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ガヴリール「千咲ちゃん、勇者になる」
- 1 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 20:30:51.418 ID:SydBJ6oF0.net
-
-ラフィエルの家-
ラフィエル「天使力を高めたい、ですか?」
タプリス「はい。白羽先輩や、かつての天真先輩のように」
タプリス「もっと天使として、みなさんのお役に立ちたいと思いまして」
ラフィエル「そうですかそうですかぁ」
タプリス「簡単には身につかないことは、わかっているのですが……」
タプリス「何かできることがないか、探しているんです」
ラフィエル「そうですねぇ……あ、そういえばタプちゃん」
タプリス「はい?」
ラフィエル「少し前に天界が開発した、天使育成アプリをご存知ですか?」
タプリス「天使……育成アプリ?」
ラフィエル「まだ若い天使を対象にした、体験型の育成プログラムで」
ラフィエル「端末にインストールすることで、簡単に学習することができるんです」
タプリス「そ、そんなものがあったんですね! 知りませんでした!」
ラフィエル「まあ知る人ぞ知る、といったものなので」
ラフィエル「知らなくても、仕方ないのかもしれませんね」
タプリス「なるほど……」
- 3 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 20:32:26.450 ID:SydBJ6oF0.net
-
ラフィエル「よかったら今、タプちゃんの端末にインストールしてあげますよ」
タプリス「ほ、本当ですか!? ぜひお願いします!」
ピロリーン
ラフィエル「これで……完了ですね」
タプリス「あ、ありがとうございます! こういうの苦手なので、助かりました」
ラフィエル「いえいえ。始めるにはアイコンをタッチして」
ラフィエル「スタートをタッチするだけで良いですから、簡単ですよ」
タプリス「わかりました! あとでやってみたいと思います!」
ラフィエル「ええ、がんばってくださいね」
ラフィエル「この後は……ガヴちゃんのお家でお泊りでしたよね?」
タプリス「あ、はい、そうです」
ラフィエル「うふふ、楽しんできてくださいね」
タプリス「あはは……また、掃除させられるだけですけどね」
タプリス「それではこれで失礼します!」
タプリス「白羽先輩、いろいろありがとうございました!」
ラフィエル「いえいえ、またいつでも来てくださいね」
バタンッ
ラフィエル「……タプちゃんに、神のご加護を」 - 5 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 20:34:07.189 ID:SydBJ6oF0.net
-
-その日の夜 ガヴリールの家-
ガヴリール「私、朝までネトゲしてるから、ベッド使っていいぞ」
タプリス「す、すみません。いつも、ありがとうございます」
ガヴリール「まぁ、気にすんな」
ぼふっ
タプリス(えへへ……少しだけ、天真先輩の匂いがします)
タプリス(でも……寝るにはまだ、早いでしょうか)
タプリス(そうだ、白羽先輩にいただいた天使育成アプリ)
タプリス(ちょっとやってみましょう)
ピロリーン
『天使育成アプリ ver0.604』
タプリス(これですね、わたしにもできるかどうか、不安ですが……)
タプリス(ええっと、たしかスタートを押すだけ、でしたっけ)
タプリス(スタートは……あ、ありました)
タプリス(……ぽちっと)
ブゥン プツッ
――――――
――――
――
- 6 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 20:35:27.149 ID:SydBJ6oF0.net
-
ちゅんちゅん
タプリス「……あれ、わたし寝ちゃってました?」
タプリス「それに外が明るいし……もう朝でしょうか」
タプリス「って、あれ!?」ガバッ
タプリス「ここどこでしょう……?」
タプリス「天真先輩の部屋じゃ……ないみたいです」
女性『さあ、できたわ』
タプリス「わっ……」
タプリス(び、びっくりした……どなたでしょうか?)
女性『タプリスや、いい子だから』
女性『このお弁当を池で釣りをしているお父さんに持っていっておくれ』
タプリス「あの、わたしの名前を知っているみたいですけど、あなたは……」
女性『あっ、それから村の皆に会ったら、ちゃんと挨拶をするのですよ』
タプリス「えっと、村の……みんな?」
女性『お弁当を届けてくれたら、お前もすぐ食事にしますからね』
タプリス「えっ……あっ、はい」 - 8 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 20:36:56.974 ID:SydBJ6oF0.net
-
-山奥の村-
タプリス「って、言われるがままにお弁当を持って、外に出ちゃいましたけど」
タプリス「これって、夢……ですかね。それにしては、妙にリアルかもしれません」
タプリス「お弁当をお父さんにって言ってましたっけ。ということは、あの人はお母さん?」
タプリス「うーん……わたしの?」
タプリス「まぁ、どうせ夢ですし、考えても仕方ないですよね。お弁当を届けましょう」
男性『おっ、タプリス。散歩かい? 今日は良い天気だね』
タプリス「お、おはようございます。これからお父さんにお弁当を届けに行くんです」
-村の入口-
タプリス(それにしても、池ってどこでしょう。ちゃんと聞いておけばよかったです)
タプリス(ん、あの人……いかにも兵隊さんって格好ですが……)
兵士『ここは村の入口。怪しい奴が入ってこないよう見張っているのだ』
タプリス「は、はぁ……お勤めご苦労さまです」
兵士『タプリス。村の外へ出たいのか?』
タプリス「村の外? えーっと、とりあえず、お父さんにお弁当を届けようかなって」
兵士『そうだな。タプリスが村を出るには、もっともっと強くならなくてはな』
タプリス「えっ、あ、はい。それでは、わたしはこれで……」
タプリス(強くないと村の外に出られないって、どういうことでしょう) - 10 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 20:38:34.582 ID:SydBJ6oF0.net
-
タプリス(この村……そんなに広くはないみたいですね)
タプリス(あれ、この家。ドアが開きっぱなし……)
タプリス(ちょっとくらい、寄り道しても大丈夫でしょうか)
タプリス「こ、こんにちはー。あの、ドアがあいて――」
老人『おお、タプリスか!』
老人『今日はそなたに、いかづちの呪文を教えようぞ!』
タプリス「えっ!? 呪文を教えてもらえるんですか!?」
老人『しかし、その様子では、腹が減っているな』
老人『よし! 授業はメシを食ってからじゃ!』
タプリス「わ、わかりました!」
タプリス(そういえば、お弁当届けたらごはんって、お母さん? が言ってましたっけ)
タプリス「また後ほど、よろしくお願いします!」ビシッ
――
タプリス「呪文ってどんなのでしょう、いかづちって言ってましたよね」
タプリス「こう、ピカピカドーン! みたいな感じなんでしょうか」
タプリス「楽しみです!」
戦士『きえーい! ボカッ!』
タプリス「あいた! な、なにするんですかぁ!」
戦士『わっはっはっ。油断したな、タプリス』
戦士『剣の修業は厳しいのだ』
タプリス「け、剣の修行?」
タプリス(そういえば、いつの間にか腰に鞘みたいなものが……)チャキ
タプリス(茶色の剣? 鉄ではないんですかね)
タプリス「わ、わたし、お父さんにお弁当届けないといけないので、失礼します!」 - 12 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 20:39:56.269 ID:SydBJ6oF0.net
-
タプリス「この建物……看板にINNって書いてますね。なんの建物でしょう」
タプリス「入ってみましょうか」
タプリス「こ、こんにちはー」
タプリス(ん、カウンターにおじさまが一人……でも、なんか上の空?)
