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咲「君は泣いた後笑える筈だからって言ったんだ」

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/15(木) 22:57:55.90 ID:GLKwGUps0
代行 ID:lSQQrRjM0


6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/15(木) 22:59:37.61 ID:lSQQrRjM0
尭深「お茶おいしい…」ズズ

咲「宮永照さぁん!!長野からお客さんです!どこですかぁ!!」バターン

尭深「ひっ!ま、まだ来ていません!」ビクゥッ

咲「…え、本当ですか。というかよく見るとあなた以外いませんね」

尭深「…」

咲「…」




11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/15(木) 23:00:51.43 ID:lSQQrRjM0
尭深「あ、あの……よければお茶…淹れましょうか?」

咲「…はい、頂きます」


尭深「どうぞ……」コトッ

咲「ありがとうございます………おいしいです」

尭深「ど、どうも…」

尭深「それで……どんな用事でここに…?」

咲「実は……」


13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/15(木) 23:02:18.95 ID:lSQQrRjM0
――――――――――

咲「というわけでもうどうしたらいいのか……やっぱり私が悪いんですかね…」

咲「うぅ…」

尭深(こんな時は…抱きしめるといいよね……優しく、包み込むみたいに)ギュッ

咲「あっ…」

咲「うぅ…グス…ヒック……う、うわああああああん!」ポロポロ

尭深「うん…うん…辛かったよね。もう大丈夫だから……」

尭深(撫でてあげると安心するよね……)ナデナデ

尭深「大丈夫…泣いた後は笑える筈だから…」ナデナデ

咲「スン…スン……すぅ……すぅ…」

尭深(寝ちゃった。…本当に辛かったんだ…こんなになるまで悩んで…)

尭深(このままの方がいいよね。……ずっと一人で苦しんで、悩んで……私の胸も痛くなる)

尭深(…守りたい。隣にいて、支えていたい。不安の種も悲しみの芽も全て摘み取って、元気でいてほしい)


15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/15(木) 23:04:20.13 ID:lSQQrRjM0
―――――2時間後

咲「ん……あれ、寝ちゃってた」

尭深「おはよう…」

咲「え……ご、ごめんなさい!つい気が緩んじゃって……あ、ありがとうございました//」ニコ

尭深「うん…」ドキンッ

尭深(今…笑顔を見て心拍数が上がった…ときめくってこういう感覚……)

尭深(もしかして私……まさか…これが……)ドキドキ

咲「ところで、他の人はどうしたんでしょうか。それにお姉ちゃんも…」

尭深「そういえば…確認してみる…」


18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/15(木) 23:07:06.65 ID:lSQQrRjM0
咲「どうでした?」

尭深「…皆用事で出られないって」

尭深(これじゃ練習出来ないし…二人で麻雀するわけにもいかないし…)

尭深「良かったら…観光案内、しようか…?」


20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/15(木) 23:09:53.25 ID:lSQQrRjM0
―――――しばらくして

咲「そうなんですよ!志賀直哉は簡潔な文章で丁寧な心情描写なのに情景を細かく思い浮かばせるのがすごいんですよね」

咲「逆に国木田独歩は流麗な文章で読者に想像させるのが巧い。何度武蔵野の風景を思い浮かべたことか…来られて嬉しいです!」

尭深「風景は殆ど様変わりしてるけど…そうだね」


咲「ふれあい下水道館?」

尭深「本物の下水道管に入ってみたくは…ない?」


咲「へえ、そうなんですか。今度淹れる時に試してみますね」


咲「これが…東京タワーからの眺め…すごい」

咲「でもどうしてスカイツリーじゃないんですか?」

尭深「高ければいいわけじゃない。こちらの方が…素晴らしい眺めが見えるから」


22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/15(木) 23:15:06.00 ID:lSQQrRjM0
―――――数時間後

咲「はあ…楽しかったなあ」

尭深「それで…この後はどうするの…?」

咲「えっと、一応…明日帰る予定なんです……けど」ダラダラ

尭深「…まさか」

咲「勢いで出てきたもので……ホテルの予約をしてないというか…」

咲「ああでも大丈夫です、今から泊まれるところを探すか帰るかしますから。今日はありがとうございました」


24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/15(木) 23:20:04.90 ID:lSQQrRjM0
尭深「駄目、帰さない。今日はうちに泊まって…?」

