スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
魔王「そうだ、死んだフリをしよう!」
- 1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 20:45:21.87 ID:dW1IXFSt0
- 魔王城──
魔王は五人の幹部を集め、朝礼を開いていた。
魔王「~であるからして、魔族とはかくあるべきであって……」
赤幹部「ぐう……」スヤスヤ
青幹部「話なげぇ」ボソッ
桃幹部「ふんふ~ん♪」ヌリヌリ
緑幹部「………」ボケーッ
黄幹部「うまい、うまい」ガツガツ
魔王「………」
- 2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 20:46:59.36 ID:gED911zE0
- スーパー戦隊かよ
- 4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 20:48:12.04 ID:dW1IXFSt0
- 魔王「キサマらぁ!」
五幹部「!」ビクッ
魔王「おい赤幹部、キサマ今寝てただろう!」
赤幹部「ま、まさか! バッチリ起きてましたッス!」
魔王「じゃあワシがなんの話をしてたのかいってみろ!」
赤幹部「えぇと……天井のシミが勇者に見えて怖かったって話でしたッスよね!?」
魔王「全然違う!」 - 6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 20:51:33.50 ID:dW1IXFSt0
- 魔王「次に青幹部!」
青幹部「はい?」
魔王「お前、話が長いと漏らしていただろう!」
青幹部「事実じゃないですか」
魔王「なにっ!?」
青幹部「朝っぱらから魔族がどーたらこーたら……」
青幹部「時間がもったいないですよ」
青幹部「魔族がどうあるべきか説くのも結構ですけど」
青幹部「どうせなら、長話じゃなく行動で示して下さいよ」
魔王「ぐうっ……!」 - 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 20:54:24.72 ID:dW1IXFSt0
- 魔王「桃幹部!」
桃幹部「なんでしょ~?」ヌリヌリ
魔王「人が話をしてるのに、化粧なんかするな!」
桃幹部「だってぇ、化粧は女のたしなみですよぉ?」ヌリヌリ
桃幹部「魔王様のお話って長いから、絶好の化粧タイムなんですよねぇ~」ヌリヌリ
桃幹部「あ、魔王様も口紅塗ります? アハッ♪」
魔王「……もういい!」 - 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 20:57:32.09 ID:dW1IXFSt0
- 魔王「緑幹部!」
緑幹部「………」ボーッ
魔王「緑幹部ッ!」
緑幹部「……はい」
魔王「なにをボケーッとしておるか!」
緑幹部「低血圧なもので……」
魔王「はぁ……」 - 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 21:03:30.35 ID:dW1IXFSt0
- 魔王「最後に黄幹部!」
黄幹部「はい」ムシャムシャ
魔王「ワシが話しているんだぞ! カレーを食うのを止めろ!」
黄幹部「すいません……」ムシャムシャ
黄幹部「でもお腹がすいてて……朝食べてなかったんですよ」ムシャムシャ
黄幹部「あ~美味しい」ムシャムシャ
魔王「くっ……」 - 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 21:10:04.60 ID:dW1IXFSt0
- 魔王「──とにかく! 我々は魔族繁栄のために人間どもを滅ぼさねばならん!」
魔王「このために今やるべきことは、人間どもの国々への侵攻と」
魔王「予言によると近年現れるという、勇者を打倒することだ!」
魔王「各軍団、目的に向けて全力を尽くしてもらいたい!」
赤幹部「オスッ!」
青幹部「具体的な作戦はナシか、くだらねぇ……」ボソッ
桃幹部「今日は何を着ようかな~」
緑幹部「………」ボケーッ
黄幹部「おかわり!」 - 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 21:16:14.37 ID:dW1IXFSt0
