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郁乃「すっこや~ん!あ~そ~ぼ!」

3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 21:12:41.92 ID:zFM1+JXm0
――赤阪郁乃・自宅

ピピピピピ
郁乃「…ん~」パシ

郁乃「…ふぁ~。よ~寝たな~」ゴシゴシ

郁乃「今日もええ天気で気分もええわ~」シャッ

郁乃「でも今日は日曜で部活休みか~」

郁乃「監督の仕事もないし末原ちゃんをいじれなんだのは退屈やなぁ」

郁乃「どうせ暇やし、誰かんとこ遊びに行こかしら~」




5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 21:15:31.35 ID:zFM1+JXm0
郁乃「でも誰んとこ遊びに行く~?」

郁乃「末原ちゃん家に押しかけてもええんやけど~」

郁乃「どうせ部活で会うんやし、たまには普段会わん人のとこ行ってみよっかな~」

郁乃「ん~…」

郁乃「ほなダーツやな~」フララ

郁乃「壁一面に張り付けたプロ麻雀カードめがけて~…えいっ」フラッ

ヒュン ドスッ

郁乃「すこやんか~」ニコニコ

郁乃「久しぶりやなぁ~。あたしのこと覚えてるかな~」ニコニコ

郁乃「壁に穴開いてもうたけど…雀力で直せば問題ないな~」

郁乃「ほな着替えて早速茨城まで~」


7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 21:18:11.98 ID:zFM1+JXm0
郁乃「雀力使えば茨城まででもすぐやな~」ピンポーン

小鍛治母『はーい!どちら様ですか?』

郁乃「あたし赤阪郁乃ゆうて健夜さんの友達です~。健夜さんいますか~?」

小鍛治母『あらあら、わざわざいらっしゃいませ!どうぞ上がっててくださいな』

郁乃「ほなお邪魔します~」ガチャ

小鍛治母「健夜ー!お友達が来たわよー!」

郁乃「あ、健夜さんのお部屋まで上がらせてもらいますね~」トントン

健夜「う~ん、こーこちゃんまた来たのー…?」ショボショボ


8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 21:19:02.56 ID:2BntzBSh0
万能すぎんだろ雀力


9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 21:19:37.09 ID:zFM1+JXm0

健夜「遊びに来るのはいいけどせめて昼からにしてよねもー…」

健夜「オフの日はゆっくりさせてって言ったで…」ガチャ

郁乃「」ニコニコ

健夜「しょ…」

健夜「」フリーズ

郁乃「すっこや~ん!あ~そ~ぼ!」

健夜「ひっ…」

健夜「うわあああああああああああああああああ!」ドターン

小鍛治母「すこや!うるさいわよ静かにしなさい!」

健夜「な…なな…なん…あの…えっ…ええええええ~~…」パクパク

郁乃「すっこや~ん。ひっさしぶりやね~。会えて嬉しいわぁ」ニコニコ


10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 21:20:46.34 ID:E3jOGix00
アラフォーにここまでの恐怖植え付けるとかなにしたん…


11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 21:21:24.12 ID:zFM1+JXm0

郁乃「ほなお部屋お邪魔します~」フララ~

健夜「ひっ…」

健夜「え、えーと…」ビクビク

健夜「い、いらっしゃいませ…?」ヒクッ

郁乃「はいな~」ニコニコ

健夜「そ、それで…その、えっと、な、何しに…」

健夜(まためんどくさいことに巻き込まれるんじゃ…)ハラハラ

郁乃「休日で暇やさかいな~。朝一で雀力使って遊びにきたんよ~」ニコニコ

健夜「朝一で来たの!? 大阪から!?」


12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 21:22:40.33 ID:zFM1+JXm0
健夜「ていうか赤阪さんそもそも私の家知らないよね!?」

郁乃「雀力使ったらすぐやしな~」

郁乃「茨城に着いたら雀力ですこやんの居場所もらくらく特定や~」

健夜「いやそれはおかしいよ!」

健夜「雀力の使い方間違ってるよ!」

健夜「そりゃ私も出来るけど!」

郁乃「まぁ立ち話もなんやし~? すこやんも座り~な~」ヨイショ

健夜「それ私のセリフ!」

健夜「そして勝手にベッドに座らないでー!」

郁乃「え~? 私とすこやんの仲やろ~?」

健夜「いつなの!? いつ私と赤阪さんの間に仲と言えるものが出来上がったの!?」

郁乃「ええ~ん? 友達に向かってそれはひどいな~」グスッ

健夜「友達じゃないよ!」

健夜「寧ろ赤阪さんが私を友達だと思ってたことが驚きだよ!」


13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 21:24:07.10 ID:zFM1+JXm0
郁乃「何なん、そんなこと言ってええん~?」

郁乃「折角の数少ない友達が一人減ってまうで~?」

健夜「私達が友達って前提で話を進めないで!」

健夜「後友達いるから!こーこちゃんがいるから!」

健夜「…確かに少なかったよ!」

郁乃「しっかし、久しぶりに会ったのに酷い言い種やな~?」

郁乃「こっちはすこやんに会いたくて来たのに…酷い仕打ちや…」ヨヨヨ

健夜「あなたは私の会いたくない人ランキング第一位だけどね…」

健夜(それに酷い仕打ちってあなたが口にしていい言葉じゃないでしょ…)


15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 21:26:21.57 ID:zFM1+JXm0
健夜「あとどうでもいいなら泣き真似とかしないで!」