咲「い、いえっ!そんなの悪いですよ!心配しなくても大丈夫ですから」

尭深「じゃあ…どうしてもお願い、今日は泊まっていってくれない…かな」

咲「……じゃあ…お願い、します」

尭深「…ありがとう」ニコ

咲「…いえ、お礼を言うのはこちらの方です。ありがとうございます。それと、よろしくお願いします」

咲(申し訳ないな……でもなんだろう。嬉しい、のかな。なんだか笑顔になっちゃう)

咲(本当は無理にでも帰った方がいいのに、喜んでる自分がいる。なんでだろう…)


25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/15(木) 23:25:01.38 ID:lSQQrRjM0
尭深「ここが私の家…さ、入って」

咲「お、お邪魔します」

尭深「いらっしゃい」

尭深「トイレはここで、隣が洗面所だから…」

尭深「じゃあ晩御飯作るから…ゆっくりしてて」

咲「い、いえ!流石に悪いですよ!手伝いますから!」

尭深「お客さんだからゆっくりしてること」

咲「……はい、わかりました」


29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/15(木) 23:30:03.21 ID:lSQQrRjM0
咲(優しいな…会ったばかりの私のためにこんなにしてくれて…)

咲(…ドキドキしてきた。なんでだろう、『ありがとう』って言われた時のあの顔が忘れられない)

咲(もしかして…なのかな。でも、会ったばかりの人に一日で、なんて………でも)

咲(でも、恋人になるならあんな優しい人がいいな……なんて)


尭深「ご飯…出来たよ」

咲「あ、はい。わかりました」


30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/15(木) 23:35:05.95 ID:lSQQrRjM0
咲「うわあ、豪華ですね!ははあ、お茶があるから飲茶ですね。これ全部一人で?」

尭深「少し…頑張ってみた」

咲「どれもおいしそうですね。もしかしてこの点心や春巻も手作りだったりして」

尭深「全部手作りだから、口に合うといいけど…」

咲「本当ですか!?どれもお店で出てくる様な出来栄えですよ!おいしそうです!」

咲「このお茶は…緑茶ですか?それにしては色が鈍いというかなんというか」

尭深「龍井茶っていう中国の緑茶で、普段は飲まないけど…今日は特別に明前茶を…」

咲「へえ…おいしいですね。香りも良くて…確かに料理に合いそうです」

咲、尭深「「いただきます」」


31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/15(木) 23:40:01.67 ID:lSQQrRjM0
咲「このマリネとサラダに使われてるドレッシング、もしかしてお茶ですか」

尭深「そうだけど…駄目だった?」

咲「おいしいです!意外と合うんですね、お茶のドレッシングって」

尭深「でしょう。皆が知らないのが勿体無いから…」

咲「この小龍包もおいしいです。生地に茶葉が練り込んであるんですね」

咲「これは餃子みたいですね。なんていうんですか?」

尭深「ボーズっていうモンゴル料理で…中国語の包子からきてる…みたい」

咲「へぇ、私も今度作ってみようかな」


32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/15(木) 23:45:02.86 ID:lSQQrRjM0
咲「それ、何をかけてるんですか?」

尭深「茶葉のふりかけ…おいしいよ」

咲「本当だ、おいしい」

尭深「…………」ジー

咲「どうしたんですか?顔に何かついてますか?」

尭深「……かわいい」

咲「ふぇっ?!そ、か、かかかわいいなんてそそんなこと///……」

尭深「……ハッ」

尭深「その…………おいしそうに料理を食べてくれるから…嬉しくて……つい//…」

咲「…そ、そうですか…ありがとうございます//……」

尭深「……」

咲「……」


35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/15(木) 23:50:04.17 ID:lSQQrRjM0
尭深「…ごちそうさまでした」

