Powered By 画RSS


スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

輿水幸子「うまくいかないもの、ですね」

1 : ◆MhRo2YnWE.V/ 2016/09/27(火) 01:18:16.90 ID:/I9Sf5H+0
「ご結婚おめでとうございます」

「ありがとう」

 ボクは輿水幸子。アイドルです。
 このちょっと冴えない男の人は、ボクの担当プロデューサー。

 そして、彼は明日、結婚します。




2 : ◆MhRo2YnWE.V/ 2016/09/27(火) 01:23:10.00 ID:/I9Sf5H+o
「新婦さん、やっぱりキレイですね」

「そうか?」

「まさかアナタみたいな人が、あんな美女とお付き合いして結婚までできるなんて」

「ひどい言われようだな」

「全部ボクのおかげですから、感謝してくださいね」

「なんでだよ」

 彼はそう言って笑いますが、考えれば自明のことでしょう。
 ボクがボクのカワイさで、アイドルとしてがんばったおかげで、あの人に出会えたんですよ。

 そう、新婦さんもアイドルなんです。……元アイドル、になるのかもしれませんね。結婚した後も続ける人は、少ないですから。


3 : ◆MhRo2YnWE.V/ 2016/09/27(火) 01:24:42.50 ID:/I9Sf5H+o
「幸せになってください」

「ありがとう」

「当然のことですよ、ボクのプロデューサーともあろう人が、不幸せな結婚生活を送るなんて許されません」

「そういうものか」

「そうです」

 幸せになってほしい。……そう心から思えたらよかったのに。
 でも、それを言うわけにはいかないから……。こうして、ボクはいつも通りのボクのフリをしています。

 ……なんて、おかしいですね。
 なら、どうしてこんなところにPさんを呼び出して、二人だけで話なんかしているんでしょう。
 本当に臆病な、ボクは……カワイくないです。


4 : ◆MhRo2YnWE.V/ 2016/09/27(火) 01:25:37.04 ID:/I9Sf5H+o
「なあ、幸子」

「……なんです?」

「お前の気持ちを……言葉にしてもらっても、構わない」

 ……この人は、何でもお見通しです。そう、これまでと同じです。
 ボクが隠し事をできたことなんて、一度もありませんでした。
 でも。

「…………バカですね」

「そのくらいの覚悟はある」

「……全部っ、全部言いますよ?」

「……いいよ」

 それなら。
 今だけは、みっともなくてもいい、カワイくなくてもいい、本音を言おうと思います。
 そうしたら、何かが変わるんでしょうか? そう信じずにはいられませんでした。そう信じたかった。
 だから、ボクは言います。


5 : ◆MhRo2YnWE.V/ 2016/09/27(火) 01:26:36.19 ID:/I9Sf5H+o
「あの人は、綺麗で、とってもいい人です」

「けど。アナタに一番ふさわしい人じゃ、ありません」

「もっと、もっとふさわしい人がいます」

「それはボクです。輿水幸子です」


「……」


6 : ◆MhRo2YnWE.V/ 2016/09/27(火) 01:27:15.60 ID:/I9Sf5H+o
「ボクは、ずっとアナタの側で、アナタにプロデュースされてきて……ボクのほうが、ずっと前からアナタを好きだったのに!」

「どうして? どうしてなんです、どうしてボクじゃダメだったんです……。ボクが、14歳だからですか?」

「もっと早く生まれたかった……もっと、遅く出会いたかった……」

「ボクが、子供じゃなくて、アナタと並んでいられる大人になってから、アナタのアイドルになりたかった……」


「……」


7 : ◆MhRo2YnWE.V/ 2016/09/27(火) 01:27:49.15 ID:/I9Sf5H+o
「それとも、ボクが大してカワイくないから、選んでもらえなかったんでしょうか」

