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新ジャンル「鋏」

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 16:10:35.04 ID:i/eNzvLY0


                                ,,,,,,,,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
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2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 16:18:22.67 ID:xVQyxCFMP
db 「ネエ」 シャッ

男 「あぶねえから無意味に開くなと言ってるだろこの鋏!」

db 「フフ察しなさいな」

男 「何を!?」




3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 16:27:25.54 ID:xVQyxCFMP
男 「せめて、せめて擬人化してくれたなら……ッ」

db 「そうね」

db 「貴方が擬紙化か擬布化してくれたら考えてあげてもいいわ」

男 「切られるじゃんオレ? そしてお前そのままじゃん!」

db 「なにを言ってるの。当たり前でしょう」

db 「わたしは鋏なんだから」


4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 16:37:04.07 ID:xVQyxCFMP
db 「安心なさい」

男 「なんだかとてつもなくいやな予感がするのう……」

db 「たとえ貴方によそから赤い糸が伸びていたとしても、わたしがみんな切ってあげるから」

男 「よけいなお世話ァーッ!」

db 「だから貴方は誰とも結ばれない。貴方にはわたししかいないのよ」

男 「イヤアアアアア!11!!1!! 人間のッ! 人間の女プリイイイィィィズ!!!!!11」


5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 16:45:41.06 ID:xVQyxCFMP

U 「ああ、ひょっとして和風な娘が好みなの?」

U 「ならそうと早く言ってくれればよかったのに」

男 「和だろうと洋だろうと、鋏自体、恋人にする気はねえッ!」


6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 16:55:26.09 ID:xVQyxCFMP
U 「越の国は三条生まれな雪国美人の何が不満なの?」

男 「鋏だてめぇは」

U 「アアいくじのない男の子!」

U 「それ以上駄々をこねるのなら、不要とみなしてチョン切ってしまうわよ!」 シャコシャコ

男 「やーめーてーぇ!」


8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 17:04:49.72 ID:xVQyxCFMP
db 「ところでこの際はっきりさせておきたいんだけど」

男 「お前と付き合う気ならないよ。微塵も。毛頭。金輪際」

d  「わたしと」

 b 「わたし」

db 「「貴方が好きなのはいったいどっちなのかしら?」」

男 「は、鋏はふたり居たあああああアアア!!!!!!!!111」


9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 17:06:50.61 ID:xVQyxCFMP

U 「何を言っているの? わたしは一人よ」

U 「貴方がその生涯でただ一人愛した女よ」

男 「もうやめろッ! それ以上オレをたぶらかすなら塩水につけて放置するッ!」


10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 17:17:25.00 ID:xVQyxCFMP
男 「もしお前が擬人化したら、さあ」

db 「だからしないわよ」

男 「冷たいなお前」

db 「金属ですもの」


11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 17:21:36.00 ID:xVQyxCFMP
男 「もしお前が擬人化したら、さ……いや最後まで聞いてくれ」

男 「二人の女の子がくっついて一つになってる、って可能性もあるんだよな?」

男 「ちょうど、腰あたりの位置で」

男 「……」

男 「……ハッ!?」 カアァ

db 「マアいやらしい童貞!」

db 「腰のあたりで? 何で繋がってるって?」

男 「いや……その……」 モジモジ

db 「言ってご覧なさいなサア軽蔑してあげるから!」 シャキンシャキン


12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 17:31:23.09 ID:xVQyxCFMP
db 「擬人化なんかしなくたって、この姿のままでわたしはすでに神だから」 シャキン

男 「紙はむしろお前に切られる方だろうが」

db 「ホホ鍛冶・金属の神、天目一箇神は一つ目だって聞いたことはないかしら」

db 「わたしの支点を綴じるこのカシメこそがそれなのよ!」

男 「マジで!?」

db 「貴方の女神になれるのは、この広い世界にわたしだけ!!」 シャキンシャキン!!

男 「いや女神より平穏をくれください」


15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 17:34:17.18 ID:K/RAWXkgO
シュールwwww


16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 17:41:11.72 ID:xVQyxCFMP
db 「わたしにだって穴は二つあるってのに、貴方はいったい何が不満なの?」

db 「アア、いいえ、その不満を思う存分解消なさい」

db 「わたしの身体で!!」 シャキンシャキンシャキンシャキンシャキーン

男 「しねぇよそんなむなしいこと!」

男 「しかもお前、穴じゃねえとこ使う気満々じゃねえか!!」


17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 17:47:52.05 ID:xVQyxCFMP
db 「これをご覧なさい」


  -- 8< ---キリトリ-----------------------


男 「切取線やね」

db 「エエそうよ。どこででも見かける切取線よ」

男 「なに? お前で切ってほしいの?」

db 「ホホ童貞とはいえ眼がついているのでしょう? よおくご覧なさいな!」

男 「……だから切取線じゃん。色覚検査でもあンめえに」

db 「アア愚かな童貞! 切取線には鋏マーク、これがほぼ常識なのだと言ってるんじゃないの!!」

男 「ああ……まあ、ね」

db 「カッターでもナイフでもなく、鋏!!」

db 「サア考えなさい童貞」

db 「いつものズリネタのことではなく、切取線の次に、鋏が制覇すべき場のことを!」

男 「せせこましい覇者だなあ」

db 「紙だって最初に入れた鋏のひと裁ちは、小さな切れ目に過ぎないのよ!!」


19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 17:56:19.96 ID:xVQyxCFMP
男 『フフフなんだこの穴は?』

男 『人差し指から小指まで余裕ですっぽり入りやがる!』

男 『いったい誰に開発されたんだこの淫売ッ!』 ズボズボ

db 『ああァん! もっとぉ! もっとつっこんでかき回してえぇ!!』



db 「……ウフフ」

男 「何を妄想している?」

db 「ホホ童貞は気にしなくたっていいことよ」


20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 18:05:17.59 ID:xVQyxCFMP
男 「……」

db 「爪切り鋏なら幼女だったのに、とか思ってるんでしょう?」

男 「その発想はなかったわ!」

db 「貴方が爪切り鋏で鼻毛を切っていることはお見通しなのよ!」

db 「爪切り鋏が擬人化したら、幼女が鼻に指をつっこんで鼻毛を抜いてくれるとでも思ってるのかしら!?」

db 「マアいやらしい! なんという哀しい変態なのこの童貞は!」

男 「お前の妄想力には及ばねえよいやマジで」


21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 18:10:26.64 ID:K/RAWXkgO
鋏自重wwww


22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 18:13:03.31 ID:xVQyxCFMP
db 「わたしの小指掛けに掛けるのは、別に小指じゃなくたってかまやしないのよフフフ」

男 「……あー」

男 「だいたいちょうど中指引っかけてるわそれー」

db 「……」

db 「フウ」

db 「鈍感ねぇ」

男 「何が言いたいのかは知らんがお前もうそろそろ錆びとけや」


23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 18:20:15.18 ID:xVQyxCFMP
db 「たとえわたしが擬人化したところで、よ」

db 「鋏を持った女の子が貴方のおちんちんを執拗に狙ってくるだけじゃないの」

db 「ずいぶんとマゾヒスティックな人なのねぇフウ」

男 「なぜそこで髪とか爪じゃなくダイレクトに龍神さまを……」

db 「女の子が男の子に求めるものは畢竟それであり、そしてわたしが鋏だからよ!」 シャッキーン


24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 18:28:25.70 ID:xVQyxCFMP
db 「海苔も、菜っ葉も、葱も、油揚げも、みんな、みんな、キッチン鋏でお切りなさい」

db 「そのうち貴方はもう包丁なんか使えなくなる」

db 「貴方は、わたしだけを使って生きていけばいいの」

db 「貴方は、わたしだけを使って生きていけばそれでいいのよ!!」

男 「んなこと言われてもなー」

男 「さすがにリンゴの皮は鋏じゃ剥けんわー」 ショリショリ

db 「駄目よッやめなさい! 鋏で切れない食材なんか使っていたら貴方は堕落する!!」 


25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 18:34:32.93 ID:xVQyxCFMP

db 「キッチン鋏に付いている多くの機能の中で一番大切なのは、貴方を愛することができるということ!」

男 「それが一番いらんのですわ」


26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 18:43:10.06 ID:xVQyxCFMP

db 「あんまり乙女の愛から逃げ続けていると、こっちも本気にならざるをえないわよ?」

男 「なに……その骨ごと斬れちゃいそうなごっつい剪定鋏……」


27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 18:44:20.00 ID:xVQyxCFMP
db 「ちょっと! なによそれは?」

男 「……茶碗の底で研がれたんじゃご不満ですか?」

db 「マアなんて人! 女の子の扱いをまるで理解しちゃいない!」

男 「鋏だてめぇは」

男 「研いでやってるだけ感謝してもらいたいね」

db 「アアそう! 人に擬人化しろと言っておいてそういう態度なの!」

db 「貴方は女の子がお風呂に入らず、茶碗の底で乾器摩擦だけしていればそれで満足な人なのね!」

男 「ああもう、うるっさいなあこの鋏は……」


28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 18:52:18.88 ID:xVQyxCFMP
男 「風呂に漬けて石鹸で洗ってほしいのかお前は」

db 「専用の砥石を使えと言っているのよ」

男 「……女の子を専用の砥石でこする趣味もないよ」

db 「軽石をしめらせてかかとをこするのと同じようなものよ」

男 「ああもう、この鋏はああ言えばこう言う……」


29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 19:00:00.26 ID:xVQyxCFMP

男 「お前って太ったらやっぱペンチになるの?」

db 「ンマア! 女の子に向かってなんてことを訊く童貞なのかしら!」

男 「童貞は関係ねーよ」


31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 19:09:11.89 ID:xVQyxCFMP
db 「人間の女はけして貴方に股も心も開かない」

男 「果たして……そうかな……?」 ニヤリ

db  「エエそうなのよ」

男 「一瞬で否定されたよママーン!」

db 「青い鳥に……」

db 「貴方の指遣い次第で股も心も開き放題な乙女がすぐそこにいることに、早く気付くのよ童貞!」


32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 19:17:34.86 ID:xVQyxCFMP
db 「イヤアアアアアやめてえええええ!」

db 「そういうプレイは人間の女でやってちょうだい!」

db 「馬鹿! 馬鹿! 童貞!!」 シャキンシャキンシャキン

男 「こらっおとなしくしろ人の手で暴れるな!」

男 「ガムテープ切るだけだろうが!」

db 「変に刃が滑るとべたべたが刃について開きが悪くなるのよ!」

db 「人間でいうならおまんこにボンドを塗りたくっているようなものなのよ!?」

db 「AVね? そういう性癖のAVをみて真似したくなったのねこの童貞! 馬鹿ぁ!」

男 「ガムテープを鋏で切るだけのAVなんかあってたまるか!」


33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 19:24:08.92 ID:xVQyxCFMP

db 「据え膳食わぬは何とやら」

db 「どうしてわたしと一緒に寝てくれないの? この童貞! いくじなし!」 シャキン

男 「どこの世界に剥き身の刃物と一緒に寝るチャレンジャーがいるかァ!」


34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 19:32:16.22 ID:xVQyxCFMP
db 「そこのヒマそうな童貞。ヒマだからちょっと甘噛みさせなさいな」 シャキンシャキン

男 「おんどりゃとうとうワシのタマァ狙ぅてきょったかァ!!」 ガタン

db 「マアなんて可哀想な童貞!」

db 「童貞だから女の子の甘えに慣れていないのね!!」

男 「何度でも言ってやるが鋏だてめえは」

db 「大丈夫! 愛はけして怖いものなんかじゃないわ」

db 「童貞だからといって怯えることはなにもないのよ!」


35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 19:39:26.15 ID:xVQyxCFMP
db 「もしわたしが妖鋏になったとしても、貴方はわたしを愛してくれるかしら?」

男 「迷惑度ならお前もう立派な妖鋏だから心配すんな」

男 「っていうか何をどうやったら鋏が呪われるんだ」

db 「……呪われた砥石で研いだらなるんじゃないの?」

男 「お前は磁石でこすられた針か」


36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 19:46:43.00 ID:xVQyxCFMP
男 「ぬぬぬ……」 ググッ

db 「モウいいかげん諦めてわたしをお使いなさいな」

db 「貴方はまだ素手でその袋を開けられるステージに達していないのよ」

db 「お菓子の袋を鋏にも切り口にも頼らずスマートに開けられるのは、神の手を持つリア充のみ!」

db 「童貞が真似したところで、勢い余って中身が悲惨に飛散するだけでしょうに」

男 「うるせえお前なんか使わん! 意地でも手で開けてやらぁ!」 グググググッ

db 「ホホまったく子供ね」


37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 19:53:59.13 ID:xVQyxCFMP
男 「洗濯挟みがみんな鋏になっていた件について」

db 「わたしが取り替えておいてあげたわ」

db 「貴方は今まで洗濯『鋏』を洗濯『挟み』だと、悪い魔女に騙されていたの!」

db 「さあ、涙を拭いて!」

男 「洗濯挟み返せ」


39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 20:01:50.75 ID:xVQyxCFMP
qp 「さあ!」

男 「何を大地に突き刺さっとるんですか大地に刺さる刃物は聖剣だけで十分ッスよ」

qp 「選ばれし恋人のみがわたしを引き抜けるのよ!」

男 「……はぁ?」

qp 「それはきっと、貴方のような気がしてならないわ!!」

男 「いやそんなとこに刺さられてても邪魔なんスけど……」

qp 「ならばもう抜くしかないわねオオいとしい人!」


40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 20:06:09.82 ID:xVQyxCFMP
db 「じゃんけんでは常にチョキを出しなさい」

男 「オレはカニベースか」

db 「わたしのことを想うのなら、じゃんけんでは常にチョキを出し続けなさい」

男 「グーとパーだけでこの先ずっと生きてけってのかよ……」


41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 20:09:24.34 ID:xVQyxCFMP

db 「婚約指輪の代わりにわたしを指にはめてもいいのよ?」

男 「危ねぇよ! ふざけんな!!」

db 「ホホ危険な恋、上等じゃない!!」


42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 20:16:48.28 ID:xVQyxCFMP
db 「もし宇宙のどこかにこの星とはまるで異なる文明が栄えていたとして、
   わたしに相当するものはどんな形をしているのかしらね」

男 「なんて夢のないSFだ」

db 「鋏(scissors)のフォークロア。略してSFよ」

男 「なんて浪漫のない民俗学だ」


43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 20:23:50.86 ID:xVQyxCFMP
db 「サア出かけるわよついてらっしゃい」

男 「どこにだよ」

db 「千手観音の持物にさりげなく鋏を加えておくのよ」

男 「儀軌教典にないことはやめろ!」


45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 20:28:40.33 ID:xVQyxCFMP
db 「鋏の右っ側と左っ側で801」

男 「小指掛けの付いた方が男で、もう一方が女じゃ駄目なんですか?」

男 「801じゃないと駄目なんですか?」

db 「マアあれがおちんちんに見えてしょうがないだなんて、とんだ童貞ね!」


46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 20:35:55.65 ID:xVQyxCFMP
db 「わたしの愛をあくまでも拒もうってのなら、こっちにも考えがあるわ」

男 「おっとオレの龍神さまには刃一本触れさせねえぜ?」

db 「アラいやねえ童貞は。すーぐ下ネタに走るんだから」

男 「童貞は関係ねえだろ、童貞は!」

db 「呪いをかけようかしら」

db 「何かを切ろうとしても刃に平行に挟まってしまって何も斬れなくなる呪いをね!」

男 「むしろその程度でお前から自由になれるってんなら大歓迎だ」

男 「カッター使うから!」

db 「ホホやれるもんならやってごらんなさいな」

db 「ひとたび電気と鋏の味を覚えてしまった文明人が、ほかのものを使えるのというのなら!!」


47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 20:42:59.56 ID:xVQyxCFMP
db 「だいたいもしわたしが擬人化したとしても、よ」

db 「貴方とわたし、ふたり繋がった瞬間に、そこを支点としてそのまま鋏になり」

db 「その後永遠に一丁の鋏として生き続けることになるだけじゃな……」

db 「アアそれもまた一つのハッピーエンドのかたちよね」

男 「なぜそこで鋏に戻る?」

db 「貴方がこの結末を望むのなら……」 シャキン

男 「望むわけねえだろッ!!」


48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 20:49:39.65 ID:xVQyxCFMP
U 「悪縁切り祈願として、祈祷済みの鋏を授与しているお寺だか神社だかがあるそうよ」

男 「じゃあお前と縁を切りたかったら……」

U 「アラそれならここにいい鋏があるじゃない」 シャコシャコ

男 「ペロッ……これは無限ループ!」


49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 20:55:34.13 ID:K/RAWXkgO
しかしウザい鋏だwwww


50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 20:57:01.63 ID:xVQyxCFMP
db 「床屋さんの鋏遣いの音の心地よさは異常」

男 「あー、あー。わかるわかる」

男 「あれも一つの職人技だよなー」

db 「わたしと貴方の恋も、きっとそんな感じよ」

db 「だから、愛することを、恐れないで!」

男 「あたしにゃガムテープの切りすぎで刃がねとついた鋏の音しか聞こえてきませんがね!」


51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 20:58:17.73 ID:xVQyxCFMP

db 「もしかして貴方、左手用鋏の方がタイプだから、わたしのことを……」

男 「お前が鋏だからだよ」


52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 21:05:15.85 ID:xVQyxCFMP
db 「貴方の遺伝子は二重螺旋」

db 「そしてわたしのかたちもまた、二つで一つ」

db 「いくら貴方が童貞でも、ここまで言えばもうあとはわかるでしょう?」

男 「ああ……お前とは早めに決着を付けなきゃならねえってことがな!」


53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 21:12:34.76 ID:xVQyxCFMP
男 「待てよ」

男 「糸が先にお前の刃に巻き付けば……!」

男 「刃が開けなきゃいくらお前でも赤い糸は切れめぇて!」

db 「その糸のもう一方は貴方に巻き付くだろうから、別に構わないわ」

男 「……」

男 「……<ιょぅ」

男 「畜生おおおおおオオオオオオ!!!!!!!!!!!111」

db 「オオなんて可哀想な童貞! オオ、オオなんといういとおしい童貞!!」 シャキンシャキンシャキン


54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 21:19:53.02 ID:xVQyxCFMP
db 「カッターの刃はわたしを切れない」

db 「でもわたしはカッターの刃を切れる」

db 「わかるかしら?」

男 「何がじゃ」

db 「貴方がこれ以上カッターに浮気するというのなら、わたしにも覚悟があるということよ」

男 「やめてーカッターの刃はちゃんと折るとこで折ってー! 危ないからー!」

db 「上等じゃない危険な恋!」


56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 21:27:00.22 ID:xVQyxCFMP

db 「切り取り線さえついているのなら、かみさまだって切ってみせるわ!」

男 「中二病だねぇ」


57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 21:28:34.27 ID:xVQyxCFMP

db 「先端が磁力を帯びていそうで帯びていない金属ナンバー1って、な~んだ?」

男 「帯びたかったの? 開きにくくなるだけだと思うよ」


58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 21:35:33.12 ID:xVQyxCFMP
db 「サア童貞。いつまでも引き籠もっていないで、外に出ましょう!」

男 「オレぁ別に引き籠もりじゃねーし、そもそも童t

db 「ここに大小の鋏を用意しておいたわ」

db 「貴方にもしまだもののふの気概が残っているのなら、これを帯びて颯爽とお征きなさい!」

男 「そんな間抜けな武士いねー!」

db 「アラアラわがままばかり言ってるとホントにチョン切っちゃうわよ?」

db 「2011年度・携帯していていざという時に助かった文房具ランキングナンバー1
   (コクヨマーケティング調べ)が鋏だということを貴方はまだ知らないだけなのよ!!」