咲「ご、ごちそうさまでした」

尭深「お風呂沸いてるから…先に入って」

咲「いえ、私が洗い物しますから、先に入っててください」

尭深「駄目。…いいから、疲れたでしょう?ゆっくりお風呂に浸かってきて」

咲「はい、じゃあ…お先に頂きます」

尭深(…少し厳しく言っちゃったかな。でもさせるわけにいかないし…いいか)

尭深(洗い物をして洗濯物を畳んで……後で着替え持っていかないと)


37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/15(木) 23:55:06.48 ID:lSQQrRjM0
―――――

咲(ふう……気持ちいいな、お風呂。お湯が沁み渡って…疲れが取れてく)

咲(なんでここまでしてくれるんだろう。会ったばっかりなのに。こんな私なのに。私のために、ここまで)

咲(あの時、「ありがとう」って言われた時の顔…風になびく髪と光の差し込んだ横顔…とても奇麗だったな。思わず見蕩れちゃった)

咲(話してると心地よくて、見つめられるだけで…優しくされるともっと、胸が高鳴る)

咲(多分、そう。…本で読んだことは沢山ある。経験したことは…少なくとも記憶の中ではない。けど、解る。私は、この感情を知っている)

咲(そう、これはきっと……)


38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 00:00:03.22 ID:SsyEQjoD0
尭深「湯加減はどう…?」

咲「は、はい。気持ちいいです」

尭深「そう…良かった。着替えとタオル、置いておくから」

咲「あ、ありがとうございます!」

咲(優しい…誰にでも、なんだろうけど…それでも嬉しい)

咲(…そろそろ出ようかな)


咲「お風呂、ごちそうさまでした。服まで貸して頂いて、本当にありがとうございます」

尭深「かしこまらなくてもいいよ…じゃあ私も入ってくるから、適当に寛いでいて」

咲「はい、じゃあまた後で」


39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 00:05:12.10 ID:SsyEQjoD0
――――――――――

尭深(はぁ……疲れた。こんなに他人に積極的に関わったのは初めてかもしれない…)

尭深(大丈夫かな…ほんの少しの間でも、支えて、癒せてるといいけど…)

尭深(明日帰るんだよね……………………出よう)


40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 00:10:02.60 ID:SsyEQjoD0
尭深「ただいま」

咲「あ、おかえりなさい」

尭深「まだ早い時間だけど…どうする?」

咲「そうですね…ああ、疲れちゃったんで…今日はもう寝たいです」

尭深「うん、わかった…寝室はこっち」


42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 00:15:02.77 ID:SsyEQjoD0
尭深「こっちのベッドを使って…私は布団で寝るから」

咲「ダメですそんなの!私が布団で寝ますから…」

尭深「…………」

咲「……………」

尭深「……………」

咲「………………」

尭深「……わかった」

尭深「私もベッドで寝る」

咲「『も』ってことは…一緒に寝るっていうことですか?」

尭深「そうだよ。駄目…?」

咲「ま、まあ…それならなんとか…」


43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 00:19:01.74 ID:SsyEQjoD0
咲「…今日は本当にありがとうございました。勢いでこっちに来ましたけど…実は不安で」

咲「もしかしたらまた無視されるんじゃないかって…仲直り、できないんじゃないかって」

咲「結局、会えさえしなかったんですけど…」

尭深「……」


44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 00:20:02.28 ID:SsyEQjoD0
咲「優しくしてくれたのが嬉しくて…不安だった心も無くなって…」

咲「悲しい気持ちも拭ってくれて……それが、その優しさが本当に嬉しくって…グス…」

尭深「……」キュッ

咲「今もこうして…優しく抱きしめて…」ギュッ

咲「もう少しだけ…このまま……」

尭深(良かった…少しでも心の支えになれていたなら……それだけで…)

尭深「……いいよ……」

尭深(大…丈夫……わ…たし……が…………)ウトウト

尭深「……スー………スー………スー…」


45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 00:25:08.60 ID:SsyEQjoD0
――――――――――

咲「……寝・・・た…?」


咲「温かいな…」

咲(貰ってばかりで…何かお返ししないと)

咲(何がいいかな。何か形に残るものがいいのかな)

