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ステイル「第六位、『魔女狩り(ファイアハンター)』だよ」

1: ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 01:28:59.77 ID:pmyEDT6q0
字の分入り、シリアス初めてなのですごく拙いです

●ステイルが超能力者です

●その他にも設定改変、オリ設定たくさんです

●再構成です


では始めます


2: ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 01:30:36.19 ID:6tvyGuCSO
学園都市
ここは人為的に「超能力」開発している学生の街

「能力」は六段階に分けられ
その中の最高位である超能力者(レベル5)――
その名を冠する者は七人しか存在せず、軍隊とも渡りあえるといわれる

これはその中の一人、第六位の物語




3: ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 01:32:13.28 ID:6tvyGuCSO
ステイル=マグヌス
幼少期、親に学園都市に預られた
より詳しくいうと、入学費のみ払い寮に入れられ、消息を絶たれた

つまり置き去り(チャイルドエラー)である
名前から分かるように日本人ではない

「……ふぅ」

そんな彼は、第七学区を歩いていた
自分の住む学生寮に帰宅するため

「…………」

人は少ない
だからこそ話し声が聞こえてしまう

「……そろそろ夏休みの時期、か」

コンビニで買ったパンと紅茶が入ったビニール片手に呟く

「まあ、僕には関係のないことだが」


4: ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 01:35:11.41 ID:6tvyGuCSO
彼は学校には行っていない
書類上は学園都市でも五指に入る一つの学校に在籍しているが
ずっと公欠している
実際はとある研究機関の研究に被験者として参加し続けている身である

「……」

今日もその帰りだった

(……学園都市に七人しかいない超能力者の第六位『魔女狩り(ファイアハンター)』)

すっかり日が落ちた道を見つめながら

(そんな僕すら実験道具としてしか見ていないか)

毒づく
この学園都市はたいした「闇」を孕んでいる


5: ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 01:36:56.04 ID:6tvyGuCSO
置き去りは非道な実験のモルモットとして使われやすい
だがステイルは三十二万分の一の才能を持っていたため、使い捨てにはされなかった

(まあ、いいさ)

もう飽きた
自分の立場や研究者たちに憤るのは
そしてそんな弱い自分にも
そして思う
こちらも利用してやればいい

(……ふん)

自分の実験が達成された時は自らの命日だ


6:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 01:39:00.89 ID:6tvyGuCSO
長い、学生寮の階段をのぼる
ステイルの部屋は七階
何故かエレベーターがなく、いつもくたびれるハメになる

ようやく到達し自分の部屋の鍵を開け、入る
テーブルにパンと紅茶を置き、開けたままだったカーテンを閉めようと目をむけた

「…………ん?」

ベランダに何かが引っ掛かっている

(なにも干していなかったはずだが…)

遠目にみた限りでは白い物体にしかみえない


7:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 01:40:01.83 ID:6tvyGuCSO
無視してもよかったが何故か惹きつけられた

「…………」

ベランダのある方に近付いていく、と


「…………ォ」

「!?」

動いた

「―、な、――、っ、―」

何か言っているがガラスごしなので聞き取りづらい

「あれは……」

物体が顔をあげたため容姿が分かった


8:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 01:40:51.29 ID:6tvyGuCSO
肌は純白で、銀髪。長さは腰あたりまではあるだろう

「お、――、へ、――」

長いワンピースのような修道服を着て、頭には一枚のフードを被っている
色は「純白」だった

「――、か、――、た」

衣服の要所要所には金糸の刺繍が織り込まれていた
まるで成金趣味のティーカップのようにも見える

「おな、――、った」

物体はまだ言い続けているが無視しステイルは結論を口にした

「……シスター?」

惨めな、力を求める彼が
変わる出会い(きっかけ)がそこにあった


9:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 01:43:03.04 ID:6tvyGuCSO
開けてしまった
何故かは分からない
近づいていった時と同じく、惹きつけられた

「おなかへった」

「…………」

「おなかへった、って言ってるんだよ?」

「……まさかさっきからそれを繰り返していたのかい?」

呆れた
シスターらしからぬ執念だ

ギュルルルル……

「…………」

「…………」

直感が面倒な人物と告げた
さっさと満足して帰って貰おう

「だったらパンをあげるよ、一つしかないが…」

「ありがとう」


10:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 01:44:13.50 ID:6tvyGuCSO
と柔らかく彼女は笑った
純粋な感謝の気持ちを告げるため、純粋な笑みを向けたのだ

「…………」

今まで向けられたことのなかった感情
なんともいえない気持ちになりながら、シスターにコンビニで買ったパンを渡した


11:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 01:45:45.26 ID:6tvyGuCSO
「おなかいっぱいご飯を食べさせてくれると嬉しいな」

と、シスターはまた笑いかけてきた

「…………君は時間を操る能力持ちなのかい?」

「そんなことできないよ?」

先程パンをあげたばかりだ
確かに満腹にはならないだろうが…
尚更怪しくなってくる

「君は、シスターだよね?」

「うん、見てのとおり教会の者です、イギリス清教ね」

「……ふぅん」

「あ、名前はインデックスっていうんだよ?」

(目次?偽名かな……)


12:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 01:52:55.00 ID:6tvyGuCSO
ステイルは考える

なぜ、イギリス清教とやらのシスターが
科学の街、学園都市にいる
そして「インデックス」という偽名

「……君は、何なんだ?」

遠回しに訊いてみる
「何が目的だ?」と

「私は名前の通り禁書目録」

「……」

「……だよ」

「…………」


求められた答えはかえってこなかった
だから直球に訊く

「なぜこの街にきた」


13:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 01:56:55.80 ID:6tvyGuCSO
「……うん、とね」

少女は少し躊躇いがちに答える

「追われてるの」

「誰に?」

「……魔術結社にだよ」
「なんだって?」

得られた言葉は
なんとも不可解なものだった


14:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 01:58:31.46 ID:6tvyGuCSO
こんなものです
かきためも少ないし、ペースも遅いですが

読んでくれた方はありがとうございました

次はもっとかきためてきます


15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/26(土) 02:42:58.11 ID:tMP+f6HIO
再構成ものは結構あるけどステイルが科学サイドにいるってのは珍しいな
期待


17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/26(土) 03:22:32.93 ID:/mZkp+zeP
ステイル再構築を待ってた
これは期待するしかない


21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/26(土) 10:12:20.92 ID:W2qpOM0IO
なんか面白そうだし期待

ちなみに赤髪とか身長180cmとかヘビースモーカーとかの設定は原作と同じ?
あと格好は神父の服じゃないんだろうからその辺の説明も頼む


29:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 22:57:23.48 ID:6tvyGuCSO
レスありがとうございます

>>21
すいませんそうでしたね
肝心なことすっぽかしてました
今回入れておきました


22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県):2011/03/26(土) 12:04:31.60 ID:PABfhpT60
地毛は金髪という話だしな

というかファイアハンターはどうにかならんのか?
「狩人の火」的な意味を持たせたのかも知れんが、たしか火を消すための道具だぞアレ
文字通り「炎を駆逐する」ものだぜよ

まさかの水流操作系能力ならともかく、炎使いなら逆じゃね?


29:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 22:57:23.48 ID:6tvyGuCSO
>>22
確かに
まあ…見逃してください


では、投下します


30:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 22:58:42.20 ID:6tvyGuCSO
ステイルの耳がおかしくなったかと思った

―――魔術結社

ここ以外でも超能力開発に成功し、それを『魔術』とかたっているのか
それともただの新興宗教かなにかなのか

「……信用してないね?」

「そうだね」

ステイルは認める

「学園都市では超能力でさえ科学で説明してしまう、だからこそオカルトとされている魔術はね」

「……でも、魔術はあるもん」

膨れっ面になるインデックス
そんな彼女などお構いなしに、癪に触るようなことを口に出す

「だったら見せてみなよ魔術とやらを、まあ信じるかどうかは別だが」


31:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 23:00:00.39 ID:6tvyGuCSO
「わ、私は使えない…魔力がないから」

「…………」

幼い子供でも、まだうまく嘘をつき続けられるだろう
この子はそれ以下のレベルだ
これ以上そこには触れないでおこう、本題に戻す

「分かった認めるよ魔術、で、何故君は魔術結社とやらに追われていたんだい?」

「棒読みなのはなぜかな?」

「食事をとりあげてもいいなら答えよう」

「むむむ!………わ、わかったんだよ………」

扱いやすい、と思った

「……私は禁書目録だから」

「私が持ってる十万三千冊の魔道書、それが狙いだと思う」


32:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 23:02:08.15 ID:6tvyGuCSO
また子供の嘘に付き合うハメになった

「なんか顔が疲れているようにみえるけど」

そのとおり疲れてきたので、適当な質問でもしておこう
先程のようにボロもでてくるだろうから

「で、その魔道書とやらはどこにあるのかな?」

「ここにあるよ」

「?」

それらしいものは見当たらない
あるのは自分の小説などだけ

「魔術とやらで隠しているのかい?」

「ううん、魔術は使ってないよ」

インデックスはスラスラと答える
その口調に迷いなどは一切なく、真実を話しているようだ


33:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 23:03:04.75 ID:6tvyGuCSO
………………。
だったらなんだ?
閲覧が許可されている者以外見えないのか

思案するステイルをよそにパクパクと出されたものを食べるインデックス
彼を黙らせたことで少し満足したのか
とても嬉しそうな顔をしている

「……」

「ぷはー、おなかいっぱい」

全て食べ終わったようだ
結構用意したはずだが全て無くなっていた
残りを夕食にしようと思っていたのに

「……ふは、本当にありがとう、じゃもういくね」

「……」

そう告げた彼女の顔は、暗かった
実際に暗い表情をしているわけではない

巻き込むまいと、誰にも分からないように暗を押し込めた顔

それが分かってしまった
自分も、そういう所があるから


34:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 23:05:35.22 ID:6tvyGuCSO
と言ってもそんな誰も巻き込まないという綺麗な感情ではない



今まで自分に幸せなど一回も訪れなかった
逆に闇で覆い被され、泥に沈められ続けた
そして悟る
幸運は訪れないのではない、訪れることができないのだと

悟った所で引きずり上がる力もない
内に復讐心を溜めることしかできなかった

彼女と僕は僅かな違いこそあれ、根は似ていた


本当は―――


「……そうかい、じゃあ気をつけて神のご加護とやらがあるといいね」

「そうだね、ありがと」

彼女はそう言い残し、玄関から出ていった


35:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 23:06:16.01 ID:6tvyGuCSO
静寂がステイルの部屋を包む

「…………」

誰もいなくなった所で趣味の煙草を吸っている
だがいつものように楽しめない

止めなかった
彼女の気持ちを理解しながら

しかし、それをしてしまうと――

(……なんで僕がそこまでしなければいけないんだ…)

強さ以外何もなくていい
なにもかもなぎ払えるような強さ以外は

……でも。

「ふぅー」

大きく息を吐く
この白い息と共にモヤモヤまで吐き出したいのにできない

「僕は彼女じゃない、義理なんてない」


そう心に言い聞かせ、再び息を吐き出した


36:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 23:08:31.04 ID:6tvyGuCSO
学園都市にある都市伝説に『幻想御手(レベルアッパー)』というものがある
それは、能力のレベルを簡単に上げることができるらしい

能力にコンプレックスを持っている者や
力を求める不良達には喉から手が出る代物だ

だが文字通り都市伝説、幻のアイテム
噂だけで、手にした者も、実物も滅多に光に当たらない


しかし裏では

「十万でどうだ?」


37:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 23:09:37.20 ID:6tvyGuCSO
とある廃ビルの一階
誰も近付かないだろう場所で

「…………」

「これ以上はまけられねぇよ、こっちもホイホイ手に入るモンじゃねえし」

「チッ、買った」

買い手は折れ、十万円を支払う
売り手は目を輝かせ舌なめずりし、引き渡す
『ケースに入ったCD』を

このように裏では主に不良達によって高く取引されている
金、力、能力
そこには様々な欲望が渦巻いていた

「本物なんだろうなぁ」

「当たり前だ、実践済みだぜ」

売り手の不良は、腕を振る
すると奥から別の不良が現れる

「………ヒヒ」

その不良は笑う

「……!?」

売り手の壮絶な笑み

「見せてやろうか」


38:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 23:10:39.92 ID:6tvyGuCSO
次の瞬間、不良の手のひらから爆風が噴出する
それに買い手は、いとも簡単に吹き飛ばされ、壁に激突する

CDと共に動かなくなった買い手を、笑いながら見つめ

「ホイホイ手に入らないから渡すわけねーじゃん」

売り手はポケットから幻想御手(ほんもの)を出し
気絶している買い手に見せびらかす

「はは!十万ありがとう!!」

「兄貴、そろそろ次が来やすぜ」

「おお分かってる、あそこのゴミ片付けとけよ」

「ウス」

風使いの不良は従い、片付けにいく
すると

「……ん?」


39:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 23:13:41.82 ID:6tvyGuCSO
ガラスづくりの入口に一つの姿が映っていた

それは次の買主ではない

「兄貴…」

「あ?」

風使いのスキルアウトは警戒しながらよびかける
兄貴と呼ばれている売り手のスキルアウトは、足音をたてず歩み寄る

「……」

その眼に映ったのは

腰のあたりまである銀髪
そして純白の修道服を着たシスター
インデックスだった


40:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 23:14:11.16 ID:6tvyGuCSO
「……?」

インデックスは学園都市にある英国式の教会に向かっていた

まだ学園都市に魔術師が侵入した気配はない
しかし念には念を
人目のつかない所を選び、走っていた

そこに

(……不良?巻き込まれると面倒かも)

そう思い、逸早くそこから離れようとする
早歩きを始めたインデックスの後方から

爆風が襲いかかってきた


41:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 23:15:08.57 ID:6tvyGuCSO
午後七時

ステイルは外を歩いていた
用はない
ただ気分を晴らすためである

間違ってもあのシスターを探すというわけではない

「……ふぅー」

煙草を吸っていた
普段は外では吸わない
風紀委員(ジャッジメント)や警備員(アンチスキル)がうるさいため

今はかなり不愉快なので気にせず吸う

(…………もしも会ってしまったら)

ハッ、とする
気を抜くとすぐこれだ

(もう帰ろう、逆に意識してしまう)

と、その時
路地裏から微かに爆発音が聞こえてきた


42:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 23:17:45.93 ID:6tvyGuCSO
(…………)

耳を澄ますと、何度も何度も小さな音が聞こえてくる

(……スキルアウトかな)

にやり、とステイルは笑う

(どうせ迷惑行為でもしているのだろうね…)

(……暴れれば忘れられるだろう)

一般人なら躊躇うだろう
スキルアウトという荒くれ者の暴行に好き好んで突っ込むなんてことは
だが彼は、軍隊とも互角に渡り合う

超能力者だ

騒ぎの中心に割り込み、声をかける

「君たち…」

そこでステイルは固まった


43:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 23:18:24.19 ID:6tvyGuCSO
「……え?」

「……君、…はッ!!」

インデックスを忘れるためにとった行動は、更に鮮明に刻み付ける結果となった

「なんでアナタがここに?」

「それはこっちの台詞だ!何故君がスキルアウトなんかに追われている!!」

「それは…」

その背後にはスキルアウトと思われる男が、こちらに向かってきている

「……ッ!話は後だ」

インデックスを後ろにやり、庇う形で立ちふさがる

スキルアウトの男はこちらを睨み、言った

「どけ」


44:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 23:19:12.47 ID:6tvyGuCSO
――――

余裕そうに見えた風使いのスキルアウトは、戸惑っていた
偶然取引現場を目撃してしまったシスターを始末する命をうける

そこまではよかった、が

何度爆風を直撃させても全くシスターが倒れる様子はない
それどころか膝すらつかない
通用していないのだ

しかも逃走能力が半端ない、少しでも気をぬけば撒かれる
とてもガキとは思えない!

そしてそのシスターを庇うように現れた
赤髪で二メートルはある長身
耳にピアス、一〇本全部の指に銀の指輪をはめており
黒色のTシャツ、そしてその上に同色のジャージを羽織り
右目ね下にバーコードの刺青をいれた顔で草をくわえた男

「……」

険しい表情に怯みそうになるが

「どけ」

と睨み返したが
赤髪の男は皮肉げに笑った

「なにかなそれは、まさか忠告とかかい?」


45:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 23:20:40.43 ID:6tvyGuCSO
その言葉が発せられた直後、爆風がまきおこる

はずだった

「あげるよ、この炎」

ステイルは腕を上から下へ斜めに振った
すると手のひらを追うように炎が現れ
それは風使いのスキルアウトの足元に叩き付けられる

轟音と共に地面はまるで豆腐のように抉られ、瓦礫と衝撃が風使いを襲った
風使いは声をあげる間もなく跳ねあげられ、落下し気絶した

「はああ…」

その光景を見たインデックスが緊張感のない声をあげる

風使いが能力を発動させた後に発動させても
相手より早く到達し、ヒットするチカラ、そして演算速度

これがステイル=マグヌスの力

「まあ死なない程度に加減はしたよ、女の子の前だしね」


46:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 23:21:25.91 ID:6tvyGuCSO
「ふぅ…」

一撃か
まあスキルアウト相手なのだからこんなものだろう

何か疑問に残ることがあるが、今は――

「……大丈夫かい」

「うん…」

インデックスは答える

「なんでこんな所で追われていたんだ」

「うん…人目のつかない所を歩いていたら」


「俺の商売、見ちゃったからだよ」

突如、何者かがステイル達の前に現れた

「……なんだい?」

「ああ、お前らの口封じ」

余裕のある声であっさりと男は答える


47:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 23:24:36.02 ID:6tvyGuCSO
ステイルは深くため息をつく

「キミは今のを見ていなかったのかな?」

「んー、見てたよ、だ・か・ら・こ・そ」

ふざけた口調で答える男
だが顔は笑っていない、殺意だけしかなかった

「勝てる!と思ってんのよぉ!!」

男は腰を捻り、勢いをつけてボールを投げるような動きをする

「!」

ステイルは咄嗟に首を振った
バチッ、という音がきこえ
その後ステイルの少し後ろが爆発した

「……ッ!」

ステイルは少し後ろに下がり、嫌そうに呟く

「……電撃使いか」


48:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 23:25:47.74 ID:6tvyGuCSO
「そぉ!電気目で見てよけれる人間なんていねーよなぁぁ!?」

唾を撒きちらし叫ぶ男
確かに目で見て避けることは難しいが

「たぁ!」

再びボールを投げるように電撃を飛ばしてきた

「……」

ステイルは動かない

だが電撃はステイルにも後ろにいるインデックスにも当たらず

横の壁に激突し、爆発した

「ひゃあ!」

インデックスが悲鳴をあげたが、ステイルは

「能力の扱い方が拙い…まるで慣れていない」

「チィッ!」


49:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 23:28:35.96 ID:6tvyGuCSO
ステイルは慌てている男の隙をつき

「さっきから見てると、野球が好きなのかい?」

手のひらからバスケットボールくらいの炎球が出現

「だったら、キャッチボールしようか」

「やっ……」

男は電撃を出して応戦しようとするが、焦り
パチッという僅かな電気しか出てこない
そしてステイルの投球はそれを弾き飛ばし、男に直撃した

「戦い方をまるで分かっていなかったね」

余裕
これが第六位
『魔女狩り(ファイアハンター)』


50:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 23:31:23.93 ID:6tvyGuCSO
終わった
ここまでやれば、復讐する気も失せるだろう
仮にしてきても返り討ちにすればいい

現場から離れ、今は適当に歩いている

そんな二人は気まずそうな顔をしていた

「……」

「……」

「あ、ありがとう、また」

「……余計なお世話だったかい?」

そんなステイルの言葉にインデックスは伏目になり答えない

「最初の男、焦っていたね」

語るステイル

「魔術結社とやらに追われ続ける君にとっては、あんな奴らは容易に撒けたわけだ」

「……」


51:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 23:33:42.05 ID:6tvyGuCSO
何故か気に入らなかった
気持ちは分かっている

巻き込まないためだ

自分と同じく
助けなんて、幸運なんてやってこれない環境にいるから


でも


本当は


「助けて欲しいんじゃないのか!?」


52:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 23:35:30.51 ID:6tvyGuCSO
困惑するインデックス

「……え、あ…」


どう答えたらいいか分からないような顔をしている

「だったら求めなよ、僕がいる」

もうどうでもいい
彼女に手を差し延べたら、自分まで震えて助けを待っていた
弱虫の証明になるなど

「僕は学園都市でも超能力者という最高位の人間だ」

「…………」

「魔術だろうがなんだろうが、全て燃やし尽くす、だから」

「助けを求めなよ」


彼女に手を差し延べる
例えただの同情からくる答えとしても


53:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 23:37:10.77 ID:6tvyGuCSO
彼女を助けたいと、思ってしまったのだから


54:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 23:40:25.65 ID:6tvyGuCSO
何かに堪えるようにインデックスは言った

「じゃあ…」


「私と一緒に地獄の底までついてきてくれる?」


「喜んで」


55:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 23:41:38.07 ID:6tvyGuCSO
そう答えた瞬間
彼女は、泣き崩れた




七月十六日 終


56:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/26(土) 23:45:16.19 ID:6tvyGuCSO
今回の分おわりです

戦い方批評してるわりにステイルも単純な戦い方してる気がしますが
なんども読み返してみましたが
心理とか色々ちぐはぐかもしれません


では、ありがとうございました


57:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県):2011/03/26(土) 23:47:52.10 ID:zYOLkuo+0
うおおおおおおおおおおGJ!!

ステイルいい人すぎる!


58:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/03/27(日) 00:20:26.96 ID:ZwZ7YbtC0
ステイル、今こそ主人公に!


72:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/28(月) 11:23:16.27 ID:hl1FhdfSO
七月十七日――


あれからインデックスはステイルに心開き、色々歩み寄ってきた
自分も拒絶せず、それを受け入れる


そういえばまだ言ってなかった名前を聞かれたりなんて、他愛もないことから

「一〇万三〇〇〇冊の魔道書は君の頭の中にあると…」

「うん、一字一句忘れず記憶しているよ」

彼女のことまで


73:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/28(月) 11:23:51.26 ID:hl1FhdfSO
「私がイギリス清教なのは言ったよね」

「確かね」

「その中に特別な機関があるんだよ」

インデックスは相手が理解できるよう語る

「イギリス清教は「対魔術師」用の技術が発達したの」

それに応えステイルも疑わず、真剣に耳を傾ける

「魔術を調べあげて、対抗策を練る機関『必要悪の教会(ネセサリウス)』――」

「君がその最たるもの、ってわけかい」

うん、と答えて

「世界中の魔術をしれば、世界中の魔術を中和できるはず」


だけど


74:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/28(月) 11:24:31.83 ID:hl1FhdfSO
「この力は世界を捩じ曲げることもできる」

「……」

おそらく
いや、確実に魔術結社はその力が欲しいのだ

科学と魔術
正反対だが、結局は同じ人間たち

自己のためにこんな子供すら地獄に引き落とす

「……大体分かったよ」
ステイルは頭で言われたことを整理する

完全記憶能力
必要悪の教会、禁書目録の役目
魔神

そして


インデックスは一年前からの記憶がない


75:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/28(月) 11:24:58.82 ID:hl1FhdfSO
(……それほどまでに?)

その彼女の記憶を奪ったと思われる脅威は、まだ燃え尽きていない

だが、彼女の顔に以前のような暗さはない

「……一息つこうか」

「え、うん」

ステイルは冷蔵庫に向かい
コンビニの紅茶と、パンオンリーの食事をだした


76:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/28(月) 11:26:09.77 ID:hl1FhdfSO
それをインデックスは

「はむ、がつがつ、おいしいね、このやきそばぱん」

すごい勢いで消化する
手元に確保しておかないとステイルは食事にありつけないだろう

「んぐんぐんぐ」

「英国人の君にとってその紅茶はアリなのかい?」

「はえ?」

「ああ、いいよ飲めば」

そういわれると再び飲食を再会した

(……食事が好きなんだな)

覚えておこうとステイルは思う
これからの彼女のために


77:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/28(月) 11:26:56.03 ID:hl1FhdfSO
「はー!」

やはり自分が最初に確保した分しか食べられなかった
まあそんな大食らいでないから、いいのだが

「……」

「……?」

そんな満腹になった彼女の顔が少し曇る

「どうしたんだい?お腹がいたいのか?」

「ちっ、違うんだよ!」

顔を赤くして怒鳴られた
デリカシーがなかったかな
怒りで勢いに乗り、彼女は曇りの原因を言った

「……少し飽きたかも」

「え?」


78:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/28(月) 11:29:06.09 ID:hl1FhdfSO
「飽きた…というのは?」

遠慮二割、不満八割のわがままな抗議

「パン系ばっかり!何か別のものが食べたいんだよ!」

初対面の時から思っていたが本当にシスターなのか
ただ格好を合わされているだけでは

「と、言われてもね、今ウチにはパンしかないよ」

「もっとジャパニーズ特有のごはんが食べたいかも!」

無視された

「むやみな外出は控えなきゃね」

「……む、そうだね」

納得したが、やはりあきらめきれない顔をしている


79:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/28(月) 11:29:57.03 ID:hl1FhdfSO
「……ふぅ」

仕方ない
折ろうとしたハズが折られてしまった
彼女の幸せそうな顔に、雲をかけたくはなかった

(……僕という人間はこんなだったかな)

お腹がふくれ、横になっている彼女に

「行きたいというなら」

「え?」

「目立たない格好をしなよ…例えば」

提案する
まだ掴めていないインデックスに

「?」

「着替えるとかしてね」


80:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/28(月) 11:30:46.87 ID:hl1FhdfSO
目立つ修道服をどうかすれば多少は目を誤魔化せるだろう

「と、言っても僕のジャージくらいしかないが」

「それはマズいかも」

却下された
わがままからくる反対ではなさそうだ
インデックスは胸のあたりに手をかざし

「この修道服は『歩く教会』と言って法皇級の絶対防御を誇るの」

包丁を自分に刺すジェスチャーをしながら言った

「なるほど、目立つリスクを負っても着る価値があるということかい」

「うん」

その後、この修道服でサーチされていることも聞いた

「……魔術をくわしく知らない僕が気軽に触れるべきものではないね」


81:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/28(月) 11:31:27.55 ID:hl1FhdfSO
「うん、本当にごめんね」

申し訳なさそうにステイルの意見に相槌をうつ

そんな彼女の顔にはやはり

「…………」

まるでテスト前だから、遊びを自粛しているようなものだ
したいけど、してはいけない
理解はできている、つまり我慢した顔

「……分かったいこう」
その言葉に
え、と彼女は驚く

「でも」

「なんのための僕だい?」

まだ躊躇っている彼女に、告げる

「魔術師がきたら焼く、それでいいのだろう」

その言葉をうけたシスターの顔は雲が散り

「やったあ!」

晴れた


82:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/28(月) 11:33:46.84 ID:hl1FhdfSO
「ふふふん♪」

インデックスは鼻歌を歌いながら、ステイルの身仕度を待つ

「……」

鏡の前に立ち、香水をつけながら

(彼女を一人にするのは危険だ)

思案する

(……気は抜けないね)

(幸い、実験も長期休暇がとれたし、離れることはない)

そう
ステイルはとある研究の実験に参加している
被験者として

だがその実験も停滞気味だった
最近の内容は文字通り研究者に眺められているだけ

酷い時はステイルを放置し、資料とにらめっこだった

相当な進展がない限り呼び出されることはないだろう


83:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/28(月) 11:34:42.92 ID:hl1FhdfSO
「ステイルまだー?」

その声ではっとする
彼女が文句をいってきた

「ああ、すまない、もういいよ」

と、夏なのに長袖の黒いTシャツとジャージ、さらにオーバーコートまで着て
熱のこもりそうな修道服を着た少女をつれ出かけた


84:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/28(月) 11:35:20.83 ID:hl1FhdfSO
「わぁー!」

とインデックスはショッピングセンターの中で声をあげた

「おいしいそうなものが、いっぱいあるんだよ」

「好きなだけ買っていいよ」

「ホント!?」

目を輝かせてこちらをみるインデックス

「もちろん、お金はあるからさ」

「やったあー!」

その初めての経験に、はしゃぐような様子を見て
いっそう記憶の件に憤る
「……」

必ず焼き尽くす、と心に強く誓った


87:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/28(月) 11:49:42.14 ID:BhyvSvUvo
インデックスにとことん甘いステイルさんかわいいよ


91:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/28(月) 22:56:19.61 ID:hl1FhdfSO
「これー!あ、これも!」

と、あるもの全て買い尽くす勢いのインデックス

「このお肉も…」

「君にとって禁欲とはなんなのか」

「!」

その呟きにビクッと反応し、少し控え目になるが…

「……むむ!おいしそー!」

光るソースにその上からかけられたマヨネーズ、そして青海苔と
色とりどりなたこ焼きに

「ステイルーこっちー」

再び暴走する

「…………」

楽しそうだからいいのだが


92:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/28(月) 22:57:19.13 ID:hl1FhdfSO
レジの人が少し驚いていた
二人が持っていった量は大家族の母親並のものだった

「いっぱいだね」

「そうだね」

原因は間違なくインデックスだが
彼女がさすがに遠慮し始めると

「なんだいいきなりおちついて?ホラあのアイスクリームはおいしいよ」

と たきつけたステイルにもある


93:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/28(月) 22:58:58.85 ID:hl1FhdfSO
「よいしょ、じゃあ帰ろうか」

全ての買ったものを袋につめ終わり、周りを見つめていたインデックスを呼ぶ

「あ、うん。……!?」

荷物は、パンパンになった大きい袋が六つもあった
マイペースなインデックスも

「わ、私も半分持つよ」

「いいよ、これでも鍛えているからね」

それでも運動不足にならない程度しか成果が出ていないということは黙っておく
こんなことしているのはもちろん大荷物を運べるようになるためではなく

彼の能力の切り札のための一環

「……でも」


94:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/28(月) 22:59:40.08 ID:hl1FhdfSO
「……」

やはり納得いかないような顔のインデックス
そんな不満げなシスターをみる赤髪の少年は

「…………ふぅ」

初めてあってから何度目か
渋々折れる合図の溜息をはく


95:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/28(月) 23:01:20.38 ID:hl1FhdfSO
「んしょ…む…」

結局、一つだけ持たせた

渋っていたが、一つだけでも両手で引きずるように持っているのだから

「ん…むむ……っ」

今にも落としそうで、一生懸命

(やはり僕が全てて持つべきか?いやしかしインデックスは納得しない…)

自分もほぼ限界だが、そこにはまったく配慮がない
そんなことを考えていると

「ひゃあ!」

いきなりインデックスが悲鳴をあげ、荷物を落とし、尻餅をつく


96:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/28(月) 23:04:18.37 ID:hl1FhdfSO
「……!」

(なんだ?)