59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 21:42:56.76 ID:xVQyxCFMP
男 「ヒマだな」

db 「アラそう? じゃあ鋏将棋でもしましょうか?」

男 「不吉な予感しかしてこないからやめとくわ」

db 「バカねえ。そこで一歩踏み出す勇気がないから、貴方はいつまでたっても童貞なのよ」


60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 21:50:12.77 ID:xVQyxCFMP
db 「サア何をぐずぐずしているの? 早く支度なさい」

男 「……オイ今度はオレをどこの反常識的世界へと誘うつもりだ」

db 「アラ仮面舞踏会に決まっているじゃない」

男 「……で、お前はそこにどう絡むわけ?」

db 「この二つの穴が仮面にならないわけがないでしょう?」

男 「ならねえよ! なってたまるかッ!!」

db 「ホホ愚かな童貞ね。数少ない出会いのチャンスを自分から振るだなんて!」


61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 21:57:32.48 ID:xVQyxCFMP
db 「キャア何をしているの童貞!」

男 「オレはなぜ鋏なんぞに童貞呼ばわりされた上、調理にケチをつけられにゃならんのだろう……」

db 「無謀なことはおやめなさい!」

db 「椎茸のヘタを手でもいで綺麗に取れるのは選ばれしリア充だけ!」

db 「童貞が同じことをしても、ヘタごと椎茸が裂けるだけなのを知らないのッ!?」

男 「いえ存じませんが」

db 「おとなしくキッチン鋏をお使いなさい!」

db 「分をわきまえない童貞は道を歩いているだけでも不審者情報がメールで出回るご時世なのよ!」

男 「いやヘタぐらい取れるっての……」


62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 22:05:05.97 ID:xVQyxCFMP
db 「文殊と不動はいいかげん煩悩を断つためには剣でなく鋏を持つべきなのよ」

男 「しまらねえ仏像だなあ」

db 「ソウ、じゃあ仕方がないわね。かわりに貴方が持っていてちょうだい」

男 「さりげに何ほざいてやがる」


63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 22:12:19.42 ID:xVQyxCFMP
db 「アアたまに貴方という人がわからなくなる」

男 「オレぁおはようからおやすみまで延々とお前のことがわからんね」

db 「わたしという鋏がありながら、薄汚いカッターで鉛筆を削るだなんて!」

男 「削れるかァッ!」

db 「マアその程度のテクニックもないくせに女の子を悦ばせられるとまさか本気で思っていたの?」

db 「ホホなんという身の程知らずな童貞! オオそれが故にますますもっていとおしい童貞!!」


64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 22:18:10.23 ID:xVQyxCFMP

db 「平行世界論に基づくのなら、丁髷の代わりに裁ち鋏を頭に乗せる江戸時代もあったはずなのよ」

男 「無いよ」


65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 22:25:19.91 ID:xVQyxCFMP
男 「薄い紙ならかろうじて切れる木の鋏ってあるじゃん? 幼児用の」

男 「お前があれならまだいくぶんかマシだったのによぉ」

db 「アア童貞でしかもロリコンだなんて! なんという三重苦なの我が夫(つま)は!」

男 「あの鋏はょぅι゙ょ扱いなのか……」

男 「そして無実の二重の上になにさらっと一重増やしてんだてめぇ」


66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 22:32:39.84 ID:xVQyxCFMP

db 「深夜の通販はそろそろまな板ごとだって切れるキッチン鋏を紹介するべきだわ」

男 「どういう使い方してたらキッチン鋏でまな板ごと切っちゃうのさ!?」


67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 22:39:34.66 ID:xVQyxCFMP
db 「ハサミノキを植えましょう」

男 「……そんな木あるの?」

db 「ローソクノキとかシアバターノキとかみたいなものね」

男 「……鋏が採れる木なの? それとも鋏みたいな花とか実がつく木なの?」

db 「ツベコベ言わずにお植えなさい!」

db 「口より先に行動へ移す気概がないから、貴方はいつまでたっても童貞のままなのよ!」

男 「童貞論争はいずれケリを付けるとしてさ、だからその木、どこにあンだよ?」


68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 22:47:08.73 ID:xVQyxCFMP
db 「いきなり武士に斬りかかられたらどうする気!?」

db 「貴方、真剣白刃取りなんかできやしないでしょう」

db 「でも鋏を広げれば、貴方みたいな童貞にだって簡単に刀を受け止められるのよ!」

男 「平成も二十年を超えたってのに、オレはいまさら辻斬りなんぞに遭わにゃならんのか」

男 「剣で切られるよか、おやくざさんの銃撃戦に巻き込まれる可能性の方が高いっつうの」


69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 22:54:34.92 ID:xVQyxCFMP
db 「ならば飛来する弾丸を鋏で切れるようにおなりなさい」

男 「無ww理wwwwww」

db 「まずは蝿で練習よ」

男 「オレは武蔵じゃねえwwwwwww」

db 「……」

db 「……ネエわたしはけして貴方に嫌がらせを言っているんじゃないの」

db 「貴方を愛しているからこそ、貴方にはわたしを完璧に使いこなしてほしいのよ!!」

男 「せめて鋏本来の使い方に限定してくれwwwwwwww」


70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 23:02:01.90 ID:xVQyxCFMP
db 「わたしをよーくご覧なさい」

db 「持ち手の部分に栓抜きだか殻割りだかがついているでしょう?」

男 「キッチン鋏には普通ついてるよね。使ったことはない機能だけど」

db 「刃が嫌だというのなら、これで貴方を悦ばせてあげてることもできるのよ!」

男 「悦ぶか! お前オレをなんだと思ってるんだ!?」

db 「鋏(scissors)はS! 男(men)はM! これは定説なのよ諦めなさい!!」


71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 23:09:10.48 ID:xVQyxCFMP

db 「わたしなら、貴方の前をチョン切ることも、貴方の後ろにねじ込むことも、どちらもできるというのに」

男 「なぜその二つが等価ッ!?」


72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 23:16:39.31 ID:xVQyxCFMP
db 「ヒマねえちょっと貴方何かお切りなさいな」

男 「別にいまんとこ切るようなもんはねえよ」

db 「フウこれだから童貞は……」

男 「ことあるごとに童貞童貞言うのやめれ」

db 「誘っているのよ気付きなさい」

男 「何にッ!?」

db 「愛する人の手で何かを切るのが、鋏にとっての最高のしあわせなのよ!」

db 「貴方はわたしの笑顔を見たくはないの?」

db 「そのためならばおちんちんさえ惜しくはないのッ!?」 シャッキーン

男 「すいませんめっちゃ惜しいです!」


73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 23:23:41.53 ID:xVQyxCFMP
男 「だいたい鋏の笑顔ってなんだよ……」

男 「お前、顔なんかねえじゃん鋏じゃん……」

db 「金属光沢の具合で察しなさい」

男 「わかるかぁッ!」

db 「わかるようになりなさい」

db 「このぐらい三条の和鋏職人なら基本のキよ」


74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 23:30:52.32 ID:xVQyxCFMP
男 「万能鋏って、何がどのくらい万能なわけ?」

db 「話せば長くなるんだけど……強いて言うなら」

db 「貴方を愛するというそのたった一事だけで、万の機能を語り尽くしてなお余りあるわ!」

男 「いかん相変わらずこいつ話が通じねえ……」


75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 23:38:19.09 ID:xVQyxCFMP
db 「何を考えているか当ててみましょうか?」

男 「どうせまたオレを変態童貞扱いするんだろ……」

db 「カシメをとった穴におちんちんを差し込んで」

男 「お前……さすがにそれは龍神さまのスケールを見くびりすぎだぜ……」

db 「そのままわたしを使ってよがらせたいと思っていたんでしょう?」

db 「ホホまったく童貞の夢想しそうなことね!」 シャキンシャキン

男 「いや夢想してるのはお前! お前だから!!」


76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 23:45:51.82 ID:xVQyxCFMP
db 「貴方はもっとわたしに対して素直にならなくてはいけないわ」

男 「素直じゃないですか!」

男 「童貞言うな、ほかの刃物使っても文句言うな、龍神さまのお命狙うな……」

男 「さんざっぱら素直に言ってるじゃないですかァ!」

db 「またそうやって童貞にしか通じない屁理屈をこねる」

db 「小指掛けのある方の穴にわざわざ親指を突っ込むかのような天の邪鬼な生き方はもうおやめなさい」

db 「貴方はもっとわたしに対して素直にならなくてはいけないわ」

男 「日本語は通じるのに話が通じないって……!」

男 「左手で鋏を使うかの如き、このもどかしさ……ッ!!」


77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/27(月) 23:53:11.04 ID:xVQyxCFMP
db 「鋏を開いて投げたらブーメランになると思っていた頃の貴方……」

db 「ホントにやって人に当たって大騒ぎになったときの貴方……」

db 「そんな貴方を慰めたのが、わたしたちの愛の始まりだったわね」

男 「ソースもなしに当の本人を騙くらかせると思うなよ!」


78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 00:00:28.50 ID:YTPefYOoP
男 「メシでもつくるか」

db 「お待ちなさい」

男 「お前も何か食うの? 鋏なのに」

db 「ちょうどいいわこの本をあげる」


 つ『キッチン鋏だけでつくる! 本格和洋中のすべて』


男 「キッチン鋏すげえええええええ!」


79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 00:09:06.35 ID:YTPefYOoP
db 「ちょっと! いま刃に指紋を付けたでしょう?」

男 「えー……刃についた紙くず払っただけじゃーん」

db 「罰よ。わたしを研ぎなさい」

男 「研がんでも別にまだ切れるよ」

db 「……アアもどかしい恋ね鈍感な童貞ね!」

db 「甘えるのにも見栄を張りたい女心を察しなさい!」

男 「研がれるのは甘えなんだ!?」

男 「ってオレには素直になれと言っておいて自分はこれか! クソックソッ!」

db 「……フウ貴方が童貞を卒業できる日は、どうやらまだまだ先のことになりそうね」


80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 00:18:28.30 ID:YTPefYOoP
db 「あの仲尼という男」

db 「妙に形式にうるさくて、薬味の葱も、鋏ではなく包丁で刻んだものにしか箸をつけないの」

db 「でもまあそこまでして付き合うほどの価値がある男でもないわ」

db 「だから貴方は安心してわたしで葱を刻んでちょうだい」

男 「たしかに孔子に用なぞありゃせんが……ありゃせんが……」


81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 00:27:52.33 ID:YTPefYOoP
db 「鋏を擬人化するより先に貴方にはまずやるべきことがあるはずよ」

男 「お前がどっか行ってくれたら、オレは鋏がどうのと悩む必要すらなくなるんですがね」

db 「鋏に足がついた本当の『ハサミムシ』を感得なさい」

男 「きめえええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!1」

db 「足は多ければ多いほどいいわ」

男 「ハサミムシ六本! ハサミムシのあんよは六本固定ですから!」

db 「あれってパッと見はヤスデみたいなんだからそれでいいのよ」

男 「よくねええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!1」

db 「必殺技は百足と同じ。『天井ダイブ』と『お布団侵入』よ」

男 「危ねえええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!1」


84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 00:34:41.34 ID:YTPefYOoP
男 「鋏カバー!」

男 「フフフはじめからこいつを使っていればよかったのだ!!」

db 「そういうのはイスラム圏の鋏にやってちょうだい」

男 「ちゃうちゃうこれそういうもんとちゃう!」


85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 00:45:16.16 ID:YTPefYOoP
男 「なんだか今日の鋏は固いなあ……」 ジョキジョキ

db 「持ち手の間に強力バネを仕込んでみたのよ」

男 「またいらんこと始めやがったよこの刃物ッ!」

db 「引きこもりなんだからせめて日常生活の中で少しでも身体を鍛えないと!」

男 「何度も言うけどオレぁ別に引きこもってませんから! バネ外せ!!」


87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 00:56:23.34 ID:YTPefYOoP
db 「コンビ名を決めましょう」

男 「誰と、誰の?」

db 「わたしと、貴方の、名コンビで、紙切り芸の世界に君臨するのよ!」

男 「……」

男 「やべぇオレ疲れてるのかな」

男 「なんだかそのオチ、すっごくいい落ち着きどころみたいに思えてきた!」


88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 01:07:01.41 ID:YTPefYOoP
db 「アア服の裾から! 服の裾からあ!!」

糸 「……」

男 「ん? ああ、糸くず……ありがとう」 ツイ

db 「引っ張っちゃ駄目!!」

男 「え?」

db 「それはほつれた糸になりすました運命の赤い糸!」

男 「エエエエエエエエエッ!?」

db 「汚いわさすが赤い糸汚い!」

db 「そうやって貴方との出会いを作為的に演出しようと目論んでいるのよ!」

男 「いやいやいやいや、ないないないない」

男 「何が哀しゅうて赤い糸そのものに惚れられにゃならんのさ?」

db 「アアもうもどかしい童貞ね!」

db 「信じなくても構わないから、きちんと鋏でしっかり断ち切りなさいその邪恋を!」

糸 「……」


89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 01:09:21.98 ID:V/5Q9Fk/0

 パチン……パチン……

友「いい音だ」 チビチビ

男「終わった花殻摘んでるだけやん」

男「人んちで変なもんバックミュージックにして呑んでんじゃねえよ」

友「変でもないよ」

友「慣れた手つきから出てくる音というのは、虫の音や鳥の声にも劣るもんじゃあない」  

男「悪かったなー庭いじりになんか慣れたひま人で」

友「慣れのついでだ。あとでそこの万願寺も摘んでくれ。味噌で焼こう」

男「図に乗んなよ何もしねえ酒飲みが!」

友「実はいい味噌が手に入ったんでお裾分けに来たんだ」

男「それを先に言えアホウ!」

 パチン……パチン……


90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 01:17:46.75 ID:YTPefYOoP
男 「うおッ変にちぎれたァ!?」 ビリッ

db 「マア相変わらずアルミホイルが下手なのね」

男 「刃のついたふたがふにゃふにゃになってて、切ってる途中でくにって曲がるんだよ!」

db 「意地を張らずにわたしをお使いなさいな」

男 「ふざけんな何が哀しゅうてアルミホイル如きにわざわざ鋏なんざァ!」

db 「ホホかわいい子! ホホホ意地を張る男の子ってホントかわいいわ!!」


91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 01:24:18.21 ID:YTPefYOoP
db 「わたしでも切れない世界にたった一つのもの」

男 「こんにゃく?」

db 「イイエそれは貴方への溢れ出るこの想い……!」 シャキンシャキン

男 「じゃあ何なら切れるの? カッター? ニッパー? ノコギリ?」


92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 01:30:28.30 ID:V/5Q9Fk/0
友「八月三日か」

友「今日は鋏の日だね」

男「何の日だってあるのなこの国」

友「鋏供養の日でもある」

友「どれ。いらなくなった鋏でもあれば一献手向けようじゃないか」

男「じゃあいい機会だ、切れにくくなったキッチン鋏にそろそろ踏ん切りつけるか」 

男「それにしてもこの酔っ払いは何かにつけて呑みたがる」

友「現代の鋏は日本刀の技術が明治になって転化されたものがルーツだそうだ」

友「ならば刀と同じ魂がこもっていると見て当然」

友「最期に供養してやるのは人として払うべき当然の敬意だろう」 プシュッ

男「ものが鋏じゃなくてもおまえはきっと似たようなことを言うね! カシオミニを賭けてもいい!」

友「そうかい」

友「だが酒飲みから呑む口実を奪ってしまうと、あとが怖いぞ? ふ、ふ」 ゴクゴク


94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 01:35:24.28 ID:YTPefYOoP
男 「冬はこたつですな」

db 「エエまったくね」

男 「……鋏はこたつ関係ないだろ鋏は」

db 「何を言っているの。こたつに文旦は常識でしょう?」

男 「普通のみかんで十分だよ。文旦剥くのめんどくさいし」

db 「駄目よ! 文旦の中の皮を手だけで綺麗にむけるのは熟練のリア充のみ!」

db 「童貞が真似しようとしても、中の実がつぶれて汁が飛び散るだけなのよ!!」

db 「いいからおとなしくキッチン鋏を使いなさい!」

男 「だから普通のみかんでいいって言ってるだろ聞けよ人の話!」


95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 01:46:03.45 ID:YTPefYOoP
db 「ハア貴方が童貞じゃなかったら……」

男 「いいかげん小型金属収集の日に捨てたろかてめぇ」

db 「人間の彼女との通話中に電話線をチョン切ってやったのに」

男 「つまらない野望は捨てろ!」

db 「いまどき携帯も持っていないような男だから童貞なのねえハア」

男 「あァ? 携帯と童貞は関係ねえだろ、携帯と童貞はよォ?」


96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 01:50:24.02 ID:V/5Q9Fk/0
友「久しぶりに気持ちのいい五月晴れが来たねえ」

男「いま六月ですが」

友「旧のことだからこれでいいんだよ」

友「晴れると梔子もいい香りだ」

男「去年花がつかなかったぶん、今年は当たったみたいなんよ」

友「なるほど」 トクトク

男「うーわ酔っ払いがさっそく呑みモードに入ったー」

友「いいじゃないか自前なんだし」

男「当たり前だ。これで呑まねえ俺が酒まで用意してたら奴隷乙もいいとこだろ」

友「花を用意してもらっただけで十分さ」

友「君はこの花の香に酔うといい。それでちょうどいい」

男「ふん……ん?」 ノソノソ

友「どうした、庭に出て。間近のほうがいいのかい?」

男「いや。どうせ見ながら呑むんなら、茶色くなってきた花は摘んどくわ」 パチンパチン

友「奴隷乙」 チビチビ


97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 01:57:05.92 ID:YTPefYOoP
db 「それにつけても解せない話ね」

男 「一番解せねえのは今ここにいるファック鋏だよ」

db 「密教法具に鋏がないだなんてどう考えてもおかしいじゃないの」

男 「おかしいのはお前の方だ」

db 「そうね貴方出家なさい。童貞なんだからちょうどいいわ」

db 「そして鋏を持った尊像を崇拝する新宗を打ち立てるのよ!」

db 「出家するには煩悩が邪魔だというのなら、いますぐわたしがチョン切ってあげるから!!」

男 「あいにくとオレぁ龍神信仰の修験者だからなァ! 遠慮しとくぜ!!」


98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 02:03:39.50 ID:V/5Q9Fk/0
友「手に鋏刀、何摘む人か、春の園……」

男「ん?」

友「子規だよ」 チビチビ

男「何を摘もうが子規にどうこう詮索されるいわれはねえ!」

男「庭の手入れぐらい好きにさせろや」 パチンパチン

友「そこの葱坊主を摘もう」

男「何摘むとか言いながら指定してきやがった」

友「天ぷらにするといい」

男「しかもてめえの肴じゃねえか」

友「どうせいつも摘んだら捨ててるんだろ?」

男「悪いかコンチクショウ!」

友「坊主は粗末に扱うと罰が当たるよ」

友「きちんと酒で供養し仏罰から救ってやろうってんだ。感謝してほしいもんだね」 クス


99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 02:05:03.68 ID:YTPefYOoP
db 「チョット貴方入院なさいな」

