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妹「この世界には兄さんと私の二人しかいません」

1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 16:32:39.69 ID:xJXZBvdq0
妹「さぁ、どうします?」

兄「唐突だな。なぞなぞか?」

妹「違います。裏も表も何もありません。額面どおりに意味を受け取ってください。さぁ、どうします?」

兄「どうしますと言われてもな。そうだな、本当に誰もいないのか外に探しに出てみるよ」

妹「それは困ります。二人は一緒に居ないといけないのです」

兄「どうして?」

妹「どうしてもです。そうですね、ではこうしましょう。この世界はこの部屋──兄さんの部屋しか存在しません。
  窓やドアに近付くと、遠ざかって手が届きません。どれだけ走ろうとも触れる事すら適わない。つまりはこの部屋からは出られない」

兄「なんだそれ、ちょっと恐いな」

妹「恐い? そんな事はないはずです。現在の科学では宇宙の外の観測は愚か、脱出すら不可能なんです。
  それはこの兄さんの部屋の表現と同じですね? つまり私たちは、生まれながらにして宇宙という鳥かごの中にいるのです。
  もしそれを恐いとするのならば、兄さんは常日頃からこの宇宙に対して恐怖を覚えていなければなりません」

兄「お前は本当に理屈屋だな? 理屈というか屁理屈か?」

妹「理屈でも屁理屈でもなく、これは事実です。ようするにですね、この部屋を宇宙の縮図と捉えていただければ構いません。
  つまりは見立てです。しかしこの世界には私達二人だけ──さぁ、どうします?」




5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 16:34:40.30 ID:xJXZBvdq0
兄「とりあえず。そうだな──お前の頭を撫でてみるかな」

妹「ではそうしてください」

兄「どうして、んなことしなくちゃいけないんだ?」

 妹は俺の言葉を無視し、無言で頭を差し出してくる。
 仕方なく撫でてやると甘えるように、えへへと笑った。

兄「キモイぞ」

妹「さて次です」

 淡々としてる。
 声こそ可愛いが、口調が固い。

兄「まだあるのか?」

 妹は頷き、言った。

妹「はい。頭を撫でて満足した兄さんは、次に何をしますか?」


6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 16:36:42.65 ID:xJXZBvdq0
兄「腹が減る」

妹「私の頭を撫でるとお腹が空くのですか?」

兄「まぁ、動いたからな」

妹「動くとお腹が空く──確かにそうともいえるでしょう。では私が兄さんに料理を振舞いました。お腹が一杯です」

兄「おい待て。この部屋には調理道具も食い物も何もないぞ?」

妹「まったく、兄さんは頭が固いですね」

 妹はやれやれと首を左右に振った。

妹「いいですか? この部屋は宇宙の縮図と言いました。相違点は私達二人しかこの世界に存在しないという事だけです。
  ならば普段苦にも思っていない空腹だとかの生理現象は、当然の如く解消できなければいけないのです。
  ただ、今は夜中。本当に食べたら体に悪いのでそこは端折ります」

兄「まぁ、うん。良く分からんが納得してやる」

妹「ありがとうございます。まだまだ長いですからね」

兄「長い? それは、俺の大切な時間を消費してまで付き合わなきゃダメなことなのか?」

妹「いいえ。そんな事はありません。私に囚われる必要は──皆無です。ですので──」


8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 16:38:43.13 ID:xJXZBvdq0
 ──お好きにしていただいて構いません。どうします、続けますか?──と妹は言った。

 1.俺が首を横に振ると、妹は部屋を後にした > スレを閉じる

 2.俺が頷くと妹は寂しげに微笑んだ > 続きをお楽しみください


9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 16:40:54.70 ID:xJXZBvdq0
妹「ありがとうございます。では──さぁ、どうします?」

兄「どうするって? なんだったっけ?」

妹「私の頭を撫で、私のご馳走を食べてお腹が満腹になった兄さんは、それで満足しましたか?」

兄「そうだな、ほっぺを抓ってみよう」

 俺は言って妹へ指を伸ばし、ふにふにの頬を指先で軽くつつく。
 そして人差し指と親指を伸ばした拍子──妹にその手を弾かれた。

妹「痛いのはダメです」

兄「優しくするから」

妹「まぁ──それなら」

 妹は俺から目を離し、頬をついと俺に向けた。
 本当は思い切り抓るつもりだったのだが、優しくするといった手前、痛くする訳にはいかない。
 軽く摘んで上下に揺らすだけに留めた。

