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ネコ「……幸せ……」タチ「私も……幸せだよ」
- 1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 02:41:50.88 ID:fnGkz+Pu0
- 入学した時――初めての教室で、前の席が彼女だった。
黒くてさらさらしたロングヘアーは、とてもいい匂いがして……
前から配られてきたプリントを後ろの私に回すとき。一瞬だけ、その横顔が見えそうになった。
横顔をしっかり見ようとして、私はうっかり配られてきたプリントを床に落としてしまった。
その時、すっと床に落ちたプリントを拾い上げて私に渡してくれた。
- 3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 02:43:00.42 ID:fnGkz+Pu0
- ネコ「はい、どうぞ」
黒色の綺麗な瞳が、私をまっすぐに見つめる。
たったそれだけの事なのに、私の胸は張り裂けそうなくらいにドキドキしていて、お礼も言えなかった。
その後も彼女は、席が近いこともあって何かとあれば私に話しかけてきてくれた。
私はそんな彼女、ネコに次第に惹かれていってしまった…… - 5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 02:44:13.34 ID:fnGkz+Pu0
- なんてこと無いお昼休み――
ネコはいつもと同じ。お昼休みを告げるチャイムが鳴ると同時に、お弁当を持って私の席にやってくる。
ネコ「タチちゃん。お昼ごはん食べよ」
タチ「うん」
やっぱり少しドキドキしてしまう。
ネコはいつも私を誘ってくれる。他にも友達はたくさんいるのに、私だけを誘ってくれる。
何故私だけなのかは分からないけど、私にとっては嬉しい事だった。ネコと一緒にいれる時間が、私にとって一番楽しい時だから。 - 6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 02:45:03.76 ID:fnGkz+Pu0
- ネコとご飯を食べる場所は、いつも決まって学校の屋上。屋上でバレーボールをする3年生を横目にお弁当を食べながらお喋りをするのが、私たちのお昼休みの過ごし方だ。
ただ、ネコは今日に限って妙に元気が無い。いつもなら真っ先に食べ終えるはずの好物の卵焼きを、箸でつついては少し口に運び、また少しつついては口に運び……を繰り返している。
何より、口数が少ない。いつもなら食べている最中も普通に話をするのに、今日に限って妙に黙りこくっている。
お弁当も無理やり喉に押し込むように食べている。私は思わず聞いてしまった。 - 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 02:45:59.87 ID:fnGkz+Pu0
- タチ「ネコ」
ネコ「ん、なぁに?」
タチ「今日、あんまり元気ないね。どうしたの?」
ネコ「え……そんなこと無いよ?」
タチ「だって、今日はあんまり喋ってないっていうか、落ち込んでるみたいだし。お弁当もさ、無理に食べてる感じするもん」
ネコ「……分かる?」
タチ「分かるよぉ」
ニッと笑ってみせる。するとネコも笑ってくれた。だけど、やはり元気が無い。どこか陰のある笑顔。 - 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 02:46:55.93 ID:fnGkz+Pu0
- ネコ「落ち込んでるっている訳じゃないんだけど……」
タチ「じゃあどうしたの?」
ネコはお弁当から私のほうに顔を向けた。まっすぐなあの瞳は、初めて会ったときと何も変わっていないように見えた。
ネコ「実はね……私、彼氏が出来たの!」
タチ「……え?」
瞬間――衝撃が走った。
目の前の現実が信じられなかった。信じたくなかった。 - 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 02:47:49.05 ID:fnGkz+Pu0
- ネコ「サッカー部の男さんなんだけど……2年生のね。昨日告白されて、OKしたの。前からラブレター貰ったりしてたんだけど……」
私の耳には何も入ってこなかった。目の前が真っ暗になり、吐き気がする。
ネコ「……タチちゃん、聞いてる?」
タチ「あ、うん。聞いてるよ」
ネコ「それでね……」
その時、ネコの携帯電話が鳴った。 - 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 02:49:34.79 ID:fnGkz+Pu0
- ネコ「あ、ちょっと待って」
ケータイを取り出してメールを読み始める。
ネコ「ごめんなさい、ちょっと行かなきゃ」
すっと立ち上がって、スカートについた砂ぼこりを払う。その仕草も丁寧で、いつもなら見とれてしまうネコのポイントの一つだ。だけど今日は、見とれる余裕など無い。
タチ「……男さんの所?」
ネコ「うん。ごめんなさい、また教室でね」
そう言い残して、ネコは階段を駆け降りて行く。
