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恒一「エロ本がなくなっている!」

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 14:51:23.07 ID:QwpqPnlyi


「これって…」ペラッ

「……」カァァ

パタン

キョロキョロ

「……」

ガサガサ




3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 14:52:03.57 ID:QwpqPnlyi
~早朝~

恒一宅

恒一「よしっ」

怜子「あれ、今日は私より早いのね」

恒一「え? あ、あの、友達に頼まれて、やることがあって」

怜子「そうなの?」

恒一「今日の怜子さんはちょっと遅いですね」

怜子「ふふ、仕事がね。なかなか片付かなくて、起きるの遅くなっちゃった」

恒一「え、仕事が?」

怜子「うん。ああ、でも、恒一くんが気にするような問題じゃないから」

恒一「そうですか。あ、それじゃあ、いってきます!」

怜子「いってらっしゃい」

…………。


4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 14:53:20.65 ID:QwpqPnlyi
教室

恒一「ない!?」ガタッ

恒一(ど、どうして……)

ガラッ

恒一「!」

赤沢「ん、恒一くん?」

恒一「あ、赤沢さん。――おはよう」


6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 14:54:40.23 ID:QwpqPnlyi
赤沢「おはよ。今日はずいぶん早いのね?」

恒一「うん。ちょっと……早く起きちゃって」

赤沢「そうなんだ」

恒一「赤沢さんこそ早いんだね」

赤沢「私はいつもこの時間よ」

恒一「へえ。そういえば、いつもぼくより先に教室にいるね」

赤沢「そうね」

恒一「……」

恒一(今来たみたいだし、赤沢さんは何も知らないのかな)

赤沢「どうしたの、急に深刻な顔して」

恒一「えっ……な、なんでもないよ」


7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 14:56:31.49 ID:QwpqPnlyi
恒一「えっ……な、なんでもないよ」

赤沢「そう?」

恒一「うん……」

恒一「あのさ、赤沢さん。このくらいの茶色い紙袋見なかった?」

赤沢「紙袋?」

恒一「うん。K書店の袋なんだけど、本が入っていたと思うんだ。どこかで見なかった?」

赤沢「さあ…」

恒一「そっか」

赤沢「え、本なくしちゃったの?」

恒一「まあ、そんな気がしないでもないんだけど…」


9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 14:57:26.77 ID:QwpqPnlyi
赤沢「それならそうと言いなさい。探すの手伝ってあげるから」

恒一「いやいやいや、いいんだよ、これはぼくの問題だから!」

赤沢「遠慮しないで。――で、どんな本なの?」

恒一「えぇ!?」

赤沢「?」

恒一「え、えぇっと……どんな本だったかなぁ」

赤沢「はあ?」


10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 14:58:16.24 ID:QwpqPnlyi
ガラッ

風見「あれ? 榊原くん、珍しいね」

恒一「あ、風見くん、いいところに」

風見「え?」

恒一「ぼくトイレ行ってくるねっ」ダッ

赤沢「ちょっと恒一くん!」

風見「ど、どうしてぼくに言ったの?」


11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 14:59:10.66 ID:QwpqPnlyi



ペラッ

「……」

ペラッ

「……」

(こういうのが好きなのかな?)

ペラツ

「うわ、こんな格好…」

「……できるかな?」


12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 15:00:40.03 ID:QwpqPnlyi
~休み時間1~

廊下

勅使河原「なくしただと!?」

恒一「ごめん…」

勅使河原「いや、だって、昨日渡したばっかだろ?」

恒一「それが、学校の机の中に入れてたんだけど、カバンに入れるの忘れちゃってたみたいで」

勅使河原「そういえば、机に入れてたな…」

恒一「家に帰って、晩御飯食べて、お風呂入って、いざ――ってときに」

勅使河原「気づいたと?」

恒一「うん。ちゃんとカバンに入れたと思ってたんだけどさ。
   それで、夜に学校へ行くわけにも行かなかったし、だから朝早く学校へ来たんだけど――」

恒一「なくなってた…」


15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 15:03:10.76 ID:QwpqPnlyi
勅使河原「あちゃー。やっぱ昼休みに渡したのは失敗だったな」

