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勇者「魔王なんていなかった」
- 1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/30(月) 09:42:41.17 ID:YsUcS1iu0
- ―この城に来てから何年になるだろう
はるか昔、勇者と呼ばれ、魔王討伐の命を受けた男がそこに居た
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/30(月) 09:48:30.78 ID:YsUcS1iu0
- 仲間といえる人間と旅をした事もある
しかし、魔王の存在が架空のものと知った時、全員が困惑していた
一度帰還し、王にありのままの現実を話した翌日
城下に伝えられた事実は酷いものであり、魔王という存在を秘密裏に生かす事を望んだ勇者とその一味を処刑するという内容だった
魔王なんていなかった、その一言がこんな結末になろうとは
誰が想像できただろう - 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/30(月) 09:52:36.11 ID:YsUcS1iu0
- 狂っている
存在しないものを討伐する為に旅をし、魔物と呼ばれる物を惨殺し続けた結果がこれだ
地下牢に閉じ込められた時に感じた憎しみ、悲しみを忘れることは無いだろう - 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/30(月) 10:02:00.37 ID:YsUcS1iu0
- 処刑当日、見せしめの為に一人ずつ断頭台に立たされることになり、始めは賢者の称号を持つ人間が呼ばれた
彼女とは長い付き合いだった、一番印象に残っているといってもいい程に
幼い時分より僧侶としての修業を積み、十六の時に討伐命により一緒に旅をすることになった
いつも人の事を重んじていて、自分の事を顧みない
そんな人だった - 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/30(月) 10:05:30.89 ID:YsUcS1iu0
- 「待て、俺が先に行く」
呼ばれた賢者とは別の牢獄から声がした――戦士である
彼はとある村の出身で、豪傑熊などの謂れもあるたくましい人だ
いつも行動が直線的で、曲がったことが嫌いな彼の性格は戦闘にも大いに表れていた
そう、あの日も - 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/30(月) 10:11:42.91 ID:YsUcS1iu0
- 執行人を縛られた腕で殴り倒し、腰元から鍵を奪った彼は、それをこちらに投げる
鍵を受け取り、仲間を牢獄から解放していく
起き上がった執行人と縛られた腕のまま格闘を続けた彼はこう言っていた
俺もあとで合流する、だから心配せずに行け、と
しかし、彼が合流することはなかった - 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/30(月) 10:17:18.47 ID:YsUcS1iu0
- 地下から脱した時に見えたのは、王宮へと続く石畳
今までは逆族として捕えられた人物から情報を入手する為に、幾度となく通った道
まさか自分達がそこから脱する為に通る事になろうとは、思いもしなかった
足音が一つ鳴り止んだ事に気付き振り返ると、魔法使いが空を見上げていた - 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/30(月) 10:27:21.06 ID:YsUcS1iu0
- いつも何を考えてるかわからないような人で、浮いていると言えば浮いていた
それでも、ここぞという時にはその博学と戦闘力で大きく貢献してくれる、この時もそうだった
ここにも王宮兵が駆け付ける、足止めをする人間は必要だ
虚ろな瞳のままそう言って、こちらに視線を投げると、彼女は微笑む
何、死にやしないよ
私は勇者の連れだから
その言葉を信じて振り返らずに走った、もう彼女と再会できないだろうという予感はしていたが…… - 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/30(月) 10:40:02.47 ID:YsUcS1iu0
- 後ろから王宮兵の怒号が聞こえる
魔法使いが魔法を使ったのだろう、空が赤く染まっていた
戦士はどうなったのだろうか、まさか執行人一人にあいつがやられるわけがない
かといって援軍が来ないわけもない、どうして俺も残ってやれなかったのか
魔法使いはどうだろう?