郁乃「遊ぶゆうてもやることもないし、お喋りでもしよか~」

健夜「お喋り…?」グッ

健夜(何が来る…? まためんどくさい問題をふっかけてきたり…)

郁乃「まあ…特に話すことはないんやけどな~」

健夜「一番めんどくさいよ!」

健夜「もう雀力あげるから帰ってよ!」

健夜「二度寝したいよ!」

郁乃「アラサーのええ大人が二度寝~?」クスクス

健夜「アラフォーだよ!」

健夜「う、うっわあああああああああああ!間違えたああああああああああ!」ガーン


17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 21:28:15.88 ID:zFM1+JXm0
郁乃「まあ、実際あたしとすこやんの間に共通の話題とかほぼないやん?」

健夜「ますます謎が深まったよ!」

健夜「赤阪さんが私を友達だと主張する根拠という名の謎がね!」

健夜「それに…共通の話題なら、あるでしょ一応…麻雀が」

郁乃「そういえばそんなんあったな~」ハッ

健夜「あなたがこれまでしてきたことは何だったの…?」

健夜「まあ、麻雀の話なら気になることもあるしね…」ゴクリ

郁乃「な~に~? あたしに答えられることなら答えるで~?」ニコニコ

健夜「…あなたの目的は何?」

健夜「一体、何を企んでるの!?」


20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 21:30:36.07 ID:zFM1+JXm0
郁乃「目的? 企み? う~ん、何の話~?」

健夜「…数年前、どの麻雀団体にも属してないある女性雀士が雀界で噂になった」

健夜「その雀士は次々とプロ雀士に勝負を挑み、そして打ち砕いていった」

健夜「中東でその雀士に敗れた戒能良子プロの話によると…」

健夜「その雀士は対戦相手の『命を冒す』」

健夜「彼女はまるで毒蛇のように他家の心身を冒し」

健夜「相手は気付けば牌が持てないほどに衰弱している」

健夜「彼女と対局して、その状態に陥った戒能プロはある取引を持ちかけられた…」

健夜「『命は助けたるから、これからあたしの言う事を聞く事』」

健夜「『従わんかったら、雀卓に縛りつけて死ぬまで私と打ってもらうで』と…」


21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 21:32:52.56 ID:zFM1+JXm0
健夜「そうしてその雀士は、雀界そのものさえ冒していった」

健夜「そして、状況を見かねた麻雀協会は彼女に会った雀士からの情報を元に」

健夜「彼女を第一級危険人物として警戒を呼び掛け、身柄の拘束に乗り出した。だけど…」

健夜「いつからか、彼女の噂がぱったりと途絶えた。雀界は次第に安堵に包まれていった…」

健夜「だけど、それとほぼ同時期に、姫松高校の善野監督が入院し、監督代行が着任した」

健夜「その人の名前と姿が公になった時…雀界に衝撃が走った」

健夜「『命を冒す者』赤阪郁乃…!あなたがその監督代行だと分かった時はね…!」

健夜「答えて貰える? なぜあなたは雀界の侵略を行ったのか」

健夜「なぜ急に侵略を止め、姫松高校に身を置くようになったのか…!」

健夜「あなたは一体、何を企んでいるの…!?」


22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 21:34:40.00 ID:zFM1+JXm0
郁乃「…」

郁乃「…ふふ。うふふふふ…」

健夜「…? 何笑ってるの?」

郁乃「いやだって~、ふふ、すこやん大袈裟なんやも~ん!」アハハ

郁乃「まあこの場合はすこやんが大袈裟なんやなくて麻雀打ちの皆が大袈裟なだけなんやろうけど~」

健夜「いや、こっちは大袈裟どころの騒ぎじゃないんだけど…」

郁乃「いやいや~、それにしても身柄の拘束か~。はーっ、怖いわ~」

郁乃「それってつまりあたしを捕まえて二度と麻雀を打てんだようにする、いうことやろ?」

健夜「まさにその通りだね」

郁乃「ほな逆に聞くけど、あんたら雀界言うんは…」

郁乃「人の『純粋に麻雀を打ちたい』言う気持ちを否定出来るような人らなん?」


24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 21:39:49.23 ID:zFM1+JXm0

健夜「!? じゃあまさかあなた…」

郁乃「そうや? あたしはただ麻雀の相手が欲しかっただけ」

郁乃「普通の人があたしと打ったらすぐ飛んでまうねんもん。二つの意味で」ムスー

郁乃「それでプロに会って打ってもらってただけや」

郁乃「侵略なんてこれっぽっちも考えてへんよ~?」クスクス

健夜「な…バカ言わないで! それで一体どれだけの人達が苦しんだと思ってるの!?」

郁乃「そんなん言われても、あたしにはどうしようもあらへんもん」

郁乃「あたしが打つといつもそんな風になってまう。あたしがそういう風にしたいと思ってなくても、な」

郁乃「そういうこと…すこやんにも心当たりあるやろ~?」クビカシゲ

健夜「う…」

健夜(心当たりありまくりで言い返せないよ…)


26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 21:43:47.10 ID:zFM1+JXm0
健夜「じゃ、じゃあ脅迫はどうなの!?」

健夜「あなたの言う事を聞くように言ったのには、何か目的があるんだよね?」

郁乃「目的、なぁ…ふふ、それもやっぱり大袈裟やわ」クス

郁乃「敢えて言うなら…人脈、かなぁ?」

健夜「人脈ゥ!?」(裏返る)

郁乃「ふふっ。だって~、そうやってあたしの言う事聞いてくれる人がいたら~」

郁乃「後々役に立つことがあるかもしれへんやろ~?」

郁乃「例えばアイス買ってきて欲しい時…とか~?」

健夜「―――っ!」

健夜「ふざけないでよっ!」

健夜「その言葉で安心出来る日常を奪われた人もいるって言うのに」

健夜「そんな軽い気持ちでいるっていうの―――!?」キッ


27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 21:47:32.19 ID:zFM1+JXm0
郁乃「重い気持ちやったらええのん~?」

健夜「そういうことじゃないけど―――!」

健夜(この人は…根本的な邪悪なんだ…!)