咲(それなら、ネックレスとかペンダントとか…身に付けてもらうと嬉しいな)

咲(ペアのロケットペンダントにお互いの写真を入れあったり…離れても寂しくならないようになんておまじないをかけたり…)

咲(それで『離れてもいつもそばで見守ってるからね』なんて言われちゃったりして……あ)

咲(…やっぱり、本気なんだね…勘違いとか、気のせいでも思い込みでもなくて……私、本当に…)


46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 00:30:02.72 ID:SsyEQjoD0
咲(よく言われてるような感覚が分からなかった。ずっとしないものだとさえ思ってた…ましてや、会ったばかりの人に一日でなんて…)

咲(いくらなんでも早すぎないかな……うぅ、なんだか申し訳ないよ…)

咲(いつの間にかもうこんな時間だし…早く寝ないと)

咲「!」

咲(腕を回して、目を閉じて…まるで待ってるみたいに、寝てる…)ドキドキ

咲(寝顔…かわいいな。唇も柔らかそう…)ドキドキ

咲(なっ何を考えてるの!?早く寝よう!)

咲(……ほっぺたになら…)ドキドキ

咲(……はぁ…寝よう)


47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 00:35:08.58 ID:SsyEQjoD0
―――――翌朝

尭深「ん……あれ」

咲「スー…………スー…………スー……」

尭深(…抱きつかれて動けない…)

尭深(嬉しいけど…離れてくれないと朝食が作れないから…ごめんね)スッ

咲「スー…ん……やだ…行かないでよ……お姉ちゃん」

尭深(寝言か……)

尭深「大丈夫。すぐ戻るから…」ナデナデ


尭深「朝食は…トーストと目玉焼き。ジャムもある」

尭深「出来た。起きてるかな…?」


49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 00:40:03.12 ID:SsyEQjoD0
――――――――――

咲「ん…朝…?」

尭深「おはよう」ナデナデ

咲「ああ…おはようございま…え、あれ…頭撫でられ…え?え、あの…うあ…あう////」

尭深「クス…朝食の用意が出来たから…早めに起きてきて」

咲「はい///……」

咲「うぅ…恥ずかしい//…顔を合わせ辛いや……」


50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 00:45:01.66 ID:SsyEQjoD0
咲「おはようございます…」

尭深「おはよう」

咲「朝食の用意まで…ありがとうございます」

咲「目玉焼きとトースト、それに海苔の佃煮ですか。珍しい組み合わせですね」

尭深「それ…お茶のジャム」

咲「へえ、これも手作りですか。おいしそう」

尭深「おいしい…」

咲「む、これイケますね。後でレシピ教えて貰ってもいいですか?私も家で作りたくなっちゃった」

尭深「勿論」

尭深(ようこそ………『お茶の世界』へ……………)


51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 00:50:00.96 ID:SsyEQjoD0
咲、尭深「「ごちそうさまでした」」

咲「今日こそは手伝いますよ!」

尭深「じゃあ…私が洗った食器を拭いてもらえるかな」

咲「その程度、お安い御用ですよ」

尭深「それで、今日はどうするの…?」カチャカチャ


52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 00:54:59.95 ID:SsyEQjoD0
咲「そうですね……お姉ちゃんとの事は仕切り直して今度にして、今日は買物に行きたいです」フキフキ

咲「新幹線の時間が昼過ぎなので、それまでですけど」フキフキ

尭深「じゃあ…8時半頃に家を出て…帰りを考えて東京駅付近で買い物しようか」カチャカチャ

咲「はい、じゃあそれで」フキフキ


尭深「昨日の服は洗濯して畳んであるから…」

咲「はい、ありがとうございます」


53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 01:00:00.76 ID:SsyEQjoD0
―――――東京駅