(まさか……刺客…?)

自分の中の警戒レベルをあげる

「イン…」

「あれ…」

インデックスはおそるおそる指さす
ステイルはその先を警戒しながら、視線を送る

「…………?」

何もいない
あるのは植えられた木、草

「インデックス…もっとくわしく」

小声で詳しい指示を求める
すると、指さすのは先程と同じ場所、自分の真横

木、草
ゴミ箱、そしてその周りに散らかるゴミを片付ける――


97:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/28(月) 23:05:34.35 ID:hl1FhdfSO
「あ、あれだよ…」

「……………」

なるほど
息をはき、肩をおとす

「…清掃ロボがどうしたんだい」

「……清掃ろぼ?」

ステイルは清掃業に勤しむ機械について詳しく説明する

確かに学園都市の外部の人間には珍しいだろうが
そんなに取り乱すものだろうか
取り乱した本人インデックスは感想を率直に言う

「はあ~使い魔まで機械にしちゃうんだね」

「……そうだね」

一見は便利に、そしてまるで漫画の世界に飛び込んだようにみえるだろう
だが裏を知ればそう思えなくなる
笑えない科学が蠢いている


98:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/28(月) 23:08:02.06 ID:hl1FhdfSO
だが今それはおいておく
少し慣れてもらうために説明に専念しよう
未知に遭遇する度に騒がれては面倒だ

「この街は機械だらけだよ、そう…」

「……!」

とだけ言って黙り込んでしまったステイル
そんな彼に怪訝そうに訪ねるインデックス

「どうしたの?」

「…あ、いや」


一つ、疑問が残っていた
確か、始めから感じていたのに、色々あって有耶無耶になっていたこと


99:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/28(月) 23:12:08.26 ID:hl1FhdfSO
この街は容易く入れない

街は高さ五メートル、厚さ三メートルの壁に囲まれ
IDを確認されるゲートや
宇宙にあげられたいくつもの監視衛星の目も光っている
奇跡的に入れたとしても不法侵入として風紀委員や警備員の歓迎が待っている


雷などが落ち、機能が一時的に死んでいた、などというならまだしも
ここ一週間そんなことはなかった
だとすると


インデックスは、どうやって学園都市に入った?


100:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/28(月) 23:12:55.92 ID:hl1FhdfSO
「ステイル?」

「…いや」

後から訊こう
外では誰かに聞かれる可能性がある


インデックスが落とした荷物を拾う
それに彼女はハッするがもう持たせない
白い手が真赤ではないか


七月十七日 終


113:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/30(水) 23:24:22.04 ID:tRLa7rLSO
七月十八日

午後三時ごろ

一つの疑問
インデックスはどうやって学園都市に入ったか

答えは彼女の口からあっさり帰ってきた


「一度は止められたけど、すこし待ってたら『通っていい』っていわれた」

ID確認をされ、登録されていたので許可がおりた、ということ

つまり
インデックスは学園都市から受けいれられている?
または

(魔術師が手配したのか?いやありえない、意図がみえない)

とにかく気は抜けない
そう気を張り詰めるステイルだが


114:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/30(水) 23:24:49.53 ID:tRLa7rLSO
「はあー、この人きれいなんだよー」

テレビにみとれている純白のシスター、インデックス
彼女が今見ているのは女優の日常生活で着ているファッションを明かす、という番組

女優らしく、分かる人には分かるような素晴らしい着こなしをみせている

「…………いいなあ」

それを見ていたインデックスの口からボソッと漏れる声

「……」

彼女も女の子
『歩く教会』というデリケートな問題も忘れてしまい、羨ましがっている

かつてステイルは着替えを提案したが、すぐに却下された
だがそれは目をごまかす為のものであって
『おしゃれ』のためではなかった


115:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/30(水) 23:26:18.20 ID:tRLa7rLSO
やはり違うものなのだろう
ソレはソレ、コレはコレというヤツである

「……」

かといって今、外出は危険と判断したばかり
負ける気はしないが、危険が及ぶのは好ましくない

「……」

ステイルは無言でクローゼットを開ける
そこには同じ黒のTシャツ、ジャージなど
とても彼女が満足できるものはなかった

(さてどうしたものかね…)

我慢させるという選択肢はなかった
彼女の境遇を考えると我慢させたくない、と心から思う

「かわいいなぁ、あんな柔らかそうなスカートはいてみたいんだよ」

「……インデックス」


116:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/30(水) 23:27:02.08 ID:tRLa7rLSO
「なに?」

まるい緑色の瞳を向けてくる

「服がほしいならでかけよう」

「え!?」

すこし焦るインデックス
無意識に声を出していたのかもしれない
しかしその顔には期待も僅かに含まれていた

「何回も言わせないでくれるかな」

魔術師がきたら、焼き尽くす

「わかった!」

こうしてこの日も無駄な外出を行なう


117:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/30(水) 23:28:09.67 ID:tRLa7rLSO
「でも本当にいいの?今は着れないし」

「…全て」


全て終わってから着ればいい


「…そうだね」


118:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/30(水) 23:28:56.53 ID:tRLa7rLSO
午後四時


第七学区にある衣服店、セブンスミスト

そこにステイルとインデックスはやってきた

様々な服がおいてある

「うわあー、いっぱい」

スーパーに連れていった時と同じ反応をする

「どれがいいかな?ねぇステイル」

「……僕は見ての通り、そういうのは分からないんでね」

「うーん、じゃまずあそこに行こう」

話が繋がっていない
よほど興奮しているのだろう

「はやくー」

「わかったよ」

と、超能力者はシスターに引っぱられていく


119:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/30(水) 23:30:53.19 ID:tRLa7rLSO
そんなやり取りが行われているこの店には、もう一人の超能力者がいた

茶髪で名門校『常盤台中学』の制服を着た女子、御坂美琴
そして『超電磁砲』の異名をもつ超能力者の第三位

彼女は一つのもの心奪われている
かわいい花柄の絵がプリントされたカラフルなパジャマだ

「コレ、かわ…」

「アハハ、こんな子供っぽいの着る人、今時いないっしょ」

「小学生まではこういうの着てましたけどね」

と、彼女の趣味を全否定するような会話をする同じく中学生の二人

セーラー服を着て、大きなマスクを着用している
黒い髪のショートで、その頭に花飾りをしているという個性をもつ初春飾利

もう一人は同じセーラーを着ているが、対照的なロングの髪型をした佐天涙子


120:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/30(水) 23:31:31.34 ID:tRLa7rLSO
「……」

二人は美琴がこのパジャマにお熱ということに気付いていない
よって悪気はない

「あ、あたし達水着も見ておこうと思うんですけどいいですか」

「あ、うん」

「ええと…水着コーナーはあっちですね」

一人取り残された美琴
逆にチャンスだ

(一瞬合わせるだけ!大丈夫!)

足早に目的の場所へ向かう

(誰も見てない!)

辿り着き、手をのばす



「あれなんかどうだい?」


(が……)

声がした
つまり、誰かに見られた


121:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/30(水) 23:32:51.64 ID:tRLa7rLSO
(……しまっ)

固まる美琴
その原因は同じ場にいる二人の人間

赤い髪で黒いオーバーをきた大柄な男と
それをひきつれる純白のシスター

男の方は言う

「あれはどうだい?君に似合うかわいらしいパジャマじゃないか?」

「えー?」

その提案にシスターの方は不満げだ

「ステイルは私を幼く見すぎかも、いくらなんでもあんな子供っぽいのはいらないんだよ」

(……)

また否定された


122:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/30(水) 23:34:26.27 ID:tRLa7rLSO
ステイルは先程からこんな感じにダメだしされていた

どうやら自分が思うより、ファッションは
そして女の子の心というのは複雑なようだ

(……似合うと思うのだが)

気に入らないなら仕方がない
未練がましく再びパジャマを見ると

そこには、もう言葉も出ない落胆した少女がいた

(……あれは)

常盤台の制服
そしてショートの茶髪

その人物をステイルは知っていた


(第三位の『超電磁砲』…?)


123:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/30(水) 23:37:41.24 ID:tRLa7rLSO
これは珍しい人物と遭遇した
ステイルにとって他の『超能力者』と遭遇するのは初めてだった

「……?」

見つめていると、視線を感じたのか、彼女の方もこちらを見た

「っと…」

気まずくなったので、すぐ顔を逸す
それで終わりと思ったのだが

「なに?ステイルはあんな、お子様パジャマが好きな短髪が好みなの?」

「え?」

同じくステイルが見つめていたのを感じたインデックスが繋げてしまった


124:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/30(水) 23:38:34.77 ID:tRLa7rLSO
「なぁっ!?」

その物言いに、美琴も初対面にも関わらず大声をあげた

「ちょ…なにが…」

「ああ、すまない、悪かった無礼をわびるよ」

面倒な展開になりそうなので、ステイルは早く纏めようとする

「インデックス失礼だよ、『彼女にとっては』あのパジャマは良いものなんだ」

そういうことじゃないかも!と叫ぶインデックス
そして

「…?」

どいつもこいつも
と言いたげな表情で俯く美琴

「すまない、配慮が足らなかった」

「ゴメンね、短髪」

全く反省がない謝罪(ステイルはこれでも心をこめている)

「……あん、たら」

「なにしているんですかー」


125:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/30(水) 23:39:40.80 ID:tRLa7rLSO
限界を超える前に、初春と佐天が割り込んできた

「随分張り詰めた空気ですが…」

そして佐天はおそるおそる話しかける

「……あ、いや、なんでも」

「短髪の趣味につっこんでいたんだよ」

「ちょ、言うな!」

(ああ、もうやはり面倒なことに)

溜め息をつくステイルを傍らに、インデックスはまだ喧嘩ごし
その様子から初春は怪訝そうな顔で

「……御坂さん、お知り合いで?」

「いや、知らないよ…」

ステイルは尋ねた少女に腕章を捉えた


(あの花の子は風紀委員…!)


126:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/30(水) 23:40:40.86 ID:tRLa7rLSO
まずい
インデックスは外部の人間だ
IDは登録されているらしいが

インデックスを見る、まだ相変わらずの態度
今の件で取り調べなどに発展したらマズいこともあるだろう

「いこう、インデックス」

「え、ちょ…」

強引に手をひき連れていく

(早く服を買って帰ろう)

三人はその様子に何も言えず追って来なかった

とりあえず面倒ごとは終息


127:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/30(水) 23:41:45.26 ID:tRLa7rLSO
「なんだったんでしょう…」

「さあ…」

二人は怒濤の嵐に呆けるしかなかった
ちなみにもう一人は

(……馬鹿にされて、さらに馬鹿にされて逃げられた)

火花が散るのを押さえながら

「ごめん、二人とも」

「?」

美琴は離れていく


128:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/30(水) 23:42:38.21 ID:tRLa7rLSO
手洗い場で
美琴はすることをすませて、手を洗っていた

「なんなのよ、もう」

馬鹿にされ、なにも言い返せないまま終わった
色々溜まるものも溜まる

「はあ…」

手洗い場を出て、待たせている初春と佐天のもとへ帰る
ムカムカしながら歩いていると

(…ゲコ太!?)

美琴の目に、お気に入りのキャラクター『ゲコ太』の人形が入ってきた…
と思ったが

(違う、か…)

人形は、持ち主の少年と共に去っていった


129:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/30(水) 23:44:04.08 ID:tRLa7rLSO
御坂美琴を苛立たせた本人達は、まだ中を巡っている

「んー、コレかなあ」

「それでいいのかい」

「ステイルはどう思う?」

「…………」

インデックスが選んだのは、クールな大人の女性が着るような一式だ
本当はもっと可愛らしい服の方が合うはず
そう思う

「……いいんじゃないかい?色んなものを着て自分にあうものを探していけば」

「うー、そうだねー」

ステイルも疎いから、よく分からない
これから勉強せねばと思う

「じゃレジに持っていこう」

「うん」

そしてレジに向かおうとすると…


130:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/30(水) 23:44:46.42 ID:tRLa7rLSO
『本日は当店にご来店いただき誠にありがとうございました』

「ひぇっ?声が響いて…」

「……?」

アナウンスがなる

『ただいま当店にて、爆発物が観測されました』

「なに…?」

『大変申し訳ありませんが、速やかに避難してください』


131:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/30(水) 23:47:47.74 ID:tRLa7rLSO
「うそ」

「……」

買いにいこうとした途端これ
タイミングが悪すぎるハプニングにショックを隠せない

「しょうがない…今は避難しよう」

「……うん」

渋々避難をはじめる

「……あ!」

「なんだい?」

叫んだインデックスが見つけたのは
カエルの人形をもった小さな女の子


132:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/30(水) 23:48:34.23 ID:tRLa7rLSO
「あの女の子…一人で大丈夫なのかな」

「一応、避難口へ向かっているし大丈夫じゃないかな」

だがやはり心配そうなインデックス

「ステイル…」

「分かったよ、連れていこう」

その答えにインデックスは頷く

ステイルは近付いていき女の子に話しかける

「君」

「……?ひっ、な、なに?」

女の子は赤髪で長身の彼に驚く
よって怯えさせないための処置をインデックスがとる

「ねぇ、さっきの声をきいたよね、だから一緒に避難しよ?」

「うん…でも」

女の子はぎゅっ、と抱えている人形を掴み言う

「でもこの人形を風紀委員のお姉ちゃんにわたさなきゃ」


133:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/30(水) 23:49:44.90 ID:tRLa7rLSO
「よしっ、全員避難を終えたわね」

ガランとした入口前で御坂美琴は呟く

「はいっ」

初春は、この店に重力子の加速が観測されたことを
つまり最近多発している虚空爆破事件が起こる前兆を捉えたと、同僚の白井黒子から知らされ
速やかに避難誘導を開始した
美琴はそれを手伝ったというわけだ

『初春!聞きなさい!!』

報告からつなぎっ放しだった携帯から白井の緊迫した声が響く

『今すぐそこを離れなさい!!』

『過去八件の虚空爆破事件の全てで風紀委員が負傷してますの』

「え…?」

初春は耳を傾ける

「つまり…」

『真の狙いは…風紀委員!今回はあなたですのよ初春っ!!』

「おねーちゃーん」

「!」

肝を冷やしている初春の前に
カエルの人形を持った女の子が現れた


134:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/30(水) 23:53:11.38 ID:tRLa7rLSO
探すフリをし、女の子を避難させていた二人
女の子の声にインデックスは察する

「いたの?」

「うん、あのおねーちゃん」

‐‐‐‐‐‐
初春は

「あの女の子は…」

何故か共にいる、あのシスターと赤髪の二人に絡まれた後に会った顔見知り

「な、なんですか?早く避難を…」

一緒にいる二人にもそう促す

「メガネかけたおにーちゃんがおねーちゃんに渡してって」


その瞬間、カエルの人形の中に仕込まれたスプーンが


「ッ!」

初春はとっさに人形をはねのけ、女の子を庇う

「逃げてください、あれが爆弾です!」


135:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/30(水) 23:55:11.55 ID:tRLa7rLSO
「!」

その場にいる皆が驚く

初春はそこまでが精一杯だった
俯き庇いながら、叫ぶ

「逃げてください!」


「あれが…!」

インデックスは前に出て自らの『歩く教会』で初春達を守ろうとする


同じく近くにいた美琴も
(アイツなにやってんの!)

(……ッ!レールガンで爆弾ごと吹き飛ばす!)

だが

レールガンを撃つために必要なコインを落としてしまう

(しまった!!)


そして


136:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/30(水) 23:56:15.43 ID:tRLa7rLSO
残る一人
ステイル=マグヌスは

「……」

懐から素早く、とあるケースをとりだす


『体晶』という、能力を暴走させる粉末を


それを舐め、庇うインデックスより前に出る

「ステイル!?」

「君を守る、と言っただろう」

そしてステイルの能力が暴走し


摂氏三○○○度もの炎の塊が皆を庇うように現れた


137:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/30(水) 23:57:43.15 ID:tRLa7rLSO
「初春、無事だったようですわね」

風紀委員、白井黒子は事件現場に到着し、同僚の無事に安堵する

そこには、御坂美琴も女の子も、避難していた佐天涙子もいた

「はい、御坂さんのおかげです」

「トキワダイのおねーちゃんが助けてくれたの」

みんな無事だ

「さすが御坂さんですね、犯人も捕まえましたし!」

詳しい状況は知らないが佐天も会話に入る
彼女も美琴の力を知っているから、なんとなく理解できるのだろう

「違う」

「え?」

そんな第三位の呟き

「実際に助けたのは…」


138:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/30(水) 23:59:50.16 ID:tRLa7rLSO
「しばらくあそこは使えないね」

「むー、それはいいけど」

あの爆破はステイルの能力により防がれていた

そしてインデックスはステイルの「能力から」初春たちを守った

「その修道服、僕の熱すらカットできるんだね」

「ふふーん、まあね」


(あの子の防御以下では意味がない…)

魔術師が来るまでもっと強くならねば

決意とともにステイルはインデックスと別の洋服店へ行く


七月十八日 終


102:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/28(月) 23:22:30.55 ID:7ev4dftXo
そういやルーンやらは必要ない感じなのか?


139:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/31(木) 00:04:13.11 ID:gpHZ23+SO
>>102
本当はルーン的な何かを出したかったんですが私ね力量では無理でした


146:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/31(木) 22:11:30.40 ID:gpHZ23+SO
七月二十日

夏休み 初日


―――始まる


「統括理事会から許可はおりましたよ」


147:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/31(木) 22:12:05.78 ID:gpHZ23+SO
黒髪でポニーテールにまとめた髪型
ジーンズに白い半袖のTシャツで
腰に二メートル以上もある日本刀をさげた女性は伝える

「そうか」

一人の、十六歳ぐらいの少年に

「じゃあ行くぞ神裂、インデックスを連れ戻す」

とだけ言い、少年は歩き出す

「はい」

神裂と呼ばれた女性は同意し、少年の後ろをいく

ツンツンした髪で、普通の白い無地のTシャツにジーパンの姿をした


『幻想殺し』の後ろを


148:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/31(木) 22:12:54.39 ID:gpHZ23+SO
真夏の夕焼けの下
ステイルは一人で買い出しに出ていた
インデックスはおいてきた、一人でも大丈夫と断言されたから
だがやはり心配だからさっさと帰るとする


三日前にあれだけ買いこんだ食料はもうなくなってしまった

(……すこしは我慢させるべきか?)

インデックスは朝、十時のおやつ、昼、三時のおやつ、晩、と食べる
しかも毎回恐ろしいくらいの量を

「……そうだな、せめてオヤツの時間を一個減らそう…」

さすがにこれだけのペースでなくなるのは困る
度々この状況をつくるのはよろしくない

だから食事削減計画を練る
朝を軽めにしようか、などとブツブツいっていると

見知った少女二人を捉えた


150:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/31(木) 22:13:22.49 ID:gpHZ23+SO
(あの子達は…)

ステイルは自分の記憶を探る
一人は常盤台中学の制服を来た茶髪の少女
記憶に強く残っている超能力者の第三位『超電磁砲』

もう片方はおぼろげだが、あの黒髪でロング
確か第三位と共にいた少女だったはず

「じゃあね」

「はい」

二人は別れた

第三位はステイルの反対側に行き、ロングの子は動かないでいたが

「…?」

少女は近くにいたステイルに気付いた


151:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/31(木) 22:13:54.46 ID:gpHZ23+SO
「…」

何も言わず去ろうとしたステイルだが

「あなたは…」

あちらが語りかけてきた
そんな少女は、沈んだ表情をしている

「……確かセブンスミストにシスターの子といた方ですよね」

こんな容姿だから鮮明に覚えていたのかもしれないと適当に思った

「そうだが…」

「ああ、あたし佐天涙子っていいます」

頭を手をのせ、佐天という少女は自己紹介してきた


152:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/31(木) 22:15:36.67 ID:gpHZ23+SO
だから一応こちらも

「…ステイル=マグヌス、で、なにか用でも?」

「あ、いや…爆破からみんなを守ったっていう…ので」

「……うん、それが?」
佐天が言いたいのはそこではないのは分かる
急いでいる、さっさと本題に入ってもらうため口調で示す
佐天もそれに応え

「……高いレベルの能力者なんですか…?」

本題の質問をした


153:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/31(木) 22:16:07.43 ID:gpHZ23+SO
意図のみえない質問にステイルは

「……それがなんだい?サインでも欲しいのかな」

「……ッ」

その言葉に佐天は唇を軽く噛んで、険しい表情になる

「…?」

「いや…」

時間をかけ、ようやく辛そうに言葉を絞りだした

「……あなたも能力のレベルなんて人間にとって関係ない、と思いますか」


「……」

やっと、何が言いたいのか理解できた


つまり、能力(つよさ)は必要か否か、ということか


154:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/31(木) 22:17:04.32 ID:gpHZ23+SO
少女は能力について悩んでいるのだろう
大方、そんな時に第三位から慰めを受けたのだ
この少女にとって鋭い凶器の慰めを

だとしたら、そんな彼女に言うことは一つ

「関係あると思うよ」

「! どうして…?」

尋ねてきた
それに対してステイルは無表情で言う

「……落ち着くんだ、それは『僕』にとっての話…」

「……?」

「全く同じ人間などいない、だから君の質問の答えは…」

理解した佐天は、ステイルの言葉の先をいう


「……無い」


155:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/31(木) 22:18:00.50 ID:gpHZ23+SO
「そうだよ」

ステイルは遠ざかっていく

「あ…」

それに佐天は焦るが、止められることなくステイルは立ち止まった

そして、少女の方を見ずに

「君にとっての答えは、君が見つけだすんだ」

「……」

アドバイスをおくる
佐天からの答えは、なかった


156:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/31(木) 22:18:48.88 ID:gpHZ23+SO
「……フゥ」

そんな沈黙にステイルは溜め息をついた
そしてオーバーコートの懐からメモの一ページを取り出し、落とした

「……!?」

自分に対してのモノと捉えた佐天はそれを拾って、書かれた内容を見る

「……電話番号とメアド?」

詳しい説明を求めるため、佐天は周りを見回すが
すでにステイルの姿はなかった


157:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/31(木) 22:19:29.26 ID:gpHZ23+SO
無駄な時間をくってしまった
ステイルは早歩きで学生寮に帰る

(……あんな赤の他人に何を)

答えは分かっている
同じ『チカラ』を求める人間に共感したから、ほっとけない気分になったから

だからといって
自分は会って間もない他人に助け舟を流すようなお人好しだっただろうか

違った
むしろ真逆の薄情な人間だったはずだ

つまり、変わったのだ

インデックスとの出会いから


158:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/31(木) 22:22:58.56 ID:gpHZ23+SO
「っ!」

パンッ!と頬を叩く
ステイルはそれを悪い傾向とする

フラフラしている場合か

困っている百人を全員助けようとし、大切な一人を助けられないなんて展開は愚の骨頂だ
気を引きしめなおす

(あの少女はどうでもいい、インデックスさえ良ければいい)

あの子の安全のために他九十九人を見捨てろ

そうまでして確実に守りたい
よってその誓いに無理の色はない

あの笑顔を守る、という誓いがチカラに悩む少女への感情をかき消した

「早く帰ろう」


159:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/31(木) 22:24:16.25 ID:gpHZ23+SO
インデックスは部屋でテレビを見ながら、ステイルの帰りを待っていた

「遅いなあステイル」

ステイルはまだ帰って来ない
彼はインデックスのお留守番をよく思っておらず、早く帰るように言っていた

(ステイルは過保護かも、私だってなにもできないわけじゃないんだよ)

自らの逃走能力、歩く教会という防護服、十万三○○○冊の知識

これらが揃えば、並の魔術師複数が相手でも逃げ切れるだろう

本来ならステイルの護衛はいらない
しかし

(あんなに真剣になってくれているんだよ…)

人に話したら自惚れと言われるかもしれないが
自分のために、あそこまでしてくれることがインデックスは嬉しい

今までそのように「純粋に」気遣ってくれる人はいなかったのだから

「早く帰ってこないかなー」

窓から外を覗き、ステイルをさがす


160:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/31(木) 22:26:24.45 ID:gpHZ23+SO
学園都市の外周部
都市を囲む壁の前に立つ二人組がいた
しかしゲート前ではなく、入口も無いただの壁の前