健夜(たまたま能力が凶悪なだけとかそんなんじゃなくて―――)

健夜(その能力を受け入れて、存分に活用するような性格まで持ち合わせている―――)

健夜(だから能力を使って他人を脅迫しても何とも思わないんだ―――!)ゾクッ

郁乃「あ、そういえばな~」

郁乃「『死ぬまで麻雀打ってもらうで』…やっけ?」

郁乃「それ、ほんまに良子ちゃんがそう言ったん?」

健夜「? …そうだけど…」


29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 21:50:49.66 ID:zFM1+JXm0
郁乃「ん~、ならそれって記憶違いかな~?」

郁乃「あたしが言ったのは確か…『いつまででも打ってもらうで』くらい…やったかな?」

郁乃「あたしはそんなこと言うてないし…そもそもあたしの能力で人を殺すことなんてできひん」

郁乃「あたしと打ち続けても、延々と生死の境をさ迷うだけ」

郁乃「たとえこれ以上ないってくらい衰弱しても、この能力が原因で死ぬことはないんやで~」ニコッ

健夜「―――!?」

健夜「それってまさか…」

健夜「赤阪さん…あなたは、既にもう、誰かを…」

健夜「誰かを、死の淵に立たせるまで! 打たせたって意味!?」

健夜「そんな死ぬより苦しいような目に…! あわせた相手がいるってことなの…!?」

郁乃「…」


31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 21:52:55.88 ID:zFM1+JXm0

郁乃「…この流れなら仕方ないけどな~。打たせたって言うのは失礼やで?」

郁乃「さすがのあたしでもちょっと怒ってまうわ~」ムスッ

健夜「…じゃあ…」ゴクリ

郁乃「あたしがそうさせたんやなくて…打ってくれたんや」

郁乃「他でもない、あたしの家族がな」

健夜「―――!?」


32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 21:56:28.38 ID:zFM1+JXm0
―――郁乃・幼少時

あたしが七歳の時やったかな~? おとんが麻雀セットを買ってきたんよ

郁乃父「…それで3つグループ4つと2つおんなじのんを揃えたらアガリや」

郁乃父「郁乃も恭乃も分かったか?」

郁乃「うん、分かったでー!」

恭乃「やりたいやりたい!やろー!」

郁乃母「おっしゃ!ほな早速対局開始や!」

あたしの能力は初対局から既にあってな…

郁乃(う~ん…これかな?)トン

三人「―――!?」ゾワッ


35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 21:59:32.27 ID:zFM1+JXm0
郁乃父(なんや今の寒気…風邪でも引いたんやろか…)スッ

郁乃父「―――!!」

郁乃母「お、お父さんどうしたん? なんか顔色悪いで…」

郁乃父「は、はは…ちょっとツモが悪すぎてな…」トン

郁乃父「―――っ」ゾクッ

恭乃「次わたしー」スッ

恭乃「―――きゃっ!」ズキ

郁乃「? どうしたん郁乃? 大丈夫?」

恭乃「う、ううん。大丈夫やで、お姉ちゃん」


39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 22:06:12.18 ID:zFM1+JXm0
―――東四局

三人「…」ゲソッ

郁乃(皆どないしたんやろ…なんか元気ないなぁ)トン

郁乃父「…郁乃、それロンや。4000」

郁乃父「東四局終了…お父さんちょっと具合悪いし、南場はなしにしよか」

恭乃「あたしも疲れたー…」グデー

郁乃母「あたしもや…」

郁乃「み、皆大丈夫? あたし元気やし、お粥作ったろか?」オロオロ

郁乃父「はは、心配いらんよ~。一晩寝たら元気なるわ」ナデナデ

郁乃「う、うん…」

郁乃父(あの寒気…郁乃の気を感じたな…)

郁乃父(…ふ…ふふふふふ…)


43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 22:12:17.79 ID:zFM1+JXm0
郁乃「郁乃。凄かったで」ニコ

郁乃「…ふぇ?」

郁乃「なんで? あたし三番やったのに…」クビカシゲ

郁乃父「じっきに分かるわ」

郁乃父「これからも一杯打とうな?」クシャクシャ

郁乃「うん!あたし麻雀好き!」パァァ


46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 22:18:18.19 ID:zFM1+JXm0
それがあたしの能力やって言うのはすぐに皆理解した。けどな…