咲「やっぱり東京駅って複雑ですね…一人だと絶対迷ってましたよ」

尭深「それで、何を買いたいの…?」

咲「えっと…本と服と、それから…アクセサリーを少し」

尭深「…じゃあ、こっちの出口から行くから、ついてきて」

咲「あ…あの…」

尭深「?どうしたの」

咲「えと…実は、方向音痴で…すぐ迷っちゃうので、その…手を、繋いでほしいなって…」スッ

尭深「…はい」キュ

咲「ど、どうも……」


54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 01:05:03.50 ID:SsyEQjoD0
尭深「着いたよ。服ならここが…種類が豊富だから」

咲「大きい……このお店、本当に服しか置いてないんですよね…」

尭深「上着から順に見て行こうか…目的の服でもある?」

咲「ええと、スカートとシャツを」

尭深「シャツのあるのはこっちだね…」

咲「いっぱいありますね。これは時間かかるなあ」


56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 01:10:28.93 ID:SsyEQjoD0
咲「このシャツとこっちのシャツ、どっちがいいと思いますか?」

尭深「…左、かな」

咲「じゃあこっちにしますね」


咲「あ、これなんかどうですか?」

尭深「…少し大きすぎないかな」

咲「あ、いえ、着るのは私じゃなくて、」

尭深「私…?」

咲「はい。似合うと思いますよ?」

咲「ダメ…ですか…?」

尭深「………………着てみる」


57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 01:15:01.86 ID:SsyEQjoD0
――――――――――

尭深(何でサイズぴったりなの…スカートも短めで…………意外といい、かも)

咲「着替え終わりました?」

尭深「うん…開けるよ」

尭深「どう…かな」

咲「…いい、かわいい!素敵です!」

尭深「そ、そう…かな///…」

咲「そうですよ!もっと自信持ってください…似合ってますよ」ニコ

尭深「ありがとう…」

尭深(これ…買おうかな…)


58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 01:20:03.44 ID:SsyEQjoD0
――――――――――

咲「このスカート、赤のラインと青のラインのどちらがいいと思います?」

尭深「私は…こっちがいいと思うな」

咲「じゃあこっちで」

咲「あ、帽子もあるんだ。ついでに見て行こうかな」

咲「これなんかいいかも…あ、この麦わら帽子」

咲「…うん、これも買おう」


60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 01:25:00.60 ID:SsyEQjoD0
尭深「他にはない?」

咲「そうですね…一通り見て回りましたから」

尭深「じゃあ会計済ませて行こうか」

咲「あっそういえば一つ選んでないのがあったんだ」

咲「選んでくるんで、先に会計済ませててください」


咲「…はい、それとこれをプレゼント用に…はい、こっそりとでお願いします」

咲「ありがとうございました」


61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 01:30:00.51 ID:SsyEQjoD0
咲「おまたせしました。あれ、もしかしてあの服買ったんですか?」

尭深「うん……似合うって…言ってくれたから」

咲「!嬉しいです」

尭深「次は本屋…このまま真っ直ぐ行けば着くよ」キュ

咲「あ…」

尭深「どうかした…?」

咲「いえ、何でも」

咲(真っすぐ行けば着くのに手、握って…)


62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 01:35:00.52 ID:SsyEQjoD0
尭深「着いたよ…殆どの本はここで手に入る」

尭深「古書の類が欲しいなら神保町に行くけど」

咲「そちらも魅力的ですけど…神田は次の機会に。今回はここで」

尭深「そう…」

咲「凄い…長野にあった書店とは規模が違う」

咲「ここなら何時間でも過ごせますよ。けど残念ながら今日はそんなに時間も無いので、目的の本だけ」

尭深「探してる本があるなら、そこの機械で検索できるから」

咲「うわぁ便利ですね」ワクワク


63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 01:39:59.78 ID:SsyEQjoD0
――――――――――

尭深(今の時間が……だからデパートに行ってアクセサリーを買って…)

咲「本探しに行ってきます」

尭深(先に昼食がいいかな…どこがいいかな…和食の良い店を知ってるけど時間掛かるし…)

尭深「あれ…いない…?」

咲「お待たせしました。会計してくるのでもう少し待ってて下さい」

尭深(良かった…迷子じゃなくて)ホッ


64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 01:45:00.98 ID:SsyEQjoD0
――――――――――

