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穂乃果「私の理由」
- 1 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 22:35:31.66 ID:9m6Zb2du.net
- 穂乃果の毎日は充実していた。
- 2 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 22:36:31.93 ID:9m6Zb2du.net
-
「おはよー、お、今日の朝食は食パンだね!いただきまー」
雪穂「おねーちゃん時計」
「んぐぐぐ」
海未「朝も昼もパンですか」
「えーいいじゃん」
ことり「今日は私もパンだよ。ほら」
「おおー!」
海未「くれぐれも寝坊しないように。では」
「じゃーねー」
一日が楽しかった。
嬉しくて、ドキドキして、ワクワクしてた。
みんなのことを考えるだけでにやけちゃうくらい楽しかった。
- 3 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 22:38:02.76 ID:9m6Zb2du.net
- 辛いことだってたくさんあった。
怒られること、迷惑かけちゃうこと、喧嘩しちゃうこと、色々。
けれど、だからこそ、充実していたんだと思う。
楽しいこと辛いこと、それがたくさんあるから、成長できて、だから穂乃果の毎日は充実してた。 - 4 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 22:38:46.77 ID:9m6Zb2du.net
- なのにさ。
それなのに思ったんだ。
なんでかわからない。
ううん、きっと、いや絶対、穂乃果のわがままなんだけど。
私、穂乃果は、どうして生きてるのかなって。 - 7 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 22:40:00.44 ID:9m6Zb2du.net
- 具体的な引き金はないんだ。
だからあえて答えるとするならば、毎日が退屈に感じられたから。
退屈さが、楽しいっていう穂乃果のオレンジを灰に染めて、辛いっていう影を真っ黒にした。
穂乃果の生活は、こんなにも恵まれて、平和で、充実してるのに、退屈なんて贅沢が穂乃果の理由を消したの。
消されたんじゃないや、気付かされた。
そうしたら、穂乃果の世界は真っ暗になって、何もかもがなくなって、嘘だって言われて、見えてた世界は変わっちゃった。 - 8 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 22:40:49.68 ID:9m6Zb2du.net
- …贅沢だよね、わがままだよね、馬鹿らしいよね。
ほんと馬鹿らしい。
でも、だからって、どうすればいいのかな。
穂乃果にはわからない。
わからなくて、怖いんだ。
── - 9 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 22:43:21.90 ID:9m6Zb2du.net
- ──
ことり「穂乃果ちゃん、最近元気ないけど、悩み?」
「ことりちゃん」
ことり「はい」
「ことりちゃんが生きる意味、何のために生きてるんだと思う?」
海未「どうしたんですか穂乃果!」
「海未ちゃんにも聞きたいな」
海未「穂乃果…」
ことり「うーん、ことりは楽しむために生きてるんだと思う。
楽しみたいから友達と遊んだり、お菓子作ったり、欲しいものを買ったりするんだもん」 - 10 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 22:44:08.15 ID:9m6Zb2du.net
- 「なぜ、楽しむの?」
ことり「んー…」
海未「穂乃果、私は、生きる意味など言語道断、命を授かったからには生きる義務があると思います。
母が腹を痛めて産み、両親が育て上げたその命、どうか無駄には」
「ああ、心配しないで、聞いてみたかっただけだから」
海未「なら良いのですが…」
- 12 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 22:45:30.10 ID:9m6Zb2du.net
- ことりちゃんは、生きる上で楽しむ理由を結局答えなかった。
頭が楽しさを求めたって、それを満たしたところで、どうなるっていうんだろう。
どうにもならないよね。
答えられなかったのは、答えがないから、だよ。
海未ちゃんのは海未らしいな。
生きる義務。
義務を果たさない、っまり死ねば、死んじゃえば本人には何も残らないんだよ?