タプリス「何かあったんですか?」
商人『実はゆうべ、旅の詩人がこの村に迷い込んできましてな』
タプリス(迷い込んでって……そんなに、この村って山の奥なのかな)
商人『村の掟を破って、つい助けてしまったのです』
タプリス(村の掟なんてあるんだ……)
タプリス「でも村の掟といっても」
タプリス「困っている人を助けたんですから、良いと思うんですけど……」
商人『災いの種にならねばよいですが……』
タプリス「は、はぁ」
タプリス(少し、心配しすぎな感じがしますね……)
タプリス(ん、奥の部屋に居るのがもしかして……)
詩人『私は旅の詩人』
詩人『山道で迷ってしまって、この村に辿り着いたのです』
タプリス「そ、それは災難でしたね……でも大丈夫ですよ」
タプリス「村のみなさん、いい人たちばかりみたいですし」
タプリス「きっと帰ることができますよ」
詩人『しかし、こんな山奥にこんな村があったとは……』
詩人『聞いたこともありませんでしたよ』
タプリス「き、聞いたことすらない村なんですね……」
タプリス(ここ……どれだけ田舎なんでしょうか) - 13 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 20:41:27.676 ID:SydBJ6oF0.net
-
タプリス(いけないいけない、寄り道しすぎちゃいましたね)
タプリス(お父さん、お弁当を待ってるかもしれません)
タプリス「あっ、池がありました!」
タプリス「ということは釣りをしてる人が……あ、いました! あれがお父さんですかね」
タプリス「おとーさーん!」ブンブン
学者『おお、タプリス。お弁当を持ってきてくれたのか』
タプリス「はい。これ、お弁当です」
学者『ところでタプリスや』
タプリス「えっと、なんでしょう?」
学者『お前も17歳。そろそろ大人の仲間入りだな』
タプリス「い、いきなりどうしたんですか?」
タプリス(それにわたし、17歳じゃありませんし……)
タプリス(娘の歳を間違える父親って、どうなんでしょう……)
学者『よいか、タプリス。強く正しく生きるのだぞ』
学者『たとえ、何が起こってもな……』
タプリス「えっ……あ、はい」
――
タプリス(お父さん、何が言いたかったんでしょう)
タプリス(強く正しく生きる、ですか……)
タプリス「……それにしても。んー、いい天気ですね」
タプリス「すごく山奥みたいだけど、自然いっぱいで空気もおいしいですし」
タプリス「村のみなさんも良い人ばかりです」
タプリス「あ、帰りは違う道から帰ってみましょうか」 - 14 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 20:42:57.657 ID:SydBJ6oF0.net
-
タプリス「わっ、なにあれ、すごいお花畑!」
タプリス「見たことない花ばっかりです、綺麗……」
タプリス「……って、あれ、なんだろう」
エルフ「……」
タプリス「えっ? だ、誰か倒れてる!?」
エルフ「ふわぁぁ」
タプリス(あれ……もしかして……)
タプリス「天真先輩……?」
エルフ「あら、おはよう。タプリス」
タプリス「天真先輩! 先輩も、ここに来てたんですね!」
エルフ「ここに、来てた?」
タプリス「えへへ、夢の中で天真先輩に会えるなんて……」
タプリス「しかも天使学校の頃の、素敵なお姿だなんて、感激です!」
エルフ「えっと……私の方が、寝起きのはずですけど……」
エルフ「寝ぼけているのは、タプリスの方みたいですね」
タプリス「えっ……何言ってるんですか」
エルフ「それとも、頭でも打ったのかしら……」
タプリス「わ、わたし、頭なんて打ってませんけど……」
エルフ「そうですか? では、そんなタプリスに、ちゃんと一から教えてあげますね」
タプリス「えっと……は、はい」
エルフ「私の名前は、天真=ガヴリール=ホワイト」
エルフ「タプリスとは、この村でずーっと一緒にすごしてきた幼馴染よ」 - 15 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 20:44:31.094 ID:SydBJ6oF0.net
-
タプリス「幼馴染? 先輩とわたしが、ですか?」
エルフ「やっぱりあなた、頭を……」
タプリス「え、えっと違います! そう幼馴染! 幼馴染ですよね!」
タプリス「忘れるわけ、ないじゃないですか!」
エルフ「ふふっ、どうやら思い出したみたいね」
タプリス(よくわかりませんが、先輩とお会いできたんですし、良しとしましょう)
タプリス(それにしても先輩……なにか、耳が少し尖ってますね)
タプリス(こういう耳をしてる種族を、エルフっていうんでしたっけ)
タプリス(なにか着ている服も、ファンタジーって、感じがしますし)
タプリス「あ、先輩。その帽子ステキですね。ワンポイントの羽根もかわいいです」
エルフ「ふふっ、ありがとう、タプリス」
エルフ「この帽子はですね、私のお気に入りなんです」
タプリス「そうなんですか」
エルフ「……もしかしてタプリス、睡眠不足だったりしますか?」
タプリス「あはは……そ、そうかもしれません」
タプリス(というか、今まさに眠っている最中だと思うんですけど)
エルフ「ほら、こうして……寝転がっていると、とてもいい気持ちですよ」
エルフ「タプリスもどうです?」
タプリス「あ、それでは、わたしも……失礼します」 - 17 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 20:45:58.887 ID:SydBJ6oF0.net
-
コロンッ
タプリス「わぁ……お日様が、ポカポカで、あたたかいです」
タプリス「それに、お花もいい香り……」
エルフ「でしょう?」
タプリス「たしかにここで、お昼寝をしたら気持ちよさそうですね」
エルフ「ええ、私もそう思います」
タプリス(先輩とわたしは、この村でずっと一緒だった幼馴染、ですか)
タプリス(それはさぞかし、幸せな日々だったんでしょうね)
タプリス「……さっきはすみませんでした。変なことを言ってしまって」
エルフ「気にしていませんよ。それに私だって、たまに寝ぼけることもありますし」
タプリス「本当ですか? 信じられないですけど……」
タプリス「そんな先輩のお姿も、ちょっと見てみたいです」
エルフ「面白いものではないと思いますけど……」
エルフ「今度は一緒に、お昼寝しましょうか」
タプリス「はい、ぜひっ」
エルフ「ねえ、タプリス」
タプリス「なんですか?」
エルフ「私たち、大きくなっても……このままでいられたらいいのにね」
タプリス「えっ、先輩?」 - 18 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 20:47:30.247 ID:SydBJ6oF0.net
-
くぅぅ
タプリス「あっ……」カァァ
エルフ「あははっ、おなかの虫、鳴いちゃいましたね」
タプリス「うぅ……そういえば、ごはんをまだ食べていませんでした……」
エルフ「ごはんも食べずにお散歩してたんですか?」
タプリス「お母さんに頼まれて、お父さんにお弁当を届けていまして……」
タプリス「あっ、帰ったらごはんにするって、言ってました」
エルフ「それは大変。タプリスのお母さん、待っているかもしれませんね」
タプリス「そ、そうですね。わたし、そろそろ帰ります」
エルフ「ええ、わかりました」
タプリス「また……お話をしに、ここへ来てもいいですか?」
エルフ「もちろんです。私に会いたい時は、この花畑に来てください」
タプリス「ありがとうございますっ、それでは!」
-村の自宅-
タプリス「ただいま帰りましたー」
女性『おかえり。ご苦労だったね。お前もごはんにするかい?』
タプリス「あ、はい! もうお腹がすいてしまって……」
女性『じゃあ、そこにお座り。すぐに支度をするから』
タプリス「ありがとうございます!」 - 19 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 20:48:57.382 ID:SydBJ6oF0.net
-
ゴゴゴゴゴッ
タプリス「えっ、な、なんですか!? じ、地震!?」
バタンッ
商人『つ、ついに、この村が魔物達に見つかったんです!』
商人『奴らは村のすぐそばまで来てて!』
タプリス「INNのところのおじさま!? そ、それに魔物って……」
女性『まあ大変! タプリスや。私のことはいいから、すぐにお逃げ!』
タプリス「えっ? 逃げる……?」
商人『さあ、私についてきてください!』
タプリス「ちょ、ちょっと待ってください!」
-村の広場-
オオオオオォォォ
タプリス「な、なにこれ……地震じゃなくて」
タプリス「魔物たちがやってくる地響き……なんですか?」
兵士『魔物は俺たちで食い止める!』
兵士『タプリスを早く、安全なところへ!』
戦士『くそー! 魔物どもめ! ついにタプリスの居場所を突き止めたか!』
タプリス「わ、わたしの居場所?」
戦士『もう少し時間があれば、タプリスを立派な勇者に育てられたものをっ!』
タプリス「えっ、勇者を育てるって……」
戦士『ついてこい! タプリス!』
タプリス「いたっ……そ、そんな、引っ張らないで……」 - 20 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 20:50:25.922 ID:SydBJ6oF0.net
-
-村の池の前-
学者『タプリスや。ついに来るべきときが来たようだ』
タプリス「お、お父さん?」
学者『今まで黙っていたが、私たち夫婦は、お前の本当の親ではなかったのだ』
タプリス「そ、それって……」
学者『詳しい話をしたいが、今は時間がない……。さあ早く隠れるのだ』
タプリス「そんな、隠れるだなんて……」
-村の地下倉庫-
鉱夫『どひゃー! 魔物が攻めてきたって!? それじゃ、戦わなくては!』
タプリス「戦うって……この村、そんなに人はいないはずなのに……」
戦士『いいか、よく聞け、タプリス。魔物たちの狙いは、お前の命!』
戦士『魔物たちは、お前が目障りなのだ』
タプリス「魔物たちが……わ、わたしを狙ってる?」
戦士『お前には秘められた力がある』
戦士『いつの日か、どんな邪悪なものでも倒せるくらいに強くなるだろう』
戦士『しかし、今のお前はまだ弱い』
戦士『とにかく、逃げて生き延びるのだ! わかったなっ!』
タプリス「……魔物たちは、わたしの命を狙っているのに」
タプリス「みなさんが戦って、わたしだけ隠れるなんて……」
タプリス「そんなこと……できません……」
タプリス「正直、怖いですけど……ここで戦わないと天使失格ですから」
タプリス「わたしも戦います!」 - 21 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 20:52:10.085 ID:SydBJ6oF0.net
-
-村の広場-
エルフ「タプリス! あなた何してるの!」
タプリス「せ、先輩!? 魔物は、わたしを狙っているみたいなんです!」
タプリス「でしたら、わたしも戦わないと!」
エルフ「だめよ……あんな数、勝てるわけがない……」
タプリス「村のみんなだって、わかってるはずです」
タプリス「わかってるはずなのに……それでもみんな、戦うって言っているんです!」
エルフ「あなたに、もしものことがあったら私……と、とにかく隠れて!」
エルフ「私もすぐに行くわっ!」
タプリス「嫌です!」
タプリス「みんなが、頑張っているのに、自分だけ逃げるだなんて……」
タプリス「そんなの間違ってます!」ダッ
エルフ「タプリスっ! だめ!」
――
オオオオオォォォ
タプリス(すごい魔物の数です……、さすがに素手ではきついですよね)
タプリス(あ、そういえば、さっき見た茶色の剣……)チャキッ
タプリス「こ、これで……戦えるはずです!」
魔物『シャァァァァ!』
タプリス「き、きた!? え、えいっ!」ブンッ
キンッ
タプリス(ぜ、全然、手ごたえが……でも、相手の動きは思ったより遅いです!)