私はその音を聞きながら、静かに泣いた。 - 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 02:51:25.40 ID:fnGkz+Pu0
- ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
これで、これでよかったんだ。私は階段を降りる間、ずっと自分に言い聞かせていた。
昨日の放課後――サッカー部の男さんに呼び出された。入学したときからラブレターを何通も貰っていた。でも、私は男性には興味ない。
興味があるとしたら、タチちゃんしかいない。
タチちゃんは可愛い。パーマがかったボブヘアーはいつもいい匂いがして、私と比べて胸が小さい事を気にしていたりとか。色々な部分が私をじんわりと刺激してくれる。
そしてタチちゃんの笑顔はいつも私を癒してくれる。
いつも私と一緒にいてくれて、一緒に遊んだり、喋ったり。それだけでもすごく幸せだった。
私にはタチちゃんしかいない。だから何回も断っていた。
でも一昨日、なんとなくテレビをザッピングしていて、ある番組に目が行った。 - 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 02:52:41.06 ID:fnGkz+Pu0
- 『同性愛者の現実と苦悩』
「高校の同級生の女の子が好きで……自分でもそれはおかしいって思ってたんですけど、気持ちが抑えられなくて思い切って告白したんです。そしたら、『気持ち悪い』って言われて……その子とはそれ以来ずっと話していません」
「高校ではその噂が広まって。あ、私がレズだっていうこと。それで、いじめられたりもしたし……」
私はそこでテレビを消してしまった。
初めて現実を見てしまった。いつかタチちゃんに告白しようなんて軽く考えていた。
もちろん、タチちゃんに告白したい。自分の気持ちを伝えたい。
でもそれをしてしまって、もしダメだったら――
友達としての関係も終わるかもしれない。ずっと一緒にいられないかもしれない……そもそもタチちゃんが同性が好きなんて確証は無い。
そういうことを考えるのがたまらなく怖い。こんなに切なくて、苦しい事を考えたのは初めてだった。 - 17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 02:53:56.84 ID:fnGkz+Pu0
- タチちゃんへの気持ちは、蓋をして固く閉ざそう。『友達』として付き合っていく事が一番大切なんだ――
そう決心した。それにタイミングを合わせたように、次の日の朝。登校すると生徒玄関で男さんが待っていた。
「今日の放課後、屋上に来てくれ。話がある」
男さんの瞳は真剣で、少し見とれてしまった。私は放課後に屋上へ行って、OKをした。人と付き合うのは初めてだった。
これでいい。これでいいんだ――
でも、心には黒くてもやもやした気持ちがずっと残っている。吐き出そうにも吐き出せない、もどかしくてたまらない。
男さんと付き合っていくうちに、慣れちゃうよね……
私はその気持ちの意味を見て見ぬ振りをした。 - 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 02:54:27.44 ID:fnGkz+Pu0
- 男さんに呼び出されて、サッカー部の部室に行った。
部室は両側が部員用の大きいロッカーに占領されていて、そんなに広くない。真ん中には2つのベンチが置いてある。
男さんはそのベンチに座って携帯電話をいじっていた。
ネコ「男さん、どうしたの?」
男「ああ、あのさ。まだ時間あるよね?」
ネコ「うん……」
男「ちょっとこっち来て」
男さんは自分の隣を指差す。私はそこに腰掛けた。 - 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 02:55:13.76 ID:fnGkz+Pu0
- 男「もうちょっと近く」
男さんは私を抱き寄せた。なんとなく頭を男さんの胸に預ける。
すると男さんは、私に覆いかぶさるように倒れてきた。
ネコ「え? ちょ、ちょっと……」
男「なぁ。いいだろ? ちょっとだけ……昼休みが終わるまで」
そう言うと男さんは私の胸を乱暴に触ってきた。
ネコ「嫌っ!!」
怖い――とっさにそう思った。私は力の限り抵抗して男さんから離れる。 - 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 02:55:56.72 ID:fnGkz+Pu0
- ネコ「何するのいきなり……!!」
いつの間にか、目から涙が溢れていた。でも男さんは悪びれる様子も無く、キョトンとした表情をしている。
男「何するって、いいじゃんか。好きなんだから」
ネコ「でも、そんな、こと……急にされたら……」
気持ちが抑えられない。涙が止まらない。
男「おい! 待てよ!!」
気がつけば、走って部室を飛び出していた。 - 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 02:56:43.55 ID:fnGkz+Pu0
- ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