恒一「どうしよう?」

勅使河原「うーん……。呼び出し食らってないか?」

恒一「え?」

勅使河原「ほら、先生とかが見つけてたら、職員室に呼び出されると思うんだが」

恒一「そっか。でも、今のところないな…」

勅使河原「じゃあ、こっちからいってみるか?」

恒一「えぇ!?」


16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 15:04:57.59 ID:QwpqPnlyi
勅使河原「もし先生が見つけてたら、遅かれ早かれ呼び出されるんだ。だったらこっちから訊いてみようぜ。
      大丈夫、向こうは教師だ。ちょっと小言いわれるだけで、話を広めたりなんかしないさ」

恒一「でも、もし違ってたら騒ぎが大きくなっちゃうんじゃ…」

勅使河原「そこは適当に理由つけてどうにかしろ。お前だって早く何とかしたいだろ?」

恒一「それは……」

恒一「たしかに、早く決着をつけたい問題だね。――うん、行ってくるよ」

勅使河原「よし、じゃあ行くか。俺も職員室までついていってやる」

…………。


19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 15:06:46.67 ID:QwpqPnlyi
職員室前廊下

恒一「失礼しましたー」ピシャ

勅使河原「どうだった?」

恒一「違ったみたい」

勅使河原「そうか…」

恒一「ちょっとホッとしたけどね」

勅使河原「だがそうなると、これは誰かに盗まれたと考えるべきかもしれないな」

恒一「そうだね」

勅使河原「クラスで騒ぎになっている様子もないしな…」

恒一「あ、まさか、これも現象だったりして」

勅使河原「そんなわけあるか」

恒一「途中から社会的な死に変更されたとか…」

勅使河原「ねーよ。仮にそうだったとしても、まだ死んでないだろ」

キーンコーンカーン


20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 15:09:08.24 ID:QwpqPnlyi



店員「いらっしゃいませー」

トコトコ…

「……」キョロキョロ

(あ、これがいいかも)

ゴソゴソ

「……うん、大丈夫」

(それと……)

…………。

店員「ありがとうございましたー」


21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 15:11:14.23 ID:QwpqPnlyi
~休み時間2~

廊下

勅使河原「さて、それじゃあ作戦会議といこう」キリッ

恒一「勅使河原、いつになく真剣だけど……どうして」

勅使河原「俺もその本が気に入ってたからだ!」

恒一「……そうだね」

恒一(そうだ。ぼくだって、昨日はあんなにワクワクして帰った。
   あの本はそれくらい、なんというか……蟲惑的だった。だから――)

恒一「絶対取り戻そう!」

勅使河原「おう! ――って、お前がなくしたんだけどな」

恒一「ははは…」

赤沢「なにを?」

勅使河原「なにって――」


24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 15:13:25.52 ID:QwpqPnlyi
赤沢「…」

勅使河原「……」

恒一「……」

赤沢「……」

勅使河原(サカキ)チラッ

恒一(――うん)コクッ

恒一&勅使河原((逃げよう!))クルッ

鳴「…」

恒一&勅使河原「「!?」」

鳴「――何をなくしたの?」


26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 15:15:22.57 ID:QwpqPnlyi
…………。

赤沢「なるほど。つまり、恒一くんの参考書が誰かに盗まれたかもしれないのね?」

恒一「そ、そうなんだよ」

勅使河原「酷い奴がいたもんだ」

赤沢「ふーん。それで……何で勅使河原が一緒になって張り切ってるの?」

勅使河原「お、俺はただ、友達が困ってるから助けなきゃ、って」

赤沢「へえぇ?」ジトー

恒一「う…」

勅使河原「な、なんだよ?」

赤沢「……ま、いいわ。せっかくだから私も協力してあげる」

恒一「あ、ありがとう…」

勅使河原「はぁ…」


28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 15:17:56.83 ID:QwpqPnlyi
鳴「何の参考書なの?」

