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穂乃果「君へ」
- 1 : 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/01(火) 21:33:47.97 ID:vU4D0+M5.net
- 穂乃果「ねえ海未ちゃん」
海未「………ん?どうかしましたか?」
穂乃果「明日さ、部活休みじゃん?海未ちゃん何か予定とかある?」
海未「そうですね。特にありませんが」
穂乃果「海未ちゃん、映画とか観る方?」
海未「劇場まで足を運ぶのは、年に二、三回ですね。あとはテレビで観ます」
穂乃果「そっかー。ねえ明日さ、映画観に行かない?」
海未「いいですね。何の映画を観ますか?」
穂乃果「そうだねー。特に観たいものがあるわけじゃないんだけど…。君の名は。とかどう?」
海未「わかりました。待ち合わせはどうしますか?」
穂乃果「それは、映画の上映時間とか調べてから決めるよ。帰ったら電話するね」
海未「はい。それでは、また」
穂乃果「うん。また今夜ね」
- 2 : 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/01(火) 21:35:01.34 ID:vU4D0+M5.net
- 穂乃果(もう8時だ…。海未ちゃんいつも9時には寝てるから、早く電話しないと)
プルルルル
穂乃果「………」
ガチャ
海未『はい、園田です』
穂乃果「あ、海未ちゃん?明日のことなんだけどさ」
海未『は、はい…』
穂乃果「13時からの回を観たいから、12時に駅前で待ち合わせね。ごはん食べてから映画観よう」
海未『あ、あの…』
穂乃果「9時からの回もあったんだけど、穂乃果起きれるかわかんないからさ。たはは」
海未『………』
穂乃果「それじゃ、また明日ね!おやすみー」
プツッ - 3 : 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/01(火) 21:37:06.00 ID:vU4D0+M5.net
- 翌日の翌日
穂乃果「海未ちゃん!!!」
海未「………何ですか。騒々しいですね」
穂乃果「海未ちゃん、約束したよね?一緒に映画観に行こうって!」
海未「ええ、しました。穂乃果も約束しましたよね?帰ったら電話すると」
穂乃果「電話したじゃん!ちゃんと待ち合わせ時間と場所を言ったのにさ、結局来ないし!」
海未「え?」
穂乃果「来れないなら連絡してよ!穂乃果、映画が始まるまで、ずっと待ってたんだよ?」
海未「ちょっと待ってください。穂乃果は、電話をしたのですか?」
穂乃果「したよ。一昨日の夜、8時くらいに」
海未「8時…、まだ起きている時間ですね」
穂乃果「…ん?何の話をしてるの?」
海未「私はその日、穂乃果からの電話は受け取っていないのですが………。本当に電話をしましたか?」
穂乃果「したって!それで海未ちゃんが出たから、待ち合わせのことを伝えて…」
海未「違います。私はその電話には出ていません」 - 4 : 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/01(火) 21:38:19.33 ID:vU4D0+M5.net
- 穂乃果「…じゃあ、穂乃果が電話番号を間違えたってこと?」
海未「恐らくは」
穂乃果「でも、電話出た時に『園田です』って言ってたし、やっぱり海未ちゃんじゃないの?」
海未「身に覚えがありません。園田と名乗ったのなら、家族の誰かでしょうか」
穂乃果「でもでも、やっぱり間違いなく海未ちゃんの声だったよ」
海未「…何にせよ、家の電話の履歴を調べればわかることです」
穂乃果「そっか。じゃあ帰ったら調べてみて。絶対に穂乃果の電話番号が残ってるはずだから」
海未「ええ、わかったらすぐに連絡します」 - 5 : 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/01(火) 21:40:17.07 ID:vU4D0+M5.net
- 穂乃果(もう8時だ…。海未ちゃん、まだ連絡してこないよ)
穂乃果(帰ったらすぐに連絡するって言ったのに…。仕方ない、穂乃果から電話をかけてあげよう)
プルルルル
穂乃果「………」
ガチャ
海未『はい、園田です』
穂乃果「もしもし、海未ちゃん?もう!履歴を調べるのにいつまでかかってるのさ」
海未『え、えっと…』
穂乃果「どうせ忘れてたんでしょ?ひどいなー。穂乃果との約束を忘れるなんて」
海未『あ、あの…』
穂乃果「穂乃果が電話しなかったら、思い出しもしなかっただろうね」
海未『す、すみません…』