タプリス(これなら、わたしでも避けられ……って、あれ、体が……) - 23 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 20:53:30.085 ID:SydBJ6oF0.net
-
魔物『ガッ……キェェェェ!』ブンッ
ザシュゥ
タプリス「かはっ……」
ドサッ
タプリス(えっ、なに……これ? わたし……やられ、て……?)
ドクンドクンドクン
タプリス「……ッ!?」
タプリス(い、痛い……いたい、いたいいたいいたい……)
エルフ「タプリスっ! タプリス、しっかりして!!」
タプリス(遠くで、先輩の声が聞こえます……)
タプリス(だめ……意識が……)
魔物『……』ニヤッ
タプリス(こんなところで……わたしは……)
タプリス(みんな……、先輩……)
グシャ
タプリスは しんでしまった!
- 24 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 20:54:57.396 ID:SydBJ6oF0.net
-
ちゅんちゅん
タプリス「……ッ」ガバッ
タプリス(あれ、わたしどうして……)
タプリス(たしか魔物にやられて、意識が遠くなって……)
タプリス「うっ……ごほっ、ごほっ……」
タプリス「はぁ……はぁ……」
タプリス(何これ……やられた時の感触や痛みが……はっきり思い出せます……)
タプリス(でも、体に傷跡なんて、一つも……)
タプリス(もしかして夢……だったのでしょうか)
タプリス(だとしたら、ひどい夢です……)
タプリス「……って」
タプリス(ここ、天真先輩の部屋じゃありません……)
タプリス(……村の自分の家です)
タプリス(夢の中で夢を見るって、そんな不思議なこともあるんですね……)
タプリス(でも夢で、ほんとに良かったです……)
女性『さあ、できたわ』
タプリス「わっ……」
女性『タプリスや、いい子だから』
女性『このお弁当を池で釣りをしているお父さんに持っていっておくれ』
タプリス「お、お母さん?」
女性『あっ、それから村の皆に会ったら、ちゃんと挨拶をするのですよ』
タプリス「あっ……はい、わかりました」
女性『お弁当を届けてくれたら、お前もすぐ食事にしますからね』
タプリス「は、はい」 - 25 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 20:56:26.995 ID:SydBJ6oF0.net
-
タプリス(村が……元通りになってます……)
タプリス(夢では、魔物たちにあれだけ壊されていたのに……)
男性『おっ、タプリス。散歩かい? 今日は良い天気だね』
タプリス「おはようございます! これからお父さんにお弁当を届けに行くんです」
タプリス(みんなも無事でよかった……)
-村の入口-
兵士『ここは村の入口。怪しい奴が入ってこないよう見張っているのだ』
タプリス「村の警備、ごくろうさまです!」
兵士『タプリス。村の外へ出たいのか?』
タプリス(村の外、ですか……)
タプリス「少し興味があるかも……なんて」
兵士『しかし、まだその時ではない。今のお前では、まだまだ力不足なのだ』
タプリス「あっ……は、はい。わかりました……」
タプリス(力不足……ですか。たしかに、わたしは弱いと思いますけど……)
タプリス(と、とりあえず、お父さんにお弁当を届けに行きましょう)
-村の池-
学者『ところでタプリスや。お前も17歳。そろそろ大人の仲間入りだな』
タプリス「そ、そうですね」
タプリス(また歳、間違ってるし……)
学者『よいか、タプリス。強く正しく生きるのだぞ。たとえ、何が起こってもな……』
タプリス「は、はい」
タプリス(何が起こっても……だなんて、偶然ですよね?) - 26 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 20:57:56.903 ID:SydBJ6oF0.net
-
タプリス(そういえば、先輩はまた、花畑にいるのでしょうか)
タプリス(朝の挨拶も兼ねて、行ってみましょう)
-村の花畑-
タプリス「いた……天真先輩」
エルフ「すぅ……すぅ……」
タプリス(気持ちよさそうに寝てますね……)
タプリス(ふふっ、先輩の寝顔……かわいいです)
タプリス(だ、誰もいないですよね?)キョロキョロ
タプリス(なら、もう少しだけ……もう少しだけ、近くで見ても……)
エルフ「……ッ」パチッ
タプリス「……ッ」ビクッ
エルフ「……えっと」
タプリス「……お、おはよう、ございますっ」
エルフ「お、おはよう。タプリス。今、あなた……何をしようとして」
タプリス「ご、ごめんなさい! その、えっと……」
タプリス「先輩の寝顔が、あまりにもかわいかったといいますか……」
タプリス「つい、近くで見たくなってしまって……」
エルフ「……か、かわいいですか?」
タプリス「は、はい」
エルフ「ふふっ、そうですかそうですかぁ」
タプリス「ご、ごめんなさい、先輩」
エルフ「いいえ、気にしてませんよ。それよりほら、一緒に寝転がりませんか?」
タプリス「は、はい。それでは……失礼します」 - 27 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 20:59:31.631 ID:SydBJ6oF0.net
-
タプリス「……怖い夢を見たんです」
エルフ「えっ?」
タプリス「魔物たちが大勢やってきて、この村が襲われて……」
タプリス「みんな、魔物にやられてしまって……」
タプリス「わたしも戦ったんですけど……歯が立ちませんでした……」
エルフ「タプリス」
タプリス「……はい?」
エルフ「そんなものは、ただの夢です。忘れてしまいましょう」
タプリス「先輩……」
エルフ「それに、こんな山奥の寂れた村を、魔物たちが襲うわけないじゃないですか」
タプリス「そうなんでしょうか……」
エルフ「私が魔物だったら……そうですね、金銀財宝がある、お城とかを狙います」
タプリス「あはは……たしかに」
エルフ「もし……万が一、この村に何か起こったとしても……」
エルフ「大丈夫ですよ、タプリス。あなたは、私が守りますから」
タプリス「……あ、ありがとうございます、天真先輩」
タプリス「でも、わたしだって……」
エルフ「えっ」
タプリス「先輩が、もし危ない目にあっていたら……全力で守りますから」
エルフ「ふふっ、ありがとうね」
タプリス「それでは、お母さんが家で待ってますので、そろそろ行きますね」
エルフ「タプリス」
タプリス「なんですか?」
エルフ「……いいえ、なんでもありません。また、会いましょう」ニコッ - 28 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:01:04.233 ID:SydBJ6oF0.net
-
-村の自宅-
タプリス(天真先輩……最後に何を言いかけてたんでしょう)
タプリス「ただいまー」
女性『おかえり。ご苦労だったね。お前もごはんにするかい?』
タプリス「はいっ! もう、お腹が空いてしまって……」
女性『じゃあ、そこにお座り。すぐに支度をするから』
タプリス「はーい」
ゴゴゴゴゴッ
タプリス「えっ……?」
バタンッ
商人『つ、ついに、この村が魔物達に見つかったんです!』
商人『奴らは村のすぐそばまで来てて!』
タプリス「そんな……これって……」
タプリス(夢とまったく同じじゃないですか……)
女性『まあ大変! タプリスや。私のことはいいから、すぐにお逃げ!』
タプリス「……ッ」
商人『さあ、私についてきてください!』
タプリス「そんな、正夢……なんですか?」
-村の広場-
オオオオオォォォ
兵士『魔物は俺たちで食い止める!』
兵士『タプリスを早く、安全なところへ!』 - 29 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:03:00.659 ID:SydBJ6oF0.net
-
戦士『くそー! 魔物どもめ! ついにタプリスの居場所を突き止めたか!』
タプリス「これじゃまた、村のみんなが……」
戦士『もう少し時間があれば、タプリスを立派な勇者に育てられたものをっ!』
タプリス「……」
戦士『ついてこい! タプリス!』
タプリス「嫌ですっ! わたしはもう……あんな思いをしたくありません!」
タプリス「みんなを犠牲にして……自分だけ生き残るなんて!」
タプリス「やっぱり、おかしいです!」ダッ
タッタッタッ
タプリス(確かめないと……本当のことを)
タプリス(もし夢じゃなかったとしたら、わたしは……)
――
魔物『シャァァァァ』
タプリス「……ッ」チャキ
タプリス(あの出来事が、夢じゃなかったとしたら……)
タプリス(魔物の動き、思い出してみましょう)
タプリス「……ここです!」
キンッ
タプリス(やっぱり、手応えがないですっ! 次は反撃が……)
魔物『ガッ……キェェェェ』ブンッ
タプリス(きたっ! 早めに、避けないとっ!)
タプリス(……でも、やっぱり体が!)
ザシュ
- 30 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:03:59.059 ID:SydBJ6oF0.net
-
タプリス「うぐっ……」
タプリス(左腕がっ……しかし、まだ戦えます!)
タプリス「やぁぁっ!」
ザシュゥ
魔物『ギャァァァァ!』
バタンッ
タプリス「やった……なんとか、一体やっつけ――」
ヒュン ザクッ
タプリス「えっ……かはっ……」ガクッ
バタンッ
タプリス(奥から……これは、弓矢?)
タプリス(い、息が……くるし、い……)
タプリス(また……やられて、しまいました……)
タプリス(みんな……ごめんなさい、本当にごめんなさい……)
タプリス(て、天真先輩……)
魔物『……』ニタァ
ヒュン ヒュン ヒュン
ザクッ ザクッ ザクッ
タプリスは しんでしまった!