恒一「え゛?」

鳴「なくした本」

恒一「あ…ああ、そうだね。――ええっと……エイゴダヨ?」

鳴「――ふうん」

赤沢「じゃあ、どうする? 持ち物検査でもしてみましょうか」

勅使河原「い、いや、その必要はないって」

赤沢「どうして?」

恒一「なくなったのは、たぶん昨日の放課後だと思うんだ」

鳴「どうしてわかるの?」


31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 15:20:35.84 ID:QwpqPnlyi
恒一「ぼく、今日はクラスで一番早く学校にきたんだよ。それは赤沢さんも知ってるよね?」

赤沢「そういえば、そうだったわね」

恒一「だから、なくなったのは昨日の放課後で間違いないと思うんだ。
   その参考書は昼休みに、友だちに貸していたのを返してもらったばかりだったんだよ」

勅使河原(その設定でいくのか)

赤沢「なるほど。恒一くんの手に戻ってきたのは昼休みなのね」

恒一「そういうこと」

勅使河原「昨日の放課後ねぇ。俺はすぐ帰っちまったからなあ」

恒一「ぼくもだよ」

鳴「私も」

赤沢「私はすぐに部室に行った」


34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 15:24:14.09 ID:QwpqPnlyi
勅使河原「どうやら、誰も情報を持ってないみたいだな…」

恒一「もう、こうなったら、みんなに訊いて回ろうか」

勅使河原「――だな。こうなっちまった以上は、ある程度ひらきなおった方がいいな」

赤沢「『ひらきなおる』?」

勅使河原「き、気にすんなって!」

恒一「そ、それより二人とも、もし見つけたらすぐに…すぐに知らせてね!」

鳴「うん」

赤沢「……わかった」

キーンコーンカーン

恒一「じ、じゃあ、次の休み時間から手分けして聞き込みだね」


35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 15:26:54.54 ID:QwpqPnlyi



カシャッ

「……」

カシャッ

「……」

カシャッ

「うーん…」

(ちょっとだけ)ススッ

「っ…」

カシャッ


37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 15:28:21.65 ID:QwpqPnlyi
~休み時間3~

教室

恒一「じゃあ始めようか」

勅使河原「そういえば、なんて訊けばいいんだ?」

鳴「『昨日の放課後、榊原くんの机を漁っている人を見なかった?』で、いいんじゃない?」

恒一「ストレートだね。でも、それでいいかな」

赤沢「それと、最後まで教室に残ってた人も探しておいたほうがいいわ」

勅使河原「よし、わかった。じゃあ行ってくるか」


38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 15:30:38.76 ID:QwpqPnlyi
…………。

望月「そんな人は見なかったなぁ」

恒一「じゃあ、最後まで教室に残ってた人は?」

望月「それもわからないよ。ぼくはすぐに部室に行っちゃったし、部活が終わった後はそのまま帰っちゃったから」

恒一「そうか。――わかった、ありがとう」

望月「うん……あ、そういえば」

恒一「え?」


40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 15:31:57.33 ID:QwpqPnlyi
望月「昨日の6時間目なんだけど、視聴覚室に移動だったじゃない? そのときなんだけど――」

望月「見崎さんが榊原くんの机にぶつかって盛大に転んでたよ」

恒一「……」

望月「そのときは、ぼくと見崎さんしか教室に残っていなくてさ、手を貸そうかと思ったんだけど、
   頑なに『大丈夫だから、先に行って』って、そのまま一人で机から出ちゃった教科書とかノートを片付けてた」

恒一「そんなことが…」

恒一(6時間目、見崎が…?)


