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恒子「すこやんが、イケメンに告られてる!?」

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/20(木) 00:14:41.18 ID:xeHdt2tb0
男「・・・……小鍛治健夜さん……結婚してください!」

健夜「……ご……ごめんなさい……それは、できません……」

男「……他に……好きな人とかいるんですか?」

健夜「…そういうのでは、ないのですが……」

男「では、私自身に魅力が無いのでしょうか……でしたら」

健夜「そういうのでも……ないんです……ごめんなさい!」ダッ…

男「あっ!健夜さん!…」




2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/20(木) 00:15:31.74 ID:xeHdt2tb0
―――
――――

恒子 ジー

恒子「すこやんが……イケメンを振った……」


5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/20(木) 00:16:30.59 ID:xeHdt2tb0
健夜「…ハァ…ハァ……。あの人、追って来ない…諦めてくれたかな…」

恒子「すーこーやーん?」ニヤニヤ

健夜「!?こーこちゃん?……何?」

恒子「今の」

健夜「み…見てたの…?」

恒子「うん!」ニッコリ

健夜「な……なんてこと……」

恒子「しっかし衝撃的だったなー。すこやんが自分から独身を選らんでいたなんて」


7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/20(木) 00:17:43.33 ID:xeHdt2tb0
健夜「誰にも言わないでよ…」

恒子「うん。【すこやんの弱みリスト】に追加しとくね」

健夜「ちょっと冗談やめてー」

恒子「ははっ…。ところで、どうして振ったの?着ている服からの判断だけど、あの人収入も良さそうだし、何より格好いいのに」

健夜「……こーこちゃんには…話してもいいかな…」ボソッ…

恒子「…ん?」


9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/20(木) 00:18:28.51 ID:xeHdt2tb0
健夜「これからちょっと、お茶しない?今日は、私がおごるから」

恒子「すこやんが?」

健夜「その代わり、誰にも言わないでよ」

恒子「どーしよーかなー」

健夜「もーう」


11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/20(木) 00:19:33.61 ID:xeHdt2tb0
【喫茶】

健夜「こーこちゃんの思っている通り、確かに私は自分で独身を選んでいる…」

恒子「うんうん。で、どうしてそうなのか、私は気になりますねー」ニヤニヤ

健夜「結構…まじめな話……」

恒子「…ん…そうなの?」

健夜「こーこちゃん……。麻雀のプロになって、でもその途中、プロを辞めた人って、どうなるか知ってる?」

恒子「……」


12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/20(木) 00:20:56.48 ID:xeHdt2tb0
健夜「これはもう言うまでも無いことだけど、プロの世界は厳しい。プロになれても、勝っていけなかったり、仕事が貰えなかったりしたら、収入も厳しくなっていく」

恒子「……」

健夜「上手くいかなくて、プロを辞めて、でも麻雀しか出来なくて、地元の雀荘でメンバー…」

恒子「そういう人…確かに多いね」

健夜「雀荘のメンバーの生活は私達とは違う。朝夜が逆転していて、収入は不安定。負けが積れば、店に借金もする。保健にも入れないから、病気にもかかれない」

恒子「……うん…そうだね……」

健夜「そして……家庭を持つことが出来ない……。仮に手に入れることが出来ても、病気、学費…沢山の壁が生活を苦しめて、結局は……愛する人を守ることすら出来ない」


13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/20(木) 00:22:04.00 ID:xeHdt2tb0
恒子「そうだね…。半世紀前なら、女の人には婚活という選択肢もあったと思うけど」

健夜「うん…。でも今はそうじゃない。麻雀は運のゲーム。運に見放された女性を好む男性は少ない」

恒子「……」

健夜「……もう……わかったよね?こーこちゃんなら……」


15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/20(木) 00:23:07.72 ID:xeHdt2tb0
恒子「……つまりはこうだよね?『私は大量虐殺者です。そんな私が家庭的幸福を得てもいいのだろうか』」

健夜「……うん……。世界ランクに関わるような大きな試合に殆ど出なくなったのも……」

恒子「多くの未来ある選手と戦うことになっちゃうからね……」

健夜「うん……」


16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/20(木) 00:24:33.16 ID:xeHdt2tb0
恒子「……こんなこと言っちゃあれだけど、手を抜くってことは考えたことは無いの?」

健夜「……ううん。……私ね、負けよう負けよう、って思うほど、動くほど、手がその逆になっちゃうんだ……」

恒子「え?」

健夜「振り込もうとしても、殆どが現物、安牌。仮に振ってもせいぜい跳満。次局に倍満をあっさりあがれてしまう」

恒子「カメラの前だし、あがらないことは出来ないよね」


18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/20(木) 00:25:39.10 ID:xeHdt2tb0
健夜「荒唐無稽な先打ちをしても、結局は正解だったってのが殆どだし、最悪なのは…」