- 魔王「──なんなんだ、あいつらはっ!」
側近「ま、魔王様、落ち着いて──」
魔王「これが落ち着いていられるか!」
魔王「ワシが一生懸命訓示を述べているというのに」
魔王「寝てるわ、陰口叩くわ、化粧するわ、ボケッとしてるわ、モノを食うわ!」
魔王「ふざけるのも大概にしろ!」
側近(お怒りはごもっともだが、話が長いのもたしかなんだよな……)
側近(私も正直寝そうだったし……)
側近(さすがに朝っぱらから一時間の訓示は長すぎる……) - 17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 21:22:30.49 ID:dW1IXFSt0
- 魔王「くそう、どうにかヤツらにワシの威厳を示さねば……!」
側近「大丈夫ですよ、魔王様」
側近「なんだかんだいっても、魔族を治められる器を持つのはあなただけです」
側近「彼らも心の中では魔王様を尊敬してると思いますよ」
側近(……多分)
魔王「う~む、しかしなぁ……」
側近「病気になって初めて健康の大切さが分かる、といいますしね」
側近「彼らも魔王様がいるという状況が当たり前になりすぎていて」
側近「魔王様のありがたみ、みたいなものが分かっていないんでしょう」
側近(……多分) - 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 21:28:54.22 ID:dW1IXFSt0
- 魔王「それだ」
側近「え……?」
魔王「それだよ!」
魔王「ヤツら、ワシのありがたみを分かっておらんのだ!」
魔王「ワシがいなくなれば、きっと悲しむし、指揮系統が崩壊したりして」
魔王「ワシのありがたみを思い出すハズ!」
側近(なんだかおかしな話になってきたぞ……) - 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 21:35:09.40 ID:dW1IXFSt0
- 側近「じゃあ、どうされますか?」
側近「しばらく休暇を取って、どこかで静養なされますか?」
側近「たまにはのんびりするのもいいと思いますよ(私ものんびりできるし)」
魔王「……いや」
魔王「しばらくいなくなるだけ、では意味がなかろう」
魔王「本当にいなくならなければ意味がない」
側近「といっても、本当にいなくなられたらそれはそれで困りますよ」 - 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 21:42:43.19 ID:dW1IXFSt0
- 魔王「そうだな。それに魔王が失踪というのも、どうにも情けない」
魔王「なにかいい方法はないものか……」
側近「ありませんよ、そんなの」
側近「威厳を取り戻したいのなら、もっといい方法がいくらでもあると思いますよ」
魔王「………」ハッ
魔王「いや……あるぞ。一つだけあるぞ!」
魔王「そうだ、死んだフリをしよう!」
側近「えぇっ!?」 - 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 21:46:47.46 ID:dW1IXFSt0
- 側近「死んだフリ……ですか」
魔王「うむ」
魔王「体を動けなくするが、本人の意識は残るって魔法があったろう」
側近「ありますね」
魔王「あれで、ワシは死んだフリをする!」
魔王「ワシが死んだら、きっとヤツらは悲しみ、嘆くだろう」
魔王「そしてワシは満を持して復活を遂げる……!」
魔王「ヤツらは泣いて喜び、ワシの威厳も元通りというわけだ!」
魔王「ガーッハッハッハ……!」
側近「はぁ」 - 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 21:49:54.57 ID:dW1IXFSt0
- 側近「しかし、死因はどういたします?」
側近「病死……とかにしますか?」
魔王「う~ん、インパクトに欠けるな」
魔王「暗殺された、というのはどうだ?」
側近「誰にですか?」
魔王「お前に」
側近「イヤですよ! 悪役じゃないですか!」
側近「事件後の関係者へのインタビューで、部下に」
側近「“あの人は、いつかやると思ってました”」
側近「とか、いわれたくないですよ!」
側近「ヘタすりゃその場で私が部下たちに殺されますよ」