咲「ふぅ。これだけあればしばらく地元の本屋に行かなくて済むかな」

尭深「どうする…?先に、早めの昼食か…それともアクセサリーを見るか」

咲「そうですね…先にアクセサリーを選んでから昼食の方がいいですね」

咲(余裕持って選んでおきたいもんね…)

尭深「じゃあ、近くにデパートがあるから…そこで」

尭深「荷物…どっちか持とうか?」

咲「私が買った物だから、私が持ちますよ」

尭深「じゃあ、その本の袋の片方だけ…ね?」

咲「じゃあ片方だけ、お願いします…実は、ちょっとだけ重かったんですよね」


65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 01:50:05.33 ID:SsyEQjoD0
尭深「ここのデパートの…4階だね」

咲「このデパート…全体的にカップル系のアイテムなんかを多く扱ってるみたいですね」

尭深「だね…」

咲(いつか…)

尭深(二人で)

咲、尭深((ここを巡れたら…いいな…))


66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 01:55:01.95 ID:SsyEQjoD0
尭深「着いた。このフロア全体がそうかな。いいのがあるといいね…」

咲「はい…きっとあります」

尭深「…私も、少し見てくるから」

咲「はい、それじゃ後でまた」


咲(うわ…どれも値段張るなあ)

咲(これなら手ごろかな…これは、フラワーモチーフか)

咲(花か…花ね……花!そういえば確かこの花とこの花は…)

咲「店員さん、あの…一つのチェーンにこれとこれを付けて貰いたいんですけど…」

咲「はい、それでプレゼント用の包装でお願いします」


咲「ありがとうございました」


68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 02:00:06.12 ID:SsyEQjoD0
――――――――――

尭深「一杯あるなあ…」

尭深(あ…これ…プレゼントにいいかも)

尭深「すいません…これ、下さい。プレゼント用の包装で…」

尭深「それと、出来たら…」


70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 02:05:02.48 ID:SsyEQjoD0
尭深「ありがとうございました……あ」ドキ

咲「あ、どうも。何買ったんですか?」

尭深「ちょっと、ね…買い物は終わった?」

咲「はい、バッチリです」

尭深「じゃあ、意外と時間が出来たから……そうだ、昼は洋食でいい?」

咲「ええ、いいですよ。…何か当てがあったり?」

尭深「少し戻ったところに、お勧めの洋食店があるから…」

咲「そうなんですか、楽しみです!」


72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 02:10:03.74 ID:SsyEQjoD0
尭深「ここ…さ、入って」

咲「へえ、落ち着いた感じで、でも明るくていいですね」

尭深「いいでしょう」

咲「はい、素敵です。メニューは…これか。何かオススメとかありますか?」

尭深「なんでもおいしいから…好きなもの選ぶといいよ」

咲「えぇー…じゃあ、カレーを」

尭深「じゃあ…私はオムハヤシで」チリンチリン

尭深「すいません、カレーライスとオムハヤシを一つずつ」


73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 02:15:00.25 ID:SsyEQjoD0
咲「……」ペラ

尭深「………」ジー

咲「……」ペラ

尭深(…もうすぐ見られなくなる…のか……)ジー

咲「あ、来た来た」

咲「さ、食べましょう」

尭深「ん…そうだね…うん、食べよう」

咲、尭深「「いただきます」」


74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 02:20:00.76 ID:SsyEQjoD0
咲「おいしい!なんというか、甘口というか…懐かしい味。給食で食べた様な…」

咲「お肉もすごく柔らかくて…成程、この二つを同時に味わうことで味にコクと、
より深い旨みが現れる。そこから考えるに、恐らく甘みは蜂蜜や牛乳よりも林檎や
パイナップルといったフルーツをブレンドすることに起因すると考えられる。更に
老若男女が親しめる甘さ故物足りなくなると思うが福神漬がアクセントになっている」

尭深「そんなにおいしい?」

咲「はい、本当においしいですよ!一口どうぞ!はい、あーん」

尭深「あ///…あー…ん」

尭深「ん、確かに…おいしい」


75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 02:20:34.11 ID:SsyEQjoD0
尭深「でも、こっちもおいしいよ…はい///」