42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 15:35:38.50 ID:QwpqPnlyi
…………。

勅使河原「――で、誰かがサカキの机を漁ってた、っていう目撃情報は得られなかったな」

恒一「そうだね。あとは教室に最後まで残ってた人だけど、
   これは見崎と赤沢さんの結果を総合して考えたほうがいいね」

勅使河原「ああ。……けど、まさかこんなことになるなんてな」

恒一「ごめん。ぼくの不注意で…」

勅使河原「まあ、仕方ないさ」

勅使河原「――だが、あの本はぜひとも取り戻したい。サカキだってそうだろ?」ヒソヒソ

恒一「もちろんだよ。ぼくはまだじっくり見てないんだ」ヒソヒソ

勅使河原「見つかるかどうかわからんが、やれるだけやってみようぜ」

恒一「うん」


43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 15:38:04.39 ID:QwpqPnlyi
恒一「あ、そうだ。望月から訊いたんだけど……」

勅使河原「どうした?」

恒一「ひょっとしたら、盗まれたのは放課後じゃなくて――」

赤沢「何を二人でコソコソしてるの」

恒一「!」

勅使河原「!」

赤沢「なに話してたの?」


44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 15:39:36.90 ID:QwpqPnlyi
勅使河原「その……ちょ、ちょっとな。ほら、明日って休みだろ? だから一緒にどっか行かないかって…な?」

恒一「そ、そうなんだよ。赤沢さんもどうかなって、ね?」

赤沢「行く」

勅使河原「そ…そうか? じゃあ、明日の午後にイノヤで待ち合わせな。せっかくだから望月も呼ぼうぜ」

鳴「私も」

恒一「あ、見崎。お帰り」

鳴「ただいま」


45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 15:40:25.12 ID:QwpqPnlyi
勅使河原「おお、珍しいな。じゃあ、見崎も明日な?」

鳴「うん」

恒一「それはそうと、二人とも訊き終わったの?」

赤沢「ええ」

鳴「おわったよ」

恒一「そっか。じゃあ――」

キーンコーンカーン

恒一「昼休みにね」


49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 15:47:31.76 ID:QwpqPnlyi



「お願いします」

(うまく出来たと思うけど…)

「……ふふ」

(ちょっと、楽しみかな)


50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 15:48:51.53 ID:QwpqPnlyi
~昼休み~

屋上

勅使河原「聞き込みの結果、サカキの机を漁ってた奴はいなかったみたいだな」

赤沢「そうね。そして話をまとめると、最後まで教室に残っていたのは佐藤さんと有田さんね」

恒一「もちろん、二人が帰ったあとに教室に誰かがまた入った、という可能性は考えられるけど」

鳴「他人の机を漁るなんてあまり見られたくない行為だし、その可能性の方が高いかもね」

恒一「そうなんだよね。――でも、とりあえず佐藤さんと有田さんに詳しい話を訊いてみよう」

恒一(もし二人が犯人だった場合、ぼくが訊けば、正直に答えてくれなくても、何らかの反応があるかもしれない)

恒一(……拒否反応とか)


51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 15:50:55.85 ID:QwpqPnlyi
赤沢「じゃあ、行きましょうか」

恒一「え? ああ…その……ぼく一人で充分だよ。三人はそのまま食べてて」

赤沢「……そう」

勅使河原「そういえば、俺も教室に用があったな。俺も行く」

恒一「じゃあ、二人はそのまま食べてていいよ。行ってくるね」

鳴「いってらっしゃい」

恒一「いってきます」

トコトコ

ガチャ

バタン

鳴「……」

赤沢「……」


53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 15:56:40.79 ID:QwpqPnlyi
教室

佐藤「確かに私たちで最後だったと思うけど…」

恒一「帰る途中で同じクラスの人に会わなかった?」

有田「誰にも会わなかったよ」

恒一「そっか…」

恒一「それじゃあ、このくらいの紙袋見なかった? K書店の茶色い紙袋なんだけど」


54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 15:58:05.24 ID:QwpqPnlyi
有田「ああ、それなら――」

恒一「有田さん知ってるの?」

有田「昨日の放課後、榊原くんが持ってたじゃん」

恒一「ああ…うん、それを探してるんだ」

有田「あ、そうだったの」

佐藤「うーん…」

恒一「佐藤さんどうしたの?」

佐藤「その袋、今さっき見たような気が…」

恒一「え?」

佐藤「うぅん……ごめん、やっぱり思い出せない。気のせいだったかも」

恒一「そう…」

恒一(まあ、昨日じゃないなら関係ないのかな?)