魔王「だったら……勇者に暗殺されたことにしよう」 - 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 21:53:43.99 ID:dW1IXFSt0
- 側近「勇者はまだ現れてないはずですが?」
魔王「いやだから、実は予言より勇者は早く生まれていて」
魔王「城に忍び込んで、ワシを不意打ちでグサッとやったということにするんだよ」
魔王「自分たちの大将がいきなり死亡、なかなかショッキングじゃないか」
側近「う~ん、けっこう無理があるような……」
側近「持病である水虫で死んだことにした方がいいのでは?」
魔王「絶対イヤだ!」 - 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 21:56:18.82 ID:dW1IXFSt0
- 側近「じゃあ魔王様、棺に入って下さい」
魔王「うむ」ゴソゴソ
側近「じゃあ、硬直魔法をかけますよ」
側近「これ以降はテレパシーで会話をしましょう」
側近「“レマタカ”」
魔王(おおっ、ワシの体が固まった!)カチーン
側近『私の魔法くらい、魔王様ならいつでも解除できるはずです』
側近『程々に部下たちの反応を楽しんだら、復活して下さいよ』
魔王『うむ』 - 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 21:59:14.18 ID:dW1IXFSt0
- 夕方、衝撃的なニュースが城中を駆け巡った。
ザワザワ…
「魔王様が殺されたって!」 「誰に!?」 「勇者に暗殺されたらしいぞ!」
「マジかよ!」 「幹部が緊急招集されたそうだ!」 「魔王軍はどうなるんだ!?」
ドヨドヨ…
側近(大騒ぎになってるな……当たり前だけど)
魔王(ふふふ、ワシのありがたみを思い知るがいい)
側近(さてと、そろそろこの部屋に五幹部がやってくるはずだが)
バンッ!
黄幹部「魔王様ぁっ!」
側近(一番手は魔王軍一の食いしん坊、黄幹部か) - 33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 22:05:25.94 ID:dW1IXFSt0
- 黄幹部「側近様、魔王様は!?」
側近「この……棺の中だ……」グスッ
側近「お顔を見てあげてくれ……」グスッ
側近「魔王様の悲鳴が聞こえて、部屋に駆けつけたら……すでに……」グスッ
黄幹部「勇者はどうしたんです!?」
側近「“俺が勇者だ、ざまあみろ!”と叫んで、逃げていった……」グスッ
側近「私も追いかけたが、ヤツは逃げ足が速く……くそっ」グスッ
黄幹部「そ、そんな……!」
魔王『側近、キサマなかなかの役者ではないか』
側近『遊びでも本気出すタイプですからね、私は』 - 35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 22:11:31.74 ID:dW1IXFSt0
- 棺の中で眠る魔王にすがりつく黄幹部。
黄幹部「申し訳ありませんっ!」
黄幹部「いつもいつも、食べてばかりいて……!」
黄幹部「魔王様を守れなかった罰として、これから死ぬまで絶食します!」
魔王『うわっ、こいつカレー臭いんだけど』
魔王『側近、こいつを引き離してくれ!』
側近『分かりました』
側近「おい、あまり魔王様にすがりつくな。ご遺体に傷がつくではないか」ガシッ
黄幹部「あ、すいません……!」
魔王(しかし、こんなにも涙を流してくれるとは……。嬉しいものだ) - 36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 22:15:33.05 ID:dW1IXFSt0
- 続いて、緑幹部の部下である緑魔物がやってきた。
緑魔物「失礼いたしますっ!」
側近「ん、緑幹部はどうした?」
緑魔物「は、魔王様がお亡くなりなったことを知った途端、貧血で倒れられて……」
緑魔物「私が代わりに緑軍団代表として参りました」
側近「そ、そうか……」
側近(あいつは魔力に優れてるということで幹部になったが、なにせ貧弱だからな……)
魔王(倒れるほどショックだったということか、これはこれでワシは嬉しいぞ……) - 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 22:20:12.84 ID:dW1IXFSt0