「あは、そうですよね。……ボクなんか、あんな綺麗な人に比べたら……」

「悔しい……。どうしてボクはあの人じゃないんですか……アナタに選んでもらえる、あの人じゃないなんて……」


「……」


8 : ◆MhRo2YnWE.V/ 2016/09/27(火) 01:29:37.61 ID:/I9Sf5H+o
「やめてください……」

「結婚なんかしないで……。ずっと、ボクの側にいて……。あと、少しだけ待っていて……ボクだって、あと少しで結婚できるんです……お願いします……。なんでもします……」

「……みっともない……ぐすっ、ほんと、こんなのだからアナタは愛想を尽かしたんですよね。ボクみたい、な、ボクみたいなのじゃ……」


「……」


9 : ◆MhRo2YnWE.V/ 2016/09/27(火) 01:30:28.36 ID:/I9Sf5H+o
「もう、遅いですよね」

「もっと早く言えばよかった」

「……あの人とアナタの距離が縮まっていくの、わかっていたのに。でも、怖くて……何もいえなかった」

「もしも……」

「もしも、もっと早く言っていたら……」

「ボクと……」


「……」


10 : ◆MhRo2YnWE.V/ 2016/09/27(火) 01:30:58.12 ID:/I9Sf5H+o
「なんて、無意味です」

「終わった話です」

「ボクは、まだアナタが好きだけど……」

「……諦めます」

「……明日からは、いつもの輿水幸子です」


「……」


11 : ◆MhRo2YnWE.V/ 2016/09/27(火) 01:31:32.33 ID:/I9Sf5H+o
「だから……」

「だから、今日だけは……」

「ボクの……こ……」

「……………………」

「ボクの、…………」

「プ、プロデューサー、で、いて」


「……ああ」


12 : ◆MhRo2YnWE.V/ 2016/09/27(火) 01:32:02.38 ID:/I9Sf5H+o
「……うっ、うぅ……」

「…………ぁあ……」

「…………やだ……」

「……でも…………」

「………………でも」

「……あり……と……」

「……うぁああああ……」


13 : ◆MhRo2YnWE.V/ 2016/09/27(火) 01:32:41.91 ID:/I9Sf5H+o
 言葉になったのは、そこまででした。
 ボクはずっと泣いて、泣いて。
 あの人は、そんなボクの側にいてくれました。

 ……それでも、ボクは翌日、ちゃんとあの人の結婚式に行きましたよ。エラいでしょう?
 健気なボクはカワイイですね。

 不思議と、新婦さんと並んでいるあの人を見ても、心がそこまで痛みません。

 ……ボクは、気持ちを全部ぶつけました。
 そして、あの人は何も言わず、聞いてくれた。受け止めてくれた……きっとそうだと思います。


14 : ◆MhRo2YnWE.V/ 2016/09/27(火) 01:33:40.83 ID:/I9Sf5H+o
 あの人の中には、ボクの全部が在るはずです。
 みっともなくて、カワイくない……ボクと。
 ずっと、あの人と一緒に歩いてきた、カワイイボクが。

 だから……。きっと、さびしいだけじゃありませんよね。
 ……ね、そうですよね……?

 こうして、ボクの一生に一度の恋は終わりました。
 重たいですか? でも、本気だったから。仕方ないですよね。
 ……本気だったんだもん……。

 ボクの目から、また涙がこぼれます。


15 : ◆MhRo2YnWE.V/ 2016/09/27(火) 01:34:43.43 ID:/I9Sf5H+o

 でも、ボクは笑顔が一番カワイイから。……そう、貴方が言ってくれた事を覚えているから。
 涙を流しながら、けど、笑ってあなたを見送ります。

 ご結婚、おめでとうございます。
 ……私の、プロデューサー。


おわり


元スレ:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1474906696/


このエントリーをはてなブックマークに追加

 「モバマス」カテゴリの記事


Powered By 画RSS

コメントする



全ランキングを表示

Template Designed by DW99

アクセスランキング ブログパーツ ブログパーツ