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弟「もうヤマネコケン行った?」 兄「まだ」

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 01:36:12.37 ID:H331BWNg0
兄「ヤマネコケンってあれだろ。一万もらえる場所」

弟「そ。手ぶらで行って簡単な手続きするだけで、その場で一万円ゲット」

兄「うっさんくせええ話」

弟「でも、政府公認の施策だとさ。ウワサじゃ近々、全国民に義務化するとか何とか」

兄「ハァ? この国借金まみれなんだろ? なんで金ばらまきたがるんだか」

弟「まーそれについちゃネット新聞ニュースで散々グダグダ説明してるけど」

兄「オマエは行ったの?」

弟「いんや。近所のヤマネコケン、まだ地元のホームレスが集まってるし」

兄「はー、『全国民』ねぇ。で、そのヤマネコで手続きったって、何すんだよ」

弟「それがオレん友達、なんも教えてくれないの」

兄「はぁ? なんで」

弟「知らね。なんか全員クチそろえて」

弟「『行けば分かる』って」





3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 01:37:34.46 ID:H331BWNg0
 

弟「やべ。もうこんな時間」

兄「遅刻しやがれ留年しやがれ俺みたいになれ」

弟「嫌だよバカ。とっとと職探せタコ」

兄「あ? コラ」

弟「いってきまーす」



弟(んー……いちまん。一万かぁ)

弟(そろそろ小遣いヤバイし)

弟(今日あたりオレもヤマネコケンとやらに行ってみようかな)

犬「ワワワン!!」

弟「おお、びくった。今日はお前起きてんだな」

犬「ワウ! ワウン! ワン!!」

弟「今日は構ってるヒマねーの。じゃあな」

犬「ワンッ! フゥッ」


4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 01:38:35.94 ID:H331BWNg0
【教室】

弟「セーフ」

友「よう」

弟「よう。お、クツ変わってる」

友「すげーよく分かったな。すげーよお前、すげー気持ち悪い」

弟「いやお前のはボロ靴だったし」

友「でもそんなの普通誰も見らんだろ」

弟「ていうかお前そんなもん買う金あるんだったらジュース代返せよ」

友「おう忘れてた。いいぜ、今のオレすこーしリッチだからな」

弟「なんでさ」

友「やっと行ってきたんだよ。例の。あのー。あれだよ」

弟「ヤマネコケン」

友「ヤマネコケン! そこで一万もらってきたんだわ」

弟「あっそう。じゃ次の休み時間にとっととジュース代返せよ」

友「なにこいつ冷てぇ」


5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 01:39:41.33 ID:H331BWNg0


【休み時間】

弟「120円。120円」

友「チャイム鳴るなりがめつい奴」

弟「あるうちに返せ。そしてお前にはもう貸さねえ」

友「へーんだ今はオレの方が金持ってるもんねえ。……あー残念。細かいのないわ」

弟「ほんとか?」

友「マジだよ! ほら!」

弟「今日中に返してもらうから、ちゃんと昼休みに崩しとけよ」

友「このヤロー、オレも暇じゃねーんだよ。今度返すよ」

弟「いま返せ。あ、いや、じゃあ、分かった、金は返さなくていい」

友「マジで?」

弟「そのかわり、ヤマネコケンっつーとこで何すんのか教えてくれ」

友「えっ?」

弟「ヤマネコケンだよ。オレも近々、一万貰いにいくからさ。要領教えてくれよ」


7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 01:40:29.87 ID:H331BWNg0
友「ええー……何するって言われてもな」

弟「覚えてる分でいいから」

友「いや、普通にこう、なんか書いて、はい終わり、みたいな」

弟「何を書いたんだよ」

友「いや、普通のお役所手続きっていうか、名前とか、住所とか……」

弟「ホームレスも来てんのに、そんなの意味あんのか?」

友「知らねーよオレに聞くな。で、それ書いたら……ハイって封筒渡されて……」

弟「渡されて?」

友「渡されてって、それで終わりだよ。別に面白くも何もねーよ」

弟「建物の中どんなだった? 個室?」

友「ンなんいちいち覚えてねーよ。普通の役所みたいな感じだろ」

弟「はあ」

友「気になるんなら行けばいいだろ。行きゃ分かるって!」

弟「あそう。情報提供不十分だったからジュース代チャラはナシな」

友「えぇなんでだよ!!」


8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 01:42:53.21 ID:H331BWNg0
【昼休み】

弟(……ソッコー消えやがって、あいつちゃんと売店行ってんだろーな)

弟(……。今日の日直はイインチョか。あんまり話したことないけど……)

弟(だからこそ、はぐらかしたりウソついたりはせんだろ)

弟「あのー委員長」

委員長「!! な、なに?」

弟「委員長はもうヤマネコケン行った?」

委員長「ヤマ……? ああ、ヤマネコケン、うん、行ったけど?」

弟「そんとき、中どんな感じだった? 具体的に何したの?」

委員長「え? ええっと……普通だったよ」

弟「普通?」

委員長「うん。行けば分かるよ」

弟「あーやっぱ皆ソコはぐらかすんだな」

委員長「はぐらかすもなにも……別にホント大したことないし……」

弟(ふうん。イインチョが言うんなら、ホントに大したことないんかな……)