「ここです」

そこにいる、黒髪のポニーテールで腰に二メートル以上の日本刀を下げる神裂は

「許可はとってあるんだろ?」

そう質問した相方を抱え、足に力をこめて屈む
そして

「上同士の密約みたいなものですから」


高さ五メートルもの壁を飛び越えながら、涼しい顔で答える

そして内側に辿り着く
着地時に足元から凄い音がしたが、まるで平気なようだ

「……では、探索術式を発動させますので…」

「わかった」

相方の少年は少し距離をとる


161:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/31(木) 22:27:03.24 ID:gpHZ23+SO
そして


「待ってろインデックス、すぐに誤解をといてやる」


そう、呟いた


162:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/03/31(木) 22:31:07.34 ID:gpHZ23+SO
ステイルを幻想御手編に参加させるために佐天さんに関わらせました

美琴や黒子は知り合いでも戦闘に呼ばないと思うし、初春は籠っていてステイルに会いそうにない

だから佐天さんでした

そしてインデックスへの思いを強めるために一瞬傾かせたんですが
キャラ違うでしょうかね
でしたらすいません

ではまた
ありがとうございました


164:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/31(木) 22:53:33.59 ID:fdbQ6ASIO
さりげなく携帯番号渡すステイルマジかっけーw
そしてやはり上条さんは魔術側だったか
主人公補正をなくした上条さんは果たしてただのかませに成り下がってしまうのかどうか…


167:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/31(木) 23:26:28.48 ID:+NGBerIIO
ステイルさんがちゃんと14歳してる……


168:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/02(土) 21:12:30.67 ID:XtTJSabSO
インデックス「!」

ステイルの部屋にいたインデックスは感じ取った

インデックス「探索術式…」

魔力の流れを察知できる彼女は、それが自分を
正確には自分の『歩く教会』に狙いを定めたものと理解する

インデックス「まずいかも…」

早く逃げねば
しかし

インデックス(ステイルが心配しちゃう…)

彼女はどうしていいか分からなかった


169:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/02(土) 21:13:43.56 ID:XtTJSabSO
神裂「見つけましたよ」

「どこらへんなんだ?」

神裂の言葉に『幻想殺し』の少年は反応する
それに対して神裂は反応があった方角を指でさす

神裂「……あちらですね」

「……よし、いくぞ!!」

と、少年は張りきる

神裂「しかし…」

そんな気合に同調せず、神裂は一つの懸念を口にする

神裂「もしもインデックスが…」

「…だから言ってんじゃねえか」

即答
もう言うのが面倒といいたげな口調で

「だとしたらソイツと一緒にインデックスを助けるまでだ」

神裂「……分かりました、では改めて…」

覚悟をきめ

神裂「行きましょう、上条当麻」

上条「ああ」


そして二人はインデックスのいる場所へ


170:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/02(土) 21:14:38.44 ID:XtTJSabSO
「!」

「……悪い」

「……」


171:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/02(土) 21:16:46.73 ID:XtTJSabSO
ステイルは既に自分の学生寮の前まで来ていた
そして今、階段をかけあがっている

ステイル「……はァッ、ハァ…ッ!」

何か嫌な予感がする
だから息苦しいことも忘れ、ただ走る

そして自分の部屋がある

七階

ステイル「……ハァ」

ステイル「……!」

自分の部屋の入口のドアが倒れている
無理やり開けられた痕

かつてのスキルアウトの報復という線もあったが、そうとは思えなかった

ステイル「……」

カツカツと音をたて、ステイルは向かった


172:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/02(土) 21:18:15.33 ID:XtTJSabSO
中には三人いた
一人が奥に追い詰められ、座り込んでおり
その前を二人が立ち塞がるように、横に並んでいる

ステイルの手前にいる二人は知らない人物

ポニーテールで白いTシャツ、左足を太股まで切ったジーンズ姿の女性

同じく無色無地の服で、ツンツンした髪の少年


そして奥にいる一人
知っている人物だが、いつもとは違う

顔は焦躁にかられ、涙を目にためていて、放心状態にみえる
そしてなにより絶対の防御を誇るという『歩く教会』を破壊され、一糸纏わぬ姿にされていた

ステイル「インデックス…」


173:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/02(土) 21:21:14.19 ID:XtTJSabSO
神裂「……貴方の部屋でしたか」

ステイルに気付いた女性は声をかけてきた
そして少年の方も

上条「ドアは悪い、修繕費はこっちが出すから許してくれ」

ステイルは聞いていない
インデックスの方を見て、顔を青くしている

やはりこうなった
あの能力にコンプレックスをもつ少女に気をとられていたから

ステイル「……」

ギリ、と歯をくいしばる
今、自分の無能が許せない
敵前でなければ自分を気絶するまで殴っていた

その様子に気付いた少年の方は

上条「別に変な事をしようとしていたわけじゃないぞ」

神裂「……」

上条「インデックスは優れた逃走のための能力や要素をいくつか持っている」


174:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/02(土) 21:22:40.02 ID:XtTJSabSO
ツンツン頭の少年は流れるように説明している

上条「絶対“連れ戻す”ためには、その要素を潰さなければな」

上条「一番安全的な対処がコレということだ」


尚更何も言えなくなった
怒りから相変わらずインデックスを見続ける
すると放心状態だったインデックスもステイルを見た


175:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/02(土) 21:23:55.95 ID:XtTJSabSO
インデックスは何も言わなかった
ただ顔を安堵した表情に変えるだけ

だからステイルも何も言わず


考えず


本気の炎を、横に並ぶ謎の二人に叩きこんだ

その火力はかつてのスキルアウトに放ったもの比ではない
炎の通った床が焦げ、チョコレートのようにとけた
爆発のように音が吠える

インデックスには危害が及ばないよう調節した

だから安心して二人が消し炭になるのを待つ


はずだった


176:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/02(土) 21:26:37.02 ID:XtTJSabSO
ステイル「……なに…っ!」

上条「……ふぅーっ」

炎は途中で消失
よって相手は無傷


上条「学園都市の超能力ってのは俺みたいな原石の人工版と聞いてはいたが、ビビるのはビビる」

ステイル(……馬鹿なッ…!)

おかしい
二人は焼かれるどころか、衣服が焦げた様子もない
加えて二人のまわりだけ床も綺麗なまま

上条「大丈夫か、神裂」

神裂「ええ、貴方が纏めて打ち消してくれましたから」

上条「平行にやってきたから横殴りで二つ共消せたけどな…次は分からないから構えとけよ」


178:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/02(土) 21:35:49.12 ID:XtTJSabSO
あの男が打ち消した…?
この学園都市第六位の攻撃を?

ステイル(……そうか!)

信じがたいが、インデックスの姿を見て納得する
摂氏三〇〇〇度の熱すら防ぐ『歩く教会』が破壊されている

ステイル(……それほどの武器が向こうにはあるってことかい?)

ステイル(コレが魔術師、か)


ステイルは相手の実力を認め、見据える


上条「……」

相手の一人は僅かに腰を落とし、右手を構えている
攻撃にいつでも対応できる体勢だ

一方、女性の方は下げている日本刀に触れもせず、棒立ち

ステイル「上等じゃないか」

ステイルは『体晶』の入ったケースをとりだす

ステイル「寒いだろうが少し待っていてくれインデックス…」


本気で、焼きつくす


186:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/03(日) 22:55:37.49 ID:8SmPQ2BSO
ステイルは臨戦態勢にはいる

…………が、

それに反して相手の方は呆けている


神裂「……!」

上条「……やっぱりお前は…」

少年は呟いた
日本刀の女も閉ざしていた目を開き、こちらを真剣にみる

上条「……」

神裂「……」

ステイル「……?」

いつまでたっても動かない相手には付き合わない
炭にするため『体晶』を舐めようと


上条「待ってくれ!」

と、構えていた方の少年は叫ぶ


187:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/03(日) 22:56:35.54 ID:8SmPQ2BSO
本気になった所に水をさすような言葉に、ステイルは目を細める

ステイル「……おじけづいたのかい?だったら手足おいて帰るがいい」

これが最大の譲歩
この魔術師達はただではおかないと決めている

意見を受け入れたワケではないが、あの悲惨な姿のインデックスを第一に考えたかった

上条「違う、聞いてくれ」

少年はインデックスの方も見て

上条「インデックス、お前も」

インデックス「……」

インデックスは大切な所を隠しながら、睨むがとりあえず従う


188:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/03(日) 22:57:04.24 ID:8SmPQ2BSO
だからステイルも同じく聞くことにする、無論警戒は解かないが

上条「……まず、お前はインデックスの味方なんだな?」

それはステイルに向けられた言葉

ステイル「もちろん、君達と違いね」

当たり前だ
正義ぶるわけではないが
インデックスという少女を追い回す、そんな連中と同類なわけがない

そう答えを返すと、質問してきた少年ではなく

神裂「私達だって…ッ!!」

今まで黙っていた方の敵の方が吠えた


189:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/03(日) 22:57:57.88 ID:8SmPQ2BSO
ステイル「……」

インデックス「……」

咆哮にステイルとインデックスは驚き硬直した
けおとされた、というよりは意外な反応だったから驚愕したのだ

上条「神裂…」

神裂「……すいません」

神裂は顔を逸し、謝罪する

神裂「貴方はともかく…私が憤る権利はありませんね」




ステイル「……ちょっと待つんだ」

分からない
先程からの言動に何か違和感を感じる
思い描いていた敵と噛みあわない


ステイル「君達は、なにを言っているんだ?」


190:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/03(日) 22:58:27.74 ID:8SmPQ2BSO


上条「……………………………………………………………………」


191:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/03(日) 22:59:03.28 ID:8SmPQ2BSO
長い沈黙が居座る

それが上条の口が開かれることで破られる

上条「お前も、インデックスも勘違いしている」

ステイル「なに?」

上条「……でも仕方がない…俺のミスが招いたことだからな…」


ステイルはインデックスの方を見る
インデックスもその言葉を理解できないようだ

いや

信じようとしていない……?


上条「大方、俺達を十〇万三〇〇〇冊を狙う魔術師と思っているだろ」

ステイル「そうなんだろう」


少年は、ステイルの言葉に答えるようには返さなかった


192:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/03(日) 22:59:30.03 ID:8SmPQ2BSO
上条「だからそれは俺のミスが招いた、インデックスの勘違いだ」

少年に次ぐように神裂という女性も語る

神裂「私も上条当麻も、インデックスの…」



神裂「大切な親友、なんですよ」

ステイル「」


193:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/03(日) 23:02:20.62 ID:8SmPQ2BSO
===========
上条『うわっ!なんだ?』

==========
インデックス『おなかへった』

=========
上条『それが本っっっ当に異能の力だってんなら、俺の右手が触れただけで木っ端微塵って訳だな?』

========
インデックス『私といっしょに地獄の底までついてきてくれる?』

=======
上条『……地獄の底から引きずり上げてやる』

======
インデックス『……でも』

====
上条『人を勝手に値踏みしてんじゃねーぞ』

===
==



194:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/03(日) 23:03:13.06 ID:8SmPQ2BSO
===========
上条『お前が、魔術結社とかいう連中なんだな…』

==========
神裂『魔法名を名乗る前に彼女を保護したいのですが』

=========
上条『インデックスの歩く教会から…『魔術』も『異能』だと思ったのに……っ』

========
神裂『彼女は私の同僚にして―――親友なんですよ』

=======
上条『守りたいモノがあるから、力を手に入れたんだろうが!』

===
==



195:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/03(日) 23:03:40.19 ID:8SmPQ2BSO
===========
上条『終わったんだよ……もう終わっちまったんだ』


==========
上条『ゴメン、俺、強くなるから…』

=========
上条『今度は絶対、完璧に助け出してみせるから』

========
インデックス『分かった、待ってる』

======
上条『頭痛が治ったらこんなヤツらやっつけて自由になろう』

===
==



196:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/03(日) 23:05:39.42 ID:8SmPQ2BSO
ステイル「……」

上条「……」

神裂「……」

インデックス「……知っているよ、前にも聞いたから」

インデックスだけが口をひらいた
その状況にステイルはもうなにがなんだか分からなくなる

魔術師達の法螺という線も、インデックスの言葉で消えた

しかしその迷いを、インデックス自身がはらってくれた

インデックス「それにその話が嘘ってことも知っている」

それに対し上条は弁解しようとしたが、インデックスがそうさせなかった

インデックス「信じていたのに…」

彼女は更に睨みかえしていた


197:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/03(日) 23:07:41.66 ID:8SmPQ2BSO
ステイル「……」

話に割り込めない
全く理解が追い付かない状況にステイルはただ立ち尽くすだけだった

何も考えずインデックスを害す者を焼き尽くせばいい

自分はインデックスだけの味方


自分にそう言いきかすのに、体が動かなかった


上条「……とりあえず、お前に続きを話す」

再び語りだす
ステイルはもうインデックスのためではなく、自分のためにきいた

何かあると感じてならなかったから


198:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/03(日) 23:10:35.06 ID:8SmPQ2BSO
ちょうど

一年ぐらい前

日本


学園都市に当てはまらない東京
そのどこかにある安いアパート
そこに住む、とある少年、上条当麻は自分の部屋の外にいた
部屋の扉の前にただ立ち尽くしていた

上条『……!?』

目の前の扉が開く
それに上条は反応する

上条『……神裂!』

出てきたのは上条の待つ人物ではなかったが、声をかけるに値するには十分な人物だった

上条『……インデックスは』

神裂『……本当に何も覚えてはいませんよ』

上条『いいっ!会わせてくれ!!』

上条は神裂を押しのけて、部屋の中に入る


199:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/03(日) 23:11:15.60 ID:8SmPQ2BSO
中には女の子がいた
かつて主人公だった上条のことも覚えていない、悲劇のヒロインが

インデックス『……』

上条『インデックス!』

そんなの構わない
上条は思わず少女の名前を叫んでいた

インデックス『貴方も…?』

魔術結社の人間なのか?と

上条『違う…俺はただの少年だ』

上条『お前の記憶が消える前にお前の…』

正直に答える

上条『友達だったんだ』

インデックス『ほんとう……?』


200:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/03(日) 23:11:42.29 ID:8SmPQ2BSO
全て話した
自分は右手に変な能力を持つ以外はただの少年
不相応な夢を目指すべく東京の高校に通うため、親元を離れ安いアパートに住んでいたら
インデックスがベランダにひっかかっていたこと

そこで魔術師に追われているということで力を貸したこと

神裂という追手がやってきて闘ったが、初戦から惨敗だったこと

だがその追手は実はインデックスの親友で色々事情があったこと

インデックスは魔道書を一字一句記憶しているため脳の八五%も埋め尽くされ
一年ごとに記憶を消去しないと命の危険に関わること

そして他の助ける方法も見つからず


先程、記憶を消去したこと


201:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/03(日) 23:12:08.15 ID:8SmPQ2BSO
インデックス『……』

上条『……信じられないかもしれないが、本当なんだ』

インデックス『……ごめんなさい』

上条の説明にインデックスは不審に思うのではなく
辛そうな顔をして謝った

上条『……!』

インデックス『なにも思い出せないの、本当ならごめんなさい…貴方達がこんなに…』

本当なら信じないだろう
証拠も根拠もない
しかしこの少女は自分が覚えていないことを、謝罪した
同じく辛そうに話す上条のために


上条『いいんだ!』


202:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/03(日) 23:14:28.24 ID:8SmPQ2BSO
叫んだ
記憶が消される前、培った信頼関係の欠片も残っていなかったのも無視し

上条『何も覚えてなくていいんだよ…ったく人を勝手に値踏みする癖は相変わらずだな』

インデックス『……?』
無表情にきくインデックスに上条は正面から本心を

上条『……俺が弱かったのが悪いんだ』

拳に力をこめ、まっすぐインデックスを見据えて

上条『また、思い出をつくればいいだけなんだからいいんだ!』


言う


203:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/03(日) 23:16:08.25 ID:8SmPQ2BSO
インデックス『……ほんとう?』

上条『ああ』

その言葉にインデックスは僅かに笑う
やはり不安や戸惑いがあったのだろう
目が覚めたら記憶が無く、突然たくさんの身に覚えのないことを言われる

上条『だから一緒にいよう…』

インデックス『…………うん』


上条は今度こそ救うと誓う

二度とそんな想いをさせないために


204:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/03(日) 23:17:10.76 ID:8SmPQ2BSO
外にいた神裂はその光景を見ていた
彼女は何を思っていたのだろう

インデックスという少女か
上条当麻という少年か


それとも


神裂『……?』

すると、神裂の前に紙飛行機が飛んできた
そして足元におちた紙を手にとり、開く

神裂『……これは…!』


205:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/03(日) 23:18:03.27 ID:8SmPQ2BSO
上条『げ、何もねーじゃん』

冷蔵庫を漁ると何もない
上条(そういえば神裂にやられて、三日ぐらい寝てたっけ…)

それ以前に貧乏で何もなかった気がするが

上条『悪い、何も無いから買いに行かなきゃな』

インデックス『……だったら私も……、っ!』

インデックスはふらつく

上条『……無理すんなよ、すぐ帰るからさ…』

そんな自分もまだ怪我人だが、歩けない程でもない

ズボンから財布を出し、残金を確認し、出る

上条『じゃあ、待っててくれな』

インデックス『うん』


この時二人は、これが別れの言葉になるとは思わなかった


206:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/03(日) 23:24:05.71 ID:8SmPQ2BSO
上条が外に出ると神裂が立っていた

上条『……お前』

神裂『ご安心をもうやめます』

自嘲するように露出した姿の魔術師は宣言した

神裂『……それに私にあの子と関わる資格はありません』

冷たく機械のような口調で言葉をつむぐ

神裂『……しかし、もし許されるなら、あの子を救うのに協力させて欲しいのです』

上条『……!』

和解できそうな神裂の言葉に上条は安心するが

神裂『……といいたかったのですが』

上条の期待を壊し、場が硬直した
神裂自身もその冷凍に巻き込まれたように重く冷たい表情

上条『……どういう』

神裂『我が組織トップからの伝言が来ました』

神裂『鬼ごっこは終わりにして、『禁書目録』を回収しろと』


208:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/03(日) 23:26:21.25 ID:8SmPQ2BSO
インデックスは安堵した気分だった
記憶が無く、『禁書目録』や『魔術師』、『必要悪の教会』などという知識だけが頭を回っていた
正直不安で怖かった

だけど、証拠はないけどああ言ってくれる人がいる

それが救いになった

すると、買い出しに出たその少年は玄関外で誰かと話していた

インデックス(なんだろう…?)

のそのそ、と重い体を引きずり、玄関に向かう
すると聴こえた
目覚めた時に側にいた女性の冷たい声が

神裂『我が組織トップからの伝言が来ました』

神裂『鬼ごっこは終わりにして、『禁書目録』を回収しろと』


209:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/03(日) 23:27:15.26 ID:8SmPQ2BSO
インデックスの時が止まる
どういうことか分からない
少年はあの女性のことを自分の同僚で親友と言っていたはず
本当は追い回したくないと思っている人物、と

なのに禁書目録(じぶん)を回収?鬼ごっこ?
判断するには情報が足らず、混乱していた


インデックス(つまり…さっきのとうまの言葉は嘘…?)

根拠のない言葉と実際この耳できいた言葉

どちらが信憑性があるか

インデックス(……嘘だったんだね…)

その瞬間インデックスは窓から飛び出していた

インデックス(わたしを…回収するための作り話だったんだ!)

インデックス(あの優しさも…ぜんぶ!嘘だったんだね!!)

涙を浮べ、落下する
地面に激突しても痛みがないのが、自分を更に虚しい気持ちにさせた


216:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/06(水) 00:50:36.60 ID:ZW+zfFbSO
窓が開けられた音
それを聞き取り上条はドアをはね飛ばすように開ける

上条『インデックス!』

神裂『……どうしたのですか!?』

上条『……』

神裂『……!』

部屋の様子に上条と神裂は呆然とする

上条『インデックスが…いない』

神裂『……』

上条『どういう…!まさか他の魔術師が本当に誘拐…!?』

上条は開けられた窓に向かい、外を除くが誰もいない

上条『いるなら返事してくれインデックス!』

神裂『……まさか』

上条『なんだよ!大人しくしてないでお前も捜すのを手伝って…』

神裂『ききなさい』

上条は固まる
神裂の声は冷たさや怒気で満たされていた

神裂『……推測ですが』

上条『……』


217:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/06(水) 00:51:09.46 ID:ZW+zfFbSO
神裂は重い口を動かして言った

神裂『先程の最大主教からの伝言を聞いて…』

自分の最大のミスに激怒し

神裂『私達を…誘拐する集団として勘違いしたのでは…』

上条『……』

なんだそれは


218:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/06(水) 00:51:43.09 ID:ZW+zfFbSO
上条『まっ、待てよ!俺はちゃんと説明したぜ!?仲間だって』

神裂『人の言葉の真偽を確かめる術は彼女にはありません、先程の貴方の言葉を受け入れたのも信じたのではなく、気を使っただけは?』

上条『いくらなんでも、記憶を失った直後から十〇万三〇〇〇冊を狙うヤツって勘違いする経験も…』

神裂『記憶がないからこそ不安で、私達の信頼関係はゼロに近い…十〇万三〇〇〇冊を狙う、とまで辿り着かなくとも、「狙われている」とは勘違いするでしょう』

上条『……でも』

必至に否定材料を探す
自分がインデックスにとって敵になってしまったという真実に対しての


219:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/06(水) 00:52:15.56 ID:ZW+zfFbSO
上条『……』

何も言えなかった
神裂の言うこともあくまで推測だ
インデックスはただおなかがすいて出ていっただけかもしれない

上条『………』

神裂『少しは分かりましたか?この絶望感を』

上条『ああ…』

上条はかつて避難した神裂の弱い心に同意してしまっていた
守りたかった者に忘れられ、尚且敵と認識された

神裂『どうします?追いますか?』

上条『お前は?』

神裂『追いますよ、上からの命もありますし…』

神裂は前を見据えてなにかを覚悟した様子で

神裂『すでに私は彼女に一年以上も逃亡生活をおくらせてしまった、もう二度と、させません』


これが本当の彼女

救われぬものに救いの手を

今さら名乗る資格はないかもしれない、しかし

神裂『貴方が腐っているなら、資格がなかろうと一人でやらせていただきますよ』

上条『……』


220:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/06(水) 00:52:46.27 ID:ZW+zfFbSO
そうだ
なにをやっているんだ

インデックスが敵になろうと、避けようと
やることは一つだろうが腰抜け

上条『……インデックスの誤解をとく』

神裂『……』

上条『そして今度こそ助ける、アイツと良い思い出をつくるんだ!』

そして上条は立ち上がった
真直ぐ

だが

『中』はやることを成し遂げるため

上条『絶対しくじらない…どんな手を使っても』

歪んだかもしれない


221:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/06(水) 00:53:14.44 ID:ZW+zfFbSO
ステイル「……」

上条「こういうことだ」

ステイル「 … … 」

何も言えなかった

勘違い?

上条という少年はインデックスの生い立ちや問題を交え、自分達の過去話を話した

それらのことをまとめると
つまり

脳の問題により、逸早く処置をしなければならない
だから勘違いから逃げたインデックスを連れ戻そうとしただけ

インデックス「ステイル騙されないで、証拠がないよ」

汗だくなステイルにインデックスは冷静に対応し、フォローしてくれた
だが気休めにもならなかった

上条は嘘を言っている顔ではなかった
誰かのために真剣に頑張っている顔

ステイルが今まで知らなかった、ようやく最近出せるようになった顔

ステイル「あ…」


222:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/06(水) 00:54:25.50 ID:ZW+zfFbSO
つまりインデックスは始めから救われていたのだ
相手の事情で理不尽に追い回されていた、というわけでめなく

こんなに思ってくれている人がいる

『幸せな娘』役の少女が自分の役を勘違いし、『悲劇のヒロイン』役として舞台にあがってしまっただけ

だったら
自分は

なんのために

インデックス「……ステイル?」

ステイル「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」


223:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/06(水) 00:57:42.71 ID:ZW+zfFbSO
ステイルは炎を放った
先程と同じように

ただインデックスへの配慮はなかった


しかし

上条「はあああああ!!」

上条はそれに反応し、右手をつき出した
すると炎はパッと消えてしまう

だがステイルは気にしない
ただ自分の絶望感にうちひしがれていた

ステイル「だったら僕はなんなんだあああああ!!!」


224:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/06(水) 00:58:20.02 ID:ZW+zfFbSO
上条「……?」

インデックスという地獄に落とされた少女
その少女を助けたいと思った
だから初めて闇の中で惨めにいることを止め、もがき始めた

だから笑えるようになった
悩んでいる見ず知らずの少女の力になりたいとも思えるようにまでになった


だが始まりのきっかけになった少女は、始めから幸せだった


変わっただけ良い?
冗談じゃない


225:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/06(水) 00:58:52.37 ID:ZW+zfFbSO
僕は変わるためにインデックスを助けたんじゃない

インデックスを助けたかったから、変わろうとしたんだ

インデックスが幸せだったのは、いい

だったら

ステイル「今の僕はなんなんだ…」


助けるため地獄の底までついていったのに相手は消え、一人とりのこされた
しかも助ける努力が全てが意味をなさなくなった

突然大きなものを失い、なんとも言えない虚しさがステイルを包んでいた


226:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/06(水) 00:59:20.18 ID:ZW+zfFbSO
インデックス「……ス」

インデックスが声をかけるが、最早応じない


ステイルはとりあえず

ケースをとりだし、体晶という粉末を舐めた
そして

ステイル「お前らが邪魔なんだ…」

上条「……」

ステイル「こんな気分にさせるお前らがジャマだああああああああ!!」

インデックス「……」

壊れた、かつて自分に救いの手を伸ばしてくれた少年にインデックスは
何も言えず、見るしかできなかった


227:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/06(水) 01:00:14.88 ID:ZW+zfFbSO
ステイル「あああああああああああああああああ!!」

炎の塊がステイルの前に出現した
文字通り、ただの炎の塊
塊のいる床が水のようにドロドロ溶ける
しかし僅かに浮いているので落ちない

炎の巨人のように顔があり長い手がぶら下がっているわけでなく、ただただずむように燃え盛る

しかし動きはあった

炎の頭上付近が、まるでスライムのように伸び、手のようなものを二つ形作る

そしてソレは形を保ったまま押しつぶすように、上条に向けて放出された

ステイル「焼き潰せ!」


228:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/06(水) 01:00:57.77 ID:ZW+zfFbSO
上条「う、おおおおおおおお!!」

上条は前に飛んで出て
再び右手を迷いなく炎に叩きつける

やはり右手に触れた瞬間、上条を溶かすことなく摂氏三〇〇〇度の炎は消える

放出された手は本体と繋がっていたため、連鎖するように本体も散った

上条「……」

そうして上条はステイルに向けて走り出すが

神裂「上条当麻!」

神裂の怒号に上条は立ち止まる
そしてステイルは汗を流した顔を、口を歪ませ笑わせていた


229:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/06(水) 01:01:44.18 ID:ZW+zfFbSO
上条が怪訝そうに見ると、眼前の景色が紅蓮に染められる

上条「…!」

そう
炎の塊が復活し、再び上条を同じように押しつぶす

上条「……くっ!」

上条は再三、右手で対応する
しかし今度は消えもしなかった

上条「ぐぅ……ぁ!」

上条は炎とは思えない体重を持った塊の圧力に押される

上条(消えない…?他に核がある……!?)