死ねば、義務さえ残らない。
その人の人生、意識、見えていた世界の何もかも。
育ててくれたお母さん、お父さんも消える。
でも死んじゃえば、親の悲しむ顔だって見ないし、脳が動かないから後悔だってしない。気にすることないじゃん。
自己中だと言われようが終わったあとの世界にはいないんだ。 - 13 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 22:46:20.37 ID:9m6Zb2du.net
- なんかさ、寂しいよ。
生きる理由は分からない。生きるのは大変で、死ぬのは簡単。
真っ暗な世界の、暗い暗い道の中。
穂乃果は、どっちを向いてるの?
私の道は、どこへ辿り着くの?
── - 15 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 22:48:16.72 ID:9m6Zb2du.net
- ──
花陽「はいどうぞ♪」
「ありがとう」
凛「あんまー!」
真姫「甘っ…これ砂糖?」
花陽「お米飴」
「甘いの?」
花陽「そうだよ?」
- 17 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 22:49:19.20 ID:9m6Zb2du.net
- 甘いのかな。
きっと甘いけど、穂乃果は甘いって思うけど、花陽ちゃんや凛ちゃんや真姫ちゃんの感じる甘さと、それは同じものなのかな。
「甘いって、それぞれみんな小さなうちから、その感覚が甘いって教わったんだよね」
凛「?」
「その感覚って、穂乃果たち、一緒なのかな。ほのかの甘いは、もしかしたら花陽ちゃんの酸っぱいかもしれない、って」
花陽「確かにそうかもしれないけど…」
「見える色だって、肌の色、空の色、実は、まるきり別物なのかもしれない、って」
真姫「どうしたのよ、穂乃果」
- 18 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 22:50:15.00 ID:9m6Zb2du.net
- 同じ世界にいて、みんながこんなにいきいきしていることが、今の穂乃果には信じられないんだ。
一寸先も見えない道の中で。
それとも、穂乃果が異常なの?
でも間違ってるとは思えない。
きっと、世界が違うだけなんだ。 - 19 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 22:51:41.99 ID:9m6Zb2du.net
- 穂乃果の先を覆う闇がむくむく大きくなって、横にいたみんな、いなくなっちゃった。
寂しいってば。
こんなの嫌だ。
死の一文字しか先の見えないこの道にひとりぼっちにされるなんて。
悪夢だ。夢なんだ。
── - 21 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 22:54:16.86 ID:9m6Zb2du.net
- ──
全部夢ならいいと思った。
希「で、エリチったら店員にハラショーっ」
絵里「の・ぞ・みぃー!」
にこ「ぶふっ、ぶふふっ」
夢じゃ悲しいと思った。
見ているだけであったかいんだ。
手の届かないところで、オレンジ色になってる気がした。 - 22 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 22:55:26.66 ID:9m6Zb2du.net
-
希「お、穂乃果ちゃん」
絵里「どうしたのー、そんな場所で。やっぱり穂乃果おかしいわよー」
「そうかな」
絵里「ええ。とりあえず穂乃果もこっち」
握られた手が熱かった。
溶けちゃうくらい。
怖くて、反射反応で、つい振りほどいちゃった。 - 23 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 22:56:40.53 ID:9m6Zb2du.net
-
絵里「…ほ、のか?」
「ごめん、悪気はないから」
でも夢のようなものだと思った。
「あったかいよ、絵里ちゃんの手。希ちゃんも。にこちゃんも。
でもね、どんなに楽しくっても嬉しくっても、無意味だよ。
感情があって何があるんだろ、意識があって何があるんだろ」
にこ「ちょっと」
「楽しむために生きる、生きる義務がある、そんなの綺麗事で、ほんとは間違ってて、ただの夢物語。
理想だから、きっと夢でしかない。生命の無意味さを隠すための言い訳なんだよ」
希「穂乃果ちゃん、思い直して、考え直して」
「勇気が、ないよ。じゃあ、また明日」
絵里「穂乃果っ!」
にこ「待ちなさい!」
- 24 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 22:57:51.53 ID:9m6Zb2du.net
- 感情も意識もいらない。
一つとしていいことないじゃん。
いらないのに、間違えてつくっちゃったんだ。
宇宙が間違えたんだ。
意識がなければ、自分を自分と知ることも、悩むことも、生きていることも、知らずにいられた。
生き物と、この廊下やそこの机、熱くなってる上履きも、もとは同じ物質。
だったら、物質に意識がついただけ。
多分、物質が夢見てるだけなんだよ。
宇宙は、生物をつくった瞬間から間違えた。
そこからは、全部夢。 - 25 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 22:59:12.19 ID:9m6Zb2du.net