9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 01:44:58.15 ID:H331BWNg0
【放課後】

弟「おい」

友「ん、なんだ? アーッジュース忘れてた!」

弟「は? 昼休みどこ行ってたんだよ」

友「外で遊んでたわ! ちなみに昼飯食ってない」

弟「くたばれ。……あー、じゃあ一緒に飯でも食いに行こうぜ。今日部活ないだろお前」

友「なんで知ってんの!? お前もしかしてオレマニア!?」

弟「前に曜日教えたことも覚えてないのかアホ」

友「知るか。あー飯? 食いに行こうぜ、どっかいい場所ある?」

弟「ウチん近くの例のラーメン屋がいま割引やってる」

友「行こう行こう」

弟「お前いま金持ちなんだろ。何かおごれよ。ギョーザとか」

友「えっなに、お前が誘ってるんだよな。お前がおごってくれるんじゃねぇの?」

弟「何が『えっなに』だアホ。最低でもジュース代くらいは返してもらうからな」

友「あってめーそれが目的か!」


10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 01:48:56.37 ID:H331BWNg0
【外】

弟「あー。これ。ここ」

友「なんだよ。あー、ヤマネコね」

弟「ヤマネコケン。お前が入ったのもここ?」

友「いんや、別のとこ」

弟「ここと似てた?」

友「えー覚えてないわ。似てんじゃないの?」

弟「お前つい最近一万もらってきたんだろ」

友「だから何だよ、お前だっていちいち役所の建物とか覚えんだろ」

弟「そうだけど、昨日今日の出来事だったら記憶に残ってるもんじゃねーの?」

友「ま、どーでもいいじゃん。早くラーメン食いに行こうぜ」

弟「中で何やってんのかね」

友「だからただの書類手続きだけだって。気になるなら今ココ入ればいいじゃん。待つから」

弟「えっ。いやいい。まだ金あるし。ラーメン行こうぜ」

友「おお」


12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 01:52:47.89 ID:H331BWNg0




弟「はー食った食った」

友「てめぇ割引なんかやってなかったじゃねーか!」

弟「だからそれはもういいだろ。どうせ金持ってたんだし」

友「オレの……貴重な財産を! 最終的に240円も損した!」

弟「そのうち半分はもともと俺のだから」

友「違った280円の損だわ!」

弟「ところでさ」

友「なんだよ!」

弟「ほら。これ。ここ」

友「はぁー何だまだ言ってんのか。ヤマネコがどうしたんだよ」

弟「ヤマネコケン。少しはなんか思い出した?」

友「だからそんなのどうでもいいだろが! とっとと入りゃいいじゃねーか!」

弟「いや。今日は乗り気じゃないからいいや」


13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 01:56:51.22 ID:H331BWNg0
友「一体ヤマネコケンの何がお前を惹きつけちゃったんだよ……理解に苦しむわ」

弟「だって中で何してんのか気になるじゃん」

友「お前な、例えば住所変える時なんかも、役所に行く前にイチイチ同じこと言うわけ?」

弟「あ。オレこっちだから。またな」

友「あーもうよく分からん奴……」



犬「ワワワン! ワン!!」

友「おうわ!?」

弟「おお。ちょうど起きてたみたいだな。ってお前ビビリすぎだろ」

友「い、いきなり吼えられたら誰だってビビるわ! うわーこの……この犬ヤローめ」

弟「お前そんな犬苦手だったっけ?」

友「別に苦手じゃねえけど……ああーでも、何となく苦手って感じではあるわ」

弟「こりゃいいことを聞いた。わざわざお前を連れ出した価値はここにあったわけだ」

友「てめー何たくらんでやがる! あこら逃げんな」

弟「じゃーなーまた明日ー」


15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 02:00:28.23 ID:H331BWNg0
【家】

弟「ただいまー。オカエリー」

弟(兄貴今日はバイトの日だったか)

弟(……)

弟(ヤマネコケンねぇ。深く考えすぎか?)

ピッ カタカタカタカタ  ウィーーーーン

弟(ネットで口コミ的な下調べしようにも……)カタカタ

弟(ほら。ほとんど話題にも挙がってないんだよなー、とっくに旬過ぎてて)

弟(……なんかヤマネコケン行ってない奴は情弱扱いされてる始末だし)

弟(行けば分かる。行けば分かる……ってまともな回答もこれしかねえし)

弟(公式ページも、政令のコピペと能書きと……お役所マップと不十分な手続き案内……だけ)

弟(だけ? って……別にこれでも十分か? やっぱ考えすぎ?)

弟(オレがおかしいのか? それともヤマネコケンが?)

弟(『おかしい』?)

弟(オレは、このヤマネコケンが『おかしい』って考えてるのか……?)


16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 02:06:51.62 ID:H331BWNg0


【バイト先】

兄「……おっこんな時間。すいませーん」

社員「ん? あー時間ね。カード切ったらアガっていいよ」

兄「うす」

ピー ピッ

兄「最近ヒマっすね」

社員「んん。なんかこの間からウチの……というか業界全体の売り上げ落ちてきちゃってね」

兄「もういまどき流行んないすかね」

社員「さぁねえ。このままいくと、もしかしたらココもたたむことになるかもしれんね」

兄「えっまじすか」

社員「いや、もしかしたらだよ。まだ先の話。でも君は早く定職に就いた方がいいかもね」

兄「あー……そうっすね……。あっじゃ、お疲れ様っす」

社員「はいお疲れー」

バタン


17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 02:08:36.31 ID:H331BWNg0
<原付>

 ブロロロロロロrrrrrr――

兄(ふう)

兄(この分じゃ今月分もまた給料下がりそうだな)

兄(早いうちに職見つけろったってなぁ……)

兄(俺みたいなクズ雇ってくれるとこなんてどこにも……)

兄(!)