ステイル「もう補給速度を全開にしたから、一瞬で回復する」

と、ステイルの声


230:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/06(水) 01:02:20.66 ID:ZW+zfFbSO
神裂「ッ!」

神裂が上条を援護するため動く
しかし

ステイル「…は!」

炎の塊から三つ目の新たな手が、神裂と上条を遮るように発射される

神裂「……く」

しかし神裂は止まらなかった
神裂はワイヤーをとりだし、放つ

神裂「七閃」

空を切り、三つ目の腕を裂こうとする
だが三〇〇〇度の炎を前には意味をなさず無残に溶けおちた

上条「………おぐ…っ!」

そうしている内にも上条はドンドン床に押し潰される

神裂「……仕方がありません」

この惨状に神裂は決意し日本刀に手をかける
そして居合いの体勢をとり、集中する

神裂「……唯閃!」


231:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/06(水) 01:03:04.94 ID:ZW+zfFbSO
ステイル「させないよ」

神裂「……ッ!?」

遠くからステイルの声が響く
神裂が見ると、ステイルは火炎放射が火遊びにみえる程の炎を、恐ろしい速度で噴出させていた

もちろん神裂にむけて


神裂「ォ……あああああアアアア!」

咄嗟に唯閃の軌道を曲げ、火炎放射に応戦する
しかし集中を殺がれ、無理な体勢からの対応

炎は払えたが、その爆風に神裂は僅かに後方に飛ばされ倒れ込んだ


232:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/06(水) 01:06:26.84 ID:ZW+zfFbSO
上条は炎の両腕を押さえながら、横目でそれをみる

上条「神裂!」

ステイル「いいのかい」

炎の手は何故か消えない
他に核があるのだろう
上条はある経験からそう予想した

そしてそこら辺にはそれらしいものはない

だとすると

ステイルが舐めたあの粉か
ステイル自身!

上条「………………っ、ぐおおおおあああああ!!」

ステイル「!?」

上条は炎の手を力で押し始めた
今まで押されていたものとは思えないほどの勢いで

上条「ああああああああああああ!!」

そして
上条の右手が炎の腕を、自分の斜め後ろに逸した


233:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/06(水) 01:06:57.19 ID:ZW+zfFbSO
ステイル「チィッ!」

炎の能力者の舌打ちが聞こえた
上条は飛び込むように前に逃げる

すでに周りはグチャグチャだ
酷い所は床がなく、下の部屋に被害が出ているだろう

そのためにまずあの能力者の暴走を止める

上条「がああああああ!!」

炎の塊を避けながら、ステイルに駆ける
しかし上条が塊の横を通る際
三〇〇〇度の炎の腕が“五本も“飛び出してきた

上条「くそっ!」

右手で応戦するが、対応しきれない
神裂がコチラに駆け寄ってきているが間に合わない

上条「くそぉぉおおあああああああ!」

ヤケになり、腕の一本を他四本に、力任せに押しつける

するとそれに四本の腕は押され、はじかれた


234:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/06(水) 01:07:34.58 ID:ZW+zfFbSO
炎の塊にスキが出来た

上条「今の内にアイツの所に…!」

そして一歩前に進むと

ステイル「やれやれ、まさか僕がジッと待っているとでも思ったのかい?」

声がした
炎の塊を挟んだ上条の反対側から

すると炎の塊がさけた
制御を失ったというより、意図的に裂けさせた

自分の道をつくるために

上条「……!」


235:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/06(水) 01:08:34.39 ID:ZW+zfFbSO
やはりそこからステイルが飛びだしてきた
そして彼は上条の全身くらいはあるだろう炎の剣とも見えるものを手から放出しようとしている

神裂は裂けた炎が回復して、再び出来た塊に防がれていて、駆け付けられない

インデックスは生まれたままの姿のまま、もはやなにも言わない

上条「…」

ステイル「死ね」


炎がまっすぐ縦に下ろされた


254:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/10(日) 08:38:25.33 ID:2f9PfAgSO
ステイルの炎の剣が真っ直ぐ縦に振りおろされた

神裂「……」

ステイル「……」

そう

上条「……」


上条の手前の地面に突き刺すように


255:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/10(日) 08:39:25.64 ID:2f9PfAgSO
インデックス「……」

ステイル「……」

本当に突き刺すだけ
そこから派生される衝撃などは一切なかった

上条「……ッ!」

だから上条は目の前に居座る炎剣を叩きわった

炎が散る
それに呼応するように神裂を邪魔していた炎の塊も消える

神裂「……!」


いや、消した

ステイル「……」

しかしステイルは動かない

この場にいる全員が動かない


256:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/10(日) 08:40:16.74 ID:2f9PfAgSO
ステイル「……」

ステイルが止まった理由
それは上条がインデックスを思いやる人物だから

悔しいが、インデックスが自身が認めずとも上条はインデックスの味方だった

苦しめているならともかく、思いやっている

もしもインデックスの記憶が戻ればインデックスは上条が死んだことを悲しむだろう

そんな存在を自身の暴走で奪えなかった
例え見えないほど小さいものだとしても、彼女の幸せは奪えなかった

ステイル「……」


257:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/10(日) 08:41:08.35 ID:2f9PfAgSO
ステイル「………はあ」

上条「?」

溜息をついたステイルは身を翻し、この場から去ろうとしている
それに対して上条は

上条「待てよ!」

言葉を浴びせる、悪意なき言葉を

上条「お前も…インデックスを助けたいんだろ?」

神裂「……」


上条「だったら、一緒に助けようぜ」


258:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/10(日) 08:41:38.85 ID:2f9PfAgSO
ステイル「……」

なるほどね
これがこの男か

インデックスが助かるのなら、それでいい
誰が助けようが関係ない
例えたった一人のヒーローではなくともいいわけだ

いい信念だ
僕もそう思うよ

でも

ステイル(……もう、疲れたんだ)


259:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/10(日) 08:42:08.92 ID:2f9PfAgSO
自分は今まで人から嫌われる存在だった
絶対に幸運が来ない場所に縛られ、誰かが助けてくれるまで『これでいい』
と諦めていた

しかし、自分と似た境遇の少女と出会い
その少女を救いたいと思った

だから変わった、変わろうと一生懸命になった

だが
少女は最初から幸せだった
ただの勘違いだった


そんな虚無感が…………………………………


もう…………………………………


261:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/10(日) 08:43:25.39 ID:2f9PfAgSO
ステイル「……いいんだ」

上条「!?」

ステイル「興味が…なくなったから、君達が救ってやってくれ」

残酷な言葉が響いた

インデックス「……!」

それにインデックスは更になにも言えなくなる
胸や秘部を隠すことも忘れ、口を開いたままステイルを見ていた

慕っていた親に捨てられた子供の様に

上条「……なんでだよ」

上条は思わず漏らした


262:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/10(日) 08:43:57.74 ID:2f9PfAgSO
上条「お前は最初、インデックスの修道服を破壊していた俺達にすげー怒ってたじゃねぇか」

叱咤を、いや懇願かもしれない

上条「さっきだって、そんなに絶望しているのにインデックスのために俺を生かした!」

上条「なのになんでそんなに簡単に諦められるんだよ!」

ステイル「……」

上条「なんで!自分の大切な気持ちを簡単に捨てられるんだよ!!」

ステイル(……知らないよ)

ステイルはその言葉に取り合わない
しかし妙に鋭く刺さる

ステイル(分かったら、こんなになっていない)


263:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/10(日) 08:46:35.36 ID:2f9PfAgSO
ステイルは何も言わず去る

上条「待…」

上条は再度説得を試みるが、神裂がそれを遮る

神裂「随分部屋を破壊してしまいすいません」


上条は神裂をどかそうとするが、聖人の筋力がそうさせない

神裂「……先程も言いましたが、部屋の修理についてはお任せを」

ステイル「別にいいよ」


264:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/10(日) 08:47:25.24 ID:2f9PfAgSO
インデックス「………………」

ステイル「……………………」


一度だけインデックスを見た


神裂「しかし…」

ステイル「いい」


ステイル「もう…」


そして捨てた


ステイル「ここには帰らないから」

彼女との繋がりを


265:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/10(日) 08:49:18.51 ID:2f9PfAgSO
上条「おい!」

あれだけ言ったのにまだ引き止めようとする少年

ステイルはそれを鬱陶しいとも有り難いとも思わない

今の彼にそんな余裕はない

だが一つだけ

ステイル「脳の八五%が魔道書に占められ、残り十五%で一年間しか生活できない、ね」

上条「?」

自分だけ抜け駆けできたかもしれない
辿り着いた一つの冷たい真実を口にする

ステイル「だったら完全記憶能力者とやらは全員五、六歳で死ぬみたいだね」

神裂「……?」

上条「……」


そして今度こそ去る
インデックスのためにコンビニで買った食料品を横切って


266:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/10(日) 08:50:33.77 ID:2f9PfAgSO
この言葉は

ステイルがインデックスに差し延べた手すら

引き戻したことを意味していた



七月二十日 終


271:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/10(日) 22:43:59.80 ID:2f9PfAgSO
七月二十一日


ステイル=マグヌスはある研究施設にいた
この研究施設では秘密裏に実験を行っている


「どうしたの?いきなり」

と、ステイルと同じ部屋にいた研究者は問いかける

ステイルは長期休暇をとっていたはずなのに、その休暇中に出てきたから疑問に思ったのだ

それにステイルは答えない
代わりに睨みで返す

「おっと…」

研究者は引っ込む


272:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/10(日) 22:44:53.43 ID:2f9PfAgSO
だが、今日の実験内容の報告だけはすることにしたらしい

「どうせなにもしないよ」

ステイル「構わない」

いつもは乗り気ではなく、終了したら誰にも声もかけず帰宅するステイルが進んでここにいる
そんな疑問に再び問いかける

「? 実験がしたい気分なのかい」

ステイル「家がなくなった」

「はい?」


273:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/10(日) 22:45:27.71 ID:2f9PfAgSO
いきなりの暴露に驚く研究者
だがこの研究グループは財力がある

「だったら新しい家を用意しておくよ、なにか条件とかはあるかい?」

ステイル「いらない」

ステイルは再び即答する
だがそういうわけにもいかず研究者は食い下がる

「おいおい」

ステイル「路上生活でもするよ」

「なにを馬鹿なことを」


274:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/10(日) 22:46:00.89 ID:2f9PfAgSO
「とりあえず今日中に手配しておくから行くんだぞ」

ステイルはそれに答えない

研究者は良心からステイルを気遣っているのではない
単に体調を崩して研究に影響が出ると迷惑だからだ

ステイル「出ていくよ」

「どうぞ」

部屋の出口に向かう
この空間にいても一層苛立ちが募る


275:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/10(日) 22:46:44.48 ID:2f9PfAgSO
扉を閉める直前に

「あ」

研究者が声をあげる

「参加するなら十二時からA室で開始な」

という連絡が聞こえたが返事はしなかった
扉を閉め、廊下に出る

ステイル(……実験、か)

ステイルは電灯に照らされた通路の天井を見上げながら思う

ステイル(あれだけ嫌悪していたのに進んで受ける気になるなんて)


繰り返すがこの研究施設では、ある実験が行われている

ステイルはその被験者


『体晶服用実験』という実験の


276:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/10(日) 22:47:44.54 ID:2f9PfAgSO
―――『体晶』

服用した者の能力を暴走させる効果がある
大抵は暴走により悲惨な結果が訪れるが
稀に暴走した方が良い結果がでる『適合者』がいる


ステイルはその『適合者』の一人

更に

『体晶』による体の負担
それが極端に少ないという特殊な体をした『適合者』の中でも特別な存在


277:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/10(日) 22:48:41.19 ID:2f9PfAgSO
だから『体晶』を研究する者に目をつけられる


まず手始めに負担が少ないということで、木原幻生が新たに開発した

「常人なら一度の使用で死に至る程の『体晶』」

を用いられた
負担は辛かったが耐えられた

そこからついにステイルへの扱いに遠慮がなくなった

投薬や機材を用いた調整により、暴走を途中停止できる体にいじられた

これによりただの炎の玉が
あの摂氏三〇〇〇度の炎の塊となった

暴走によりステイルの意思に関係なく無尽蔵に炎が放出されるが、体晶の暴走をいつでも切れる


実験成功以降はステイルの体の仕組みを研究するものなど、様々な人物が来訪し、目的が枝分かれした


しかしこの延長線上の研究達は足踏み状態で今に至る


278:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/10(日) 22:49:47.82 ID:2f9PfAgSO
そんなステイルを研究道具としかみていない連中

嫌悪していたが、今はそんな悪意を受け入れてしまう程の絶望がステイルを包んでいる


ステイル「……」


あの輝いている記憶

ステイル(……インデックス)


もういいのだ
要らない捨てた

なのに

何故

インデックス『ステイル!』


彼女の顔が離れないのだろう


七月二十一日 終


279:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/10(日) 22:53:10.18 ID:2f9PfAgSO
七月二十四日


ステイルは新しく用意された家にいた
彼は落胆している

ステイル「……」

やはり悪意の塊は果てしない闇だった
かつての記憶がステイルに殺意や復讐心、そして恐怖を押し寄せる

だが恐れることはない
この実験を利用し強くなり、なにもかも潰せばいい


ステイル「…………ふっ」

ステイル「あああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!」


叫んだ
決意した途端に


280:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/10(日) 22:54:20.32 ID:2f9PfAgSO
インデックス『ステイル!』

思い出が頭に響く

ステイル「うぅぅ…」

インデックス『おなかへったー』

ステイル「……」

地面を睨み、叩く

ステイル「インデックス…」

彼にとって光だった彼女の顔が離れない
その未練が闇と戦う決意を削いでしまう

だがその光はステイル自身が捨てたのだ


281:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/10(日) 22:54:57.20 ID:2f9PfAgSO
なのに未練がましく求める
光とも闇ともまともに向き合えない
その中途半端さ、弱さ

闇の脅威

インデックスという光への未練


様々な負へ誘う流れがステイルを追い詰めた


282:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/10(日) 22:55:44.00 ID:2f9PfAgSO
ステイル「はっ…はっ……」

ベランダを見る
だがいるはずもない

ステイル「……………」


外出した
ふらふら、と街中を歩く
目が虚ろになりながら目的もなく

目の前にベンチがあった

ステイル「……」

座る


ステイル(もうこのまま…)

死んでしまおうか
そうまで思ったその時


283:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/10(日) 22:56:48.88 ID:2f9PfAgSO
携帯の着信音がなった


ステイル「……?」

ステイルは鈍感に携帯をとりだそうとするが

プツ

とすぐ切れてしまった

ステイル(……なんだ?)

番号を見るが知らない番号
イタズラだろう
そう思い放置することにした


284:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/10(日) 22:57:47.76 ID:2f9PfAgSO
七月二十四日


幻想御手(レベルアッパー)

無能力者

欠陥品?


佐天涙子の転機とも言える日

その前の―――


290:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/14(木) 22:04:36.71 ID:uMlTagLSO
佐天「どうしよう…」


佐天は焦る
彼女は幻の道具『幻想御手』を手にいれていた

しかし風紀委員が回収運動を展開している状況をおそれ、親友にも言い出せず

友達をまきこんで使用してしまった
副作用で昏睡してしまうことを知らず

佐天(どうしよう…どうしよう…!)

佐天(だれか…あたしのせいで……どうすれ…ば)

あまりの焦りに繋がりのない言葉を散らす

佐天「……誰か」

親友の初春達には言えない、言いたくない

でも誰かに…

佐天「…」

そんな時、頭に一人の人物が浮かんだ


291:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/14(木) 22:05:52.24 ID:uMlTagLSO
自分にとってチカラが必要かどうか、自分で考えろ
と言った―――


佐天「……!」

佐天は携帯に登録されている番号を探る


―――ステイル=マグヌス


そして目当ての人物を見つけて、そこにある番号を押す


292:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/14(木) 22:06:39.04 ID:uMlTagLSO
佐天「……」

プルルルと呼び出す音をきく
あの人ならなんとかしてくれると期待を抱き

しかし

佐天「……」

極限にまで追い詰められていた佐天は、思考が消極的になっていた

佐天(……あの人のことだ)

佐天(こんな弱気で自業自得の相談になんかのってくれないかも)

取り消しのボタンを押して連絡を断ち、携帯を足元に落とした
そして意味もなく視線だけで周りを見回すと
かつて母親がくれた御守りを見つけた

それを握りしめる

佐天「……」


293:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/14(木) 22:07:21.58 ID:uMlTagLSO
佐天は落とした携帯を拾い、再び呼び出す
だが連絡相手はステイルではない


自分の過ちを認めて今度こそ

あの親友へ


294:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/14(木) 22:08:19.38 ID:uMlTagLSO
しばらくベンチに座り続け、呆けていたステイルだが

ステイル「……」

一度は放置することにした先程の電話
反応してやろうかと思い始めていた

例え間違い電話でも、イタズラでも

闇からの誘いだとしても良い

自分を脅かすのなら焼いて焼き尽くすだけだから
むしろ、ステイルはそれを望んでいるかのようだった

このせいで死ぬことになろうが構わない
どうせ自分にはなにもないのだから

とにかく今はこの気持ちを晴らしたい


ステイル「……ふ」

もうかつての面影もない、まるで酷いスキルアウトのような、暴れることを求めるだけになっていた

そんな彼は着信履歴から先程の電話番号を押す


295:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/14(木) 22:10:22.15 ID:uMlTagLSO
呼び出し音を聞き、相手が出るのを待つ

しかし中々出ない
やはり程度の低いイタズラ電話だったのかと思うと

「……もっ、もしもし」


出た

その人物は、察するに少女に分類されるだろう
闇には馴染まない飴玉を転がしたような、そして僅かに泣いている声だった

とりあえずステイルは苦情を言う

ステイル「君は先程僕に電話をしてきたよね?すぐ切るというイタズラ電話を」

「……えっ?その…」

ステイル「一体どういうつもりなのかな」

「すいません、今はそれどころでは…それにこれは私の携帯ではありませんし…」

困ったように返事する相手の少女
本当に知らないようだった


296:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/14(木) 22:11:57.43 ID:uMlTagLSO
ステイルは考える

本当にただのイタズラなのか?

だがそう素人を装い油断させようとしているのかもしれない

ステイル「……そうかい、なにか聞いていないかい?」

「分かりません…すいません本当に時間がないので、また…」

少女はステイルに付き合っている暇はないと、それだけ急いでいる

ステイル(……ハズレか)

本当に切ろうとしている様子から闇などではないことをステイルは悟る
機会を失ったことを、少し残念に思ったが


「……また余裕ができたら再度連絡を…え、と…ステイル=マグヌスさんですよね」


電話の少女が放ったこの言葉にステイルは再び食いつく


297:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/14(木) 22:13:41.00 ID:uMlTagLSO
こちらは相手に覚えがないのに、あちらは名前まで知っている
つまり調べられていた?


ということはやはり間違い電話などではなく、意図的なものだったのか

ステイル「まった、何故僕の名を?」

既に切ろうとしていた所に再び声をかけられ、口早に少女は質問に答える

「だってこの携帯に貴方が登録されていますから、実は知り合いなのでは?」

ステイル「……」

またしてもあっさりと答えがかえってきた

そして相手の携帯に自分が登録されている?


それに電話相手の声はどこかできいたことがある

ステイル「……」


『あれが爆弾です!』


298:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/14(木) 22:16:37.13 ID:uMlTagLSO
ステイル(……あの時の…?)

セブンスミストという衣服店で虚空爆破事件に巻き込まれた時
爆弾から小さい少女をまもっていた花を乗せた少女の声に似ているのだ
確証はないが

その子の知り合いの携帯で、自分の情報を知っているということは

『貴方も…人間にとってレベルなんて関係ないと…』

ステイル(まさか、彼女…か……?)

洋服店で共にいたことがある
レベルに悩み、力は必要か否かを質問してきたロングの、確か佐天涙子という少女

ステイル(そういえば教えていたね、アチラの連絡先もきかずに…)

ステイル(それならば、いくらかは合点がいく)

それはステイルが幻想を胸に抱いていた時の話


299:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/14(木) 22:17:33.51 ID:uMlTagLSO
とりあえず、その事実が僅かにステイルの頭を冷した

ステイル「すまない…知り合いだったよ」

「いえ」

ステイル「こちらのせいで時間をかけさせてしまったね」


また人に迷惑をかけた
ついに足をひっぱるにまで落ちてしまったのかと落胆しそうになるが、少女の言葉がそうさせる暇を与えなかった


「“救急車”は私の電話で呼びましたんで」

ステイル「?」


300:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/14(木) 22:18:25.77 ID:uMlTagLSO
驚愕の言葉が聞こえた

ステイル「……救急車?」

ステイル「佐天君とやらが、どうかしたのかい?」

佐天という言葉にステイルが佐天の知り合いであることに確信を得たのか
話し始めた

「…………はい」

「幻想御手という物をご存じで?」


知らない
だから詳しい説明を求めた

すると相手は丁寧に答えた


301:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/14(木) 22:19:27.29 ID:uMlTagLSO
それは音楽
共感覚性により、聴くと能力のレベルが上がる
だが使用後しばらくして何故か昏倒してしまう副作用がある

ステイル「……」

つまり佐天はそれを使用し倒れた

かつて投げ掛けた一つの課題
“自分にとって”は力が必要かどうか
それにより『必要』とし、幻想御手を使用した、のだろう

「ステイルさん?」


ステイル(……いや…)

そんな単純なものではないはずだ
彼女の内には様々なものがあったのだろう
ステイルの言ったことなど後押ししたかどうかくらいの重要度でしかないはずだ

「……ステイルさんは、本当に佐天さんのお知り合いなんですよね」

ステイル「……おそらくね」

「だったら、佐天さんを助けるのに協力してくださいませんか…?」


302:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/14(木) 22:23:19.14 ID:uMlTagLSO
ステイル「……」

呼吸が止まった
また助けを求められた
手を差し延べるべき時がきた

だが今の自分にそんな…


ステイル「……あ」

声が出ない
どう反応していいかも分からない

「私…助けたいんです、佐天さんを…絶対…」

「佐天さんは…自分を…欠陥品とまで言ったんです…そこまで……」

ステイル「……」

「……私のせいで…」

ステイル「……君のせいでは」


ステイルは思う
この要請を断ろうと

佐天もあの少女と同じく十分幸せだった
誰かに想われ、自分の入る余地などない

自分は不必要

ステイル「そう自分を責めるんじゃない…君がいれば……絶対助かるよ」

「貴方は…」

ステイル「僕はいらないだろう、君やあの…他の友達がいれば十分じゃないかい…?」

「そんなことないですよ!」


303:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/14(木) 22:24:54.26 ID:uMlTagLSO
以外な言葉がかえってきた

「たくさんいた方がより早く解決します!」

「それに…佐天さんは随分追い詰められていました…」

声を荒げ、彼女は熱弁する

「そんな中…一度でも貴方に電話しようとした…」

ステイル「……」

「十分必要だと思います」

ステイル「……」

佐天にとって自分が必要?

他に親友がいるのに?明らかに僕みたいな薄情より慕っている人が他にいながら?

自分がいなくともいいのに…?

ステイル「……なぜ?」

ステイル「もう十分なのに」

その答えは既に出ている
必要だからだ

ただ理解ができないだけ


304:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/14(木) 22:26:16.08 ID:uMlTagLSO
「……私は佐天さんではないので本当のことは分かりませんが」

少し言葉を考えるため、間を置く
急いでいたはずなのに時間をかけている
ステイルが力になってくれると思っているから


そして少女はいう

「“十分”ではないですからね」

ステイル「……?」


「だって親しい人に助けてもらえないのは、少し寂しいですから」


ステイルの時が止まる


305:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/14(木) 22:27:39.39 ID:uMlTagLSO
ステイル「……さみ、しい?」


「はい、当たり前じゃないですか」

「確かに一人でも慕っている人がいれば幸せなのかもしれませんが、それとこれとは話が別ですよ」

ステイル「別…」

「はい別です、それくらい贅沢になってもいいはずです」


………………………。


ステイルも相手も黙る
沈黙をつくる者と返事を待つ者の空間

「あ、救急車きました!失礼します!!」

ステイル「あ…」

初春が沈黙を破り、通話を切った
返事もきかないまま

救急車がくることで危機感が増したのか


306:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/14(木) 22:29:04.95 ID:uMlTagLSO
通話が切れたステイルのいる場所は蝉の声がうるさく響く
だが、ステイルの世界はとても静かだ


ステイル「……そうか」


例え幸せであっても親しい人に助けてもらえない

だとしたらそれはもう、『十分な幸せ』ではない


ステイル「……もしかして」


―――インデックスも、そうだったのかな


307:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/14(木) 22:30:23.71 ID:uMlTagLSO
ステイルはまだ初春の持論に理解が追いついていない

ステイル「だがこの一件に関われば理解できるかもしれない」


例えインデックスのことそう思っていたとしても、すでに愛想をつかされているだろう
しかしこの答えが見えないことには前に進めない


ステイル「佐天涙子を助けることで辿り着いてみせる」

自分のために利用するのだ


ステイル「……これでいい、僕みたいなヤツは…今はヒーローという柄でもないことだしね」


進む
幻想御手とやらの黒幕を探すため


308:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/14(木) 22:35:04.89 ID:uMlTagLSO
ベンチから立ち上がり、ステイルは走り出した

ステイル「それにしても全く手掛かりはないね」

もう少し時間がたってから佐天の親友に協力を求めるべきかもしれない
だが番号も名前もしらない

ステイル「……色々不足しすぎだね」


だがアテがないわけではない
あのステイルが所属する研究グループ

ステイルの要望には自分達への不都合がない限り、応える
この幻想御手とやらが不都合とは思えないが
ヤツラに頼るのはお断りだ

ステイル「この事件は……闇をみずに解決する」

光をただ目指す


309:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/14(木) 22:36:12.11 ID:uMlTagLSO
木山『いけないな、他人の研究成果を勝手に盗み見ては』

黒子『木山春生の所にいった初春に連絡がとれませんの…』

美琴『こんな時くらい「お姉様」に頼んなさい』


木山『面白い副産物をもたらす者なのだよ』

『能力者だと!?』


310:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/14(木) 22:36:59.46 ID:uMlTagLSO
黒子『多重能力者…』


木山『言うなれば『多才能力者』だ』



木山『この街の全てを敵に回しても、止める訳にはいかないんだっ!!!』


311:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/14(木) 22:37:31.89 ID:uMlTagLSO
美琴「…は?」



『キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア・・・・・……


312:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/14(木) 22:38:14.55 ID:uMlTagLSO
場面は高速道路の真下
周りは戦闘により破壊され、瓦礫や砂利ばかりだ

と、そこで咆哮すると同時に周りを爆破し始める
幻想御手の黒幕である木山春生から出た胎児のような化物

そしてそれに巻きこまれそうになった、学園都市の第三位の超能力者、御坂美琴

彼女は幻想御手解決のために尽力していた
そして木山が犯人であることをつき止め、止めることに成功する


そして今に至るわけだ

美琴「なんなのよ、アレ」


胎児の化物の爆破に対し、周囲の鋼鉄や砂鉄を組み上げて防ぐ
その後、電撃を放ち応戦する

すると化物はあっさりソレをくらい、血も出ず体が弾けた


313:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/14(木) 22:40:16.43 ID:uMlTagLSO
美琴(……やっぱり生物じゃ…)


考える暇はなかった
生物は失った部分を取り戻す
そして瓦礫で反撃してきた

美琴「~~~ッ!」

必至で走り、体勢を立て直す
よく分からないが、ほっておくわけにもいかない相手だ

美琴「相手になるってんなら…」

美琴は電気をバチッと出しながら、臨戦態勢に入る

美琴「……?」


『キャアアアアアア……


相手は追ってこない
動かずただ叫んでいる


314:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/14(木) 22:41:01.27 ID:uMlTagLSO
それを疑問に思っていると、美琴の足元に何かあたった

美琴「……!?」


それは物ではなく、人

美琴「あ」


化物を召還した、木山春生


315:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/14(木) 22:43:15.96 ID:uMlTagLSO
一方、相変わらず叫ぶだけの化物はというと

美琴とは一時休戦となったが、木山に全滅させられた警備員に目をつけられる


生き残りの警備員はガンガン攻撃するが
やはり化物は立体映像のように、くらった部位が揺らぐだけですぐ戻る


そして何もできないまま、警備員は弾き飛ばされる


鉄装「ハハ…」

ただ一人の生き残り
なにもできないまま笑い、現実逃避するしかない

鉄装「ぜんぶ…」

化物の伸ばしてきた一部が、襲うための用意をする


鉄装「幻」

その言葉を合図に、化物の一部は襲いかかる

はずだった


316:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/14(木) 22:44:05.65 ID:uMlTagLSO
「!?」


熱い
何か強烈な熱が鉄装の肌を襲う

眼前は橙の何かでうめ尽くされていた


鉄装「……火?」


それが目の前の脅威を焼き払った

「まったく…」

真横から、おそらく炎の発射口と思われる人物が歩いてくる


「警備員ならせめて逃げるくらいの度胸もちでいなよ」


317:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/14(木) 22:45:48.67 ID:uMlTagLSO
赤い髪、二メートルはある長身
耳にはピアス、そして全部の指に指輪をはめている

黒いシャツの上にさらに黒いジャージと厚手のコートを着た
まるで衣替えを忘れているような服装の人物

鉄装「み、民間人がなにを…」

「…………さぁ」

そう呟き、目の前を見据えて立つ



(急いで出動する警備員を見かけたので尾行してみたら、とんでもない…)

「ビンゴなのか、的はずれか…」


『キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア・・・・・……



「キミが教えてくれるのかい?」


そう
学園都市の超能力者、第六位『魔女狩り』

ステイル=マグヌスが


322:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/16(土) 20:21:15.66 ID:zAbPLytSO
ステイル「…」


静寂
嵐の前の静けさが包む

そして次の瞬間

炎が
灼熱の弾丸が雨のようにターゲットに放たれた

爆音が響く

ステイル「……」

成果はあった
化物は攻撃を全て受け、体は炎にやられたのか弾けていた

しかしステイルの顔は優れない

なぜなら化物はすぐに形を取り戻し、修復したからだ


323:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/16(土) 20:22:00.10 ID:zAbPLytSO
ステイル「む…」

効果がないということで、やり方を変えることにした

ステイルが思案している間に化物は反撃してきた

伸ばした触手のようなものでステイルの足元を念動力で叩き崩し
よろけた所を謎の光線で仕留める手筈

しかしステイルはそう簡単にはやられない


素早く触手を炎で切断する
そしてすぐにその場から離れて、廃材や警備員が散らかした銃や盾を掻き集め


『それらを溶接した』

人間バーナーの彼には鉄などの溶接も造作ない
発火能力に関しては学園都市最強であり加減も分かる

それは、質量も小さく雑な繋ぎあわせだったが銃身などが鋭く突き出た鈍器化していた

ステイルはそれを炎の放射を推進力として使い、発射させた


324:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/16(土) 20:22:45.54 ID:zAbPLytSO
とてつもない勢いを得た鉄のハリネズミ
もともと不安定なものなので、勢いで途中崩れた所もあったが
無事ヒットし爆破した
それが放とうとしていた光線ごと化物の体を千切り飛ばす
一部には塊から外れたドロドロの銃が刺さっていた

これでいいか?と思ったステイルだが

ステイル「ッ!?」

目の前の現象を前に、本能だけで横に飛んだ

その次の瞬間、ステイルの居る場所が弾けとんだ
化物の強烈な電撃が襲ったのだ


325:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/16(土) 20:23:38.90 ID:zAbPLytSO
ステイル「……は、ぁッ」

無事回避し倒れこんでからも、転がりながら距離をとる

ステイル(威力はそこそこだが…本当になんの兵器なんだいアレは!?)