恭乃「おねーちゃん!麻雀打とー!」

郁乃「え~? 昨日打ったばっかりやのに、皆大丈夫なん?」

恭乃「だいじょぶだいじょぶ!皆もう準備してるもん」

郁乃「でもあたしと打ったら皆元気なくなるし…」

郁乃「あたし、打たん方がいいんちゃうかな…」シュン

恭乃「おねえちゃん、打ちたないん…?」

郁乃「ちゃうよ! あたしは麻雀が好きやし打ちたいけど」

郁乃「やすもあたしと打ったらしんどそうな顔になるやん!」

郁乃「それってあたしのせいやろ…?」

郁乃「せやから、皆私なんか打ちたくないやろ…!?」


48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 22:24:09.10 ID:zFM1+JXm0

恭乃「あたし、おねーちゃんと打つの、好きやで?」ニコッ

郁乃「嘘やん!」

恭乃「ほんまやもん!」

郁乃「絶対絶対絶対絶対嘘や!」

恭乃「絶対絶対絶対絶対絶対絶対ほんまやもん!」

郁乃「なんでやの!?」


50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 22:31:28.09 ID:zFM1+JXm0

恭乃「だって楽しいもん!」

郁乃「せやからなんで!? あんなしんどそうな顔してんのに!!」

恭乃「だっておねえちゃん強いやん!」

恭乃「そのしんどなる力がめっちゃ強いやん!」

恭乃「そんな強いお姉ちゃんと打ててあたし幸せやねん!」

郁乃「やす…」

郁乃「…ほな、ええん? 皆と麻雀を打ってもあたし、ええん?」

恭乃「当たり前や! おねえちゃん私らに遠慮することないで?」

恭乃「やから、な? はよ打と!」グイグイ

郁乃「…うん! せやな!」ニコッ


53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 22:37:38.73 ID:zFM1+JXm0
後でおとんとおかんにも聞いたけど、皆あたしの能力が好きやって言ってくれた。
誰もあたしの能力を拒絶することなく、あたしと打ちたいって言ってくれたんや。

郁乃父「いく。お前の力はほんまに素晴らしい」

郁乃父「この力があればきっとどんな相手にも勝てるで」

郁乃「ほんまに~?」

郁乃父「ああ、間違いないわ。お前は強い」ニコッ

郁乃父「強いってことは素晴らしいことや」

郁乃父「こんな強い子のお父さんでおれて、お父さんは嬉しいで!」ナデナデ

郁乃「えへへ~///」

郁乃(嬉しいな…もっと頑張ったらもっと褒めてもらえるかな?)


56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 22:43:39.29 ID:zFM1+JXm0
あたしら家族は何回も麻雀を打った。
その度あたしの能力は強なっていって、その内対局中家族が喋れなくなるくらいになった…

郁乃「…」トン

郁乃母「」パタ

郁乃「あ~、そこやったんか~。どれどれ~どんな手~?」

郁乃「うーんと、いち、にー、さん…うわ~役いっぱいや~」

郁乃「ほな12,000な? はい」ジャラジャラ

郁乃「これで終局か~。おかんに跳満振り込んだけど、おかんには抜かれへんかったな~」

郁乃「けどおとんにまくられてもうた…おとんは強いなぁ」グヌヌ

郁乃父「」パクパク

郁乃「おとん?」ユサユサ


58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 22:51:42.52 ID:zFM1+JXm0
郁乃「どうしたん? しゃべられへんの?」

郁乃「やす? おかんも?」ユサユサ

郁乃「…」

郁乃「そっか~。ならしゃあないな、あたしが牌片付けたげよ~」ジャラジャラ

でもそんな時も、家族はあたしのことを褒めてくれた。

郁乃父「……の。い、くの…」

郁乃「あ、おとん! 目ぇ覚ました!」

郁乃父「郁乃、片付けありがとうな。すまんなぁ、皆郁乃と打ったら疲れきってしもてなぁ」

郁乃「ううん、全然ええよ」ニコッ


60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 22:59:11.11 ID:zFM1+JXm0

郁乃父「郁乃の力、どんどん強なるなぁ。お父さんは鼻が高いで」

郁乃「何ゆーてんのよ!勝ったんはおとんやろ!」

郁乃父「ははは、まだまだ娘には負けられへんで~」ワハハ

恭乃「……お…ねえ、ちゃん…」

郁乃母「いく…の…」

郁乃「やすにおかんもお目覚めか~」

恭乃「うう…ん…あー、あー」

恭乃「はー、やっと喋れるようになったわ~」

恭乃「おねえちゃん、また強なったんやな~」

郁乃「えへへ~」


61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 23:05:39.55 ID:zFM1+JXm0
郁乃母「いや~お恥ずかしい。気ぃ失っとった訳やないんやけどな~?」

郁乃「そうなん? じゃあどんな感じになってたん?」

郁乃父「何か意識はあるし、牌には触れるんやけど…」

郁乃母「そうそう。けど、喋ろうとしたり、他のことしようとすると体が一切動かんようになるのよねぇ」

郁乃父「考えを纏めんのも一苦労や」

郁乃母「あたしは一苦労どころやなかったで~?」

郁乃父「はっはっは。気合いが足りんねん、気合いが」

郁乃「何よー!おかんあたしから跳満上がった癖にー!」プンプン

郁乃母「うふふー。頑張らせて頂きました~」ウフフ

恭乃「あんなー、お姉ちゃん! なんかなー、空っぽになった感じがしてん!」

郁乃「何、やす? 空っぽ?」


62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 23:11:02.20 ID:zFM1+JXm0
恭乃「そうそう。どんどん元気がなくなっていって、もうこれ以上なくならへんみたいな感じ」

恭乃「これ以上減ったらあたし消えてまうんやないかな~、って」

恭乃「でも、そっから更に減る感じはせぇへんねん」

郁乃母「そうやねぇ。あたしもそうやったわ」

郁乃父「うむ」

郁乃「き、消えるって…」オロオロ

郁乃「そんなん嫌やで? あたしのせいで皆がいなくなってまうやなんて…」グスッ

郁乃「やっぱあたし…皆と麻雀なんか打たへん方がええんとちゃうかな…」ウルウル


66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 23:16:11.43 ID:zFM1+JXm0
郁乃父「こら! 何を言うてるんや郁乃!」