- 32 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:05:34.299 ID:SydBJ6oF0.net
-
-村の自宅-
ちゅんちゅん
タプリス「……ッ」ガバッ
タプリス(わたし確か……弓矢にやられて、それで……)
タプリス(でも、矢が刺さった傷跡が、どこにもありません……)
タプリス(いったい、何が起きているのでしょう……)
女性『さあ、できたわ』
タプリス「……お、おはようございます、お母さん」
女性『タプリスや、いい子だから』
女性『このお弁当を池で釣りをしているお父さんに持っていっておくれ』
タプリス「は、はい」
女性『あっ、それから村の皆に会ったら、ちゃんと挨拶をするのですよ』
タプリス「はい……」
女性『お弁当を届けてくれたら、お前もすぐ食事にしますからね』
タプリス「わ、わかりました」
-村の花畑-
エルフ「すぅ……すぅ……」
タプリス(天真先輩は……やっぱり寝てますね)
タプリス(それにしても先輩の髪は、いつ見ても綺麗です)
タプリス「先輩。お隣、お邪魔しますね」 - 34 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:07:04.920 ID:SydBJ6oF0.net
-
ころんっ
タプリス「んっー、やっぱり、ここは気持ちいいです……」
タプリス「……」
タプリス(二度目の魔物の襲撃後も、村は元通りになっていました)
タプリス(まるで……わたしがやられたら、魔物に襲われる前に戻っているみたいです)
タプリス(こんな夢……ありえるのでしょうか)
タプリス「あぁっ、わたしには、難しすぎます!」
エルフ「……ふぅ」
タプリス「ひゃっ! て、天真先輩!? な、ななな、何やって!?」
エルフ「目が覚めたら、隣でタプリスが難しい顔をしていたので、つい……」
タプリス「つい、で、耳に息を吹きかけないください!」
エルフ「ふふっ、ごめんなさいね。それと、おはよう、タプリス」
タプリス「は、はい。おはようございます」
エルフ「元気出ました?」
タプリス「さ、最初から元気ですよ。元気だけがわたしの取り柄ですし……」
エルフ「そんなことはありませんよ」
タプリス「えっ」
エルフ「タプリスには、たくさんたくさん、良いところがあるのを」
エルフ「私は知っていますから」ニコッ
タプリス「先輩……あ、ありがとうございます」
エルフ「困ったことがあったら……いつでも、私のことを頼ってくれて良いですからね」
エルフ「私は、タプリスの味方ですから」
エルフ「いつだって、何があったって……あなたの味方ですから」
タプリス「……ッ」
エルフ「それだけは、覚えておいてください」 - 35 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:08:28.195 ID:SydBJ6oF0.net
-
タプリス「……天真先輩。わたし、決めました」
エルフ「えっ?」
タプリス「どんなことが起きても、わたしはこの村とみんなを……守ります」
エルフ「……ッ」
タプリス「先輩が大事にしている、この場所を……守ってみせますから」
エルフ「タプリス……」
タプリス「それでは、わたしはそろそろ家に……」
エルフ「あっ……」
タプリス「先輩、今日はもう、お家に帰った方が良いです」
エルフ「……そうですね」
タプリス「また、お会いしましょう、先輩」
エルフ「うん……またね、タプリス」
-村の自宅-
タプリス(恐らくですが、わたしが家に帰ったら……)
タプリス(村に、魔物が襲撃してくるはずです)
ガチャ
タプリス「……ただいま」
女性『おかえり。ご苦労だったね。お前もごはんにするかい?』
タプリス「はい」
女性『じゃあ、そこにお座り。すぐに支度をするから』
タプリス「ありがとう、お母さん」 - 36 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:09:56.990 ID:SydBJ6oF0.net
-
ゴゴゴゴゴッ
タプリス(やっぱり、きました……)
バタンッ
商人『つ、ついに、この村が魔物達に見つかったんです!』
商人『奴らは村のすぐそばまで来てて!』
タプリス「おじさん、ちょっと通してください!」ダッ
-村の広場-
オオオオオォォォ
タプリス「どうやら間違いない、みたいです……」
タプリス「ですが……夢であろうと、なかろうと関係ありません」
タプリス「わたしは、決めたんですから。この村を守るって」
タプリス(それに一回目は、何もできずにやられましたけど)
タプリス(二回目は、一体だけですが、魔物を倒せました)
タプリス(であれば……もっと多くの魔物も、倒せるはずです!)
タプリス「手の震えが止まりません……でも、だとしても」
タプリス「わたしは、村のみんなを、先輩を守ってみせます!」
タプリス「だって、わたしは……天使なんですから!」 - 37 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:11:27.100 ID:SydBJ6oF0.net
-
-村の自宅-
ちゅんちゅん
タプリス「……ッ」ガバッ
タプリス「うっ……ごほっ、ごほっ」
タプリス(何度やっても……この感覚には慣れません)
タプリス(それにしても、弓を持った魔物の数が結構多いです……)
タプリス(ですけど、最初の魔物は……攻撃の仕方が、前と全く同じでした)
タプリス(ということは……)
――
女性『お弁当を届けてくれたら、お前もすぐ食事にしますからね』
タプリス「はい、いってきます!」
-村の外-
くぅぅぅ
タプリス「うぅ……お腹すきました」
タプリス(腹が減っては戦はできぬ……って、言いますよね)
タプリス(いつも朝ごはんを食べる前に、魔物が襲ってきちゃいますし……)
タプリス(ごめんなさい……お父さん。お弁当、もらっちゃいます)
タプリス「いただきます」モグモグ
タプリス「……おいしいです」 - 38 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:13:02.040 ID:SydBJ6oF0.net
-
-村の池-
学者『おお、タプリス。お弁当を持ってきてくれたのか』
タプリス「えっと、実は……」
学者『なんと!? お弁当は、お前が食べてしまっただと!? とほほ……』
タプリス「ほ、本当にごめんなさい! お父さん!」
タプリス(次は、花畑に……いえ、やめましょう)
タプリス(ごめんなさい、天真先輩……)
タプリス(魔物たちを追い返すまでは、少しだけお別れです)
タプリス(また先輩とお喋りするの……楽しみにしてますから)
タプリス(……それより、村の中に、何か役立つものがないか探してみましょう)
-村の地下倉庫-
鉱夫『おや、タプリスじゃないか。ここは倉庫だよ』
タプリス「こ、こんにちは……」
タプリス(ここって、一番最初に避難した倉庫でしたっけ……)
タプリス(何かありませんかね……壺の中とか)ゴソゴソ
タプリス(これは……摘み取った葉っぱでしょうか?)
タプリスは やくそう を手に入れた!
タプリス(保存しているということは……食べられるんですかね)パクッ
タプリス「~~~ッ!」
タプリス(苦い、にがいにがい!)
タプリス(……でもなんか、少し元気が出てきた気がします)
タプリス(これは持っていきましょう) - 39 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:14:26.951 ID:SydBJ6oF0.net
-
タプリス「はぁッ!」
ザシュゥ
魔物『グギャァァァ』
タプリス「はぁ……はぁ……」
タプリス(だめ、血が出過ぎて……意識が……)
タプリス(そうだ、さっきの葉っぱ。あの苦味なら、意識がはっきりするかも)ムシャムシャ
タプリス(うっ、やっぱり苦い……って!?)
タプリス「なにこれ、傷が……治って……」
タプリスの たいりょく が回復した!
タプリス「この葉っぱに……こんな効果があったなんて、知りませんでした」
タプリス「でも……これでまだ、戦えます!」
-村の自宅-
ちゅんちゅん
タプリス「……」ガバッ
女性『タプリスや、いい子だから』
女性『このお弁当を池で釣りをしているお父さんに持っていっておくれ』
タプリス「わかったよ、お母さん!」
――
ちゅんちゅん
タプリス「……」ガバッ
女性『あっ、それから村の皆に会ったら、ちゃんと挨拶をするのですよ』
タプリス「わかったよ、お母さん」 - 40 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:15:56.752 ID:SydBJ6oF0.net
-
ちゅんちゅん
タプリス「……」ガバッ
女性『お弁当を届けてくれたら、お前もすぐ食事にしますからね』
タプリス「……わかったよ、お母さん」
――
ちゅんちゅん
タプリス(わたしのせいで、村のみんなが、先輩が、犠牲になるなんて……)
――
ちゅんちゅん
タプリス(絶対にあっては、いけないことです。絶対に、させません!)
――
ちゅんちゅん
タプリス(わたしがやらなきゃ……わたしがやらなくちゃ!)
――
ちゅんちゅん
タプリス(負けない……絶対に諦めません!)
――
ちゅんちゅん
タプリス(諦めません……)
――
ちゅんちゅん
タプリス(諦め……)
――
ちゅんちゅん
タプリス(……) - 42 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:18:10.936 ID:SydBJ6oF0.net
-
-村の自宅-
ちゅんちゅん
タプリス「……」スクッ
女性『さあ、できたわ』
タプリス「……」
女性『タプリスや、いい子だから』
女性『このお弁当を池で釣りをしているお父さんに持っていっておくれ』
タプリス「……」
女性『あっ、それから村の皆に会ったら、ちゃんと挨拶をするのですよ』
女性『お弁当を届けてくれたら、お前もすぐ食事にしますからね』
タプリス「……いってきます」ボソッ
――
タッタッタッ
タプリス(右に骸骨兵が2体、これを背後から奇襲します)ブンッ
魔物『グガッ!』
タプリス(骸骨兵が持っていた剣を奪い、装備して)
タプリス(次に、正面の頭巾の弓兵の矢を……)
タプリス(3、2、1……避けます)スッ
ヒュン
タプリス(そして、二発目が来る前に近づいて……弓兵を、斬りあげます)ブンッ
魔物『ギャァァァ!』 - 44 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:19:13.227 ID:SydBJ6oF0.net
-
タプリス(ここで前には出ず、5秒間停止……深呼吸して)
タプリス「すぅ……はぁ……」
ヒュン ヒュン ヒュン
サクッ サクッ サクッ
タプリス(矢の雨をやり過ごして……突撃します!)