- 五幹部の紅一点、桃幹部が入ってきた。
桃幹部「魔王様っ!」ポロッ…
桃幹部「うわぁ~~~ん!」
桃幹部「魔王様、目を覚ましてよぉ~!」ボロボロ
桃幹部「最後に交わした会話が、化粧について怒られたことなんかイヤよぉ~!」ボロボロ
黄幹部のように、魔王にすがりつく桃幹部。
桃幹部「生き返ってよぉ~!」ボロボロ
桃幹部「お願いぃ~!」ボロボロ
魔王(おおっ、胸がワシの顔に当たっている……!)ムニュムニュ
魔王(た、たまらん……)ムニュムニュ - 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 22:23:57.09 ID:dW1IXFSt0
- 黄幹部「桃幹部、その辺にしておきな」
黄幹部「魔王様のご遺体に傷がついてしまうよ」
桃幹部「そ、そうね……!」グスッ
桃幹部「ごめんなさい、魔王様!」サッ
魔王(ちっ、余計なことしやがって……)
魔王(だがワシはこんなに部下に慕われていたのか)
魔王(死なないと分からないこともあるものだな)
魔王(死んだフリをしてよかった……) - 41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 22:28:15.54 ID:dW1IXFSt0
- 魔王『側近よ』
側近『はい』
魔王『次は青幹部が来るような気がする』
側近『たしかに』
魔王『アイツだけは露骨にワシを嫌っておったからな』
魔王『“こんなヤツの死体、残しておく価値もない”とかいって』
魔王『動けないワシに攻撃してこないとも限らん』
魔王『注意深く見張っていてくれ』
側近『ああ……たしかにありえますね』
側近『分かりました。棺には近づかせないようにしましょう』 - 42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 22:31:38.11 ID:dW1IXFSt0
- 予想通り、青幹部がやってきた。
青幹部「………」
側近「青幹部、お前が魔王様を快く思っていなかったことは知っている」
側近「だからといって、ご遺体を鞭打つような真似をしたら許さんぞ」
青幹部「そんなこと、しませんよ……」
側近「え?」
青幹部「なんでだぁ……」
青幹部「なんでだぁ~~~~~!」ブワッ - 45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 22:38:20.19 ID:dW1IXFSt0
- 青幹部「俺は……俺はっ……!」
青幹部「魔王様を誰よりも……誰よりも尊敬してたっ……!」
青幹部「だが、幹部がイエスマンばかりではいかんと」
青幹部「あえて嫌われようとし続けたっ……!」
青幹部「反抗的だと死罪にされてもかまわないつもりでっ……!」
青幹部「なのに結局、忠誠心を示すことをできぬまま……」
青幹部「魔王様をみすみす殺されてしまうとはっ……!」
青幹部「俺は幹部失格だ!」
青幹部「魔王様、せめてもの償いとして俺もすぐ後を追い──」
側近「バ、バカッ! おい、みんなで青幹部を止めろっ!」 - 49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 22:44:36.33 ID:dW1IXFSt0
- 青幹部「死なせてくれぇ~~~~~っ!」
黄幹部「やめるんだ!」ガシッ
桃幹部「アンタが死んでもなんにもならないでしょ!」ガシッ
側近「絶対死なせるなよ!」
側近『魔王様、もう復活された方が……!』
魔王『しかし、まだ赤幹部が来ておらんぞ』
側近『だいたいリアクションは想像つくでしょう』
側近『“魔王様、俺は悲しいッス!”って男泣きするに決まってますよ!』
魔王『たしかにアイツはそういうヤツだな』
側近『このままじゃ青幹部が自害してしまいます!』
魔王『わ、分かった。よし、では魔法を解除──』 - 50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 22:46:52.22 ID:dW1IXFSt0
- 赤幹部「やめろ」
青幹部「!」
赤幹部「下らんことをするな、青幹部」
青幹部「し、しかし……魔王様が死……」
赤幹部「お前が魔王様の後を追って、いったいなんになる?」
赤幹部「俺たち残された五幹部がやるべきことは一つ」
赤幹部「弔い合戦だ」
四幹部「!」
側近「!」
魔王(!)