恒子「最悪なのは?」

健夜「私ね…やけになって誤ツモのチョンボをしようとしたことあるんだよ」

恒子「それって、プロだとその時点で負けになっちゃうじゃん」

健夜「うん。負けてもいいって、その時思って。これで嫌われてもいいって、仕事貰えなくてもいいって……でも、その局あがったのは……地和……」


19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/20(木) 00:26:57.72 ID:xeHdt2tb0
恒子「……」

健夜「そして、次局の親で天和をあがった時確信したの。私には負けることが許されないんだって」

恒子「……」

健夜「私が、勝つだけのプレイヤーだったら、たぶん違っていた。でも私の麻雀は、私の意思とは関係なく、相手に絶望を与える」

恒子「……トラウマになって、プロをやめる、麻雀が打てなくなる人も出てくる…か」

健夜「でも、その道に進んだ人は、結局は麻雀しか出来ない」

恒子「そうだね。麻雀をやめて、就活で上手くいった人って、あまり聞かないもんね」

健夜「なんとか持ち直せたのは、私の知ってる人では赤土さんくらい」


20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/20(木) 00:28:13.78 ID:xeHdt2tb0
恒子「こうは思ったことは無いの?『相手の人生なんて知ったことじゃない』って」

健夜「……そう思うことは……私には出来ない…。甘ちゃんって言われるけど、でも、私には……」

恒子「そうだよね。すこやんは優しいもんね……」

健夜「………」

恒子「じゃあさ…すこやんがプロを辞めるって選択は?……」

健夜「……それも……出来ない……私は、小鍛治健夜はもう……私だけのものじゃない。私が辞めたら、多くの人に迷惑をかける……」

恒子「うん。すこやんが辞めたら、私もアナウンサーを辞めるからね」


22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/20(木) 00:29:18.68 ID:xeHdt2tb0
健夜「………こーこちゃん………」

恒子「ん?」

健夜「私……どうすればいい…のかな?……どうあればいい…のかな?」

恒子「……」

健夜「私だって……結婚したい……家庭が欲しい……人並みの幸せ、生活をしたい……。でも、それが私には出来ない……」

恒子「……」


24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/20(木) 00:30:06.55 ID:xeHdt2tb0
健夜「…ごめん……こんな……わけのわからない…」

恒子「すこやん」

健夜「え?」

恒子「今から、雀荘に行こう。私の行きつけの所があるんだ」

健夜「雀荘?どうして」

恒子「打とう……。私と」


25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/20(木) 00:31:33.92 ID:xeHdt2tb0
―――
――――


【雀荘】

健夜「ここは……」

恒子「ちょっとおっさんと煙草が臭いけど我慢してね」

健夜「そ、それはいいけど、ここにある卓…全部平台……」

恒子「珍しいでしょ。自動卓の無い雀荘って。ここで、私は麻雀を教わったんだ」


26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/20(木) 00:32:19.78 ID:xeHdt2tb0
客A「おーう、こーこちゃん久しぶり!」

客B「最近はやっぱり忙しいのか?」

恒子「ごめんねー、新米アナウンサーは色々とねー」

店長「おっ、今日は小鍛治プロを連れてか。嬉しいねぇ!」

健夜(ここが、こーこちゃんが育った店…)


27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/20(木) 00:33:15.56 ID:xeHdt2tb0
恒子「すこやん。手積みの経験は?」

健夜「な……無いけど……。今じゃ発展途上国でも自動卓なくらいだし…」

恒子「初体験!?」

健夜「ちょっと変な話に持ち込まないでよ!」

恒子「へへっ」


28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/20(木) 00:34:27.14 ID:xeHdt2tb0
健夜(手積み……崩さないように、気を付けなきゃ)「よいしょっ…」

恒子「はじめてにしては、上手く乗せれたじゃん」

健夜「こーこちゃんのを見て、なんとか」

恒子「さすがだね。……でも、今日はすこやんは一勝も出来ないかもね」

健夜「え?」



29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/20(木) 00:35:30.50 ID:xeHdt2tb0
恒子「……私ね……『牌に愛された』って言葉、大っ嫌いなんだ…」

健夜「え?」

恒子「それってさ、ようは自動卓によって作られた山、乱数によって決定されている賽、それらに好かれている、ってことじゃん」

健夜「う……うん・・・(…?)」

恒子「すこやん、親決めるから、賽振って…」

健夜「あ…うん…」

―――
――――

恒子「親は私ね…。じゃ、始めようか……」


30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/20(木) 00:36:13.85 ID:wt8fhqA70
まさか・・・


33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/20(木) 00:36:37.08 ID:xeHdt2tb0
健夜(なんだろう……この感じ……)

恒子「すこやん…配牌で何か感じた?」

健夜「う……うん。何か、いつもと違う……」

恒子「そっか……」

健夜「……?こーこちゃん切らないの?」

恒子「いやね……揃ってるんだ。へへっ。おじさん協力ありがとう」

客A「ふっ…。こーこちゃんの考えてることくらいわかるよ」

パタ…

健夜「て……天和!?でもそれって……もしかして」

恒子「そういうこと」


37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/20(木) 00:39:16.40 ID:xeHdt2tb0
健夜「イカサマは良くないよ!」