郁乃「!」ビクッ

郁乃父「確かに郁乃と打つと元気なくなるのは事実や」

郁乃父「やけどな、それは郁乃が強い言うことやろ?」

郁乃「…おとんには負けるのに?」

郁乃父「それはお父さんが強すぎるからや」ハハハ

郁乃父「せやけど、郁乃は麻雀始めてから一位か二位にしかなったことないやろ?」

郁乃「う、うん…」

郁乃父「それは郁乃が強い力を持ってるからや」

郁乃父「強いって言うのは素晴らしいことやし、なんも悪いことなんかあらへん」

郁乃父「その逆や。もっと強くなるんや。もっと苦しめるんや」

郁乃父「麻雀では、強くありさえすればええ。他に気にすることなんかなくてええんや。な?」


68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 23:21:14.34 ID:zFM1+JXm0

郁乃「…そうなんかな…」

郁乃父「そうや。せやから、お父さんは郁乃が皆と打つことで、もっと強くなってほしいんや」

郁乃父「それにな、郁乃と打ってる時、皆元気無いようになるけど」

郁乃父「それでもお父さんは郁乃と打つのが楽しいんやで?」

郁乃「…なんで?」

郁乃父「簡単なことや。お父さんだけやない。お母さんも、やすも」

郁乃父「皆、郁乃のことが大好きやからや!」

郁乃「おとん…」


69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 23:27:24.71 ID:zFM1+JXm0
恭乃「あたしもお姉ちゃんが大好きや!」

郁乃母「あらあら、妬けてまうな~」

郁乃母「お母さんも郁乃のこと大好きやで~?」

郁乃「やす…おかん…」ウルウル

郁乃「ぐすっ…ありがとう!」ニコッ

恭乃「おねえちゃん、これからも皆で打とな?」

郁乃「うんっ!」


71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 23:32:50.49 ID:zFM1+JXm0
―――現在・すこやんの部屋



郁乃「…とまぁ、以上が聞くも涙語るも涙の昔話や~」

郁乃「その後も何度も家族と打ったけど、暫く喋れへんようになるだけで」

郁乃「少ししたらまた元気になるから大丈夫ってわけや」

郁乃「そういうことがあったから、こんな能力を持ってても、あたしは麻雀をやり続ける」

郁乃「それが、あたしを励まして、あたしと打ってくれた、家族への恩返しやと思うんよ~」

健夜「―――」カタカタ


72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 23:38:37.94 ID:zFM1+JXm0
健夜(―――今の話…本当なの!?)

健夜(本当だとしたら、この人の家族ってとんでもなくクレイジーだよ…!)

健夜(この人よりもこの人の家族の方が異常に思えるくらい…)

健夜(この人の麻雀を正面から受け続けて、それを好き、ですって!? ないない! そんなの常人じゃ有り得ないよ…)

健夜(でも、嘘をつく理由も思い付かないし…)

健夜(この家族あってのこの人ってことなのかな…)ブルッ

健夜(…)ゴクッ

郁乃「…なぁすこやん?」

健夜「は、はひっ!?」


77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 23:45:11.77 ID:zFM1+JXm0

郁乃「さっきの話でも言った通り、あたしは麻雀が大好きなんよ~」

郁乃「それで、いつも強い相手を求めてる…ゆーても、今は姫松の監督やからそれほどでもないけどな~」

郁乃「それでも、人と打ちたいという気持ちはいつでも持ってた」

郁乃「な~すこやん。あたしと勝負してくれへん?」

郁乃「…前にすこやんと会ったあの時は、決着つかへんかったやろ~?」

健夜「…」

健夜「そう、だね。あなたがプロ雀士狩りをしていた頃、私の所にも来たけれど」

健夜「確かあの時は初局四巡目で雀卓が真っ二つに割れちゃったんだよね…」

健夜「ふふ…懐かしい」


78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 23:50:39.45 ID:zFM1+JXm0
健夜「…ねぇ。さっきの話、あなたと打ってくれた家族への恩返しとして麻雀を打ち続けているって言ったけど」

健夜「対局相手への脅迫行為は、その気持ちを自ら侮辱することにならないの?」

郁乃「う~ん、そうなんやろか?」

郁乃「そこまで考えたことがないというか…冗談半分やしなぁ。実際に何かやらすでもなし」

郁乃「勝ってるんはあたしやし、そんくらい言うてもええんちゃうのん?」キョトン

健夜「…ふふ…そうだね、そういう人…あなたは」

健夜(不思議…あんな話を聞いた後なのに、もう落ち着き始めてるよ)

健夜(こんな理不尽な打ち手と、打ってみたいとすら思っている)

健夜(赤阪さんが私と打とうって言ってきた時から…)


79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 23:55:54.95 ID:zFM1+JXm0
健夜(そうだよね、卓に着けば、それが誰であろうと一人の対局者に過ぎない)

健夜(だったらいつも通り敬意と自信を持って迎え打つだけ…)

健夜(そしていつも通り…完膚なきまでに叩き潰すだけだ…!)ゴォッ

健夜(だけどその前に…確認しとかなくちゃね)