咲「あーん…!これもおいしいですね。コクのあるハヤシソースと卵、ライスのバランスがいいですね」

咲「まず濃厚なハヤシソース…長年作り続けてきた重みが伝わってきます。
卵も半熟で仕上げてあり熱々のライス・ソースと絡んで絶妙な具合になる。
卵自体にも、安い卵特有の黄色でなく、より鮮やかな色が見られる点から
こだわりが窺える。ケチャップライスは味が薄すぎずしかし主張しすぎない。
ソースの味に舌鼓を打ち卵の出来に驚く。ともすればソースが濃いと感じる
かもしれないがそれを卵がうまく和らげている。さらによく味わってみれば
ライスが控えめながら確かな存在を保ち、結果三つがうまく調和している」


76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 02:25:02.11 ID:SsyEQjoD0
咲、尭深「「ごちそうさまでした」」

咲「はあ、おいしかったぁ」

尭深「気に入った?」

咲「はい!また、来たいです」

尭深「うん…またいつか」

尭深「混んでるから、そろそろ」

咲「ですね」

尭深「会計を済ませてくるから、先に出ていて」

咲「はい、じゃあこれ、金額丁度です」チャラン

尭深「確かに」


78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 02:30:02.35 ID:SsyEQjoD0
尭深「…丁度で。それと、シェフに『おいしかった。父に言っておく』と伝えておいて」

尭深「おまたせ」

尭深「それじゃあ…そろそろ、駅に」キュッ

咲「…はい、駅に」ギュッ


79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 02:35:01.67 ID:SsyEQjoD0
――――――――――

咲「昨日と今日、面倒を見てくれて、ありがとうございました」

尭深「うん…」

咲「昨日部室で会ってから今まで、優しくしてくれて、ありがとうございます」

尭深「私がしたかっただけだよ…」

咲「嬉しいです、出会えたことが。一緒に過ごせて、楽しかったです」

尭深「うん…私も、嬉しい。一緒にいて、楽しかった」


81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 02:40:01.51 ID:SsyEQjoD0
咲「駅、着きましたね。着いちゃいました」

尭深「着いたね。時間も…余裕があるね」

咲「おみやげ…一緒に選んでくれませんか?」

尭深「勿論…いいよ」

咲「皆で食べられるもの…無難に人形焼きがいいかな。あともう一つ…」

尭深「これがいいんじゃないかな…揚まんじゅう」

咲「そうですね、これにします」


82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 02:45:03.34 ID:SsyEQjoD0
咲「これで大丈夫かな」

尭深「少し待っていて」


尭深「おまたせ」

咲「入場券を買いに…そんな、改札で充分だったのに」

尭深「いいから…さ、行こう」

咲「…はい」


83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 02:49:59.92 ID:SsyEQjoD0
咲「とうとうホームまで、着きました」

尭深「乗り場も番号も……あってるね」

咲「もうすぐ…長野に帰ります」

尭深「…………うん」


85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 02:53:01.11 ID:SsyEQjoD0
咲「本当は……欲を言えば…もっと」

尭深「…言ったら、駄目」

尭深「でも……泣いていいよ、今は」

尭深(だって…泣いた後は)

咲「大丈夫ですよ…だって、泣いた後は笑える筈だって言ったから」

咲「昨日、泣いたから…今は笑えますよ…ほら」ニコッ

尭深「……そう…か」

尭深「良かった」ニコ


86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 02:56:00.66 ID:SsyEQjoD0
咲「それで…これ、受け取ってください」スッ

尭深「この袋…開けていい?」

咲「ええ、どうぞ」

尭深「これ…麦わら帽子」

咲「昨日、色々育ててるって聞いたんで。夏場に外で作業するときにいいかなって…」

咲「それに、被ると似合いますよ。私が保証します」

尭深「ありがとう…大事に使うね……こっちは、もしかして」

咲「わかっちゃいましたか。まあ、開けてみてください」

尭深「うん…………奇麗なネックレス……」


88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 02:59:00.80 ID:SsyEQjoD0
尭深「この花は…」