赤幹部「俺は間違っていた……」 - 52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 22:49:18.24 ID:dW1IXFSt0
- 赤幹部「魔王様は魔族繁栄、勇者打倒といいつつも」
赤幹部「心のどこかで勇者とは自分自身が戦いたいと思っていたフシがあった」
赤幹部「人間をそれほどに嫌ってるようにも見えなかった」
赤幹部「だから俺は魔王様の意志を汲み、今まで人間どもの国を本気では侵攻しなかった」
赤幹部「それに合わせて俺自身、ぐうたらな幹部を演じてもいた」
赤幹部「そして手を抜いたことで俺が勇者や人間に殺されることになっても」
赤幹部「それは運命として受け入れようと覚悟していた」
側近『勇者と戦いたいって……。そうだったんですか、魔王様!』
魔王『た、たしかに魔族の長としてワシ自ら勇者と戦いたいなぁ~とは思ってた……』
側近『部下にバレバレじゃないですか!(私は気付かなかったけど)』
魔王『うっ、うるさい!』 - 53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 22:51:19.57 ID:dW1IXFSt0
- 赤幹部「だが、人間はこのたび魔王様を暗殺するという手段を取った」
赤幹部「軍を率いて正々堂々人間と戦おうとしていた魔王様を、だ」
赤幹部「俺が本気を出していれば、こんなことにはならなかったんだ」
赤幹部「………」
赤幹部「皆殺しだ……」
赤幹部「なぁみんな、薄汚い人間どもを皆殺しにしようじゃないか」
赤幹部「老若男女問わず、一匹残らず絶滅させてやろうじゃないか」
赤幹部「キングを取って、勝った気になってるであろう人間どもに」
赤幹部「俺たちはポーン一体となっても戦う、というところを見せてやろうじゃないか」 - 56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 22:54:43.41 ID:dW1IXFSt0
- 赤幹部「勇者が魔王様を暗殺したことで、ヤツらは油断しているはず」
赤幹部「行動は早い方がいい」
桃幹部「全軍を率いて攻め込むの?」
赤幹部「弱小国ならば正攻法でもよかろう」
赤幹部「だが、強国にはまず毒を使う」
赤幹部「人間どもが使う川、井戸、田畑に毒をばら撒く」
赤幹部「そして弱ったところに奇襲をかける」
赤幹部「攻める時はもちろん夜襲中心だ。俺たち魔族の方が闇に慣れているからな」
赤幹部「町でガキと女をさらって、そいつらを盾にしながら男どもを殺す」
赤幹部「もちろん、用がすんだらガキと女も殺す」
赤幹部「人間は一匹も生かしてはおかない」
魔王&側近(おいおい、こいつ本当にあの赤幹部なのか……?) - 57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 22:57:35.05 ID:dW1IXFSt0
- 赤幹部「側近様」
側近「え、なに?」ビクッ
赤幹部「取り急ぎ、代理として魔王となっていただけませんか?」
赤幹部「軍を動かすには、魔王様亡き後の魔王軍を率いるリーダーが必要です」
赤幹部「我々幹部が代理魔王では、反発の声が予想されます」
赤幹部「リーダーは最も魔王様が信頼していたあなたが相応しい」
赤幹部「側近様に異論がなければ、私が陣頭指揮を執ります」
側近「わ、分かった……任せる……」タジタジ
側近『魔王様、どうするんですか!』
魔王『ど、どうしよう……』
側近『早く復活して下さいよ! 話がどんどんとんでもない方向に進んでますよ!』
側近『私、このままじゃ二代目魔王ですよ! どうにかして下さい!』
魔王『し、しかし……赤幹部が怖い……』
側近『怖がらないで下さい!(私も怖いけど)』 - 58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 23:00:02.88 ID:dW1IXFSt0
- 赤幹部「ただちに大広間に全軍を集めろ」
赤幹部「人間根絶作戦の始まりだ」
桃幹部「分かったわ!」
黄幹部「おう!」
青幹部「分かった、弔い合戦だ!」
赤幹部「魔族ナンバーワンの実力を持ちながら、暗殺という形で命を落とすとは……」
赤幹部「魔王様、さぞや悔しかったことでしょう……」ギリッ…
赤幹部「あなたの無念、必ずや我々が晴らしてみせます」キッ
側近『魔王様、早く復活して下さいよっ!』
魔王『……もう全部、赤幹部に任せればいいんじゃないかな』
側近『魔王様っ!』 - 64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 23:04:35.67 ID:dW1IXFSt0
- 魔王城 大広間──
赤幹部「……みんなよく集まってくれた」
オオオオオッ!