考える時間もなく、化物は体を修復させながら何かしようとしていた

転がり込んだ先に座り込んでいた警備員を見つける
彼女にも一応警告を促す

ステイル「今のを見ただろう!早く立て!!」

鉄装「……こ、腰がぁ…」

ステイル「く、この街では安全に暮らせそうにないな…!」

警備員はいっぱいいっぱいでそんな嫌味にも反応しない
そうした間にも化物の第二派がやってくる

ステイル「………く」


326:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/16(土) 20:24:27.02 ID:zAbPLytSO
巨大な氷柱
それがミサイルのようにコチラに照準を定めて発射された

ステイル(しまった…この人に気をとられたから……!)

『体晶』をとりだし、切り札を使う暇はない
だから自分の持てる限りの出力で応戦する

ステイル「はあああああああああッッ!」

ステイルが覚悟を決めて、決死の炎を

ステイル「!?」

出さなかった

巨大な氷柱は突然飛んできた砂鉄に輪切りにされ無残にその場で落下した

「……アナタがなんでここにいるかは知らないけど…」

柱などを伝いながらコチラに向かう常盤台の制服でスカートの下に単パンを履いている少女は言う

ステイル「……」

美琴「とりあえずあの時の借りは返せたわね」


それは第三位と第六位の再会だった


327:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/16(土) 20:25:11.72 ID:zAbPLytSO
ステイル「……」

美琴「……」

鉄装「に、逃げてっ!」


美琴・ステイル「!!」

自分の攻撃が失敗したことも気にせず化物は、すぐさま追撃しようとしていた

触手を何重にも巻いて、一つの怪獣のような腕にしたもので

美琴「っと…!!」

美琴は再び砂鉄を操り、軽くそれを切りとばした

ステイル「すぐ再生するぞ!」

美琴「分かってるわよ!さっきからそれで困っているの!!」

ステイルと叫びあう美琴を後ろから、光線が狙っている

ステイル「ハ、アァッ!」

気づいたステイルは炎で美琴を守る
迅速な対応だったため、美琴に危害が加わらない場所で爆発した

美琴「また借りができたわね」

ステイル「キリがないからノーカンいいよ」


328:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/16(土) 20:26:18.80 ID:zAbPLytSO
そういうわけにもいかないわ

だったら、早めに返してくれ


と駄弁りながら化物と戦う化物達
それを傍観する(するしかない)鉄装綴里さん

鉄装(ってぇ、あの子達なんで和気あいあいと戦えるのよ~!)

度胸だけではない
あの何度粉砕しても再生する怪物と片手間のように戦闘し、持ち堪えている実力

鉄装(明らかにレベル4くらいだよね!)

訳が分からなくなってきたため、腰も治ったということで倒れている同僚を避難させながら
彼等の実力を考察する

現実逃避


鉄装「ん?」

すると二人はコチラに走って帰ってくる


329:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/16(土) 20:27:38.61 ID:zAbPLytSO
鉄装「な…」

鉄装(なんで優勢なのにこっちににげてくるの!?)

敗走したわけではあるまい
重傷を負ってもいない

理解できない顔をしていると
答えは二人が言ってくれた


ステイル「一度距離をとり作戦を練ろう、追って来たら僕が払う」

美琴「大丈夫、こっちがちょっかい出さなければ襲ってこないから」

二人の声には、ありがちな負け犬の遠吠えの色はない

鉄装(手際よく連携してるし…)

鉄装が思う通り、二人には早くも連携みたいなのが出来上がり始めていた


330:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/16(土) 20:28:11.68 ID:zAbPLytSO
別に小難しい連携をしているわけではない
ただ、ステイルが攻撃している間は美琴がステイルのカバーをし
美琴が攻撃している間はステイルがカバーに徹する
そんな基本的で基礎的なこと

だがこれだけでも二人には十分であり防御を考えず攻撃に専念できた

二人が超能力者あってこその効果

ステイル(チームプレイは苦手と思っていたんだがね…)

美琴(なんかこの人とはスラスラといくわね)

確かにあまりに攻撃の威力が高くて仲間まで害する二人
単独で戦う方が合っている

“そんな似た者同士だからこそ”相手の行動をなんとなく察知できる

周りを気にするか気にしないかの差はあるが

美琴のすぐ真横に爆炎を通過させ、怒られるなどといった綻びもあったが

無意識に生まれた連携はただ暴れる怪物には強かった


331:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/16(土) 20:28:59.82 ID:zAbPLytSO
そんな戦略的撤退をした二人に鉄装は言う


鉄装「時間に…余裕はないわよ」

ステイル・美琴「……?」

鉄装は、ある建物を指さした


332:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/16(土) 20:29:46.09 ID:zAbPLytSO
化物は移動し始めた
進む方角を決めるわけでもなく、メチャクチャに



美琴「待ちなさい」

化物はその声に振り向かない
だが動きを止める


美琴「私と遊びましょう」


爆破でOKサインが出され、砂鉄の壁で美琴は受け取った


340:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/19(火) 22:35:27.36 ID:1J9Kn0PSO
ステイルはこの暴走の原因ともいえる人物の元へ走っていた
木山春生の所へ

御坂美琴にあの怪物は木山から生まれたものだと聞かされた
だから対策を思い付くかもしれない

だから二手に別れる
美琴は化物を引きつけて
ステイルは対策をききにいく

ステイル(……再生する化物は、その元が壊れると…ってね)

ステイルの切り札と敵の怪物は似ている
なんとなくそう思っていた


341:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/19(火) 22:36:57.08 ID:1J9Kn0PSO
ステイルは美琴に聞かされた場所に辿り着いた

ステイル(確か…このへんに木山とやらを隠したと…)

ステイル「!?」

突然、ステイルはギョッとする
美琴から聞いた容姿と合致する人物を見つけたのだ
だが驚いたのは、そのせいではない

彼女は今にも頭を銃で撃ちぬこうとしていた

ステイル「……!」


「ダメー!」

だが無事阻止された
花の子の首締めによって


342:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/19(火) 22:40:20.53 ID:1J9Kn0PSO
そしてその功労者は木山を必死に説得している
首が締まっている、と伝えてやるわけではないがステイルもその輪に加わる

ステイル「やれやれ…」

初春の首締めも解かれ、少し落ち着く場

木山の自殺を阻止できたことに安堵して初春は尋ねた

初春「?アナタは…」

ステイル「あの電話の人間だよ」

初春「!?」

そんなやり取り後、しばし二人は見つめ合う

二人の関係を知らない木山は交互に顔を見ている
そんな様子にも気を止めず初春は会話を再開した

初春「……ありがとうございます」

ステイル「お礼はいらないよ、自分のためだから」


343:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/19(火) 22:41:36.17 ID:1J9Kn0PSO
いつまでもそんなことを言ってる場合ではない
ステイルは本題に入る

ステイル「……あれはなんだ?」

と、木山に初対面らしからぬ言葉で尋ねた
ステイルはあまり敬語を使わない男である

木山「……」

木山「おそらく」

首の痛みを気にしながら、一息おいて木山はいう

木山「虚数学区」

ステイル「……」

その言葉にステイルは黙る
どう反応するか迷っていたら、先に初春が聞き返してしまった

初春「あれって都市伝説じゃなかったんですか」

木山「巷に流れる噂と実体はまったく違ったわけだがね」

木山はあの化物の真実を流がれるような口調で語る

木山「虚数学区とは『AIM拡散力場』の集合体だったんだ」


344:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/19(火) 22:42:28.36 ID:1J9Kn0PSO
その事実に再びステイルは驚く

ステイル「AIM、拡散力場…!?」

ステイル「ではまさか…」

木山「ああアレもおそらく原理は同じ」

『幻想猛獣(AIMバースト)』

『幻想御手』のネットワークによって束ねられた一万のAIM拡散力場が、触媒になって産まれた

ステイル「そして今は、学園都市中に広がっているAIM拡散力場を取り込んで成長している、ってわけかい」

ステイルの意見に頷いて、木山は続ける

木山「……そんなモノに自我があるとは考えにくいが、核であった私の感情に影響されて暴走しているのだろう」


345:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/19(火) 22:44:36.68 ID:1J9Kn0PSO
ステイル「なるほどね、ならばなんども再生するのも納得だ」

その話からステイルは今までの疑問が解消され、少しスッキリした
しかし逆に初春は

初春「なんかカワイそうかも…」


愁いていた

初春「どうすればあれを止める事ができますか」

そう木山に強く言った
ステイルがいうはずだった言葉を先に
自分が抱いたものを成し遂げるため一生懸命だ

ステイル(……これが…)

初春はただ可哀相というだけで揺るがぬ決意を固めることができた
彼女がどんな能力があるかは知らないが、強い
自分のためにしか動けない自分とは違い


自分が傷つけば、手を引っ込めてしまう自分とは違い


346:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/19(火) 22:45:22.71 ID:1J9Kn0PSO
今、ステイルに足りないものはこれなのかもしれない



『強く、揺るぎない精神』


347:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/19(火) 22:46:56.18 ID:1J9Kn0PSO
木山「預けたものは持っているかい?」

ステイルはハッとする
話がいつの間にか進んでいた
首を横にふり、話に集中する

木山「『幻想御手』をアンインストールするプログラムでネットワークを破壊すれば止められるかもしれない」

ステイルと初春は向き合う
そして互いに頷きあい、行動に移る


348:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/19(火) 22:50:04.57 ID:1J9Kn0PSO
対策が見えた初春とステイルは上層の高速道路へ向かう
そこには警備員のトラックがある

そこにアンインストールできる設備が備えてあるかもしれない

だから上に繋がる階段を、急ぎ無警戒にかけ上がっていると


『幻想猛獣』の攻撃の流れ弾がやってきた

ステイル「!」

それを捉えたステイルは咄嗟に初春を突き飛ばした
それにより初春は突き飛ばされた先で階段の角に顔をぶつける
強打し、赤く腫れるがマシだったと思う

防御が間に合わなかったステイルは直撃をうけ、階段から『幻想猛獣』の反対側に落下した

初春「ステイルさんっ!」


349:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/19(火) 22:53:04.27 ID:1J9Kn0PSO
ステイル「大丈夫…だ」

下から微かに声が聞こえてきた
しかし今にも消えそうなくらい弱い声が

初春「でも…」

ステイル「止めるのだろう…!」

叱咤する
自分のために彼女の覚悟を揺るがすわけにはいかない

ステイル「アレを止める、そして、彼女を…助けるのだろう!」

弱くなった言葉に力が籠る
もう足を引っ張らないために

初春「でもアナタも…!」

ステイル「……」


350:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/19(火) 22:54:05.52 ID:1J9Kn0PSO
初春はただ優しい
今ごねる理由もそれだけのこと

だとすれば彼女の決意の足をひっぱらない方法はただ一つだ

ステイル「………ぁぁぁああああ」

背中を地面に強打し激痛が襲い、息苦しい
口は血の味がする

頭も僅かにぶつけて視界がボヤけている
両手両足も骨折しているかもしれない

だが


ステイル「あああああああああああああああ!!」


351:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/19(火) 22:54:54.57 ID:1J9Kn0PSO
ステイルの落下した場から火柱が吹き出た

やがてそれは纏まりはじめ、一つの巨大な塊となり

初春を安心させるため、轟々と燃え盛る


ステイル「……大丈夫、だろう?」

初春「……はい」

この力に初春は黙って呆けていた
だがステイルの言葉で我にかえる


ステイル「だから早く、行くんだ」


352:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/19(火) 22:55:45.51 ID:1J9Kn0PSO
初春は再び目的地に向かった
ステイルはそれを感じて、炎の塊を解除する

ステイル「……はあ」

重傷に加えて、体晶の負担
それに耐え兼ねたのもあるが一番の理由は

ステイル(コイツは、移動ができないからね)


ステイルは痛みを堪えながら、立ち上がる
足が悲鳴をあげる、やはり骨折しているかもしれない
だが壁に手をつき、引きずりながらも進む

ステイルが見るは、『幻想猛獣』と御坂美琴の戦場


353:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/19(火) 22:56:23.72 ID:1J9Kn0PSO
ステイルは切り札で美琴を援護することを決めた

ステイル(まず、出現させる座標を指定する)

切り札を出すために必要な、何度も繰り返してきた作業

ステイル(そして、そこに炎を運ぶための最適な道などを…見つけ、演算する)

頭で確認しながら、黙々とこなしていく

ステイル(最後に『体晶』を舐めて…)

まるで初心にかえったように

ステイル(炎を座標におくる!)


新しく、生まれ変わるために


ステイル「いけええぇぇぇッッ!!」


354:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/19(火) 22:57:15.47 ID:1J9Kn0PSO
美琴は不死身の化物に対し善戦していたが
ついに足元をすくわれた

文字通り、足を触手に取られてそのまま引きずられる

美琴「うわわわわわわわぉ!!」

そんな隙だらけの美琴にに怪物の長い腕が襲いかかる
電撃で応戦しようとしたが

炎の塊、『幻想猛獣』にも劣らない大きさの炎が化物と対立するように現れ、腕を溶かし美琴を守った


美琴「!!」

ステイル「これは僕が手柄を独り占めするための行動だ、借りはつくらせないよ」

後ろからの声
木山と共に肩を支えながら歩くステイルの


355:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/19(火) 22:57:58.18 ID:1J9Kn0PSO
美琴「……アンタ」

ステイル「あの化物については今、花の少女がなんとかしてくれている」

美琴「……そ、そう…でも大丈夫…?」

ステイルのふらつき具合を心配する美琴
先程、ミスで敵の光線が飛んだ
それのせいではないか、と思っているのだろう

ステイル「いいよ、逆に頭が冴えてる」

そう慰めて、ステイルは『幻想猛獣』と張り合う炎の塊を操る


356:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/19(火) 23:00:45.96 ID:1J9Kn0PSO
炎の塊がうねる


美琴「あれは…」

美琴が何かを思い出したように呟くが、それに反応する暇はない
『幻想猛獣』が炎を避けるようにコチラに腕をまわしてきた

それを、あの炎の腕を出して防ぐことにする
出現させた時と同じ様に手順を頭で確認しながら

ステイル(炎をおくる!)

そうすると狙い通り、炎の腕が現れて『幻想猛獣』の攻撃を防いだ
生えた、というよりは炎の塊から押し出されたという感じに突き出た

しかし防いだ炎も揺らぎ形が崩れるが、すぐ修復する

ステイル「キミと同じだよ」


357:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/19(火) 23:01:37.63 ID:1J9Kn0PSO
ステイル「やられてもすぐ戻る」

ステイルは炎の塊の頭上から巨大な手を出して


ジュウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥ、と不死身の化物を焼き潰した



ステイル「自分の厄介さを、実感してもらえたかな?」


368:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/21(木) 21:00:53.86 ID:MQq2mYoSO
ステイルは『幻想猛獣』を焼きつくした
だがステイルも美琴も気を抜かない

ステイル(すぐに……)


美琴「…………?」

しかし思わず気を抜いてしまいそうになる

ヤツはすぐに再生するかと思われた
だがいつまでたっても『幻想猛獣』は焦げ臭い煙を舞い上がらせている

美琴「……どういうこと」

美琴が疑問を呟くと木山がそれに答えた

木山「……『幻想御手』のアンインストールに成功した」


369:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/21(木) 21:01:47.24 ID:MQq2mYoSO
ステイル「だったらアレは…?」

ステイルが化物から目を離し、力を抜く
それに木山は喝をいれる

木山「まだだ!」

すると『幻想猛獣』はゆっくりと再生しながら、炎の塊を攻撃し揺らがせた

その瞬間、ステイルが苦しそうに呻いた

ステイル「ぐぅ……っ」

ステイルから、本人の意思に関係なく再生のための炎が送り込まれたのだ
ステイルは既に限界だが、まるで万全のように流れ込んだ

美琴が疲労により電撃が出せなくなることがあるように
能力者の体調によって、能力は使用困難になることがある

だがステイルはその本能のブレーキともいえるものが壊れている

もちろん『体晶』のせいで


370:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/21(木) 21:02:48.40 ID:MQq2mYoSO
まさに能力者あってこその能力が、能力者を支配しているともみえる


これは『不死身の炎』の仕組みに問題があり
これを使用するために必要な演算式に、予め再生に使う炎の演算式も組み込んでいるのだ
『体晶』無しだと、その予約式を好きな時に発動させることができる
だが今は暴走でそれができない

木山「大丈夫か…?」

ステイル「大丈夫……」


371:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/21(木) 21:10:33.81 ID:MQq2mYoSO
だが明らかにやせ我慢ということが分かった
前述の通りステイルは怪我のせいで能力をまともに使えないのに、まともに使わされている

そんな様子から美琴はステイルの無茶を許さなかった

美琴「休んでなさい、後は私がやる」

そうして美琴は身を翻し、木山に質問をする

美琴「どうすればいいの?ネットワークが完全に壊れるまで待つとか?」

木山「力場の塊を自立させている核のようなものがあるはずだ」

美琴「……分かった、それを破壊すれば…」

と言った美琴は突然固まる
それと共に口から出た強い言葉も途切れる
いや、途切れさせられた

『幻想猛獣』の悲痛な叫びにより


372:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/21(木) 21:11:17.05 ID:MQq2mYoSO
『ntst欲kgd』


『kg苦s』


『n憤kd』


ノイズの混じった謎の、そして時として鮮明になる声に

『w羨―≡≡≡≡===――――何の力もない自分がいやで、でも憧れは捨てられなくて』

美琴「……」

ステイル達は今の声には聞き覚えがあった

ステイル「……今の声は…?」


373:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/21(木) 21:12:17.47 ID:MQq2mYoSO
『――――――――≡==―――dknr歎yjtnj』


ステイル「……」

その他様々な叫びに、誰も声を出せない
何を思い、黙るのかは本人しか分からない

その一人、ステイル=マグヌスはなにを思っているのか


―――『でも憧れは捨てられなくて』



―――『なんで!自分の大切な気持ちを簡単に捨てられるんだよ!!』



ステイル(……憧れは捨てられない)

そうか

インデックスの顔が頭から離れなかったわけ

捨てられないんだ
インデックスとの繋がりを


374:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/21(木) 21:13:49.96 ID:MQq2mYoSO
ここで無責任にもステイルの意識はおちた

次目覚めた時には

ステイル「!」


美琴「あ、起きた」

瓦礫の散らかった周囲
ステイルはまだあの戦場にいた

初春「大丈夫ですか!」

周りをよくみると、初春も木山もいた
唯一、いないのは


ステイル「……」

美琴「私が、決着をつけたわ」

ステイル「そうかい」

重く語る美琴にステイルは息を吐く
さらに詳しく訊くと、今は木山春生を連行する警備員の増援を待っている所らしい


375:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/21(木) 21:14:59.44 ID:MQq2mYoSO
ステイル「……そうかい」

ステイルは上体をおこす
初春は止めようとするが、それを聞かず

ステイル「だったら僕は帰らせてもらうよ」

初春「えぇっ!?」

美琴「何いってんの、病院に…」

さらに皆が止めにかかるが、やはり聞かない
ステイルはこれ以上こんなところにいるわけにはいかない

ステイル「今すぐ、行かなければいけない所があるから」


376:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/21(木) 21:15:43.14 ID:MQq2mYoSO
初春「で、でも…」

美琴「そうよ、せめて診てもらってから…重傷よ!」

ステイル「悪いが、聞けない」

そう断言し、近くにある鉄棒を拾い、それを松葉杖にしながらノソノソ歩く

速度は遅いが、力強い
美琴も初春も止められない、気迫があった

ステイルも二人には気にとめず去る


ステイル「……ありがとう」

だが背を向けて礼をいう


たくさんのことを教えてくれた


377:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/21(木) 21:16:33.25 ID:MQq2mYoSO
ステイル(……行く)

ステイルは一歩一歩前に進む

ステイル(会いにいく…)

ステイルに足りなかったもの
それは単に強い精神
あの花の少女のように、決してブレない

地獄の底に一人取り残されたのなら、そこから這い上がってでも再び助けにいく

ただそれだけのことだった


378:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/21(木) 21:17:25.01 ID:MQq2mYoSO
インデックスは想われてはいたが、幸せではなかった
勘違いといえどインデックスは泣くほど苦しんでいた
それにまだ記憶の問題がある
ステイルから捨てられなくともインデックスはまだ十分な幸せを持ってはいなかった

だったら、別にかつてのパートナー達と協力しなくてもいい
救うべきだった

それどころか、さらにインデックスの幸せを奪ってしまった


反省の渦にのまれるが、今はそんな過去形の言葉を並べる時ではない

ステイル(……待っていてくれ)


379:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/21(木) 21:18:03.84 ID:MQq2mYoSO
もう捨てられているだろう
インデックスはこちらを向いてくれないだろう
勝手だろう
会う資格なんてないだろう


でも

捨てられない

黒髪の子が憧れを捨てられず『幻想御手』を使ってしまったように

どうしても捨てられない

もう一度


ステイル(……インデックスに、会いたい)


拒絶されたら、インデックスを助けてから消えよう
と心に思いながら歩く


384:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/21(木) 22:59:23.11 ID:MQq2mYoSO
学園都市の範囲から外れた東京
そのどこかに存在する、とある安いアパート

その一室の扉の前に、ポニーテールでおヘソを見せ、ジーンズの左足の裾を太股の根元までバッサリと切っている
加えて腰に二メートルはある刀を下げた容姿の女性がいた

名を、神裂火織という

彼女が壁にもたれながら待っていると
その部屋の扉が開かれ、別の少女の声が聞こえてきた


「一応。夕食を食べさせて寝かしたわ」


神裂「ご苦労様です、姫神秋沙」

姫神秋沙と呼ばれた、腰まである黒髪で巫女装束を着た少女は言葉を返す

姫神「いいの。上条君の家に居候させてもらっているから。これくらいやらせて」


385:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/21(木) 23:01:01.24 ID:MQq2mYoSO
そう
ここは上条当麻の住んでいたアパート

ずっとそのままにしていたため、まだ上条の部屋ということになっていた


四日前のあの後、上条達は動かないインデックスを連れて学園都市を出た
そのままイギリスに帰る、という予定だったが

上条『調べたいことがあるから、学園都市にしばらく通う』

と上条がそんなことを言い出した
意図は分からないが、譲らないので神裂は折れ

こうして姫神を住ませていた上条の部屋で待機することにした


386:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/21(木) 23:06:56.44 ID:MQq2mYoSO
続けて上条部屋の居候兼、管理者となっていた姫神は言った

姫神「それに。貴方達には借りがある」

神裂「それに関しては気にしなくていいと申し上げたはずです」

借り、とは
姫神はかつて京都の山村に住んでいた時に、とある魔術師に拉致されたことがある

それをインデックスを捜索している最中だった神裂と上条に発見され救われた

助けはいらないと言うのに
第一の目的を置いてまで助けられた
その後、帰る場所もなくなっていた姫神はこの部屋を与えられたというわけだ


姫神は余計なお世話と思うと同時に
自分のために一生懸命になってくれた二人に感謝の念を抱いた
だから救われた


姫神「……。まあそれは置いておいて。上条君はまた…」

姫神は無表情で、二人の間では定番となる質問をした
それに神裂は僅かに困った色を混ぜた表情で答える

神裂「はい、学園都市の図書館に籠りっきりです」


387:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/21(木) 23:07:52.86 ID:MQq2mYoSO
神裂は頭に手をあて、焦りを感じさせるように

神裂「気になることがあるらしく、脳に関する書物を頭を抱えながら読みあさっています」

姫神「脳」

そのワードに姫神は反応する
理由は簡単

目の前の部屋で眠りにつく少女、インデックスの抱える問題に引っ掛かったからだ

姫神「なにか。掴みかけているのかしら」

神裂「さあ…ですが余り時間もありません」

神裂の言葉には焦りの他に、僅かな期待も混じっていた


389:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/21(木) 23:10:27.16 ID:MQq2mYoSO
神裂「……そろそろ、時間ですね」


そう言うと神裂はアパートの階段を下っていく

上条当麻を迎えにいくため、学園都市にいくのだ
自分から遠ざかる神裂に姫神は呼び掛ける

姫神「晩ごはんは。私が作っておくから」

神裂「感謝します」

そう言い、神裂は足早に学園都市に向かっていく
神裂を見送りながら姫神は

姫神(いつものように。もうしばらくは帰ってこないだろうな)

と、思いながら二人の帰る時間帯を考慮して夕飯の準備にとりかかろうと頭で呟いた


390:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/21(木) 23:12:47.61 ID:MQq2mYoSO
少し時間を溯る


ステイルが去った『幻想猛獣』の被害現場

そこに警備員が駆け付け、この被害の原因であり、『幻想御手』の黒幕の木山を逮捕した

木山は何も抵抗せず警備員に連行される

だが美琴と初春は確かにきいた
この騒動をおこした理由である
とある子供達を救う、という目的を諦めたわけではないと

ということで『幻想御手』の事件は一件落着

だからなのか、美琴は最後に一つの疑問が湧いた
その勢いでトラックに乗せられる直前にも関わらず、木山に質問した


美琴「よくあんな方法を思いついたわね」


391:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/21(木) 23:17:55.81 ID:MQq2mYoSO
木山「……」

木山は何を思ったのか少し間を置いた
そして僅かに息を吐き、質問に答える

木山「このアイデアは『君』と『ある男』の二人をヒントに得たものだ」

美琴「……はあ?私!?」

美琴は自分がヒントになったという返答に気をとられて、頭に刻まなかった


共に口から出た、もう一人のヒントとなった存在を


後に、ステイル=マグヌスにとって最大の敵となる存在を


397: ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/23(土) 21:08:28.31 ID:hszRIDJSO
学園都市の図書館

そこそこ資料と人が集まっているその場所で
一人のツンツン頭の少年が唸っていた

上条「…………く」

上条は体をのけ反らせる
彼は一日中この場で本と睨めっこ
今日だけではなく、二十一日から今日までの三日間、ずっと

上条「…………」

頭を少し休め、再び本を読むのに集中する


398: ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/23(土) 21:09:49.64 ID:hszRIDJSO
上条が見ているのは脳に関する分厚い本だ

上条(……今度こそあってくれよ…)

上条は小さい文字がたくさん書かれた本のページを素早く捲っていく
別に速読の天才というわけではない

そもそも上条は脳の勉強をしているわけではなく
知りたい情報を探しているだけである

だから知りたい情報が書かれている範囲を急いで探している

上条(…………ここだ)


手を止めたページに書かれていたこと


『脳の記憶容量』


399: ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/23(土) 21:10:46.65 ID:hszRIDJSO
上条「…………」


『脳とは、一四〇年分の記憶を溜めることが可能である――――………』


上条(だーっ!だからそれは分かってんだよ!知りたいのはそこじゃなくてだなぁ!!)