男 「は? 完全体・究極体を通り越して健康体ですよ僕ぁ」

db 「医療鋏として貴方の体組織を切ったり剥がしたりしてみたいのよ」

男 「龍神さまを諦めたかと思ったらこれだよこの気違いな刃物は!」

db 「落ち着きなさい童貞体」

db 「これは人間同士で言うと耳かきのようなものなのだから」


101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 02:16:09.36 ID:YTPefYOoP
男 「最近なんかお前重いんだけど」

db 「貴方の手首・握力を鍛えるためのささやかな内助よ」 ズシリ

男 「鍛えてどうすんの!?」

db 「最低でも金切り鋏を紙でも切るかのように軽々と操れるようになってほしいの」

db 「貴方はわたしの愛を受け入れるのにもっともっとふさわしい男にならなくてはならない!」

男 「何度も言ってるが受け入れる気はまったくないッ!」


102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 02:19:47.92 ID:m03oZWLt0
夕方の4時から休まずに書き続けてるのか…
すごい胆力だ


104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 02:24:49.71 ID:V/5Q9Fk/0
雨「さああああ」

友「嫌な梅雨だねえ」

男「洗濯物も乾きゃしねえ」

友「呑んでるうちに晴れるさ」 トクトク

男「俺んちは飲み屋じゃねえ!」

男「いいかげん雨で腐れよその酒!」

友「昔の酒ならともかく、現代の酒はそうそう簡単に腐りゃしないよ」

友「鋏が勝手に錆びるぐらいになれば、さすがに腐りもするだろうけどね」

男「ステンレスなめんなコンチクショウ」

男「ああ。意地でも腐らせてえなーその酒」

友「そうかい」

友「だったら村の入り口にある石像の眼でも赤く塗ってくるといい」

友「水気系では一番のフラグだよ」 チビチビ

男「節子それ腐るフラグやない。集落が水没するフラグや!」


105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 02:26:09.89 ID:YTPefYOoP
db 「電車内でのつれづれに、窓から見える景色へ鋏を飛ばしている人はどのくらいいるのかしらね」

男 「普通そういうのは忍者でやるから」

db 「窓枠内の景色では街中にある直立棒状のものが鋏にスパスパ切られていくの」

db 「けっこう爽快よ?」

男 「いらん! オレぁドラゴンボールの悟空飛ばしてるから!」


106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 02:37:57.97 ID:YTPefYOoP
db 「和鋏……和風
   裁ち鋏……熱血
   キッチン鋏……家庭的
   剪刀……理系
   事務鋏……主人公的無個性
   金切り鋏……オッサン臭い
   花鋏……純情可憐
   剪定鋏……田舎もの
   高枝切り鋏……不思議ちゃん
   理容鋏……スタイリッシュ
   枝切り鋏……がさつ
   鼻毛切り鋏……汚部屋住人
   芯切り鋏……時代錯誤
   爪切り鋏……甲斐甲斐しい」

男 「またどうでもいい設定を……」

db 「……で801!」

男 「えッ!? ぜんぶ男なのそれ!?」

db 「サア何をぐずぐずしているの?」

db 「次のイベントまでに早く原稿を仕上げなさい!」

db 「アヘラースレに入り浸っている場合じゃあないのよ!」

男 「ふwざwけwんwなwwwwおwまwえwがw描wけwwwwww」


107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 02:41:03.07 ID:YTPefYOoP

db 「や……っ! 触点は敏感なの! もっとやさしく……」 シャコシャコ

男 「そこが鋏の性感帯なんだ……」

男 「あとその妄想中にもしオレを登場させてたら、塩水に漬けて放置するからなッ」


108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 02:42:56.81 ID:V/5Q9Fk/0
男「よォ」 フラッ

友「花につられて呑みもしないのが迷ってきたか」

男「花を見ても呑むしか能のない奴ぁ黙って呑んでろ!」

友「それが人のうちの桜を愛でる態度かい」 チビチビ

男 ウロウロ

友「樹の下で何をやってるんだ。あんまり踏むと根が傷む」

男「今年の見上げポイント探してんだよ」

友「そうかい」

友「じゃあついでに剪った方がいいポイントも探しておいてくれ」

男「桜って剪っていいのか?」

友「染井吉野は人工の樹だ。人が剪らなきゃ逆によくない」

男「ふうん。でもそういうのは庭師に頼めや」

友「君んちの高枝切り鋏は、じゃあ、何のために買ったんだ」

男「知らん! あの日いたいけな俺をたぶらかしたジャパネットたかたに言え!」


109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 02:48:01.78 ID:YTPefYOoP
U 「掌の中にスッポリ納めたまま刃を見せずわたしを自在に操れるようになりなさい」

男 「いまどき和鋏なんか使わねーよ」

U 「ンマアそんなことでいったいどうやって忍者の暗殺術に対抗しようっていうの!?」

男 「てめえはいつから暗器になった?」


113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 02:55:48.38 ID:YTPefYOoP
db 「オカズに飢えているからといって、わたしの指穴にほかの鋏の刃を突っ込むのはおやめなさい」

db 「そんなものを見ながら童貞棒を慰めていったい何が楽しいというの!?」

男 「しねえよ! そんなもんに欲情するまで落ちぶれちゃいねえよ!」

db 「貴方のものを直接挿し入れる勇気を持って!」

男 「しねえっつってんだろ!」

db 「ホホ初めてが怖いのはよくわかるわ。でもそのままでは貴方は一生童貞なのよ!?」


114 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 03:01:40.70 ID:V/5Q9Fk/0
友「いい鋏が手に入ったんだ」

男「間に合ってます」

友「君んちにはまだなかったろう? 胡桃の殻剥き鋏」 ツイ

男「呑まねえ俺に剥かせて、てめえがつまみにする気だなコンチクショウが!」

友「銀杏も剥ける」

男「ギヤアアアア銀杏まで押しつけて来やがったァ!」

男「軽く炙って塩でもつけてつまむ気だろ!? この外道! 下衆! 悪魔!」

友「胡桃はもう拾ってきてある。半分あげるから剥いてくれ」 ドン

友「君もいずれ人の親になれば子供のために文旦の皮を剥くようになるんだ」

友「その練習だと思えばいい」

男「違うよ! 文旦と胡桃はぜんぜん違うよ!」

友「胡桃のシュトレンもいいな。年の瀬にワインと一緒にだね……」 トクトク

男「イヤアアアアどこまで人に押しつける気なの!? この天魔! 鬼畜! 増長慢!」

友「作ったら少しずつ、長く食うんだよ」

友「夜中に一人でぜんぶ食べたりしちゃあ駄目だからな」 チビチビ


115 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 03:05:21.73 ID:YTPefYOoP
男 「ん……くそ……こいつ……」 ゴソゴソ

db 「マアまた無駄なことを」

男 「無駄も何もこの紐ほどかなきゃ中の荷物出せないじゃーん」

db 「ホホ愚かな童貞ね」

db 「固く結ばれた紐を素手で綺麗にほどけるのは、勝利者であるリア充だけだというのに!」

db 「とっておいてまた使うわけでもなし、さっさと鋏でチョン切っちゃいなさいな」

男 「いや、待て……もうちょっとでほどけそうなんだよこいつ……」

db 「エエじれったい! 童貞には無理だと言ってるでしょう!」 シャキンシャキン

男 「邪魔すんなコラ! 手元が狂……うわよけい固くなった!馬鹿ッ!」


116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 03:16:20.02 ID:CHisa2dF0
リア充って凄いんだな・・・・


117 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 03:16:42.59 ID:YTPefYOoP
db 「さみしいわ貴方最近構ってくれないじゃない」

男 「あいにくとオレぁ植木屋でも仕立屋でも床屋でもないんでね」

db 「せめて貴方の指をちょうだい」

db 「さみしい時は指穴の中に入れ貴方を想って静かに泣くわ」

男 「その前に全オレが号泣するねッ!!」


119 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 03:18:32.22 ID:V/5Q9Fk/0
月「皎々」

友「いい満月だ」

男「小っちゃすぎていいとか悪いとかよくわからん。沢蟹か!」

男「よくもまあこんな小っちゃいもんにあんだけ名前つけまくったもんだ。偏執狂か!」

友「雨と月に名前が多いのはこの国の運命だよ諦めたまえ」

友「そんなに嫌なら、自分でまだ名前のない形の月でも作って愛でればいいじゃないか」

友「ちょうど満月だ」

友「鋏で好きなように切るといい」

男「切ったら切ったで、また勝手な名前をつけて観賞するんだろコンチクショウめ!」 モグモグ

友「月見にメロンパンを食うようなのが、細かいことを気にするねえ」 チビチビ

男「作りすぎたもんは仕方ねえだろ」

男「それに月と同じ色したもんなんだから、月見に食ったっていいじゃねえか」 モグモグ

友「メロンパンの別名が “サンライズ” だと知ってて言ってるのかいそれは」 ヒョイ

男「さっきから自分も食っときながらなにほざきやがる」

友「ふ、ふ。君は呑まない分、甘いものを作らせるとなかなかのもんだよ」 モグモグ


120 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 03:25:26.17 ID:YTPefYOoP
男 「いまさらだけど、なんで鋏がしゃべって動いてるんだろう……」

db 「アラわたしは神の化身なのだと以前言ったじゃない」

db 「神の身でなくてどうして『かみ』と名のつく他の物を切れるというの!?」

男 「マジで神なのか……?」

db 「……」

男 「……」

db 「……ホホ冗談よ。冗談に決まっているじゃない」

db 「本当は支点力点作用点の存在によるテコの原理のなせるわざでしかないのよ」

男 「テコの原理すげえええええええ!!!!!!1!!!」


121 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 03:26:15.66 ID:+sfXtMIDO
まだやってやがるwwww


122 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 03:32:19.01 ID:YTPefYOoP
db 「サア鋏をモチーフにした超人を考案して集英社に送るわよ!」

db 「ストロング・ザ・武道の正体に採用させて、鋏の名を満天下に知らしめるのよ!!」

男 「待て!」

男 「OVERさんの中の人は魚雷ガールで許されても、武道の中身が鋏ってのは許されねぞ!?」


123 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 03:37:01.34 ID:V/5Q9Fk/0
友「袋が固いな。鋏を貸してくれ」

男「ほい」

友「ありがとう」 ジョキジョキ

友「ちょっと辛いが君もつまんでくれ」

男「ああ」

友「ずいぶんと年季の入った裁ち鋏だね」

男「気が付いたらうちにあったからなー」

男「たぶん親の代からあったんだろ」

男「いいかげん小汚ねえよなあ」

友「いや。裁ち鋏はこのぐらいの方が味があっていい」

友「親から子へ、受け継ぐだけの価値があるものの一つだよ」

男「そうかぁ? 変なもん面白がる酒飲みやね」

男「切れりゃなんだっていいじゃねえか鋏なんざ」 ポリポリ


124 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 03:41:08.58 ID:YTPefYOoP
db 「鋏も人間の女も、緩くもきつくもないあたりが名器と呼ばれるのは同じ」

db 「つまり鋏も人間の女も同じなのよ!」

db 「ハアここまで言わなければ童貞には理解できないのかしらねえ……」

男 「わからん! お前の言うことはまるでわからん!!」


125 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 03:41:57.30 ID:YTPefYOoP

db 「かみはチェーンソーでなく、鋏で切りなさい」


126 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 03:49:08.47 ID:YTPefYOoP
db 「フウこの童貞には女の子にアクセサリーをプレゼントしてあげようという気概もないのかしら」 

男 「ツッコミどころはどこですか?」

db 「なんのためにヒットポイントがついていると思っているの!?」

db 「いくら童貞でも付け替えのヒットポイントぐらい買えるでしょう」

男 「それはおしゃれのためのワンポイントでついてんじゃねえよ」

db 「ンマアお馬鹿さんね人間の耳や指だってそれは同じことじゃない!」


128 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 03:58:01.80 ID:V/5Q9Fk/0
友「もうこんな季節になったんだ」

男「赤蜻蛉かー」

友「黄金なす稲田の上に群れる赤蜻蛉」

友「何だかんだ言って、日本には生まれてみるもんだねえ」 モソモソ

男「呑みたげに手ぇ動かしてんじゃねえよ酒袋」

友「新米を見たら新酒を呑みたくなってきて当然じゃないか」 クス

男「これ、醸す用の米か? 見境ねえなこの酔っ払いは」

友「ふつうのより丈があるだろ。地元生まれの酒用品種だよ」

男「いくところまでいった酒飲みは、そんなもんまで見てわかるんかい。終わったな!」 ペシペシ

穂「わさわさ」

友「じゃあ君はこれを見て何を思うんだい。興味あるね」

男「あ……?」

男「……」

男「そういや昔はよく蜻蛉捕まえて鋏で羽根切ってたなあ、とか」

友「ああ……やっぱり君は呑まなくて正解だよ」


129 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 04:08:33.37 ID:V/5Q9Fk/0
友「おっ。何か焼くのかい?」

男「パン作ってんだよ」

友「そうかい。ワインを持ってきたのもまた天命か」 タプン

男「コンチクショウ! また人の作ったもの横取りする気だよこいつ!」

友「だから君も呑んで構わないんだよ?」

男「呑めるかあんなゲロの味しかせんもんなんざァ!」

友「君の味覚は面白いねえ。何を呑んでもそれしか言わない」

男「俺にゃあアルコールの味の違いがわかるおまえの方が面白いね。意味わからん」 モソッ

友「おっ。ここで鋏」

友「すると今日のパンはエピ……なるほどワインで正解だ」

男「パンオレだボケナス」


130 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 04:11:33.86 ID:YTPefYOoP
男 「今日は星がよく見えるな」

db 「フン」

男 「ん? 星は嫌いか?」

db 「……てんびん座ってあるじゃない」

db 「もとはさそり座のはさみだったのよ」

db 「独立当初ははさみ座とも呼ばれていたのに、それが今ではスッカリてんびん座よ!」

db 「こんなふざけた話ありゃしないわ!」

男 「オレに言われても知らん!」

db 「でも貴方だけはあれをかたくなにはさみ座と呼んでくれると信じているから!」

男 「それは五老峰の老師に悪いからやめとこうぜ」


131 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 04:14:16.16 ID:YTPefYOoP

db 「ドレ今日はこの皮剥き突起で貴方の皮でも剥いて差し上げましょうか」

男 「おっとそいつを刺して剥くのは分厚い柑橘の皮だけにしておきな!」

男 「オレの龍神さまは逆に覆い隠す皮がほしいくらいの眩しすぎる逸物だと知らんのか!?」


132 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 04:24:12.13 ID:V/5Q9Fk/0
祭「がやがや」

友「ほろ酔い気分でうろつく縁日は最高だねえ」

男「俺は素面だけどな!」

友「無理して付き合ってくれなくたっていいのに」

男「いやこういうのって、たまに愉快なイロモノがあるじゃん」

男「まあだいたいはどこででも買えるもんが無意味に高いだけなんだけどよ」

友「ふ、ふ。ならば誘った甲斐があったというもんだ」

男「ん?」

友「珍しい。新粉細工だよ。ほら」

友「なんとも見事な鋏裁きじゃないか」

男「あれが? 始めて見たわー。器用なもんだねー」

友「買うかい?」

男「買わねえよ……呑むのか?」

友「呑まないよ。この技は呑みながら見るには失礼だ」


133 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 04:25:09.42 ID:YTPefYOoP
db 「サア用意できる限りの各種鋏を用意して」

db 「鋏の音でわたしと貴方の愛の音色を奏でるのよ!」

男 「鋏は楽器じゃねえ!」

男 「それにオレの手は二本だ!」

db 「マアそれじゃあ貴方はいかなる調べに乗せてわたしへの愛を歌い上げるの!?」

男 「まさかとは思いますが、この『愛』とは、あなたの想像上の存在にすぎないのではないでしょうか?」


134 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 04:33:11.60 ID:YTPefYOoP

db 「妖刀を打ち直せば妖鋏もあるいは作れるかもね」

男 「そういうのは再利用せず、火山の火口にでも捨て溶かすことをお勧めするね!」


135 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 04:42:52.51 ID:V/5Q9Fk/0
友「古いものをあさっていたら面白い鋏を見つけたよ」

男「何だこのスプーンみたいな鋏は」

友「和蝋燭の芯切り鋏だね。切った芯が落ちないよう、刃を合わすとスプーン状になるんだ」

男「そしてそのでっかい蝋燭は何だ」

友「せっかく面白いものを見つけたんだ。使ってみたいじゃないか」

男「物好きなことに金を使う奴だなー」

男「昔のってことは、わざわざ研ぎ直しにでも出したのかこれ?」

友「ふ、ふ。象牙の箸の法則ってやつかな」

男「酒池肉林の挙げ句に鹿台で焼死する気か」

友「焼け死ぬにはまだ呑み足りないねえ」

男「お前が呑んでる間俺に何をしろと?」

友「酒のアテがてら怪談でもしててくれ」

男「作法どおり一話終了で吹っ消していいんだな!?」


136 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 04:43:49.85 ID:YTPefYOoP
男 「やっぱ鍋には蟹だよなあ……」 ハグハグ

db 「わたしのために蟹鍋とは貴方も少しは気が利くようになったのね」

男 「すいません意味がわかりません」

db 「わたしは殻を剥く、貴方は肉を食べる。そういうことでしょう?」

男 「え?」

db 「え?」

男 「蟹の殻なんていつも指入れて割って食ってるけど……」

db 「アア何というものの道理のわからない童貞なんでしょう!」

db 「蟹の殻を道具も使わずパキッと綺麗に割れるのは、神に愛されしリア充だけの固有スキルなのに!」

db 「童貞が真似しようとしても殻はグニャグニャ曲がるわ、肉は半端にこびりついたままだわ」

db 「たまに一度で割れても欠片が肉に残り、口の中で名状しがたい音を立てるのよ!」

男 「そそそそんなことないわ!」 ドキッ

db 「いいからわたしにまかせなさい! 肉を横取りしようってんじゃないんだから!」 シャキンシャキン


137 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 04:49:51.77 ID:YTPefYOoP

男 「お前オレのドラクエいじったろ?」

db 「オオわたしの童貞! 感謝なさい!」

男 「勝手に持ち武器を全部おおばさみにしてんじゃねえッ!」


138 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 04:56:55.69 ID:YTPefYOoP
db 「全鋏擬ハサミムシ化計画、始動!」

男 「 や  め  て  ! 」

db 「脚はやっぱり百足並み!」

男 「 堪  忍  し  て  !! 」

db 「すべてが天井から降ってくる!」

男 「 い  っ  そ  殺  し  て  !!! 」


139 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 05:00:39.57 ID:V/5Q9Fk/0
男「れ?」

花「紅々」

男「田んぼ脇じゃあんめえに、また変な山の中に彼岸花が咲いてらあ」

友「今は山の中だが昔は道だったらしい」

友「脇に田んぼぐらいあったのかも知れないな」

男「ほーう。野の花に歴史ありだねえ」

友「このまま見過ごすには惜しいが……摘んで帰るほどでもないか」

男「彼岸花に鋏入れると家事になるとか言うしねえ」

友「ふ、ふ。君にしては変なことを知っている」 

男「うるせえ」

友「放っておいてもまた来年逢えるんだから、そのとき酒でも持ってくればいいだろう」

男「やっぱ呑むのな」

友「お彼岸は仏事じゃないか。仏事にお供えの酒は欠かせないよ」

男「ケッ。葷酒山門になんたらとか言うくせに、ふざけた話だぜ」

友「ああ。まったくだ」


140 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 05:06:16.83 ID:YTPefYOoP
男 「どうもお前は物語の方向性を間違っているように思えてならん」

db 「アラ童貞のくせして他人様に指針を示そうというの?」

男 「鋏職人の弟子である青年と、鋏を使う職業で同じく見習いの身の少女達との交流の物語とか」

男 「華道とか、庭師とか、美容師とか……」

db 「却下」

男 「はやっ!」

db 「わたしと貴方の間にはほかの女との交流なんかいらないのよ!」

db 「そんな邪魔な交わりはわたしがすべて裁ち切ってあげるから安心なさい!」 シャキンシャキン


141 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 05:12:27.03 ID:YTPefYOoP

db 「あんまりわがままばっかり言ってるとホントにチョン切っちゃうわよ……梳鋏で!」 シャコシャコシャコ

男 「やめてええぇ! 新井赤空作初期型殺人奇剣で斬られる方がまだマシよおおぉ!!」


142 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 05:19:39.41 ID:V/5Q9Fk/0
男「寒いと思ったらやっぱ田んぼも凍ってらあ」