赤幹部「魔王様が人間の手で暗殺されたことは、すでに諸君らの耳にも入っていよう」
赤幹部「たしかに魔王軍にとって、魔王様を失ったことは大きな痛手である」
赤幹部「しかし、我々にはまだ新たな魔王となった側近様もおり」
赤幹部「我々幹部、そして優秀な戦士であるお前たちも残されている!」
オオオオオッ! - 65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 23:07:15.02 ID:dW1IXFSt0
- 赤幹部「戦おう!」
オオオオオッ!
赤幹部「魔王様を亡き者にした、怨敵である人間どもを根絶やしにしよう!」
赤幹部「たとえ魔王様が許そうと、俺は人間を許さん!」
赤幹部「奪え!」
赤幹部「焼け!」
赤幹部「殺し尽くせ!」
赤幹部「全ての国を滅ぼし、勇者を殺しても、戦いは終わらん!」
赤幹部「人間は一匹たりとも残しては──いや」
赤幹部「人間がいたという痕跡すら残してはならんのだ!」
赤幹部「この大地を徹底的に清めるのだ!」
オオオオオッ! - 66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 23:10:11.02 ID:dW1IXFSt0
- 赤幹部「魔族の象徴たる魔王様をむざむざ殺された俺たちは、もう死んだも同然だ」
赤幹部「死者は死を恐れぬ!」
赤幹部「魔王様を殺害し、“自分たちは生き残った”と思っている人間どもに」
赤幹部「死んだ者の恐ろしさを思い知らせてやるのだ!」
赤幹部「今後、戦略上の撤退はともかく、命を惜しんでの撤退は絶対に許さん!」
赤幹部「いいかっ!」
赤幹部「俺たちは絶対に……」
赤幹部「絶っ……対にっ……!」
赤幹部「魔王様の無念を晴らすのだ!!!」
ウオオオオオオオオオッ!
魔王&幹部(ど、どうしよう……) - 67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 23:13:27.57 ID:dW1IXFSt0
- 赤幹部「──では、側近様からも演説をお願いします」
側近「は、はい」
側近(今ここでネタバラシしたら、本当に殺されるかもしれん)
側近(しかし……このタイミングがラストチャンスだろう……)
側近(これを逃すと、本当に言い出すタイミングがなくなる)
側近(言うしかない……)
側近(打ち明けるしかない……)ゴクッ - 68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 23:17:00.64 ID:dW1IXFSt0
- 側近「え、えぇとですね……」
側近「魔王様が死んだことは大変悲しいんですが……」
側近「実はですね……魔王様は……」
側近「まっ、魔王様は……」
ザワザワ…
「なんだ?」 「なんか様子が変だぞ?」 「側近様は魔王様に長年仕えていたから……」
ガヤガヤ…
側近「い、生きてます!」
赤幹部「!?」 - 70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 23:20:34.28 ID:dW1IXFSt0
- ドヨドヨ… ガヤガヤ…
赤幹部「側近様……言っていい冗談と悪い冗談があるのですよ」ギロッ
側近「いやだから、ホントなんだって!」
側近『魔王様、起きて下さい!』
魔王『おいおい、よりによってこの場でかよ! 部下が全員いるじゃないか!』
側近『でもここで起きないと、こいつらホントに人間根絶作戦を始めますって!』
側近『あなたもそんな虐殺じみた戦争は望んでいないでしょう!』
側近『というか、まず私の命がヤバイです!』
側近『赤幹部、メッチャ睨んできてますもん!』 - 72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 23:22:17.73 ID:dW1IXFSt0
- 赤幹部「今の冗談は、いったいどういう意図があっておっしゃられたのです?」
赤幹部「俺には魔王様の死を冒涜しているようにしか聞こえませんでした」
赤幹部「返答次第では──」
側近「あ、あの、その……」
側近『魔王様っ!』
側近『助けてっ!』
魔王『ええい、分かったよ!』ガバッ - 73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 23:27:08.07 ID:dW1IXFSt0
- 魔王が棺から起き上がった。
側近(おおっ!)
