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【モバマス】町外れには魔女が棲む
- 1 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 18:13:14.94 ID:fueLTAUjo
- 某超絶綺麗な雪美SSに触発されて書きました。
- 2 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 18:14:05.51 ID:fueLTAUjo
- 時間。それは無限に続いているようで、人に与えられた時間はわずか100年程度しかない。有限の資産である。
どんなものにも終りは必ず存在する。どんなものにも必ず終りは等しくやってくる。
永遠なんてきっと存在しない。いつか終りはやってくる。その日を夢見て今日も生き続ける。
- 3 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 18:16:03.65 ID:fueLTAUjo
- ――――*
ここの町外れには魔女が棲んでいる。毎晩怪しげな笑い声が聞こえるとか、怪しい研究をしているとか、子供をさらって食べてしまうだとか、そういう噂が絶えない場所に僕は足を運んでいる。
というのも、年甲斐もなくはしゃぎ過ぎたせいで腰を痛め、挙句の果てに熱を出した馬鹿な母親がここの薬じゃないと嫌だと駄々をこねたのがここに来る羽目になった原因だ。
僕は千川薬品がとてもよく効くし安いから、そこの薬でいいじゃないかと言ったのだが、頑なに千川薬品の薬は絶対に飲まない! と文句を言うのだ。全く年取ると人は頑固でいけないな……。
- 4 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 18:18:27.43 ID:fueLTAUjo
- そう母親への恨み言を連ねている間に魔女の家へとたどり着いた。
魔女の家と呼ばれている割に、その家は全体的に白くとてもきれいな風貌で日当たりもよさそうだ。
庭の方を見てみるといくつか花が咲いているのが見える。
童話に出てくるような魔女の家のイメージとは大きく違ってどう見ても普通の一軒家で、一瞬場所を間違えてしまったのではないかと思ってしまった。
「すいませーん」
ドアノブには、OPENと書かれた札がついていたので扉を開けて中に入ると、草原を吹き抜ける風のような香りが僕の鼻を突き抜ける。
魔女の家というから、大きな大釜や怪しい薬品、イモリ、カエル、ヘビなんかがいるかと思ったが、むしろ植物園や花屋のように色々な植物がそこら中に生い茂っており、
植物から発せられる匂いとあたりを流れている小川のせせらぎは僕をリラックスさせる。
「あのー、薬を買いに来たんですけど……」
そういえば肝心の魔女はどこにいるのだろうか? が返事がないので、今は留守なのかもしれない。
それなら、暇つぶしにでも店内を見て回っているとクッションの上で佇んでいる人形を見つけた。
- 5 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 18:20:00.62 ID:fueLTAUjo
- 「へー、よくできてるなぁ……」
満月の夜のような髪と、雪のように白く淡い肌。
その儚くて、繊細で雪のように触ると今にも解けて消えてしまいそうな印象を持つ不思議な人形に僕の心は気が付けば魅了されていた。
その人形の頬に触れてみると、とてもひんやりしていてわらび餅のような弾力がとても心地いい。ずっと触っていたい気持ちに駆られるくらいだ。
「んぅ……。ペロ……?」
「っ……!」
お人形のような服を着ていたうえ、肌色も病的なほどに白かったので、てっきり人形だと思い込んでいたが、どうも人形ではなかったらしい。
女の子は目をこすって、僕の方をジッと見つめて首を傾げた。
「……誰…………?」
「えっと、薬を買いに来たんですけど……」
「………」
「………」
「………!」
「………」
「……いらっしゃい…」