穂乃果「別に謝らなくていいよ。その代わり、貸しにしておくから」
海未『いや、そうじゃなくて…』
穂乃果「ん、何?」
海未『あ、あの………』
『…あなた、誰ですか?』 - 6 : 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/01(火) 21:42:14.06 ID:vU4D0+M5.net
- 翌日
穂乃果「………」
海未「おはようございます、穂乃果」
穂乃果「………」
海未「うっ…。すみません!昨日は連絡できなくて…」
穂乃果「………」
海未「実は、父が倒れたと連絡があり、ずっと病院にいたもので…。あ、父の容体は大したことなかったのですが」
穂乃果「………あ、おはよう。海未ちゃん」
海未「…やっと私のことを認識してくれましたね」
穂乃果「昨日電話したけど、海未ちゃん出た?」
海未「…先程も言いましたが、昨日はあれから、ずっと病院にいましたよ」
穂乃果「じゃあ、電話には出てないってこと?」
海未「それと、言っていたように履歴を調べてみましたが、穂乃果からの電話は履歴にありませんでした」
穂乃果「………そっか。海未ちゃんは電話に出てないんだ」
穂乃果「それじゃあ一体、穂乃果は電話で誰と話してたの…?」 - 7 : 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/01(火) 21:43:50.51 ID:vU4D0+M5.net
- 穂乃果「………」
穂乃果(穂乃果の携帯には、海未ちゃんの家に電話をかけた履歴がある)
穂乃果(この電話番号が海未ちゃん家のものだというのは、間違いない。海未ちゃんとは十年来の友だちだからね)
穂乃果(………怖いけど、電話してみよう…!)
プルルルル
穂乃果「っ………」
ガチャ
海未『………どちら様ですか?』
穂乃果「…海未ちゃん、だよね?」
海未『………誰なんですか?ここ最近、変な電話ばかりかけてきて…。警察呼びますよ!』
穂乃果「ええ!?私だよ、穂乃果。高坂穂乃果」
海未『コーサカホノカ…。知りませんね。番号間違いではないですか?』
穂乃果「そんなはずないよ。だってこの10年間、手に染み込むまで打ち込んできた番号なんだよ?」
海未『そんなの知りませんよ。もう気は済みましたか?切りますよ』
穂乃果「ちょっと待って!あなたの名前は、園田海未だよね?」
海未『………なぜあなたが私の名前を知っているかは知りませんが、私の知り合いに『大阪』という人はいません』
穂乃果「…高坂です」
海未『どちらも同じです。とにかく、もう二度と変な電話かけてこないでください!出るとこ出ますからね!』
ブツッ - 8 : 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/01(火) 21:44:50.21 ID:vU4D0+M5.net
- 翌日
海未「穂乃果、おはようございます」
穂乃果「…おはよう」
海未「今日もいい天気ですね」
穂乃果「………」
穂乃果(あの電話相手は、やっぱり海未ちゃんだった。声も、名前も)
穂乃果(でも、今ここにいる海未ちゃんとは明らかに違う、別人だ)
海未「…穂乃果?どうかしましたか」
穂乃果「え?いや、何でもないよ」
穂乃果(あの海未ちゃんは、誰なの…?) - 9 : 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/01(火) 21:45:34.92 ID:vU4D0+M5.net
- プルルルル
穂乃果「………」
プルルルル
穂乃果「………」
プルルルル
穂乃果「っ………」
ガチャ
穂乃果「!」 - 10 : 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/01(火) 21:47:02.99 ID:vU4D0+M5.net
- 海未『………』
穂乃果「あの!海未ちゃ…、園田さん宅ですよね?」
海未『………』
穂乃果「どうしても聞いておきたいことがあって…。これで電話するのは最後にするから、お願い!」
海未『………』
穂乃果「あなたの名前は園田海未。名門園田家の次女で、16歳。学校は音ノ木坂で、根っからの弓道バカ」
海未『むっ…』
穂乃果「あと、名前のくせに山が好きで、好きなうまい棒はコーンポタージュ味で、中学の頃ポエムにハマってて…」
海未『な、なぜそれを!?』
穂乃果「だから言ったじゃん。海未ちゃんとは、竹馬の友だちだって」
海未『…気持ち悪いですよ、あなた。一体誰なんですか!』