…………。


55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 15:59:31.39 ID:QwpqPnlyi
廊下

勅使河原「どうだった?」

恒一「ダメだね。あの様子じゃ、本当に何も知らないみたいだ」スタスタ…

勅使河原「そうか…」スタスタ…

恒一「そっちの用事は?」

勅使河原「無事に終わったよ」

恒一「そう。それにしても、ホントどこいったんだろ?」

勅使河原「……なあ、本当に机に入れっぱなしにしてたのか?」

恒一「カバンに入ってなかった以上はそうなるね」

勅使河原「見つからなかったら、一応、家の中も確認しとけよ?」

恒一「そうするよ」ガチャッ


57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 16:00:34.59 ID:QwpqPnlyi
屋上

鳴「おかえり」

赤沢「おかえりなさい」

恒一「ただいま」

鳴「…」

赤沢「…」

勅使河原「……俺には?」


59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 16:02:20.87 ID:QwpqPnlyi



「……」

「なかなか…」

サッ

「あ、これ」

「……」

「うぅ…」カァァ

「……サービスです」


60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 16:03:28.24 ID:QwpqPnlyi
~休み時間5~

教室

勅使河原「お手上げだな」

恒一「はぁ…」

勅使河原「盗まれたとしたら、やっぱりそいつは男だよな?」

恒一「そうだろうね。もし女子がそんなもの見つけてたら…」

勅使河原「お前、今頃終わってるもんな」

恒一「……そうだね」

恒一「……」

恒一「あ、そうだ」

勅使河原「どうした?」

恒一「望月から聞いたんだけど……」


61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 16:06:14.28 ID:QwpqPnlyi
…………。

勅使河原「鳴ちゃんがお前の机をひっくり返しただと?」

恒一「うん。もしかしたら放課後じゃなくて、そのとき見崎が……」

勅使河原「どうして鳴ちゃんが?」

恒一「それはぼくにだってわからないけど…」

勅使河原「じゃあなにか、鳴ちゃんは俺たちがこんなに必死になっているにも関わらず、
      何食わぬ顔で一緒になって、見つかるはずのない本を探しているってことか?」

勅使河原「せめてお前にくらい、こっそり教えてやってもよさそうなものだと思うんだが…」

恒一「そうだね。でも、ぼくたちは見崎に、英語の参考書を探してるって説明したよね?」

恒一「だから、本当にぼくたちが参考書を探しているのだと思っているのかも」

勅使河原「そういや、そうだったな。なるほど……」


63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 16:11:25.10 ID:QwpqPnlyi
勅使河原「よし、サカキ、訊いてこい」

恒一「えっ、ど、どうやって?」

勅使河原「そのままだよ。さりげなく『ぼくのエロ本しらないかな?』って爽やかに」

恒一「変態じゃないか!」

勅使河原「本を見られた時点で、すでに鳴ちゃんのお前に対する印象は変わっちまってる。いまさら――」

恒一「もし見崎じゃなかったら?」

勅使河原「……」

恒一「……」

恒一「ちょっとトイレ行ってくる」ガタッ

勅使河原「おう。じっくり考えてこい」


64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 16:20:09.75 ID:QwpqPnlyi
廊下

スタスタ…

恒一「はぁ…」

恒一(やっぱり、見崎なのか?)