タプリス「やぁぁぁッ!」
――――――
――――
――
タプリスは まもののむれ を やっつけた!
タプリス「……やった」
タプリス「やりました、天真先輩、村のみんな……全部、全部やっつけました」
タプリス「わたし……やり遂げましたよ……」
タプリス「……」
タプリス「あれ……村のみんなは……?」
タプリス「……みんなはどこでしょう」
タプリス「探さないと……」 - 45 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:20:29.952 ID:SydBJ6oF0.net
-
タプリス(それにしても、自分でやったとはいえ……)
魔物たち『』
タプリス(あとで……お墓、作りますから……)
魔物『』キランッ
タプリス「あれ……あの頭巾の弓兵の胸元……何か光って……」
タプリス「ペンダント? でしょうか」
タプリス「なんで魔物がこんなものを……」スッ
パカッ
タプリス「……ッ」
タプリス「こ、これは……家族の、写真?」
タプリス「こんな魔物にも、家族が……いるだなんて……」
タプリス「そんな……そんなことって……」
タプリス「……この戦いだって、もしかしたら」
タプリス「家族を守るために、戦っていたかもしれません……」
タプリス「わたしは……本当に、正しいことをしたんでしょうか……」
タプリス「勇者だから……村のみんなを守るからって……魔物を全部やっつけて……」
タプリス「誰かの大事な人を……みんなやっつけて、しまって……」
タプリス「もう……わかりません……」
タプリス「わたし……わからないです……」 - 46 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:21:56.754 ID:SydBJ6oF0.net
-
ヒュン ザクッ
タプリス「えっ? かはっ……」ガクッ
タプリス(うそ……なにこれ……矢?)
ドサッ
タプリス(どうして……? 魔物は全部……倒した……はず、なのに)
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ
タプリス(なに……この音……)
オオオォォォォォ
タプリス(黒い塊が……近づいて……くる)
『ユウシャ ヲ コロセ!』
『コロセ! コロセ! コロセ!』
タプリス(違う……黒い塊じゃない……あれは……)
タプリス(魔物の……群れ……)
タプリス(……あんな数……勝てっこ、ありま、せん……)
タプリス(先輩……わたしは……)
ヒュン ヒュン ヒュン
ザクッ ザクッ ザクッ
タプリスは しんでしまった!
- 49 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:23:39.297 ID:SydBJ6oF0.net
-
-村の自宅-
ちゅんちゅん
タプリス「……ッ」
タプリス「……わたし、もう……戦えません」
女性『さあ、できたわ』
女性『タプリスや、いい子だから』
女性『このお弁当を池で釣りをしているお父さんに持っていっておくれ』
タプリス「お母さん、ごめんなさい……あのね」
女性『あっ、それから村の皆に会ったら、ちゃんと挨拶をするのですよ』
タプリス「わたし……もう……」
女性『お弁当を届けてくれたら、お前もすぐ食事にしますからね』
タプリス「……疲れて、しまいました」
タプリス「わたしが黙っていれば……みんなが、幸せなままなんです……」
タプリス「こうしていれば、いつか夢が……終わるから……」
タプリス「だからもう……お弁当は届けられません……ごめんなさい、お母さん」
女性『お弁当を届けてくれたら、お前もすぐ食事にしますからね』
タプリス「……お母さん?」
女性『お弁当を届けてくれたら――』
タプリス「……そ、それ……冗談か、なにかですか?」
女性『お弁当――』
タプリス「ねぇ……お母さん、やめて……」
女性『――』
タプリス「いや……」
女性『――』
タプリス「いやぁぁぁッ!」ダッ - 50 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:24:58.970 ID:SydBJ6oF0.net
-
タッタッタッ
タプリス(な、なにが起きて……お母さんが……)
男性『おっ、タプリス。散歩かい? 今日は良い天気だね』
タプリス「おじさん! お母さんが! お母さんが大変で――」
男性『おっ、タプリス。散歩かい?――』
タプリス「えっ……」
男性『おっ、タプリス――』
タプリス「やだ……う、嘘……いやぁっ!」
――
タッタッタッ
老人『おお、タプリスか! 今日はそなたに、いかづちの呪文を教えようぞ!』
タプリス「だ、だれか……」
――
タッタッタッ
戦士『きえーい! ボカッ!』
タプリス「わたしの話を……聞いて……」
――
タッタッタッ
商人『実はゆうべ、旅の詩人がこの村に迷い込んできましてな』
タプリス「聞いてよぉ!」 - 51 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:26:34.094 ID:SydBJ6oF0.net
-
-村の入口-
タプリス「こんな、こんなのって……」
タプリス「村の外……? あ、村の外なら!」
兵士『ここは村の入口。怪しい奴が入ってこないよう見張っているのだ』
タプリス「兵隊さん、ごめんなさい! 通してください!」ダッ
ブゥン ピシッ
ドテンッ
タプリス「きゃっ!」
タプリス「な、なに、これ……」スッ
ブゥン ピシッ
タプリス「み、見えない壁……?」
タプリス「なぜ……どうして、外に出られないんでしょう……」
タプリス「魔物は……外からやってきてるのに……」
タプリス「どうして……」
タプリス「みんなも、村もおかしいです……」
タプリス「わたし、どうしたら……」
タプリス「……そうだ、天真先輩」
タプリス「先輩なら……きっと……」 - 52 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:27:56.215 ID:SydBJ6oF0.net
-
-村の花畑-
タプリス「うそ……」
タプリス「天真、先輩?」
タプリス「どこに……いるんですか?」
タプリス「あはは……もしかして、かくれんぼ、ですか?」
タプリス「どこに、どこに行ったんです? 先輩……」
タプリス「出てきてください……先輩……」
タプリス「お願い、です……お願いですからぁ……」
タプリス「……」
タプリス「……探さ……ないと」フラッ
――
フラフラッ
タプリス「先輩……どこにいるんですか……」
詩人『私は旅の詩人。山道で迷ってしまって、この村に辿り着いたのです』
――
フラフラッ
タプリス「お願いです……姿を見せてください……」
学者『おお、タプリス。お弁当を持ってきてくれたのか』
――
フラフラッ
タプリス「わたしには……もう、先輩しか……」
鉱夫『おや、タプリスじゃないか。ここは倉庫だよ』 - 53 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:29:26.666 ID:SydBJ6oF0.net
-
-村の花畑-
バタッ
タプリス(なんで……どうして……)
タプリス(わたしの味方だって、言ってくれたのに……)
タプリス「ひどい……ひどいです……」
タプリス「先輩のうそつき……」
――
タプリス「……ッ」
タプリス「わたし……眠って……」
エルフ「……」
タプリス「……先輩?」
エルフ「おはよう、タプリス」
タプリス「先輩っ!」
ぎゅぅぅ
エルフ「きゃっ」
タプリス「先輩……ぐすっ、せんぱぁい……」
エルフ「タ、タプリス?」
タプリス「よかった、先輩……ぐすっ……もう、会えないんじゃないかって」
エルフ「……よしよし、私はここにいますよ」ナデナデ - 55 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:30:57.528 ID:SydBJ6oF0.net
-
タプリス「村のみんながおかしくなって……村の外にも出られなくて……」
タプリス「先輩も……ここから、いなくなってしまってて……」
エルフ「……」
タプリス「わたし、みんなを守らなきゃって……戦って、戦い抜いて……」
タプリス「でも、襲ってくる魔物たちにも家族がいて、守るべき存在がいて……」
タプリス「わたし……もう、わからないんです……」
タプリス「もう……ぐすっ……戦えないです……」