健夜「赤阪さん…今は姫松高校の監督をやっていても、いつかはまた、対局相手を求めてプロと戦うの?」

赤阪「せやな~。インハイも終わったし、ある程度落ち着いて暇になったら戻るかもな~」

健夜「それだけ麻雀が好きなのに、プロに行く気はないんだね?」

郁乃「ん~プロはあたしの性に合わんかな~って。取材やらなんやらでだるいしな~」

郁乃「それに、あたしなんかがプロになったら、麻雀協会とか崩壊してまうやろ~?」

健夜「なるほどね…」


81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/02(日) 23:59:41.07 ID:AopnPTWs0
流石のすこやん


82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/03(月) 00:01:52.61 ID:zFM1+JXm0
健夜「…赤阪さん。…いや、郁乃ちゃん。あなたの麻雀勝負、受けるよ」

郁乃「ほんまに!? やったぁ!」パァァ

健夜「だけど一つだけ条件がある。…あたしが勝ったら、郁乃ちゃんにはプロ試験を受けてもらいます」
                 ・・・・・・・・・    
健夜「それが約束出来るなら、貴方と打ってあげてもいいよ」

郁乃「偉い自信やなぁ…せやけどなんで?」

郁乃「今言うた通り、あたしなんかがプロになっても皆困るだけやろ?」

健夜「今でも十分困ってるよ…プロを探して打つ行為を続けるんだったらね」

健夜「人の目の届かない所で打ったら、あなたは何をするか分からない。それこそ脅迫とかね」

健夜「だからプロになって公的な場所で打ってもらう。それがあたしの条件の意味」

健夜「人目のある所だったら、そんなことしないでしょ?」


83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/03(月) 00:07:30.88 ID:c9lYNXex0
健夜「最も、何かしたら対雀士用に武装した警備員が取り押さえるだけだけど」

健夜「それに、万が一あなたの能力で対局相手が致命傷を負ったとしても」

健夜「プロ対局の場なら麻雀の専門医の治療を受けることが出来る」

健夜「要するに、あなたの麻雀から皆を守る為の条件だよ…分かった?」

健夜「あなたにとっても、危険人物扱いとかされることなく、思う存分打つことが出来る」

健夜「そんなに悪い話じゃないでしょ?」

郁乃「…」


85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/03(月) 00:09:33.94 ID:j8aCZ0bx0
麻雀に専門医がいたとは…


87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/03(月) 00:16:14.79 ID:RA+Jej+r0
いや、専門医より対雀士用の武装が知りたいわ


86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/03(月) 00:13:43.02 ID:c9lYNXex0
郁乃「立派なこと考えるな~、すこやん。意外と正義感が強いんやね~」

郁乃「いいよ、その条件呑みます」

郁乃「今はとにかくすこやんと打ちたいし、何より…」

郁乃「何より…勝てばええ話や」ゴォッ

健夜「負けないよ…絶対にね」ゴォッ


89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/03(月) 00:20:08.41 ID:c9lYNXex0
健夜「ルールは公式の二人麻雀ルールでいいよね?」

郁乃「公式の二人麻雀?」キョトン

健夜「あ、郁乃ちゃんは知らないよね。えっとね…(省略)」

健夜「これで全部かな。分かった?」

郁乃「オッケー、問題ないで!」

健夜「卓と牌はこの金属製のセットを使用するよ。少し牌が重いから、指の上に落とさないように気を付けてね」

郁乃「ほぇー凄いの持ってんなー」

健夜「さ、卓について」ギッ

郁乃「あたしなんかどきどきしてきた~」ストッ


90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/03(月) 00:25:22.53 ID:c9lYNXex0
―――対局準備中―――

健夜「さあ、いざ…対局、開始!」ジャラ

郁乃「…」ジャラ

郁乃(ドラの3pが対子でタンヤオ・平和のリャンシャンテン…配牌は非常によろしいな~)

郁乃(字牌は不要…ここは迷わず切るとこ)スッ

郁乃(けど、あの時と同じなら…)チラ

健夜「…」ズオオオオオオオオ

郁乃(…切らせてくれへんのよね)トン

郁乃・打牌 5w


91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/03(月) 00:33:07.28 ID:c9lYNXex0
郁乃(…う、う~ん…相変わらずえげつない能力やなぁ…)タラリ

郁乃(切ろうと思った牌を切れず、最も切りたくない牌を切ってしまう)

郁乃(他家の捨て牌に作用する最強クラスの支配能力…)

郁乃(配牌で出来てた456wの順子が消滅してもうた)

郁乃(次にもう一つの順子を壊して、それからドラを切っていくことになるんかしら…)

郁乃(しかしそれも数あるすこやんの能力の一部に過ぎひんのよね…)

郁乃(さすが元世界ランク二位はとんでもないな~)

郁乃(…なら…)

郁乃(そんな能力、使えなくさせるまでや…!)ゴッッッ

ピシ パキ


93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/03(月) 00:42:29.44 ID:c9lYNXex0
健夜(…この寒気! あの時と同じ…いや、それ以上か…!)ゾクッ

健夜(郁乃ちゃん…攻めて来てるね…あたしの体力を使い切らせて、能力を防ぐ作戦ってとこかな…)

健夜(厄介だけど、取り敢えずは自分の手牌に集中…)

健夜(…白はまだ一枚だけどダマで刻子になるね…67sのリャンメン待ちはツモれないみたい)

健夜(788pは8pが余ってるっぽいけど、78pと8pにそれぞれ面子になる雰囲気があるから、恐らくイーペーコーを狙える)

健夜(後は…これが暗刻になって、ここはツモれない…うん、うん…分かるよ)

健夜(取り敢えずは67sのリャンメン落としだね…)トン

健夜(さあかかって来なさい…『毒蛇』赤阪郁乃!)ズドドドドドド
ピシシピシ… パキン…


94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/03(月) 00:48:46.16 ID:c9lYNXex0
郁乃・健夜(この勝負、絶対に勝つ!)ドドドォッ! ガァァァァン! ゴォォォォォ!