友「こんな日に田んぼで居眠りしてたら、鳥もそのまま足下が凍り付くのかねえ」

男「鳥はそこまでアホじゃねえだろ」

友「足下から鋏でばっさり刈って鍋にして、一杯やってみたいもんだ」

男「かわいそうなことしてんじゃねえよ」

友「脚を残しておいたらそのうちまた生えてくるさ。稲だって二番穂がつくんだから」

男「おまえ酔っぱらってんのか?」

友「葱の妖精だって脚さえちゃんと残しておけば、しっかり身体は生えてきたよ」

男「妖精さんは切っちゃらめええええええええ!」


143 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 05:23:02.75 ID:YTPefYOoP
db 「そんなに言うならお望みどおり、シュレッダー鋏で切ってあげましょうか?」 シャキンシャキン

男 「なにコレェ? 刃がいっぱいついてるゥチョーマジ連刃刀ぉ~」

db 「ホホ時代の進歩鋏の進化とはたいしたものね!」

db 「いまや千円もあれば誰でも十本刀の一員として、志々雄さまとともに戦えるのよ!!」

男 「そんなもんになるくらいなら、オレは縁くんのやさぐれた心に活を入れて差し上げたい!」


144 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 05:33:58.59 ID:YTPefYOoP
db 「なによそのデザインナイフは!」

db 「そんな童貞臭漂うものなんか使ってないでわたしを手に取りなさい!」

男 「オイオイ鋏で切り絵はチト無謀だぜセニョリータ!」

db 「オオ鋏はすでに極限まで完成された手動刃物の王」

db 「使いこなせないというのなら、それは使い手が童貞だからと言うほか理由はないのよ!!」

男 「じゃあ鋏で深海探査する方法言ってみろやファック鋏ッ!」

db 「ホホ可哀想な童貞! オオこれは鋏だけの話ではとうてい済まされないのよ童貞!!」

db 「何でも人のせい、もののせいにする人生に、いったい何の甲斐があるというのかしらね!」


145 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 05:35:30.08 ID:V/5Q9Fk/0
桜「わさわさ」

男「わざわざ山の中くんだりまで来てよォ」

男「すっかり実桜になってんじゃねえか」

友「その実を見に来たんだ」

男「酒のアテに食うのか? 食えるのか?」

友「不味くはないよ。小さいながらもアメリカンチェリーっぽい味がする」

男「じゃあ大量にまとめて食えばアメリカンチェリーそのものか」

友「高枝切り鋏でも用意しなきゃ、手で摘めるだけじゃ足りないな」

友「それにヤクルトはあの小さい容器だからいいんだ。まとめて食うもんじゃない」

男「それは認める」

友「っと。話がずれた」

友「まだ青いのから熟しているのまで、この色合いの変化がいいんだよ」

男「細けえなおまえも」

友「おや。気に入らなかったかい? なら食い気の方に走りたまえ」

男「いや。こういうのもいい」 ニヤ


146 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 05:42:31.45 ID:YTPefYOoP
db 「ところで貴方下着は刻んでから捨てないの?」

男 「どこの痴漢が男の下着なんかゴミから盗むんだよ」

db 「アアなんという無知なんという童貞!」

db 「狂った腐女子がゴミ袋をあさって童貞のパンツを狙わないとも限らないわ!」

db 「これからは! きちんと鋏で切り刻んでから捨てるように!!」 シャキンシャキンシャキン

男 「イヤアァー! 狂った刃物がボクのおぱんちゅ狙ってるうゥー!!」


147 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 05:43:51.53 ID:YTPefYOoP

男 「うわっ……また枝と一緒に芋虫真っ二つにしちゃった……うわっ……」

db 「ホホ童貞如きが園芸鋏を使っていればよくあることよ!」


148 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 05:51:03.32 ID:YTPefYOoP
男 「お前……ちょっと太った?」

db 「ンマア貴方のせいよ!」

db 「貴方がいつまでたっても振り向いてくれないから、ストレスで太ってしまったのよ」

男 「ストレスならせめて痩せるなり脆くなるなりしてくれよオレの安全のために!」

db 「今ならトタン板でも簡単に切れそうな気がするわ……!!」

db 「……まるで貴方の首を骨ごとチョン切るようにね……!!!」

男 「前々から思ってたけど、お前はオレを最終的にどうしたいんだ!?」

db 「……」

db 「大丈夫。心配しないで」

db 「もし貴方の首をチョン切るようなことになったとしても」

db 「そのまま血溜まりの中で静かに錆びゆき、すぐに貴方のあとを追うわ……」

男 「そんな純愛はノーサンキューだ!」


149 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 05:54:53.22 ID:V/5Q9Fk/0
友「ついでに鋏を持ってきてくれないか」

男「あん?」

友「月見用に薄を刈っておきたいんだ」

男「どうでもいいことにマメな奴だな」

男「月が見てえのか、薄見てえのか、酒呑みてえのか、はっきりしやがれコンチクショウ!」

男「どれか一つ捨てろとお母さんに怒られたらどうすんだてめえ」

友「そうだねえ。まずは軍備を捨てようか」

男「それは孔子な」

友「じゃあ君は団子を作りたいのか、月を見たいのか、どっちなんだい」

男「くだらん」

男「今年作るのはおはぎだ!」 クワッ

友「……」

友「君も大概にマメな人だよ」


150 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 06:04:31.63 ID:V/5Q9Fk/0
男「ほい、鋏」

友「いや。いい」

友「んっ」 ブチィッ

男「……ソーセージを食いちぎって開ける酒飲みってオッサン臭い、改めてそう思った」

友「酒飲みが自分をかっこいいと思ってていいのは、せいぜい社会に出るまでだよ」

友「だいたい、うどんは音を立ててすすり、ソーセージはこうやって開けるのが礼法だ」 ムキムキ

男「食材をちぎるのが好きだねえ」

友「安物のソーセージなんか相手に気取る方がむしろどうかしている」 モグモグ

男「まあソーセージだしな」 モグモグ


151 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 06:05:43.36 ID:YTPefYOoP
db 「アア貴方の中には本当にわたしを愛する心が詰まっているのかしら?」

男 「無いよ」

db 「イイエ。イイエ。貴方はきっと、自分でもまだ気付いていないだけ」

db 「チョット調べてみましょうか」

男 「やめろ! 切る気か!」

db 「大丈夫よ最先端の医療鋏を信じなさい」 シャキンシャキン

男 「マジでやめろアホウ! 切ってもお婆さんと赤ずきんちゃんしかいないから!!」


152 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 06:09:08.86 ID:YTPefYOoP
db 「工具と思えば文房具、イヤイヤ実は医療器具」

db 「そうかと思えば農機具はたまた調理器具……」

db 「しかしてその実態は!?」 シャキン!

男 「変なキャッチコピー作ったところで、てめえは鋏だ名探偵でもエリートスパイでもねえ!」


153 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 06:16:05.11 ID:YTPefYOoP
db 「 『黙ってわたしについてきなさい』 」

db 「 『貴女を愛を刈る鋏にしてあげよう』 」

db 「あの日羊毛を刈っていたわたしを見かけた通りすがりのおじさまはそうおっしゃったの」

db 「迷ったけれど結局は羊を捨ててついていったわ」

db 「それからわたしは愛を知り、幾たびも鋏に生まれ、そして貴方に出逢ったのよ!!」

男 「あの大工の小倅かァいらんことしくさりおったンわァ!!!!!!!1!!!11!!」


154 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 06:19:14.23 ID:V/5Q9Fk/0
虫「ヂィィィィィィーーーーーーーーーーーーーー」

友「……うるさいな」

男「虫の音は虫の音なんだから、諦めて聞き惚れればァ?」

友「脳が痺れる感じの電気的な重低音が嫌なんだ」

男「俺も好きか嫌いかでいえばウザいとは思うけど、呑まねえから邪魔にはならん」 ヘラヘラ

友「なんの虫だよまったく」 プシュッ

男「クビキリギリスさんですがなにか?」

友「同じきりぎりすでこれか」

友「秋のきりぎりすは気に入ってたらしい清少納言も、こいつはどう思ってたんだろうな」

男「羽根をこすってるんだっけ。こっちもなんか音しそうなのこすり合わせて対抗してみるか?」

男「鋏の刃でも高速ですり合わせるとか……泡立て器より手が疲れそうだからやだなァ」

男「おお、ついに電動泡立て器みたいに電動鋏合わせ器が必要な時代が来たか!」

友「……楽しいかい?」 ゴクゴク

男「きりぎりすさんの声で不貞呑みたぁ、今宵のおまえさんはいとをかしくないねえ」 ニヤニヤ


155 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 06:24:15.40 ID:YTPefYOoP
男 「いたたたたたた! 刃先で鼻の穴広げんな!」

db 「新しいプレイの模索よ」

db 「わたしたちのセックスもこの頃なんだかマンネリ気味でしょう?」

男 「いつそんなむなしいことしたァ!?」

男 「それにこういうことはちゃんと鼻用鉗子がしてくれるから鋏はすっこんでろ!」

db 「ンマア鋏だって立派な医療器具の一種じゃない!」

db 「むしろ同じような形にくせして鋏の用を足せない鼻用鉗子こそいらない子なのよ!」 ギュウウ

男 「痛い痛いやめろやめろ!」


156 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 06:31:32.65 ID:YTPefYOoP
男 「今日の晩飯なんにすっかな」

db 「椎茸の鋏揚げになさい」

男 「二枚の椎茸に挽肉餡を挟んで蒸すなり揚げるなりするんだよなそれは?」

db 「恐れないで童貞! 一気に『食べて』しまえば案外怖くないものよ!」

男 「……二枚の椎茸に挽肉餡を挟んで蒸すなり揚げるなりする料理で間違いないよなたしか?」


157 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 06:36:11.54 ID:V/5Q9Fk/0
友「熱っ」

男「炙りたてのカワハギを甘く見たな。このいやしんぼめ!」

男「文明の利器・箸を使えい!」 ハムハム

友「箸で持ったところで食いちぎりきれてないじゃないか」

男「当たり前だこのクソ熱いのに丁寧に食いちぎってなんかられるか!」 ダラリ

友「つばだけだらだら垂れててみっともない」

男「だったらやけど覚悟で手頃にちぎって食えやこのわがままボディ!」

友「だからそうしようとしてるんじゃないか」

友「だいたい呑んでるのはこっちなのになんでそっちが悪酔いしてるんだ」

男「文句の多い子ね! おかあさんが鋏で一口サイズに切ってあげるから待ちなさい!」

友「いや。カワハギとこんにゃくは手で無骨にちぎるもんだよ」

友「鋏で綺麗に切った切り口なんか見せられるより、よっぽど食欲も湧く」

男「じゃあ冷めてからちぎりなさい! おかあさんもう知らないから!」 ハムハムダラダラ

友「ふん。一番熱いうちに食うのが炙りカワハギじゃないか……熱っ」


158 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 06:39:51.93 ID:YTPefYOoP
男 「あ、やべっ、だしのもと切れてた」

db 「ホホうかつな童貞ねしょせん童貞ね」

db 「サアわたしで昆布でも切って出汁をお採りなさい!」

男 「無いよ」

db 「だから童貞なのよ!!」 シャッコーン!!

男 「え? お前は切る側なのに何でここで自分が切れるの!?」

db 「フウ仕方がないわね。じゃあわたしを鍋に入れなさい」

男 「オレは出汁の話をしているんだが」

db 「わたしは海苔や昆布をはじめとして無数の食材を切ってきたキッチン鋏」

db 「刃にはその味が染みつき、世界にただ一つの合わせ出汁のもとになっているのよ」

db 「そんじょそこらの昆布やガラなんかじゃ出せない味ね!」

男 「お前はどこの雑炊鍋だ?」


159 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 06:51:53.77 ID:YTPefYOoP
男 「世の中には目盛り付き鋏なんてのもあるんだな」

db 「ソウでも無意味ね」

男 「えー? 何センチぐらい切ったか切りながらわかって便利じゃん」

db 「わたしと貴方の仲はいくら切ってもけして切り離せはしない!」

db 「∞なんだから測っても無駄なのよ!」


160 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 06:52:16.38 ID:V/5Q9Fk/0
雲「ゆらゆら」

友「なんともいい雲の具合じゃないか」

男「あー。たまーにこんないい配置になるよなあ。月の灯りと雲の闇とが」

友「誰が鋏を入れたのか知らないが見事な満天の切り絵だよ」

男「天然単色系じゃ最強の景色だよなー」

友「こんな月を見て呑むのもよさそうだねえ。どれ、注いでこよう」 ノソッ

男「そう言って見逃した隙に、つまんない雲になっちまうんだよなー」

友「……」 ピタッ

男「おっ。珍しい。酒樽人間が酒を諦めやがった」 ニヤニヤ

友「ふん……」


161 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 07:06:20.36 ID:YTPefYOoP
男 「お前もカシメが外せる鋏だったら研ぎやすかったのになあ」

db 「女は手間がかかるからこそいとおしいのよ」

男 「てめえは道具だ」

db 「アアでも介護してもらうようになったときのことを考えると、その方がいいかもしれないわね」

男 「鋏を介護する気もされる気もねえ!」


162 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 07:07:18.24 ID:YTPefYOoP

db 「フフ寝ぼけて裁ちきり鋏で爪を切ろうとするなんてかわいい童貞ね」

男 「ないないそれはない」


163 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 07:07:51.16 ID:V/5Q9Fk/0
男 シャキシャキ

友「春だねえ」 チビチビ

男「人が枕カバー縫ってるそばでなに言ってんだこいつ」

友「鋏で布地を裁つ音にも、ほら、春めいた柔らかさがある」

男「季節も温度もわからんとこに閉じ込められてから言えそういう与太は」

男「おんもが春になってから言われたって (゚Д゚)ハァ? なんだよ」

友「超能力の検証かい」

友「感性というのは検証するようなもんじゃないよ」 グビッ

男「されたくなかったら口に出すなや」


164 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 07:09:32.26 ID:YTPefYOoP
男 「爪切りが見当たらんのですけどね」

db 「アア鋏で代用が利くものはみんな鋏と交換しておいてあげたわ」

男 「爪切りをどこへやったァッ!?」


165 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 07:18:25.21 ID:YTPefYOoP
db 「キャア正気に戻りなさい童貞!」

男 「そうめんを食いたいだけで、なぜ狂気の童貞呼ばわりされにゃならんのか」

db 「その紫蘇の葉をどうするつもり!?」

男 「薬味に決まってンだろ」

db 「アア紫蘇の葉を包丁で細く切れるのは、光の道を征くリア充だけの特権なのよ!?」

db 「童貞の包丁さばきでは切ったつもりが繋がってしまうがオチ!」

db 「葱ならともかく繋がった紫蘇の葉なんて薬味として最低でしょう!」

db 「おとなしく重ねて折ってキッチン鋏でお切りなさい!」

男 「オレをそこまで童貞呼ばわりすることでいったいお前は何を得られるというんだ……」


168 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 07:25:28.49 ID:YTPefYOoP
db 「極端な話、リア充は鋏一丁握っただけでも、あらゆるものを作り出せるのよ」

db 「でも貴方は、オオ、童貞だから」

db 「まずはわたしとの絆作りに専念なさい」

男 「別にオレはわくわくさんになりたいわけじゃないんだが」


169 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 07:31:23.37 ID:V/5Q9Fk/0
男「おまえんちって、いまどき、枳殻の生け垣なのな」

友「昔からあるものだからね。言われても困る」

男「なんだ。てっきり果実酒目当てかと思ってたわ」

友「そんなに酒のことばかり考えているように見えるのか」

男「違うの?」

友「果実酒目当てに植えてるんじゃなく、植わっていたものを果実酒にしてるんだ」

男「違わねー!」

友「棘が多くて鋏を突っ込みづらいのがちょっと困るんだ」 チラッ

男「てめーのみかんはてめーで刈りな」

友「枳殻に特化した収穫鋏があればいいんだけどね」

男「世の中にゃ常人の理解を超えた方向に特化した鋏があるからなー。探せばあるかもねー」

友「君にもあげるから、コンポートにでもしてみて、うまくいったら持ってきてくれ」

男「枳殻はそういう食いかたするもんじゃねえよ」

男「だいたい酒飲みなら甘いもんなんか食うなッ! 誇りを持てい!!」 クワッ

友「それは、君、酒飲みへの偏見だよ」 クス


170 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 07:32:32.84 ID:YTPefYOoP

男 「雨、やまねえなあ」

db 「はさみだれというやつかしらね」

男 「さみだれ、な」


171 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 07:39:16.56 ID:YTPefYOoP
db 「貴方の髪を、爪を、鼻毛を、おちんちんを、アアただ貴方だけを切っていたい!」

db 「かと思えば、貴方の手で使われ切るのなら他の女の下着でもいいと思うわたしがいる!」

db 「オオどちらもわたしなのよ貴方を愛するわたしなのよ!!」

db 「どちらが本当のわたしなのかしら? ときどき自分というものがわからなくなるの」

db 「だからお願い。そんなときは指穴に、ずっと貴方の指を挿れていてちょうだい」

db 「でないとわたしは愛でおかしくなってしまいそう!」

男 「寝ても覚めてもお前のことがまるでわからんオレの苦悩に比べりゃ、屁でもねえよ」

男 「それと引っかかる点が二三ある」


172 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 07:45:35.17 ID:YTPefYOoP
db 「これでも昔に比べて丸くなった方なのよ」

男 「丸いお方は人のことを童貞童貞言いませんがな」

db 「わたしの先端をご覧なさいな」

男 「ハッこの程度で丸くなったたぁ片腹痛ぇ!」


173 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 07:51:29.64 ID:V/5Q9Fk/0
友「む」

男「どうした?」

友「ちょっと失敗した」

男「切り口がついてるのに上手く袋開けられない人っているよねー。ププッ」

友「……鋏を貸してくれ」

男「ほい」

友「ありがとう」 サクッ、ピッ

友「む」

男「また失敗してんじゃねえよ! 何で切り口だけ入れて引っ張る!? ふつうに全部切って開けろや!」

友「こだわりのない酒飲みはただのアル中だ」 ググッ

男「今度は引っ張って開けようとする!」

男「おとなしく鋏で切れって! 何で酔っ払いってくだらんことに意固地になるんだ!?」


174 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 08:00:15.99 ID:V/5Q9Fk/0
男「ちわー三河屋で……風呂上がり臭っ!」