兄(くそが、信号運ついてねえな)

 ブルルル

兄(ん? あれは……何とか拳……ヤマネコケンか)

兄(こんなとこにも建てられてんのか。一万吐いたら用済みのスポットが)

兄(そんなんに税金使うくらいなら俺にくれって言いてーわ。あ、くれんのか。いちまん)

兄(どうせ義務化? とかされるんなら今日のうちに行っとくか? 軍資金たくわえに)

兄(おっと青。いっか今日は。スカンピンになったとき頼りゃいいや)

 ブロロロロロロrrrrrr――


18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 02:11:19.08 ID:H331BWNg0
【雀荘】

メンバー「いらっしゃいませー」

兄「どーも」

メンバー「ただいま南入中です。お飲み物は?」

兄「アイスありありで」

メンバー「はい。アイスありあり入りましたー……どうぞ」

兄「あんがと。今夜は賑わってるね」

メンバー「ええ。近くにヤマネコケンができた影響もあるんでしょうね」

兄「あぁ、やっぱアレ最近できたんだ。もう行ったの?」

メンバー「はい、昨日さっさと一万円貰いに行きましたよ」

兄「ふうん、中どんなだった? 面倒くさかった?」

メンバー「いえ、簡単な手続きで済みました。行けばすぐ分かりますよ」

兄「そうかい。ギャンブルやる連中にはありがたいボーナスだろうな」

メンバー「まぁ大抵の人はその日のうちに溶かしちゃいますけどねぇ、はは。あっ卓ご案内です」

兄「はーいよ」


19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 02:14:14.99 ID:H331BWNg0
【雀卓】

兄「ロン。マンガン」

下家「あら。2チャと3チャ入れ替わったか」

上家「ラストー」

 ジャラジャラジャラジャラ

対面「これで3ラス目だわ。そろそろフトコロ冷えてきた」

上家「一万円も使い果たしましたかい?」

対面「なんの話だい?」

下家「おたくヤマネコケンって知らんの?」

対面「なんだいそりゃ。――へえ、ただで一万もらえるの」

下家「誰でもオーケーよ。24時間開いてるから、これ終わってからでも行ってきたら?」

兄「……時間、いつでも開いてんすか? ヤマネコケン」

上家「そうよ。何か知らんけどココと同じ24時間営業。はは。お兄さんもまだ?」

兄「はぁ。今度行こうかと」

下家「もらえるうちにもらっとき。はいじゃ次いこ、点棒もどしてもどして」


20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 02:21:38.11 ID:H331BWNg0
兄(……フツーそんな公的施設? って時間に厳しいもんじゃねーの?)

兄(しかもいつも金を扱ってんだろ? 夜に強盗なんか入ってきたらどうすんだ?)

兄(いや、それ言うならコンビニなんかも同じか……)

下家「番だよ」

兄「あ、すんません。その牌チェックで……」

兄(くそ、ぼーっとしてた。あれをチェック牌にしちゃったなら方針変えるか) コト

対面「ロン! さんまんにせん!!」

兄「!?」

上家「うひょー危ない」

下家「ただの染めと思ったら、その色全部アタリかあ」

対面「は、初めてこんなのアガった!」

兄「……はー」

兄(ついてねー。マジついてねぇ。てか今ので一気に手持ちがやべえ)

兄(俺もやっぱ今日の帰りにでも寄ってくか。一万もらいに)

兄(例のなんちゃらケンに)


22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 02:27:47.83 ID:H331BWNg0
【ヤマネコケン入口】

兄「着いた。よっと」

 ブルルrrrrブルン

兄(無駄にでけえ。マジで何のためにあんのか分かんねえ)

兄(でも見かけはただのヤクショっぽいな)

兄(電気……ついてんな。中に誰かいんのか?)

兄(入り口はあのドアか)

コンコン ガチャ

兄「すいませーん」

兄「……すいませーん」



兄「誰もいねえ。どうゆうこっちゃ……ん?」

  [ こちらの用紙に身元証明の記入をお願いします ]

兄(あーなるほど。電光掲示板か。無人用? の)

兄(まだ先にドアがあるな。あとで奥に入らないかんのか? 面倒くせえな)


23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 02:29:59.74 ID:XvmDkjqw0
ついにきたか……!


24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 02:30:58.93 ID:H331BWNg0
兄(はっ、横長の待ちソファー? 並ぶやつとかいんのか?)

兄(さてとっとと記入記入)

兄(お。ペン立てがある。朱肉も下敷きマットもある。このへん普通っぽい)

兄(記入欄は……名前・住所・連絡先……備考欄)

兄(備考欄……噛み砕くと『家持ってるか持ってないか』ってな欄がある)

兄(ホームレスはここにマークしていくんか。なんだ、結局人口調査的なアレか)

兄(げっ印鑑いるのか。あ、拇印でもいいのか。まぁそりゃそーか)

兄(……)

兄(はいできあがり) ぴっ

兄(これどこに置きゃいい……あ、あった投函ボックス) ぽいっ

  [ 次の部屋にお進みください ]

兄(掲示板のメッセージが変わった。用紙入れたら反応するシステムか?)