妹「あうあう」


12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 16:43:10.51 ID:xJXZBvdq0
 頬から手を離す。
 すると妹は居住まいを正し、一つ咳払いをしてやや丁寧に言葉を発した。

妹「では、ここでアクシデントが発生します」

兄「アクシデント?」

妹「はい。私も兄さんのほっぺを摘みたいと言ってきました。さぁ、どうします?」

 一体どこがアクシデントなのか?
 俺は構わないと頷く。

妹「では」

 軽く一礼。
 妹は俺の頬に指を伸ばし摘むと、ぐいと引っ張った。

 ──思いのほか、痛い。
 素直にそれを伝える。

兄「いはい」

妹「あっ、ごめんなさい」

 妹は慌てたように手を離した。


13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 16:45:17.77 ID:xJXZBvdq0
 頭を垂れ、しゅんとうな垂れている。ただ瞳だけが申し訳無さそうにこちらを向いている。
 つまらない事で凹むなと言ってやったが、つまらない事ではありませんと反論された。

 ふと妹が俺を見上げ、そしてうやうやしく言った。

妹「兄さん、それではそろそろ寝ましょうか?」

兄「え? あぁ──」

 時計に目をやる。
 午前1時を過ぎていた。
 そう気付くと、なんだか眠くなったように思う。

兄「そうだな。寝ようか」

 言ってあくびをひとつ。やはり眠かったようだ。
 妹もそれに倣うように、ふあと小さくあくびをした。

 今さっきまで続いていた質問は、一体なんだったのだろうという疑問が残っていたが、
 妹も流石に飽きたのだろうと、即座に思い返して布団の中に潜った。

兄「おやすみ。出るときに電気消しておいてくれ──」

 だが──。

妹「失礼します」

 妹の声。
 もぞもぞと布団に進入してくる。


14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 16:47:25.03 ID:xJXZBvdq0
兄「おい」

妹「はい。なんでしょう?」

 ぴたりと動きを止めた妹に、俺は咎めるように言った。

兄「自分の部屋に行けよ」

妹「ダメです。壁が遠ざかって出る事が出来ないのです。宇宙の外には出られません。
  それに生憎この部屋にはベッドが一つしかないのです。ご容赦ください」

 妹はそれだけをぺろりと述べ、自分は容赦なく布団に潜り込んで、
 俺の背中にぴったりとくっ付いた。


15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 16:50:23.34 ID:xJXZBvdq0
兄「まさかまだ続いているのか?」

妹「続いていますよ? あの時やめなかった兄さんが悪いのです」

兄「じゃあ、今からやめるわ」

妹「ダメです。兄さんへの選択肢はありません」

 横暴である。

兄「お前は一体、何がしたいんだよ?」

 ため息を付きながらそう言うと、妹は不安げに聞いてきた。

妹「兄さんは私と一緒に寝るのが嫌なのですか?」

兄「いや、俺、もう高校生だぞ? お前だって来年からそうだ。それで親に見つかったら変な目で見られるだろ」

妹「兄さん、設定を忘れています。この世界には二人しかいないのです。変な目で見てくる両親はいません」

兄「あぁ──これもそうなんだったな。でももしこの場が見つかったら、お前責任とって言い訳しろよ?」

妹「ふふ、了解しました」

 含みを持った言い方である。もしばれたら──と思うと少し恐くなったが、
 屁理屈を捏ねる妹に言葉で勝てるわけがない。俺はさっさと諦めた。

兄「じゃあいいよ。好きにしろよ」

 ありがとうございます──妹は言いながら俺の背に顔を埋めた。


16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 16:53:42.32 ID:xJXZBvdq0
妹「これで一つ証明になりましたね」

兄「証明? 何の?」

妹「二人だけだったら、兄さんは私と一緒に寝てくれるという事です」

兄「何だその言い方は? お前が一緒に寝たいって言うから寝かせてやってるだけだろ。他意はない」

妹「なるほど」

 妹はうんうんとひとりで納得したようだ。
 俺には何がなるほどなのか全く分からない。

妹「では、もし──私が、兄さんとキスをしたいといったらどうしますか?」

兄「気持ち悪いことを言うな。誰がお前なんかとするか」

妹「気持ち悪いとは失礼ですね。これでも多少はモテるんですよ? 私のことを好きな男子に謝ってください」

 どうして妹とこんな会話をしなくてはいけないんだ。
 例えどれだけ可愛かろうが、妹は妹でキスなんてする必要はない。
 可愛いからといってそんな感情は湧かないのだ。


19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 16:56:39.68 ID:xJXZBvdq0
兄「冗談はそれくらいにしろ」

妹「冗談? そうですか、ではまず冗談でない状況にしなければいけないのですね」

兄「そんな状況はねぇよ」

 俺の反論に、妹は何も返さなかった。
 沈黙。
 異様に静かだ。
 妹が俺の背中の後ろでもぞもぞと動いている。

 そして、不意だった。
 妹が言葉を発した──。

妹「私──妹は、兄さんの事が好きです──」

 あまりの真剣な口調とその内容に、俺は返す言葉を失った。
 いや、失う前から返す言葉なんて存在していない──。

 どうして嘘を付くときの様に、言葉に含みを持たせない?
 どうして冗談を言うときの様に、軽い口調じゃない?