友「そんなこと言われたのは初めてだ」

男「似たような概念に “寝起き臭っ” というのもあるよ」

男「ともに何となーく籠もったようなきっつい臭いでございます」

友「人を呼ぶから汚れた身体を洗っておいたのに、まったく」

男「ちなみに “酒臭っ” もこの亜種と相成りまする」 フカブカオジギ

友「……そんなに嫌な臭いだったか?」

男「いや別に。ただ共通して一つのジャンルを形成できる種類の臭いだなと」

友「君の感性は君独自の感性なのか、それとも呑まない人間共通のものなのか、どっちなんだい」

男「 “髪切った鋏臭っ” とか、 “朝一の鼻腔に薄く貼付いてた鼻糞臭っ” とか」

友「具体例を増やしてくれなくても構わないよ別に」

男「みかんを剥きまくった手の臭いはまた別ジャンルになる」

友「もういいって」

男「最新作買ったんだって? 早く見せろや」 ズカズカ

友「君もたいがいにやりたい放題だね」


175 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 08:11:13.16 ID:V/5Q9Fk/0
男「芋けんぴは凶器」 ガリガリ

友「いや。ちゃんとしたやつはそう凶悪に堅いわけでもないぞ」 チビチビ

男「うっそだぁ~」 ヘラヘラ

男「かつて芋けんぴはキッチン鋏の出荷前試験にも使われていたほど、その堅さには定評があり……」

友「せんべいはともかく、芋けんぴは堅さを追求して楽しむ菓子じゃあないよ」

男「なんか口の中おかしくなってきたー」

友「芋けんぴと文旦だけでも、延々食ってたら舌がおかしくなってくるのに、両方アホみたいに食うからだ」

男「ダッテコウチノシンセキガー!!」

友「送ってもらって食べといて、何を文句言ってんだ」

友「しかし、まあ、そのおこぼれをいただいておいてなんだが」 ポリポリ

友「高知からなら、栗焼酎の一本もついでに送ってもらいたかったねえ」

男「だっておまえの親戚じゃねえし、俺呑まねえし」

友「まあね……ん」

友「口の中がおかしくなってきたんなら、そろそろ剥く専に回ってくれないか?」 ドン

男「おこぼれを恵んでもらってる奴の態度じゃねー! なんか粘膜いてぇー!」 ヒリヒリ 


176 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 08:19:30.14 ID:V/5Q9Fk/0
男「キッチン鋏は多機能じゃーん?」

友「園芸鋏を振り回しながら何を言ってるんだ」

男「人が庭の雑草抜いてんのを見ながら呑んでる奴ァ、ツッコミ禁止だ」

友「働いたあとの一杯に負けず劣らず、人が働いている最中の一杯もまたいいもんだよ」 チビチビ

男「みんな言いたくても我慢してることをさらっとほざきやがったイボイノシシがァ!」

友「酒で口が軽くなっただけさ。気にするな」

男「呑んでんのはてめえの原因において自由な行為だろうがコンチクショウッ!」

友「キッチン鋏がどうしたって?」

男「この野郎……」

男「雑草ってのは根っこからいかなきゃ駄目じゃん?」

友「だねえ」

男「園芸鋏にはその地中部分をほじくり出す機能が欲しいわけよ」

友「自分で作って実用新案でもとればいい」

男「そしたらどうせすでに誰かが出してるんだぜ? そんな気がするね」

友「そうかい」 グビッ


177 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 08:30:58.40 ID:V/5Q9Fk/0
友「水平線を見ながら呑むなんて、これが始めてかも知れないな」 チビチビ

男「夏場に海の家かどっかでビールとか呑んだことねえの?」

友「大人になってからは海に行ってないんだよ」

男「あー。そういや俺もだわー」

友「改めて見ると見飽きないねえ」

男「シンプルきわまりない意匠の分際でなー」

友「……二日目に神は大空を創り、その大空で上の水と下の水とを分けられた、か」

男「上の水ってなんだよ上の水って」

友「昔の人は上の方に雨用の水貯めでもあると思ってたんだろう」

友「しかし鋏で切ったみたいに上手く空と水を分けたもんだ」

男「まっすぐ切ったんなら鋏じゃなくてナイフか何かだろ」

友「かもねえ。水平線から創造のさまを想像するのもなかなかに面白い」

男「てかこれ海じゃなく琵琶湖じゃねーか!」

男「水平線ごっこはふつう海でやるもんじゃねえのか!?」

友「なかなかに面白い」 グビッ


178 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 08:40:47.75 ID:V/5Q9Fk/0
友「君は酒を呑ませても味の違いがほとんどわからないだろう?」

男「辛口だ甘口だ淡麗だ芳醇だ、たぶん、呑んでる奴の43%ぐらいは騙されてるね」 キリッ

友「いや、醤油とウスターソースぐらい違うんだが」

男「細けえ酒飲みだな」

友「ひょっとして事務鋏と裁ち鋏で同じものを切ったときの感触も同じなのかい?」

男「意識したこたぁねえから知らん」

友「そうかい」 チビチビ

友「一応違うんだよ、あれも」

男「ほー。そういや違うような気もするねー」 モグモグ

友「ちょっとこの店の利き酒セットで実験してみていいかい?」

男「何度やっても無駄だっつーの」

友「酒を一律に不味がる人間は、どのあたりの微妙さまでなら区別がつくのか、学術的に興味がある」

男「そんな学問ねえよ。酒なんか出されたら酒カステラが不味くなる」

友「……酒蔵カフェで何を言ってるんだ君は」

男「家でも呑める酒を、家で呑むより高い金で呑むおまえの方がわっかんねーよ」


179 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 08:50:43.55 ID:V/5Q9Fk/0
友「この鋏というやつ」 シャコシャコ

友「考えてみたらたいしたもんじゃないか」

男「そっかー?」

友「刃物でものを切るための台座がまた刃物なんだよ?」

男「鋏なんてそんなもんだろ。つかそれが鋏だろ」

友「すでに存在していて、慣れているから、そう思うだけさ」

友「この発想は文明史上の一大革命と言ってもいいね」

友「鋏のない状態で他の刃物があふれていても、ふつう思いつけるかどうか」

男「酔ってんなてめえ」

男「そんなんが革命なら、酒で酒呑んでるようなてめえはワットか? コペルニクスか?」

男「つかさっさと開けろよサラミ」

友「最初は誰が、何の必要があって作ったんだろうねえ」 シャキン

男「開けねえんならよこせ!」


180 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 09:02:22.21 ID:V/5Q9Fk/0
友「しまった」

男「どうした。アイロンつけっぱなしで来たのか?」

友「せっかくいいワインを持ってきたのに、ワインオープナーを忘れるとは」

男「どうでもいいよ。どうせ俺は呑まねえし」

男「つうかせっかくの上物を、呑みもしねえ奴んちに持って来て、何がしたいんだおんどれは」

友「そういう君だって、お菓子を作っては、人んちに上がり込むじゃないか」

男「てめえはそいつをしっかり食ってんだろうがコンチクショウがァッ!」

友「キッチン鋏に……いやさすがにワインの栓抜きはついていないか」

男「いくらキッチン鋏が無駄に多機能でも、せいぜいビールの栓が抜ける程度だね」

友「君はワインオープナーなんか持ってないだろうしなあ」 タプンタプン

男「菜箸かなんかで強引に中に押し込みゃいいだろ」

友「苦労して手に入れたのに味気ない呑み方だなあ」

男「だったら太いねじねじ込んで、上の方残してペンチでつまんで引っ張りゃいいだろおおお!」

友「おっ。その手があったか」

友「ふ、ふ。すまないねえ。呑みもしないのにいいアイデアだけ出してもらって」


181 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 09:06:38.72 ID:YTPefYOoP
db 「鋏を使いたいのに手元にないときの空虚な感覚のことを『はさみしい』と言うことにしたわ」

db 「これで貴方も自分の気持ちを簡単に言い表わせられるでしょう?」

男 「鋏が手元に出しゃばってきて鬱陶しいときの感情は、じゃあどう言えば?」


182 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 09:10:49.50 ID:YTPefYOoP
db 「鋏。それは当たり前すぎて気付かない幸せ」

db 「世人は日常に鋏があるということの幸福を意識的にかみしめるべきだわ」

男 「まーた何か言いだしたよこの刃物さんは」

db 「PRのために鋏の魔法少女のアニメを作りなさい」

男 「『ましょう』じゃなくて『なさい』かよ!」

db 「双子の魔法使いB子(仮)とD子(仮)は魔法のバイブで身体を繋ぐと鋏に変身!」

db 「紙を切ったり枝を刈ったり大活躍!」

db 「……」

db 「……これは流行るわ」

男 「普通の鋏使っちゃ駄目なんスかね?」


183 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 09:13:51.93 ID:V/5Q9Fk/0
友「何か……鋏で剪るような音がしてこないか?」

男「酔っぱらってんだろ。とりあえずそこのせせらぎにダイブして、気違いみたいに笑っとけ」

友「山の中でよくわからない音を聞いたことは一度や二度じゃないんだがね」

友「この手の音は初めてな気がする」

男「あーはいはい天狗のせい天狗のせい」

友「誰かがどこかで山菜か何か摘んでいるのかも知れないな」

友「だとしたら首を突っ込んで分け前に与らない手はないだろう」 フラリ

男「やめろ! 山菜なんか採ったりしたらまた何か作りたくなる! そしておまえに食われる!」

男「どうせ変な鳥の声か山の声だよ。無駄手間だろうしさっさと帰るぜ」

友「それならそれで何も問題はない」 クス

友「山と街は死なない程度に少し迷ってみた方が面白いもんだよ」

友「君は妙に方角の勘がいいから、迷っても帰れないこともないだろう」 スタスタ

男「こら待てっつーに!」


184 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 09:21:50.05 ID:YTPefYOoP
男 「鋏、鋏っと」

人 「「……」」

男 「あったあった」

db 「お待ちなさい!」

男 「えッ!? お前そこ? じゃあこれは……」

人 「「……」」

db 「それはわたしじゃない! わたしになりすましたペーパーナイフどもよ!!」

男 「な、なんだってー!?」

db 「フウ危ないところだったもう少しで貴方の童貞が悪霊に汚されてしまうところだったわ」

男 「オレはいったい何に巻き込まれているんだ……」

人 「「……」」


185 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 09:32:25.17 ID:YTPefYOoP
db 「カーテンやタオルに鋏で切れ目を入れておきなさい」

男 「なぜ」

db 「遺したいのよわたしが切った証をこの世界に」

男 「道具は自己主張せんでおとなしく裏方に徹してな!」

db 「できれば貴方にも遺したかったわ」

男 「そんなに好きかオレの龍神さま! 龍神さまはお前なんか大嫌いって言ってるけどな!」

db 「アア貴方が生まれた直後に出逢っていれば、わたしが割礼を施せたのに!」 シャキンシャキン

男 「オレんちは曹洞宗だそんな邪習はねえ!!」


186 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 09:40:51.33 ID:V/5Q9Fk/0
友「ちょっと髪のこの辺を切ってくれないか。何となく鬱陶しくてね」

男「ついに女房扱いからおかあさん扱いか」

友「君がおかあさんか。ふ、ふ。それも悪くない」

男「その割にはおかあさんの言うこと聞かないわそのくせ食い物はたかるわ! コンチクショウ!」

友「全体じゃなくほんのちょっとでいい」

友「この程度で数千円使うのなら、酒代がもったいないよ」

男「そのゲロ味の気違い水はおめえが一人で呑むんですよね?」

男「何度も言うが、自分でやれ」

友「鏡を見ながら鋏を当てていると、映る動きが逆で、どうにもやりづらいんだ」

男「俺はそれを克服し、“セルフカッティングの鬼”の名をほしいままにしたというのに!」

友「なんならお礼に君の髪も切ってあげようか?」 クス

男「だから自分でできるっつっとろーが! いらんわァ!!」


187 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 09:41:30.85 ID:YTPefYOoP

       U

    U     U

⊃ 「ファンネル!!」 ⊂

    ∩     ∩

       ∩

男 「和鋏で遊ぶな」


188 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 09:51:03.24 ID:YTPefYOoP
db 「刃を紙と平行に入れて紙を切らない遊びってやったわね」

男 「また懐い話を」

db 「同じ要領で鋏をたくさん服の裾に提げておきなさい」

db 「大丈夫よそう簡単に落ちはしないから」

男 「オレを衆人環視のさらし者にして楽しいか?」

db 「我慢なさいこれも脱童貞のための大事なステップなんだから」

男 「脱の相手がおめえじゃ意味ねえだろが。まあオレは別に童貞じゃなi

db 「筆の毛先は鋏で切って整えるものでしょう?」

db 「筆おろしとはつまりそういうことよ!!」


189 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 09:54:56.32 ID:V/5Q9Fk/0
男「うーん」 シャコシャコ

友「迷い鋏、空鋏はみっともないぞ」

男「うわあっ。なぜ貴様がここにいるゥ!?」 ビクゥ

友「急に鋏の音がしたので」

男「食い物を収穫するんじゃねえ!」

男「いらん花をそろそろ切るかほっとくか、迷ってただけだ!」 シッシッ

友「ほっときなよ」

友「残しておけばいつでも切れる」 ゴソゴソ

男「なぜあがる? グラスを探す? 注ぐッ? 呑むッ!?」

友「花はそのままとして、ひとたび抜いた大丈夫がむなしく刃を納めていいものじゃない」

友「刃を剥くにはそれなりの覚悟が必要だ」 チビチビ

友「特に鋏というやつは技術的にも刀の正当な後継者だからね。徒疎かにはしちゃいかんな」

男「呑むためつまむためのアル中どもの屁理屈能力は、もう文学の粋だなコンチクショウッ!」

友「そこの芽キャベツなんかいいねえ。素揚げして、あれば、カリカリのベーコンもつけて」

男「芽キャベツ摘むのに鋏なんざ使わんわァ!」


190 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 10:05:22.12 ID:YTPefYOoP
db 「コンセントの穴は縦に二本。でもわたしの刃は横に二本……」

db 「フウ嫉妬ね電力会社の」

男 「 も  は  や  い  み  が  わ  か  ら  な  い 」


191 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 10:11:59.21 ID:YTPefYOoP
db 「常陸、上総、上野へ実際に赴任したのは守(かみ)ではなく次官である介(すけ)だったわ」

男 「親王任国だったからだろ」

db 「いいえ。その三国ではかみが鋏に切られる事案が続出したからよ!」

男 「お前は千年前何をしていたんだ……」

db 「あの覇王信長ですら鋏を恐れ、上総守でなく上総介と名乗ったのは有名な話!」

db 「でも大丈夫! 恋してしまえばもう怖いものなど何もありはしないのだから!!」


192 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 10:12:51.54 ID:V/5Q9Fk/0
男「そろそろ園芸鋏がご臨終っぽいわー」

友「研ぎに出すほどの高級品でもなさげだしねえ」

男「おんもで雨ざらしだしなあこれ」

友「しょっちゅう使ってるんだからもう少し丁寧に扱ってやりたまえ」

友「君に酒を預けたらめちゃくちゃな保管をしそうで怖いよ」

男「もう次のは百均で買おっかなあ」

友「いや。工具を百均で買うのはやめた方がいい。あれは使えない」

友「いっそ思い切って、ホームセンターじゃなく、専門の刃物屋で買おう」

友「高く買った方がそのぶんもったいなくて大事に扱うだろうし、結局はお得になる」

男「馬鹿高い酒でもあっちゅう間にお茶みたいに呑んでる奴に言われると、すげえ説得力だなあオイ」


193 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 10:20:22.99 ID:YTPefYOoP

db 「柿の木の太い枝を切ろうとしてかなわず壊れた枝切り鋏の中からは
   ちっちゃな爪切り鋏がわらわらと……」

男 「そんな昔話は知らん!」

db 「猿蟹合戦の原話よ。マア童貞なら知らなくても無理はないわね」


194 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 10:28:41.67 ID:YTPefYOoP

db 「あんまりわたしの愛を拒むようなら、夜中に紐で天井からぶら下がるわよ?」

男 「ダwモwクwレwスwwwやwめwてwwwwwww」

db 「そのドキドキ感がいつか本当の恋のドキドキに変わるまで!!」


195 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 10:30:16.35 ID:V/5Q9Fk/0
男「へいやっ!」 バチン

友「意外と剪れるもんだねえ」 チビチビ

男「さすがは最高級枝切り鋏。これでもう鋸は生きる価値無しだな」

友「それ、ホームセンターで買った安物じゃなかったのかい?」

男「大量生産の中にはごく稀に、いかな職人でも作り得ない奇跡の一品が生まれることがあるのです」

男「この鋏こそがまさにその、人呼んで、ワン・オブ・サウザンド!」 シャキーン

友「そんな漫画もあったね」

男「せっかくだから何か史上名高い鋏から名前でももらうか。何かいいのあるか?」 シャコシャコ

友「 “舌切” 」

男「あはっ☆たしかに有名だね♪ ……コンチクショウッ!!」

友「ふ、ふ。あとでちゃんとマジックで名前を書いておけよ」

男「切った枝はどうすっかねー。うまいこと挿したら根っこ生えるかな?」

友「植えるあてもないくせに、なぜ君はそういうことをしたがるんだ」

男「そこに剪った枝があるから!」 キリッ

友「そうかい」 グビッ


196 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 10:38:15.92 ID:YTPefYOoP
db 「フウいいかげん童貞が哀れで哀れで仕方がないから、擬人化案ぐらいは出してあげるわ」

男 「擬人化そのものはやっぱしてくんないんスね」

db 「刃が両手。カシメが眼。その周囲が胴体。ハンドル部分が脚。以上!」

男 「新種の妖怪かなんかスかそれ?」


197 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 10:46:15.05 ID:YTPefYOoP
db 「童貞。貴方も幼女の着るスク水のクロッチをつまんで鋏で切ってみたいお年頃なの?」

男 「切りてえのか?」

db 「一発でジョキっと切れないと白けるじゃないああいうのは」

db 「カッターとかじゃその辺チョット不安なのよねえ」

db 「エエやっぱり鋏が安心だわ!」

男 「……切りてえのか?」


198 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 10:48:17.94 ID:V/5Q9Fk/0
男「俺がいねえときは、つまむもんとかどうしてんの? 出来合い?」

友「だいたいは自分で作ってるよ」

男「だったら自分で作れ!」

友「そいつは困ったな」 トクトク

友「君が何か用意してくれている後ろ姿を見ながら軽くやるのも好きなんでね」

男「おまえはいったい何デレだァ!?」

友「待って一献、出て一献。君とだと酒が倍美味い」 クス

男「俺には何の得もない!」

友「持ってきた長芋はしっかりもらったくせに」

男「おろすのか? 短冊に切るのか? かける海苔は? 鋏で切るか? 手でちぎるか?」

男「出汁? 醤油? 酢醤油? 辣油とか抜かしやがったらその酒に塩を混ぜるぞ!」

友「今日みたいな日は暖かい出汁をかけて味わいたいね。とろろにして海苔はちぎってくれ」

男「細けえ酒飲みだ」

友「細かく訊いてきたのはそっちじゃないか」 チビチビ


199 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 10:54:48.54 ID:YTPefYOoP
db 「口裂け女がウロチョロしていた頃があったでしょう?」