兄(全く、くだらねーとこはよくできてやがる……)


 ガチャ


25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 02:33:20.88 ID:H331BWNg0
兄(!)

兄(これは……)

兄(また似たような部屋か?)

兄(誰もいねえ)

兄(んで、まーた電光掲示板かよ)

  [ 現金の受領に必要な書類にご記入をお願いします ]

兄(で。また記入用紙紙とドア)

兄「……」

兄(次のドア、開いてんかね)

兄「……」
 
 
 
 ガチャ

兄「!!」

兄(開いてやがんの! 馬鹿らし!!)

兄(しかも……また似たような部屋が待ってんじゃん! なんだこれ!)


27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 02:40:00.21 ID:H331BWNg0

兄「……」

兄「やめだ」

兄(面倒くせえ。一気にやる気失せた)

兄(誰もいねーし……昼間は誰かいんのか?)

兄(もういいや今日は。せっかく最初の部屋でめんどくさい記入したけど)

兄(もっと簡単にぱっぱ終わるもんだと思ってたぜ。今の俺はちょいイラついてて眠いんだよ)

兄(もう帰るわボケ)



【外】

兄(あーくそ時間損した。今日寄るんじゃなかったな)

兄(帰ってとっととメシ食って風呂入って寝るか)

 ガチャン ブルルルルル   ブロロロロロrrrrrr

         

      

   


29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 02:42:24.31 ID:H331BWNg0
【家】

兄「よう。ただいま」

弟「おー。ちょっと聞いてくれよ、ちょっとやべーかも」

兄「なんだよ」

弟「『ヤマネコケン』ってさ、中がどうなってんのか分かんねーんだよ」

兄「ああ?」

弟「誰も詳しく教えてくれねーの。マジで誰も。どうでもいいことなのに。不自然すぎ」

兄「はぁ? ンなもん今日行ってきたわ」

弟「えっ?」

兄「なんか誰もいねーの。似たような部屋が延々続いてんの」

弟「あ、マジかよ。ネットでそんな情報チラっとあったわ、完ぺき無視されてたけど。で?」

兄「で? って後は知らんわ。途中でめんどくさくなって帰ってきた」

弟「は? じゃあ一万もらってきてねーの?」

兄「ねーよタコ。今日は疲れてんだよ、どけ風呂入る」

弟「……ふーん」


32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 02:53:39.70 ID:H331BWNg0

弟「なあ」

兄「ああ? んだよコラ」

弟「ちょっと詳しく頼むわ、ヤマネコケンの件」

兄「くっだらねぇ帰れ」

弟「いや偶然ダジャレになったけどさ、ちょっと詳しく聞きてんだよ」

兄「今日がゲンが悪いし明日もはええんだよ」

弟「いやーそこんとこどうしても頼む」

兄「るせえなタコ」

弟「頼む。今週の家事当番、全部やっから」

兄「マジで? や、気持ちわりぃわ、何なのお前」

弟「いやー気になんだよ」

兄「はーバカじゃね?」

弟「いーから。部屋の中ってどうなってたん?」

兄「はぁ? 部屋? なんか電光掲示板みたいなのがあって――」

弟「ふんん。それで?」


36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 03:01:52.45 ID:H331BWNg0
 

弟「――それマジ?」

兄「はぁ? 何度も同じことほざいてんじゃねーボケ」

弟「超うっさんくせええじゃん。何かの詐欺じゃね?」

兄「知るか」

弟「そんな特殊な構造になってんなら何で話題に上がんねーの?」

弟「そもそもそんな単発手続きの施設が、そこらに乱立してんのもおかしいし」

弟「ていうかそんな大金扱ってんなら誰かいろよ」

兄「知るか俺に聞くなタコ」

弟「実はネットで気になってんだけどさ」

弟「大手企業の社長やセレブの著名人にとっちゃさ、一万なんてはした金じゃん?」

弟「でもそいつらも、わざわざ手続きしに行く傾向があるみたいなんよ」

弟「なんか行かないと流行に遅れるって言うか……恥っていうか……」

弟「ヤマネコで手続き済ますのが一種のステータスになってる……ぽいんだよ」

弟「その影響もあって要するに……ものすごい勢いで広まってる、みたいな」


38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 03:06:57.78 ID:H331BWNg0
兄「うざってぇなー。何が言いてえんだよ」

弟「……」

兄「広まってて何がおかしいんだよ。どうせアレ、義務化? されるんだろ」

弟「……うん」

兄「千札五千札だってあっちゅー間にキャラ替えしたろ? それと似たようなもんだろうが」

弟「いやそれとこれとは別モンだろ」

兄「あーもーどーでもいい。もう俺は寝るわ。あともうなんかないな」

弟「ある。犬」

兄「あ?」

弟「最近、少し犬が苦手になった奴が増えた」

兄「……あ?」

弟「そんだけ。もうオレも何言ってんのか分かんね。寝るわ。おやす」

兄「おう」

バタン

兄(……あー。道理でウチの職場ピンチになってるわけか。ま、オレにゃどーしよーもねーけど)