 そんな言葉──兄妹の間で言うべき台詞ではない。
 ならば、”そういう意味”ではないのだろう。俺はそう思うことにした。
 
妹「──と、私が言ったとします。いえ、今言いました。さぁ、兄さん、どう答えます?」

 そんなこと決まっている。


20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:01:39.78 ID:xJXZBvdq0
兄「ありがとうと答えるさ」

 妹は、意外だったのかほうと言い、続けた。

妹「ではキス──」

 俺は妹の言葉を遮る。

兄「それとこれとは話が別だ」

妹「別? 別ではありませんよ。私は──」

 再び遮る。

兄「さっきの”好き”をお前はどういう意図で言ったのかは知らないが、俺は兄妹という間柄に対して言ったんだと受け止めたんだ。
  それに対する”ありがとう”なんだよ。履き違えるなバカ」

 妹はぐうと声を漏らす。

妹「そうですか──ならば不服ですが言いなおします。妹は兄さんの事が好き──異性として好きです」

 やはり真剣な口調。
 俺はどう答えるべきなのか。
 やはり答えは決まっている。

兄「ゴメン」


21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:04:19.90 ID:xJXZBvdq0
妹「どうして、ダメなのですか?」

 絞り出すような声だった。
 妹としては珍しい──感情である。
 妹は喜怒哀楽が少ない──この場合は怒と哀が混じったような口調だった。

兄「分からない奴だな。お前が妹だからだ」

妹「どうして妹として見るのですか? 異性として好きと言いったのです。
  ならば兄さんも異性として見て貰わないとおかしいです」

兄「おかしくねぇよ。異性として見ようが、妹は妹なんだよ、だからゴメンなんだ」

妹「おかしいです! どうしてそこで妹が出てくるのですか! 異性だったら妹は関係ありません! ないはずです!」

 妹は珍しく──本当に珍しく声を荒げた。
 確かにおかしい。ただおかしいのは論点ではなく、妹それ自身だ。

兄「お前は言っただろ。"兄さんの事が好き"って? 俺を異性として見て、兄として見ていないのなら、
  お前は俺に対する二人称を改めるべきだ。お前だって兄として俺を見ているじゃないか。
  だから"おかしくない"んだ。それでも尚、俺を好きだと言えるお前が"おかしい"んだよ」

妹「あ──」


23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:07:38.86 ID:xJXZBvdq0
 妹は言葉に詰まったように、一文字だけを声に現し、すうと俺の背から身を引いた。

 俺の背と妹の胸の間に、酷く冷たい空気が入る。
 そして同時に俺の心に寂しさがこみ上げた。喪失感と云うべきかもしれない。
 ──気のせいだ。
 と、俺はその感情を一蹴する。

 しかし、妹もその冷えた空気をその胸に浴びているであろう。
 ならば、妹はどう思っているのだろうか?
 ──やはり、寂しいのだろうか?

妹「すみません。少し熱くなってしまいました」

 ──元に、戻っている。
 凛とした涼やかな声。固い口調。

 その声からは喜怒哀楽が感じられない──いや、悲しそうではある。
 いつも聞いている声だから、それが普通だと思っていた。
 だとするならば、妹はずっと──。

 俺の思考を遮るように、妹が声を発した。

妹「続けます。いえ──」


24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:10:37.93 ID:xJXZBvdq0
 ──続けますか? ──と妹は俺に問うた。

 1.「もうやめよう」 妹は布団を抜け出し、部屋を後にした > スレを閉じる

 2.「続けてくれ」 妹が俺の背をそっと撫でた > 続きをお楽しみください


26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:14:27.30 ID:xJXZBvdq0
 妹が一体何を話すのか、俺はそれが気になって仕方がなかった。

 背に触れている妹の手が温かい。

妹「この世界には兄さんと私の二人しかいません。もしその世界で、私が兄さんを好きになった──。
  でも、いえ──"でも"ではなく、あるがまま──。兄さんは私のことを好きにはなってくれない。
  その違いとは、一体なんだと思いますか?」