赤幹部「魔王様!?」
青幹部「魔王様ぁ~~~~~っ!」
桃幹部「うそっ……!」
緑幹部「魔王様……」
黄幹部「魔王様!」
魔王「………」
赤幹部(これはどういうことだ!? 生き返られたということか!?)
赤幹部(いや、人間がご遺体を操っている可能性もある……!) - 74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 23:30:14.34 ID:dW1IXFSt0
- 魔王「……コホン」
魔王「……まぁ、アレだ」
魔王「近頃、お前たち部下のワシに対する態度が……」
魔王「あまりにも目に余るように感じたので……」
魔王「ちょっとワシのありがたみというやつをだね、うん」
魔王「再認識してもらおう、なんて思ったりして」
魔王「少しの間、いなくなってやろうと思ったわけだ」 - 75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 23:32:01.80 ID:dW1IXFSt0
- 魔王「だからワシは側近に協力してもらって」
魔王「死んだフリをして、お前らの反応を見てやろうと思ったワケだ!」
魔王「どうだ、すごいだろう!」
魔王「さすが魔族の長って感じだろう!」
魔王「なにか文句あるか!?」
魔王「文句あるヤツはかかってこい!」
魔王「ウワーッハッハッハッハ……!」
側近(あっちゃ~……) - 76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 23:35:24.73 ID:dW1IXFSt0
- 魔王(ブーイングか!?)
魔王(総スカンか!?)
魔王(リコールか!?)
魔王(袋叩きか!?)
魔王(く、来るなら来やがれ……!)
青幹部「本当に……生きておられたのですね、魔王様っ……!」ウルッ
桃幹部「魔王様ぁ~! うわぁ~ん!」ポロポロ
緑幹部「………」クラッ ドサッ
緑魔物「ああっ、喜びが大きすぎて倒れてしまった!」
黄幹部「よかった……」
「魔王様バンザーイ!」 「バンザーイ!」 「バンザーイ!」
魔王&側近(助かった……) - 77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 23:38:22.83 ID:dW1IXFSt0
- 青幹部「これまでの無礼の数々、お詫びいたします。これからは部下として絶対服従──」
魔王「いや、これからもワシに苦言をいう役目でいてくれ」
魔王「あれほどの忠誠心を持つお前には、酷な役割かもしれんが」
青幹部「いえ……やり遂げてみせます、必ず!」
桃幹部「もう化粧なんかしません……」
魔王「いや、かまわぬ」
魔王「これからもその美しさと胸を維持してくれ」ムフッ
桃幹部「んもう、魔王様のエッチ!」 - 80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 23:40:26.41 ID:dW1IXFSt0
- 緑幹部「………」ピクピク
魔王「お前はもう少し体力つけろ」
魔王「──と伝えておけ」
緑魔物「分かりましたっ!」
黄幹部「これからは食べるのを我慢します……」
魔王「バカをいうな。ガンガン食べて、力をつけ、ワシのために働け」
魔王「たまにはカレー以外のものも食べろよ」
黄幹部「はいっ! ハヤシライスも食べます!」 - 82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 23:43:16.02 ID:dW1IXFSt0
- 赤幹部「………」
魔王「赤幹部」
赤幹部「!」ドキッ
魔王「お前のことは今まで、声がでかくて力が強いだけの魔族と思っていたが」
魔王「あそこまでテキパキ動けるヤツだとは思わなかった」
魔王「なんなら、本当に魔王の座を譲ってやっても……」
赤幹部「ア~ッハッハッハ! なにをいってるんスか!」
赤幹部「全部演技ッスよ、演技!」 - 83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 23:45:09.51 ID:dW1IXFSt0
- 赤幹部「俺は魔王様の死んだフリを見抜いていたんで、演技してたんスよ!」
魔王「なんだと!?」