穂乃果「それも言ったよ。私の名前は、高坂穂乃果だって」 - 11 : 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/01(火) 21:48:08.24 ID:vU4D0+M5.net
- 海未『コーサカホノカ…。同じクラスになったことはありますか?』
穂乃果「小学校の頃からずっと同じクラスだよ。あ、5年と6年の時はクラス別だったね」
海未『ずっと同じクラスなら、私が知らないはずないじゃないですか…』
穂乃果「そこなんだよ。そこだけおかしいんだ」
海未『何がですか?』
穂乃果「私の知ってる海未ちゃんは、私の親友で、勿論私のことを知ってる。
でも、今私が話している海未ちゃんは、声は海未ちゃんなのに、私のことを知らない」
海未「…何を、言いたいんですか」
穂乃果「こんなことを考えるのは、本当は私らしくないんだけどさ。あなたはもしかして、こことは違う世界の海未ちゃんなんじゃない?」 - 12 : 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/01(火) 21:49:25.67 ID:vU4D0+M5.net
- 翌日
海未「穂乃果、おはようございます」
穂乃果「あ…」
海未「『あ…』とは何ですか」
穂乃果「いや、別に。海未ちゃんおはよう」
海未「穂乃果。結局あの後、どうなりましたか?」
穂乃果「…どうって、何が?」
海未「電話のことですよ。私の家にかけたのに履歴が残っていなかったとかなんとか」
穂乃果「あー、それね。もう解決したよ」
海未「そうなんですか?」
穂乃果「うん。海未ちゃんは二人いる…、ってね」
海未「もう、何ですかそれ」
穂乃果「なんだろうね?穂乃果にもよくわかんないよ」 - 13 : 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/01(火) 21:50:31.55 ID:vU4D0+M5.net
- プルルルル
ガチャ
穂乃果「もしもし、海未ちゃん?」
海未『えっと、こんばんわ。…コーサカさん』
穂乃果「ホノカでいいよ。こっちの海未ちゃんは、そう呼んでる」
海未『そうですか。じ、じゃあ…。………ホノカ、さん…』
穂乃果「もう!堅苦しいなー。海未ちゃんにそんな呼ばれ方するの、なんか気持ち悪いよ」
海未『す、すみません…。頑張ってみます。………ほ、ホノカ』
穂乃果「うん。それでよし」
海未『………何と言いますか、変な感じですね。他の世界の人と話をするなんて』
穂乃果「そうだね。でも私は、海未ちゃんのこと知ってるし、あなたと話してても違和感なんてないよ」
海未『そうですか…』 - 14 : 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/01(火) 21:52:43.32 ID:vU4D0+M5.net
- 穂乃果「でもさ、どうして私が別世界の人間だって信じたの?」
海未『それはですね…。私の中学の頃を知っていたから、ですかね』
穂乃果「あー、ポエムね」
海未『もう!それは言わないでください…。私には、仲の良い友だちなんてそれほどいないんです。
だから中学時代の話を知っているのは、それこそ親友と呼べる人だけなんですよ』
『例えば、ことりとか』
穂乃果「ことりって…、もしかしてことりちゃんのこと!?」
海未『ええ。南ことり、私の大切な親友です』
穂乃果「…そっか。やっぱりそういうことか」
海未『どうかしましたか?』
穂乃果「そっちの海未ちゃんと話してて、薄々感じてはいたんだけどさ…」
穂乃果「そっちの世界は、穂乃果が海未ちゃんと出会わない世界なんだ…」 - 15 : 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/01(火) 21:54:40.87 ID:vU4D0+M5.net
- 穂乃果「イヤだな。海未ちゃんと出会えない世界なんて」
海未『ホノカさん…。あ、ホノカ…』
穂乃果「そっちの世界の私は、何をしてるんだろう。誰と友だちになってるんだろう」
海未『私の知っている限り、同じ学校にはコーサカという人はいませんが…』
穂乃果「そっかー。海未ちゃんと友だちになれなくて、私は平気なのかなー?」
海未『…ふふふ』
穂乃果「ん、何笑ってるのさ」
海未『…いえ、ふと考えたんです。もし私が、あなたのいる世界に生まれていたら、と』
穂乃果「そしたら、こっちの世界は海未ちゃんが二人になっちゃうよ」
海未『そうですか。それは困りましたね』
穂乃果「そうだよ。説教も二倍増だよ」
海未『でも、私の負担は半減しますから、少し楽に説教できますね』
穂乃果「えー!海未ちゃんばっかりずるい!」
海未『ふふふふ。本当に、面白い人ですね』