兄「さっきも言っただろ? お前がおかしいんだよ」

 おかしいだなんて言いたくはなかったが、あえてキッパリと言ってやった。

妹「そう──なのでしょう。では何がおかしいのか、それは兄妹を好きになれるということがおかしいと、そういうことですね?」

兄「そうだ」

 俺は頷く。
 しかし背にいる妹には見えないだろう。これは自分に対する頷きだ。

妹「では何故、兄さんは妹を好きになれないのですか?」

 何故と聞かれても困る。
 それは妹だからであって、他に理由なんてものはない。
 そもそもそんなことを考えた事すらない。

 俺はそう、妹に伝えた。
 そして、ならばどうしてお前は兄を好きになるのだと、続けて聞いた。


29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:18:38.23 ID:xJXZBvdq0
妹「そうですね。人を好きになるのに理由なんてない──とよく言われます。
  ですが不思議ですね。どうして兄妹で好きになるのには理由が要るのでしょう?」

 それは確かに不思議ではある。
 だが、理由は居ると思う。何故なら──兄妹だからだ。
 それ以上の言葉が見つからない。これでは堂々巡りだ。俺は黙した。

妹「そんなものはね? 兄さん、ないんですよ」

 ──ない!?
 そんな馬鹿な。ないわけがない。
 理由もなく好きになっていいのだったら、俺や妹は何について考えているというんだ?
 妹は続ける。淡々と──しかし段々と口調に熱が篭る。

妹「だから、兄さんが妹を好きになれないことにも理由なんてない"はず"なんです。
  あってはならない──けれど、"ある"──あるんです!」

 バカみたい──と妹はそう締めた。
 しかし、尚も妹の言葉は続く。
 自分で括った筈の言葉に更に疑問を投げた。


31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:22:38.76 ID:xJXZBvdq0
妹「好きになれない理由があるのなら、好きになる理由もなくてはならない──そんなはずないのに──ね?」

 誰に対するということもない疑問符。
 恐らく先ほどの俺の頷きと同じ、自身に対する問いなのだろう──。
 妹はもう片方の手を俺の背に添えた。

妹「兄さんが私を好きになってくれない理由はいくつかあります」

 ──私?
 すごく些細なことだった。
 けれど俺はどうしてだかとても気になった。
 今まで意識的に言わなかったのであろう、"妹"という三人称を、一人称へと持ってきたことが。

 これも意識的に? ──いや、無意識に"私"と言ったのだ。
 妹の言葉は完全に熱を帯びていた。
 そして──その熱を吐き出す。俺に向かって。


32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:27:34.40 ID:xJXZBvdq0
妹「『近親相姦』──『近交弱勢』による遺伝的疾患やそれに伴う死の誘発。
  『ウェスターマーク効果』というものもありますね。これは幼い頃から生活をともにした者に対する
  性的興味の喪失──近親交配を未然に防ぐ為に備わった心理的機能とも言われています。
  つまり人間は意識的、本能的──果ては遺伝子レベルで"そういうもの"を避けるように出来ているのです。
  それは現在の法律、社会、道徳──過去の歴史を紐解けば明らかです。
  もちろん近親間での性行為や、愛を認める過去もありました──しかし──」

 妹はそこで一旦言葉を切った。
 俺の肩に手を置き、ぐいと体を詰めた。
 密着。
 暖かい。
 妹の体から温もりが伝わる。

妹「──今は、そうではないんです」

 妹は俺の耳元で、訴えるように、嘆くように──言った。

妹「法律が、社会が、道徳が、私の想いを邪魔するんです。
  例え二人だけの世界を想像してみた所で──それらは簡単に拭い去れるものではなかった──」


33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:31:01.37 ID:xJXZBvdq0
 鼻をすする音が聞こえた。
 語尾が涙ぐんでいる。
 妹は──泣いていた。

妹「どうして拭えないのですか? ──いいえ、。分かります。それは──
  ──兄さんが──いえ、恐らくこの社会に生きるほぼ全ての人間が──そういうものに雁字搦めになっているのです。
  見られているのです、見ているのです──法律が、社会が、道徳が──世間が、周りの人間が、親が──そして兄さん自身が」

 ──あぁ。
 やっと妹の言いたいことが分かった──気がする。

妹「私のことを、女として決して見てくれることのない、心に、なってしまって──いるのです」

 ──それが、俺が妹を好きになれない理由。

 ──『例え二人だけの世界を想像してみた所で』
 妹はそう言っていた。
 それはつまり、親や、周りの人間や、世間──道徳、社会、法律──そういう邪魔なモノを全て取っ払った上で、
 俺と対等に接したかった──そいういうことなのだろう。

 ならば、最後に邪魔していたのは、俺自身ということに他ならない。
 俺は、俺を取り巻く全てのものに雁字搦めになって、妹をそういう眼でしか見ることが出来なくなってしまっていたのだろうか?