恒一(もし、そうだったとしたらぼくは――)

小椋「榊原くん」

恒一「ん? 小椋さん」

小椋「どうしたの、難しい顔しながら歩いて? ちょっと怖いんだけど」クスッ

恒一「え? あはは…。ちょっとね、なくし物しちゃって」

小椋「へえ。それって、休み時間にみんなにいろいろ訊きまわってたことと関係ある?」

恒一「う、うん。まあ……」


65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 16:21:44.66 ID:QwpqPnlyi
恒一「実は盗まれた可能性があって」

小椋「うわ、そうなんだ」

恒一「まだ見つからなくてさ。どうしたものかなって」

小椋「そっか。――それで、何なくしたの?」

恒一「エ……ええっと……本、なんだけど」

小椋「本?」

恒一「このくらいのサイズの――K書店の茶色い紙袋に入れてたんだけどね」

小椋「え、それって――」

恒一「盗まれたとしたら、昨日の放課後だと思うんだけど」

小椋「ああ、そうなんだ。じゃあ違うか…」

恒一「ん、違うって?」


66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 16:22:57.40 ID:QwpqPnlyi
小椋「いや、昼休みに望月くんがそれっぽい袋持ってたかなぁ、って」

恒一「望月が?」

小椋「うん。まあ、ちらっと見えただけだったから、気のせいかもしれないんだけど」

小椋「それに、盗まれたのって昨日の放課後なんでしょ?」

恒一「そうだけど(望月か…)」

恒一「でも、ありがとう小椋さん」

小椋「どういたしまして」ニコッ


69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 16:36:58.90 ID:eKJd+RAci



パラパラパラ…

「ふう、こんなものかな?」

ガサガサ

「あとは……」

カキカキ…

「これで、よし」


70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 16:38:05.13 ID:eKJd+RAci
~HR前~

教室

勅使河原「も、望月が?」

恒一「小椋さんが見た、って。まあ、今日の話なんだけど」

勅使河原「じゃあ違うだろ?」

恒一「でも一応――」

勅使河原「必要ないって。そもそも、その店の袋って別に珍しいものでもないだろ?」

恒一「念のためだよ。幸い今は望月もいないし、確認するなら今が――」

赤沢「望月くんが?」

勅使河原「げっ」

恒一「赤沢さん…」


71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 16:40:03.00 ID:eKJd+RAci
ガタッ

赤沢「んー?」

勅使河原「お、おい、なに勝手に他人の机の中見てんだよ!」

恒一「あ、赤沢さん、やめようよ!」

赤沢「なによ、恒一くんだって確かめようとしてたんでしょ?」

恒一「そ、そうだけど…」

恒一(もし本当に望月が犯人だったら――)

赤沢「あ、コレじゃない?」カサッ


72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 16:42:06.87 ID:eKJd+RAci
恒一「!」

勅使河原「!」

赤沢「中を確認しましょう」ガサガサ

勅使河原「よ、よせ赤沢!」

恒一「待って赤沢さん!」

赤沢「え?」バサッ

恒一「……」

勅使河原「……」

シーン…

赤沢「――きゃっ!」

勅使河原「あ…あぁ……ぶちまけやがった」


73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 16:43:42.31 ID:eKJd+RAci
恒一(何てことだ……)

恒一「って、あれ? (女教師もの?)」

赤沢「こ、恒一くんが探してた本って……」

赤沢「まさか、コレ?」カァァ

恒一「違うけど…」

ガラッ

恒一「あ」

望月「え? ――ちょ、ちょっと何やってるの!?」ダッ

恒一「望月…」

望月「ち、違うんだよ榊原くん! みんな!」


75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 16:44:25.26 ID:eKJd+RAci
恒一「違うって?」

望月「こ……こ、こ、コレは勅使河原くんから貸してもらった本で――!」

勅使河原「おい望月!」

三神「二人とも」

望月&勅使河原「「あ…」」

三神「ちょっと、職員室までいいかしら?」


77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 16:47:57.75 ID:I2XkIIBP0
ワロタ


78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 16:51:24.51 ID:QH/agoPi0
望月きゅん…