41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 03:14:42.04 ID:H331BWNg0
 

【学校】

弟「よう」

友「よう。ヤマネコケンどうだった? 愛しのヤマネコちゃんは」

弟「あ? まだ行ってねーよ」

友「かーっ、お前そのうちネタにされるぜ」

弟「なんでだよ」

友「『こいつまだヤマネコ行ってねえええwwww』とか」

弟「どういう理屈だよ、脳みそ溶けてんじゃねーのそんなんほざく奴」

友「多分アレだ、いまどきケータイ持ってない男子的な」

弟「くだらねー」

友「いやそうは言うけどよ。実際お前、一万もらえるチャンス残してる訳じゃん?」

弟「あーなるほど。カツアゲなんかの的にはなるかもな」

友「それ。早めにちゃっちゃと回収してたがいーぜ」

弟「ご忠告どううも」


42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 03:19:54.37 ID:H331BWNg0
弟「……」

友「~♪」

弟「お前ってさ。今までなんか、金さえ払えば何でも話してくれたよな」

友「何だよいきなり人を乞食扱いしやがって」

弟「いや。何でヤマネコケンの中のこと、教えてくれないんかねえ」

友「はああ? まーだコイツ。あのな、オレにとっちゃとっくに済んだ話題なんだよ」

 パチン

友「!?」

弟「500円。玉。で手を打てよ。教えろ」

友「えっ」

弟「今までのお前なら、この額で心が動かなかったことはないはずだろ?」

友「えっ……いや。お前、どうしたんだよ」

弟「は?」

友「なんでそこまで必死になんだよ。たかだか役所で金もらいに行くだけの話だろが」

友「はは、ちょっとおかしいんじゃねーのお前!」


44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 03:29:02.88 ID:H331BWNg0

弟「……いや、お前こそ真に受けてんじゃねーよ」

友「何ぃ」

弟「せっかくこの500円に飛びついてたら、新しいネタが誕生してたんだけどなーあ」

友「はぁ? てめーオレをからかいやがって!」

弟「ところで話ゃ変わるけど。あこれは回収しとこう」

友「ああやっぱり欲しかった500円!」

弟「小坊のとき、オレらで初めて読んだエロ本のタイトル――アレなんだったっけ」

友「話変わりすぎだろ!」

弟「いやー最近それに似た本売ってんの見つけたんだけど。思い出に買おっかなーて」

友「マジで? マジで??」

弟「タイトルなんだったっけ? タイトルは――」

友「『脱ぎ脱ぎオーダー』! 『脱ぎ脱ぎオーダー』だよ!」

弟「ああ、ああっ、それそれ。そんなんだった。でも残念、違うっぽかったわー残念」

友「NOooo!!」

弟(うん……多分こいつ、間違いなくオレの知ってるダチだわ。間違いなく……多分……)


47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 03:36:38.87 ID:H331BWNg0
 

弟「委員長」

委員長「!! な、なに?」

弟「委員長は一万円、何に使ったの?」

委員長「えっ? ……え、ええと……服とか……」

弟「服? 制服以外の委員長とかイメージできねー」

委員長「別に大した服じゃ……」

弟「あっ、ところでさ」

委員長「なに?」

弟「ヤマネコケンってずっと変な部屋続いてたよなー。なんだったんだアレ」

委員長「えっ、もうお金もらってきたの?」

弟「昨日ちょっとね。あんなヘンテコな場所だったんなら、昨日教えてくれても良かったじゃん」

委員長「え……と。ごめんなさい……」

弟「ああいや、そういうんじゃなくてさ。なんで教えてくれなかったのかなーって」

委員長「え……と。あはは、何でだろ。うん……ごめんなさい……」


51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 03:42:54.95 ID:H331BWNg0
【放課後】

弟「……なぁ」

友「今度はなんだよ」

弟「お前ってさ。最近なんか変わった?」

友「あ、分かる? この靴買ってからさー、見ろ! この軽快な足取り」

弟「一万もらってからさ、なんか変わったことある?」

友「だからこの軽快な」

弟「足取り以外で。できたらマジで答え欲しいんだけど」

友「はー。いい加減オレもうんざりだぜ? どうせまたヤマネコ絡みだろ!?」

弟「は? 誰もそんなこと言ってねーけど? ってかごまかさねーで答えろよ」

友「べっっつにぃ? なーんも変わってないけど?」

弟「犬嫌いになった」

友「あー? 犬? まさかこの間の? ありゃ不意打ちでビビっただけだって!」

弟「お前、ていうかお前、犬好きだったろ? なんで急に苦手になったんだよ」

友「別に急にじゃねーけど……そうだな……何となく苦手になってんな。なんでだろな」


52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 03:46:47.98 ID:VYZ2gcRr0
怖いな


53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 03:52:26.35 ID:H331BWNg0
【帰路】

弟「……」

弟(……気になる点二つ)

弟(一つ目。誰もヤマネコん中の手続きについて詳しく教えてくれないこと)

弟(誰もだ。周りの奴らも、ネットの奴らも。はぐらかし、ひた隠し、無関心)

弟(その実は似たような部屋が続いての手続き? そんなん役所じゃなくても聞いたことねー)