上条が唸る訳
それは四日前に戦った一人の能力者が呟いた言葉にある


『だったら完全記憶能力者は全員五、六歳で死んでしまうんだね』

それは上条が救いたい一人の少女の記憶の問題について
疑問を投げかけるような言葉

上条(人間が一四〇年分の記憶を溜めることができるのは分かった)

だがインデックスは完全記憶能力者であった

そして事情により、脳の八五%を魔道書の記憶(ほかん)に使っているため
残り十五%の記憶(おもいで)は一年ごとに消去しなければ生きていけない


400: ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/23(土) 21:12:23.01 ID:hszRIDJSO
だからこそ脳について調べ始めた
そうしているうちに小さな引っかかりが
大きな疑念へと発展していった


上条「……一四〇年分の一五%が、一年ってのは計算がおかしいだろ」

単純な計算でいけば、約二一年くらい

しかし、まだ確信には至らない

科学と魔術だ
必要悪の教会の『一〇〇』と、この本の『一〇〇』は基準が違うのかもしれない

だから更に調べているわけだが

上条「…………くそ、どういうことだよ」

本だけでは限界がある
脳の研究者に訊いてみるかとも思ったが
上条は許可を得ているとはいえ、密約みたいなもので正式な許可はない
IDも持たない侵入者なのだ


401: ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/23(土) 21:13:41.36 ID:hszRIDJSO
上条(…………アイツ、に……訊く、か……)

あの疑問を投げた本人に訊く
一番手っ取り早い方法だが躊躇っていた

彼もまたインデックスを救いたいと思っていた一人
しかしなにかに絶望し、諦めてどこかへ消えた

上条としては協力してほしかった
色々と優れていたし、アイツだって本当は救いたかったはずだ

そしてなにより、途中で投げ出すなんてマネは許せなかった
だが


上条(アイツを探す時間はもう無い、インデックスは“俺が”救うんだ)


以前の彼なら無理やり引きずってでも、ステイルを連れ戻しただろう
だが上条は以前の失敗から何かがズレた

上条(もう二度と、負けねぇって決めた…消えたヤツに構ってて、負けるわけにはいかねえんだよ…)


リミットまで後二日
時間がないからこそ弱音ははけない


402: ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/23(土) 21:15:30.95 ID:hszRIDJSO
上条「くそ…」

叫びたいが、図書館ということで声を抑える

上条「明日は、パソコンが使える所にいってみるかな…」

口に出しながら考えをめぐらせていると

神裂「上条当麻…」

上条「……神裂…って、もうこんな時間か」

時間がたつのが早い
学校に行っていたころには感じられなかったこと

上条「くそ………」

再び我慢の副作用から出る言葉呟く

何の収穫もない一日が、また終わった


403: ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/23(土) 21:19:40.10 ID:hszRIDJSO
神裂「閉館まで後二十分程度ですね」

神裂は毎日入口で見ている情報を伝える

上条「だったら…」

神裂「では残り時間、私はいつものように完全記憶能力者についての資料をあたってみます」

神裂がギリギリにしか来ないのは、この調査が教会にバレないための保険
上条も協力を受け入れている

上条「ああ」

インデックスが助かれば、誰が助けようが関係ない
ステイルのように消えた人物はほっておくが
学園都市に進入する前、インデックスのパートナーを受け入れようとしたように、彼女のためになる人は受け入れる




それは


404:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/23(土) 21:23:58.16 ID:hszRIDJSO
上条と神裂はアパートに帰り、姫神のつくった夕食を食べていた

この部屋には四人の人間がいる
しかし誰もしゃべらない

上条「……」

神裂「……」

上条と神裂はずっと怖い顔をして、考え事をしている

インデックスはベッドで寝かされているため、やはり喋らない

最後の一人
姫神秋沙は


405:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/23(土) 21:25:11.71 ID:hszRIDJSO
姫神(……。うん)

何かを決意するため黙っていたが、やがて場の沈黙を破る

姫神「あの」

上条「……ん」

もぐもぐ、と米を噛みながら返事する

姫神「……。その」

だが躊躇うように口籠る
早く考え事を再開したい上条と神裂はそれを急かす

上条「遠慮すんなよ、言いたいことがあるなら言ってくれ」

神裂「この食事のことですか?ならばおいしいですよ」

姫神「いや」

いつもハキハキしない口調がより一層ハッキリしない
病気なのか?と心配する二人

すると、姫神はついに口を開いた

姫神「分かったことが。ある」


406:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/23(土) 21:26:52.79 ID:hszRIDJSO
上条「……分かったって何が?」

姫神「その。そこのシスターの脳について」

ガタン!と立ち上がる上条
神裂も思わず手に持っていた味噌汁の器をひっくり返しそうになった

上条「なっ、なにがっ!?」

叫ぶ
近所の迷惑など考えずはち切れんばかりに
その声に驚きながらも、姫神はゆっくりと話す

姫神「実は。私も上条君たちの力になりたくて。脳について調べたの」

神裂(……)

神裂は姫神が買い出しに随分時間をかけていたことを知っている

神裂「なるほど…その時調べていたのですか」

姫神「うん」

姫神は答える
感謝しながらも、何が分かったのかを早く知りたい上条は追及する

上条「……で、なにが分かったんだ?」


408:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/23(土) 21:28:03.14 ID:hszRIDJSO
姫神「うん」

姫神は含みあるように一区切りし、言葉を続ける

姫神「あの。インデックスの脳の問題は嘘」

神裂「……」

姫神「その本を。買ってきたから」

そう言って姫神は巫女服の中にしまっていた薄い脳の本を取り出して
その証拠のページを見せる


『脳は一四〇年分の記憶が可能―――――………』


409:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/23(土) 21:29:05.22 ID:hszRIDJSO
しかしその事実に上条と神裂は驚かない
それどころか少し拍子抜けした様子で

上条「悪い姫神…それはもう分かってんだ」

姫神「え」

上条は静かに座り、続けて語る

上条「それは分かっているんだけど、インデックスにはその事実が通用しないかもしれないんだよ」

神裂「ええ、それはあくまで一般的な人間から導き出した事実」


インデックスは一〇万三〇〇〇冊もの魔道書を一字一句記憶しているおそるべき少女なのだから


姫神「……。そうだったの…。だったらこれも?」


410:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/23(土) 21:29:44.67 ID:hszRIDJSO
姫神も残念そうな声は
その上条と神裂を揺るがす
まだ何か…あの残酷な事実を否定する材料が?

姫神「これ」

上条達が覗いてきたので、姫神二つ目の事実があるページを開く

そこは同じく記憶の容れ物についてのページだった

上条「………………」

上条の顔が変わる

そこに書かれている事実


411:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/23(土) 21:30:28.89 ID:hszRIDJSO
『人間の記憶は一つだけではない

意味記憶…言葉や知識を司る
手続き記憶…運動の慣れを司る
エピソード記憶…思い出を司る

などと、それぞれ独立しているのだ』


上条「これ……」


『何かのショックで記憶喪失になった時、記憶を失っても歩き方まで忘れたりしない』

神裂「…………」

『エピソード記憶に衝撃がきても手続き記憶にまで影響はない』

『完全に容れ物が違うから』


姫神「各々独立しているのなら。インデックスの魔道書の意味記憶で。エピソード記憶が圧迫されることは。ないのでは」


412:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/23(土) 21:31:14.46 ID:hszRIDJSO
『魔道書の記憶八五%に圧迫され、残り一五%では一年しか生きられない』

それは



だとしたら今まで教えられたこと全て

疑わしい


嘘だったのだ


413:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/23(土) 21:32:09.56 ID:hszRIDJSO
上条「…………はは」

笑った

神裂も同じく笑う
そしてある人物の顔を思い浮かべて、拳を強く握る

上条「馬鹿だな、俺らは」

記憶容量『しか』見ていなかったからこそ、見落とした
必要悪の教会の言い分を一つも信じなければ
調査初日から気づいたかもしれないだろうこと


―――鎖をつけた

絶対魔神(インデックス)が裏切れないように

上条「……よく考えれば、インデックスみたいな危険な一〇万三〇〇〇冊を…野放しにするはずがないよな」


414:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/23(土) 21:33:23.55 ID:hszRIDJSO
上条「ありがとう、姫神…」

ストレートな言葉に姫神は誰にも分からないくらいに薄く、顔を赤く染める

姫神「ううん。いいの」

返したが、遅かった
上条は、夕食もほったらかしにして神裂と会議をしていた

上条「でもインデックスが記憶で苦しんでいるのは本当ぽいよな」

神裂「……だとしたら、簡単でしょう、可能性は一つ」

神裂は脳に関しては疎いが、魔術の知識は上条以上にはある

神裂「……記憶を何かで圧迫させているのですよ」

必要悪の教会にとってのインデックスの脅威というものも
そしてあの狐がどういう人物なのかも


415:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/23(土) 21:34:05.68 ID:hszRIDJSO
上条「でもそんな小細工、インデックスなら気づくんじゃ…」

神裂「はい、ですが仕掛けられていることがわからなかったとしたら」

インデックスの気付かない所に隠されているとしたら

上条「…………といったら頭の中……かな?」

上条「だとしたら、壊せねーぞ、右手で触れない」

神裂「その可能性は低いです、しかし記憶に干渉するのなら頭付近でしょう」

確信はないが、必死に話し合う
でも時間もない

必死に仮説にすがるのだ


416:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/23(土) 21:34:50.28 ID:hszRIDJSO
そして

インデックスの頭の近くをくまなく探っていたら


見つけた
辿り着いた


それらしいものが口の中にあった

上条はそれに触れる


417:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/23(土) 21:35:22.43 ID:hszRIDJSO


バキン


423:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/24(日) 18:46:06.74 ID:bm7BOa4SO
上条は衝撃で吹き飛ばされ壁に激突する

上条「…………!」

神裂「な……ッ!!」


インデックス「―――警告、第三章第二節。禁書目録の『首輪』第一から第三まで全結界の貫通を確認」

上条「姫神…逃げろ……」

口の中に感じる血を、飲み込み

インデックス「再生準備……失敗。『首輪』の自己再生は不可能、現状」

機械のような言葉は続く

インデックス「一〇万三〇〇〇冊の『書庫』の保護のため、侵入者の迎撃を優先します」


424:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/24(日) 18:47:17.24 ID:bm7BOa4SO
インデックスの両目の真紅の魔法陣が拡大する

インデックス「 。 、」

そしてその二つの魔法陣が輝いて、爆発した

真っ黒な雷のようなものが飛び散ったように、空間に亀裂が入る

神裂「…………」

それは部屋の隅々にまで行き渡る
まるでインデックスに近付けまいとするように

姫神「…………」

亀裂の内側から何かが膨らんでいく
開いた漆黒の隙間から流れでる獣の匂い

上条「は」

上条「あははははははははははははははは!!」


425:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/24(日) 18:48:18.95 ID:bm7BOa4SO
上条は馬鹿のように笑った

奥にある『それ』さえ倒せば

助けることができる

終われる



決意と共に、上条は強く硬く拳を握る


426:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/24(日) 18:49:04.81 ID:bm7BOa4SO
それと同時に、ベギリ、と亀裂が一気に広がり、開いた

その亀裂から光の柱が襲いかかる

上条の決意を呆気なく引き裂かんとする一撃が


上条「!」


427:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/24(日) 18:50:15.12 ID:bm7BOa4SO
レーザー兵器に近い、純白の光の攻撃を上条は右手で受け止める

上条「………………………ッッ!」

右手に当たると、『幻想殺し』により光は四方八方に飛び散るが


上条(消えない……!しかも押され…て……ッ!!)

神裂「……な、彼女が魔術を……し、しかも『竜王の殺息』!?」

刀を構えていた神裂が驚愕している


428:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/24(日) 18:51:01.90 ID:bm7BOa4SO
呆気にとられる神裂に上条は叫ぶ

上条「……ぐ、神裂!それより…なにか弱点とかはないのか!?」

その声に神裂は目覚める

そして先程の上条と同じく、決意を固める為に目をつむり息を吐き


神裂「Salvare000!!」


自身の『魔法名』を名乗る
同時に『七閃』を上条を助けるためにインデックスに放った


429:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/24(日) 18:52:01.44 ID:bm7BOa4SO
勿論、インデックスを傷つけるつもりも毛頭ない

放った先はインデックスの『足元』

すると襲われた床が薄く、面に対して平行に削りとられる
その破壊でインデックスは後ろに倒れこみ、連動して『竜王の殺息』もインデックスと同じ軌道を描いて
屋根を貫き、雲を引き裂いた

上条「…か、は………っ」

神裂「あの魔法陣はインデックスの眼球と連動しているのでしょう」

痛む右手をブラブラさせながらインデックスを警戒する上条に告げる

神裂「……今ここに、あれに対抗できる術はありません」

上条「だったら…」

神裂は頬を伝う汗にも気づかず、緊張した声で返す

神裂「私が時間を稼ぎますので、貴方がその間に亀裂の先にあるものを!」


430:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/24(日) 18:52:46.94 ID:bm7BOa4SO
上条「な…………っ!」

文句を言おうとしたが、インデックスが起き上がる

神裂「なにも犬死しようと言うのではありません」

インデックスと連動し、魔法陣も、『竜王の殺息』も再び上条を狙う

神裂「インデックスを助けると同時に私も助かるのです」

神裂の言いたいことを察知し、上条は何も言わずインデックスの方へ走りだす

神裂「ついでに私も救っていただけたら、助かります」

そうして上条を迎撃しようとする光の柱と、神裂の『必殺』が激突する


431:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/24(日) 18:53:13.88 ID:bm7BOa4SO
上条は走る

命をかけて、体を張る人のため

頼んでもないのに、インデックス救出のため脳について調べてくれていた人のため


そして

残酷な物語のヒロインを救うため
この物語をぶち殺すため


自分のため


432:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/24(日) 18:54:01.08 ID:bm7BOa4SO
インデックスが冷たく、機械のような声で何かを呟いている

神裂に対してか、はたまた自分に対してか

だがもう遅い

インデックスとの距離は一メートルもない

神様、この世界がアンタの作った奇跡(システム)通りに動いているってんなら

上条「まずは―――」


――その幻想をぶち殺す


433:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/24(日) 18:55:12.19 ID:bm7BOa4SO
「インデックスよ―――」



「気絶せよ」


434:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/24(日) 18:56:10.92 ID:bm7BOa4SO
その言葉で
上条が右手で触れる前にインデックスはカクン、と倒れこみ

意識が切れたことにより
光の柱も、亀裂も、魔法陣も綺麗に消え去った

上条「…………………………………………………………………は?」


神裂も同じく呆然としている
このあまりに予想外で呆気のない決着に


原因の声が聞こえてきた場所
上条と神裂が振り向くと、そこには


435:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/24(日) 18:56:46.22 ID:bm7BOa4SO
「当然、疑問は湧いて出るだろうが、答える義務なし」

二人が捉えた人物

長身でオールバックにした緑の髪
イタリア製の純白のスーツに高価な靴

その者の名を言ったのは上条でも神裂でもなく
外で立ち尽くしていた姫神秋沙


姫神「アウレオルス=イザード。……」


440:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/24(日) 21:27:51.03 ID:bm7BOa4SO
アウレオルスは玄関を跨ぎ、歩く
余裕の笑みを浮かべながら
かつて『誘拐』するほど固執していた姫神の方を見もせず

上条「……お前、なんでここに…てかインデックスに何をした!」

アウレオルス「答える義務なしと言ったはずだが」

歩くアウレオルスに、再び後ろから姫神が声をかけた

姫神「……。あなた。まさか」

姫神は先程のインデックスに使った『なにか』について勘づいているようだ
しかしアウレオルスは語らない
理由は何度も語った


アウレオルス「久しいな、とだけ言おう」


441:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/24(日) 21:29:21.80 ID:bm7BOa4SO
アウレオルス、上条当麻、神裂火織、姫神秋沙

この四人は以前も邂逅した

かつて己が目的のため、姫神秋沙を誘拐した魔術師

それがアウレオルス
だが姫神を救いにきた上条と神裂に破れた

それだけの出来事だった
だが、それだけの仲ではないのだ

上条「インデックスになにを……」

あまりの出来事の連続に上条は同じことしか言えない
逆に神裂は冷静に

神裂「……『グレゴリオの聖歌隊』だけで彼女を止められるとは思えません、一体」

アウレオルス「釈然としないか」

アウレオルスは一言だけ残し、聖人を横切る

アウレオルス「答える義務なし」


442:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/24(日) 21:30:26.48 ID:bm7BOa4SO
やはり言うのはそれだけ

上条はもうわけが分からなくなってきた

少し前までは、右手でインデックスを救おうとしていたはずだ

しかし突然この男が現れ、何かをしてインデックスを沈めた

そして彼は今、“インデックスに歩みを進めている”


アウレオルス「……」

上条は思わずインデックスへの通路を塞いでいた
息を荒げて、必死になってアウレオルスを止めようとしていた


上条「……何をしたか、って言ってんだよ!!」

何をしたかは分からない
だが、連れ去り何をしようとするかは予想がついた


443:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/24(日) 21:31:28.38 ID:bm7BOa4SO
アウレオルスは息を吐く
そして、鍼を取り出して自分の首に刺し

アウレオルス「退け」

そうアウレオルスに呟かれると、上条は軽いピンのように横に退かされる

上条「ご…ぅ………っふァァァァァァァァあああああッ!!」

壁に激突した所で動きが止まった
何もない所から、横腹を鋼鉄で殴られたような感触に絶叫した


神裂「な……先程といい…以前の貴方にそんな力はなかったはず…」

アウレオルスの言う現象が、そのまま起こる
その様子に神裂の中に徒ならぬ懸念が生まれていた

アウレオルス「聖人、貴様の言う通り、『これ』は貴様らに屈辱を味あわされてから完成させたものだからな」


444:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/24(日) 21:32:15.63 ID:bm7BOa4SO
そう言い、アウレオルスはインデックスを抱える

上条「が……」

それによりアウレオルスの目標はほぼ達成された、と上条達は思った


以前の出会いでアウレオルスの目的も『インデックスを救うこと』と知ったから

そして、彼がかつてインデックスのパートナーだったことも

だからこそ、彼は勘違いしていることがあることも知っている


445:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/24(日) 21:33:06.62 ID:bm7BOa4SO
上条「待て!」

上条は吠える
それに対してアウレオルスは上条を睨む
上条も真っ向から挑み

上条「お前は…姫神の能力を使い、吸血鬼をおびき寄せて…インデックスを吸血鬼にするつもりなんだろ?」

アウレオルスがかつて姫神を誘拐したのもそのため

横腹の痛みを堪えながら

上条「……記憶の問題を解決するには…人ならざる身にすれば、とかまだ思っているんだろ!!」

かつて対立した時に、彼から聞いたことを復習するように

上条「だけど、よ…」

上条「脳の八五%が魔道書に占められていて、一年ごとに記憶を忘れなければいけないってのは嘘だったんだよ!」

彼もまた、あのカラクリに引っかかったパートナー
事実を告げ、彼の目的を阻止しようとする
これは、戦わなくても済む問題だ

そう思っていたから


446:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/24(日) 21:34:02.25 ID:bm7BOa4SO
だがそんな希望をアウレオルスは打ち砕く


アウレオルス「当然、そんなことは知っている」


上条「は?」

驚きの言葉に黙っていた神裂も声を出した

神裂「……な、」

上条「……」

アウレオルス「そして先程の禁書目録を見て、全て把握した」

謎の力
そして、真の答を知っていた


あの時の彼とズレが多い
月日が経ち、彼も色々と変わっていた


447:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/24(日) 21:35:16.99 ID:bm7BOa4SO
上条「じゃあ…」

上条「なんでインデックスにこんなことをしたんだ」

アウレオルスはインデックスを手中に収めたからか、饒舌になる

アウレオルス「分からんか?」

アウレオルス「当然、インデックスを救うため」

アウレオルス「そして、貴様らの言い分は全くの見当外れだ」

アウレオルスは目を細めて、上条達を見下しながら

アウレオルス「記憶についての事実が、ああだった以上吸血鬼にする気など全然ない」


448:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/24(日) 21:35:59.24 ID:bm7BOa4SO
上条は動く
アウレオルスからインデックスを取り戻すため

しかしやはり

アウレオルス「これ以上、貴様はこちらにくるな」

アウレオルスの言葉により、その通り上条は一歩も動けなくなる

上条(……な、んなんだ、だからこれは…右手が効かない)

以前は『偽・聖歌隊』という
大量の人を操り、その者達に魔術を使わせて、攻撃する
そんな戦法をとっていた


しかし今は全く違う魔術で闘っている


449:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/24(日) 21:37:22.75 ID:bm7BOa4SO
神裂「……やはり…?いや…」

不意に神裂が何か呟いた
それに賛同するように、姫神も

姫神「その。やはり」

姫神「あれは」

それを遮るように
インデックスを抱えるアウレオルスは、決着をつける言葉を出す


450:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/24(日) 21:38:12.05 ID:bm7BOa4SO
アウレオルス「当然、インデックスは私が救う」


アウレオルス「必然、貴様らはいらないのだよ」


アウレオルス「この場の邪魔者達よ―――」

アウレオルス「全て忘れろ」


457:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/27(水) 00:49:09.11 ID:3zdRv1oSO
アウレオルス「呆気ないものだったな」

敵、とも言えない程脆すぎる者達を粉砕し
その場からインデックスを手にいれ去る

アウレオルス「しかし少々、遊びがすぎたかな」

本当はインデックスの『首輪』について知った時点で
『首輪』を消してインデックスを救えた

しかし上条達にも屈辱を味あわせたかった
目の前で救えるという確信をうばわれる屈辱を

どうせ記憶操作もあの右手で破れるだろう

アウレオルス「必然、その頃には私は見つからない所にいるだろうがな」


458:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/27(水) 00:49:53.84 ID:3zdRv1oSO
アウレオルス「フハハ」

笑う

アウレオルス(……知ってしまえば、陳腐な仕組みだったな)

それはインデックスの記憶のカラクリについて
アウレオルスはそれに気付くことができた

アウレオルス(今まで禁書目録は膨大な情報量のせいで、一年ごとに記憶を消去せねはならん)

アウレオルス(これは必定であり、抗えん宿命……と、思っていた)

しかしそれは自分一人で辿り着いた答えではなかった

アウレオルス(感謝しよう。木山春生)


459:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/27(水) 00:50:53.47 ID:3zdRv1oSO
学園都市の拘留場


木山「……」

少し前を思い出す
それは幻想御手のヒントを掴んだ日


『樹形図の設計者』の申請を断られ続け
統括理事会すら敵と気付き、絶望して

現実逃避として学園都市を出た


460:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/27(水) 00:51:48.72 ID:3zdRv1oSO
木山「……」

車を走らせていた
何も考えず、目的地も定めず

直線をはしり、曲がり道を曲がり
下り坂を下り、上り坂を上り


行き止まりで止まった

森の入口のような所だった

木山「……」

エンジンを止めた
戻る気力も今はない


461:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/27(水) 00:52:26.61 ID:3zdRv1oSO
木山「……このまま身投げするか」

木山「いや……そんなことをしたら、子供達は」

そこで木山の言葉は止まった
誰かが森の中から歩いてくる


緑髪のオールバックで、白いスーツとあまりに風景に馴染まない人物が


木山「……」

何か言われるか、と警戒していると


「悄然、としているな」


462:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/27(水) 00:54:00.13 ID:3zdRv1oSO
話しかけられた
一応相手に合わせる

木山「そう見えますかね」

木山は、初対面ということで敬語を使う
しかし相手はそんな礼儀を弁えず


「当然、私と同じに見える」

「私の名はアウレオルス=イザード、という」

きいてもいないことまで話しかけてくる
怪しさしかないが、希望や正の光がない木山春生は、乗ってしまう
自棄というヤツだ

木山「そうですか、私の名は、木山春生という」

アウレオルス「木山、か」


463:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/27(水) 00:55:40.04 ID:3zdRv1oSO
アウレオルスは目をつむり、高価そうなスーツが汚れることも気にせず土の上に座る

木山「ところで、同じというのは」

ドアを開けて、相手の声を聞こえやすくする

アウレオルス「ふむ」

アウレオルスは少し言葉を区切った、そして語る

アウレオルス「必然、救いたいと思う者が救えないと いう」

木山「!」

胸にその言葉が刺さる
本当に見透かされたらしい
言う通り、自分と同じだからか

木山「……」

ハンドルの上に顔をのせ、俯せる

見知らぬ人物と落ち込みあう
この訳が分からない状況を失笑する元気もない


464:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/27(水) 00:57:03.49 ID:3zdRv1oSO
木山「私のせいで昏睡している子供達がいてね」

傷の舐め合いがしたくなった

木山「……救えそうな手立てはあるんだ」

アウレオルス「……」

木山「だが、そこまでが遠い…」

木山は顔も見せず言う
そうしていると、男からの返事が耳に入ってきた

アウレオルス「私もだ」

アウレオルスの声が続く

アウレオルス「手立てはある、その計画も立案も済み…」

アウレオルス「だが……私が救えない、と心のどこかで思ってしまっている。それがどうしようもない壁を作り上げてしまっている…!」

言葉の意味は分からないが、とりあえず木山は聞いていた


465:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/27(水) 00:57:56.40 ID:3zdRv1oSO
アウレオルスも木山と同じく舐めあいがしたいのか、再び語り出した


アウレオルス「その者は、膨大な情報量により、脳の八五%を使用してしまっている」

木山「はあ」

アウレオルス「……残りの一五%では一年ごとに記憶を消さねばならぬ運命なのだ」

木山は無気力に聞いていたが、その理論の違和感を奇跡的に捉えた

木山「……そんなことは、ありえないはずだが」

アウレオルス「当然、常人ならばそうかもしれないが、その者は一度見たものを忘れない完全記憶能力者なのだ」

木山「……いやね」

脳の仕組みを知らない男に木山は詳しく説明する


466:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/27(水) 00:58:45.48 ID:3zdRv1oSO
それを聞いた男は呆然として

アウレオルス「まさか…それは本当なのか……」

木山「ああ」

アウレオルス「ではなぜあの時、苦しんでいたのだ…あれは縁起だったと言うのか!」

木山「そこまでは分からないが…完全記憶能力者が本を一〇万三〇〇〇冊覚えたとしても…パンクするなどありえないよ…」

アウレオルスは黙る
木山が顔をあげ、男の表情を見ると僅かに希望に満ちていた


467:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/27(水) 01:01:03.92 ID:3zdRv1oSO
木山(……)

それより木山は魔道書というのが気にかかる
だが、無気力さがそれを長続きさせなかった
その代わりに

木山「……昏睡した子供を目覚めさせる答えを弾き出す機械が欲しい」

アウレオルス「……?」

木山「しかしその機械は、一つしかない、そして二つも作れないだろう偶然できたスーパーコンピュータ」

アウレオルスは笑った

アウレオルス「ふむ。私に似ているな」

アウレオルス「それならば、その頭脳に自分が近付けば良い」

木山「……人間の頭ではとても到達できないさ、出来たとしても私にはそれほどの…」

木山の言葉を遮り、アウレオルスは断言した

アウレオルス「だとしたら」


468:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/27(水) 01:01:51.97 ID:3zdRv1oSO
木山「……」


その男の根底


アウレオルス「他人を糧にすればよい」


469:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/27(水) 01:03:32.35 ID:3zdRv1oSO
木山「……」

アウレオルス「私の到達点も、とても人間一人では成し遂げられないモノなのだ」

アウレオルス「しかし、他人を操り、利用することで可能とする」


木山「……他人を?」

利用して成し遂げられるものなら苦労などしていない
そんな仲良しこよしと会議してくれる仲間も良心も
あの暗部にはない


470:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/27(水) 01:06:24.70 ID:3zdRv1oSO
そんな木山の様子をみて、アウレオルスは言葉を選んで説明する

アウレオルス「必然、人間一人では到達できぬ、そんな頭脳を目指すのならば」


木山「……」


アウレオルス「他人を、その機械並の頭脳になるために利用すれば良いと言うのだ」

木山「……」

自分の脳を弄ってもらえというのか
境遇が似ているとはいえ、所詮は全く違う問題

彼からはヒントは得られない
そう思い始めた、その時


471:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/27(水) 01:07:50.54 ID:3zdRv1oSO
唐突に何かが閃いた

木山「あ」


―――他人に、樹形図の設計者並の頭脳になる手伝いを…


木山(頭脳、脳、あの…)

噂で聞いたことがある
脳波をリンクさせ、一つの巨大な脳を形成していると言われるクローン達

それをうまく応用すれば…
自分の演算能力を底上げできないか?