ピシッ! パキパキパキパキパキ

健夜「…」ピク

健夜「な、何? 何か窓から変な音がする…?」ビクビク

健夜(い、嫌な予感が…)

パリン! ドガシャンシガャンシャシャシャンガシャガシャガッシャ-----ン 

郁乃「きゃあっ! あちゃー、窓割れてもうたか~」

郁乃「まぁ、これくらいは想定済みやろ? すこやん? …すこやん?」

健夜「…」カタカタカタ

郁乃「すっこやーん? おーい?」ハラハラ

健夜「わあああああ! やばいやばいやばい! やばいいいいいいいいい!」

健夜「お母さんに怒られるうううううううう!」


96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/03(月) 00:53:18.43 ID:c9lYNXex0
郁乃「!?」ビクッ

健夜「ど、どうしよう郁乃ちゃん! 助けて!」グシッ

郁乃「た、助けてって…そんなこと言われても…」

郁乃(すこやん…くしゃくしゃの泣き顔でしがみついてきて…)

郁乃(何これ、めっちゃ可愛いんやけど…)キューン

郁乃(ってそうやなくて!)

郁乃「え、えーっと…」

郁乃「続きは…?」

健夜「何言ってんの! 麻雀なんてやってる場合じゃないよ!」

健夜「終わりだよ終わり!」

郁乃「ええー!そんなー!」ガビーン


98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/03(月) 00:56:42.66 ID:c9lYNXex0
健夜母『すこやー! なんか凄い音したんだけどあんた何したの!?』ドスドス

健夜「~~~っ!」ビクッ

健夜「もうダメだよ…おしまいだよ…」ガクーン バタッ ズーン

郁乃「そこまで!?」

健夜母「郁乃!」ガチャ

健夜母「あらま! 窓割れてるじゃない! お客さんが来てるっていうのにこんな、情けない…!」

健夜母「…す~こ~や~?」ギロ

健夜「うう゜~、ご、ごべんなざいい゜~」ガチナキ

郁乃(すこやん…)

郁乃(…)

郁乃「すいません、お母さん。この窓、私のせいなんです」

健夜「…え゜?」


99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/03(月) 01:01:07.30 ID:c9lYNXex0
郁乃「すこやさんと会えて嬉しくて、ついはしゃいでしもて…」

郁乃「せやから、すこやさんを責めんといて下さい!全部私が悪いんです」

郁乃「ほんっとに申し訳ありません!」ペッコリン

健夜「い゜、い゜ぐの゜ちゃん!? 違うよぉ…」

健夜母「まあまあとんでもない! こちらこそ申し訳ありません、折角来ていただいたのにこんな面倒ごとになって…」

健夜母「ほら、健夜も謝んなさいな!」

健夜「う、うん…いくのちゃん、ごべんねぇぇ…」

健夜母「ほら、顔拭きんさい! ごめんなさいねぇ、この部屋の責任者はすこやなんやから」

健夜母「事情はどうあれ、気にして下さらなくいいですからね? 全部すこやが悪いんですよ」

郁乃「は、はぁ…」


100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/03(月) 01:06:16.06 ID:c9lYNXex0
健夜母「じゃあお母さん電話かけて来るから、健夜はガラス片付けといて」ジロ

健夜母「分かった?」

健夜「う、う゛ん…わがっだ…」

健夜母「ほんとに申し訳ないですねぇ、下で紅茶入れるんで是非飲んでいってくださいな」

郁乃「あ~、お気遣いなく~。あたしはここですこやさんとしゃべっときますんで~」

健夜母「そうですか? ほんとにごめんなさいね、じゃあ失礼します」バタン

郁乃(…はぁー。これはこれは…)


102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/03(月) 01:11:43.09 ID:c9lYNXex0
健夜「う゜う゜っ…! 郁乃ちゃん、ごめんね! 私、かばってもらっちゃって…」ウルウル

郁乃「いやいや、ちゃんとかばえてたかどうかも怪しいし」

郁乃「それに、無理に打とうって言ったのはあたしやしな~」

郁乃「あたしの方こそごめんな? 建物のこと考えんと打ったりして…」

健夜「ん…ぐすっ…」フルフル

健夜「ううん…郁乃ちゃんは悪くないから…」

健夜「折角の対局だったのに、これじゃもう今日は打てないね…」シュン


103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/03(月) 01:15:53.20 ID:c9lYNXex0

郁乃(涙目で俯いてるすこやん…なんなんこれ、可愛すぎるんやけど…!)

郁乃(もっと虐めたくなる気持ちと笑顔にさせたくなる気持ちのジレンマで頭がどうにかなってまいそうや!)

郁乃「そ、そんなんええよ! また今度打てばええ話やし…」

郁乃「それより、すこやんがあたしと打とうと思ってくれるだけであたしは嬉しいよ~?」

健夜「…郁乃ちゃん…」

健夜「ん…ありがと」ニコ


109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/03(月) 01:28:07.54 ID:c9lYNXex0
健夜「うんしょ…ガラス、片付けないと…」

郁乃「一人やと危ないし大変やで? 手伝うわ」

健夜「い、いいよ! 郁乃ちゃんは座ってて?」アセアセ

郁乃「ううん、あたしの責任なんやし、手伝わせて?」

郁乃「これはお願いや…な?」

健夜「うーん…じゃ、お言葉に甘えちゃおっかな…」

郁乃「ふふ」


111 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/03(月) 01:33:32.54 ID:c9lYNXex0
―――ガラス片付け中

健夜「…」カチャカチャ

郁乃「…」カチャカチャ

健夜(い、今思い返して見ると…めちゃくちゃ恥ずかしい所見られちゃったよ…!)