弟(二つ目。犬が苦手になる)

弟(アイツは間違いなく犬派だった。長い付き合いだから、ヘンだと思うのはオレだけだ)

弟(それにネットでも、調べたらやっぱり犬派が敬遠され始めてるぽい)

弟(別に、急に猫派が増えたっつー訳でもなく)

弟(……で。それだけ)

弟(ヤマネコについて詳しく話さない、犬が苦手になる。それだけ)

弟(あとはなんにも変わんねえ。びっくりするくらい何も変わんねえ)

弟(あんまり変わんねえもんだから、オレがおかしいんじゃないのって錯覚しちまう)

弟(あーくそ。思考停止に逃げてしまいてえ)


56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 04:04:12.18 ID:H331BWNg0
【家】

弟「ただいま……」

弟(……今日も兄貴バイトだったか)

弟(今日あたり行ってるんだろうな。一万もらいに)

弟「……」

弟(お。皿洗ってある。夕飯の準備も)

弟(今週オレがやるっつったのに)

弟(あーでも寝ぼけてたから多分忘れてたな)

弟(でも兄貴は変なとこで気持ち悪いからな……気持ち悪い気遣い……)

弟(……)

弟(一応)

弟(メール送っとくか)

弟「……」

弟「送信。と」

弟「ふう。なんなんだよ。くそ」


58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 04:15:47.33 ID:H331BWNg0
<メール>

弟<もうヤマネコケン行ったん?>

兄<いまから入るとこ>

弟<よかったら中、写メって送って>

兄<撮影禁止。罰金とか。めんどくさい>

弟<部屋、入るごとにメールして>

兄<部屋ん中圏外。いちいち外出るのめんどくさい>

弟<じゃあ帰ってきたら詳しく教えて。絶対教えて。

  オレ、この件じゃ兄貴しか頼れないんだわ。すまん頼む>

兄<わかった>

 

弟「……」

弟「お。また返信きた」

 

兄<まかせろ>


61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 04:26:01.11 ID:H331BWNg0
弟「……」

弟「お。また」


兄<最初の部屋。やっぱ人いない。身元証明とかの用紙。
 昨日せっかく書いたのリセットされてるっぽい。
 内容は昨日話したのと一緒>


弟(はは。いちいち外に出るのめんどくさいんじゃなかったのか)


兄<次の部屋。やっぱ人いない。金もらうのに必要な書類らしい。
 なんかサインだけでオッケーだった>

兄<次。人いない。何か政治関係の宣伝とか。
 パンフみたいなの取るだけでいい。はよいちまんよこせ>


弟(パンフ……? ま、一万やるから宣伝させろってことで辻褄合うか? それとも無理矢理?)


兄<次。ちょっと大事。代理関係。まだ一万もらってない人限定。
 けがとか病気とか、どうしても自分のアシでこれない人の代理に、一万多くもらえる。
 もらっとくか? ただし身分証明とか厳しい>


弟(代理。自分のアシでこれない人の代理……果たしておかしいのかコレ……?)


63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 04:30:19.82 ID:H331BWNg0
弟(代理……まぁ誰にでも一万貰える権利はあるけど……不自然さを隠す迷彩にも見えなくはないし)

弟(何よりケガや病気の人って、なんつーか……後でどうにでもなるような人たち?)

弟(いやどうにでもなるって何がだよ意味分かんねえ。とりあえずメール送るか)

弟<めんどくさいんならいい。ていうかもう一万もらえなくてよくn

弟「……」

弟(せっかく調べてもらってんのに、水差すようなことは書けねーわな)


弟<めんどくさいんならいい。代理はいい>

兄<了解>


弟「……」

弟「……遅いな。お」


兄<つぎでさいごっぽい。あとドアあけるだけ。とりあえずはいるぜ>


弟「!!」


弟<ちょっと待って待って。そこ何があんの?>


66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 04:34:44.61 ID:H331BWNg0
 

弟「……」

弟「……」

弟「…………」

弟「また雀荘にでも行ってんのかねー」

弟「……」

弟「……」

弟「くっだらね」 ポイッ

弟「ネットでネタ探すか」

ピッ カタカタカタカタ  ウィーーーーン

弟「……」

弟「……」

弟「…………あ」

弟「マナーモード消してたかな」


71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 04:46:41.31 ID:H331BWNg0
弟「……」

弟「お。返信」



兄<たいしたことなかった。くだらねえ。雀荘行く>



弟「……」

弟「たいしたことなかった?」



弟<たいしたことなかったって?>



弟「……」

弟「……」

弟「ちっ。まただんまりかよ」

弟「どうなってんだよ。たく」

弟「……――」


74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 04:54:34.81 ID:H331BWNg0
【深夜】

兄「ただいぁー」

弟「! ……おかえり」

兄「話は明日。今日超ボロ負け。イラついてんだよ」

弟「ヤマネコケン」

兄「あ?」

弟「ヤマネコケンはどうだったんだよ」

兄「あ? 大したことなかった。以上」

弟「またそれか。なぁ、今回はマジで頼むわ」

兄「じゃ俺も、今回はマジで勘弁だわ。どけ風呂入る」

弟「中に何があったんだよ」

兄「どけ。知るか」

弟「おい」   兄「あ?」

<ワワワン! ワン! ワワン!!>

兄「!?」


75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 04:55:22.03 ID:H331BWNg0
弟「オモチャだよ」