赤幹部「迫真の演技だったでしょ?」
魔王「あ、あぁ(正直ワシより魔王っぽかったし)」
側近(あの有能っぷりは、演技だったのか……)
青幹部(みごとに騙されたな……)
桃幹部(やられたわ……)
黄幹部(そういうことだったのか……)
緑幹部は失神中。 - 85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 23:48:39.93 ID:dW1IXFSt0
- 魔王「そういうことなら、今後も幹部として頑張ってくれ」
魔王「お前は魔王軍のムードメーカーだからな」
赤幹部「はいッス!」
魔王「さぁ、これからもワシが魔王軍の長だ」
魔王「はりきっていくぞっ!」
側近「今後ともよろしくお願いします」
赤幹部「オッス!」
青幹部「はりきっても結果が出なきゃ意味ないですけどね」
桃幹部「泣いたから化粧崩れちゃった。化粧しなきゃ」ポフポフ
黄幹部「お腹減っちゃった、ハヤシライス食べよう」ガツガツ
緑幹部は失神中。 - 87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 23:51:43.92 ID:dW1IXFSt0
- 夜になった。
赤幹部の部屋──
赤幹部「ふぅ」
赤幹部(演技ってことで、ごまかせたかな)
赤幹部(あれが本性だと知れたままだと、今後ここに居づらいからな)
赤幹部(しかしよかった、魔王様が生きておられて……)
赤幹部(やはり魔族のリーダーは魔王様でなければならない)
赤幹部(よくよく考えたら、勇者が一人で城に乗り込んで魔王様を暗殺って話が)
赤幹部(そもそもおかしかったし……あそこで気づくべきだった)
赤幹部(俺も魔王様が本当に死んだと思って、相当気が動転してたってことか)
赤幹部(しかしこれで俺も、ずっとのんきな部下でいられそうだよ) - 88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 23:55:39.01 ID:dW1IXFSt0
- 翌日の朝礼──
魔王「~というわけで、我々魔族としては……」
赤幹部「ぐぅ……」スヤスヤ
青幹部「長い割に内容がないな」ボソッ
桃幹部「ふんふ~ん♪」ヌリヌリ
緑幹部「………」ボケーッ
黄幹部「うまい、うまい」ガツガツ
魔王「キサマら、ちゃんと話を聞かないかっ!」
側近(やれやれ、ふり出しに戻る、か……)
こうして、魔王の復活によって人間界は救われたのであった──
<おわり> - 89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 23:56:46.65 ID:z/7fKs290
- 乙!
- 90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 23:58:11.12 ID:zR8Mhv89O
- 乙
- 91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/03/17(土) 23:58:33.23 ID:QljPl/MP0
- 乙乙
- 92 : 忍法帖【Lv=5,xxxP】 2012/03/18(日) 00:04:20.67 ID:FRnOrtLv0
- 乙!
おもしろかった

「勇者・魔王系」カテゴリの記事
-
- 魔王「ほぉ…これがすのぉどーむか」
- 勇者娘「魔王を倒す旅に出ます」
- 魔王「余の呪詛に蝕まれるがいい」
- 占い婆「お主が勇者との結果が出た」
- 勇者(62歳)「魔王よ。私が貴様と戦うのもこれが最後だ」
- 魔王「もうじき勇者がやって来る」大魔王&邪神「頑張れ!」
- 勇者「姫の首の後ろを手刀でトンッとやったら動かなくなった」
- 王様「そなたが伝説の勇者か……」 アメフト選手「…」
- 魔王「勇者よ、貴様ら如きはこの玉座に座ったままで十分よ」
- 魔王「最近四天王がたるんどるので、ドッキリを仕掛けることにした」
- 王「昔、四人の勇者がいた」
- 魔王「ペ○スがでか過ぎて童貞だ。」江頭2:50「おーいッ!!」
- 箱入り娘「わたしが・・・魔王に・・?」
- 僧侶「勇者様、今日も良い天気ですね」ロボ勇者「ウィーーーン」
- 姫「勇者に魅力を感じない」
コメントする
全ランキングを表示