海未『…そちらの世界の私が、羨ましいですよ』 - 16 : 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/01(火) 21:55:48.94 ID:vU4D0+M5.net
- それから、毎日のように別世界の海未ちゃんと電話で交流するようになった。
話をする度に、こちらの海未ちゃんとは違う様相を見せ、それがなんだか新鮮だった。
穂乃果「へー。そっちの海未ちゃんは、ちゃんと胸あるんだ」
海未『ええ。たぶんホノカにも、負けません、よ…!』
穂乃果「電話越しなんだから、胸を張っても見えないよ」
海未『なっ!?どうして胸を張っているのがわかったのですか!?』
穂乃果「わかるよ。だって海未ちゃんのことだもん」
この人は、やっぱり海未ちゃんで、こちらの海未ちゃんと何ら変わりない。
だけど、この電話越しに伝わってくる何かを、ずっと感じていた。 - 17 : 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/01(火) 21:57:20.09 ID:vU4D0+M5.net
- 海未『ホノカは、どんな容姿をしているんですか?』
穂乃果「え?」
海未『あ、いや、変な意味ではなくてですね…。こうも話をしているのに、相手の顔を知らないなんて、悲しいじゃないですか』
穂乃果「…そういうものなのかな?」
海未『ホノカは私の像を知っていますが、私にはあなたの姿が、想像のものでしかないんです』
穂乃果「…そうだよね。でも、口で言って伝わるものかな?」
海未『ええ。ちなみに、私が思う今のホノカ像は、広瀬すずを丸くしたような人物です』
穂乃果「あー、惜しい。丸くしたのを解除したら私になるよ」
海未『な…!ホノカはそんなに可愛い系なんですか!?』
穂乃果「うんうん。特に髪型とかそっくりだよ」
海未『いつもホノカの声から姿を想像していたのですが、広瀬系だなんて、驚きです…』
穂乃果「もう、失礼しちゃうなー。そっちに写真を送ってあげたいくらいだよ」 - 19 : 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/01(火) 21:58:59.63 ID:vU4D0+M5.net
- 海未『………でも、ホノカだって、私の姿を知らないでしょう』
穂乃果「そんなことないよ。海未ちゃんのことは、ホクロの数まで知ってるんだから」
海未『それは、そちらの世界の『海未』のことでしょう?私の姿を、ホノカは本当には、知らないんです』
穂乃果「えー、何それ?そんなの屁理屈だよ」
海未『ええ、そうです。ホノカだけ私のことを知っているのが悔しいので、お返しです』
穂乃果「………私だけ、か。そっちにも、私はいるはずなのにね」
海未『いる、と言っても、この町にいるのかすらもわかりませんよ』
穂乃果「…私の家はさ、和菓子屋やってるんだ。穂むらって名前のね。たぶん、そっちの世界の私もそこにいるよ。
店が潰れたりしてなかったらの話だけどね」
海未『穂むら、ですか…。聞いたことはありませんが、また今度調べてみますね』
穂乃果「もしそこに広瀬すずがいたら、それ穂乃果だから」
海未『もしかするとこちらの世界のホノカは、広瀬姉の方かもしれませんよ』
穂乃果「じゃあ広瀬系がいたら、よろしく伝えておいて」
海未『ええ、それでは』 - 20 : 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/01(火) 22:00:32.94 ID:vU4D0+M5.net
- 数日後
穂乃果「………」
海未「…あの、穂乃果?」
穂乃果「………」
海未「穂乃果…」
穂乃果「何?」
海未「あのですね。明日、部活も休みなので、この前行けなかった映画にでもいきませんか?」
穂乃果「もうとっくに上映終わってる」
海未「いえ!まだまだ上映中らしいので、一緒に行きましょう!」
穂乃果「…私用事あるから無理」
海未「え…?」
穂乃果「こっちも忙しいの」 - 21 : 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/01(火) 22:01:27.65 ID:vU4D0+M5.net
- 海未「ですが…。最近あまり話をしていませんし…」
穂乃果「私帰るね」 - 22 : 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/01(火) 22:02:57.01 ID:vU4D0+M5.net
- いつも海未ちゃんが部活から帰ってくる時間、7時ジャスト。
プルルルル
穂乃果(ああ、今日も海未ちゃんと話せる…!早く声が聞きたいなぁ!)