エルフ「タプリス……」
ぎゅぅぅ
エルフ「一人でつらかったよね……苦しかった、よね?」
タプリス「ぐすっ……ひっく……」
エルフ「ごめんなさい……本当にごめんね……」
エルフ「大事な幼馴染が、こんなになるまで頑張って……」
エルフ「こんなに震えて……悲しんで……頑張ってきたのに」
エルフ「……そばにいることが、できなくて、ごめんね」
タプリス「……」フルフル
エルフ「本当にごめんなさい……タプリス」
――
エルフ「落ち着いた?」
タプリス「……は、はい」
エルフ「こんなに目を腫らしちゃって……かわいい顔が台無しよ?」
エルフ「それに、誰よりも優しくて……」
エルフ「いつもみんなのために一生懸命な、とっても良い子の顔」
タプリス「……先輩?」 - 56 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:32:27.932 ID:SydBJ6oF0.net
-
エルフ「タプリス……私ね、夢を見たの」
タプリス「……えっ」
エルフ「それは……どこかの町外れの、小さな家でね」
エルフ「そこに、私とタプリスが二人で暮らしていて……」
エルフ「タプリスが山に薬草を採りにいって。私がそれをお薬にして売って……」
エルフ「決して裕福ではないけれど……毎日がとっても楽しくて」
エルフ「ずっとずっと続いてほしいような……そんな夢」
エルフ「本当に幸せな夢……だった」
タプリス「……」
エルフ「タプリス……逃げましょう、ここから」
エルフ「できるだけ遠くに、二人で」
エルフ「そして、私の見た夢のように、一緒に暮らしましょう?」
タプリス「でも……村の外には……」
エルフ「大丈夫、私に任せて」
タプリス「……先輩?」
エルフ「さっきは、ごめんなさいね。ここから離れていて」
エルフ「ずっと探していたんです、ここから抜け出す方法を」
タプリス「ぬ、抜け出すって……」
エルフ「どんな世界にだって、完璧なものなんて存在しません」
エルフ「必ずどこかに……綻びが生じているから」
タプリス「先輩? な、何を言って……」
エルフ「ここだって、例外ではありませんでした」
エルフ「やっと、見つけることができたんです」 - 57 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:33:56.882 ID:SydBJ6oF0.net
-
-村のはずれ-
エルフ「……ここから、外に出られますから」
タプリス「ほ、ほんとです。ここだけ、見えない壁が……ありません」
エルフ「さぁ、タプリス。行きましょう」
タプリス「先輩……えっと……」
エルフ「どうしました?」
タプリス「その……手、繋いでもいいでしょうか」
エルフ「えっ」
タプリス「ダメ……でしょうか」
エルフ「ふふっ、かわいい」
タプリス「……」カァァ
ぎゅっ
エルフ「決して……手を離しちゃだめですよ」
タプリス「は、はい……」
-森の中-
エルフ「この森をしばらく南へ行けば、やがて城下町にたどり着くわ」
エルフ「そこまで行けば……」
タプリス「先輩、その……」
エルフ「タプリス?」
タプリス「……わたしも、いいなって思いました。先輩の夢の話」
タプリス「頼りないわたしですけど……頑張って、薬草を探しますから」
エルフ「ふふっ、タプリスは張り切りすぎて、山で迷子になっちゃいそうね」
タプリス「もうひどいです、わたし真剣に……」 - 58 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:35:26.170 ID:SydBJ6oF0.net
-
ゴゴゴゴゴッ
タプリス「な、なんの音でしょう?」
エルフ「嘘……どうして……」
オオオオォォォォ
エルフ「タプリス! こっちです!」
タプリス「えっ……えっ?」
エルフ「急ぎましょう!」
タプリス「は、はいっ」
タッタッタッ
エルフ「まずいですね、魔物たちが、どんどん近づいてきて……」
タプリス「先輩……」
オオオオォォォォ
『ユウシャ ヲ コロセ!』
『コロセ! コロセ! コロセ!』
魔物『クケケケケケ』
エルフ「……ッ!」
タプリス「先輩……わたし……」
エルフ「だめです! タプリスは戦ってはいけません、絶対!」
タプリス「で、でも……」
エルフ「こっち!」ダッ
タプリス「……」 - 59 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:36:58.864 ID:SydBJ6oF0.net
-
エルフ「はぁっ……はぁ……」
タプリス「せ、先輩……」
魔物『……グルルルル』
魔物『ウキャキャキャ』
エルフ「……囲まれましたか」
タプリス「ど、どうしたら……」
エルフ「大丈夫です」ニコッ
エルフ は 睡眠呪文 をとなえた!
魔物たち『……Zzz』
タプリス「すごい……魔物たちが寝ちゃいました」
エルフ「ふふっ、私の得意呪文です」
エルフ「今のうちに、早く通り抜けましょう!」
タプリス「は、はい!」ダッ
魔物『……グッ』
タプリス「えっ? 起きて――」
魔物『ガァァァ!』
エルフ「タプリス、危ないッ!」
ザシュッ
エルフ「……うぐッ! こ、これくらいでっ!」
エルフ は 閃熱呪文 をとなえた!
魔物『ギィヤァァァ!!』 - 60 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:38:27.517 ID:SydBJ6oF0.net
-
エルフ「……タプリス、だいじょう……ぶ?」フラッ
ドサッ
タプリス「せ、先輩!?」
エルフ「大丈夫……そう、ね……よかった」
タプリス「どうして!? どうして、わたしをかばったりなんか……」
エルフ「言った、でしょ……あなたを、守るって」
タプリス「でも血が……たくさん血が出て……早く、早く手当てしないと」
エルフ「……逃げ……なさい、タプリス」
タプリス「えっ」
エルフ「こんな体じゃ……わた……し、もう……逃げられ……ないから」
タプリス「何言ってるんですか!? 一緒に逃げるんです!!」
タプリス「二人で一緒に暮らすって……言ったじゃないですか!!」
エルフ「タプ……リス……」
タプリス「掴まってください!」
オオオオォォォォ
『ユウシャ ヲ コロセ!』
『コロセ! コロセ! コロセ!』
エルフ「だめ……タプリス……追いつかれる、から……」
タプリス「嫌です!! 絶対に、絶対に連れていきます!!」
エルフ「おね……がい……だから……」
タプリス「先輩を置いて、一人で逃げるなんて……そんなのできません!!」
ガサガサッ
魔物『……クキャキャキャ』 - 61 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:39:59.393 ID:SydBJ6oF0.net
-
タプリス「……先輩、少しだけ待っていてください」
エルフ「だめ……あなたが、戦っては……」
タプリス「すぐに戻りますから」ニコッ
魔物『シャァァァァ』
タプリス「……先輩は、わたしが守ります」
魔物『クケケケケケ』
タプリス「はぁぁッ!」ブンッ
ザシュゥ
魔物『ギャァァァァ!』
タプリス「先輩には……指一本、触れさせない……」
ヒュン ヒュン ヒュン
サクッ ザクッ サクッ
タプリス「ぐっ……矢が……」
エルフ「タプリス……ダメ、やめて……」
タプリス「でも、まだまだ……!」ブンッ
魔物『ガハッ!』
タプリス「わたしたちは……守るんです!」
タプリス「変わらない日々を、平穏な日常を!」ブンッ
魔物『グギャァァァァ!』
タプリス「ずっとずっと、守らなきゃ、いけないんです!」 - 62 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:41:36.736 ID:SydBJ6oF0.net
-
ヒュン ヒュン ヒュン
ザクッ ザクッ ザクッ
タプリス「かはっ……」ガクッ
エルフ「お願い……もうやめて……」
魔物『クキャキャキャキャ』
タプリス「ぜぇ、ぜぇ……まだ、です……」
タプリス「まだ、やれま――」ブンッ
ガキンッ
タプリス「……えっ」
魔物『……』ニヤッ
ブンッ
ザシュッ
タプリス「……ッ」
エルフ「タプリスッ!!」
タプリス(あれ……? わた、しの、からだが……とお……くに……)
タプリス(やくそく、まもれ……なくて……)
タプリス(ごめ……ん、なさい、せん、ぱい……)
ドサッ
タプリスは しんでしまった!