- 生まれてしまった生物。
生まれてしまった人間。
どれもこれも、間違えた宇宙なんて、滅びてしまえばいいんだ。
滅びてしまえばいいんだ。
失敗作で、偽物で。
宇宙の失敗である人間に、生きる理由なんて、どこにもない。
穂乃果の真っ暗は、ただ静かだった。
── - 28 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 23:09:22.35 ID:9m6Zb2du.net
- ──
学校に行った。
身体、学校、友達、ルール、法律さえ、意味ないなって考えた。
考えるたび、涙が出そうになった。
海未ちゃんやことりちゃんに教室で話しかけられるたびに、考えちゃうから、誤魔化した。
部活に出た。
スクールアイドルに感じたあの想いすら。
努力した。
廃校を救った。
穂乃果は何を見ていたんだろう。
高坂穂乃果は、どうして生まれてきたの?
生きたくなんてないよ。
できることならなくなりたい、でも、勇気がない。
どうして穂乃果の意識が選ばれたの?酷いよ、残酷だよ。 - 29 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 23:10:44.32 ID:9m6Zb2du.net
- その日突然泣き出す私を、海ちゃんが家まで送ってくれた。
泊まると言い張ってたけど、変なことはしないと無理やり押し出した。
穂乃果はもう考えたくなくて、すぐベッドに横になった。
眠れば、明日がくる。
でも穂乃果は明日なんて欲しくない。
明後日も、昨日も一昨日も、今日だって、何一つ欲しくない。
願わくば、なにも来ないように、終わりにして。
世界を。
苦しみが伴わないなら。
真っ暗な世界は、答えてくれない。
── - 30 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 23:12:04.12 ID:9m6Zb2du.net
- ──
翌日。
もう涙は乾いて、ちっとも出てこない。
心が疲れちゃったのかもしれない。
無気力に学校に行って、ぼーっとして、お昼食べて、ぼーっとした。
ノートは真っ白。落書きする気も出ない。
いつだか、海未ちゃんのくまを見た。
見ぬふりをした。
罪悪感を押し込んだ。 - 31 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 23:13:26.14 ID:9m6Zb2du.net
- 授業が終わって、三人で部室に向かう。
部室のドアを開けるなり、
絵里「来たわね。さあ、遊びに行くわよ!」
六人はにこにこ笑ってる。
となりの海未ちゃん、ことりちゃんも。
ああ、私のために。
嬉しいしきもち、悲しい気持ち、罪悪官を、押し込んだ。
でもその笑顔が、眩しすぎちゃった。 - 32 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 23:15:34.35 ID:9m6Zb2du.net
-
「でも、穂乃果は…」
絵里「そんなこと言わずに行きましょ?」
凛「穂乃果ちゃんと行きたーい!」
「…」
答えなかった。
みんなは一瞬、すごく悲しそうで、私より悲しそうで泣きそうな顔をして、すぐ取り繕って笑った。
穂乃果は辛さが押し込みきれなくて、世界がおかしくなりそうで、この場からいなくなりたかった。
でも、なんとか連れて行こうとする。
にこ「ほらほら、歩いた歩いた」
「ちょ、にこちゃ」
触れられる背中が熱い。
溶けちゃうくらい。
溶けて壊れちゃいそうで、怖くて悲しくて辛い。
「わかったから」
にこ「ならよし」
近付かれて、触れられるのが、一番怖かった。
穂乃果ごと、潰される気がしたんだ。
── - 34 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 23:17:06.96 ID:9m6Zb2du.net
- ──
ゲームセンターに行った。
穂乃果への気遣いが辛かった。
ハンバーガーショップに行った。
気遣いが辛かった。
映画館に行った。
辛かった。
たくさんの場所に行った。
穂乃果はどんどん嫌になって、怖くなった。
みんなが、今の穂乃果を見つけてしまいそうなのが嫌で。 - 35 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 23:17:55.15 ID:9m6Zb2du.net
- 何も考えたくないし、何も感じたくないのに。
それなのにみんなは、どうして。
早く終わらせたい。
何もかも。
もう、うんざりだよ……
── - 36 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 23:18:59.91 ID:9m6Zb2du.net
- ──
空が真っ暗になった頃。
聞かれたの。
海未「穂乃果」
「なに?」
海未「…今日は、楽しかったですか?」
振り向いたら、全員が穂乃果を見てた。 - 38 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 23:20:12.91 ID:9m6Zb2du.net
- ……。
わかんない。
楽しかったかな。
どうして楽しむんだろ。
生き物なんて物質が訳わかんない感情なんて持って何があるの?