木山「…」

木山は考えるために黙る


何かが、繋がった


472:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/27(水) 01:11:24.08 ID:3zdRv1oSO
こうして、挫折という堤防を決壊させた木山は
ダムの水のように思考を流すことができた


―――


それこそ『幻想御手』
アウレオルスが何を元にヒントを与えたのかは今でも不明だが


木山(……まあ、失敗したがね)

木山(……アウレオルス、といったかな)

どこにいるか分からない男に語りかける


473:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/04/27(水) 01:12:41.18 ID:3zdRv1oSO
木山(やはり、他人を利用するなんて方法をとる人間には神様は微笑まないらしい)

木山(君、も…必ず失敗するだろう)


そう
アウレオルスは知らない
もう一人

インデックスを想い行動してる少年がいることを


481:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/01(日) 01:07:41.25 ID:AzTJHNaSO
アウレオルス=イザードは人知れぬ場所にいた
この時間帯では誰もよりつかないだろう廃ビル

アウレオルス「我慢してくれ」

と、眠るインデックスに語りかけて、固く冷たい地面に寝かす

アウレオルス(当然、インデックスは私が救う、それは必然、故に大丈夫だ、救うのは可能、当然)

自分にそう言い聞かせ、開戦の狼煙をあげる

アウレオルス「インデックスよ、目覚めよ」


482:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/01(日) 01:08:38.67 ID:AzTJHNaSO
するとインデックスはまるで中身がゼリーのように、グニャリと起き上がる
そして気絶前の風景を再現し

インデックス「警告、謎の術式により意識を奪われていた模様、逆算し術式を割り出し、対抗策を組み立てます」

と、機械のように呟き出す

アウレオルス「ふん。遅い」

アウレオルス「『首輪』よ、消えよ」

そう現実を歪めて、全ては終わるはずだった

インデックス「警告、敵兵が行使した術式は金色の黄金錬成と思われます、早急に対抗策を……」

アウレオルス「な!?」

消えなかった
まだ機械的な『自動書記』は続いている


483:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/01(日) 01:09:41.85 ID:AzTJHNaSO
それにアウレオルスは不安を隠せない

アウレオルス(馬鹿な。ありえん、確かにインデックスを苦しめる『首輪』が消えるよう命じた)

アウレオルス(それは絶対なのだ、インデックスが救われるのは必然、そのはずだ!)

アウレオルス(! いかん。私はインデックスの救世主だ、これは当然、私はインデックスを救える、絶対、必然必然必然!)

心で叫び、湧きでる不安を押し止める

そこまでしてアウレオルスが焦るわけ
それはアウレオルスの力、『黄金錬成(アルスマグナ)』は『思い通り』に現実を歪める
インデックスを救えると思えば、救えるよう現実は歪む
しかし救えないと思ってしまったら、救えなくなってしまう諸刃の剣なのだ


484:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/01(日) 01:11:14.19 ID:AzTJHNaSO
救える
そう思っているはずなのに、首輪は消えない

アウレオルスは動揺する

そんな彼にインデックスは無慈悲にも

インデックス「……対抗策の」

その言葉にハッとしてアウレオルスは薬品の匂いがする鍼を取り出し、首に刺す
そして

インデックス「準備が」

アウレオルス「眠れ!」

インデックス「…………」

対抗策はまだ完成前だったのか、インデックスは素直に言葉に従い『竜王の殺息』の亀裂も消えた

アウレオルス「ふぅ…」

アウレオルスも安心し、思わず座りこんでしまう

アウレオルス(黄金錬成が、崩れたわけではない…)

だとすれば『首輪』が消えないのは何故なのか


485:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/01(日) 01:12:28.21 ID:AzTJHNaSO
アウレオルス(……『首輪』を理解しきれていないのか)

黄金錬成の弱点の一つ
アウレオルスが『イメージできない』、『信じきれない』ものを歪めることは不可能

アウレオルスの予想ではあの『首輪』は
インデックスの記憶を圧迫して、『自動書記』を呼び出すだけの霊装、と推測した
実際それ以上はないはず

アウレオルス(まさか…)

アウレオルス(脳や記憶について理解しきれていないからなのか…?)


魔道書により八五%が占められ、一五%では一年周期で記憶を消さねばいけない
それはデタラメ

“そう”としかアウレオルスは理解していなかった

頭が悪いわけでなく、救えるという事実に浮かれ、それ以上理解しようとはしなかったのだ


487:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/01(日) 01:13:33.60 ID:AzTJHNaSO
アウレオルス(記憶の圧迫の仕組みを理解しきれていないから、か?)

その無知が、『首輪』消去を妨げている

アウレオルスは考える
そして頭に浮かんだ策はひとつ

アウレオルス(学園都市、だったか)

アウレオルス(必然、木山春生に会いにいく)

アウレオルスが知る、脳について理解ある人物


しかしこの時彼は、素直に近くの図書館にでも忍びこむべきだった
これこそが彼の失策

木山春生の思うように、まるで神様がアウレオルスを失敗へ誘っているようだった


488:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/01(日) 01:15:42.51 ID:AzTJHNaSO
インデックスを抱えながらアウレオルスは、学園都市に向かう

学園都市への道は街ゆく人間に教えてもらった

アウレオルス(ここか…)

高さ五メートル、厚さ二メートルの壁に囲まれた学生の街の前で足を止める

普通なら学園都市にはゲートを通り入るのだが

アウレオルス「開け」

そう命じると、壁が開いた
入口でもないただの壁である所が、扉のように無理やり開かされて、人が通れる程の小道をつくりだした
それにより全体がメキメキと押し潰され、綺麗な枠を描いていた壁はグシャグシャに歪む

その犯人、アウレオルスは無言無表情で作られた小道を通る


489:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/01(日) 01:19:41.27 ID:AzTJHNaSO
アウレオルスは堂々と敵地を歩く
学園都市の治安部隊など恐れる相手ではない

壁を壊したのは、目測では正確な厚さが分からなかったから
便利だが便利すぎる故に慎重にならなければいけない
学園都市より自分の能力の暴走の方が怖い
アウレオルス(しかし目的は木山春生のみ、必要以上に科学と魔術の溝は深めないでおくか)


時刻はすでに深夜
学生の街ということで人影は全くない

アウレオルス(ふむ。情報収集ができぬ)

木山が学園都市にいることは知っているが、それだけ
詳しい住居までは知らない

アウレオルス(ならば、必然、学園都市の役所にでも行く)

そうしてアウレオルスは前を見据えた


490:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/01(日) 01:21:06.76 ID:AzTJHNaSO
すると、その目には静寂が包む闇に染められたビルが立ち並ぶ学園都市の風景が入ってくる

そしてその中に少年が一人

夜の暗闇より黒い服を纏い、それでいてその闇を拒絶するかのような赤い髪をたなびかせ

弱々しく立っているのに、何故か巨大な大木のような圧倒的存在感、威圧感


それを肌で感じながら、アウレオルスはその少年に問いかける

アウレオルス「何者だ?」

明らかに、ただの通行人とは思えない
鷹のように、鋭く突き刺す視線を放ちながら赤髪の少年は答えた

「ステイル=マグヌス」


491:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/01(日) 01:23:33.41 ID:AzTJHNaSO
時間は溯り、アウレオルスが学園都市に行くと決めた頃

ステイル=マグヌスは学園都市を歩いていた
重傷の体を引きずるように、ただひたすら

ステイル(……やはりもう学園都市にはいないだろうね…)

体中に走る激痛を我慢しながら、杖がわりにしている鉄棒を持つ手に力をこめ

ステイル(インデックス…)

歩く


492:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/01(日) 01:24:29.13 ID:AzTJHNaSO
不意にガクンと膝が曲がる
足に力が入らず、倒れこんでしまった
無理もない
本来ならば立つ力など、もうないのだ


ステイル(……く)

ステイルはとある一件に巻き込まれていき、そこで重傷を負った

その時から今まで休憩もなしで歩き続けている

立ち止まったらそこで沈む
二度とインデックスに会えない気がする

だから二度と動けなくなってもいいから、止まらない


493:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/01(日) 01:25:25.15 ID:AzTJHNaSO
ステイル(もうすぐ…ゲートだ)

鉄棒を支えにして、立ち上がり再び歩きだす

彼は今、学園都市から出るゲートに向かっていた

もう学園都市にはいないと判断した彼は外出を申請してもらっていた

ステイル(無闇に歩き回るだけでは、駄目だ…今の状況を冷静に)

そうして歩いている間、インデックスは学園都市の外のどこに行ったかを模索する

ステイル(まあ……イギリスだろうね…)

霧のように薄れゆく意識を保とうと努力する頭でアレコレ考えていると


494:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/01(日) 01:27:00.71 ID:AzTJHNaSO
突然、学園都市中に響きわたりそうな轟音が鳴った

ステイル「!」

それにステイルの意識は気付けられるように、ハッキリ目覚める
そして目の前の、目的地であったゲートの壁を見て絶句する

グシャグシャに歪んでいた
まるで横からの圧力に押され、形を崩してしまっている

それなのに、形が歪んだだけで崩れた所が全くない

粘土ではあるまいし、そんなことがあるのか

ステイル(なんだ…アレは)

学園都市の能力でもあれほど物理法則を無視したような芸当はできない
だとすると

ステイル(オカルト、かな)

科学の街に、魔術がやってくる
その理由は彼女絡み以外に考えられなかった


495:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/01(日) 01:27:54.84 ID:AzTJHNaSO
ステイルは方向を転換し、犯人を探そうとする

そこに犯人はすでにいないだろうが、そこから通りそうなルートを塞ぐように歩けば鉢合わせできるだろう

そして手元の地図を見て、そのルートを割り出す自信もある

痛みも忘れて歩き出した
活力を得て、松葉杖に引きずられていた体は、松葉杖をお荷物に思っていた

ステイル「はっ…はっ…」

息苦しくなり、体が悲鳴をあげる
だが止まる選択肢はやはりない
そしてステイルは異質を放つ人物を見つける

ステイル(……いた)

それは知った顔の魔術師達ではなかった


496:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/01(日) 01:32:30.36 ID:AzTJHNaSO
緑髪をオールバックにした、白いスーツの男

そして彼の腕には、ステイルの探し求めていた純白のシスター

インデックスがいた

再会できた歓喜に、自然と力が籠っていた
顔が緩む一方で、決意がより一層固まっていく感覚に支配される


するとインデックスを抱える相手の男は、険しい表情で問いかけてきた

「何者だ」

ステイル「ステイル=マグヌス」

そう、相手に負けないくらいの覇気を纏い答えた


502:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/04(水) 21:10:06.09 ID:Ka9BL3pSO
ステイル=マグヌスとアウレオルス=イザード

二人は対峙する

相手を警戒しているため黙るステイルに対して
アウレオルスの沈黙は余裕の現れ

アウレオルス「貴様は」

アウレオルス「インデックスのなんだ?」

ステイル「……」

ステイルは答えられない
どう答えればいいか迷った


503:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/04(水) 21:11:34.67 ID:Ka9BL3pSO
彼は一度、インデックスを見捨てている
だから彼女の味方と名乗る資格はあるのか

ステイル(しかし)

しかし、救いたい
もう一度心に言い聞かせる
そして導き出した答えを口に出した

ステイル「インデックスを助けたいと思っているヤツさ」

アウレオルス「ほう」

やはりすでにパートナーがいたか、と変わらぬ魅力を放つインデックスにアウレオルスは感心する

アウレオルス「私はアウレオルス=イザードと言う」

そう自己紹介するステイルは、アウレオルスの今の心に気付いた

それは同情

ステイル「まさか…お前もインデックスの…」

アウレオルス「いかにも」


504:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/04(水) 21:13:02.83 ID:Ka9BL3pSO
ニヤリ、とアウレオルスは笑う

『同情』

その意味は

『当然、インデックスは私が救う
―――無駄な努力をご苦労』

そんな言葉が言わずとも、自信満々の表情から漏れている
だがアウレオルスは『同情』からそれを口にしない


アウレオルス「必然、貴様は禁書目録に心惹かれた今年のパートナーという認識でいいのだな」

ステイル「……そんな大それた存在じゃないさ」

ステイル「彼女からの好意は関係ない、ただ自分の自己満足のためさ」

その言葉を訊いてアウレオルスの鉄の表情がピクリと歪む


505:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/04(水) 21:15:28.61 ID:Ka9BL3pSO
アウレオルス(彼女の好意は関係ないだと)

彼はその言葉に憤然とした
自己満足、という所はいい
自分もそういう所があるから

だが口振りからすれば必然的に彼は今年のパートナー
それ即ち、インデックスに好意を向けられている存在ともいえる

それでありながらインデックスの好意は関係ない?つまりどうでもいい?

彼の身勝手さ
そして何よりインデックスをないがしろにするステイルにアウレオルスは激しく憤った

ステイルは、一度見捨てた自分にパートナーを名乗る資格はない、好意を向けられようがなかろうがインデックスを救うため動く
という意味で言ったのだが言葉足らず
正確には伝わらなかった


アウレオルス「倒れ伏せ!」


506:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/04(水) 21:17:09.45 ID:Ka9BL3pSO
その言葉で、『黄金錬成』が発動してそれが現実となる

つまりステイルは否応無く倒れ伏せられる

アウレオルス「……」

はずなのに

ステイル「……?」

ステイルは『黄金錬成』発動前と同じ態勢で
一ミリも傾くことなく立っていた

アウレオルス(……は、なに……?…ありえん。あ奴に劣等感は抱いていない、むしろ憤然とし当然倒す、と強く心に抱いているはず)

汗が顔を伝う
こんなこと絶対にありえない
あの男はおそらくこの学園都市の人間
科学サイドが魔術に、ましてや『黄金錬成』に対応できるはずがない

実際相手も訳が分からない顔をしていた

アウレオルス(禁書目録の『首輪』といい…先程から くそ 何故 ……)


507:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/04(水) 21:18:37.26 ID:Ka9BL3pSO
ステイルは、「倒れ伏せ」の言葉以来何もしてこず、本気で焦る相手を見て

経験から、相手は非常事態に陥り、今や打手なしと判断した

疲労と激痛によりおぼつかない、それでいて余裕に悠々とした歩みをステイルは進める

アウレオルス「く!こちらに来るな!!」

と、まるでプライドが捨てられない情けない人のようなことをいう相手

しかしそれにステイルは従うわけもなく
従わされることもなく

二人の距離は、残り二メートル


508:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/04(水) 21:21:51.18 ID:Ka9BL3pSO
アウレオルス「感電死!」

感電しない

アウレオルス「窒息死、圧死!!」

窒息も、潰れる様子もない

アウレオルス「……く、銃を…」

銃を顕現させ、撃つ
狙うは心臓と額
貫かれれば、確実に死に至る急所

発射され、弾はステイルにあたる
しかし彼の体の硬さに負けたように貫けず、零れ落ちた

つまり、死なない

アウレオルス「な  な 馬鹿な」

ステイルは突然、銃が現れて撃たれたことに僅かに驚いただけ
しかし、彼の歩みは止まらない

アウレオルス「………!」


509:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/04(水) 21:24:47.73 ID:Ka9BL3pSO
アウレオルス「くそ!………『死ね』!!」

それはあの右手以外では、決して回避することができない必殺

アウレオルス「!」

ステイル「悪いが」

残り一メートル
そしてステイルは指差す
その指先は、誰からも愛される聖女(ヒロイン)

ステイル「……その子を救うまで、死ねない」

アウレオルス「く…………………………ッ!!」

ついに耐えられなくなり発狂した

アウレオルス「何故、何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故!!貴様になど負けるはずがない!!」

アウレオルスは思い通り歪まない現実を受け入れられない

アウレオルス「こんな少年に負けるはずがない!加えて相手は全身傷塗れ、必然敗北の思念など微塵も流れぬ!!」

アウレオルス「私が!インデックスを救うのだ!!もう一歩、だから貴様等に横取りされてたまるか!!!この時のために……!」


どれだけの
人間を
犠牲にしてきたか

アウレオルス「 あ 」


510:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/04(水) 21:25:54.01 ID:Ka9BL3pSO
ステイルとアウレオルスの距離は一メートルもない

しかしそれ以上距離は縮まらなかった

理由はアウレオルスが距離を広げたわけではなく

ステイルが立ち止まったから

ステイル「……」

彼のインデックスを救おうとする執念を見て、立ちどまらされた

彼はあの時の自分に似ている
しかし違うのは、インデックスを救うために努力し、ゴールまであと一歩にいるということ

ステイルは誰が救おうが関係ないという信念とインデックスを救いたいという感情の元、再び立ち上がった
しかし

ならば

今の状況は、アイツに譲るべきなのではないか

ステイル「……」

アウレオルス「く………」


511:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/04(水) 21:27:39.39 ID:Ka9BL3pSO
ハッとして前を見ると、アウレオルスはインデックスを地面に優しく置いていた

アウレオルス「ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

そして走る
先程のように、ただ言葉を出すだけでなく真直ぐ走る

この男は学園都市の外周部にある壁をとんでもない形にしたと思われる人物

警戒すべきだが、インデックスの譲歩がステイルの全身の力を抜けさせてしまっていた

ステイル「……あ」

だがアウレオルスの突進は今の自分以上に弱々しかった
自分と同じく、自ら敗北するためと言いたげなほどに


512:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/04(水) 21:28:21.15 ID:Ka9BL3pSO
ステイルはそんな男を殴った

能力の炎も使わず殴った
いや、殴った、とも言えないだろう
そんな、相手を押し返す気もないような一打
見事にうまく、アウレオルスの顔面に激突した

相手の緑髪の男はグラリと態勢を崩し倒れだす


ステイル「…………」


513:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/04(水) 21:32:11.53 ID:Ka9BL3pSO
ゆっくり倒れこみながらアウレオルスは

アウレオルス(この結果は、必然)

思う

ステイルに『黄金錬成』が通用しなかったのは、『黄金錬成』がしっかり発動していたから


アウレオルスは、心で考えてしまっていたのだ


こんな、誰かのために誰かを平然と犠牲にする人間に、インデックスを救う資格はない

だから『今回』のパートナーに救ってもらうべきだ

彼には手を危害を加えず、インデックスを譲ろうと、そう心の奥底で思っていた


アウレオルス(おそらく、『首輪』を消せなかったのも同じ…だろう)

激昂した時に乱した表情を戻し、目をつむり直し

アウレオルス(……では、頼んだ)


気持ちよく諦めがついた彼は静かに倒れた
そんな彼は、とても穏やかに笑っていた


514:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/04(水) 21:34:08.87 ID:Ka9BL3pSO
ステイル「……」

勝負は呆気ない幕切れだったが、想いを受け継いだ
疲れきった体に喝をいれ、息を吐いてから呟く

ステイル「……インデックスを」


―――救うんだ


そうして地面で仰向けに寝ているインデックスを迎えにゆく


515:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/04(水) 21:37:00.78 ID:Ka9BL3pSO
しかし神様はこの物語を平坦に終わらせてはくれなかった

アウレオルスは意識の断絶前に、インデックスを頼んだ、といった


それが、インデックスの眠りを


インデックス「警告。――――――――――」

インデックスを抱き抱えよう、腰をおとし無防備な格好で彼女に向かい合っていたステイルは


―――ザシュッ


ステイル「………………………あ………?」


インデックス「一〇万三〇〇〇冊保護のため、侵入者を迎撃しました」

空に、鮮血が舞う
暗い夜空を、さらに黒く塗りつぶす視界


少女の無慈悲な声と、少年の倒れた音が響いた

物語の残酷性を伝えるために、恐ろしいほど明確に


516:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/04(水) 21:40:26.84 ID:Ka9BL3pSO
皆さんレスありがとうございます

アウレオルス戦が凄くあっさりと終わってしまいました
構想段階ではもっと盛り上げるはずだったのに…


しかし力の限り頑張りますので
読んでくれた方ありがとうございました


519:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2011/05/05(木) 14:01:28.76 ID:QGPKmvtJ0
乙!
ヘタ錬が格好良くて安心した。
しかし冷静に考えれば、魔神状態の危険なインデックスを、情報も伝えずにステイルに渡してしまったということに。
ヘタ錬ェ……


520:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方):2011/05/05(木) 17:01:18.58 ID:yDD7o0MYo
アウレオルスいらなかったのでは…?
まあここ盛り上がったらペンデックス戦大変だし次期待だな!


521:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/11(水) 00:56:14.49 ID:AwS1vSoSO
>>520
確かに最初はいなかったんですよ
でもペンデックス戦は学園都市でなくちゃいけなくて

上条さんたちだけでもは私の力量では学園都市に帰ってくれないので出しちゃいました


では見苦しいのは止めにして投下します


522:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/11(水) 00:56:55.31 ID:AwS1vSoSO
ステイル=マグヌスは暗く汚れた地面に倒れた
そのアスファルトには、無数の血が飛び散っていた

綺麗好きのはずのステイルは、そんな汚い場に倒れたことに嫌悪感を感じない、感じる暇もない
いや、それ以前に『汚れている』ことすら気付けていないだろう

ステイル(……あ)

深く抉られた傷口が、黒の服を赤く塗りつぶす
その彩色は、倒れる地面にまで及び、勢いを止めない
ステイルの視界は暗い
夜の暗闇なのか、それとも瞼が光を遮断し見えないのか何が原因かも理解できないまま、ただ起き上がろうと努力する

ステイル(あれは、インデックス…ではない、おそらく……真実に近付いた者の口封じのための、魔術結社の策…)

と、頭のどこかでそう感じ、理解した
確証はないが、ステイルを問答無用で消そうとした所から間違いではないと思う


523:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/11(水) 00:57:32.45 ID:AwS1vSoSO
ステイルは、動かない体で歓喜していた
瞼一つ動かせないのに、まともに思考もできないのに、本能のどこかが震えていた

ステイルの予測の通りならば、誰かが真実に辿り着いたということ

記憶のカラクリを看破し、インデックスを苦しめる真実の原因を取り除こうとした結果が
あのようにインデックスを殺人マシーンに変貌させた

だからアレをなんとかしてしまえば
インデックスは救われる
そのはずだ

ステイル「……」

しかし

ステイル「……」

動くのは心だけ
体は何一つ動かない
脳が送る命令信号の回線が切れてしまったかのごとく
『動け』

というのに

動かない


524:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/11(水) 00:59:07.10 ID:AwS1vSoSO
インデックス「警告。『書庫』を狙うと思われる敵兵は未だ生存しています、早急に止めとなる魔術を構築します」

こうして、インデックスは無表情に機械的に思案しはじめる
手負いだったとはいえ、学園都市の超能力者を簡単にノックダウンさせた成果に目もくれず、彼女はただ頭の中の魔道書を守護する

インデックスがステイルを攻撃した魔術
それは『自動的に宙を舞い、確実に敵の息の根を止めてくれる武具』
そして『死ぬ』『敗北』する歴史が一度もない、攻略法が見つからない負け知らずの武器を再現したもの

その名を『豊穣神の剣』


一〇万三〇〇〇冊を狙うと思われる相手に“手を触れられていた”

よって速攻かつ即効の戦法で攻めた
『豊穣神の剣』ならば、確実に排除が可能であり、最低距離を開くことができる

結果、相手は倒れた
動く様子もない、感じるに生命力(マナ)も僅か
だがインデックスという少女の持つ慈悲、慈愛はない『自動書記』は相手が天に召されるまで仕事に徹する


インデックス「―――追撃のための準備が整いました」


525:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/11(水) 01:01:55.09 ID:AwS1vSoSO
ステイル「……!」

ステイルは聞いた
『自動書記』の無慈悲な声を

どんな攻撃がくるかは知らないが、とりあえず構えなければ

ステイル(死ぬ)

ステイルは体を動かそうとする
腕を動かそう、などという精密な行動ではなく、体を跳ねさせたり、転がろうとする単純な大雑把な回避行動を

だが、ステイルの体は我が儘な子供のように、それら拒否をした

ステイル(クソ………………!動けぇぇぇぇぇぇ!!!)