36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:34:20.66 ID:xJXZBvdq0
 ──いや、それは違う。
 妹は近親交配を未然に防ぐ為の心理的機能が人間に備わっていると云っていた。
 社会や道徳がどうであれ、俺自身がそういう心を元より備えているのだ。

 ──だが、それは──、
 妹の"女のして見て欲しい"という、ただそれだけの想いを踏み躙るだけの、大層な理由になりえるのだろうか?

 ──ならない。なるわけがない。
 何故なら、妹が泣いている。

 理由なんてない。理屈なんていらない。
 涙とは、感情が高ぶったときに流れるものだ──それだけじゃりませんよ。と妹の声が聞こえた気がする。
 ──うるさい。
 とにかく理屈屋の妹が、感情でモノを語ったのだ。
 ──ならば俺は──。


37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:35:08.32 ID:Nx49cUpR0
―に頼りすぎ


38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:36:10.28 ID:aqiZz43C0
猫撫ディストーション思い出した


39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:37:12.27 ID:xJXZBvdq0
 俺は、妹へ振り返り、そして──強く抱き締めた。
 きっと妹の弁論の熱に当てられていたのだろう、頭がおかしくなったのかもしれない──。

兄「ゴメンな。辛かったか?」

 実際、妹がどんな想いを胸に秘めていたのかは分からない。
 けれど、そう言うしかなかった。分かってあげたかったのだ。

妹「はい」

 妹は言って、嗚咽を上げた。
 胸に抱いた妹の頭を優しく撫でる。

兄「女として好きになれるか分からないけれど、お前の事は妹としては好きだ」

 妹は返事をしない。ただ泣いている。
 こんなこと言われて頷くわけがない。
 だが事実だ。
 嘘なんて言ったって、こいつは喜ばない。


42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:39:38.07 ID:xJXZBvdq0
兄「明日、暇か?」

妹「いいえ。宿題があります」

兄「じゃあ、手伝ってやるから、明日──」

 俺は一瞬口篭る。だが、言った。
 女として見てくれというのならば、そう見なければいけない。
 だとするならば、俺から誘うのが礼儀である。これも俺が社会で学んだ事なんだけれども。

兄「──デートをしよう? それで、お前の魅力を、俺に見せてくれよ」

妹「十分に見せているつもりです──バカ。でも、でも、嬉しいです」

 妹は俺の胸に深く、深く顔を埋める。

妹「きっと私のこと、好きにしてみせます。覚悟しておいてくださいね?」

 そう涙声で言った妹の言葉は、少しだけ明るかった。

 おわり。


49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:46:07.96 ID:xJXZBvdq0
皆様読んでいただきありがとうございます。

兄を好きな妹が性的なモノを抜きに、どう兄の興味を妹へ引かせるのかを主題としました。

読み返すと、確かに「──」が多いですね。
不必要な箇所も多々あります。気をつけます。


あと猫撫というのが気になったのでググッて見たのですが、
詳細が分かりません。こういう妹が出てくるのでしょうか?


52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:50:15.13 ID:ZxBHWNA20
>>49
猫撫ディストーション (エロゲ、ただし体験版はエロシーンなし)
http://www.white-soft.jp/products/nekonade/index.html

認識論が主題のお話、>>1の妹よりクール……というか、兄に恋愛感情を持っているのかどうかあやふや


53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:59:36.56 ID:xJXZBvdq0
>>52
これはかなり面白そうですね。


44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:41:18.02 ID:m7BmG6XJ0
ぼけーっと見てたけど
> これも俺が社会で学んだ事なんだけれども

ここで痺れた。すごくかっこいい


50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:47:52.94 ID:m7BmG6XJ0
兄妹もの好きな方ではないけどなぜか全部読んだ
最後までへーって感じで>>44のとこでうひょえってなった
部屋の中うろうろしてもう一回読んだらやっぱりうひょえってなった
勢い余って二回感想書いちゃうくらい痺れた


53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:59:36.56 ID:xJXZBvdq0
>>50
ありがとうございます。
何か感じ取ってもらえたのなら嬉しい限りです。


46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:42:40.22 ID:ZxBHWNA20
>>1
好きだぜこういうの





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