なんでその訳わかんないもののために、ゲームセンターとかハンバーガーショップとか映画館とかがあるの?
無価値。
無駄。
失敗。
偽物。
そう、思う。
なら、穂乃果は、
「無意味だよ、楽しむなんて」
きっと、
「無意味だよ、生きるなんて。だから」
海未「穂乃果」
- 39 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 23:22:44.34 ID:9m6Zb2du.net
- でも、それを海未ちゃんは、優しくて熱い顔で遮った。
変えてほしくて。
みんなは穂乃果に伝えたんだ。
ことり「ことりは、楽しむために生きてる」
花陽「花陽は、幸せを掴むために生きてるんだと思うな」
凛「凛はラーメン!あ、でも、猫もかよちんもパパもママも好きだし…
そう、好きなもののため!」
真姫「私はその人に見合った役割を果たすために生きてるんだと思うわ」
希「人は、人と出会うために生きてるんやないかなあ」
にこ「もちろんファンのためにこー!つまり、人のため、周りの人のためよ、私は」
絵里「生きる理由を探すため、じゃないかしら」
海未「私、園田海未は、高坂穂乃果、あなたのために生きます」
- 40 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 23:24:27.45 ID:9m6Zb2du.net
- …伝わらないよ。
わからないよ。
おかしいよ。
みんな、みんな間違ってる。
全て、無意味で無駄なことなんだよ。
何をしたって、死ねば意識は終わって、この馬鹿げた世界は消えるし、
生まれてこなければ、ずっと死んでれば、その無意味さを感じることも悩むこともなかったのに。
生まれてきたのが、運のつき。 - 44 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 23:26:45.22 ID:9m6Zb2du.net
- なら、生きる理由は。
生物学だと、子孫を残すためって聞いたことあるけど、子供を作らない人も多い。
菌みたいにコロニー作るのが夢だったり、同じ人種を増やして占領しようなんて人、あんまりいない。
なら、生きる理由、失ってるじゃん。
きっと、意識を持って、考えちゃったから失くした。
間違った。
邪悪で暗くて怖くて寒くて残酷な世界が生み出した、憂鬱な夢なんだよ。
なら、穂乃果は、
きっと、ぜったい、
「私は、穂乃果はっ、死ぬために生きてるんだっ!」
- 45 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 23:27:53.50 ID:9m6Zb2du.net
- みんなが怖くて、一人になりたくて、とにかく走り出した。
生まれることが運のつき。
生きることが最大の不幸なら、死ぬことこそが幸せ。
何もかもないんだから、それが、望まれるべき幸せだよ。
それなのに、みんな、あれほど楽しそうに笑っていられる。
みんなが、わからない。
みんなが、怖いよ。 - 47 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 23:29:16.51 ID:9m6Zb2du.net