男 「オレはその頃生まれてないよ」

db 「いま同じことが起きたら絶対に鋏が規制されるわ!」

男 「あの姐さん鋏持ってたからなあ」

db 「そうならないよう、貴方は製鋏業界のドンとなって大いに献金しておきなさい」

db 「自動車業界はそうやって交通事故を乗り切ってきたのだから!!」

男 「鋏で大儲けは無理やろ~」

db 「エエ覇気のない! それでも貴方男の子なの?」

db 「ならなかったらチョン切っちゃうからそのつもりで!!」 シャキンシャキン

男 「お前が規制派の首チョン切ってきた方が早いよね絶対!?」


200 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 11:03:02.01 ID:YTPefYOoP

db 「サア酒と鋏と文明と」

db 「どれが一番最初に滅ぶのか、デスマッチの始まりよ!!」

男 「この野郎……意外と難しい問題を……ッ」


201 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 11:04:51.91 ID:V/5Q9Fk/0
氷「からぁん」

友 チビチビ

男「そのグラス、ガラスだよな?」

友「ガラスだと何だい」

男「ガラスってな水中だと鋏でふつうに切れるって話があるんだけど」

友 ブフォッ

男「別にうちの庭を消毒してくれんでもええよ?」

友「こ、このグラスはだねえ!」

男「うちのだよオイ。おまえがなんか気に入って勝手に使ってるだけだよ」

友「君は使ってないじゃないか。昔からあったとか言うけど、このグラスは……」

男「ガラスもあれで液体らしいから、同じ液体の中に入るとどうのこうの」

友「ほかのどうでもいいのでやればいいだろう!」

男「試してみたけどふつうに割れた」

男「安物だったからかも知れん。それ、なんか高いんだろ? そいつなら」

友「悪かったのは鋏の方だよ。きっと」 グビッ


202 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 11:12:10.08 ID:YTPefYOoP
男 「なんか面白いことねえか? オレがお前に巻き込まれない限りで」

db 「ソウね」

db 「じゃあ聖書原理主義者に訊いてご覧なさい」

db 「主はいつの時点で鋏を創られたのか、と」

db 「ホホたぶん馬鹿みたいに真面目に考えてくれるから」

男 「悪趣味だなあ」

男 「でもどういう理屈をひねり出してくるのかにはちょっと興味あるわ」


203 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 11:20:43.01 ID:YTPefYOoP
db 「童貞! 失われた聖櫃を求めて徳島県をうろついている場合じゃあないわ!」

男 「そんなもん探してないし、うろついてもないよ? それに何度も言うけどオレは別に童t

db 「神殿には聖櫃よりももっと重要なソロモン王の芯切り鋏があったの」

男 「お前、『ソロモン王の』をつければ何でも宝になると思ってねえか?」

db 「ホホ無知な童貞ね! 旧約聖書の列王記をよくお読みなさい」

db 「バビロン王ネブカドネザルの部下が持ち去ったとされるソロモン王の芯切り鋏……」

db 「オオもはや貴方が童貞を脱しリア充と伍するには、その力を借りるほか術はないのよ!!」

男 「そういうのはルパン三世TVスペシャルでやってくれ」

男 「あとオレはだなあ……」


204 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 11:21:57.87 ID:V/5Q9Fk/0
友「このクリスマスケーキは、まさか……」

男「ふと宿願を果たしてみたくなってつい買ってしもうた」

友「なんだ。自作にしては見事すぎるから一瞬驚いたよ」

男「クソがッ! 何でてめえはうちに甘いものが出現すると湧いて出るんだ?」

友「ふ、ふ。酒飲みの勘、かな」

男「いやその勘はおかしい」

友「持ってきたのもいい具合にシャンパンだ。これなら君も呑めるだろう」

男「お茶でいいよ」

友「……うんまあケーキを箸で食うような君だからね」

男「このサンタ人形の首のあたりを、いっぺん鋏で派手に爆砕してみたかったんだ」 ウキウキ

友「危ないなあ。変なところに飛んだらどうするんだ」

男「シャンパン持ってきた奴に言われたかねえよ。その栓と同時に斬首刑な」

男「聖ニコラスは殉教もせずに列聖されやがったんだ」

男「殉教して列聖された聖バレンタインに悪いから、今ここで俺が殺る!」 シャコシャコ

友「君の感性はたまにわけがわからないよ」


205 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 11:29:03.01 ID:YTPefYOoP
男 「金がない。さてはゆうべのミカロンか?」

db 「さすがは童貞・ジ・アルティメット。ホント何もないのね、わたし以外」

男 「いやおろせばあるよさすがに」

db 「でも貴方が困窮の果て、わたしで手首をかッ切るところを見るのは本意じゃないわ」

db 「何とかしてあげようじゃないの」

男 「いやだからおろせばあるんだって……」

db 「世界のどこかに刀銭ならぬ鋏銭が流通するパラダイスがあるという話よ」

db 「家にあるだけの鋏をもって旅立ちなさい童貞!」

男 「じゃあめんどくせえけどおろしに行ってくるわー」


206 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 11:37:56.82 ID:YTPefYOoP
db 「オオオ落ち着きなさいどどどどど童貞!」 カシャカシャカシャカシャカシャ

男 「まずお前が落ち着け。うるさくてかなわん」

db 「支柱に絡みついた枯れ蔓を無理矢理引きちぎって処分しようだなんて愚劣なことを!」

db 「童貞がそんなことをしても、蔓は切れずに掌が切れるだけだって古老も戒めているでしょう!」

db 「新時代を担うリア充のみが知恵の輪を解きほぐすが如くに枯れ蔓を外せるのよ!」

db 「童貞は高望みせず鋏で細かく切って外しなさい!!」

男 「なあ、お前の中じゃ童貞って、どこまで本来の童貞以上に駄目な生き物になってるの……?」


207 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 11:40:01.36 ID:V/5Q9Fk/0
月「皎々」

友「いい満月だ」 トクトク

男「本当にあなたはそう思っているのですか?」

男「先人の価値観に付和雷同してあれはステキこれもイカスと思い込んでいるだけではないのですか?」

友「ふ、ふ。だから君と呑む酒はやめられない」 チビチビ

男「俺は呑んでねーよ? お茶飲んで柏餅食ってるだけだよ?」 モシャモシャ

友「なんでまた柏餅。いやいいタイミングだったけど」

男「そこの山にー! つやつやした大っきな葉っぱがいっぱいあったから、なんかもったいなくってー!」

友「この丸いの、柏じゃないよね?」

男「でもうちでは代々これが柏餅の定説となっております」 キリッ

友「そうかい。まあ、それもまた手作りの妙味だろう」 モシャモシャ

男「だいたい月は小っちゃすぎて話にならん。小っちゃいなら小っちゃいで、数がほしかったね」

友「真冬に栴檀の枝でも月に重ねて見上げていたまえ」

男「いいねえ。高枝切り鋏で落とせそうな月ってのも」

友「冗談じゃない。鳥の冬場の栄養源になる月なんて御免だよ」 グビッ


208 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 11:46:28.08 ID:YTPefYOoP
db 「アアこの家には鋏が少ないわ貴方にはわたしへの愛が足りないわ」

男 「これ以上あったって使わねえよ。インテリアにでもしろってのか」

db 「刀がインテリア用品になった以上、その後継者たる鋏だって資格は十分じゃない」

男 「インテリアかアレ? 実用品じゃなくなったのは認めるが」

db 「童貞はこれだから! 鋏の機能美はインテリアとしても十分に堪えうるでしょう?」

db 「サアわかったら鋏を買いに行くわよ!」

db 「あらゆる鋏を集めようと思ったらはっきり言ってこの家では手狭に過ぎるわ」

db 「でもわたしの歓心を買いたければ、その程度のIYHでもまだまだ不十分なくらいなのよ!!」

男 「よーしふざけんな買う前からすでにオレのハートはストンだぜッ!!」


209 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 11:55:03.23 ID:YTPefYOoP
男 「もしお前が男人格だったなら、そこにはいかなる狂気の物語が紡ぎ出されていたのだろうか」

U 「ホホ馬鹿な童貞ね略して童貞ね」

U 「鋏には穴が二つあるのよ? 女に決まっているじゃない!」

男 「オレは……おちょくられているのかこいつに……?」

U 「アアでも奇遇な穴という可能性もあったわね……棒がついている鋏だってあるんだし」


210 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 11:57:12.77 ID:V/5Q9Fk/0
雨「さああああ」

友「長いね」 チビチビ

男「うちの葱が根腐れたらおまえのせいな」

友「なぜ」

男「紫陽花がーなんだかとっても赤いからー!」

友「うちの庭土のpHに言ってくれ」

男「おっ。でんでん虫がいる」

友「その辺でも這わすかい?」

男「触角を鋏でちょん切ってもまた生えてくるってマジかな?」

友「そんな悪趣味な酒興はいらんよ」

男「あと十年若けりゃ試してみてたね。惜しい!」

友「君は……つくづく酒飲みの情を解さない奴だな」

男「だって呑まねえもん」 ヘラヘラ

友「まあ、それもいい」 グビッ


211 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 12:04:00.84 ID:YTPefYOoP
qp 「サア始めるわ!」

男 「お前なんでその辺に何十本も刺さっとるぅん?」

qp 「迫り来る新聞記事どもをばったばったと切り抜いてスクラップするのよ!」

qp 「刃が駄目になったら別の鋏を引き抜いて使いなさい」

qp 「新聞どもは絶え間なく襲ってくるわ。少しでも手を休めたら、貴方……死ぬわよ?」

男 「刃が駄目になるほどの新聞って、どんだけええええエエエエ!?」

紙 「ヒュウウウウゥゥゥゥォォォォォォォウウウウウ……」

qp 「……来たわ! 死にたくなければ、構えなさい!」

男 「オレは足利十三代将軍じゃねええええエエエエ!!!!!!!!!1」


212 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 12:10:53.73 ID:YTPefYOoP

db 「アルファベットの『U』が和鋏の象形文字であることはすでに定説」

男 「今でこそ日本にしか残ってねえけどルーツがギリシャなのは知ってるがそれはない」


213 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 12:14:34.21 ID:V/5Q9Fk/0
友「そろそろおいとましようか」

友「残りも少ないし、これは好きにしてくれ」 トン

男「酒なんか置いてかれても俺は呑まんよ」

友「その割に料理やお菓子には使うじゃないか」

男「醤油だって調味料にゃ使うが呑みゃあせんだろ」

友「理屈だね」

友「ああ。これはブランデーだから」

男「それがどうしたァ!」

友「いや、別に」

男「何を目論んどるかしらんが、そんな役に立たん勘は捨ててこーい!」

友「それと親戚にもらった蟹切り鋏が余ってるんだがいるかい?」

男「よーしふざけんなコンチクショウッ!」

男「ブランデーはブランデーケーキになるかも知れんが、蟹切り鋏は蟹鍋にゃならんわァ!」

友「どうかな」

友「なんせ平成というのは、有史来、一番不思議な時代だからねえ」 クス


214 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 12:19:38.61 ID:YTPefYOoP
db 「ドリルは男の浪漫、鋏は二人の愛」

男 「はいそこ勝手な標語を作らない」

db 「ンマアやっぱり童貞だから知らなかったのね」

db 「二つの刃が一つになって働く鋏は昔から夫婦和合のシンボルなのよ?」

男 「はいそこ一瞬信じてしまいそうなたちの悪い嘘つかなーい」

db 「ホホ頑なな童貞だこと」

db 「アイルランドやブルターニュ、古代ペルシアの風俗をよおく調べてご覧なさいな!」


215 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 12:23:50.88 ID:A1AfqvLg0
淡々と続けてるな支援


216 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 12:27:42.25 ID:YTPefYOoP
db 「決めシーンでの持ち物をすべて鋏に換えてみるスレ」

男 「オレは立てんぞ?」

db 「コラ職人大募集よ!」

男 「立てたきゃ自分で立てな」


217 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 12:32:30.00 ID:V/5Q9Fk/0
友「いいところに来た。あるもので適当に作ってくれ」

男「客に一品作らすたぁ、最近のアル中は世の中舐め腐ってやがるッ!」 ガチャ

友「言いつつ冷蔵庫チェックかい」

男「ブロッコリーの白和えでいいな? ん~、かにかまとハム、どっち入れる?」

友「両方」

男「贅沢ぬかすなコンチクショウッ!  許さん! かたっぽは別のおかずで使え!」

友「二品も作ってもらえるとは」 トクトク

男「作らんわァ! かにかまな? 異論は認めん!」 チャキ

友「鋏なんか使わなくたって、手で裂けるだろう」

男「ブロッコリーの方だよ。鋏入れた方が上手いこと余分な茎をつけずに先っぽだけ切れる」

男「包丁で細かく切ってたら身が余計に飛び散るからな」

友「そうかい」

友「で、無駄なく残った茎とハムとでもう一品というわけか」

男「おのれ外道がッ!」 クワッ

友「いやはやまったく、ツンデレと鋏は使いようだよ……」 クス


218 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 12:36:14.35 ID:YTPefYOoP

db 「挟むものはこれからすべて鋏で代用するように」

男 「無ww茶www」


220 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 12:44:18.43 ID:YTPefYOoP

db 「今後は鋏に似た形のものも鋏で代用するように」

男 「無茶がww進化したwwwww」

db 「成らぬは人の為さぬなりけりよ!」


221 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 12:49:36.21 ID:V/5Q9Fk/0
男「をや刀。どっから盗んできたのかな」

友「親戚の家にあったやつだよ。いちおう江戸末期に打たれた本物らしい」

友「改築するんで色々と預かってるんだ」 トクトク

男「なんか家ん中ごちゃついてんのはそれか」

男「薄暗い部屋で刀掛けの前で呑んでると、なんか悪代官くせえ」

友「じゃあ君はどこぞの材木問屋か」

男「袖の下はねえけどな」

友「じゃあ小皿の上でいい」

男「うわーまーたはじまったーコンチクショーゥ」

友「見て、触れるんだ。安いもんだろう」

男「刀なんてどれも一緒じゃーん」

友「一緒ならここまで現代人の中二心をくすぐらないさ」 クス

男「くすぐるのは鞘だろ。あと小柄とか笄とか鍔とか」

男「あー。でも現代なら小柄より化粧鋏挿してた方が便利かな?」 ツンツン

友「街でお武家さまを見かけたら勧めてみればいいよ」 チビチビ


222 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 12:52:49.25 ID:YTPefYOoP
db 「安心なさい童貞」

男 「その台詞はもうある意味フラグだよな?」

db 「わくわくさんに匹敵する鋏遣いを極めたとき、貴方は同時に知るはずよ」

db 「加藤鷹に匹敵するテクニックをも同時に手に入れていたということにね!」

db 「だからもっともっとわたしを使いこなすのよ!」

男 「『わくわくさん―鋏』は『加藤鷹―女』と等価値ッ!?」

db 「ンマア知らなかったの?」

db 「どうりで童貞輪廻を延々とハムスターみたいに回り続けているはずだわ!」


223 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 13:00:36.06 ID:YTPefYOoP
U 「兜の鍬形からガンダムのアレに至るまで、戦士たちはみな鋏の力にあやかろうとしてきたわ」

男 「和鋏に何の力があるっつうんだ……」

U 「敵の命運を裁ち切るおまじないよ」

U 「マア実のところガンダムの方は御禿に訊かなきゃわかんないんだけど、たぶんそうじゃないかしら」

男 「黙れ! オレは騙されんぞ!」

男 「ぶち上げたホラの半分をあとから否定することで残り半分を信じさせようとする手になんか!」

U 「ホホ好きになさいな。童貞階段を無限に下り続けていたいのなら!」 シャコシャコ


225 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 13:07:05.32 ID:V/5Q9Fk/0
男「いよう」 ガラッ

男「寒いと思ったら、雪降ってやがるわー」

友「そうかい」

友「こういう日に熱燗をやれない君は大変だな」 チビチビ

男「うわぁぁああぁああぁ! 心の友と思ってた奴が自分だけすでに暖まってたァ!」 

男「そんな時は? ……バンホーテンココア!」 ニカッ

友「無いよ」

男「きが くるっとる」

友「酒粕はふつうに食ってたろう。冷蔵庫にあるから好きにしたまえ」

男「庭の葱もらうぞ!」

友「どうぞ」

男「葱でも刻んで乗せて焼かなきゃやってらんねえ!」 チョキチョキ

友「豪快にちぎって乗せて焼きなよ」

男「オッサンのつまみくせえな。俺には葱をちぎって食う文化はない!」

友「変なところで君は細かい」 チビチビ


226 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 13:08:15.46 ID:YTPefYOoP

db 「鋏の指穴からずっと景色を覗いていると、稀に鋏の世界へ行けるというわ」

男 「どんな世界だ」


227 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 13:16:49.17 ID:YTPefYOoP
男 「SYAAYYYYAHHHHHHH!!!!」

db 「わたしもマアずいぶんと長いこと鋏をやっているけれど、始めて見たわ」

db 「刃じゃなくヒットポイントで指を挟んで骨折した人なんて!」

db 「さすがは童貞。リア充にはできないことを平然とやってのけるわね」

男 「おい……鋏……指からどけ」

db 「でもそこがいとしい、愛くるしい……!!」

男 「さっさとどけッ!! 熱いやかんに触れてしまった奴が高速で手を引っ込めるようにッ!」


228 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 13:17:48.53 ID:V/5Q9Fk/0
友「君がいつも使っているその鋏は裁ち鋏だね?」

男「水平に構えたら銃にもなるぜ?」 チャキッ

友「刃物を人に向けるなと親に言われなかったのかい」 チビチビ

友「裁ち鋏で紙を切っていると、紙は布より堅いから刃を傷めると聞いたことがある」

友「本来の対象である布を切りやすいよう事務鋏より刃が薄いから、傷みやすいらしい」

友「あんまり考え無しに切っていると、布が切りにくくなるぞ」

男「いんだよ細けえこたぁ!」

友「せっかく親から継いだ鋏なんだろ。少しは手入れに気を配った方がいいんじゃないか?」

男「何日かに一回ぐらいしか使ってねーし、何の影響もねーよ別に」

友「そうかい」

友「君の鋏だ、好きにしたまえ……」

男「どうもおまえはたまあに変なところにこだわるねえ」

友「鏡なら洗面台だよ」 グビッ


229 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 13:23:17.99 ID:YTPefYOoP
db 「貴方の死後もわたしが常に傍らへありますように」 シャキ

男 「呪うなッ!」

db 「貴方曹洞宗だったわね。今すぐキリスト教に改宗なさい」

男 「何のためにだ!?」

db 「死後列聖されて、庭師か床屋か仕立屋かペーパークラフトかあたりの守護聖人になるためよ」

db 「そうすれば貴方は図像の中で、そのシンボルたるわたしと永遠に一緒になれるのよ!!」

男 「その手の守護聖人ならもういるよ……あ、でもペーパークラフトはどうだろ?」


230 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 13:26:04.73 ID:YTPefYOoP
db 「どうせ鋏で髪を切るのなら、そのまま髪留めも鋏を使えばいいじゃない」

男 「どこまで傲慢な鋏至上主義者なのこの刃物さん!」

db 「たいして変わりゃしないわよ」

db 「結んだリボンの形と鋏の形は単純化すれば相似形なんだから」

男 「ねえよw」


231 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 13:27:06.21 ID:V/5Q9Fk/0
刀「つやつや」

男「まだあったのかこれ」

友「ひと月ぐらいはかかるらしい」

男「その間、お手入れを俺に任せないところだけは、褒めてつかわす」

友「君に道具の扱いなんか任せられるか」

男「江戸末期のだっけ」

友「ああ」

男「するとこれ打った奴も、明治になって、ほかの刃物打ちに転職したのかねー?」

友「散髪脱刀令に合わせて刀の需要が減り、理容鋏の需要が激増したからね」

友「あるいはその後、鋏を打ったのかも知れないな」

男「同じ奴の打った刀と鋏がセットで遺ってたら面白えよなー」

友「変動期のこの上ない生き証人というわけか」

男「名もなきひなびた博物館とか、ひっそりとペアでそろってそうじゃん?」

友「ああ。あったら是非見てみたいもんだよ」


232 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 13:32:38.64 ID:YTPefYOoP
db 「鋏なら一度は赤いコードか青いコードを切ってみたいわねえ」