79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 16:53:26.78 ID:eKJd+RAci
~放課後~

恒一「なるほど、アレは今日の昼休みに勅使河原が望月に貸した本だったのか。――用事って、このことだったんだね」

勅使河原「そういうことだ…」

勅使河原「ああ、もう昼休みに貸すのはやめだ。いや、そもそもお前らが最初からカバンにしまっていれば…」

望月「あぁ…三神先生に嫌われただろうなぁ」

恒一「元気だしなよ、少年」

望月「うう…」

勅使河原「なぜかサカキだけ無事だよな?」

恒一「そ、そうだね。結局、ぼくの方は何も解決していないわけだし」

恒一(でも、一歩間違えたらぼくがこの二人のように…)


80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 16:54:48.57 ID:eKJd+RAci
勅使河原「あ、そうだ、望月。明日の午後って空いてるか?」

望月「え? うん。大丈夫だけど」

勅使河原「そうか。実は明日、俺とサカキと赤沢と見崎でどっか行くことになったからさ、
      お前も来いよ。待ち合わせ場所はイノヤにしてあるから」

望月「……そうだね、気分転換になるかな」


82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 17:04:33.54 ID:eKJd+RAci



ゴソゴソ

「これでよし…」

「ふふ、どんな反応するかな?」

スタスタ…


83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 17:05:44.64 ID:eKJd+RAci
~翌日・午後~

イノヤ

望月「はあぁ…」

勅使河原「いつまで落ち込んでんだよ?」

望月「だってぇ」

恒一「ははは…」

勅使河原「まったく……」

勅使河原「そうえいば、結局サカキに貸した本って見つからなかったな」

恒一「ごめん。家の中も探したんだけど…」

勅使河原「いや、もう諦めた。その代わり、本の代金分おごって貰うからな?」

恒一「勅使河原…。ありがとう」

勅使河原「気にすんなよ」ニッ


84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 17:06:37.10 ID:eKJd+RAci
赤沢「ん? 三人とも早いのね」

勅使河原「お、赤沢と見崎もきたか」

鳴「うん」チラッ

恒一「?」

恒一(……あれ?)

勅使河原「あれ?」

恒一「っ、ど、どうしたの?」

勅使河原「いや、鳴ちゃんのあの服、どっかで見たような気がしてさ」ヒソヒソ

恒一「あ、実はぼくもなんだ」ヒソヒソ

恒一(特に変わった格好でもないし、よく似合ってると思うんだけど……)


85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 17:07:50.17 ID:eKJd+RAci
鳴「はい、榊原くん」カサッ

恒一「え? あ、この紙袋って」

鳴「榊原くんがなくした本とは違うけど、私なりに選んでみたの」

赤沢「くっ…気が利くわね」

恒一「そ、そんな、悪いよ」

鳴「受け取って」

恒一「見崎……」

恒一(すごく心が痛い!)

鳴「榊原くんのために選んだから、ね?」


86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 17:08:58.85 ID:eKJd+RAci
恒一「……わかった。でも、ちゃんとお金は払うよ」

鳴「別にいいのに」

恒一「払うって。いくらかな?」カサカサ

恒一「!?」

ガサッ!

勅使河原「ど、どうした?」

望月「そんなに乱暴にしまったら袋破けちゃうよ?」

恒一「そう……だね」ダラダラ

赤沢「大丈夫? すごい汗だけど」

恒一「うん、大丈夫だよ…」


89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 17:10:41.04 ID:eKJd+RAci
恒一(なんだよ見崎……『眼帯美少女特集 Vol.666』って!?)チラッ

鳴「……」ジー

恒一「み、見崎…?」

鳴「――えっち」

恒一「」バッ

赤沢「こ、恒一くん?」

勅使河原「どうした、突っ伏して?」

望月「大丈夫?」

恒一(……思い出したよ勅使河原。今、見崎が着ている服――)

恒一(脱げかけてこそいないけど、あの本の表紙にそっくりなんだ…)