<ワワワン! ワン! ワワン!!>

兄「お前それやめろ」

弟「なに? ビビってんの?」

<ワワワン! ワン! ワワン!!>

兄「やめろ」

弟「なんで? 聞き慣れたもんじゃねーの? だってこれ」

<ワワワン! ワン! ワワン!!>

弟「兄貴のバイト先で造ってるもんなんだしさ」

<ワワワン! ワン! ワワン!!>

兄「やめろ。消せ」

<ワワワン! ワン! ワワン!!>

兄「消してくれ」

弟「……」

<ワワワン! ワ>ポチッ


76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 04:58:05.65 ID:H331BWNg0
弟「ヤマネコケンってなに」

弟「一番奥のドアの先さ。何があった?」

兄「……さぁ」

兄「……行けば分かる……」

弟「行けば分かる? 本当は自分も分かってないじゃね?」

兄「……」

弟「ねえ。『何された』の?」

兄「……」

弟「それともさ。変な言い方になるけどさ」

兄「……」

弟「アンタさ」


弟「俺の兄貴なの?」


兄「……」

兄「…………」


80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 05:09:45.31 ID:H331BWNg0
兄「くだらね」

弟「!」

兄「厨二病こじらせんのも大概にしとけ。俺は今日疲れてんだよ」

弟「……」

弟「明日になったら話す? ヤマネコのこと」

兄「いや。明日も、明後日も、この先ずっと無理だな」

弟「なんで?」

兄「分かんねぇ」

弟「いまさらそれが通ると思ってんの?」

兄「知るか。分かんねーもんは分かんねーんだよ」

弟「あんなにメール送ってくれたのにどうして話せない」

兄「うるせえなあ。そんなに気になるんだったら、自分の目で確かめりゃいいじゃねーか」

弟「だからそれじゃ振り出しに戻っちまうだろ」

兄「この話はやめやめ。もう俺には済んだことなんだよ」

弟「オレには済んでねーよ。オイ待て、待てって!」  バタン


82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 05:15:16.62 ID:GUFM+K/h0
すげえハラハラする


87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 05:31:10.16 ID:H331BWNg0


弟(おかしい。異常だ)

弟(兄貴が。兄貴まであんなになるのは)

弟(一体何をされたんだ。別人になったかのようだ)

弟(いやあるいは別人に。別人に)

バタン

弟「  ハァ  ハァ  」

弟(もう確定的だ)

弟(ヤマネコケンはやばい)

弟(一万の金で釣って、誰かが、なんかしようとしてる)

弟(しかもここまで日常に介入して。自然にみえるように手を凝らして)

弟(どうなるんだ。このまま、もし国民全員がヤマネコケンに入ったら)

弟(いや全員じゃなくても、ある程度の人数が……まとまった人数がそろったら)

弟(ヤマネコケンに入ってない連中はどうなってしまうんだ? オレはどうなる?)

弟(でももう、どうしようも。どうしようも)


89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 05:38:55.68 ID:H331BWNg0

  ガチャ

兄「よう」

弟「!!」

兄「風呂。空 い  た   ぞ」

弟「!?」

兄「あ? どした? 顔が真っ青じゃねえか」

弟「い。いや。分かった。後で入る」

兄「あ? おい、どこ行くんだよ」

弟「ちょっと外で頭冷やしてくる」

バタン

弟「ハァ  ハァ  」

弟(やばい)

弟(味方がいねえ。みんな一万もらっちまってる。誰か。誰かいないか)

弟(誰か――)

弟「!!」


91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 05:44:32.03 ID:H331BWNg0
犬「クウウン」

弟「いつもんとこにいる犬か」

犬「クウン」

弟「お前」

弟「首輪どうした」

犬「クウン」

弟「そっか。野良になったか」

弟「よし。こっちこい」

弟「……」

弟「犬か」

弟「……」

弟「よしお前」

弟「ついてこい」

犬「ハッハッハッ」

弟「行くぞ。ヤマネコケン」


93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 05:50:53.56 ID:X0cDa0Ge0
ついに…


94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 05:54:08.57 ID:H331BWNg0
【ヤマネコケン】

弟「……」

犬「……」

弟「『ペット立ち入り厳禁』」

弟「関係ねえ」

弟「行くぞ」

犬「キュウウン。クウン」

弟「ダメか! お前ダメなのか!」

弟「お前連れてきた意味ねーじゃん!」

犬「クウン……」

弟「はは。よしよし」

弟「なんかお前のおかげで、逆に変な勇気わいてきたぜ」

弟「もういいヤケクソだ」

弟「お前はここで待ってろ」

弟「オレ一人で行く」


102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 06:17:08.40 ID:H331BWNg0
ガチャ

