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結衣「バケツの中から京子が見てる」
- 1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/06(火) 23:49:37.83 ID:i0wKqf5d0
- ~海岸~
結衣「……」ハァ
結衣「まったく釣れないなあ……」
パチャパチャ
結衣「……」
パチャパチャ
結衣「……駄目だよ、京子、バケツの中のお魚触っちゃ」
パチャパチャ
結衣「……」ハァ
- 2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/06(火) 23:50:39.89 ID:h9Rv4kyA0
- え?
- 3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/06(火) 23:52:24.46 ID:i0wKqf5d0
- 結衣「やっぱりエサが悪いのかなあ……」
結衣「ちなつちゃん、ちょっと餌貰うね」
ブチブチッ
結衣「……ほっ」ポーイ
結衣「……これなら、きっと釣れるよね」
パチャパチャ
結衣「……京子、駄目だって」
結衣「お魚さん可哀そうだろ?」
パチャパチャ
結衣「……」ハァ - 6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/06(火) 23:57:10.35 ID:i0wKqf5d0
- 結衣「……あ」
ピクッピクピクッ
結衣「……ほら、京子、見て……引いてる引いてる」
結衣「けど焦っちゃ駄目だ、ここはじっくりと……」
ピクピクッ
ビクッ
結衣「……いまだっ!」グイッ
パシャーンッ - 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/06(火) 23:59:13.40 ID:i0wKqf5d0
- 結衣「はぁ……駄目だった……狙ってた魚じゃなかったよ、京子」ガクッ
結衣「ちなつちゃんの餌だから、絶対上手くいくと思ってたんだけどなあ……」
結衣「ま、いっか……取りあえずこの魚もバケツに……」
シーン
結衣「……あれ、京子」
パシャッ
結衣「バケツの中に居たお魚は?」 - 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/07(水) 00:02:43.38 ID:kgrn7b6h0
- 結衣「え、もしかして京子、食べちゃったの?」
パシャパシャッ
結衣「そ、そっか……お肉大好きだもんな、京子」
結衣「当然、魚も食べるよね」
パシャッ
結衣「……はいはい、判ってるよ」
結衣「ちゃんと目的の魚も釣るからさ」 - 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/07(水) 00:13:52.73 ID:kgrn7b6h0
- 結衣「……今度は綾乃の餌を使ってみようかな」
結衣「京子はなんだかんだで綾乃の事を気に行ってたし……」
結衣「きっと、きっと釣れるよね」
パシャッ
結衣「ふふふ、京子もそう思う?」
パシャパシャッ
結衣「ほら、そんなに暴れたら、またバケツから飛び出しちゃうよ」
結衣「気をつけないと」 - 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/07(水) 00:15:56.88 ID:kgrn7b6h0
-
ブチブチッ
結衣「……ほっ」ポーイッ
パシャッ
結衣「……今度は釣れるかな」
結衣「釣れるといいな……」
- 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/07(水) 00:19:25.97 ID:kgrn7b6h0
- 京子が居なくなってから、私は毎日海岸を歩き続けた
居なくなった京子が、流れ着いていることを望んで
ちなつちゃんは海岸沿いで見つけた
あかりは建物の奥で見つけた
綾乃は電柱の下で見つけた
千歳は船の下で見つけた
他の子達は全部見つけたのに
京子だけは見つからなかった - 17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/07(水) 00:21:11.25 ID:kgrn7b6h0
- 私は毎日歩き続けた
海岸沿いを歩き続けた
見つからないって事は
京子は生きてるって事なんだよね
大丈夫
きっと見つけてあげるから
- 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/07(水) 00:21:52.38 ID:kgrn7b6h0
-
そうした努力が実って
私は海岸の岩場で、京子の右手を見つける事が出来た
- 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/07(水) 00:22:54.93 ID:Tev7MWeJ0
- なんなんだよこれ
- 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/07(水) 00:24:38.68 ID:kgrn7b6h0
- 水にふやけたその手は、私が10年以上見続けてきた、京子の手だった
手には、不思議な物が張り付いていた
いや、張り付くというか……齧りついていた
その不思議な物は、京子そっくりな上半身を持つ小さな……
魚だった - 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/07(水) 00:30:47.68 ID:kgrn7b6h0
- 結衣「……きょう、こ?」
私が呼びかけると、京子の肉を頬張っていたその魚はニッコリと笑った
その笑顔は、京子の物と同じだった
そうだ
これは、きっと京子だ
京子の肉を食べた魚が、京子になったんだ
- 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/07(水) 00:34:22.86 ID:kgrn7b6h0
- 私は、身体の半分が魚になってしまった京子をバケツの中に入れて持って帰った
私は嬉しくなって、いっぱい京子とお喋りした
あの日、津波が町を襲ったこと
家や人々が全て流された事
いっぱい、いっぱい死体を見たこと
誰も助けが来ないこと
私が一方的に喋りかけてるだけだったけど、京子はニコニコしながら聞いてくれた
久々に誰かとお話しすることが出来た私は、少しだけ冷静になった - 27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/07(水) 00:36:42.74 ID:kgrn7b6h0
- 結衣「……ねえ、京子」
京子「……?」
結衣「京子の身体を食べたお魚が、京子になるんだとしたら……」
京子「……」パシャッ
結衣「こ、こら、京子、撥ねを飛ばすなっ」
京子「……」クスクスッ
結衣「も、もう……」
そう、あそこに落ちていたのは京子の手だけだった
じゃあ、京子の他の部分は?