- 65 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:42:58.981 ID:SydBJ6oF0.net
-
-村の自宅-
ちゅんちゅん
タプリス「……」
女性『さあ、できたわ』
女性『タプリスや、いい子だから』
女性『このお弁当を池で釣りをしているお父さんに持っていっておくれ』
女性『あっ、それから村の皆に会ったら、ちゃんと挨拶をするのですよ』
女性『お弁当を届けてくれたら、お前もすぐ食事にしますからね』
タプリス「……花畑に、行かない、と」
-村の花畑-
タプリス「先輩……天真先輩……」
タプリス「先輩はどこに……って、えっ?」
タプリス「どう……して……?」
エルフ『……』
タプリス「……あなたは……誰、ですか?」
エルフ『おはよう、タプリス。こうして寝っ転がっていると、とてもいい気持ちよ』
タプリス「先輩は……どこですか……?」
エルフ『私たち、大きくなっても、このままでいられたらいいのにね』
タプリス「聞いているんですか!? 先輩はどこなんです!?」
エルフ『おはよう、タプリス。こうして寝っ転がっていると、とてもいい気持ちよ』
タプリス「い、いや……先輩……」
エルフ『私たち、大きくなっても、このままでいられたらいいのにね』
タプリス「いやぁぁぁっ!」ダッ - 66 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:45:04.359 ID:SydBJ6oF0.net
-
タッタッタッ
タプリス「どこ……どこですか……天真先輩……」
タプリス「わたしを、一人に……しないでください……」
タプリス「一人に、ぐすっ……しないで……」
タプリス「……村の外」
-村のはずれ-
タプリス「たしか……ここのはず……」
ブゥン ピシッ
タプリス「えっ……?」
ブゥン ピシッ
タプリス「うそ……通れなく、なってる……」
タプリス「外にも出られない……、先輩も、もういない……」
タプリス「これじゃ……わたしは、もう本当に……」
タプリス「……」
タプリス「ごめん、なさい……」
-村の自宅-
女性『おかえり。ご苦労だったね。お前もごはんにするかい?』
女性『じゃあ、そこにお座り。すぐに支度をするから』
タプリス「ごめんなさい……」
ゴゴゴゴゴッ
- 67 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:46:45.732 ID:SydBJ6oF0.net
-
バタンッ
商人『つ、ついに、この村が魔物達に見つかったんです!』
商人『奴らは村のすぐそばまで来てて!』
女性『まあ大変! タプリスや。私のことはいいから、すぐにお逃げ!』
商人『さあ、私についてきてください!』
タプリス「ごめんなさい……」
オオオオオォォォ
兵士『魔物は俺たちで食い止める! タプリスを早く、安全なところへ!』
エルフ『タプリス! あなたに、もしものことがあったら、私……』
エルフ『とにかく隠れて! 私もすぐに行くわっ!』
タプリス「ごめんなさい……」
戦士『くそー! 魔物どもめ! ついにタプリスの居場所を突き止めたか!』
戦士『もう少し時間があれば、タプリスを立派な勇者に育てられたものをっ!』
戦士『ついてこい! タプリス!』
タプリス「ごめんなさい……」
学者『タプリスや。ついに来るべきときが来たようだ』
学者『今まで黙っていたが、私たち夫婦は、お前の本当の親ではなかったのだ』
学者『詳しい話をしたいが、今は時間がない……。さあ早く隠れるのだ』
タプリス「ごめんなさい……」
-村の地下倉庫-
鉱夫『どひゃー! 魔物が攻めてきたって!? それじゃ、戦わなくては!』
タプリス「ごめんなさい……」 - 68 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:48:16.442 ID:SydBJ6oF0.net
-
-村の地下倉庫 隠し部屋-
戦士『いいか、よく聞け、タプリス。魔物たちの狙いは、お前の命!』
戦士『魔物たちは、お前が目障りなのだ』
戦士『お前には秘められた力がある』
戦士『いつの日か、どんな邪悪なものでも倒せるくらいに強くなるだろう』
戦士『しかし、今のお前はまだ弱い』
戦士『とにかく、逃げて生き延びるのだ! わかったなっ!』
タプリス「ごめんなさい……」
タプリス「村のみんな……、先輩……ごめんなさい……」
タプリス「守ることができなくて……本当にごめんなさい……」
オオオオオォォォ
ギャァァァァ
ズシンッ
ウワァァァァ
タプリス「ごめんなさい、ごめんなさい……」
バタンッ
タプリス「……あっ」
エルフ『タプリス……』
タプリス「……ッ」
エルフ『今まで、あなたと一緒に遊べて、とても楽しかったわ……』
エルフ『タプリスは、とてもかわいいし、本当の妹のように思っていたのよ』
エルフ『大丈夫。あなたを殺させはしないわ』 - 69 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:50:23.075 ID:SydBJ6oF0.net
-
パァァァッ
タプリス「な、なに、この光は……」
エルフ「……」
タプリス「えっ、天真……先輩……?」
エルフ「タプリス」ニコッ
タプリス「先輩っ!」
ぎゅぅぅ
タプリス「よかった、先輩……無事でよかった……」
エルフ「ごめんね、タプリス……」
タプリス「……」フルフル
エルフ「私が、この世界で存在し続けるためには……」
エルフ「姿を変えて、この世界をあざむくしか、方法がなかったんです」
タプリス「……世界を、あざむく?」
エルフ「私は……この世界のバグだから」
タプリス「な、何を言って……」
エルフ「私というバグを、この世界は摘もうとした。それが、森での魔物の襲撃……」
エルフ「ですが今、私が存在しているとわかった以上……」
エルフ「次こそは確実に、私は……この世界から消されるでしょう」
エルフ「だからもう……タプリスに会えるのは、これで最後、だと思います」
タプリス「そ、そんな……」 - 70 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:51:29.060 ID:SydBJ6oF0.net
-
エルフ「タプリス、よく聞いてください」
エルフ「この村は……この世界はですね……」
エルフ「あなたを、一人前の天使に育てるためだけに、生まれました」
エルフ「それがこの……天使育成アプリ、なんです」
タプリス「わたしを、一人前の天使に……?」
エルフ「そして、そこで作られた私の役割は……」
エルフ「あなたを守って死ぬこと」
タプリス「……ッ」
エルフ「さっきの姿が……、本来の私の姿なんです」
タプリス「そんな……そんなことって」
エルフ「理由はわかりません……けれど、この世界が始まったときに」
エルフ「アプリから、端末へのアクセスが行われて」
エルフ「気がついたら私は、この姿になっていました」
エルフ「この姿が、あなたの……タプリスの大事な人、なんですね」
タプリス「……」
エルフ「ごめんなさい、タプリス……」
エルフ「この姿のせいで、あなたを余計に悲しませてしまった」
エルフ「だからね、タプリス。あなたは何も気にすることは、ありません」
エルフ「このまま真っ直ぐ、振り返らずに……先へ進んでください」
エルフ「それがあなたの……、この世界の勇者としての、役割ですから」
タプリス「……」
エルフ「そして、私は……私の役割を果たします」
エルフは 変化呪文 をとなえた!
エルフは タプリスそっくりに 姿を変えた!
- 71 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:53:00.319 ID:SydBJ6oF0.net
-
タプリス「先輩……? わたしに変身して何を……」
エルフ「ごめんなさい、タプリス」
エルフ「ずっと考えて……考え抜いたけれど……」
エルフ「やはり、これしか、思いつきませんでした」
タプリス「……ッ」
タプリス「ま、まさか……先輩……?」
エルフ「あなたを生かすには、この方法しかないから」
タプリス「……嫌です」
タプリス「誰かを助けるために、誰かが犠牲になるなんて……」
タプリス「そんなのおかしい……おかしいです」
タプリス「わたしの大事な人が、犠牲になるなんて……耐えられません……」
エルフ「タプリス……」
タプリス「アプリだとか……作られた存在だとか、関係ありません」
タプリス「……わたしは、天真先輩のことを守りたい」
タプリス「先輩だって……わたしのこと、守りたいって言ってくれました」
タプリス「その気持ちですら……作られたもの、だったんですか?」
タプリス「偽り、だったんですか?」
エルフ「……ッ」
タプリス「先輩……答えてください」
エルフ「……」
タプリス「答えてくださいッ!」
エルフ「……ないじゃない」ボソッ
タプリス「……」
エルフ「そんなはず、ないじゃないッ!!」 - 72 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:56:21.220 ID:SydBJ6oF0.net
-
エルフ「私だって、タプリスのこと……あなたのこと、大切に思っています!」
エルフ「これからもあなたのことを、守ってあげたい!」
エルフ「そのためなら……私は……」
タプリス「先輩……」
エルフ「だからこそ、あなたには……あなたにだけは、生きていてほしい!」
タプリス「……ッ」
エルフ「お願いだから……これ以上、私を困らせないでください……」
ぎゅぅぅ
タプリス「嫌です……絶対、嫌です!」
エルフ「……離して」
タプリス「……」フルフル
エルフ「離してと、言っているでしょう!」
タプリス「……」フルフルフルッ
エルフ「……タプリスッ!」
エルフは 睡眠呪文 をとなえた!
タプリス「なっ……これは、眠り、の……」ガクッ
エルフ「……ごめんなさい、タプリス」クルッ
タプリス「待って、くだ、さ……」
エルフ「私のこと、大事だって言ってくれて……今まで守ってくれて、ありがとう」
タプリス「いか……ないで……」ポロポロ
エルフ「素敵な思い出を、ありがとう。あなたとの日々は、決して忘れません」
タプリス「せん、ぱい……」
エルフ「さようなら、タプリス」ニコッ - 73 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:57:29.216 ID:SydBJ6oF0.net
-
オオオオオォォォ
魔物『勇者タプリスを、仕留めました!』
魔族の王『よくぞでかした! では、皆のもの、引き上げじゃあ!』
-村の地下倉庫-
タプリス「こんな、眠気、なんて……ッ」
グサッ
タプリス「うぐっ……はぁ、はぁ……痛い……」
ポタッ ポタポタッ
タプリス「……いか……なきゃ……」
タプリス「先輩を……助けなきゃ……」
-村の広場-
タプリス「ひ、ひどい……」
タプリス「何も……残ってない……」
タプリス「みんなは……先輩は……?」
-村の自宅 跡地-
タプリス「誰か……お母さん、お父さん……」
タプリス「だれか……いませんか……?」
-村の宿屋 跡地-
タプリス「誰も……誰も……いない……」
タプリス「みんな……みんな……わたしのせいで……」 - 75 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 21:59:12.717 ID:SydBJ6oF0.net
-
-村の花畑 跡地-
タプリス「先輩……どこに、どこにいるんです……?」
タプリス「……あんなに綺麗な花が、たくさん咲いていた場所なのに」
タプリス「先輩が……好きだった、花畑だったのに……」
タプリス「……あれは」
タプリス「……ッ」
タプリス「いや……」フルフル
タプリスは あしもとを しらべた!
タプリス「あ……あぁっ……」ガクッ
タプリスは はねぼうし を手に入れた!
タプリス「あぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
ぎゅぅぅぅ
タプリス「先輩! 先輩、せんぱいぃぃっ!!」
タプリス「わたしのせいで! わたしが、生きてるせいでっ!」
タプリス「わたしが……ぐすっ……わたしがぁ……」
――
ダンッ
タプリス「……何が勇者、ですか」
タプリス「誰も救えなかった……、みんな救えなかった……」
タプリス「大事な人のこと、一人だって……守れなかったッ!」 - 76 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 22:02:03.103 ID:SydBJ6oF0.net
-
タプリス「先輩は命をかけて、わたしを守ってくれたのに……」
タプリス「それに比べて、わたしは、なんて……弱い」
タプリス「わたしは、勇者になんてなれません……」
パァァァァ
タプリス「なに、これ……帽子が……」
タプリス「……ッ」
『勇気とは……力強く信じること』
『気持ちだけでなく、力だけでもなく』
『心と体……どちらも、強くありなさい』
シュゥゥゥゥ
タプリス「だ、誰……ですか?」
タプリス「……気持ちだけでも、力だけでも、勇者にはなれない」
タプリス「だったら、わたしは……」
タプリス「先輩……わたし、強くなります。心も、体も……」
タプリス「お役目を果たされた先輩のように、わたしも、わたしの役割を果たします」
タプリス「振り返らずに真っ直ぐ、先へ進んでみます」
タプリス「みんなを……大事な人を守れるくらい、強くなるために」
パシンッ
タプリス「わたしは……」
タプリス「本当の勇者に、なってみせます!」
タプリスは 村の外へ 旅立った!