泣いてばかりいてもしょうがない。ネコだって、好きな男の人はいるよ。あきらめよう。
でも、いまいち踏ん切りがつかない。私のネコが取られるのは嫌だ……男さんに対する憎しみのような感情もわいてくる。
タチ「……ネコ……」
また涙が出てくる。もう泣きたくないのに。泣いたって何もならないのに。
涙を拭って、とぼとぼと階段を降りる。もうお昼休みは終わりそうだ。
遠くから階段を駆け上がる音が聞こえてくる。パタパタと小走りで、自分のほうへと向かって来る――
タチ「……ネコ?」 - 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 02:58:15.60 ID:fnGkz+Pu0
- ネコが階段を上がってくるのが見える。思わず声をかけると、ネコはその場で私を見て、立ち止まった。
その目は涙で溢れていた。
ネコ「……タチちゃんっ……」
ネコはふらふらと私に近づいてくる。近づいてくると同時に、ネコの顔は涙でどんどんくしゃくしゃになっていく。
そしてそのまま、倒れ掛かるように抱きしめてきた。不覚にも胸がドキっとしてしまう。
タチ「ど、どうしたの!?」
ネコ「怖かった……怖かったよぉ……」
ぐすぐすと泣き続けるネコ。私はどうしたらいいか分からずに戸惑いつつも、背中をさすったり、頭を撫でたりするのが精一杯だった。 - 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 02:59:04.24 ID:fnGkz+Pu0
- 理由は分からないけど、ネコが泣いていた。この事実は私にとって衝撃だった。
いつも明るく、笑顔を絶やさないネコがあんなに泣いているのは初めて見た。
よほどの事があったのだろうと思う。ネコがこんなに苦しそうなのに、無理矢理教室に連れて行ったり、保健室に丸投げして行くのはどうかと思った。
そばにいたい。
そう思い、授業をサボって屋上へ向かった。 - 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 02:59:47.86 ID:fnGkz+Pu0
- タチ「――落ち着いた?」
ネコ「……うん」
さっき2人でお弁当を食べた場所に座って、ネコの背中を撫でる。それだけでも大分落ち着いてくれた。
タチ「ね、どうしたの? 何か嫌な事でも……」
そこでハッとなった。そういえば、昼休みにお弁当を食べている途中で、ネコは男さんに呼び出された。 - 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 03:01:42.39 ID:fnGkz+Pu0
- タチ「ネコ。男さんに何かされたの?」
ネコ「……」
ネコは無言で、こくりと頷いた。
その時、言いように無い怒りが心の奥底からわき出て来た。一体何をされたのか。聞こうとした所でネコが口を開いた。
ネコ「こ、恋人だからいいだろって……されそうに……」
消え入りそうな声で、途切れ途切れに語る。最後のほうは、また涙声になっていた。
ネコ「急に押し倒されて、何されるのか分からなくて……怖かった……」
そう言うとネコは自分で自分を抱きかかえ、身を縮ませた。
私は両腕でネコの頭を胸に抱く。頭を撫で、背中をぽんぽんと優しく叩く。ネコはそれに答えるように、私に身体を預けてくれた。 - 27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 03:02:44.79 ID:fnGkz+Pu0
- 頭を撫で、背中を撫で、時々優しく叩き。このサイクルを何となく数えながら、ネコが落ち着くのを待っていた。
そのサイクルの4周目の時だった。ネコが、しっかりした声で話し始めた。
ネコ「ねぇ……タチちゃん……」
タチ「何?」
まだネコを胸に抱いたまま。サイクルは5周目に入る。
ネコ「私、もうダメかも」
タチ「ダメって、彼氏さんが?」
頭を撫でながら問いかける。
ネコ「違うの」
タチ「……?」
頭を撫で続ける。
ネコ「男の人が」
タチ「……え?」
手が止まった。その言葉を理解するのに、少し時間がかかった。 - 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 03:03:47.51 ID:fnGkz+Pu0
- ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
タチちゃんが階段にいるのを見つけた時。私は完全に涙のリミッターが振り切れてしまった。
迷子になった子供が、自分の母親を見つけたときのような。言いように無い安心感が私の涙となって溢れた。
その場でタチちゃんに抱きついて、泣きに泣いた。周りに誰もいないのが幸いだった。
タチちゃんは私を教室にも保健室にも連れて行こうとはしなかった。
着いた先は屋上。今日、タチちゃんへの『恋人』の思いを切り捨てた場所でもあった。 - 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 03:04:29.53 ID:fnGkz+Pu0
- まさか男さんが、あんな人だとは思わなかった。ああいう行為は、普通合意があって初めて成立するものじゃないの?