もしかしたら海の中で他の魚たちに食べられてしまったのかもしれない
もしかしたら他の魚たちも京子みたいになってるのかもしれない - 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/07(水) 00:40:39.71 ID:kgrn7b6h0
-
京子はお肉が好きみたいだった
けど、どんな肉でも良いという訳ではないしい
私が苦労して捕まえてきたネズミは食べなかったし
逆に「ある肉」は、すごく喜んで食べてくれた
ごめんね、あかり
この辺にはもうお肉なんて無いから
仕方なかったんだよ
あかりなら、判ってくれるよね - 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/07(水) 00:43:12.16 ID:83jCnu3V0
- oh…
- 32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/07(水) 00:49:47.99 ID:kgrn7b6h0
- こうして、私は毎日、海岸で釣りをしている
他の京子を見つけ出す為に
バケツの中から私の事を見上げている京子だって、一人っきりじゃさびしいよね
けど
結衣「……はぁ、綾乃でも、駄目か」
ピチャピチャッ
結衣(もう、お肉は残り少ない……)
結衣(このままじゃ、他の京子を探す事なんてできないよ……)
パシャパシャッ
結衣「あ、ご、ごめん京子、お腹空いてるよね」 - 33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/07(水) 00:50:31.55 ID:kgrn7b6h0
- 結衣「残り少ないけど……ほら、お肉だよ」
パシャンッッ
カリッ
結衣「痛っ……!」
パシャパシャッ
結衣「も、もう、京子、指切れちゃっただろ」
結衣「がっつきすぎ……」
パシャパシャッ
結衣「……あ」 - 34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/07(水) 00:50:58.77 ID:kgrn7b6h0
- 結衣「……そっか」
パシャパシャパシャッ
結衣「そう、だよね」
パシャパシャパシャパシャッ
結衣「私、どうして気付かなかったんだろ……」
パシャパシャパシャパシャッ
結衣「あかりや綾乃のお肉が好きだって言う事は」
パシャパシャパシャパシャパシャッ
結衣「より親しい人のお肉なら、もっと……」 - 36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/07(水) 00:58:37.73 ID:kgrn7b6h0
- この季節になると海の水はかなり冷たかった
けど、これが京子の世界なんだ
なら、私も、これくらい耐えないと……
パシャッ
パシャパシャッ
ピチャッピチャッ - 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/07(水) 00:59:05.08 ID:kgrn7b6h0
-
冷たさに耐えて波の中を進む
きっと、きっとこの先に、京子達が居るはずだから
そう信じて
足が付かなくなるほどの深さに達した時
私は見た
並の合間に近づいてくる
京子たちの姿を
- 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/07(水) 00:59:54.98 ID:kgrn7b6h0
- ふと、気がつくとバケツの中に居たはずの小さな京子も、海の中に居た
私と共に泳いでいた
きっとバケツをひっくり返して、私を追ってきてくれたのだろう
しょうがないなあ、京子は……
もし海に入れなかったら、干からびて死んじゃってたかもしれないのに……
けど
けど、これで
やっと、あの言葉が言える
京子の身体がすべてそろっている今なら…… - 39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/07(水) 01:00:25.71 ID:kgrn7b6h0
-
おかえり
京子
- 40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/07(水) 01:00:52.03 ID:kgrn7b6h0
- カリッ
カリッカリッ
バリッ
ボリッ
カリッ
カリッカリッボリッ
ピチャッ
ピチャッ
カリッ - 42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/07(水) 01:04:36.07 ID:kgrn7b6h0
- 私の身体が京子達に食べられて行く
お肉が好きなんだから、仕方ないよね
けど、こうして京子に食べてもらえれば
きっと
きっと
私もお魚になって……
京子と一緒に……
一緒に……
ガリッ - 43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/07(水) 01:05:43.32 ID:j7TSvyzj0
- 救いはないんですか!?
- 46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/07(水) 01:22:24.88 ID:kgrn7b6h0
- 京子「ほら、結衣、はやくはやく!」
結衣「ちょ、ちよっと待ってよ、京子、私はまだ尾びれの動かし方に慣れてないんだから、そんな急がないで」
京子「大丈夫大丈夫!結衣ならすぐ慣れるって!」
結衣「そ、そうかなあ……」
京子「そんな事より、ほら、海の底であかりやちなつちゃん達が待ってるからさ、急ごう?」
結衣「あ……」
結衣(そうだ……あかりやちなつちゃん達も、京子に食べられたから)
結衣(お魚になってるんだ)
結衣(……嬉しいな、また、またごらく部が出来る)
結衣(嬉しいな……)
結衣(嬉しい……) - 47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/07(水) 01:22:50.66 ID:kgrn7b6h0
- こうして船見結衣は
海の底で
皆と共に
誰にも邪魔をされること無く
永遠に過ごしましたとさ
めでたし
めでたし - 48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/07(水) 01:28:17.63 ID:83jCnu3V0
- 乙
- 50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/07(水) 01:45:41.25 ID:wvkjYNUZ0
- おつ
- 51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/07(水) 01:51:21.88 ID:g5cFjAsv0
- 乙です

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