男 「いまどきそんな起爆装置あンの?」

db 「アラそう? じゃあ仕方ないわね。貴方チョットピアス穴開けなさいな」

db 「引っ張って危ないのなら鋏で切ればいいじゃない」 シャキシャキ

男 「それも都市伝説だッ!!」


233 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 13:39:14.70 ID:YTPefYOoP
男 「近所で葬式があったわ」

db 「アラたいへん」

db 「一緒に出かけるわよ童貞!」

男 「お前関係ないじゃん」

db 「ンマア弔鋏も知らないのね最近の無識童貞は!」

男 「リア充でも知らないと思うなあ」

db 「まだ残っていかねない霊魂のつながり・未練を、鋏を鳴らして完全に裁ち切る儀式よ」

db 「いわゆる『迷わず成仏してくれ!』というやつね」

db 「弓を鳴らして悪霊を追い払うアレと似たようなものよ」 チャキチャキ

男 「……」

男 「またこいつはこうやってありそうな嘘をさらっとつく……」

db 「いまはあまり行われていないけど、江戸時代には普通にあった風習よ?」

db 「ホホ嘘だと思うのなら為永春水の閑窓瑣談をご覧なさいな!」


234 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 13:41:04.36 ID:V/5Q9Fk/0
男「寒い。寒いよパトラッシュ……むしろ痛いよ」 ガタガタガクガクガタガタブルブル

友「そんな日にわざわざ何しに来たんだ」

男「金時人参が多すぎるから来いっつったのはてめえだ生ける肝硬変伝説!」

友「明日でも明後日でもよかったのに」

男「何か暖まるもんねえか? 酒以外でだ!」

友「暖まるかなと思って、先だってスピリタスに唐辛子を馬鹿みたいに漬け込んだものなら」

男「幼稚なこと思いついてんじゃねーよ人の話聞けや茶碗蒸しにされてえのか蒲鉾野郎」

友「酒はこっちで呑むから、君は梅酒の梅みたいに唐辛子をしゃぶればいいじゃないか」

友「調味料として使う分なら平気なんだろう?」

男「よーしふざけんなヘソに芯挿して燃やすぞお酒の恋人」

男「炒めてる細切り野菜の上に、パリッとしたのを鋏でぱらぱら切って入れるのが人としての道だろうが!」

友「金時人参なら君にあげるほどある。ふつうの唐辛子は砂糖の上の棚だ」

男「おお金時人参のあの柔らかな甘みと唐辛子……もうこれだけでメシが六杯は食えるよな」

友「作ってくれるのかい? ふ、ふ。なら合いそうな酒でも出しておこう」

男「おまえのために作るんじゃねえよ。食わなきゃ俺がいまここで凍え死ぬんだよ!」


235 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 13:47:53.72 ID:V/5Q9Fk/0
男「刃物屋うろついてたら使い道のなさげな鋏見つけたー」 チャキチャキ

友「またスプーンみたいな鋏だね」

男「南瓜収穫用の鋏だってさ」

友「農家でもないのに何でまたそんなニッチなものを」

男「なんだかー! 洒落っ気を感じたのでー!」

友「使うものはいいかげんに扱い、使わないものには手を出してみる……君はわけがわからないよ」

男「梨の収穫用鋏にしなかった慧眼はもっと評価されてもいい」 キリッ

友「そんなもの買ってたらただの馬鹿だろう」

男「うちの庭は先約で一杯なので、南瓜の栽培はぜひこちらでお願いいたします」 ズイ

友「どうりで道具観賞の趣味もないのに見せびらかしに来たわけだ」

男「いいじゃん! どうせ俺に南瓜で何か作らせる気なんだろコンチクショウッ!」

友「先に切れていいのはこの場合こっちの方だと思うんだが」

男「プリンか? あんパンか? シフォンか? 焼酎とかほざきやがったら南瓜でぶち殺すッ」

友「結局作るんじゃないか」

友「まあそう慌てるな。実がなった頃呑んでいた酒に合わせて、そのとき考えればいいさ」


236 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 14:01:20.97 ID:V/5Q9Fk/0
友「栓抜きを貸してくれないか」

男「無いよ」

友「……これをも忍ぶべくんば、いずれかを忍ぶべからざらん」

男「だって俺ビール呑まねえもーん。瓶で持ってきたおまえが悪い」

友「じゃあキッチン鋏でいい」

男「使わないことに定評のあるキッチン鋏の栓抜き機能が、まさか陽の目を浴びる日が来ようとは!」

友「明治の万能鋏には十四の機能があって、ちゃんと使っていたらしい」

男「そりゃあ津軽には雪が七つあるぐらいだしねえ」

友「何を言ってるんだ君は」

友「ただ十三機能まではかろうじて文献で確認・推測できるが、最後の一つが不明なんだ」

友「現物が遺っていれば一発なんだろうがね」

男「それはまた器物再現マニアのハァトをくすぐるお話ですな」

友「そんなもの再現したがるひま人なんかいるのかい?」

男「おめえんちにある薩摩切り子もどきのワイングラスだって、そういうひま人が作ったんだろうが」

友「それもそうだ。ふ、ふ。悪いことを言ったな」 シュポン


237 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 14:01:45.35 ID:YTPefYOoP
男 「ひょっとしてお前はカシメを緩めると性格も緩くなってくれるのか?」

db 「ホホ緩い女なら自分の好きなようにヤれるとでも思っているの?」

db 「童貞にありがちな妄想ね!」

db 「緩い女は身持ちの堅すぎる女以上に厄介なのよ! それは鋏も一緒!」

db 「緩い女、緩い鋏を怪我もせず使いこなせるのは、時代の寵児であるリア充だけ!」

db 「童貞は無理をせず元から締まり具合が普通のものを選びなさい」

db 「自分好みに調整しようだなんておこがましいにもほどがあるわ!」

男 「何か上手いことたとえているように見えて、オレの質問にはまったく答えてねえな!」


238 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 14:08:54.31 ID:YTPefYOoP
db 「フウ貴方は蟹の鋏は食べるのに、わたしはいつまでたっても食べてくれないのね」

男 「食べる、の意味がすりかわっとるよ」

db 「童貞相手の恋はホント疲れるわ」

db 「でもこれがわたしの選んだ恋なのよ、エエけして後悔などしない!」 シャキンシャキン

男 「オレはいいかげんウザいんですが」


239 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 14:10:12.52 ID:V/5Q9Fk/0
雷「ごろごろ」

男「鳴ってるねえ」

友「昔の聖人はこういうとき、むしろ居住まいを正して呑んでいたそうだ」 トクトク

男「孔子がやってたのは前半だけだろ」

友「そうかい」 チビチビ

男「落ちるかな落ちるかな?」 ワクワク

友「鋏でも掲げてその辺を走り回っていたまえ」

男「落ちるじゃん!」

友「雷さまってのはたまに落っこちては木の股とかに挟まってるもんだからね」

友「鋏なら金属だし股もあるし、ちょうどいいじゃないか」

友「落ちた瞬間素早く切れば、まあ、大丈夫だろう」

男「さすがに電気より速く動ける自信はねーよ」

友「落ちてきた雷さまやら雷獣やらを食った話もあるが、君ならどう料理する?」

男「肴にするのは音だけにしておきな! このいやしんぼめ!」

雷「どんっ!」


240 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 14:15:03.83 ID:YTPefYOoP
男 「また……寝てる間にオレの髪を勝手に切ったなこいつ」

db 「人間でいうところの、添い寝してきてキス、に相当する行為よ」

db 「種が違うんだから愛情表現の文化にも差異があることを受け入れなさい」

男 「そもそもてめえを受け入れる気自体ないわああアアアア!!」

男 「ちょっとこい! 電話帳切ってやるッ!」

db 「切れるわけないでしょう! DVはやめて!」

db 「暴力で愛は掴めないのよ! 童貞にはわからないの!?」

男 「うるせえ! 今日という今日は切れねえもんに無理矢理刃を立てて反省しやがれッ!!」


241 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 14:21:49.54 ID:YTPefYOoP
男 「包丁がない」

db 「アアそれなら貴方があの邪悪な輝きに魅せられないよう捨てておいたわ」

男 「どうやってメシを作れとッ!?」

db 「キッチン鋏があるじゃないの!」 シャコシャコ

db 「西洋では肉も魚も鋏で捌く方が多いのよ!」

db 「菜っ葉だってむしろ繋がることなくきれいに切れるわ!」

db 「オオなぜ貴方はもっと早くこのことに気付かなかったの! 童貞だからね!?」

男 「肉とか魚とかはこの際どうでもいい」

男 「この聖護院大根を鋏でどう切れと言うんだ貴様はァッ!!」


242 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 14:25:08.54 ID:V/5Q9Fk/0
友「君んちの栗きんとんはいつになったら無くなるんだ?」

男「さあ」

友「というか何でせっかくあげたあれだけの薩摩芋がことごとく栗きんとんになるんだ」

友「少しはモンブランとかスイートポテトとかにならなかったのかねえ」

男「とりあえずお正月には狂ったように栗きんとんのみを作るのが俺の定説なんで」 キリッ

友「屠蘇も呑まずに何やってんだか」

男「屠蘇も糞もおまえ年中呑んでんじゃん」

男「最初は意味あったのかもしんないけど、いまやもう節目ごとの酒の意味なんか無くね?」

男「鋏買ったとき最初はついてた鋏カバー並に無くね?」

友「君だって正月から延々と栗きんとんばっかり食べてて平気なくせに」

男「いやそろそろあんパンにあんこ代わりに詰め込んでみようかと思ってる」

男「前々から思ってたけど、小豆であんこ作るよりきんとんの方が遙かにラク」

友「じゃあついでに本家あんパンと同じように、酒種でパンをこねたらいい」

男「酒かお菓子か、どっちか片っぽにしなさい!」


243 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 14:28:24.58 ID:YTPefYOoP

db 「あってよかったお絵かきソフトのはさみツール!」

男 「え? あれもお前の支配下なの?」

db 「ホホたとえデジタルの世界に移行しようとも、わたしは永遠に不滅なのよ!!」


244 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 14:36:54.38 ID:YTPefYOoP
db 「エエ甲斐性のない童貞オオ意気地のない童貞!」

db 「貴方はいつになったらわたしのために鋏業界を席捲するの?」

男 「しねえよ。お前のためにもオレのためにも」

db 「新しいタイプの鋏を創り、そこに需要を呼び込みなさい」

男 「聞いてくれよオレのソウルシャウト」

db 「ソウね。貴方華道の家元におなりなさい」

db 「そして弟子には池坊流でも古流でもない、貴方オリジナルの花鋏を使わせるのよ!」

男 「何か似たような感じで教祖の本売りまくってる宗教あったよなあ」


245 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 14:39:12.83 ID:V/5Q9Fk/0
鵺「ぼー」

友「天下の鵺鳥も、今や動物園で飼い殺しの身、か」

男「本人はチョコチップアイスみたいでかわいいのになー。あの狸の化け損ないに名前盗られちゃって」

友「これだとチョコが多すぎやしないか?」

男「ステキやん」

友「こんななりでも、声だけならば大宮人を震え上がらせていたんだから、わからないもんだ」

男「聴力検査の音を鋏で短くちょん切ったみたいなあれの、何が怖かったんだろーな」

友「君の耳はどうなってるんだ」

男「健康診断で引っかかったことはございません」 キリッ

友「そうかい」

鵺「ひょい」

友「……あっ!」

男「片面無え! 大怪我したのを保護して、そのまま飼育してるやつかー!」

友「飼い殺しとは悪いことを言ったなあ。すまなかった」

鵺「きょろきょろ」


246 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 14:50:28.30 ID:V/5Q9Fk/0
男「ちぃーっす」 ガラッ

友「おっ。またいい匂いをさせてきたね。挑発かいこれは」

男「むしろ今のてめえの一言こそが挑発だろ。竹の子アホみたいに下茹でしてたんだよ」

友「匂いだけで呑めるよこれは。ブツが届いてさらにもう一杯だな」

男「自分で買って自分で料理しろッ! 嫌ならワインのコルク栓喉に詰まらせて死ねッ!!」

男「めんどいんだよあれ。もう二度と採れ立てなんか買ってみねえ!」

友「去年も君は同じことを言ってなかったか?」

友「で、皮はどうした」

男「皮ぁ? なんか使い道ないかと思って一応冷蔵庫に放り込んでるよ」

友「よし、君のいつもの癖が役に立ったな。それで何か作ってやろう」

男「適当な形に鋏で切って、刺身のタンポポみたいに飾るのか?」

友「ふ、ふ。さすがの君もこれは知らないだろう」

友「あのごつごつした皮の内皮を剥いでだね。酢の物にしたり、ちょっとピリ辛く和えてみたりするんだよ」

男「……おまえマジ自分で作れるじゃねーかッ!!」

男「あれだろ、蒟蒻芋から蒟蒻作ったり燕の巣の食いかた考えたりとかしたの、おまえだろ!?」


247 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 15:00:04.78 ID:V/5Q9Fk/0
友「見たこと……あるのか」

男「植物園で見た……91% わしが育てた……4% 私がかぐや姫だ……3% その他……2%」

友「誘ってくれればよかったのに」

男「そのとき俺とおまえは知り合っとらんし、だいたい未成年だ」

友「あそこが飲酒禁止なのは知ってるさ」

友「すぐそこにいいパン屋と洋菓子屋もあるし、別に困らないよ」

男「酒か、お菓子か、小料理か! いいかげん決断しろ!」

男「それに竹の花なんざ米の花とたいして変わんねーよ。しょせん同じイネ科だ」

友「それが竹につくから面白いんじゃないか」

男「竹好きなの? おまえ竹の子なの?」

友「竹林で鋏を入れる音というのも、いつかまったりと聴いていてみたいねえ」

男「あーあー。酒飲みの欲望ってな、限りねえなー」

男「竹林で断続的に鋏入れる音って、ふつうに生きてたら一生聞かんぞ」

友「だからこそ世事から離れ、そういうシチュエーションで呑んでみたいんだ」

男「世事から離れるのは勝手だけど、蚊はついてくるよ。竹林じゃ」


248 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 15:00:32.31 ID:YTPefYOoP
db 「童貞ッ! そこに直りなさい!!」

男 「今度はなんスか」

db 「何も糞もないわッ! 貴方どうもキッチン鋏をあまり使わないようね?」

男 「葱とか刻んだり、食い物の袋開けたりには使ってるよ」

db 「一番よく使っているのはおろし付き皮むき器じゃないのキイイイイイー!!」 シャコシャコシャコ

男 「包丁の次にそうなるのは当然だろ」

db 「チョット待ってなさい!」

db 「この鋏体に皮むき器とおろしもつけて帰ってくるわ!」

db 「それまでにちゃんと皮むき器は捨てておくように!!」 シャッカシャッカシャッカ

男 「……行っちまった」

男 「どう考えても使いにくいだろそれ」


249 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 15:07:41.08 ID:V/5Q9Fk/0
男「 聞いてアロエリーナ、ちょっと言いにくいんだーけど、聞いてアロエリーナ♪ 」

男「 俺がつくったメシをことごとくつまみとして召し上げるあの淫売なんとかしてー!! 」

男「 聞いてくれてあーりがと、アロエリーナ♪ 」 チョキン

友「変な歌うたいながら人んちのアロエ剪らないでくれるかな」

男「だって俺もおまえもこいつを薬にせん以上、メシにするしかねえだろうが」

友「まずその理屈のメカニズムがよくわからない」

友「ふつうに花を観賞するだけじゃ駄目なのかい?」

男「アロエヨーグルトなんてもんがある以上、食える道はあると信じている!」

友「だから何で君はそう無意味な方向にチャレンジャーなんだ」

男「どんなオカン料理が仕上がってもちゃんと食えよてめえッ!?」

友「文句を言いつつ、くれることはくれるんだね」

友「下ごしらえさえ間違わなければ、まあ、食えなくもないだろう」

友「豚肉あたりと合わせて味濃く炒めれば、なんとかなりそうな気はする」

友「蒸留酒系あたりのお供にすれば、あとはどうにかなるかな」

男「酒でごまかさんでも、卵でとじて胡椒すりゃ、万が一の時でもたいがいのもんはなんとか食えらぁ!」


250 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 15:08:35.46 ID:YTPefYOoP
男 「なぜに『影を本体から切り離す』道具は鋏ばっかなんだろうか?」

db 「ンマアじゃあほかに何がいいと言うのこの童貞は」 

男 「刀とかナイフとか、普通の刃物だよ」

男 「鋏だと刃を一回地面の中までぐさっといかなきゃ切れないじゃん」

男 「ここみたいに地面が固かったら使えねえよあれ」

db 「ホホ知った風な口を利くわね未経験の童貞風情が!」

db 「実際にやられてみて己の無知と傲慢と童貞を悔やむがいいわ!!」 シャキーン

男 「え……? まさかお前できるのあれッ!?」


251 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 15:18:31.10 ID:YTPefYOoP
男 「うぉっ?」 ポロッ

db 「ンマア板チョコもうまく割れないだなんて!」

db 「童貞がバレンタインに見栄を張ってそんなもの食べようとするからよ」

男 「平日ですよ本日は」

db 「手も汚さずに板チョコを華麗に割って食べられるのは、クピドがリア充にのみ与えし神佑!」

db 「童貞が真似をしたって変に割れた欠片が床に飛び散り、ほろ苦さをかみしめるだけ」

db 「童貞はおとなしくギザギザのついたキッチン鋏でお切りなさい!!」

男 「どうせ全部食うんだから、そのままかじりついてもよかったよな、そういや」 ガジガジ


252 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 15:21:57.97 ID:V/5Q9Fk/0
男「なんでお月見には薄なんですか? あれでは駄目だったんですか?」

穂「蕭々」

友「葭だか葭竹だか知らんが大きすぎるだろう。それに」

友「どいつもこいつも同じ方を向いて、主の救いの御手からこぼれた亡者どもの行列みたいだ」

友「ものも言わずに重たい頭を陰気に垂れて、とても月など見ちゃいまい」

男「薄だって幽霊の正体じゃねーか」

友「……そこまで言うなら、今年は薄はやめてこいつで呑んでやろうか?」

男「じゃ、薄の代わりにこいつ剪ってこか。五本ぐらいでいいかな」 チャキチャキ

友「待て」

友「すでに命を狩られたものに、その上、鋏を入れるというのもひどい話だ。ここでやろう」

男「えー」

友「ん? 夜中にひと気のない川辺でこいつらと過ごすのは怖いのかい?」 クス

男「ハハハ。モノと灯りがなけりゃたむれないって、チンピラヤンキーじゃあんめーに」

友「そうかい。せいぜい連れて行かれないよう、気をつけるんだね」

男「連れてかれたところで、向きからするに、どうせ川上じゃん」


253 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 15:26:48.19 ID:YTPefYOoP
男 チョキン db 「クロオオオスボンバアアア!」

