の別の作品もお貸ししましょうか?」
「いいのか?なら、お言葉に甘えようかな」
面白いと言ってくれたことに安堵しつつ、
私は貴方のページに、本の作者の名前を書きました。
- 4 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/06(月) 16:24:15.31 ID:2VnFibVe0
- 「おっ、きたきた。冷めないうちに食べよう」
「はい…… いただきます」
「この、噛むたびに肉汁が溢れる感じが堪らないよな」
貴方は目を輝かせながら、ぺろりとハンバーグを食べ終えました。
「美味しかったな。また来ようか」
「はい…… ぜひお願いします」
また来ようか、その一言に喜びを感じながら、
私と貴方のページにハンバーグと書きました。
- 5 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/06(月) 16:24:53.96 ID:2VnFibVe0
- 貴方のページの言葉が私のページに生まれた時、
貴方のことを一つ知った気がしました。
私のページの言葉が貴方のページにも生まれた時、
私のことが一つ伝わった気がしました。
貴方と私のページに、同じ言葉が生まれた時、
貴方と私の思いが一つ近づいた気がしました。
ノートはどんどん黒くなっていき、
貴方への思いもどんどん焦がれていきました。
- 6 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/06(月) 16:25:40.15 ID:2VnFibVe0
- 貴方と言葉探しを始めてから、半年ほど時間が流れました。
貴方のページもなかなか立派に黒くなりました。
私はノートを読み返しました。
コーヒー、ハンバーグ、…………
どれもありふれた言葉のように思えるかもしれませんが、
私にとっては特別な言葉でした。
- 7 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/06(月) 16:26:38.30 ID:2VnFibVe0
- 読み返していくうちに、
まるで一冊の本のようだと思いました。
言葉自体はどれも短い言葉ですが、そこにはたくさんの思いが確かにありました。
ミルク入りのコーヒーの甘さ
好きな作家をおすすめするときの不安や恥ずかしさ
ハンバーグを食べた時の溢れる喜び
このノートの全てが私の言葉なのだ、と私は気づきました。
そのことに気づいた途端、居ても立ってもいられなくなったので、
私はノートを持って、貴方に会いに行きました。
- 8 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/06(月) 16:27:45.64 ID:2VnFibVe0
- 「文香?今日はオフじゃなかったか?」
「はい……その……プロデューサーさんに用がありまして……
……読んでもらいたいものがあるのです」
「ん?なんだ?」
私の言葉
貴方への思い
探してください
伝わってください
私はノートを渡しました。
- 9 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/06(月) 16:28:26.68 ID:2VnFibVe0
- 私は絵本作家になりました。
言葉の世界に魅了された私は、
言葉の魅力を多くの人に知ってもらおう
少しでも言葉に触れるきっかけになったら
そのような思いを言の葉に込め、今日も言葉を紡いでいます。
- 10 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/06(月) 16:29:19.12 ID:2VnFibVe0
- 「先生、コーヒーをお淹れしましょうか?」
一息つこうかと思ったら、貴方の声が聞こえました。
「プロデューサーさん…… 二人の時は、先生と呼ばないでくださいとあれほど……」
「文香だって俺のことをプロデューサーって呼んでいるじゃないか」
甘いコーヒーを飲みながら、あなたと言葉を交わします。
ゆっくりとですが、光り輝く。
そんな日々を私は過ごしています。
- 11 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/06(月) 16:30:02.14 ID:2VnFibVe0
- 私は今日もノートを開きます。
見た目は普通ですが、たくさんの言葉で飾られた私のノート
「もっと読みたい」
そう書かれた最初のページを見て、今までのことを少し思い出した後、
一番新しいページを開きました。
ずっと探していきましょうね
思いを込め、私は言葉を飾っていきます。
私と貴方の言葉探しはこれからも続いていきます。
- 12 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/06(月) 16:30:52.86 ID:2VnFibVe0
- 以上です。
すごく短くて申し訳ないです

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