そこで僕が客であることに気づいたのか、女の子はまだ寝むそうに欠伸をして、僕にゆっくりとお辞儀をした。
- 6 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 18:21:46.81 ID:fueLTAUjo
- 「あの君名前は?」
「………雪美……」
寝ぼけている影響であの喋り方なのかと思ったが、どうやらあの喋り方が彼女、雪美ちゃんのいつもの喋り方らしい。
話すことはあまり得意じゃないと、雪美ちゃんは少し困った顔で言った。
「魔女さんはいつになったら帰ってくるの?」
小一時間ほど雪美ちゃん特製の紅茶を飲みながら談笑に打ち込んだが、魔女が帰ってくる様子がなく、
日も傾き始めたので僕は雪美ちゃんに訊ねてみると、雪美ちゃんは首を傾げて不思議な物でも見るように僕の目を見つめていた。
ガラス細工のように繊細で鮮やかな色をしている瞳に吸い込まれてしまうんじゃないかというほどにその瞳は深く澄んでいる。
古来より、瞳には不思議な力があるというけれど、雪美ちゃんの瞳には本当にそういう力が宿っていそうな気がする。
- 7 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 18:24:40.79 ID:fueLTAUjo
- 「魔女……私……」
「えぇっ!?」
僕の中の魔女のイメージがまた一つ崩れ去っていった。魔女=醜悪な老婆かと思ったと正直にそう話すと、雪美ちゃんは小さく笑ってそういう人もいると言っていた。
「薬……何……?」
「えっと、熱冷ましと腰に効く奴を……」
「分かった……。 ちょっと……待って……」
雪美ちゃんはそう告げると、店の中に生えている薬草をいくつか採取して薬鉢に採取した薬草を入れると、薬草を棒で擦り始めた。
薬草が潰されて、その独特な青臭い匂いが部屋中に広がっていく。
僕は世間一般的な魔女のイメージと実際の魔女とのギャップにさっきから驚きっぱなしだった。
「ただいま。そこにいるのはお客様かしら?」
扉を開けて、黒真珠のような長い綺麗な髪をした女が入ってきた。僕はこの女を知っている。
「ええっ!? どうして黒川さんがここに……」
「知ってるの……?」
「いや、知ってるも何もこの国の超有名人じゃないですか」
彼女、黒川千秋はこの国有数の名家のお嬢様でありながら、
王国屈指の剣の実力者として騎士団で活躍する人で、この国では英雄みたいな扱いを受けている人だ。
そんな彼女がどうしてここにいるのだろうか?
- 8 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 18:27:00.04 ID:fueLTAUjo
- 「話してあげて……」
「いいのか?」
雪美ちゃんがコクリと頷くと、黒川さんは僕の足元に近づいてきて僕をまっすぐ見つめた。
「今から起こることは決して他言無用だ。いいな?」
その急激に変化した物言いに戸惑いながらも僕が頷くと、黒川千秋の姿をしていたものは少しずつ小さな黒猫へと変わっていた。
それどころか、声も女性から少しシックな大人の雰囲気漂う男の声へと変化した。
「ご紹介が遅れて申し訳ない。私の名前はペロ。主の飼い猫だ」
そのあまりの礼儀正しさと、黒川さんが実は猫だったということ、しかもオスだったという事にとんでもない衝撃で、しばらく硬直していた。
「因みに言っておくが、私と黒川千秋は別人だ」
てっきり、同じ黒色だからそうなのかと勝手に思ってしまったが違うようだ。
ペロはジャンプして机の上に飛び乗って、自分の身の上話を始めた。
- 9 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 18:32:21.71 ID:fueLTAUjo
- まあ、薬をできるのを待つまでの間話を聞いてくれないか?
それは今から数年前、私がまだ野良だった頃の話だ。
私は生まれると同時に捨てられたか親が死んだのか見当もつかないが、物心ついた時からずっと一人だった。
私が黒猫で忌み嫌われていることは知っているだろう?