弟「最初の部屋」

弟「……へえ。こんなところか」

弟「電光掲示板ってのはアレか。で用紙がこれと」

弟「身元証明……はっ。何が身元証明だよ。こんなん何の意味もねえ」

弟「ホームレスもアリで拇印でいいなら、海外から来放題じゃねーか」

弟「次の部屋だ」

ガチャ

弟「受領証明? モノもねーのにいきなり受領にサインを強要かよ」

弟「常識的に考えたら順番めちゃくちゃだろうに」

ガチャ

弟「で、政治関係のパンフね。普通これが最初だ。アピールするなら第一印象にだろ」

弟「そしてここらで真意が図れる。出口までの距離稼ぎだわ。何のために?」

弟「一体何が奥に待っているんだかね」

ガチャ


107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 06:30:01.62 ID:H331BWNg0
弟「そして代理。今にして思えば無理気味な尺伸ばしもいいとこだな」

弟「代理が可能だったら、いっくらでも悪用できるじゃん」

弟「書類審査する人間もいないのに、ホームレスの代理とかどうすんだよ。あと外国人」

弟「で。この時点で結構奥に入ってしまってるけど」

弟「まだドアがある」

弟「……」

 ガチャ
 
弟「のぞくだけ!」

弟「……!!」

弟「……」

弟「短い通路」

弟「すぐ突き当たりにあるのが」

弟「さいごのドア」

弟「……」

弟「さいごのドアか……」


111 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 06:43:25.90 ID:H331BWNg0
弟「通路に」

弟「入ってみるか」

弟「……」

弟「このドアが」

弟「さいごのドア」

弟「ここ開けたら多分」

弟「引き返せないんだろうな」

弟「でもここ開けたら一万円もらえるし」

弟「どうせ全国民に義務化されてしまうんだし」

弟「もういろいろ考えるの面倒くさくなってきたし」

弟「もうオレも皆の仲間入りしていっか。いいの? オレ?」

弟「ちょっと待てないか? いや待ったところで何すりゃいいの?」

弟「そうだ。このドア、鍵穴がついてる。こっからちょっと覗いてみるか」

弟「一応これ見てから中に入ろう。そうしよう。何か見えるかな。何か――」

                                      ポチッ


113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 06:50:08.29 ID:H331BWNg0
<ワワワン! ワン! ワワン!!>

弟「!?」

<ワワワン! ワン! ワワン!!>

弟「あ」

<ワワワン! ワン! ワワン!!>

弟「びびった」

<ワワワン! ワ>ポチッ

弟「ふうう」

弟「この土壇場で……」



「ワワワン! ワン! ワワン!!」

弟「!?」

「ワン! ワン!!」

弟「こっちは本物の声だ」

弟「入り口に置いてきた犬! 入ってきとる!」


116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 06:57:07.49 ID:H331BWNg0
犬「ワン!」

弟「おー、もうここまできやがった」

犬「ワン! わふっ!! ワンワン!!」

弟「あーこいつ、多分さっきのわんこボイスに反応しやがったんだ」

弟「よっしゃ」

ポチッ

<ワワワン! ワン! ワワン!!>

犬「ワンワン! ワン! ワン!」

<ワワワン! ワン! ワワン!!>
犬「ワンワン! ワワン! ワワワワウン!!」
<ワワワン! ワン! ワワン!!>
弟「わんわんお!」
犬「ワンワン! ワワン! ワン!」
<ワワワン! ワン! ワワン!!>

弟「よっしゃノってきた! 準備はいいか! 開けるぜ!!」
犬「ワワン! ワン!」
弟「オラッ!!」

   ガ  チ  ャ


119 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 07:03:47.42 ID:H331BWNg0
弟「!!」

<ワワワン! ワン! ワワン!!>
犬「ワンワン! ワワン! ワワワワウン!!」
<ワワワン! ワン! ワワン!!>

弟「うるさい」

<ワワワン! ワ>ポチッ

犬「ワン! わふっ」

弟「……」

弟「どうなってんだこりゃ」

犬「わふっ。ふすっ」

弟「ヤマネコケンの――」

弟「反対側に出ちまった。外じゃねーか」

弟「さっきの通路は?」

弟「あれっ」

弟「無え。どこいった。ねえ」

弟「ヤマネコケンが。消えちまった」


122 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 07:14:33.40 ID:H331BWNg0
弟「おい消えたぞ、犬」

犬「わふっ。クウン」

弟「いや、確かにココあったよなあ。なんか建物」

弟「夢みてーだ。きれいさっぱり消えちまった」

弟(……)



弟(もし)

弟(この世にあるヤマネコケンを)

弟(こうやって全部消滅させていったら――)



弟「よし、犬」

弟「とりあえずメシおごってやる。あんまり金ねーけど。ついてこい!」

犬「ワン!」



END


124 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 07:15:19.84 ID:LseSWVHI0
俺達のヤマネコケンはこれからだ!


125 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 07:15:25.84 ID:sP5z4uPd0
俺たちの冒険はこれからだ!!




126 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 07:16:24.84 ID:H331BWNg0
ごめんなさいもう限界です寝ますおやすみ


128 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/08(月) 07:23:38.89 ID:BQJ/JBQz0
>>126
お疲れ様面白かったよ





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 「その他SS」カテゴリの記事


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  1. 2012/10/08(月) 21:51:38

    なんとなく注文の多い料理店思い出した


  2. 2012/10/09(火) 00:26:57

    なんとなくも何も、現代版注文の多い料理店でしょう
    風刺混じりの


  3. 2012/10/09(火) 00:38:12

    面白かったよ
    すごくいいよ作者


  4. 2012/10/09(火) 10:41:40

    字面じゃ分からんな……図じゃないと


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