男 「……」

db 「……」

男 チョキン db 「クロオオオスボンバアアア!」

男 「ねえ……枝剪りに合わせて変なこと喚かないでくれる?」

db 「右の刃と左の刃がテコの原理の力で引き寄せられて獲物を刈る……」

db 「アアまさにクロスボンバーそのものじゃない!」

db 「マグネットパワーがなくても蛍石をかじらなくても、鋏さえあれば誰でも完璧超人になれるのよ!」

db 「オオむしろ鋏そのものが完璧超人!!」

男 「あの根っこ、鋏で切って調理する気か!」


255 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 15:35:22.12 ID:YTPefYOoP
男 「くそっ……この段ボール……なかなか……」 グググ

db 「しっかりしなさい童貞! 刃の力を段ボールにきちんと垂直に当てて! 斜めになってるわよ!」

男 「やっぱ鋏じゃ切りづれえな」

男 「かといって滅多にバラすもんじゃなし、段ボールカッターわざわざ買うのもなあ」

db 「こ、この童貞ッ!」

db 「男の甲斐性のなさを棚に上げて女のせいにするなんて!」

男 「いやいやいやいやいやいやいやいやいや。道具ってのは大事だろうが」

db 「アアでもこれが惚れてしまった弱みなのね。わたしに貴方は捨てられない!」

db 「捨てられるのはこの段ボールだけ!!」 シャコッ

男 「百均のやつでもいっか。どうせ滅多に使わねえし」


256 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 15:36:07.90 ID:V/5Q9Fk/0
男「なんだよまだ朝飯も食ってねえ時間にー」

友「雨あがりの朝は外に出てみるもんだよ」

男「朝っぱらからそれ言いにわざわざ来たんかい」

友「見たまえ。雲がいい色をしている」

友「こんないいものを見ながらの朝一番の一杯はたまらないねえ」 シュコッ

男「雨あがりの朝の色つき雲がきれいなのは認める」

男「認めるが、自分ちでやれ脳肝野郎ッ!」

友「つれないなあ。たまには気心の知れたのと一緒に拝んだっていいじゃないか」

男「なんにでもかんにでも拝んだり興を感じたりするようになったら、もう年だよ」

友「無造作にちぎって重ねたようなのがまたいい」

友「鋏できれいに切った切り絵もいいが、こういうのは切ると逆に駄目だな」

男「おまえってさー。ちぎったもんフェチかなんかなのー?」

友「ふ、ふ」 ゴクゴク

男「朝っぱらからビールって……メシはどうしたんだ」

友「君には期待している」 クス


257 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 15:44:50.69 ID:YTPefYOoP
db 「裁ち鋏を打ち直し作れる限りの爪切り鋏を作りなさい」

男 「何のために」

db 「鋏に生まれられなかった貴方のために」

db 「そしてその咎を贖うために」

男 「……何が何だかわからない……」


259 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 15:54:06.93 ID:YTPefYOoP
男 「どうした。また何かくだらんこと考え込んでんのか?」

db 「アアちょうどよかったわ貴方! 童貞の意見も聞きましょう!!」

男 「それが答えてほしい奴に言う言葉か」

db 「呪われた鋏なんだけど、妖鋏と魔鋏、どっちがそれっぽい呼び方だと思う?」

男 「どうでもええわァッ!」

db 「外見的にはカシメを爬虫類っぽい生物の眼にすればそれっぽくなると思うの」

男 「お前ご自慢のテコの原理の支点に当たる部分だけどいいの?」

男 「半端ない力かかるよ、その生身部分」

db 「耐えるわ愛の力で! 貴方だけを見つめながら!!」

男 「オレじゃなくて切ってる対象物をちゃんと見ててください」


260 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 15:55:07.39 ID:V/5Q9Fk/0
友「あれ以外にも」 ツイ

月「玲瓏」

友「千年前の酒飲みが呑みながら見ていたものと、まったく同じものって、何があるかな?」

男「川とか海とか山とか? あーでも完全に一緒じゃあないな、あいつらは」

友「ほんの千年前なんだな」 チビチビ

友「さっきまで同じものを見ながら呑んでいた大宮人がまだ近くにいそうに思えば、そうも思えてくる」

男「バスの座席に前の奴のぬくもりがまだ残ってるみたいな?」

友「違う」

男「千年前の大宮人どもってたいがい糖尿病だよ。むしろそこにいたらぶん殴ってでも止めたれや」

友「……」 コトン

男「特に道長さんがひどい」

男「糖尿病に加えて、心臓はやたらと痛んで死にかける、眼はほぼ見えなくなる」

男「最期はおっぱいみたいな腫れ物が背中にできて、もがき苦しみながら逝っちまったんらひょぅっ?」

友「……こないだのあの “舌切” はどこにやった?」 ムニ

男「嘘ちゃいわひゅ! それにえろは切るおんひゃう! 抜くおんや!」 ジタバタ


262 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 16:02:40.73 ID:YTPefYOoP
男 「スープにパセリでも散らすか」 プチプチ

db 「キャア童貞なにをしているの! ガイアの怒りに触れたいのッ!?」

男 「……また……ですか」

db 「エエ何度でも言わせてもらうわ」

db 「パセリを手で摘めるのは永遠に青春の光を放つリア充のみ!」

db 「朽ちたる童貞の手では茎の筋が上手くちぎれず、本体までも傷め枯らしてしまうだけ!」

db 「いかなるシーンにおいても油断せず過信せず常に鋏を使いなさい!」

db 「オオ鋏を使うだけで恥ずべき童貞もリア充と同じ生活を営めるッ!」

db 「鋏ッ! 何という主の恩寵なの!!」

男 「嘘だッ!!」

男 「最後の最後に神さまが救うのは童貞だけだって、よっちゃんも言っていたッ!!」

db 「アラ貴方やっぱり童t

男 「いやそれとこれとはこの際別な」


263 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 16:09:11.32 ID:V/5Q9Fk/0
男「あ……ありのまま、今、起こった事を話すぜ!」

男「夜に花がたくさん咲いたと言うから来てみたら、そこにあったのは白粉花だった」

男「月下美人とか烏瓜とか、そんなスゴイもんじゃあ断じてねえ」

男「もっとちゃちい花が咲いているのを見てしまったぜ……」

友「たしかにそれもうちにはあるけど、勘違いしたのは君の勝手だ」 チビチビ

友「それにこいつは二段咲きだよ?」

男「そんぐらい見たことあるわああああアアアァァァァァァァーーーーーー!!!!」

友「ふ、ふ。何度見てもいいものだろう?」

男「アタイ、もう誰も信じないッ! 恋なんて二度としないッ!!」

友「そうかい」 

男「白粉花のいいところってのは、鋏使わなくても節のところで面白綺麗に折れるとこじゃーん」

友「おいおい。うちのはまだ折られたら困る」

友「それより早くその水羊羹を出してくれ」

男「俺はッ! 月下美人がたくさん咲いてると思ったから食い物持ってきたんだよコンチクショウが!」

友「白粉花は美人だよ」 クス


264 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 16:10:47.00 ID:YTPefYOoP
db 「恋に破れたハートマークは、真ん中でギザギザに割れているわよね?」

男 「そういう表現は多いね」

db 「ああいうふうな形に切れる鋏のことはご存じかしら?」

男 「……まさか!」

db 「ホホようく覚えておきなさい」

db 「鋏を怒らせると人類は恋さえ実らせられなくなるということを!」


265 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 16:16:21.25 ID:V/5Q9Fk/0
友「酔い覚ましに少し疎水の方を歩いて帰るか」

男「へーい」

友「悪かったね。酒蔵開きに付き合わせて」

男「別にいーよ。実質、地元の名産展なんだし」 ズシリ

男「だがこれで俺が何か作ってくれると思っていたら、そいつは大きなミステイクッ!」 クワッ

友「いつ見ても……ここの桜はどいつもこいつも宿り木のパラダイスだな」

男「さらっと流されたー疎水のアホー」

友「これで枯れずに毎年ちゃんと咲くんだから、桜もたいがい我慢強いよ」

男「どこぞの酔っ払いに搾取され続ける俺もたいがい我慢強いぜ?」 ニカッ

友「こんなに宿り木があればドルイド僧も大喜びだろう」

男「さらっと流されたー疎水のボケー」

男「ドルイドが好きなのは樫の木についてるやつだろ? 桜はどうよー?」

友「黄金の鎌ではなく花鋏でも使うんじゃないか? 華道の古い流派が使ってそうな」

男「それもうケルトの儀式やのうて、日本の華道の行事ですやん」

友「そうかい。難しいもんだねえ」


266 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 16:22:27.74 ID:YTPefYOoP
男 「とはいえ明王さまに鋏を持たせたとしても、だ」

男 「悪霊を切ってくれるどころか、こっちの首根っこ押さえられて丸坊主にされそうな気しかせんのよ」

db 「じゃあ和鋏をお持ちいただけばいいじゃない」

男 「それはそれで人の服剥いで勝手に繕い始めそうでイヤ!」

db 「アラ萌えるじゃないの」


267 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 16:28:34.41 ID:V/5Q9Fk/0
男「せんせー! どうしてボクの作ったものはいつもいつもゲロ水に上前はねられるんですかー?」

友「自分一人が被害者みたいな面はやめてほしいな」

友「この焼酎だって樽で熟成中に、自然と何%かは上前をはねられてるんだ」 タプン

男「伏して慮るに、そいつはふつうの蒸発分ではないでしょうか?」

友「 “天使の取り分” と言ってくれ」

男「おまえ天使と同レベルなの? 終末の日にラッパ鳴らしながら人類虐殺するっつう噂のアレと!?」

友「だが君の作る手羽先の甘辛煮はなかなかいける」

男「なにが “だが” だよ。食う気か天使の手羽先」

友「言ってたら急に食いたくなってきたよ。君に天使は付いてないのか?」

男「いても味がしみるまで、今から作っても時間かかるぞ」

友「なら骨の間と関節に鋏を入れて細く分けて、たれでもつけて焼けばお手軽だ」

男「煮たのが食いたいんじゃなかったんかい」

友「君がわがままを言うから譲歩してやったんじゃないか」

男「いや待て。話の発端はおまえのわがままだ!」

友「そうかい」 チビチビ


268 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 16:34:08.60 ID:YTPefYOoP

db 「左手で鋏の刃を握りしめ、右手で普通に開こうとした場合、鍛えられるのはどっちの手?」

男 「正解は……オレぁそんなひまなことなんざしねえ、だ!」


270 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 16:42:08.67 ID:V/5Q9Fk/0
友「ずいぶんとまあ暗くなったもんだねえ」 トボトボ

男「おまえがついでで足を伸ばすから、こんな時間にこんな山道ほっつき歩いてんだよ俺たちは!」

友「ふ、ふ。化物の一匹も出そうで素敵じゃないか」

男「こういう夜道で怖いのは化物じゃねえよ。ろくに灯りもない街道ですれ違う大型物流トラックだよ」

友「そう思えば昔はよかったよ。魔除けで何とかなったんだから」

男「だが俺たちはッ! 現代を! そして未来を生きている!!」

友「……鋏をちゃきちゃき鳴らしてみるとか」

男「先生! 理屈がわかりませーん!」

友「昔から刃物には魔除けの意味もあり、音にも魔を祓う効果がある」

友「現代で手軽に当てはまるのは鋏ぐらいなもんだろう。一般家庭にシンバルはないだろうし」

男「両手に持って蟹歩きでもしながら鳴らすの? やだねえ」

友「反閉の一種と思えばそうおかしなものでもないさ」

男「じゃあお前やれや」

友「素面でできるかそんなこと」

男「都合のいいときだけ醒めてんじゃねー!」


271 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 16:46:32.51 ID:YTPefYOoP
db 「裁ち鋏、キッチン鋏、爪切り鋏、理容鋏、金切り鋏、花鋏、事務鋏、その他諸々の鋏」

db 「そのすべてを一所に集めて互いに切り合わせ、最後に生き残った鋏……!」

db 「この恐るべき鋏、どう使えばいいか、貴方は知っていて?」

男 「とりあえず研ぎに出さなきゃ、刃がぼろぼろでクソの役にも立ちそうにないね」


272 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 16:54:06.30 ID:YTPefYOoP

db 「鋏の刃を少ぅし開いて放置しておくの」

db 「きちんと閉じたら爆発する罠を仕掛けてねッ!!」

男 「ひどい! ひどいわ!! そんなトラップ、誰も回避できるわけないじゃないのッ!!」


273 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 17:02:35.09 ID:V/5Q9Fk/0
雪「ぼたっ、びたっ、びたっ、ぼたっ、ぼたっ」

男「雪がうるせー!」

友「風が強いからな。外の物置のトタンにぶつかってるんじゃないのか」 

男「あの世で俺にわび続けろ雪が無音だなんてほざいてた全先人ーーーーッ!!!!」

友「雪自体は無音だろう。あれはトタンのせいだ」 チビチビ

男「その理屈で言うなら、雨にも音はないってことになるぜ?」

友「それは困る」

友「雨には音がないとさびしいよ」

男「でたよ酒飲みさまの妙な美意識が」

友「じゃあ呑まない奴はどうすれば納得するんだ。一休さんの頓知にでもすがるのかい?」

男「 “ではこの鋏は右の刃と左の刃、どっちが音を立てていますか?” とでも言ってごまかすがオチだろ」

友「ならそういうことにしておこう」

男「そういうことって、どういうことだってばよ!?」

友「坊主が頓知で返してきたら、丸め込まれた振りして話を収めてやるのが大人の対応ってことさ」 グビッ

雪「ぼたばたばたぼたぼたっ!」


274 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 17:05:37.19 ID:YTPefYOoP
db 「鋏は割り符としても使えると思うの」

男 「ねえよ」

db 「イザという時のため、片刃は貴方が、片刃はわたしが持っておきましょう」

db 「貴方はわたしの右片刃を持ち、そのわたしが左片刃を持つ。そういうことよ」

男 「……えと……ちょち待って」

男 「……」

男 「オイッ!? それ普通にオレがお前使ってるだけじゃん! 割り符の意味ないやんけ!」

db 「ホホそれは童貞の見た幻よ」


275 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 17:12:37.41 ID:V/5Q9Fk/0
男「ちょっと街から離れただけで、星も増えるもんだ」

男「つうか街中って星少なすぎだぜこれじゃあ」

友「灯り以上に街は空気が汚いからね」

友「昔の人は何の苦労もせずこんな夜空を見上げながら呑めたんだ」 チビチビ

男「星が多いと何もない空域がきれいに目立つねー。むしろ不自然すぎる」

友「いい模様だし、誰かがクラフト用に鋏でちょん切っていったんだろう」 

男「こうして見ると、安倍晴明が現代の京都に蘇っても、星の動きを読めなくて無能だよなー」

男「星が消えまくってるうウウゥゥ!? 天変地異だあアァァ! とか、パニくるだけだぜきっと」

友「また変なことを」

友「当時の陰陽師というのは、データと観察と計算による技術職だよ」

友「その達人なら当然事務処理にも堪能だ。晴明も事務官僚として職歴を重ねている」

友「たしか今でいう京都市長も、一応は務めていたはずだ」

友「現代に復活しても何も困らんな。むしろまた市長になって酒税を下げてもらいたいぐらいだ」

男「酒税は国税じゃなかったっけ?」

友「じゃあやっぱり無能か。ふ、ふ」 グビッ


276 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 17:16:23.69 ID:YTPefYOoP
男 「うぬぬぬぬ……」 オソルオソル

db 「そのまま動かないで!」

男 「!」 ビクッ

db 「オオなんという無謀な童貞なんでしょう!」

db 「今にも剥がれそうで剥がれない唇の皮をつまんで一気に引き剥がそうとするだなんて!」

男 「 『そんな方法で跡もなくきれいに剥がせるのは美の化身たるリア充だけなのよッ!』 」

db 「……」

db 「リア充の唇は童貞みたいにみっともなく荒れたりゃしないわよ。なに言ってんのこの童貞?」

男 「ちくしょおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!11」

db 「おとなしく爪切り鋏でも鼻毛切り鋏でも使いなさい」

db 「童貞の技量では痛みと出血がひどいわりに、皮が少ぅし残ってしまうさだめなんだから」

男 「それでも……それでもオレはチャレンジしなきゃいけないんだあああああ!」 グイッ

db 「ホホお馬鹿さんねえ」


277 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 17:23:47.36 ID:V/5Q9Fk/0
雨「しとしと」

友「雨は」 チビチビ

男「ん?」

友「雲から地上までずっと一本に繋がっているのか」

友「それとも途切れ途切れなのかな」

男「ん~?」 ジー

雨「しとしと」

男「……わからんわ」

友「雨の音ごとに長さを変えて、職人が途中で鋏でも入れてそうだ」

男「アメ細工か! 職人高速過ぎ」

友「この星から音楽が滅び去っても残る音だよ」

友「生半な技なわけがない」

男「酔っ払いが詩人みてえなことほざいてやがる」

友「酔っ払いが詩を詠まなかったら、じゃあ、誰が詠むんだい」 グビッ

雨「さあああ」


278 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 17:25:46.33 ID:YTPefYOoP
男 「いまさらだけどさ。『鋏』って、ジャンルなの?」

男 「新しいか古いかオレが童貞か否かは措いとくとして」

db 「ホホこれまでのレスをようく読み返してご覧なさいな!」

db 「文房具、園芸用具、調理器具、工作道具、理容器具、手術器具、華道具、裁縫用具……」

db 「ありとあらゆるジャンルにまたがって大活躍しているじゃないの」

db 「そのいずれかのみのジャンル内に鋏を押し込めることはすでに事実上不可能!」

db 「ならば鋏自身が一つの大いなるジャンルであるととらえるほかないじゃない!!」

男 「上手いことごまかしやがったッ!」

db 「その大いなるわたしの世界のうちに、オオ、一個の童貞である貴方がくるまれているのよ!!」


279 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 17:30:44.93 ID:V/5Q9Fk/0
男「ふーむ」 ジー

友「うちの秋海棠が気に入ったのかい?」

友「むかごでいくらでも増えるよ。あげようか?」

男「いや。花の終わったあたりが気になって」

友「んー? あのぐらいまだ大丈夫だろう」

友「君はすぐ花に鋏を入れたがる。ときに悪いくせだよ」

友「ああいうのが少し混じっているのもまたいいもんさ」

男「俺ぁ花を見るよか株を保全する方が気になるたちなんでね」

友「そうかい」

友「だが秋海棠はそうそう安易に鋏を当てていい花じゃあない」

男「そういうもんかねえ秋海棠」 ジロジロ

友「そういうもんさ秋海棠」 トクトク

男「色々と合わんなあ」

友「それがいいんだよ」 チビチビ

花「楚々」


280 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 17:37:03.75 ID:YTPefYOoP
db 「鋏と傘はこの先もかたちが劇的に変わることはないと言われているけれど」

男 「たしかにねえ」

db 「でもわたしには見える! 見えるのよ!!」

男 「刃がビーム状にでもなるの? あ、形状自体は変わんねえか……」

db 「近い将来、貴方とともにバージンロードを歩むわたしの姿がッ!!!」 シャキーン

男 「おーい。かたち、関係ねー!」

db 「ケエエエエエキカアアアアアアアアット!!」 シャキンシャキーン!!

男 「いくらキッチン鋏でもウェディングケーキは切っちゃいかーん!」


281 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 17:37:46.32 ID:YTPefYOoP
あとは好きにしてください


282 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 17:39:48.00 ID:kPqL3sNc0
>>281
乙でした

一体なにがあなたを駆り立てたのか


284 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 17:46:48.82 ID:A1AfqvLg0
>>281


285 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/28(火) 17:47:45.91 ID:6VAY9cB/0
>>281
丸一日書き続けるなんて


KOKUYO ハサ-160D ハサミ<テピタ>黒
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