でも、その時の私はそんなこと知らなかった。
だから、どうして人がここまで私に攻撃するのか理解できなかったんだ。
そのままどうしていいかも分からず迷走している時、私は市場に辿りついたんだ。
そこで、私は食べ物を盗みに来たと勘違いされ人間に捕まった。
それからは酷かったさ。棒で殴られたり蹴られたり、冷たい床に叩きつけられたりもした。
そして最後はごみのように捨てられた。
- 10 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 18:35:55.90 ID:fueLTAUjo
- それからしばらくして気が付いたら主の家にいたんだ。
何でも主は、ごみのように捨てられていた私を保護して治療までしてくれたんだ。
最初はそんな事知らなかったからな。
私は主をひっかいたり噛んだりした。でも、主は涙を流しながら私をなだめるように優しくだいてくれたんだ。
そして主は言ってくれた。私はお前を嫌わない。だから嫌われ者同士一緒に暮らそうって。
それから、私は主の友人としてこの家で暮らすようになった。
でも、ある日思ったんだ。恩返しがしたいって。そう願ったら喋れるようになって、人に化けることも出来るようになっていたんだ。
「と、まあこれが私の身の上話だ」
「そうだったんですか……」
肝心の喋れるようになった直接的原因があやふやだけど、この世にはそういう科学とか数式とかで証明できない物だってあると思うから、
そこを聞くのは野暮な気がして聞かないことにした。
- 11 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 18:36:48.72 ID:fueLTAUjo
- 「ところで、そうして黒川さんに変身してるんですか?」
「ああ、彼女は知っての通り有名人だからな。彼女に変身することで色々な情報が手に入るんだ。物価だったり国内情勢だったりな」
そういえば、最近黒川さんのドッペルゲンガ―が各地で目撃されているという噂を聞いたことがある。
ということは、その正体はこの礼儀正しい黒猫だったという事なのか……。
「完成……」
話しを聞いている間に薬は完成したみたいだ。
雪美ちゃんはできあがった薬を小さな小瓶に詰めてコルクで蓋をして、薬の概要や使い方について説明してから袋にいれて僕に手渡した。
「えっと、お代は……」
「無料……」
「えっ、でもそれじゃ商売が成り立たないんじゃ……」
これだけの植物を育てているんだから、当然費用だってそれなりにかかっているはずだ。お金なしでこんなのやっていけるはずがない。
「善意……でやってる……。だから……お金……いらない……」
法外な値段を要求されることはないにしても、多少要求されるものだと思っていたから僕は面食らって何も言えなかった。
- 12 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 18:38:47.10 ID:fueLTAUjo
- 「で、でも、ごはんとか……」
「私たちは……大丈夫……」
何が大丈夫なのか、僕には分からなかった。もしかするとあんまり食べていないのかもしれない。
観察してみれば、肌は青白く血色もよくなさそうで、同年代くらいの子と比べても体も華奢で、身長も小さく見える。
まだまだ育ちざかりの女の子があんまり食べていないかもしれないというのは、とても不安だ。
「野菜……育てて……食べてる……」
そういえばここに入る前に家庭菜園のようなものを見かけたけれど、それなら大丈夫という理由も納得がいく。
それでも、何も払わずに相手の善意だけを受け取るなんて図々しい真似なんて、僕にはできない。
「じゃあ、その野菜を育てるお手伝いしてもいいかな?」
「お手伝い……?」
「お代の代わりに……ね?」
雪美ちゃんは暫く考えた後、分かったと承諾してくれた。
とりあえず、今日はもう遅いので明日の朝ここにまた来ることを約束して、僕は店から外に出た。
「また……ね……」
「うん、また来るよ」
- 13 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 18:39:27.68 ID:fueLTAUjo
- 雪美ちゃんは僕が見えなくなるまで小さく手を振っていた。
夜空を見上げる。今宵は新月の晩なので、星がよく見える。
雲一つない星空の下、雪美ちゃんもこの燦然と輝く綺麗な星空を見ているんだろうか?
雪美ちゃんと別れてから、僕は雪美ちゃんの事ばかり考えている。
きっと、僕は彼女に魅了され虜にされてしまったのだ。
何せ雪美ちゃんは魔女だ。
僕はきっと雪美ちゃんの魔法にかけられてしまったのかもしれないと、
ロマンチストを気取りながら星屑に照らされた家路を進んでいった。
- 14 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 18:42:05.58 ID:fueLTAUjo
- またねって言う言葉は好きだ。
きっとまた会えることを約束する言葉だから。
でも、同時に嫌いでもある。
その言葉を聞くたびに考える。
あと何回またねって言えるんだろうって……
To be next……
- 15 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/03(水) 18:44:44.89 ID:fueLTAUjo
- 一応、完結です。
全5話編成になってまして、完成してから打撃を受けるよりは小出しにして、ボロカスに叩かれた方がダメージ少ないかなって思ってやりました。
それでは申請出してきます。
すいません

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