- 見える限りの物質が全部、穂乃果を嗤った。
怖くて死にたい。
死にたくて死にたくて死にたくて死にたい。
でも死ぬのが怖い。
怖くてたまらない。
だから一人になりたかった。
寿命が来るまでずっと一人でいればいいんだ。
穂乃果の暗い世界の正解が見えた気がした。
瞬間、ぎゅって、襟が掴まれた。 - 48 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 23:33:11.45 ID:9m6Zb2du.net
-
海未「穂乃果っ、待って、待って下さいっ!」
海未ちゃんの顔はびしょびしょだった。
「やめて、離して!やっと正解を見つけたのにっ!」
海未「切腹しますよぉっ!」
後ろから7人が追いつく。
「みんな、こないで…やめて……」
ことり「穂乃果ちゃん、死んじゃだめだよ!」
絵里「穂乃果がいなくなったら、私…」
凛「μ'sのこと、忘れたの?」
花陽「私たちの、そばにいてくだい!」
希「9人で出かけられなくなっちゃうやん…」
真姫「死ぬためとか、言わないでよ、穂乃果」
にこ「ばっかじゃないの?……っ」
逃げられない。
溢れる感情が押し込めない。
震える。 - 49 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/02(火) 23:34:41.80 ID:9m6Zb2du.net
-
海未「穂乃果、あなたは、こんなに愛されているんですよ。私だって、あなたを愛しています。
楽しいこと、嬉しいこと。それだけ恵まれていれば、たくさんあります。
ですから、あんな悲しいこと、言わないでください…」
そう言われた。
恵まれていることを知っていて、そしてそれが無意味なことも、知っているはずなのに。
間違っていないはずなのに。
海未ちゃんに、抱きしめられた。
重なるように、みんなが、穂乃果を抱きしめた。
熱すぎて、火傷して、痛くて、どうしようもなく、穂乃果は壊れた。
まだ、私の理由は見つからない。
それなのに、それでも、枯れていた心からは、涙が溢れた。
── - 56 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/03(水) 21:09:33.93 ID:gwBzAI+x.net
- ──
そして、それから。
穂乃果は家に帰って、お風呂に入って、自分の部屋に戻った。
LINEのメッセージが来てた。
読むと、一つ一つが鮮明に頭の中で喋った。
────────────────────
海未ちゃん :穂乃果、いなくならないでください。
穂乃果がいなくなったら、私は切腹してしまいます。
ことりちゃん:ことりは、親友としていつでも隣にいるよ♪
絵里ちゃん :明日は、みんなで練習しましょ?
花陽ちゃん :穂乃果ちゃんのいないμ'sを、μ'sとは呼びませんっ!
凛ちゃん :今度ラーメン奢ってあげるねd(>ω<)d
希ちゃん :穂乃果ちゃんにはとーっておきのまじないかけたから、もう安心や!
にこちゃん :困ったり悩んだりしたら、いつでも私に相談すること。いいわね?
真姫ちゃん :悩みがあるなら、私に言いなさい。腕利きの医者でも何でも寄越すから
にこちゃん :私だって相談くらいのれるわよ!