大魔法が使え、王宮兵程度の実力なら足元にも及ばないだろう
しかし、彼女は人を殺められるような性格ではない
それを考えた時、背筋が凍りつくような感覚を覚える
――どれくらい走ったのだろうか、見渡す限りの雑木林
肩で息をする賢者と目が合う、彼女は何も言わずに首を横に振った - 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/30(月) 10:55:20.56 ID:YsUcS1iu0
- 城の方に視線を戻した時、不意に賢者の呻く様な声が聞こえ、振り返る
華奢な身体に突き刺さる一本の矢
木々の間から顔を覗かせた兵士が汚く笑いながらこちらを見ていた
許せなかった、こんな現実が
憎らしかった、こんな人間が
魔法を詠唱した刹那、小さな手に口を塞がれた
賢者を見た時、その横顔には一筋の涙が伝っていた
こんな時まで、人の事を考えているなんて馬鹿げている
どうせなら一緒にここで……そう考えるのがわかっていたのか、賢者はもう一度首を横に振ると、静かに言った
―行って、世界を救って
――あなたは最後まで私の勇者様でいて下さい - 33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/30(月) 11:09:26.86 ID:YsUcS1iu0
- 世界中の街や城に伝えられたのであろう、姿を隠して旅をする中で色々な噂を聞いた
王家に逆らい、魔王に付従った逆族、と
仲間についての噂はあまり聞くことは無かったが
話によると、賢者は酷い辱めを受けた後処刑されたと聞く
どこまでも汚い、これが人間のやることか
これでは魔物と何一つ変わらない
いや、存在を肯定する為だけに生きる魔物の方が幾分かまともに感じる
もう何が正しいのかわからない、わからない - 34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/30(月) 11:17:15.88 ID:YsUcS1iu0
- 気付いた時、そこに辿り着いていた
魔王と呼ばれた者がかつての勇者と戦い敗れ去ったという、伝説に残るその城に
しかし、魔王を倒した勇者の参考文献などは一つもなく勇者の存在は伝説として語り継がれているだけであった
その時に気付いた、迫りくる魔物を駆逐し、人間の力を知らしめる
人間という存在を肯定する為に、旅をしていたのではないかと - 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/30(月) 11:24:23.91 ID:YsUcS1iu0
- 歴代の勇者も自分達と同じように事実を知った後、処刑されたのではないか?
――悪寒がする
果てしない旅路に見出したのは魔王という存在ではなく、人間が生み出した『魔王』という架空
下らない
俺は、
俺は何の為に
誰の為に、この世界に平和を願ったのだろうか? - 39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/30(月) 11:30:49.54 ID:YsUcS1iu0
- そんな偽りの平和なら壊してしまえばいい
下らない妄想と平和という幻想を抱いた人間に裁きを与えよう
それが『魔王』を倒す為に存在する『勇者』としての最後の誇り
- 42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/30(月) 11:40:34.16 ID:YsUcS1iu0
- ふと、物音が聞こえ顔を上げる
そこには王家の紋章を携えた一人の少年が剣を構えていた
数年前の自分もあの様な眼をしていたのだろう、光に満ち溢れた眼を
平和を願い、己の正義の為に剣を揮う - 44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/30(月) 11:51:18.51 ID:YsUcS1iu0
- 俺がここに居なければ、この少年もまた『本当の魔王』という存在を見出していたのかもしれない
閃光が走る、どうやら考え事に耽っている余裕はなさそうだ
さあ始めようか、人間よ
どちらが本当の『魔王』なのか
――はるか昔、勇者と呼ばれ、魔王討伐の命を受けた男がそこに居た - 45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/30(月) 11:53:05.69 ID:YsUcS1iu0
- おわり
- 46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/30(月) 11:55:58.74 ID:tttFcazp0
- 乙
- 47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/30(月) 11:56:26.92 ID:HVkU8QD70
- 面白かった
- 48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/30(月) 12:07:05.89 ID:0XYrO7Ab0
- 乙
- 49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/30(月) 12:14:16.26 ID:6t9iR/6I0
- 乙
- 50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/04/30(月) 12:16:58.05 ID:YsUcS1iu0
- 厨二臭い中読んで頂いて有難う御座いました

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