プルルルル
穂乃果(もう、海未ちゃんってば。いつもはすぐ出るくせに、焦らさないでよー!)
プルルルル
穂乃果(………あれ?なんで出ないの?海未ちゃん…?)
ガチャ
穂乃果(キタッ!) - 23 : 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/01(火) 22:04:19.83 ID:vU4D0+M5.net
- 穂乃果「海未ちゃん!もー、穂乃果からの電話にはすぐ出てよ!」
海未『………』
穂乃果「あれ、海未ちゃん?どうかしたの?」
海未『あ、いや、その…』
穂乃果「元気ないね。大丈夫?体調悪いの?」
海未『………』
海未『今日、穂むらに行ったんです』
穂乃果「ふーん、そっか。で、広瀬系はいた?」
海未『………いませんでした』
穂乃果「そっかー。まあ、同じ町にいるなら必然的に同じ学校になってるはずだから、そういうことだろうとは思ってたけど」
海未『いや、あの…』
穂乃果「ん?何かあったの?」
海未『………結論から、言いますと、』
『こちらの穂乃果はもう、亡くなっているそうなんです』 - 25 : 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/01(火) 22:09:59.74 ID:vU4D0+M5.net
- 穂乃果「………え?」
海未『…こちらの世界の、穂乃果のお母様に話を伺ったのですが、一度流産を経験して以来、妊娠しなくなったそうで…』
海未『お母様はその子が産まれてきたら、『穂乃果』と名付けるつもりだったんだと、話してくれました…』
穂乃果「………」
海未『こちらの世界は、穂乃果がこの世に産まれてこない世界だったんです』
海未『穂乃果は私と出会わなかったのではなく、そもそもこちらの世界に存在しない人物だったいうことです』
穂乃果「私が、存在しない…?」 - 26 : 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/01(火) 22:11:34.38 ID:vU4D0+M5.net
- 海未『…それと、もう電話で話すのは、金輪際やめにしましょう』
穂乃果「………なんで」
海未『私は最近、部活で忙しくなってきまして…。もうすぐライブがあるんです』
穂乃果「ライブ?」
海未『ええ。言ってませんでした?私、今スクールアイドルをやっているんです』
海未『練習時間の確保もそうですが………。やはり、これ以上無い物ねだりしても、無益なだけです…』
穂乃果「………」
海未『私は、一歩先へと踏み出します。あなたも、前へ歩んでいってくださいね』
穂乃果「………うん」
海未『さようなら』
穂乃果「さようなら」
プツッ - 27 : 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/11/01(火) 22:14:27.51 ID:vU4D0+M5.net
- あの日からずっと、秘密の番号には電話していない。
あの海未ちゃんが今何をしているのか、私の知るところではない。
海未「いやぁ。映画、面白かったですね!穂乃果はどうでしたか?」
穂乃果「…まあまあだね。所詮はアニメってところかな」
彼女はアイドルとしてステージで輝いている。私はそれを、ただ遠くから見つめているだけだ。
それでも私は、あの海未ちゃんのことを忘れることができなかった。彼女は私に、光を与えてくれた。
そして、この海未ちゃんが、ひどく見窄らしく見えた。
…こんなこと考えちゃうのは、やっぱり、私が劣っているからなんだろうね。
ここは、どうしようもないくらいに廃れた世界なんだ。

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