健夜(アラフォー…いやいや、アラサーになってまでガラス割ってマジ泣きするって…///)カァァ

健夜(WEEKLY麻雀にでもタレ込まれたりしたらもうお嫁に行けない…)

健夜(否、行く相手が完全にいなくなる…)ズーン

健夜(…あれ? でも…)チラッ

郁乃「ん?」

健夜「い、いや…その…」


113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/03(月) 01:38:48.25 ID:c9lYNXex0
健夜「からかったりしないんだね…って思っちゃって、はは」

健夜「な、なんて、こんなこと言っちゃ失礼だよね! ごめんね…」

郁乃「あー、さっきのお母さんにめっちゃ怒られてた奴か~」

郁乃「そんなん、からかったりせぇへんよ~」

郁乃「だって、あれだけ取り乱すってことは、それだけ申し訳ないと思ってるってことやろ~?」

郁乃「それって人として大事なことやと思うよ~」

郁乃「大人になってもあんな素直に謝れる人も、中々おれへへんよ~? 立派なことやで」

郁乃「せやし、何も恥ずかしがることないよ~」ニコ

健夜「郁乃ちゃん…」ジーン


114 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/03(月) 01:43:33.93 ID:c9lYNXex0

健夜(ご、後光が…赤阪さんから神々しい後光が刺してるように見える…!)

健夜(赤阪さんって、こんな優しかったんだ…///)

郁乃「…はい! これで片付け終了!」

郁乃「流石にこの状況、これ以上お邪魔してると迷惑やし」

郁乃「そろそろ帰ることにするわ~」

健夜「ごめんね、なんか追い返すみたいになっちゃって…」

郁乃「ううん、気にせんといて? また今度絶対対局しよな?」

健夜「うん、何か打てる方法考えとくから。また来てね」ニコッ


118 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/03(月) 01:50:01.57 ID:c9lYNXex0
郁乃「よろしく~。ほな…」

健夜「あ、そういえば」ポン

健夜「ごめん、帰る前に一個だけ聞いていい?」

郁乃「ん~? 何~?」

健夜「姫松の監督になった理由、聞き忘れてたよ。別に今聞かなくてもいいんだけど…」

健夜「気になっちゃって」ハハ

郁乃「ああ、そういえばそんな話もしてたな~」スッ

郁乃「んっとな、これ。あたしの妹なんやけど…」ペタペタ

健夜「写メ? …あれ、これって確か…姫松高校の末原さん? にそっくりじゃない?」


119 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/03(月) 01:54:39.70 ID:c9lYNXex0

郁乃「うん。すこやんが初見で分かるくらいには似とるやろ?」

健夜「へー、これが郁乃ちゃんと良く打ってたっていう妹さんかー」

健夜「それで、なんで妹さんの話が? まさか妹さんと似てる子がいるってだけで監督代行になったわけじゃあ…」

郁乃「妹な。動かんくなってしもたんや」

健夜「…え?」


121 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/03(月) 02:00:18.53 ID:c9lYNXex0
郁乃「妹はいつもあたしと喜んで打ってくれたんやけど…」

郁乃「ある時、長年つもり積もったダメージが、限界を超えたんかな~?」

郁乃「あたしと打ち終わってしばらく経っても喋れへんのが治らんようになってな~」

健夜「…は…?」

郁乃「それから妹は一言も喋れへんようになって、結局施設で車椅子生活を送ることになってしもたんや」

郁乃「さすがのあたしもこれには悲しんだ。大切なもんを失ったんやなって…」

郁乃「でもそんな時、姫松の麻雀部に妹に顔も名前もそっくりな子がおる事に気がついて~」

郁乃「思わず肩入れしたくなってな~」

郁乃「そこにたまたま善野監督が入院したもんやから、監督代行に立候補したんや~」

郁乃「妹への罪滅ぼしと、回復を祈って…まあ自己満足やけどな~」


126 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/03(月) 02:12:42.99 ID:c9lYNXex0
健夜「そうだったんだ…」

健夜「…それでもあなたは、麻雀を打ち続けるの?」

健夜「また誰かを、同じ目に合わせるかもしれないのに…」

郁乃「うん」ニコッ

郁乃「そら打つのを止めたら、あたしがあたしじゃなくなってまうから~」

健夜「…だったら、安心して」

健夜「私なら、絶対あなたの能力で飛んだりしないから」

郁乃「ありがと」ニコ

郁乃「ほなあたしはこれで~」ガチャ

ア、オジャマシマシター アラアラオカエリデスカー? ハーイ、シツレイシマスー ゴメンナサイネエ、ヨカッタラマタキテクダサイネ

健夜「…」

健夜「ふぇぇ…赤阪さん…」ビクビク

健夜「やっぱり、クレイジーだよ…」



127 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/03(月) 02:14:45.50 ID:ZKwckSAU0

すこやんかわいい


128 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/03(月) 02:15:16.34 ID:t/iMk7+w0
乙乙
珍しいカップルを見せてもらったよ


130 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/03(月) 02:18:03.45 ID:JHjxdHw90
おつおつ
いくすこ、アリですね





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