- 57 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/03(水) 21:28:56.85 ID:gwBzAI+x.net
- やさしいな。
やさしすぎるよ。
まだ、穂乃果にはわからない。
やさしさの理由、今微笑んでいる理由、いろんな理由、何もかも。
でも、無視できなくて、とどまるところなく溢れ出す気持ちは、多分、偽物じゃなくて本物なんだと思う。
この世界に一つでも本物があるのなら、穂乃果はそれを大切にしたい。
だから、まだ少ししか言えないけど、この気持ちを、伝えようと思う。
みんな、今までごめんね。
本当にありがとう。
大好き。
まるで図っていたかのような、ぴったりなタイミングで、送信しようとしたとき、そこに、動画が送られてきた。
穂乃果は、そっと再生ボタンに触れた。 - 59 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/03(水) 22:06:57.49 ID:gwBzAI+x.net
- 誰もいない屋上が映る。
日が傾きかけてる、放課後だ。
いつの間に撮影したんだろう、なんて思っていると、画面端から、サングラス姿の絵里ちゃん、希ちゃん、にこちゃん。
決めポーズ。 - 60 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/03(水) 22:08:27.02 ID:gwBzAI+x.net
-
にこ「私はにこにー仮面!」
希「ウチはのぞみん仮面!」
絵里「私はエリーチ仮面!」
希「三人合わせて」
「「夢ナンジャー!!」」
絵里「わーぱちぱち」
にこ「わた、我々の目的は!」
希「抱いている間違った幻想を!」
絵里「壊して、夢から覚まさせること!」
にこ「名付けて」
「「夢ナンジャー!!」」
希「ぱふぱふ」 - 61 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/03(水) 22:10:52.29 ID:gwBzAI+x.net
- 絵里「穂乃果、この宇宙は、夢ではないわ。
思い出しなさい、私たち九人ではしゃいだこと、笑ったこと、泣いたこと、ライブしたこと。
あたたかいでしょう?思い出すだけであたたかいでしょう?
それはね、そこにある絆が、心が、エネルギーが本物だから、あたたかいのよ。夢なんていう偽物じゃないの」
希「エリチの手、振りほどくくらい熱かったんやろ?そしてウチも、にこっちも、みんなも。
そう、穂乃果ちゃんは感じてた。ウチらの熱が本物だってこと。こんなに笑っていられるウチらが。
穂乃果ちゃんのゆーことが間違いだとは思わん。でもウチら、本当に本物の理由を見つけてる」
にこ「信じなさい、穂乃果。穂乃果が見ている、夢だという世界は、それこそ夢見てる。寝言よ。
あんたも私たちと同じように本物。このにこが太鼓判を押すわ。
あのオレンジに煌めくエネルギーに誘われたことを、私たちは忘れない。
ただ今は、疲れて、迷ってるだけだから、あんたは絶対に思い出せる。自信持ちなさい。そして信じなさい」
「「信じなさい、その幻想が夢であるということを!」」 - 62 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/03(水) 22:12:13.65 ID:gwBzAI+x.net
- 希「ふふ、いつでも呼ぶがよい!」
にこ「わた、我々のことを!」
絵里「その名もぉ~っ!」
「「三年戦隊、夢ナンジャー!!」
- 63 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/03(水) 22:16:09.20 ID:gwBzAI+x.net
- 夢なんじゃーはポーズをとったまま、その前に、凛ちゃん、花陽ちゃん、真姫ちゃん。
凛ちゃんは夕日を指差す。
凛「見ろ!あの輝かしい太陽を!中天高き太陽を!あの青春の証は、お前にも、同じように見えるはずだ!
お前は忘れたのかっ!俺たちが同じ光に向かって、汗水垂らして走り続けていることをっ!!」
花陽「世界が違うかはわかりません。でも、太陽が同じだったからこそ、μ'sはここまでやってこれたんです。
お米が、苦くても、酸っぱくても、辛くても、美味しいのなら、その美味しいに違いはないんです!
共通点、たくさんあります!」
真姫「だから、その、あなたは一人きりじゃないわ。まわりが暗く見えているなら、私たちがそばに行って、照らしてあげる。
いままではあなたが、照らし続けてきてくれたのよ?だから、一人じゃない。
寂しい顔はやめてよね。穂乃果らしく、ないから」 - 64 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/03(水) 22:17:27.24 ID:gwBzAI+x.net
- 凛「俺らはすぐ近くにいて、いつどこだって駆けつけて助けてやる!
だから、この手を、お前が握ってくれ!
あの青春にむかって、再出発だー!」
花陽「いくぞー!」
真姫「い、いくぞー!」
「「おー!!」」
- 65 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/03(水) 22:28:10.00 ID:gwBzAI+x.net
- 三人は夕日を指差したまま、その前に、海未ちゃんとことりちゃん。
海未「穂乃果」
ことり「穂乃果ちゃん」
海未「穂乃果の幸せは、なんですか?死ぬこと、ですか?