無理矢理されそうになって、怖くてたまらなかった。
でも、タチちゃんが慰めてくれた。抱きしめて、頭や背中を撫でてくれて。それまで心の中に渦巻いていたあった様々な感情が、ゆっくりと薄れていくのを感じた。
タチちゃんがそうしてくれる事が、どんな綺麗な、飾った言葉よりも嬉しい。頭がぼうっとする。
いつの間にか頬が熱くなる。 - 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 03:05:32.86 ID:fnGkz+Pu0
- 私の本当の恋人。やっぱりタチちゃんしかいない――
正直に言おう。そして、どんな結果になってもいい。どんなに罵られ、嘲られても構わない。
今の私の、本当の気持ちを伝えたい――
タチちゃんに慰められている間、私の頭は驚くほど冷静にその事を考えていた。 - 32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 03:07:17.69 ID:fnGkz+Pu0
- ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
タチ「男の人がって……え?」
ネコの頭を撫でていた手が、思わず止まってしまう。
ネコ「私、本当は別に好きな人がいるの。すっごく可愛くて、入学したときからずっと好きでたまらなかったの」
ネコ「だけど、私はその人と付き合えないなって。諦めちゃった。だからその事を忘れるために、男さんと付き合ってた」
ネコ「男さんはかっこいいし、会った時は一途でいい人だなって思ってた。でも、本当の気持ちは全然変わらないんだ……」
それまで自分の腿の上で組んでいた手を、私の腰に回してきた。2人で抱き合っているような格好になる。
タチ「う、うん……」
ネコ「あのね、タチちゃん」
そう言うとネコは、私を抱いたまま顔を上げた。
私をじっと見つめるネコの瞳。吸い込まれそうな黒色に、思わず見とれてしまう――
ネコ「私が本当に好きなのはね、タチちゃん。あなたなの」 - 33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 03:07:55.85 ID:fnGkz+Pu0
- ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
もう失うものが何も無い。そんな気持ちで告白した。
そう聞いた人は、とても軽くて行き当たりばったりな印象を受けるかもしれない。
でも私は違う。本当にタチちゃんが好きだから告白する。『好き』という気持ちに男も女も関係ない。
これでだめでもいい。私はタチちゃんに本当の気持ちを伝えたい。それをしなければ、多分死ぬまで後悔してしまうだろう。
そう思って告白した。
そしてそれは、決して間違いではなかった。 - 34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 03:09:17.43 ID:fnGkz+Pu0
- ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
タチ「本気で?」
ネコ「こんなときに嘘つくと思うの?」
ネコの声は少し震えていた。緊張なのか、真剣に言ってるのにかわされたことへの怒りなのかは分からない。
私は信じられない気持ちだった。まさか、まさかネコが私のことを好きだったなんて――
タチ「ネコ!」
ネコを強く抱きしめた。ネコの細い体が、びくりと震える。
タチ「私も好き、好きだよっ!」
心の底から喜びがこみ上げてくる。嬉しすぎていてもたってもいられない。そんな気持ちがあふれ出た。
タチ「すっごく嬉しいよ!!」
きっと今、人生で最高にしまりの無い笑顔をしているんだろうな。
そんな事を考えながら、ネコの頭をぐしぐしと乱暴に撫でた。 - 35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 03:10:39.80 ID:fnGkz+Pu0
- ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
『私も好き、好きだよっ!』
そう言われて、頭が真っ白になった。
本当に好きなんだ。タチちゃんが私のこと。
叶わないと思ってた。ダメだと思ってた。
自分で告白しておきながら、信じられない気持ちだった。
まさか、まさかタチちゃんも私のことが好きだったなんて――
ネコ「ほ、ほんと?」
タチ「本当だって!! 入学したときから、ずっとずっと好きだったんだ! もう、すっごい……あはははは!!」
タチちゃんは私を抱いたまま、覆いかぶさるように倒れてくる。
そして笑いながら、私の頭を撫でてくれる。嬉しくてしょうがないという気持ちがしっかりと伝わってきた。
ネコ「タチちゃんっ……ありがと……」
また涙が出てくる。でも、さっきとは全く違う。嬉し涙なんて初めてだ。 - 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 03:11:56.62 ID:fnGkz+Pu0
- タチ「もー、泣かなくてもいいって!」
タチちゃんは抱きしめている手を離すと、私の顔にかかった髪の毛を分けてくれる。
その顔はとても嬉しそうで、いつもと変わらない笑顔。
タチちゃんが私の恋人になってくれた。その紛れも無い事実は、私の頬を無意識に緩めてくれる。
今度は私から、思いっきり抱きしめた。