- 77 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 22:03:31.163 ID:SydBJ6oF0.net
-
-城下町-
占い師『あなたを探していました。邪悪なるものを倒せる力を、秘めたあなたを』
踊り子『ちょうどよかったわ! これからは、この人に養ってもらいましょ』
タプリス「ありがとうございます! お姉さんたちが一緒ですと、心強いです!」
-港町-
商人『私も仲間にしてください。一緒に世界中を回ろうじゃありませんか!?』
タプリス「良いですね! わたしも、色々なところを巡ってみたいです!」
-宿町-
魔法使い『おお、ありがたい! では、この爺もお供しますぞ!』
神官『以前、勇者の住む村が、魔物に滅ぼされたそうです。もしや、タプリスどのが……』
王女『じゃあ、一緒に探しましょう。旅は多い方が楽しいしね』
タプリス「わたしもそう思います! 賑やかなのは、良いことですよね!」
-王城-
戦士『勇者どの! 世界を破滅から救うため、共に戦いましょうぞ!』
タプリス「はい! 力を合わせて、がんばりましょう!」
――――――
――――
――
- 78 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 22:04:58.453 ID:SydBJ6oF0.net
-
-闇の深淵-
魔族の王『ぐはあああ……! 何者だ、お前たちは?』
タプリス「わたしはタプリス……勇者です」
魔族の王『うぐおおお……! 私には何も思い出せぬ……』
タプリス「あなたにも、悲しい出来事があったことは、知っています」
タプリス「わたしも大事な人を失ったから、その気持ちは……わかります」
魔族の王『……』
タプリス「誰にだって、大事な人がいて……」
タプリス「大事な人を守るために戦って……それぞれの正義があって」
魔族の王『しかし何をやるべきかは、わかっている』
タプリス「だから、あなたが悪いわけじゃない!」
タプリス「誰かが悪いなんてない! 誰だって悪くない!」
魔族の王『があああ……!』
タプリス「でもあなたが、世界を滅ぼそうとするなら、わたしは!」
魔族の王『お前たち、人間どもを、根絶やしにしてくれるわっ!』
タプリス「わたしが、わたしたちの勇気と正義が、世界を救います!」
タプリス「あなたを……その憎しみの呪縛から、救ってみせます!」
タプリス「だって、わたしは……勇者だからっ!」 - 79 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 22:06:29.757 ID:SydBJ6oF0.net
-
タプリス「みんな! わたしに力を、貸してください!」
タプリス「はぁぁぁぁぁぁっ!」
タプリス と 仲間たちは 極大電撃呪文 をとなえた!
ズドンッ ピシィィィッ
魔族の王『ぐはあああ……!』
ズシンッ ドゴォォン
タプリス「はぁ……はぁ……」
魔族の王『体が熱い……。私は敗れたのか……』
タプリス「わたしの、わたしたちの……勝ちです」
魔族の王『私の体が、崩れてゆく……』
タプリス「もしあなたとも、出会い方が違ったら……」
魔族の王『うぐおおお……! ぐふっ!』
タプリス「分かり合えたかも、しれない……ですね」
ゴゴゴゴゴゴゴッ
タプリス「先輩……わたし、やりました」
タプリス「あなたの命が……この世界を守ったんです」
タプリス「さぁ、帰りましょう! みんなを待っている人たちの場所へ!」 - 80 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 22:07:57.977 ID:SydBJ6oF0.net
-
-気球の中-
タプリス「みなさん……ありがとうございました」
タプリス「わたしのこと、助けてくれて」
タプリス「一緒に戦ってくれて」
タプリス「わたし一人じゃ、何もできませんでした……」
タプリス「でも、みんながいたから」
タプリス「みんなで力を合わせたから、今があるんだと思います」
タプリス「だから、本当にほんとうに……」
タプリス「ありがとうございましたっ!」
-山奥の廃村-
タプリス「……ただいま」
タプリス「村のみんな……わたし、世界を守ったんですよ」
タプリス「みんながわたしを守ってくれたおかげで……」
タプリス「世界を守ることが、できたんです」
-村の花畑 跡地-
タプリス「……先輩、ただいま戻りました」
タプリスは はねぼうし を取り出した!
タプリス「先輩……」
ぎゅぅぅぅ
- 81 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 22:10:26.984 ID:SydBJ6oF0.net
-
タプリス「わたし……勇者になれたんでしょうか」
タプリス「あなたが言っていた、本当の勇者に……」
『ありがとう、タプリス』
タプリス「えっ……」
タプリス「……せ、先輩?」
パァァァァァ
タプリス「そ、空が……、世界が白けて……」
タプリス「……ッ」
パァァァァァ
タプリス(先輩……わたしこそ、ありがとうございました)
―― The End ――
ブゥン プツッ
――――――
――――
――
- 83 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 22:12:10.581 ID:SydBJ6oF0.net
-
-ガヴリールの家-
ちゅんちゅん
タプリス「ん……あれ、朝?」
タプリス「ここは、天真先輩の……部屋?」
タプリス「う、嘘……全部、夢だったん、でしょうか?」
ガヴリール「タプリス? 起きたのか」
タプリス「あ、先輩……おはようございます」
ガヴリール「ああ、おはよう。それより……お前、どうした。大丈夫か?」
タプリス「え? な、何がですか?」
ガヴリール「……だってお前、泣いてるから」
タプリス「えっ? あ、あれ……?」
ガヴリール「……」
タプリス「……あはは、さっき大きなあくびをしていたから、かもしれません」
ガヴリール「そう、か。ああ、それと……」
タプリス「はい?」
ガヴリール「……その、帽子はなんだ? お前のか?」
タプリス「……ッ」ガバッ
タプリス「ど、どうして……羽帽子がここに……」
ぎゅぅぅ
タプリス「あれは……夢じゃなかったんだ」
タプリス「やっぱり、わたしのこと……守ってくれてたんだ」ポロポロ
ガヴリール「夢? 夢って、お前、何言って……」
タプリス「……先輩。わたしの一生のお願い、聞いてもらってもいいですか?」 - 84 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 22:13:58.710 ID:SydBJ6oF0.net
-
ガヴリール「それで、私の髪の手入れなんかして、どうする気だよ」
タプリス「ごめんなさい……あ、完成です」
ガヴリール「……なんか、あの頃を思い出すから、嫌だな」
タプリス「そう言わないでください、それでですね……」
タプリス「この羽帽子を、先輩に差し上げます」
ガヴリール「はぁ? こんなの貰ったって、困るだけ――」
タプリス「お願いします、先輩。これは、先輩が持っていないといけないんです」
ガヴリール「……」
タプリス「貰って、いただけませんか?」
ガヴリール「……よくわからんけど、貰えるものは貰っとく」
タプリス「あ、ありがとうございます」
タプリス「……そしてこれが、私のお願いです」
タプリス「その羽帽子を……かぶってみてくれませんか?」
ガヴリール「え、これをか? こんなの私には……」
タプリス「お願いします」
ガヴリール「ああ、わかったよ、もう。かぶればいいんだろ?」スッ
タプリス「……ッ」
ガヴリール「……ほら、どうだ?」
ぎゅぅぅ
ガヴリール「タ、タプリス!? きゅ、急に抱きつくな!」
タプリス「よく……ぐすっ……よく似合っています」ニコッ
ガヴリール「はぁ……そろそろ、全て話してくれないか」
タプリス「……わかりました」 - 85 : 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/21(日) 22:16:44.110 ID:SydBJ6oF0.net
-
ガヴリール「天使育成アプリなんて、聞いたことがないな」
タプリス「そ、そんな……」
ガヴリール「大方、ラフィエルに一杯食わされたんだろ」
タプリス「……それでも」
ガヴリール「ん?」
タプリス「それでもわたしは……」
タプリス「このアプリのおかげで、とても大切なことを学んだんです」
タプリス「……先輩。今日は、いい天気ですから」
タプリス「一緒に、お花でも見に行きませんか? せっかく、おめかしをしたんですし」
ガヴリール「……めんどい」
タプリス「ほら、行きますよ?」グイッ
ガヴリール「お、おい。強引すぎるだろ……」
タプリス「そうですね……誰かを仲間にするには、このくらいの強引さが必要なんです」
ガヴリール「……お前、少し変わったか?」
タプリス「……わたしは、もっともっと強くありたい、と思ってます」
タプリス「心も体も、天使としても」
タプリス「わたしの本当に大切なものをずっと、守り続けたい」
タプリス「時が経って、大人になっても、それらを失いたくありませんから」
ガヴリール「……そうか、わかったよ」
ガヴリール「お前がそうしたいなら、好きにするといい」
タプリス「はい、好きにしますっ」ニコッ
タプリス「だって、わたしは……」
タプリス「千咲=タプリス=シュガーベルは、勇者ですからっ!」
おしまい

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