恒子「ははっ。いつもなら、『見えてもいないのに』とか『ばれなきゃイカサマじゃない』とか言う場面だけど、今日はちょっと違う」

健夜「?…どういうこと?」

恒子「ここには、今ではもう廃れてしまった技がいっぱい詰まっている。今の二の二の天和、元禄、通し、すり替え、ガン牌、エレベーターにフライングパイ、色々」

健夜「何が言いたいの?」

恒子「すこやんは今……成功を崩すことが出来ないでいる」

健夜「……」


38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/20(木) 00:42:17.86 ID:xeHdt2tb0
恒子「すこやん。言ったよね。もう自分は自分だけのものじゃなくなってるって」

健夜「うん……」

恒子「成功を積み過ぎて、自由に動くことが出来ないでいる」

健夜「なんか…おかしいよね。ずっと、勝っていたのに…・・・どうしてだろ…」

恒子「ううん。そういうものだよ。成功って積み過ぎると、人を動けなくしちゃう」

健夜「……そう、かもね……」


40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/20(木) 00:46:05.00 ID:xeHdt2tb0
恒子「だからさ…今日すこやんには、『負け方』を覚えてほしいんだよね」

健夜「え?」

恒子「すこやんの悩みの根元ってさ、たぶん『勝負』を出来ていないこと、だと思う」

健夜「勝負?」

恒子「そう。勝つのか負けるのかわからないってやつ。それを越えた先なら、負けた相手の将来とかに、後ろめたい気持ちも無いと思う」

健夜「そう…かな?」

恒子「ちょっと大きな話になるけど、例えば、殺さなきゃ殺される、喰わなきゃ喰われるって感じの戦いってあるじゃん。自分が生きるために殺すし、生活するために食べる。それでさ、喉元に刃突きつけられて、自分が死ぬかもってところで、相手の将来って思えるかな」

健夜「……わからないよ……そんなの……」


42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/20(木) 00:48:37.25 ID:xeHdt2tb0
恒子「それは、すこやんがまだそれを経験していないからだと思う。すこやんがしてきたのは…『勝負』じゃなくて、一方的な殺戮、虐殺だから……」

健夜「そ、そんな……」

恒子「ちょっときつい言い方になっちゃったね。ごめん。でも…たぶん事実……」

健夜「………」

恒子「すこやんが負けれないのは、すこやんの視野が狭いからだと思う。すこやんは、負けの可能性を考えることが出来ない」


44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/20(木) 00:51:18.91 ID:xeHdt2tb0
健夜「負けの、可能性……」

恒子「ははっ。本来は『負けの可能性なんて考えるな』なんだけどね」

健夜「ううん。私、考えているよ……どうすれば、負けることが出来るかって、いつも考えている……」

恒子「んじゃ言葉を変えよう。考えても、それが正解になっていない。考えが狭い、浅い。すこやんは、負けを経験していない。経験していないことは実にならないからね」

健夜「そう……なのかな……」

恒子「だから、ここで負けよう。沢山負けよう…すこやん……」


45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/20(木) 00:53:45.66 ID:xeHdt2tb0
健夜「でも、これは、負けって言えるのかな……。こーこちゃんは、ルールを破っているし、これは自動卓じゃない。私が普段戦っているところは、自動卓なんだよ?これは、私のやっている麻雀じゃ……」

恒子「麻雀だよ……。イカサマを含めて、これも立派な麻雀。……。」

健夜「……」

恒子「もしかしたら、自動卓でもすこやんを負かせる人がこの世のどこかにはいるかもしれない。その人が現れたら、すこやんはその人に救われるんだと思う。でも、すこやんは私が助けたい」

健夜「こーこちゃん……」


47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/20(木) 00:56:13.37 ID:xeHdt2tb0
―――
――――

【二週間後】

ざわ……ざわ……

「小鍛治プロが……初戦敗退!?」

「国内無敗の雀士が!?」

「どんな試合だったんだ?対戦相手は?」



健夜(結局……あの時、こーこちゃんの言った通り一回も勝てなかった。それが、今回の負けに繋がったのかな……)


48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/20(木) 00:59:55.29 ID:xeHdt2tb0

健夜(確かに、見える景色は広がった気がする。……『もしかしたら』とか『こうすれば』とか、いつもなら考えないことまで……)

健夜(こーこちゃんの言った通りかもしれない……。でも、これまで私の所為で落ちて行った人たちへの罪悪感から祓われるのは……時間がかかるかもしれないし、ずっと残っていくかもしれない……)

健夜(私には……私が私として生きているって思える日が来るのだろうか……。だけど……)

健夜(だけど、こーこちゃんのしてくれたこと、こーこちゃんの想い、優しさを、私は忘れない)

健夜(こーこちゃん……ありがとう……)




おしまい


49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/20(木) 01:02:04.87 ID:xeHdt2tb0
以上です。

読んでくださった方。有難うございました。



50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/20(木) 01:02:23.60 ID:jHUMdtp60
おつ


52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/20(木) 01:03:35.58 ID:G9Q7f2yH0
ふむ、これはこれで
おつおつ!





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