それと同時に、授業の終わりを告げるチャイムが鳴った―― - 39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 03:12:50.34 ID:fnGkz+Pu0
- 『分かった。じゃあね』
絵文字も何も無い、淡白な返信メールに拍子抜けした。
放課後――掃除も終わって誰もいない教室。
人生の一大イベントがあった3限目が終わった後、男さんにメールを送った。
その後の4限と5限は大変だった。
気持ちの高揚がどちらも抑え切れなかった。授業中に手紙でやりとりしたり、こっそりちょっかいを出し合ってはくすくす笑いあったりして、何回も先生に注意されてしまった。 - 40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 03:14:02.47 ID:fnGkz+Pu0
- 『好きな人が出来たから別れます。ごめんなさい』
自分の気持ちを正直に伝える。勝手かもしれないけど、やっぱり男さんへのマイナスのイメージは拭えない。
ただ、曲がりなりにも私に好意を抱いてくれていた人だ。本当に申し訳ないと思いつつメールを送った。
その返信メールがついさっき届いた。今か今かと待っていたメールの内容は驚くほどあっさりとしていた。 - 41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 03:15:21.97 ID:fnGkz+Pu0
- タチ「どうだった? 男さんからの返信」
ネコ「ほら」
タチちゃんに返信メールを見せる。タチちゃんの表情はメールを見るなり次第に曇り、見るからに不機嫌になっている。
タチ「用済みになりましたからポイって感じ」
ネコ「逆に未練がましくなくていいよ。それに、もう私にはタチちゃんがいるもの」
タチ「おう、そうですよね~」
タチちゃんがべたりと粘着質な抱き方をしてくる。妙に心地がいい。 - 45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 03:18:28.04 ID:fnGkz+Pu0
- ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
1つの机に2つ椅子を並べ、授業中に2人で回した手紙を読みあう。
タチ「気になってたんだけど、何これ? 『私のこと好き?』って書いたのに『I will give you all my love』って」
ネコ「だって、英語の時間だったし」
タチ「……で、どーゆー意味?」
そう言うと、ネコは意地の悪い笑みを浮かべて。
ネコ「ふふふ、分からないんだ」
タチ「む。このぉ」
私もいじわるしたくなって、ネコの頬を軽くつねる。
ネコ「あう」
するとネコは、頬をつねられた力そのままに、ころりと私に寄りかかる。 - 46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 03:20:20.68 ID:fnGkz+Pu0
- タチ「ネコって、結構甘えんぼなんだね」
そんな事を聞いてみると
ネコ「私がこういう事するのは、タチちゃんだけだよ」
タチ「う……可愛いやつめ」
何気ない言葉にも、ついどきっとしてしまった。 - 48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 03:21:41.93 ID:fnGkz+Pu0
- タチ「ね、もう恋人なんだよね。私たち」
まだ、何となく不安な気持ちがふと感じる。確認するようにそんな事を聞いてしまった。
でも、ネコは笑ってその不安を打ち消してくれる。私の腕を組んで身体を寄せる。
ネコ「私の彼女のタチちゃんですっ」
タチ「私の彼女は可愛いですねぇ……」
ぐしぐしとまた、ネコの頭を撫でる。そうするとネコは私に体を預け、うっとりしたような目で私を見つめてくれる。
その表情にとてもそそられる。今まで友達の関係だったときには見られなかった表情。
扇情的な微笑みに胸が高鳴った。
すると、ネコが目を閉じる。そしてくい、と顎を私のほうに向けた。少しだけ開かれた唇は潤んでいて、私の心を更なる深みにはまらせる。
これは、もしかして…… - 49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 03:22:29.13 ID:fnGkz+Pu0
- ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
目の前の恋人は、可愛いといって私の頭を撫でてくれる。
優しくて、気持ちよくて、もっとして欲しいと思った。
その気持ちは頭を撫でる以上のことを望んで、もっと膨らんでいってしまう。恋人らしく、甘くてとろけるような何かがしたい……
そう思ったときに思わず目を閉じてしまった。そして、黙ってタチちゃんの方を向く。
誰もいない、静寂に包まれた教室。私たちしかいないこの空間には、割って入ってくる者はいない。 - 51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 03:23:51.21 ID:fnGkz+Pu0
- 唇に柔らかい感触。同時に、頭の後ろをタチちゃんの手が優しく押さえてくれる。
ネコ「んっ……」
吐息が漏れてしまう。自分でもびっくりするくらい色っぽい声。
それに答えるように、タチちゃんはもっと唇をからめてくる。
時間にしてどのくらいか。ほんの十数秒足らずのように思う。
それでも、私は心も体も、タチちゃんにとろとろに溶かされてしまっていた。