それも一つの考えかもしれません。ですが、幸せを一つに絞るのは、たいへん勿体無い気がしてなりません」
ことり「ことりたちは、生きてる。死なない。みんな、それぞれの幸せを、理由を、見つけてるの。
本当はないのかもしれない。それでも、確かな形を、みんな持ってる。
穂乃果ちゃんにも、この広い世界で、それを探してほしいな」
海未「辛かったら頼ってください。相談してください」
ことり「どんなことだって受け止めるし、頑張るから。だって親友だもんね♪」
海未「では、二人からは、これだけです。
アンカーをまかされたのですが、比べて地味になってしまいましたし、言いたいことも言われてしまいました。わかりますよね。最後に、これだけ、忘れないでください」
- 66 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/03(水) 22:29:23.23 ID:gwBzAI+x.net
- 八人は、横一列に並んだ。
海未「穂乃果」
ことり「穂乃果ちゃん」
絵里「穂乃果」
希「穂乃果ちゃん」
にこ「穂乃果」
凛「穂乃果ちゃん」
花陽「穂乃果ちゃん」
真姫「穂乃果」
海未「せーのっ」
「「大好き!!」」
- 67 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/03(水) 22:30:55.66 ID:gwBzAI+x.net
-
穂乃果 :みんな、今までごめんね。
本当にありがとう。
穂乃果も大好き。
私は今、幸せだよ。
────────────────────
── - 68 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/03(水) 22:41:25.22 ID:gwBzAI+x.net
- ──
雲ひとつない晴天。
足取りは軽くて、風が心地いい。
穂乃果の真っ暗だった世界は、鮮やかな色を取り戻してる。
だって、太陽が、この広い世界を照らしてるんだ。
穂乃果のオレンジパワーがね、エネルギーが、穂乃果を照らすの。
あ、海未ちゃんにことりちゃん!
それにさ、この世界には、穂乃果だけじゃなくて、すぐ隣にだって仲間がいるって、わかったんだもん。
怖いものもへっちゃらだよ! - 69 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/03(水) 22:43:02.69 ID:gwBzAI+x.net
- そう言うと、死ぬのもへっちゃら!みたいだけど、穂乃果は、死にたくない。
だって私、とーっても幸せなんだよ?!
みんなに早く会いたくて、ワクワクして、ドキドキしてるんだよ?!
死ぬことなんかよりも、ずっと、ずっと、ずーっと幸せ。
この幸せを、退屈なんて贅沢が穂乃果から忘れさせてたのかもしれないし、穂乃果はそもそも知らなかったのかもしれない。
なら、他にも忘れてること、知らないことが、きっといっぱいあるんだと思う。
だから穂乃果はその幸せを、新しい何かを、探して、見つけたい。
意味を、もっともっと、知りたい。 - 70 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/03(水) 22:44:59.30 ID:gwBzAI+x.net
- みんなが意味や幸せを知ってるのは、いや、穂乃果が知らなかったのは、穂乃果が子供だったからだと思うんだ。
穂乃果も、みんなに追いつけるように、それを探して、未来へ、成長したい。
いや、成長するの。
私、決めたよ。
やっぱり、これらも全部、言い訳かもしれない。誤魔化しかもしれない。
けど、それでいいんだってわかった。
穂乃果は、今が幸せだから。 - 71 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/03(水) 22:46:59.13 ID:gwBzAI+x.net
- だから、決めたの。
やっと、見つけたよ。
何のために生きるか。
それは。
明日のために、生きる。
決めた。
それが。
それがね。
穂乃果「私の理由」
─お終い─
- 72 : 名無しで叶える物語(魔女の百年祭)@\(^o^)/ 2016/08/03(水) 22:47:50.86 ID:gwBzAI+x.net
- 心より憂鬱をこめて

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