咲「そのネックレスの花…表はサフィニアっていう名前。後ろの花は……枝垂桃」

尭深「サフィニアと枝垂桃…うん、分かった…ありがとう」

尭深「それで……お願いがあるの」

咲「なんですか?」

尭深「このネックレスを私に…掛けてほしい、その手で」

咲「はい、勿論いいですよ」

咲「じゃあ少しかがんで…………はい、出来ました」


89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 03:02:02.68 ID:SsyEQjoD0
尭深「本当にありがとう…とっても嬉しい。――お返しに、これを」

咲「これは…ジャムのレシピですね。手書きの…画もついてて…ありがとうございます」

尭深「裏に私の家の住所と…上が自宅の電話番号、下が携帯電話」

咲「ありがとうございます……」

咲(私が携帯電話を持ってないからメール出来ないのを知って住所を…)

咲「手紙、出しますね。季節毎の手紙と…寂しくなったら。

新年にはお祝いの言葉と、健康を祈る言葉を書いて…

夏はお中元に添えて。一年の終わりにはお歳暮と一緒にその年の無事を祝って」


90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 03:05:01.58 ID:SsyEQjoD0
尭深「うん…待ってるし、私も書く。それと…これを」

咲「これは…もしかして……」

尭深「…開けてみて」

咲「…………奇麗……」

尭深「上にある花はダッチアイリスで、後ろの花は…朝顔…だよ」

咲「ダッチアイリスに、朝顔…はい、分かりました。ありがとうございます、本当に」

咲「それで…私にも…同じように、お願いします…」

尭深「うん…もう少しこっちに…………出来たよ」

咲「嬉しいです…本当に…言葉にできないぐらい…」


91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 03:08:03.20 ID:SsyEQjoD0
尭深「新幹線が来たね」

咲「はい、そうですね」

尭深「今度は私がそっちに行くから。近いうちに、行くよ」

咲「…実を言うと、さっきまで不安だったんですよ。それに…帰りたくも、なかった」

尭深「……」

咲「でも今はその不安は無い。足も…一歩を踏み出せる」


92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 03:11:02.50 ID:SsyEQjoD0
咲「さっき言ったこっちに来ること、約束ですよ」

尭深「約束…うん、約束」

咲「夏の」

尭深「そう…夏の約束…だね」

咲「はい……それじゃあ、もう乗りますね」

咲「じゃあ、また今度。尭深さん」ニコッ

尭深「うん、また今度。咲ちゃん」ニコッ


94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 03:12:29.95 ID:SsyEQjoD0
――――――――――

尭深(もっと一緒にいたい。二人でいたい。叶えたい…夏の約束)

尭深(いつ行こうかな…そうだ、次に会うまでにもう少し…おしゃれしてみよう)

尭深(それに、もっと変わらないと。もっと強くなって…ずっとそばにいて、守って…そして二人で…)


95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 03:13:24.97 ID:SsyEQjoD0
――――――――――

咲(寝不足だったから、眠いな)

咲(…不思議な感じ。先のことは分からないはずなのに、明るい希望のある未来がやってくる、そんな予感がする)

咲(ほんとうは、嫌なことも不安になることもあるんだろうけど、心配しなくても全部なんとかなる、そんな気がする)

咲(……ふわ…あ…時間あるし…ひと…眠り……しても…いい…か……な………)


96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 03:15:00.51 ID:SsyEQjoD0


97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 03:17:09.15 ID:SsyEQjoD0
お疲れ様でした
寝てない奴は早く寝なさいなのよー


98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 03:19:54.05 ID:K8hn76Ck0
乙!


99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 03:20:32.81 ID:0FLqYNkF0
おつつ
後日談も出来ればよろ


100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 03:23:22.30 ID:SsyEQjoD0
>>99
書く気は今のところ無いです
ネタ無しオチ無し修羅場無しでこれ以上甘いのは糖尿病になります


101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 03:33:31.87 ID:SsyEQjoD0
じゃあ何もないようなのでお疲れ様でした


102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 04:12:42.69 ID:mijD6kxUP
とても濃密な甘さだった
乙乙





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