身体がしびれる。目がくらむ。力が抜けていって……
下腹部がきゅんと熱くなる―― - 52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 03:24:56.72 ID:fnGkz+Pu0
- ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
思わずしてしまったキスは、ずっと気持ちよかった。私にとっても、ネコにとっても初めてのキスだったと思う。
キスしていた唇を離す。
ネコの変化にすぐ気づく。今まで見た事のない艶やかな表情。顔を真っ赤にして、目を逸らしている。
つい、またいじめたくなるような衝動に駆られてしまう。
タチ「ネコ、顔真っ赤だよ」
そう言うと、ネコの肩に手を回して抱き寄せる。
ネコの体は夕陽の日差しのせいなのか。はたまたさっきのキスのせいなのか。いずれにしてもいつもより温かく感じた。 - 53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 03:26:15.47 ID:fnGkz+Pu0
- ネコは黙って俯いている。
顔はさらに赤みを帯び、気のせいか呼吸も荒くなっているように聞こえた。
少し顔を近づけて
タチ「さっきのキス、気持ちよかった?」
耳元でゆっくりと、囁くように言う。
ネコ「うん……すっごく良かった……」
ネコはそう言うと、そのまま私にくたりともたれ掛かる。
私はそれを支えるように、ぎゅっと抱きしめた。 - 54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 03:27:39.22 ID:fnGkz+Pu0
- ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ネコ「これからも、ずっとずっと私のこと好きでいてくれる?」
タチちゃんにもたれ掛かったまま、そんな事を聞いてみる。
タチ「当たり前だよ! ずっと好きでいるよ!」
思いっきり私を抱きしめて、頬ずりをしてくれた。
また、自然と頬が緩んでしまう。 - 55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 03:28:54.91 ID:fnGkz+Pu0
- しばらくして私を抱きしめているタチちゃんの手を取り、両手でしっかりと握る。
そして、お互い見つめ合う。
夕陽に映るタチちゃんの表情に見とれてしまう。綺麗でたまらない。
夕陽に照らされた光りの粒子が、私を惑わすように揺れる。
また、下腹部がきゅんとなった。
ネコ「……幸せ……」
今の私を一番満たしてくれている感情。言葉でタチちゃんに伝えたかった。
タチちゃんは静かに笑ってくれた。
その瞳は、少しだけ潤んでいるように見えた。 - 56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 03:29:31.76 ID:fnGkz+Pu0
- ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
『……幸せ……』
ネコがそう言ってくれた時、少しこみ上げてくるものがあった。
ごまかそうと、笑顔を作る。それでも視界がぼやけてしまう。
タチ「私も……幸せだよ」
そう言って、私はまたネコにキスをした。
幸せに包まれながら、ゆっくりとキスを続ける。 - 57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 03:30:11.29 ID:fnGkz+Pu0
- ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
いつまでも、いつまでも――
ずっと一緒にいよう。
おしまい - 58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 03:30:34.28 ID:3llArgCa0
- 乙
- 59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 03:31:45.41 ID:fnGkz+Pu0
- なんかすいませんでした
- 61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 03:33:15.44 ID:+mNFhIqa0
- 乙だぜ
- 62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 03:35:23.40 ID:V8BRUYVwO
- エッチは?
- 63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 03:38:36.57 ID:fnGkz+Pu0
- >>62
無いですすいません
気が向いたら、続きを書くかもしれないです
おやすみなさい - 65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 03:41:19.73 ID:3llArgCa0
- >>63
続き待ってる - 69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/03(土) 04:21:35.86 ID:fHwCsjXU0
- 素晴らしかった
乙

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