運命とは、ただ懇願するだけでは助け舟を流さない

インデックス「!」

その瞬間、ステイルを抹殺しようとしていたはずのインデックスが、右に高速で移動した

その目的は、攻撃の命中率をあげるための移動などではなく

上条「大丈夫か!」

一人の少年の放った攻撃を回避するため

ステイル「……」

運命の神様は、懇願するだけでは助け舟を流さない
しかし自分で乗り越えるための、チャンスは与えてくれる


526:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/11(水) 01:06:23.34 ID:AwS1vSoSO
上条達はアウレオルスに記憶を消された
しかし、すぐさま上条が右手で頭を触り取り戻した

そして神裂がアウレオルスの魔力の流れを探査して、ここ学園都市にいることを割り出す

上条「……」

そして聖人の超人的な脚力を駆使して、脇目も降らず駆け付けた

そこに今代のパートナーがいるとは思わなかったが

このマラソンの功労者である神裂は倒れているステイルを救うため、動く

近くにアウレオルスもいた
意識がないとはいえ野放しにするのは危険だが、彼女的には重傷のステイルを選んだ

そして看病に関しては何もできない上条は


527:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/11(水) 01:07:15.24 ID:AwS1vSoSO
上条はステイルを『自動書記』から庇うように立つ

そしてそれを瀕死の少年は見つめる

ステイル「…」

言葉を出そうとした
だがやはり声を出す力もない

自分のていたらくに歯がみしていると、突然目の前に影がかかった
意識が切れたわけでない

神裂「酷い怪我です…とりあえず応急処置を」

目の前で自分を庇っている少年と共にいた魔術師
長身の女性が覆いかぶさるように立っていた


529:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/11(水) 01:08:18.44 ID:AwS1vSoSO
その女性は、ステイルの周りに何か作業を行っている
応急処置をしてくれる感じではない

だから構わず、鉄のように重く感じる唇をパクパクと動かす
言いたいことを伝えるため

その様子は我ながら情けない行為に見えるが、それが精一杯

ステイル(僕はインデックスを、救う)

それを上条は聞かずとも察したのだろう
ステイルの言いたいことに対しての返答を


上条「遅いんだよヘタレ超能力者、待ってはなかったけどな」


ステイル「……」

神裂「……?」

神裂はステイルの表情が僅かに歪んだように見えた
それは痛みからか

いや


530:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/11(水) 01:11:55.32 ID:AwS1vSoSO
ステイルは萎えきった体に強力な何かが、爆発的に漲っていくのが分かった

ステイル「ふ」

声も出た
ついさっきまでは、二度とできないような気までした技術を成し遂げた


『遅いんだよヘタレ超能力者、待ってはなかったけどな』

この言葉、信頼などが隠れる正の感情をこめた類のものではない、全く違う
本当に言葉の通り、待ってもいなかったヘタレを蔑んだ言葉

ステイル「は、は」

確かにその通り
あの時の自分は蔑まれるべきヘタレだった

だが今は違う
もう諦めないのだ、言われっ放しではいられない

ステイル「はははははははははははははっ!!」


531:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/11(水) 01:12:54.28 ID:AwS1vSoSO
上条「……」

ステイルに侮蔑の言葉を送った直後
上条は目の前の『自動書記』を見据える

インデックス「警告。『首輪』の結界を貫通させた人物、上条当麻の存在を確認」

インデックス「 、 。 」

あの時と同じように、魔法陣が拡大し、空間に亀裂が入る

『竜王の殺息(ドラゴンブレス)』がくる

上条「……シッ!!」

あれには幻想殺しは不利
だから、やられる前にやる

瞬時に息を吸い、地面を砕く勢いで飛び出し、駆ける
だが


カッ、と
光の柱が恐るべきスピードで発射された
努力虚しく、上条がインデックスに到達する前に『竜王の殺息』が立ちふさがる

上条「おぐ……っ!」


532:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/11(水) 01:14:07.45 ID:AwS1vSoSO
上半身を前に突き出す様に、突進していた上条は咄嗟に右手を出す

上条「……くぅっ!」

しかし体勢が悪い
こんな下半身に力が入らない状態で『竜王の殺息』を受けたらあっという間に負ける

上条「くそぉ………っ!!」

悪足掻きでもいい
なんとか立ち止まり、全く腰が入っていないが、足に力を入れて踏ん張ろうとする

そして『竜王の殺息』との真っ向勝負―――


ステイル「はははははははははははははっ!!」


と、雰囲気を壊す馬鹿笑いが後ろから聞こえた
しかし上条にはそれに反応する余裕はない

そんな、ただ前を見続けるしかない上条の視界に

『炎の塊』が現れた


533:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/11(水) 01:17:40.86 ID:AwS1vSoSO
轟!!
と燃え盛る炎は見事に『竜王の殺息』と拮抗する

上条「ッッッ!?」

突然の出来事に上条は思わず右手で炎を触ってしまう

しかしそれは、打ち消されなかった

上条(……消えない?それなのに、右手が火傷しなかった)

上条(打ち消せなかったが、火傷しないための時間は稼げた…つまり異能なのに消えない!)

そんな炎
上条は記憶に覚えがある

上条「!」


534:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/11(水) 01:18:29.26 ID:AwS1vSoSO
振り向くと、やはりあの炎の超能力者が何かをしていた

神裂の制止を無視し、顔を歪ませている
その歪みはおそらく上条への侮蔑

ステイル(情けないね、この程度の攻撃に苦労しているようでは)

その挑発を正確に読み取った上条は血管を爆発させかけた
頭に血を上らせて、叫ぶ

上条「ああああああああああああああああああああッッ!!」

ステイルに対する怒りと、自分に対する気付け


535:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/11(水) 01:20:03.00 ID:AwS1vSoSO
インデックスは『竜王の殺息』と拮抗している『炎の塊』の仕組みを看破できずにいた

その理由は簡単

ステイルのこの炎は、一〇万三〇〇〇冊にも記載されていない『超能力』だからである

インデックス「警告。『竜王の殺息』を妨害している炎は再生を繰り返して、崩壊を防止していると思われます」

だがさすがの魔道書図書館
知識だけではなく、未知なる物に対しての対応力も驚異的

それに比べてステイルは、やはり火事場の馬鹿力だけではなんとかならない

ステイル「……ハァ、ハ…」

息を吐くことすら辛く、今にも消え入りそうにステイルは耐えている

インデックスはこちらに向かってくる少年の気配を感じる

上条を迎撃したいが、『竜王の殺息』は上手いこと固定されてしまっている
その証拠に『竜王の殺息』と連動している顔が全く動かせない

インデックス「警告。上条当麻撃破のため、早急にあの炎を対応します」

こうして『竜王の殺息』を切った


536:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/11(水) 01:21:55.90 ID:AwS1vSoSO
インデックスは既に炎の対策を見つけていたようだ
感情のない言葉を流す

インデックス「対応策は、炎の核である術者の生命を絶つことと判断しました」

その言葉に上条は、僅かにステイルを庇うような態勢を取ってしまう
神裂もステイルへの即興回復魔術をかけつづけることを中断し、ステイルを守る

だがそれらの行動は無駄に終わる
二人の障害など予想の範囲内と言わんばかりにインデックスは

インデックス「状況から、距離を無視して絶命させることが可能な魔術が得策と判断しました」

ステイル「……」

ステイルは、ただ意識と超能力を保つことが精一杯で何もできなかった

だから、ビキビキビキ!!と、足の指から足首、脛、膝へと来る強烈な激痛の侵入を許してしまった

ステイル「がああああああああああああぁぁぁぁぁッ!!」

神裂「な!」

上条「くそっ!!」

インデックス「警告。『ペクスヂャルヴァの真紅石』―――発動」


537:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/11(水) 01:23:53.37 ID:AwS1vSoSO
上条は急転換し、ステイルの元へ急いだ

ステイル「あああああああああぁぁ、がああああああ!!」

慌てて辿り着いて、ステイルが痛みを感じていると思われる足から腰にかけて右手で触る

ステイル「くぅ……」

痛みは打ち消されたのか、ステイルは静まる
その姿はまるで全身に力が入っていない『屍』のようだ

上条「ッ、神裂!!」

神裂「……まだ死んではいません…しかし」

上条「クソッ!!」

歯がみして、『自動書記』を睨み付けると、間髪を入れず再び『竜王の殺息』を発動させて襲いかかってきていた
防壁を成していた『炎の塊』は、ただの炎に成り果てて、ただずむだけになっている

上条「うおおおぉぉああああああああ!!」

右手で対応しジリジリと押されながらも、押し返そうとする上条

神裂は、動かないステイルを回復させようと必死だ

そしてステイルは


538:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/11(水) 01:25:31.60 ID:AwS1vSoSO
意識は現実と夢の間にあった
もしかして命も、あの世との間にあるかもしれない

先程の上条の救済のおかげか、激痛だけでなく『体晶』の負担も共に消えていた

だが負担が消えた程度で復活できる程、今のステイルは軽傷ではない

今度こそ心すら働かなくなっていた

足の骨は関節ごとに、外されるように折られ、筋肉は引きちぎられた

ステイルは痛みの塊が、足の代わりに体に引っ付いているとしか思えなかった


視界は
暗い画面から、小さい頃に親に捨てられた時の記憶の映像に切り替わっていた

始まった
ステイルの走馬灯という名の映画が


539:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/11(水) 01:26:19.96 ID:AwS1vSoSO
捨てられ、一人で部屋に籠り親の迎えを待っていた
心で信じては、いた

だが突然、謎の白衣の人物達に誘拐され、部屋より暗い暗い密室に閉じ込められた

謎の粉を服用させられ、それを見て悪魔の歓喜を浮かべる研究者たち
訳がわからなかったがそれ以降、今までより優遇されるようになった

それからの人生は同じことの繰り返し
ただ研究者の思惑通りに弄られ弄られ、利用された

―――こんな人生しか


「おなかへった」


540:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/11(水) 01:27:35.03 ID:AwS1vSoSO
「おなかいっぱいご飯を食べさせてくれると嬉しいな」


「私と一緒に地獄の底までついてきてくれる?」

…………。

「もっとジャパニーズ特有のごはんが食べたいかも!」


インデックス。


「かわいいなぁ、あんな柔らかそうなスカートはいてみたいんだよ」


インデックス…!


初春「無茶ですよ!」

美琴「そうよせめて病院で…」

―――悪いが、聞けない


ステイル(インデックスに、もう一度、会いたい)


541:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/11(水) 01:29:06.83 ID:AwS1vSoSO
ステイル『!!』

ステイルは意識を現実に戻し、命をこの世に戻す努力をする

自分を覚醒させる努力をする


会いたい、だけじゃないだろう
助ける、のだろう

もう投げ出さない
どんな理由があろうが、どんなに体が動いてくれなかろうが

だが、今のままでは自分は死ぬ
気合いではどうにもならない現実
インデックスを、助けられない


だから


542:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/11(水) 01:29:49.64 ID:AwS1vSoSO
『可能と不可能を再設定しろ』


『目の前の壁を取り払え』


543:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/11(水) 01:34:38.20 ID:AwS1vSoSO
ステイルの、動かないはずの手が上を向いた

それにギョッとする神裂は目の前で起こる現象に、さらに驚愕する

ステイルの手からは、火が噴射されている
あんな状態で能力を使えるという事実も驚きだが、そのことは眼中にない

神裂が見るは、その周囲


まるで鉄が熱されて熱を持った時のような
“赤く染まっている謎の物質”が炎の周囲に出現していた

それは炎でも煙などでもない
確実に質量を持つように感じる『物質』だ

それはどんどん増加していき、最終的には巨大な『紅い棍棒』と化していた


神裂「な」


544:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/11(水) 01:36:54.61 ID:AwS1vSoSO
それは、ステイルの元へ落下していき、一部はステイルの体に吸い込まれていく
残った部分を、ステイルは掴む
パラパラと零れ落ちている所があるが、そんな雑さからはとてつもない威圧感があった

そして、赤い少年は絶対使用不可能なはずの足を使い、立った

神裂「……」

上条「は…?」

上条も『竜王の殺息』と闘うことを忘れて、『紅い棍棒』を持ち立ち上がったステイルを見た

ステイル「……」


545:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/11(水) 01:37:48.78 ID:AwS1vSoSO
上条達は知る由もないが、この謎の現象
その実体は

ステイルは


AIM拡散力場を溶接した


その溶接されたAIM拡散力場の塊こそが、あの『紅い棍棒』

その圧倒的異質に『自動書記』も警戒した

インデックス「警告…」


546:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/11(水) 01:40:10.30 ID:AwS1vSoSO
だが遅すぎる

ステイル「iszt救ymt」

ステイルはその細い腕ではとても振れないと思われるあまりに大きな『紅い棍棒』を振った

そしてその攻撃が『竜王の殺息』を散して

インデックスの魔法陣ごと、その先にある『首輪』を破壊した


554:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/28(土) 16:14:53.42 ID:Zmqj8Y6SO
「警こ、……『首輪』に致命……」

終焉の声が

「修正………不……う」


禁書目録の少女の悲劇の幕が

「…………」

閉じる

「………」


555:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/28(土) 16:16:15.03 ID:Zmqj8Y6SO
幕を下ろす役目を担った『紅い棍棒』は霧散して消滅する

それに合わせて、糸が切れたようにステイルも傾く

「    」

「    」

誰かが叫びながら駆け寄ってくる

「…………」

目の前に倒れている少女が見える

抱きしめたいのに、駆け寄れない

「……」


556:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/28(土) 16:17:18.22 ID:Zmqj8Y6SO
思う

口に出す気も、気力もないため、心で思う


自分は、果たしてインデックスを助けた主人公(ヒーロー)なのか

『首輪』には辿り着かなかった

謎の魔術師から手柄を横取りした

今もインデックスの方へ向えない

そんなヤツが果たして―――


でも今はいい

インデックスは助かったのだから
あれこれ考えるのは、起きてからにしよう


557:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/28(土) 16:18:24.02 ID:Zmqj8Y6SO
だがこの少年が、そのことに思い悩む日は二度と来なかった


558:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/28(土) 16:19:30.42 ID:Zmqj8Y6SO
第七学区にある病院
そこに、重傷の少年は担ぎこまれた

死にかけていた
死ぬ寸前だった
誰もが助からないと思わずにはいられなかった

しかしこの病院のとある医者は諦めない
死なない限りは助けることを諦めない信念の元に治療をする
そして患者を救う


運ばれてから、どれだけの時間が経ったのだろうか

医者はポツリと呟いた

カエル医者「……なんとか一命はとりとめたね?」


赤い髪の手術衣を着せられ眠っている少年を見つめながら


559:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/28(土) 16:20:35.45 ID:Zmqj8Y6SO
手術室の扉が開いた
その付近に置かれているイスに腰をかけていた異能者と魔術師は、一斉に立ち上がる

そして出てきたカエルに似た顔の医者に詰め寄った

神裂「どうなったのですか…」

カエル医者「うん正直危なかったが、なんとか一命はとりとめたね?」

神裂「……ほっ」

神裂達はあの後、救急車を呼んだ
そして救急車が駆けつけてくる間に魔術で応急処置をしていた

神裂「私はそのようなことしか出来ませんでした…」

神裂は己の無力さを噛み締める
これも彼女の人柄

神裂「ですがこれで…一段落ですね」

と負の感情を振りはらい、声を出して話しかけた

同じく炎の能力者の身を案じていた、自身のパートナーともいえる人物に


560:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/28(土) 16:21:39.75 ID:Zmqj8Y6SO
――――‐‐‐・・・


神裂「…………あれ…?」

返事がない
不思議におもいパートナーが立っているはずの方向を向く
そこにあったのは、ただの病院の壁や扉
人物など存在せず、病院という風景が広がるだけ

神裂は眠気や疲労で位置を掴み間違えたと思い、頭と一緒に視線を様々な方向に向ける

しかし、一向に自分と医者以外の人間は、この場に見当たらない

神裂「……」

カエル医者「あの少年なら僕の報告を聞いてから、すぐに去っていったよ?」

神裂「え」


561:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/28(土) 16:22:55.77 ID:Zmqj8Y6SO
この日『幻想殺し』の少年は皆の前から消えてしまった

それこそまるで、幻想のように


562:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/28(土) 16:27:45.72 ID:Zmqj8Y6SO
それから数時間後
深夜という闇も晴れ、朝日が昇り光が差しはじめ地上を照らす時間


インデックスという少女は病室の扉の前で右往左往している
扉を開けようとしたり、この場から去ろうとしている

インデックス「ステイル…」

インデックスは、軽い検査を受けて療養しただけで病院から解放された

そして

インデックス「ステイル」

涙ぐむ
あの魔術師達から事の顛末を手紙で知らされた


563:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/28(土) 16:30:04.06 ID:Zmqj8Y6SO
インデックス「ステイル…」

手紙を読んでから、彼の名前を呟くことしかできない
『あの後』のステイルについて知ったから

―――あの後

それは追われていた魔術師が襲撃された日
そして、ステイルに捨てられたと思われた時

捨てられたことに対して、インデックスは正直傷ついた
やっと心を許せた人物に捨てられたのだから

でも仕方がない
彼に自分を守る義務はないし
自分には縛りつける権利もない
なにより彼が傷つくなら、関わらない方がいい

そう思ったから諦めがついた
彼を前にした時にも笑える自信を、持てた


564:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/28(土) 16:34:47.82 ID:Zmqj8Y6SO
インデックス「……すている」

涙が自然と溢れだす

ステイルはあの後も頑張ってくれていた
入院するほど傷ついてまで自分のために


だからあの諦めは、彼にとって失礼なことだ
捨てたのは自分の方だったのかもしれない

だから自己嫌悪に苛まれる

インデックス「ステイル…」

グッ、と拳を握る
反省しなおしたら勇気がわいた
情けない気持ちも消えてなくなった、もう甘えない
目に浮かぶ雫も拭う

今は自己嫌悪の時間ではない
ステイルのために何かをしなければ

インデックス「……」

ゴクリと喉を鳴らして、入室した
彼のいる場所へ


570:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/30(月) 01:34:27.26 ID:Bu0DKe7SO
インデックスは扉を閉め、歩みを進める

周囲は静かだった
自分と彼以外いないのだから当たり前だが
例えすぐ真横で騒がれていてもインデックスの耳はそれを受け付けないだろう

心臓の音しか聞えない
何も見えない、考えられない

そして、ついに

ステイル「……」

インデックス「……」


571:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/30(月) 01:35:22.05 ID:Bu0DKe7SO
神裂火織
彼女は病院を出て、街の中を歩いていた

自分の仲間を探すため
消えてしまった『幻想殺し』の少年を見つけるため

神裂(……いったいどこへ)

せっかくインデックスは助かったのに
なによりも彼が望んでいたことなのに

神裂(せっかく、ハッピーエンドとなりましたのに…)

そう流れるような神裂の思考は一旦止まる

神裂(いや…)

そしてただ一つの、ハッピーエンドとは言い難い結末を口にした

神裂「ステイル=マグヌスは…」


572:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/30(月) 01:36:37.18 ID:Bu0DKe7SO
病院の一室

二人の人物がいた

手術衣を着たベッドに座る赤い髪の少年と
その側に立つ銀髪で純白のシスター

二人の間には沈黙が居座っていた
それは、少年が発した一言が原因

ステイル「誰、だい?」


573:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/30(月) 01:38:17.44 ID:Bu0DKe7SO
インデックス「……っ」

インデックスは萎縮した
まるで自分の体に氷の剣を突き刺された感覚だった
そのダメージは甚大であり、彼女の頭にある一〇万三〇〇〇冊を集約しても治療は不可能だった

しかし治せなくても、我慢はできる

インデックス「…………っ、覚えてない?」

ステイル「……」

インデックス「初めて会った時、パンをいっぱい食べさせてくれたよね」

謝るはずだったのに、彼のためになにかをしようと入ってきたはずなのに
しているのは、自分への慰め
自分のための行為


574:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/30(月) 01:39:17.37 ID:Bu0DKe7SO
インデックス「買い物もいったよね?」

ステイル「悪いけど、覚えがないな」

インデックス「私のために服を買ってもくれたんだよ?」

ステイル「……その修道服をかい?」

インデックス「……」

インデックスの顔に影が宿り、表情がみえなくなる

少年はなにかを悟った顔をした
そして少年にとっては好意
彼女にとっては凶器の真実を言った

ステイル「……君が、知り合いというのは分かったよ、でも…生憎僕は記憶喪失なんだ」

インデックス「―――」

ステイル「医者によると今入院している原因でもある、この重傷のせいで記憶が失われたらしい」


575:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/30(月) 01:40:58.17 ID:Bu0DKe7SO
インデックス「……」

彼女の白い肌が、白さの限界を通りこして真っ青になっていく
唇も乾ききり、小刻みに震える

彼女が絶望するわけ

“重傷”が原因で記憶喪失

つまり、自分のせい

―――自分の


記憶喪失になったことは、神裂から伝えられていた
でもそれなら魔術でなんとかなるかもしれない

そんな楽観が、記憶喪失という問題をどこか遠くにおいてしまっていた

でも今は違う
自分が原因で記憶を失った
改めて突きつけられることで、インデックスは現実に正面から向かい合わされた

インデックス「……ぁ」


576:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/30(月) 01:42:40.22 ID:Bu0DKe7SO
インデックス「ぅ…」

改めて思う
自分は最低だなと

分かっていたはずなのに
神裂という魔術師は気をつかってか記憶喪失の原因をボカしていたが考えれば思いつく
思いついた

しかし自分を優先し、目を背けた
なにが彼のために何かしようだ

ステイル「……」

黙りこむのに見兼ねた赤髪の少年はいう

ステイル「すまない…」

インデックス「……ううん…」


577:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/30(月) 01:43:40.08 ID:Bu0DKe7SO
インデックス「……知ってたよ、でも…信じたくなかっただけで…」

勇気を出して

インデックス「あなたは…」

涙を堪えきれず

インデックス「記憶喪失の…」

強い言葉で

インデックス「原因は…」

今にも崩れ落ちてしまいそうなくらい弱々しく

矛盾に満ちながら、言った

インデックス「わたしの」


ステイル「インデックス」


578:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/30(月) 01:46:03.21 ID:Bu0DKe7SO
インデックス「うん、わたしの名前は…」

インデックス「……」

インデックス「え?」

予想外の少年からの呼びかけに思わず、すっ頓狂な声を出してしまう

ステイル「泣かないで」

インデックス「………え」

目の前の少年
ステイル=マグヌスは記憶喪失だ
それは魔術師が医者から告げられたと言っていたし、なにより本人もそう言った

ならば何故、自分が自己紹介をする前に自分の名前を知っている?

ステイル「……すまないね」

答はステイルから帰ってきた

ステイル「記憶喪失なんて、嘘さ」


579:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/30(月) 01:46:46.87 ID:Bu0DKe7SO
インデックス「え?」

ステイル「いや、確かに先程までは失っていた」

ステイルは、人差し指を頭に突きたてながらいう

ステイル「しかし一時的なものだったんだよ、記憶喪失と判断された深夜から君が来る間に、記憶はポンと戻った」

インデックス「……そ、そんなことあるの?」

ステイル「あるよ?脳医学では常識さ」

インデックス「………………………なんだぁ……」

インデックスは、ガチガチに固めていた全身をドロドロに溶かして、座り込んでしまう


580:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/30(月) 01:47:54.34 ID:Bu0DKe7SO
インデックス「……だったら……なんであんなことしたのかな?」

ドロドロに溶けた水は、怒りと交わりどす黒い何かになったようだ
彼女にしては珍しく、本気の殺意に近い遠慮をしない感情を備えて訪ねる

ステイルはその様子に、少しだけ汗を流し、おそるおそる答えた


ステイル「アメリカンジョーク、ってヤツさ」

インデックス「私はイギリス育ちなんだよっ!!」

光る牙が赤い髪をさらに赤く染めんと、襲いかかった


581:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/30(月) 01:49:32.46 ID:Bu0DKe7SO
壊れるのではないかというくらい勢いよく扉が閉められた
インデックスという少女が退室した音


少女は、目に涙をためていた
しかし先程までのような負からわきでるものではなく

インデックス(よかった)

ステイルの無事を、喜ぶものである

彼女はそんな風に思えた自分に安堵していた

ステイルが記憶喪失から回復したと聞かされた時も泣きそうになった
その涙は、『自分のせいでステイルが傷ついた』という罪が消えたという感情から来たものではないかと不安だった

しかし泣いてみたら、そんなことはなかった
心はステイルの無事を喜ぶ感情で埋めつくされていた

インデックス(ステイル…)


582:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/30(月) 01:52:33.11 ID:Bu0DKe7SO
一人取り残されたステイルは、遠慮なしに噛み付かれた頭を擦りながら思う

ステイル(これで、いいんだろう?)

と、自分に語りかける

なにが“いい”のか、この少年には分からない


なぜなら
少年は記憶喪失なのだから


ステイル(……語りかけてくる)

ステイル(彼女を悲しませないでくれと)

ステイル(……守れ、と)



ステイル(―――『心』から)


583:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/30(月) 01:56:02.40 ID:Bu0DKe7SO
ステイル=マグヌス

彼は主人公(ヒーロー)とはいえない、お話を進んできたと思う

しかし彼は今、一人の少女の世界を救った

嘘をつきづけることで


挫折もするだろう
いつかこの幻想が糾弾され、壊れる日も来るだろう

でも彼は、これからもずっと彼女の世界を守りつづけるだろう


おしまい


584:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/30(月) 02:04:22.10 ID:Bu0DKe7SO
窓の無いビル

その中に君臨し静かに笑う『人間』がいた


585:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/30(月) 02:12:16.07 ID:Bu0DKe7SO
禁書目録(インデックス)のIDを作り登録させ、学園都市に入れるようにすることで


第六位(オールスペア)が一歩進化した

木山春生も、オールスペア進化の土台提供を感謝しよう


586:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/30(月) 02:13:13.03 ID:Bu0DKe7SO
そして『幻想殺し』

幻想殺しが学園都市に乱入することでヒューズ=カザキリが生まれる

そして今、幻想殺しは第一位のいる実験場へ知らず知らず進んでいる

生気を失ってはいるが、おそらく目の前の理不尽に憤り、実験を停止させるであろう

それで妹達がばらまかれ、虚数学区が世界に展開される


587:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/30(月) 02:18:10.84 ID:Bu0DKe7SO
本当におしまい


588:1 ◆lTyT8Sj5D.:2011/05/30(月) 02:21:26.04 ID:Bu0DKe7SO
おしまいです

シリアスはやはりハードル高かったです
何回挫折と息切れしたことか
大人しくギャグだけ書いていればいいものを調子にのって書いたSSがこれです
もう当分書きません


こんな稚拙なのに付き合ってくれた方々は本当にありがとうございます

ではさようなら


589:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東):2011/05/30(月) 02:56:02.48 ID:zHrk1CLAO
乙。最高にかっこいいステイルでした。


592:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2011/05/30(月) 08:41:32.38 ID:JLzuQpbg0
とうとう終わったか……
面白かったしステイルメインは燃えるのよな
今まで乙!


593:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/30(月) 12:19:41.70 ID:uiOHHJ/Zo
うおお、乙
この先も読みたいがよりしんどそうだし難しいか
気が向いたら書いて欲しいぜ
ギャグでもシリアスでもいいからまた何か書いてくれください


元スレ:http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1301/13010/1301070539.html





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