91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 17:13:00.06 ID:eKJd+RAci
~移動中~

トコトコ…

恒一「それで――結局、あの本を盗んだのは見崎だったの?」コソコソ

鳴「立ち直ったんだ」

恒一「まあね」

恒一「正直に言っちゃうと、アレは勅使河原から借りたものだからさ。できることなら返したいんだ」

鳴「そうだったんだ」


94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 17:14:05.42 ID:eKJd+RAci
恒一「それで、どうなの? 返してくれる?」

鳴「私じゃない」

恒一「え?」

鳴「私はちょっと……不幸な事故があって、偶然あの本を見てしまっただけ」

恒一「派手に転んだんだよね?」

鳴「……誰から聞いたの?」

恒一「望月」

鳴「――そう」


95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 17:15:29.09 ID:eKJd+RAci
恒一「それで、その後どうしたの?」

鳴「それだけ」

恒一「それだけって…」

鳴「机から飛び出た教科書とノートとあの本をしまってから、視聴覚室に行ったの。
  でも聞いてのとおり、転んだところを望月君に見られちゃって――」

鳴「手を貸そうとしてくれたんだけど、榊原くんの本が見えちゃってたから」

恒一「気を使ってくれたの?」

鳴「ああいう本って、あまり他人に見られたくないでしょ?」

恒一「見崎…」ジーン

鳴「本当は焼却炉に持って行きたかったけど」ボソッ

恒一「へ?」

鳴「とにかく、私が知っているのはここまで。6時間目が始まる前までは、確かにあの本は机の中にあったよ」


96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 17:16:36.23 ID:eKJd+RAci
恒一「そっか」

恒一「……ところで、見崎はぼくたちが、本当は何を探していたのか知ってたの?」

鳴「知ってたよ」

鳴「――勅使河原くんも必死になってる時点で、ね」クスッ

恒一「最初からじゃないか…」

鳴「ふふっ」

恒一「はあ…」

恒一(じゃあ、あの本はいったい…?)


97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 17:18:06.75 ID:eKJd+RAci
~夜~

恒一の部屋

恒一「さて、宿題でもやっておこうかな」ゴソゴソ

カサッ

恒一「ん?」ガサゴソ

恒一「……こ、これって」ガサガサ!

恒一「あっ、やっぱり、勅使河原から借りた本だ!」

恒一(ずっとカバンに入ってたのか? いや、そんなはずは…)

カサッ

恒一(あれ、まだ何か入ってる)ガサガサ

恒一(なんだ? 写真と……メモ?)ヒョイ


98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 17:19:13.95 ID:eKJd+RAci
恒一「……」

恒一「……」

恒一「何てことだ…」

――……なあ、本当に机に入れっぱなしにしてたのか?

恒一(違う。たぶん持ち帰った)

――昨日の放課後、榊原くんが持ってたじゃん。

恒一(いや、放課後、確かにカバンにしまったんだ。だから、本がなくなったのは学校じゃなくて…)

――ふふ、仕事がね。なかなか片付かなくて、起きるの遅くなっちゃった。

恒一「……こんなことしてるから」カサッ

『思春期なのはわかるけど、ほどほどに。あと、この写真も使っていいよ?』

恒一「――怜子さん」


99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 17:20:09.46 ID:eKJd+RAci
結局、あの本は戻ってきてくれた。
それどころか、鳴から新しい本をもらい、怜子さんのコスプレ写真(かなりきわどい)も十数枚手に入れた。
だけど、ぼくは何かを失った気がする。

恒一「写真のほうが捗りそうだなぁ」



おわり


101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 17:21:11.74 ID:+3bQ6ZU20
乙!


102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 17:22:27.03 ID:dZcG/YwZO
この展開は予想外


105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/15(木) 17:47:57.13 ID:i8zZmM4IP
おつつつ
怜子さんの写真なら捗るな


Another 0巻 オリジナルアニメDVD同梱版 (カドカワコミックスAエース)
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